(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、高周波デバイスにおいて、ワイヤループの高さを高くし、その長さを長くすることによりワイヤループの抵抗を調整し、高周波デバイスの周波数特性を安定化する方法が用いられている。このような高周波デバイスに用いられるワイヤループは、キャピラリの先端の細く延びた部分(先部)の高さよりも高くなっており、ワイヤボンディングの際にキャピラリがボンディング中のワイヤ或いは、ボンディングの終了した隣接するワイヤに接触してしまい、ループ形状が安定しないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、キャピラリによって、より高さの高いワイヤループを安定して形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置の製造方法は、キャピラリにより基板上の第1位置にワイヤをボンディングし、キャピラリからワイヤを繰り出しながらキャピラリを第1高さまで上昇させる第1上昇工程と、第1位置から第1距離だけ離間した基板上の第2位置の方向に向かってキャピラリを円弧状に移動させる円弧移動の後にキャピラリからワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる上昇移動を行ってワイヤに曲げ癖をつける円弧上昇工程と、キャピラリを第1距離よりも長い第2距離だけ第1位置の方向に向かって円弧状に移動させる円弧移動工程と、キャピラリからワイヤを繰り出しながら第1高さより高い第2高さまでキャピラリを上昇させる第2上昇工程と、キャピラリを第2位置までルーピングさせるルーピング工程と、を含み、第2位置にワイヤをボンディングすることで所定の高さを有するワイヤループを基板上に形成することを特徴とする。
【0008】
本発明の半導体装置の製造方法において、円弧上昇工程を複数回行うこと、としても好適である。
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法において、キャピラリは、テーパー形の根元部と、根元部よりも細い先部と、を有する段付円錐形状であり、ワイヤループは、基板からの高さがキャピラリの先部の長さよりも高い山形形状であり、基板の仮想垂線に対するワイヤループの第2位置側の傾斜部の角度は、キャピラリの中心軸に対する根元部の外面の広がり角度よりも大きく、第1高さは、ワイヤループの高さの60〜90%であり、第1距離は、ワイヤループの高さの50〜80%であり、第2距離は、ワイヤループの高さの110〜130%であり、第2高さは、ワイヤループの高さの160〜210%であること、としても好適である。
【0010】
本発明の半導体装置は、基板上の第1位置と第1位置から第1距離だけ離間した基板上の第2位置との間を接続する所定高さの山形のワイヤループを有する半導体装置であって、キャピラリによってワイヤを第1位置に接合することにより形成される第1接合部と、第1接合部を形成後、キャピラリからワイヤを繰り出しながらキャピラリを第1高さまで上昇させ、その後、第1位置から第2位置の方向に向かってキャピラリを円弧状に移動させる円弧移動の後にキャピラリからワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる上昇移動を行った後、キャピラリを第1距離よりも長い第2距離だけ第1位置の方向に向かって円弧状に移動させ、その後、キャピラリからワイヤを繰り出しながら第1高さより高い第2高さまで上昇させた後にキャピラリを第2位置までルーピングさせることによって形成される頂部と、第2位置にワイヤをボンディングすることにより形成される第2接合部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置において、第1位置から第2位置の方向に向かってキャピラリを円弧状に移動させる円弧移動と、円弧移動の後にキャピラリからワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる上昇移動とをそれぞれ複数回行うことによって形成されること、としても好適である。
【0012】
本発明の半導体装置において、キャピラリは、テーパー形の根元部と、根元部よりも細い先部と、を有する段付円錐形状であり、ワイヤループは、基板からの高さがキャピラリの先部の長さよりも高い山形形状であり、基板の仮想垂線に対するワイヤループの第2位置側の傾斜部の角度は、キャピラリの中心軸に対する根元部の外面の広がり角度よりも大きく、第1高さは、ワイヤループの高さの60〜90%であり、第1距離は、ワイヤループの高さの50〜80%であり、第2距離は、ワイヤループの高さの110〜130%であり、第2高さは、ワイヤループの高さの160〜210%であること、としても好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、キャピラリによって、より高さの高いワイヤループを安定して形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態のワイヤボンディング方法について説明する。まず、
