特許第6437602号(P6437602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6437602マスクブランク、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437602
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】マスクブランク、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20181203BHJP
   G03F 1/58 20120101ALI20181203BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   G03F1/32
   G03F1/58
   G03F7/20 521
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-146206(P2017-146206)
(22)【出願日】2017年7月28日
(62)【分割の表示】特願2013-14503(P2013-14503)の分割
【原出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-191344(P2017-191344A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小湊 淳志
(72)【発明者】
【氏名】酒屋 典之
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−315977(JP,A)
【文献】 特開2005−084684(JP,A)
【文献】 特表2002−535702(JP,A)
【文献】 特開2004−085760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、
前記透光性基板上に設けられたパターン形成用の薄膜とを備えたマスクブランクであって、
前記薄膜は、ArFエキシマレーザ光を2%以上の透過率で透過しつつ、透過するArFエキシマレーザ光に対して170度以上190度以下の位相差を生じさせる位相シフト膜であって、前記透光性基板側から、下層と、前記下層との間に界面を有して前記下層に接して設けられた上層とを有し、
前記下層は、膜厚が40nm以上90nm以下であり、
前記上層は、膜厚が7nm以下であり、
前記下層は、ケイ素と窒素を含有し、かつ金属を含有しない材料で形成され、前記下層に含まれる各元素の含有量の膜厚方向のばらつきが10原子%以下であり、
前記上層は、その屈折率nbが前記下層の屈折率naよりも低く、その消衰係数kbが前記下層の消衰係数kaよりも低く、ケイ素と酸素を含有し、金属元素の含有量が1原子%以下であり、
前記下層は、その屈折率naが2.40以上2.93以下であり、かつその消衰係数kaが0.76以下であり、
前記上層の前記屈折率nbおよび消衰係数kbは、nb≦−0.189kb−0.0386kb+0.0021kb+2.13の関係を満たすことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記上層の屈折率nbは、1.50以上1.80以下であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記上層の屈折率nbおよび消衰係数kbは、nb≦−0.0022kb−0.453kb+1.85の関係を満すことを特徴とする請求項1または2記に載のマスクブランク。
【請求項4】
前記上層は、その屈折率nbと消衰係数kbとが前記下層側に向かって大きくなるように膜厚方向の組成が変化していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記下層および上層は、スパッタ法によって形成されたものであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
請求項1からの何れかに記載のマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングすることによって転写パターンを形成する工程を備えたことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、基板上のレジスト膜に対して前記転写パターンを露光転写する工程を備えたことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィーによる微細加工に適用されるマスクブランク、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の微細化の要求にともない、リソグラフィーにおける露光工程では転写用マスクの一つとして、ハーフトーン位相シフトマスク(以下、単に位相シフトマスクと記す)が実用化されている。位相シフトマスクおよびこれを製造するためのマスクブランクは、転写パターンまたは転写パターン形成用の薄膜として、MoSiNやMoSiONのような、遷移金属とケイ素に窒素や酸素を含有させた位相シフト膜を備えている。ところがこのような位相シフト膜は、例えばArFエキシマレーザ光(波長193nm)のような短波長の露光光の照射を受けると膜表面に硫酸アンモニウム等の析出物(いわゆるヘイズ)が発生する。また、洗浄液に対する耐薬性も低い。そこで、位相シフト膜の表層における組成を規定することにより、析出物の発生の抑制と耐薬性の向上を図った構成(例えば下記特許文献1)が提案されている。
【0003】
一方、リソグラフィーにおける露光工程では、偏光照明や斜入射照明等の超解像技術の適用も進展している。ところがこのような露光工程に対する超解像技術の適用により、転写用マスクにおいては転写パターン間に発生する電磁界(Electro Magnetics Field:EMF)が複雑化する。このため、EMF効果に起因する転写パターンの補正量、すなわちEMFバイアスが増大する。そこで、転写パターンを構成する薄膜の屈折率、消衰係数、膜厚、および位相差を規定することにより、EMFバイアスを小さく抑えることが可能なバイナリ型のマスクブランクおよび転写用マスクが提案されている(例えば下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−184355号公報
【特許文献2】特開2012−078441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したEMFバイアスを抑える構成のマスクブランクおよび転写用マスクでは、転写パターンを構成する薄膜の位相差が30度以下に規定されている。このため、例えば位相シフトマスクのような、所定の位相差を必要とする位相シフト膜を薄膜として用いるマスクブランクおよび転写用マスクへの適用は困難である。
【0006】
そこで本発明は、薄膜の位相差を抑えることなくEMFバイアスを低くすることが可能なマスクブランク、およびこの薄膜を加工して得られる転写用マスクを提供すること、さらにはこのマスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明のマスクブランクの構成は、以下のようである。
【0008】
(1)
透光性基板と、
前記透光性基板上に設けられたパターン形成用の薄膜とを備えたマスクブランクであって、
前記薄膜は、前記透光性基板側から、下層と、前記下層との間に界面を有して前記下層に接して設けられた上層とを有し、
前記下層は、遷移金属とケイ素とを含有し、さらに窒素および酸素のうち少なくともいずれかを含有し、前記下層に含まれる各元素の含有量の膜厚方向のばらつきが10原子%以下であり、
前記上層は、その屈折率nbが前記下層の屈折率naよりも低く、その消衰係数kbが前記下層の消衰係数kaよりも低い
ことを特徴とするマスクブランク。
【0009】
(2)
前記薄膜は、ArFエキシマレーザ光を所定の位相差で透過させる位相シフト膜である
ことを特徴とする(1)のマスクブランク。
【0010】
(3)
前記上層は、その屈折率nbと消衰係数kbとが、nb≦−0.189kb−0.0386kb+0.0021kb+2.13の関係を満たす
ことを特徴とする(1)または(2)のマスクブランク。
【0011】
(4)
前記上層は、その屈折率nbと消衰係数kbとが前記下層側に向かって大きくなるように膜厚方向に組成が変化している
ことを特徴とする(1)から(3)の何れかのマスクブランク。
【0012】
(5)
前記薄膜は、前記透光性基板と前記下層との間に、さらに下地層を有し、
前記下地層は、その屈折率ncが前記下層の屈折率naよりも低く、その消衰係数kcが前記下層の消衰係数kaよりも低い
ことを特徴とする(1)から(4)の何れかのマスクブランク。
【0013】
(6)
前記薄膜は、膜応力が360MPa以下である
ことを特徴とする(1)から(5)の何れかのマスクブランク。
【0014】
(7)
前記上層は、ケイ素と酸素を含有し、金属元素の含有量が1原子%以下である
ことを特徴とする(1)から(6)の何れかのマスクブランク。
【0015】
(8)
前記下層および上層は、スパッタ法によって形成されたものである
ことを特徴とする(1)から(7)の何れかのマスクブランク。
【0016】
(9)
(1)から(8)の何れかのマスクブランクを用いて作製された転写用マスクであって、
前記薄膜をパターニングして構成された転写パターンを有する
ことを特徴とする転写用マスク。
【0017】
(10)
透光性基板上に薄膜を備えたマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上に、遷移金属とケイ素とを含有し、さらに窒素および酸素のうち少なくとも何れかを含有すると共に、含まれる各元素の含有量の膜厚方向のばらつきを10原子%以下とした下層を成膜する工程と、
前記下層に接して、屈折率nbが前記下層の屈折率naよりも低く、消衰係数kbが前記下層の消衰係数kaよりも低い上層を成膜する工程と、
前記上層を成膜した後、前記下層と前記上層とを有する薄膜の膜応力を低減するための加熱処理または光照射処理を行う工程とを有する
マスクブランクの製造方法。
【0018】
(11)
前記薄膜を、ArFエキシマレーザ光を所定の位相差で透過させる位相シフト膜として形成する
ことを特徴とする(10)のマスクブランクの製造方法。
【0019】
(12)
前記上層を、その屈折率nbと消衰係数kbとが、nb≦−0.189kb−0.0386kb+0.0021kb+2.13の関係を満たすように成膜する
ことを特徴とする(10)または(11)のマスクブランクの製造方法。
【0020】
(13)
前記上層を成膜する工程は、前記上層の屈折率nbと消衰係数kbとが前記下層側に向かって大きくなるように膜厚方向に組成を変化させる
ことを特徴とする(10)から(12)の何れかのマスクブランクの製造方法。
【0021】
(14)
前記下層を成膜する前に、屈折率ncが前記下層の屈折率naよりも低く、消衰係数kcが前記下層の消衰係数kaよりも低い下地層を、前記透光性基板の上部に成膜する工程を行ない、
前記下地層を含む前記薄膜を形成する
ことを特徴とする(10)から(13)の何れかのマスクブランクの製造方法。
【0022】
(15)
前記加熱処理または光照射処理により、前記薄膜の膜応力を360MPa以下に低減させる
ことを特徴とする(10)から(14)の何れかのマスクブランクの製造方法。
【0023】
(16)
前記上層を成膜する工程は、ケイ素と酸素を含有し、金属元素の含有量が1原子%以下となるように前記上層を成膜する
ことを特徴とする(10)から(15)の何れかのマスクブランクの製造方法。
【0024】
(17)
前記下層を成膜する工程および上層を成膜する工程は、スパッタ法による成膜を行う
ことを特徴とする(10)から(16)の何れかのマスクブランクの製造方法。
【0025】
(18)
(10)から(17)の何れかのマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングすることによって転写パターンを形成する工程を備えた
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0026】
(19)
(9)の転写用マスクを用い、基板上のレジスト膜に対して前記転写パターンを露光転写する工程を備えた
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【0027】
(20)
(18)の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、基板上のレジスト膜に対して前記転写パターンを露光転写する工程を備えた
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
以上の構成を有する本発明によれば、以降の各実施形態で説明するように、遮光膜や位相シフト膜として用いられるパターン形成用の薄膜の位相差を抑えることなくEMFバイアスを低くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態のマスクブランクおよび転写用マスクの断面模式図である。
図2】マスクブランクおよび転写用マスクを構成する各層構造の薄膜における膜厚−EMFバイアスの関係を示すグラフである。
図3】2層構造の薄膜における上層の膜厚に対するEMFバイアスの関係を示すグラフである。
図4】2層構造の薄膜における上層の屈折率および消衰係数に対するEMFバイアスの等高線図である。
図5】各EMFバイアスとなる2層構造の薄膜における上層の屈折率を消衰係数の関数として表したグラフである。
図6】第2実施形態のマスクブランクおよび転写用マスクの断面模式図である。
図7】第3実施形態のマスクブランクおよび転写用マスクの断面模式図である。
図8】2層構造の薄膜における下地層の屈折率および消衰係数に対するEMFバイアスの等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。
1.第1実施形態(2層構造の薄膜を備えた構成)
1−1.マスクブランクおよび転写用マスクの構成
1−2.下層および上層の屈折率および消衰係数について
1−3.上層の膜厚について
1−4.上層の屈折率と消衰係数の関係について
1−5.マスクブランク、転写用マスク、半導体デバイスの製造方法
1−6.第1実施形態の効果
2.第2実施形態(上層が複数層である薄膜を備えた構成)
2−1.マスクブランクおよび転写用マスクの構成
2−2.上層の屈折率および消衰係数について
2−3.マスクブランク、転写用マスク、半導体デバイスの製造方法
2−4.第2実施形態の効果
3.第3実施形態(3層構造の薄膜を備えた構成)
3−1.マスクブランクおよび転写用マスクの構成
3−2.下地層の屈折率および消衰係数について
3−3.下地層、下層、上層の屈折率および消衰係数について
3−4.マスクブランク、転写用マスク、半導体デバイスの製造方法
3−5.第3実施形態の効果
【0031】
≪1.第1実施形態(2層構造の薄膜を備えた構成)≫
<1−1.マスクブランクおよび転写用マスクの構成>