図1を参照しながら、本実施形態のワイヤボンディング方法に用いられるキャピラリ20と、形成されるワイヤループ30について説明する。
【0016】
図1に示すように、キャピラリ20は、テーパー形の根元部21と、根元部21よりも細い先部22と、を有する段付円錐形状である。根元部21と先部22との間には角部26が形成されており、
図1において角部26よりも上側が根元部21であり、角部26よりも下側が先部22である。従って、先部22の長さは、
図1に示す長さD1である。
【0017】
根元部21と先部22にはワイヤを挿通する孔が設けられており、キャピラリ20は、図示しないワイヤボンディング装置のボンディングヘッドによって基板10に対して垂直方向に接離動作すると共に水平方向に移動し、先部22の先端23から延出したワイヤを基板10にボンディングしてワイヤループ30を形成する。根元部21の外面の中心軸25に対する広がり角度は角度φ0である。なお、角度φ0は、5°から15°の範囲であり、更に好適には、6°〜8°の範囲である。
【0018】
なお、
図1において、一点鎖線は、ワイヤループ30の形成を開始する際のキャピラリ20を示し、実線はワイヤループ30の形成が終了した際のキャピラリ20の位置を示しており、キャピラリ20の中心軸25は、ワイヤループ30を含む垂直面と同一面に位置している。また、
図1おいて、第2位置14から第1位置13に向かう方向を第1方向、第1位置13から第2位置14に向かう方向を第2方向とする。他の図においても同様である。
【0019】
図1に示すワイヤループ30は、ワイヤによって基板10に形成された第1電極11と、第1電極11から距離L5だけ離間し、基板10に形成された第2電極12との間を接続する山形を形成する。ワイヤループ30は、第1電極11の上に形成された第1接合部16と、第1電極側の第1傾斜部31と、第2電極側の第2傾斜部33と、頂部32と、第2電極12の上に形成された第2接合部17と、を含んでいる。頂部32の基板10からの高さ(ワイヤループ30の高さ)は、キャピラリ20の先部22の長さD1よりも高いD2である。なお、ワイヤループ30の高さD2は、500μm〜3000μmの範囲であり、さらに好適には、700μm〜1600μmである。
【0020】
ここで、第1電極11の中心は第1電極11にワイヤをボンディングする際にキャピラリ20の中心軸25が来る第1位置13であり、第2電極12の中心は、第2電極12にワイヤをボンディングする際にキャピラリ20の中心軸25が来る第2位置14である。第1位置13と第2位置14との間隔は、第1電極11と第2電極12と同様、距離L5であり、距離L5は、ワイヤループ30の高さD2の50〜80%の長さである。なお、距離L5のワイヤループ30の高さD2に対する比率は、具体的には、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%であり、これらの比率のいずれか2つの範囲内であってもよい。
【0021】
第1傾斜部31の基板10の表面に垂直な仮想垂線15に対する角度は角度φ1であり、第2傾斜部33の仮想垂線15に対する角度は角度φ2である。角度φ1、角度φ2はいずれもキャピラリ20の根元部21の角度φ0よりも大きい。なお、本実施形態では、φ1とφ2とは略同様の大きさであるが、根元部21の角度φ0より大きければ同様の大きさで無くてもよい。角度φ1、角度φ2は、10°〜40°の範囲であり、さらに好適には、15°〜30°の範囲である。
【0022】
図1の一点鎖線で示す位置にキャピラリ20がいる場合には、ワイヤループ30はまだ形成されていないので、キャピラリ20とワイヤループ30との間隔は問題にならない。一方、
図1に実線で示すように、キャピラリ20の先端23が第2電極12の表面まで降下して、ワイヤを第2電極12にボンディングし、ワイヤループ30の形成が終了した時には、ワイヤループ30とキャピラリ20の表面との距離が最も小さくなる。この場合でも、
図1に実線で示すキャピラリ20の根元部21の角度φ0は、ワイヤループ30の第2傾斜部33の角度φ2よりも小さい。そのため、ワイヤループ30の形成が終了した際にも、根元部21の表面は第2傾斜部33と接することは無く、少し隙間があいている。
【0023】
図2に示すように、ワイヤループ30は、狭いピッチPで幅方向に何本も並列して形成される。