図1は、第1実施形態のマスクブランク1、およびこれを用いて作製された転写用マスクの構成を説明するための断面模式図である。この図を用いて説明する第1実施形態のマスクブランク1は、透光性基板11と、透光性基板11の一主面上に設けられたパターン形成用の薄膜21とを備えている。また、このマスクブランク1を用いて作製される転写用マスクは、薄膜21をパターニングして構成された転写パターンを有するものである。以下においては、代表してマスクブランク1の構成を説明する。また以下において転写用マスクとは、このマスクブランク1を用いて作製された転写用マスクであることとする。
【0032】
マスクブランク1に設けられた薄膜21は、半透過性または遮光性を有する膜であり、このマスクブランク1を用いて作製された転写用マスクが、ハーフトーン位相シフトマスクである場合にはハーフトーン位相シフト膜(位相シフト膜)であり、バイナリマスクである場合には遮光膜である。
【0033】
マスクブランク1がハーフトーン位相シフトマスクを作製するためのマスクブランクである場合、透光性基板11上に設けられる薄膜21は、位相シフト膜となる。この位相シフト膜は、位相シフト効果を生じさせるために、照射される露光光に対して所定の透過率Tで透過し、かつ透過した露光光がこの位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ大気中を透過した露光光に対して所定の位相差Pとなるような光学特性(屈折率n、消衰係数k)および膜の厚さを有する必要がある。バイナリマスクの遮光膜の場合、膜の屈折率nが小さい材料を適用することや、膜の厚さを薄くすることでEMFバイアスを低減することが十分可能である。しかし、位相シフト膜の場合、位相シフト効果を生じさせる機能を確保する必要があるため、光学特性や膜の厚さを薄くすることに対して大きな制約を受ける。このため、従来技術とは異なる別の解決手段を新たに見出す必要があった。
【0034】
本発明者らによる鋭意研究の結果、従来の位相シフト膜(本発明の下層に対応)の表面に接して、この位相シフト膜よりも小さい屈折率nおよび消衰係数kを有する他の膜(本発明の上層)をスパッタ成膜等によって積層させ、従来の位相シフト膜(下層)と前記他の膜(上層)との間に明確な界面を有する積層構造を新たな位相シフト膜とすることで、従来の位相シフト膜の場合よりもEMFバイアスを大きく低減することができることを見出した。また、このような下層と上層の積層構造の位相シフト膜の場合、下層の光学特性の膜厚方向のばらつきが小さいことが望ましいことも判明した。また、このような光学特性の下層とするには、下層の厚さ方向における組成の分布の均一性が高い(下層に含まれる各元素の含有量の膜厚方向のばらつきが小さい。)ことが望ましいことも明らかとなった。
【0035】
一方、バイナリマスクの遮光膜の場合においても、従来の遮光膜の表面に接して、この遮光膜よりも小さい屈折率nおよび消衰係数kを有する他の膜(上層)をスパッタ成膜等によって積層させ、従来の遮光膜(下層)と前記他の膜(上層)との間に明確な界面を有する積層構造を新たな遮光膜とすることで、従来の遮光膜の場合よりもEMFバイアスを低減することが可能であることも見出した。本発明のマスクブランク1は、このような鋭意研究の結果、完成されたものである。
【0036】
本第1実施形態においては、このような薄膜21が、透光性基板11側から順に下層13a、上層13bを有しているところが特徴的である。以下、このような構成のマスクブランク1の各構成要素の詳細を、透光性基板11、薄膜21、薄膜21を構成する下層13a、薄膜21を構成する上層13bの順に説明する。
【0037】
[透光性基板11]
透光性基板11は、リソグラフィーにおける露光工程で用いられる露光光に対する透過性が良好な材料からなる。露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:約193nm)を用いる場合であれば、これに対して透過性を有する材料で構成されれば良い。このような材料としては、合成石英ガラスが用いられるが、この他にもフッ化カルシウムガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス、その他各種のガラス基板を用いることができる。また、透光性基板11の形状としては、対向する2つの主表面と対向する2組の端面からなる略矩形状であることが好ましい。
【0038】
尚、ここで言うリソグラフィーにおける露光工程とは、転写用マスクを用いたリソグラフィーにおける露光工程であり、以下において露光光とはこの露光工程で用いられる露光光であることとする。この露光光としては、ArFエキシマレーザ光(波長:193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長:248nm)、i線光(波長:365nm)のいずれも適用可能であるが、EMFバイアスを低減する観点では、ArFエキシマレーザ光を露光光に適用することが望ましい。
【0039】
[薄膜21]
薄膜21は、透光性基板11側から順に、下層13aおよび上層13bを設けた2層構造である。この薄膜21は、透光性基板11上に下層13aおよび上層13bを成膜した状態において、透光性基板11と薄膜21との間に生じている膜応力が除去されたものであって、膜応力が360MPa以下であることとする。また、この膜応力は、300MPa以下であるとより好ましく、180MPa以下であるとさらに好ましい。また、薄膜21は、上層13bと下層13aとを合わせた全体として、露光光に対する所定の透過率Tを有する。さらに転写用マスクが位相シフトマスクである場合、この薄膜21は位相シフト膜として用いられるため、露光光に対する所定の位相差Pを有する。
【0040】
ここで薄膜21の位相差Pとは、薄膜21で構成された転写パターン(薄膜21が存在している部分)を透過した露光光と、転写パターン間の例えば大気中を転写パターンと同じ距離だけ通過した露光光との位相差である。例えば、薄膜21は、露光光に対する透過率Tが1%以上であることが好ましく、2%以上であるとより好ましい。また、この場合における薄膜21は、露光光に対する透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であるとより好ましい。また、この薄膜21は、位相差Pが170deg〜190degの範囲になるように調整されていることが好ましい。
【0041】
[下層13a(薄膜21)]
下層13aは、透光性基板11の一主面上に設けられた層であり、透光性基板11に接して設けられていて良い。この下層13aは、遷移金属とケイ素(Si)とを含有し、さらに窒素(N)および酸素(O)のうち少なくともいずれかを含有する材料を用いて構成される。遷移金属としては、典型的にはモリブデン(Mo)が用いられ、この他にもタングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)等が用いられる。また、下層13aは、ケイ素および窒素を含有し、かつ金属を含有しない材料で形成してもよい。
【0042】
また下層13aは、成膜条件等の制御によって、組成、膜密度、結晶構造、配向性等を調整することにより、露光光に対する所定の屈折率naおよび消衰係数kaを有するように構成されている。また、この下層13aの膜厚、屈折率naおよび消衰係数kaは、この下層13aと上層13bとを備えた薄膜21が、露光光に対する所定の透過率Tを有するように、上層13bの膜厚、屈折率nbおよび消衰係数kbとともに適切に調整されている。また転写用マスクが位相シフトマスクである場合、下層13aの膜厚、屈折率naおよび消衰係数kaは、この下層13aと上層13bとを備えた薄膜21が、露光光に対する所定の透過率と所定の位相差Pを有するように、上層13bの膜厚、屈折率nbおよび消衰係数kbとともに適切に調整されている。
【0043】
以上のような下層13aにおいて、さらに特徴的な構成は、面方向だけではなく膜厚方向の組成が均一なところにある。すなわち下層13aは、透光性基板11側から上層13b側までの間において、下層13aを構成する全ての元素の含有量の差が10原子%以下であり、各元素の濃度プロファイルが膜厚方向に10原子%以下のばらつきの範囲で均一である。このような下層13aは、膜厚方向に均一な組成として成膜され、その成膜時の状態に保たれているものであって良い。これらのことから、下層13aを成膜してから時間を置かずに、上層13bを成膜することが好ましい。なお、ここでの各元素の濃度プロファイルは、ラザフォード後方散乱分析(RBS分析)によって得られるものであることが好ましい(以降、組成については同様である。)。
【0044】
このような下層13aは、透光性基板11上にスパッタ法によって成膜された膜である。下層13aの成膜には、DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法のいずれも適用可能である。また、下層13aの膜厚は、薄膜21に必要とされる膜厚の大部分を占める。下層13aの膜厚は、上層13bの膜厚や、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaや上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbによっても変わるが、40nm〜90nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50nm〜80nmの範囲である。
【0045】
[上層13b(薄膜21)]
上層13bは、下層13aに直接接して設けられた層であり、下層13aとの間に明確な界面Sを有して設けられた層であるところが特徴的である。すなわち上層13bは、下層13aとは異なる組成を有し、下層13a上に直接成膜された層として設けられている。
【0046】
この上層13bは、ケイ素(Si)と酸素(O)とを含有する。ケイ素を含有する材料は、屈折率nが低い傾向があり、さらに、酸素を含有させることで消衰係数kも低くすることができる。屈折率nおよび消衰係数kが低い材料からなる上層13bは、薄膜21全体におけるEMFバイアスの低減に大きく寄与することができる。また上層13bには、さらに窒素(N)や他の金属元素が含有されていてもいなくても良く、含有されている場合であればその金属元素の含有量の合計が1原子%以下である。材料中に金属元素を含有させると、その材料の屈折率nおよび消衰係数kが上がる傾向があるためである。このような上層13bに含有される金属元素としては、例えばモリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)が例示される。
【0047】
また、材料中に窒素を含有させると、その材料の消衰係数kは下がる傾向があるが、反面、屈折率nは上がる傾向がある。同じ消衰係数kを有する2つの材料では、屈折率nの高い材料の方がEMFバイアスが増加する傾向がある。このため、上層13aの窒素含有量は、20原子%以下であることが好ましく、より好ましくは10原子%以下であり、5原子%以下であるとさらに好ましい。
【0048】
また特に上層13bは、成膜条件等の制御によって、組成、膜密度、結晶構造、配向性等を調整することにより、露光光に対する所定の屈折率nb、消衰係数kbを有するように構成されている。このような上層13bの屈折率nbの値は、下層13aの屈折率naの値よりも低く[nb<na]、上層13bの消衰係数kbの値は下層13aの消衰係数kaの値よりも低い[kb<ka]。このように下層13aの屈折率na、消衰係数ka、および上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbを設定することにより、以降に説明するように、EMFバイアスを抑えることが可能なマスクブランク1となる。
【0049】
このような上層13bは、下層13a上に成膜された膜であり、膜厚方向の組成が均一であって良い。上層13の成膜法としてはスパッタ法が適用される。上層13aの成膜の場合においても、DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法のいずれも適用可能であるが、上層13bは、金属元素の含有量が少なく導電性が乏しい傾向があるため、RFスパッタ法やイオンビームスパッタ法で成膜することが望ましい。このような上層13bは、上述した特性を有していれば、その膜厚は制御できる範囲で薄くすることができる。上層13bの膜厚については以降に説明する。
【0050】
また上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbは、nb≦−0.189kb−0.0386kb+0.0021kb+2.13…式(1)の関係を満たし、好ましくはnb≦−0.201kb−0.238kb+1.98…式(2)の関係を満たし、さらに好ましくはnb≦−0.0022kb−0.453kb+1.85…式(3)の関係を満たす。このような上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbの関係は、以降に説明するようにして導かれた関係である。
【0051】
<1−2.下層13aおよび上層13bの屈折率および消衰係数について>
下記表1〜5に示すように、転写用マスクとして、ArFエキシマレーザ用のハーフトーン位相シフトマスクを作製することを想定した各層構造の薄膜を有するマスクブランクについて、EMFバイアスを算出する光学シミュレーションを行った。EMFバイアスは、TMA(Thin Mask Analysis)による光学シミュレーションで算出されたバイアス(補正量)と、EMF効果を考慮したシミュレーションで算出されたバイアス(補正量)との差として算出した。尚、TMAは、転写用マスクの薄膜が、膜厚がゼロで所定の透過率を有しているという理想上の膜であると仮定して、補正パターンの形状やパターン線幅の補正量を計算するシミュレーションである。
【0052】
光学シミュレーションに適用する設計パターンとしては、ハーフピッチ65nmのラインアンドスペースパターンを設定し、露光光にはArFエキシマレーザを適用し、露光光の照明条件としてEMFバイアスが大きくなる傾向のある輪帯照明(Annular Illumination)を適用した。
【0053】
ここでは、透光性基板を合成石英ガラス(Qz)とし、薄膜の位相差をP=177deg(目標値)、透過率Tを各目標値(5.7%,7.4%,9.3%)に固定し、薄膜の層構造、膜厚、各層の屈折率nおよび消衰係数kを変動させた。ただし、薄膜の位相差Pおよび透過率Tは、設計の都合上において目標値に対して完全に一致しない場合もある。以下の表1〜5に、上記光学シミュレーションの結果を示す。
【0054】
下記表1に示すシミュレーション結果は、薄膜を単層構造(1)-1〜(1)-3とした構成についての結果である。
【0055】
【表1】
【0056】
下記表2に示すシミュレーション結果は、薄膜を2層構造(2)-1〜(2)-3とし、上層を酸化シリコン(SiO)に固定した[nb<na]、[kb<ka]となる構成についての結果である。
【0057】
【表2】
【0058】
下記表3に示すシミュレーション結果は、薄膜を2層構造(3)とし、下層をMoSiN、上層をMoSiONとした[nb<na]、[kb<ka]となる構成についての結果である。
【0059】
【表3】
【0060】
下記表4に示すシミュレーション結果は、薄膜を2層構造(4)とし、上層をシリコン(Si)とした[nb<na]、[kb>ka]となる構成についての結果である。
【0061】
【表4】
【0062】