図2において、実線で示すワイヤループ30は、ボンディングの終了したワイヤループ30を示し、一点鎖線はこれからボンディングを行うワイヤループ30を示す。
図2のキャピラリ20は、実線で示すワイヤループ30のボンディングを終了し、一点鎖線で示す次のワイヤループ30のボンディングを開始する状態にある。キャピラリ20の中心軸25は、一点鎖線で示すワイヤループ30の第1電極11の上にあり、先端23はワイヤを第1電極11に押圧している。従って、キャピラリ20の中心軸25は、実線で示すワイヤループ30を含む垂直面からピッチPだけ幅方向にずれている。
【0024】
図2において、キャピラリ20のハッチング部27は、実線で示すワイヤループ30を含む垂直面でキャピラリ20を切断した場合の断面を示す。
図2に示すように、実線で示すワイヤループ30の第1傾斜部31とキャピラリ20のハッチング部27とは離れている。そのため、一点鎖線で示すワイヤループ30のボンディングを開始する際に、キャピラリ20が隣接するボンディングの終了した実線で示すワイヤループ30と接触することはない。
【0025】
以上、説明したように、
図1,2に示すキャピラリ20を用いて、
図1,2に示すような形状のワイヤループ30を形成する場合には、ボンディング終了時にボンディングしたワイヤループ30にキャピラリ20の表面が接触することは無く、また、ボンディング開始時に隣接するボンディングの終了したワイヤループ30にキャピラリ20の表面が接触することもない。
【0026】
一方、ワイヤループ30の高さD2が高くなると、その長さも長くなることから、キャピラリ20の動作方法によっては、例えば、
図3に示すように、ワイヤループ30が第2方向に傾く。そのため、第2傾斜部33の仮想垂線15に対する角度φ3がキャピラリ20の根元部21の角度φ0よりも小さくなって、ボンディング終了の際にキャピラリ20の根元部21の表面と第2傾斜部33とが接触してしまう。また、
図4に示すように、ワイヤループ30が第1方向に膨らんだ形状となった場合には、一点鎖線で示す次のワイヤループ30のボンディングを開始する際に、キャピラリ20の根元部21の表面が隣接するボンディングの終了したワイヤループ30の第1傾斜部31と接触してしまう。このため、より高さD2の高いワイヤループ30を狭いピッチPで並列に形成するには、ワイヤループ30の形状が安定して
図1,2に示すような形状となるように、キャピラリ20の先端23を移動させていくことが必要となる。
【0027】
そこで、本実施形態では、ワイヤボンディング装置(半導体製造装置)の制御部によってボンディングヘッドを駆動し、
図5に示すように、キャピラリ20の先端23を特別な軌跡で移動させることによって、ワイヤループ30の形状が安定して
図1,2に示すような形状となるようにしている。制御部は、内部にCPUと動作プログラム、動作データ等を内部に含むコンピュータである。以下、
図5を参照してキャピラリ20の先端23の特別な移動軌跡について説明する。なお、
図5において、L1からL5は第1位置13からの距離を示す。
【0028】
図5に示すように、制御部は、先端23で基板10の第1位置13にワイヤをボンディングして第1接合部16を形成した後、先端23からワイヤを繰り出しながら点51まで先端23を上昇させる(第1上昇工程)。点51の高さH1(第1高さ)はワイヤループ30の高さD2の60〜90%の高さである。なお、点51の高さH1のワイヤループ30の高さD2に対する比率は、具体的には、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%であり、これらの比率のいずれか2つの範囲内であってもよい。
【0029】
次に、制御部は、点51から第2方向に向かって先端23を円弧状に点52まで円弧移動させた後、先端23からワイヤを繰り出しながら点53まで上昇移動させる最初の円弧上昇工程61を行う。次に、点53から第2方向に向かって先端23を円弧状に点54まで円弧移動させた後、先端23からワイヤを繰り出しながら点55まで上昇移動させる二回目の円弧上昇工程62を行う。更に、点55から第2方向に向かって先端23を円弧状に点56まで円弧移動させた後、先端23からワイヤを繰り出しながら点57まで上昇させる三回目の円弧上昇工程63を行う(円弧上昇工程)。
【0030】
制御部は、3回の円弧上昇工程61〜63により、先端23を点51から点57まで、第2方向に向かって距離L3だけ移動させると共に、高さH2だけ上昇させる。ここで、距離L3は、ワイヤループ30の高さD2の50〜70%の距離であり、高さH2は、ワイヤループ30の高さD2の20〜40%の距離である。なお、距離L3のワイヤループ30の高さD2に対する比率は、具体的には、50%、55%、60%、65%、70%であり、これらの比率のいずれか2つの範囲内であってもよい。また、高さH2のワイヤループ30の高さD2に対する比率は、具体的には、20%、25%、30%、35%、40%であり、これらの比率のいずれか2つの範囲内であってもよい。この3回の円弧上昇工程61〜63は、先に