下記表5に示すシミュレーション結果は、合成石英ガラス(Qz)で構成された透光性基板を彫り込み、彫り込んだ段差部分を薄い酸化シリコン(SiO)で構成した下層に見立てた2層構造(5)の薄膜とし、[nb>na]、[kb>ka]となる構成についての結果である。
【0063】
【表5】
【0064】
図2には、表1〜5に示した光学シミュレーションの結果のうちの、透過率T=5.7%(目標値)とした層構造についての光学シミュレーションの結果を、薄膜の合計膜厚に対するEMFバイアスの値として表したグラフを示す。
【0065】
以上の表1〜5および図2のシミュレーション結果に示すように、層構造(2)-1〜(2)-3および層構造(3)、すなわち下層13a[na,ka]と上層13b[nb(<na),kb(<ka)]とを積層させた層構造は、層構造(1)-1の単層構造と比較してEMFバイアスが効果的に低く抑えられていることがわかる。
【0066】
また、図2のグラフから、薄膜の全体の膜厚が薄いほど、EMFバイアスが低く抑えられることがわかる。
【0067】
<1−3.上層13bの膜厚について>
下記表6に示すように、上層13bの膜厚を変動させた各薄膜を有するマスクブランクについて、EMFバイアスを算出する光学シミュレーションを、上述と同様に行った。
【0068】
ここでは、透光性基板を合成石英ガラス(Qz)とし、上層13bの材質を酸化シリコン(SiO)、薄膜21の位相差P=177deg(目標値)、透過率T=5.7%(目標値)、および合計膜厚を各値に固定し、上層13bの膜厚を変動させた。この際、下層13aの膜厚、屈折率na、および消衰係数kaは、上層13bの膜厚の変動に合わせた各値とした。尚、上層13bの屈折率nbは、下層13aの屈折率naよりも低く[nb<na]であり、上層13bの消衰係数kbは下層13aの消衰係数kaよりも低く[kb<ka]であり、第1実施形態の構成の範囲である。
【0069】
また比較のため、上層13bの膜厚をゼロ(0)とした単層構造についても光学シミュレーションを行った。ただし、薄膜21の位相差Pおよび透過率Tは、設計の都合上において目標値に対して完全に一致しない場合もある。以下の表6に、上記光学シミュレーションの結果を示す。
【0070】
【表6】
【0071】
図3には、表6に示した光学シミュレーションの結果を、上層13bの膜厚に対するEMFバイアスの値として表したグラフを示す。
【0072】
以上の表6および図3のシミュレーション結果に示すように、下層13aにおける屈折率naおよび消衰係数kaに対して、上層13bにおける屈折率nb<naおよび消衰係数kb<kaとした層構造では、位相差Pおよび透過率Tを満たす範囲で上層13bの膜厚が大きいほどEMFバイアスが低く抑えられていることがわかる。このような上層13bの膜厚は、安定的に成膜が可能な膜厚以上(例えば1nm以上)であれば、EMFバイアスを抑える効果が確実に得られることも確認された。なお、薄膜21を備えるマスクブランク1から転写用マスクを作製し、露光装置での露光転写およびマスク洗浄の繰り返し使用を行うことに対する上層13bの耐久性を考慮した場合、上層13bの膜厚は3nm以上あると好ましい。
【0073】
また、薄膜21の合計膜厚が薄いほど、EMFバイアスが低く抑えられることは、先の図2に示した結果と同様である。ただし、薄膜21が位相シフト膜である場合、薄膜21全体で所定の位相差を生じるようにする必要があり、このため、上層13bの厚さが厚くなるほど、下層13aに屈折率naが高い材料を適用する必要がある。屈折率naが高くなるほど選定できる材料の制約が大きくなる。この点を考慮すると、上層13bの膜厚は7nm以下であることが好ましく、5nm以下であるとより好ましい。
【0074】
以上の結果から、EMFバイアスの低く抑える効果を有する層構造、すなわち下層13a[na,ka]と上層13b[nb(<na),kb(<ka)]とを積層させた層構造においては、薄膜21の全体膜厚を低く抑えると共に、上層13bの膜厚をできる範囲で大きく設計することにより、EMFバイアスのさらなる低下を図ることが可能であることがわかった。
【0075】
<1−4.上層13bの屈折率nbと消衰係数kbの関係について>
下記表7に示すように、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kbを変動させた各薄膜を有するマスクブランクについて、EMFバイアスを算出する光学シミュレーションを、上述と同様に行った。
【0076】
ここでは、透光性基板を合成石英ガラス(Qz)とし、薄膜の位相差P=177deg(目標値)、透過率T=5.7%(目標値)、下層13aの膜厚67nm、および上層13bの膜厚3nmに固定し、上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbを変動させた。また、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaは、上層13bの変動に合わせた各値とした。尚、上層13bの膜厚3nmは、EMFバイアスを抑える効果が確実に得られる範囲であり、かつ実際にこの薄膜に転写パターンを形成した転写用マスクを使用する際に問題ない膜厚であることから選定されたものである。ただし、薄膜の位相差Pおよび透過率Tは、設計の都合上において目標値に対して完全に一致しない場合もある。以下の表7に、上記光学シミュレーションの結果を示す。
【0077】
【表7】
【0078】
図4には、表7に示した光学シミュレーションの結果を、上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbに対するEMFバイアスの値の等高線図として表したグラフを示す。
【0079】
図4のシミュレーション結果に示すように、薄膜21の位相差P、透過率T、下層13aおよび上層13bの膜厚を固定した範囲において、上層13bにおける屈折率nbはnb≧1.5の範囲で低いほど、また消衰係数kbが低いほどEMFバイアスが低く抑えられることがわかる。
【0080】
また図5には、このシミュレーション結果に基づいて、EMFバイアスの値毎に、上層13bの屈折率nbと消衰係数kbの値をプロットして近似曲線を作成し、上層13bの屈折率nbを消衰係数kbの関数として表したグラフを示す。
【0081】
図5のグラフに示す各近似曲線から、薄膜21の位相差P=177deg(目標値)、透過率T=5.7%(目標値)、下層13aの膜厚67nm、および上層13bの膜厚3nmに固定した条件においては、nb≦−0.189kb−0.0386kb+0.0021kb+2.13…式(1)の関係を満たせば、EMFバイアスを14.0(nm)以下に抑えることが可能であることがわかる。また、nb≦−0.201kb−0.238kb+1.98…式(2)の関係を満たせば、EMFバイアスを13.0(nm)以下に抑えることが可能であることがわかる。さらに、nb≦−0.0022kb−0.453kb+1.85…式(3)の関係を満たせば、EMFバイアスを12.4(nm)以下に抑えることが可能であることがわかる。またさらに、EMFバイアスを12.0(nm)以下または11.6(nm)以下とするには、グラフに示す各近似曲線をnb≦の関係とすれば良い。
【0082】
<1−5.マスクブランク、転写用マスク、半導体デバイスの製造方法>
以上説明した積層構造のマスクブランク1、このマスクブランク1を用いた転写用マスクの製造、および半導体デバイスの製造は、次のように行う。
【0083】
[マスクブランクの製造]
先ず、透光性基板11を用意し、この上部に屈折率naおよび消衰係数kaの下層13aを成膜する。このような下層13aの成膜は、例えばスパッタ法によって行う。次に、下層13aの上部に、屈折率nb(<na)および消衰係数kb(<kb)の上層13bを成膜する。このような上層13bの成膜は、例えばスパッタ法によって行う。
【0084】
その後、下層13aおよび上層13bの積層膜に対して加熱処理あるいは光照射処理を行うことによりって膜応力を除去し、膜応力が360MPa以下の下層13aおよび上層13bの積層構造として構成された薄膜21を得る。下層13a、上層13bはともにケイ素を含有する材料で形成されている。このような材料からなる膜の応力を加熱処理によって低減するには、少なくとも280℃以上の温度で加熱する必要があり、350℃以上の温度で加熱することが好ましく、450℃以上の温度で加熱するとより好ましい。加熱処理は、加熱炉を用いた一般的な加熱による処理であっても、ハロゲンヒーターのような放射熱と遠赤外線を併用するような加熱処理であってもよい。他方、光照射処理は、フラッシュランプを用いた光照射処理等が挙げられる。
【0085】
薄膜21に対して加熱処理または光照射処理を行う際は、大気中で行われてもよく、窒素ガス中、あるいは真空中で行われてもよい。加熱処理または光照射処理は、下層13aの上に上層13bが形成された後に行われるため、下層13aが外気に接していない状態で加熱または光照射を受けるので、これらの処理の前後における下層13aの組成の変化が最小限に抑制される。また、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaの変化も最小限に抑制される。一方、上層13bは、一方の面が外気に接している状態で加熱処理または光照射処理が行われるため、これらの処理の前後で、上層13bの組成や屈折率nbおよび消衰係数kbは変化しやすい。
【0086】
ただし、加熱処理または光照射処理の前後において、上層13bの屈折率naおよび消衰係数kbは、ともに低下する傾向を有するため、上層13bの成膜段階でnb<na、かつkb<kaの関係を満たすように成膜条件を調整しておけば問題は生じない。なお、加熱処理または光照射処理が行われた後における上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbをあらかじめ見込んで、上層13bを成膜する段階での成膜条件を調整してもよい。また、上層13bを成膜する段階で、酸素含有量が多い酸化シリコンや、二酸化ケイ素(SiO)であらかじめ形成しておくと、加熱処理または光照射処理の前後における上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbの変化を小さくすることができ好ましい。
【0087】
また薄膜21の形成後には、必要に応じてさらに他の層の成膜を行ない、マスクブランク1を完成させる。薄膜21の上層に形成する他の層としては、例えばこのマスクブランク1が、位相シフト膜を薄膜21としたものであれば、薄膜21の上部に遮光帯や遮光パッチのパターンを形成するための遮光膜を設ける。またこの他にも、薄膜21または遮光膜をエッチングする際の無機マスク膜(エッチングマスク膜)を形成しても良い。薄膜21の上に他の膜を介さずに形成される遮光膜やエッチングマスク膜の場合、薄膜21にパターンを形成するときのドライエッチングのエッチングガスに対して、十分なエッチング選択性を有する材料を適用することが好ましい。このような材料としては、クロムを含有する材料やタンタルを含有する材料が挙げられる。また、クロムを含有する材料で形成された遮光膜の上に、他の膜を介さずにエッチングマスク膜を形成した場合、そのエッチングマスク膜を形成する材料としては、ケイ素を含有する材料を適用することが好ましい。
【0088】
[転写用マスクの製造]
以上のようにして作製したマスクブランク1の上部に、例えば電子線リソグラフィーを適用してレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクにして薄膜21をエッチングする。これにより、薄膜21をパターニングしてなる露光用の転写パターンを備えた転写用マスクを作製する。この転写パターンは、上述したEMFバイアスも考慮したパターン形状および線幅で形成されている。
【0089】
尚、薄膜21が位相シフト膜である場合のように、薄膜21の上部に遮光膜を設けたマスクブランク1の構成の場合は、最初に、薄膜21に形成すべきパターンを有する第1レジストパターンをマスクとして、遮光膜をエッチングしてパターニングする。続いて、第1レジストパターンまたは遮光膜パターンをマスクとして、薄膜21をパターニングする。さらに、第1レジストパターンを除去し、新たに遮光膜に形成すべきパターンを有する第2レジストパターンを形成し、この第2レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングし、遮光帯等の遮光膜パターンを形成する。
【0090】
また、薄膜21または遮光膜上にエッチングマスク膜が設けられたマスクブランク1の構成の場合は、最初に薄膜21に形成すべきパターンを有する第1レジストパターンをマスクとして、薄膜21また遮光膜をエッチングし、パターニングすればよい。
【0091】
[半導体デバイスの製造方法]
以上のようにして得られた転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造は、次の工程を有する。
【0092】
半導体デバイスを形成する基板を用意する。この基板は、例えば半導体基板であっても良いし、半導体薄膜を有する基板であっても良いし、さらにこれらの上部に微細加工膜が成膜されたものであっても良い。
【0093】
次に、用意した基板上にレジスト膜を成膜し、このレジスト膜に対して作製した転写用マスクを用いたパターン露光を行ない、転写用マスクに形成された転写パターンをレジスト膜に露光転写する。この際、露光光としては、転写パターンを構成する薄膜に対応する露光光を用いることとし、例えばここではArFエキシマレーザ光を用いる。
【0094】
以上の後、転写パターンが露光転写されたレジスト膜を現像処理してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクにして基板の表面層に対してエッチング加工を施したり不純物を導入する処理を行う。処理が終了した後には、レジストパターンを除去する。
【0095】
以上のような処理を、転写用マスクを交換しつつ基板上において繰り返し行ない、さらに必要な加工処理を行うことにより、半導体デバイスを完成させる。
【0096】
<1−6.第1実施形態の効果>
以上説明したように、本第1実施形態のマスクブランク1および、このマスクブランク1の薄膜21をパターニングして得られた転写用マスクによれば、薄膜21の位相差を低く抑えることなく、EMFバイアスを低く抑えることが可能となる。
【0097】
これにより、パターンが形成された薄膜21を露光光が透過したときに生じる電磁界(EMF)の影響を小さくすることができる。このため、所望の転写パターンが半導体基板上等のレジスト膜に露光転写されるように、マスクブランク1の薄膜21に形成されるべきパターンを光学シミュレーションで算出する場合において、EMFバイアスも考慮した光学シミュレーションで算出された補正パターンと、基本的にEMFバイアスを考慮していないTMAのような比較的簡易な光学シミュレーションで算出された補正パターンとの差が小さくなる。その結果、TMAのような比較的簡易な光学シミュレーションの計算結果を利用して薄膜21に形成すべきパターンを設計しても、半導体基板上等のレジスト膜に所望の転写パターンを高い精度で転写することが可能となる。
【0098】
この結果、マスク設計におけるシミュレーション負荷が小さく抑えられ、転写用マスクの製造の簡便化を図ることが可能になる。また、転写用マスクに形成される転写パターンの複雑化を抑制できるため、転写パターンの形成精度の向上を図ることも可能になる。このため、転写用マスクおよびこれを用いた半導体デバイスのパターン精度の向上、および製造コストを低く抑えることが可能になる。
【0099】
≪2.第2実施形態(上層が複数層である薄膜を備えた構成)≫
<2−1.マスクブランクおよび転写用マスクの構成>
図6は、第2実施形態のマスクブランク2、およびこれを用いて作製された転写用マスクの構成を説明するための断面模式図である。この図を用いて説明する第2実施形態のマスクブランク2が、第1実施形態のマスクブランクと異なるところは、上層13b’が第1上層13baと第2上層13bbとの積層構造であって、これにより薄膜22が3層構造となっているところにある。他の構成は第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0100】
[上層13b’]
すなわちマスクブランク2における上層13b’は、下層13aの上部に、下層13a側から順に第1上層13ba、第2上層13bbが積層された2層構造であり、この点のみが第1実施形態における上層とは異なるところである。したがって、第1上層13baの屈折率nbaと消衰係数kbaは、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaよりも低く、[nba<na]であり[kba<ka]である。同様に、第2上層13bbの屈折率nbbと消衰係数kbbは、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaよりも低く、[nbb<na]であり[kbb<ka]である。
【0101】
これらの第1上層13baおよび第2上層13bbは、ケイ素(Si)、酸素(O)を含有し、さらに窒素(N)や他の金属元素が含有されていても良いことは第1実施形態と同様であり、例えば窒素(N)を含む組成により、屈折率および消衰係数が所定値に調整されていることとする。
【0102】
以上のような第1上層13baおよび第2上層13bbは、下層13a上に順次成膜された膜であり、膜厚方向の組成が均一であって良い。第1上層13baおよび第2上層13bbの成膜法としては例えばスパッタ法が適用される。
【0103】
<2−2.上層の屈折率および消衰係数について>
下記表8に示すように、第2上層13bbの屈折率nbbを変動させた各薄膜を有するマスクブランクについて、EMFバイアスを算出する光学シミュレーションを、上述と同様に行った。
【0104】
ここでは、透光性基板を合成石英ガラス(Qz)とし、薄膜22の位相差P=177deg(目標値)、透過率T=5.7%(目標値)、下層13aの膜厚(63.5nm)、第1上層13baの膜厚(3.5nm)、および第2上層13bbの膜厚(3.0nm)を固定した。そして、第1上層13baの屈折率nbaおよび消衰係数kba、第2上層13bbの消衰係数kbbを固定し、第2上層13bbの屈折率nbbを変動させた。また、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaをこれに追従させた。ただし、薄膜22の位相差Pおよび透過率Tは、設計の都合上において目標値に対して完全に一致しない場合もある。
【0105】
以下の表8に、上記光学シミュレーションの結果を示す。尚、表8には、膜厚、位相差P,および透過率Tが、上記固定値と等しい単層構造の薄膜のEMFバイアス(14.81nm)も合わせて示した。
【0106】
【表8】
【0107】
以上の表8のシミュレーション結果に示すように、下層13aにおける屈折率naおよび消衰係数kaに対して、上層13b’における屈折率nba,nbb<naおよび消衰係数kba,kbb<kaとした層構造の薄膜22は、単層構造の薄膜のEMFバイアスと比較して、EMFバイアスが低く抑えられていることがわかる。さらに、第2上層13bbの屈折率nbbおよび消衰係数kbbが、第1上層13baの屈折率nbaおよび消衰係数kbaよりも低く、第2上層13bbの消衰係数kbbが低いほど、EMFバイアスを低く抑える効果が高いことがわかる。
【0108】
<2−3.マスクブランク、転写用マスク、半導体デバイスの製造方法>
以上説明した積層構造のマスクブランク2、およびこのマスクブランク2を用いた転写用マスクの製造は、第1実施形態で説明した製造方法において、下層13aを成膜した後、この上部に第1上層13ba、第2上層13bbを順次成膜すれば良い。
【0109】
またこの転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法は、第1実施形態で説明した方法と同様に行われる。
【0110】
<2−4.第2実施形態の効果>
以上説明したように、本第2実施形態のマスクブランク2、およびこのマスクブランク2の薄膜22をパターニングして得られた転写用マスクによれば、薄膜22の位相差を低く抑えることなく、EMFバイアスを低く抑えることが可能となる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
尚、以上の第2実施形態においては、上層13b’を2層構造としたが、上層13b’は、3層以上の積層構造であっても良い。この場合においも、上層13b’を構成する各層の屈折率nbおよび消衰係数kbは、それぞれが下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaよりも小さく下層13aに近いほど屈折率nbおよび消衰係数kbが大きいことが好ましい。
【0112】
≪3.第3実施形態(3層構造の薄膜を備えた構成≫
<3−1.マスクブランクおよび転写用マスクの構成>
図7は、第3実施形態のマスクブランク3、およびこれを用いて作製された転写用マスクの構成を説明するための断面模式図である。この図を用いて説明する第3実施形態のマスクブランク3が、第1実施形態のマスクブランクと異なるところは、透光性基板11と下層13aとの間に下地層13cを設け、これにより薄膜23が3層構造となっているところにある。他の構成は第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0113】
[下地層13c]
すなわちマスクブランク3における下地層13cは、透光性基板11と下層13aとの間に設けられた薄膜であり、この下地層13cを設けた点のみが第1実施形態とは異なる。この下地層13cは、下層13aとの間に明確な界面S1を有して設けられた層であり、下層13aとは異なる組成を有している。このような下地層13cは、ケイ素(Si)と酸素(O)とを含有する。ケイ素を含有する材料は、屈折率nが低い傾向があり、さらに、酸素を含有させることで消衰係数kも低くすることができる。屈折率nおよび消衰係数kが低い材料からなる下地層13cは、薄膜21全体におけるEMFバイアスの低減に寄与することができる。また下地層13cには、さらに窒素(N)や他の金属元素が含有されていても良く、含有されている場合であればその金属元素の合計含有量が1原子%以下である。材料中に金属元素を含有させると、その材料の屈折率nおよび消衰係数kが上がる傾向があるためである。この上層13bに含有される金属元素としては、例えばモリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)が例示される。
【0114】
また、下地層13cの材料中に窒素を含有させると、その材料の消衰係数kは下がる傾向があるが、反面、屈折率nは上がる傾向がある。同じ消衰係数kを有する2つの材料では、屈折率nの高い材料の方がEMFバイアスが増加する傾向がある。このため、上層13aの窒素含有量は、20原子%以下であることが好ましく、より好ましくは10原子%以下であり、5原子%以下であるとさらに好ましい。
【0115】
また下地層13cは、その組成を調整することによって、この下地層13cを用いて構成される薄膜23が、露光光に対する所定の透過率Tを有するように構成されている。特に転写用マスクが位相シフトマスクである場合、下地層13cは、この下地層13cを用いて構成される薄膜23が、露光光に対する所定の位相差Pを有するように構成されている。
【0116】
このような下地層13cは、成膜条件等の制御によって、その組成、膜密度、結晶構造、配向性等を調整することにより、露光光に対する所定の屈折率nc、消衰係数kcを有するように構成されている。下地層13cの屈折率ncは、下層13aの屈折率naよりも低く[nc<na]、下地層13cの消衰係数kcは下層13aの消衰係数kaよりも低い[kc<ka]。つまり、3層構造の薄膜23においては、真ん中に配置された下層13aの屈折率naと消衰係数kaが、上下の層よりも大きい値に設定されている。このように下地層13cの屈折率ncおよび消衰係数kcを設定することにより、以降に説明するように、EMFバイアスを抑えることが可能なマスクブランク3となる。
【0117】
このような下地層13cは、下層13a下に形成された膜であり、膜厚方向の組成が均一であって良い。下地層13cの成膜法としては例えばスパッタ法が適用される。下地層13cの成膜の場合においても、DCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法のいずれも適用可能であるが、下地層13cは、金属元素の含有量が少なく導電性が乏しい傾向があるため、RFスパッタ法やイオンビームスパッタ法で成膜することが望ましい。このような下地層13cは、上述した特性を有していれば、その膜厚は制御できる範囲で薄膜であって良い。下地層13cの膜厚は、上層13bの膜厚や、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaや上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbによっても変わるが、1nm以上であることが好ましく、より好ましくは3nm以上である。また、下地層13cの膜厚は、9nm以下であることが好ましく、5nm以下であるとより好ましい。
【0118】
<3−2.下地層の屈折率および消衰係数について>
下記表9に示すように、下地層13cと下層13aとの2層構造において下地層13cの屈折率ncおよび消衰係数kcを変動させた各薄膜を有するマスクブランクについて、EMFバイアスを算出する光学シミュレーションを、上述と同様に行った。
【0119】
ここでは、透光性基板を合成石英ガラス(Qz)とし、2層構造の位相差P=177deg(目標値)、透過率T=5.7%(目標値)、下層13aの膜厚(67nm)、下地層13cの膜厚(3nm)に固定した。そして、下地層13cの屈折率ncおよび消衰係数kcを変動させ、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaをこれに追従させた。ただし、2層構造の位相差Pおよび透過率Tは、設計の都合上において目標値に対して完全に一致しない場合もある。以下の表9に、上記光学シミュレーションの結果を示す。
【0120】
【表9】
【0121】
図8には、表9に示した光学シミュレーションの結果を、下地層13cの屈折率ncおよび消衰係数kcに対するEMFバイアスの値の等高線図として表したグラフを示す。
【0122】
図8のシミュレーション結果に示すように、下地層13cとこの上部の下層13aとの2層構造では、2層構造全体の位相差P、透過率T、下地層13cおよび下層13aの膜厚を固定した範囲において、下地層13cの屈折率ncがnc≦1.5の範囲で低いほどEMFバイアスが低く抑えられることがわかる。また、下地層13cの消衰係数kcは、kc=0.5以上の範囲で消衰係数kcが小さいほどEMFバイアスが低く抑えられることがわかる。
【0123】
<3−3.下地層、下層、上層の屈折率および消衰係数について>
下記表10に示すように、下地層13cの屈折率ncおよび消衰係数kcを、図8に示したEMFバイアスが14.50−14.60nmの最も低い値に抑えられる範囲で変動させた3層構造のマスクブランクについて、EMFバイアスを算出する光学シミュレーションを、上述と同様に行った。
【0124】
ここでは、透光性基板を合成石英ガラス(Qz)とし、薄膜23の位相差P=177deg(目標値)、透過率T=5.7%(目標値)、各層の膜厚、および上層13bの消衰係数kbを固定した。そして、下地層13cの屈折率ncおよび消衰係数kc、さらには上層13bの屈折率nbを変動させ、下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaをこれに追従させた。ただし、薄膜23の位相差Pおよび透過率Tは、設計の都合上において目標値に対して完全に一致しない場合もある。
【0125】
以下の表10に、上記光学シミュレーションの結果を示す。尚、表10には、膜厚、位相差P,および透過率Tが、上記固定値と等しい単層構造の薄膜のEMFバイアス(14.81nm)も合わせて示した。
【0126】
【表10】
【0127】
表10のシミュレーション結果に示すように、真ん中に配置された下層13aの屈折率naおよび消衰係数kaが、下地層13cの屈折率ncおよび消衰係数kcのそれぞれよりも大きく、上層13bの屈折率nbおよび消衰係数kbのそれぞれよりも大きい値に設定された3層構造は、単層構造と比較してEMFバイアスが低く抑えられていることがわかる。また、表11の結果から、このような3層構造であっても、上層13bの屈折率nbが低い方が、EMFバイアスを低く抑えられることがわかる。
【0128】
<3−4.マスクブランク、転写用マスク、半導体デバイスの製造方法>
以上説明した積層構造のマスクブランク3、およびこのマスクブランク3を用いた転写用マスクの製造は、第1実施形態で説明した製造方法において、下層13aを成膜する前に、透光性基板11上に下地層13cを成膜する工程を行い、この上部に下層13aを成膜すれば良い。またこの転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法は、第1実施形態で説明した方法と同様に行われる。
【0129】
<3−5.第3実施形態の効果>
以上説明したように、本第3実施形態のマスクブランク3、およびこのマスクブランク3の薄膜23をパターニングして得られた転写用マスクによれば、薄膜23の位相差を低く抑えることなく、EMFバイアスを低くすることが可能となる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0130】
尚、本第3実施形態の構成は、第2実施形態の構成と組み合わせることができる。この場合、上層13bを、第2実施形態において図6を用いて説明した積層構造の上層13b’に変更すれば良い。
【符号の説明】
【0131】
1,2,3…マスクブランク
11…透光性基板
13a…下層
13b,13b’…上層
13ba…第1上層
13bb…第2上層
13c…下地層
21,22,23…薄膜
S…界面
n…屈折率(薄膜)
na…屈折率(下層)
nb…屈折率(上層)
nba…屈折率(第1上層)
nbb…屈折率(第2上層)
nc…屈折率(下地層)
k…消衰係数(薄膜)
ka…消衰係数(下層)
kb…消衰係数(上層)
kba…消衰係数(第1上層)
kbb…消衰係数(第2上層)
kc…消衰係数(下地層)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8