図3を参照して説明したように、ワイヤループ30が第2方向或いは第1方向に傾いたり、
図4を参照して説明したようにワイヤループ30の形状が外側に膨らんだりすることを抑制する。
【0031】
なお、本実施形態では、制御部は、3回の円弧上昇工程61〜63を行うこととして説明したが、1回或いは2回の円弧上昇工程で先端23を点51から点57まで、第2方向に向かって距離L3だけ移動させると共に、高さH2だけ上昇させるようにしてもよい。また、制御部は、4回以上の円弧上昇工程によって先端23を第2方向に距離L3、高さH2だけ上昇させるようにしてもよい。
【0032】
次に、制御部は、点57から点58まで先端23を第1方向に距離(L3+L4)だけ円弧上に移動させる(円弧移動工程)。ここで、距離(L3+L4)は、ワイヤループ30の高さD2の110〜130%の距離である。この動作は、
図1に示すワイヤループ30の頂部32の曲げ半径を規定するものであり、距離(L3+L4)が長くなると頂部32の曲げ半径が小さくなり、距離(L3+L4)が短くなると頂部32の曲げ半径が大きくなる。なお、点58は、ワイヤループ30の頂部32となる。
【0033】
次に、制御部は、点58から点59まで、先端23からワイヤを繰り出しながら先端23を高さH3だけ上昇させる(第2上昇工程)。この高さH3は、ワイヤループ30の高さD2の100〜120%の距離である。なお、高さH3のワイヤループ30の高さD2に対する比率は、具体的には、100%、105%、110%、115%、120%であり、これらの比率のいずれか2つの範囲内であってもよい。また、点59の基板10の表面からの高さH4は、ワイヤループ30の高さD2の160〜210%である。この高さH4は、第2高さである。その後、点59から第2位置14まで先端23を円弧状にルーピングさせて(ルーピング工程)、第2位置14にワイヤをボンディングし、第2接合部17を形成する。
【0034】
以上説明したような方法によってボンディングを行うことにより、角度φ1及び角度φ2を角度φ0よりも小さくすることが可能になる。そのため、ボンディング時にキャピラリ20がワイヤループ30に接触することを抑制できる。よって、高さの高いワイヤループ30を安定して形成することができる。
【0035】
次に、
図6を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。
図1〜5を参照して説明したと同様の部分には、同様の符号を付して説明は省略する。先に説明した実施形態では、
図1に示すような角度φ1と角度φ2とが略等しい二等辺三角形に近いワイヤループ30を形成することとして説明したが、円弧上昇工程61〜63による第1方向への距離L3、高さH2を大きくすることにより、第1傾斜部31にキンク35を形成してもよい。キンク35により、ワイヤループ30の形状を安定したものとすることができる。
【0036】
さらに、点57から点58への移動距離(L3+L4)を大きくすることによって頂部32の曲げ半径を小さくし、
図6に示すように、頂部32が尖ったワイヤループ30とし、第2傾斜部33の仮想垂線15に対する角度φ5が先に
図1を参照して説明した第2傾斜部33の角度φ2よりも大きくなるようにしてもよい。この場合、角度φ5は、先に
図1,2を参照して説明した実施形態よりも根元部21の角度φ0との差が大きく、よりワイヤループ30の第2傾斜部33との接触が起こらない。
【0037】
図6に一点鎖線で示すキャピラリ20は、ワイヤループ30の形成を開始する際のキャピラリ20を示している。この時、キャピラリ20は、ワイヤループ30を含む垂直面に位置している。
図6に示すように、この状態でも一点鎖線で示すキャピラリ20の根元部21の表面と第1傾斜部31との間には隙間が開いている。ピッチPだけ離れた位置にあるボンディングの終了した隣接するワイヤループ30の第1傾斜部31と
図6に一点鎖線で示すキャピラリ20の根元部21の表面とは、
図6に示す場合より離れていることから、ワイヤループ30のボンディングを開始する際に、キャピラリ20が隣接するボンディングの終了した実線で示すワイヤループ30と接触することはない。
【0038】
本実施の形態によれば、角度φ2をより大きくすることが可能になる。そのため、ボンディング終了時にキャピラリ20の表面がボンディングしたワイヤループ30に接触することを抑制できる。また、キンク35を設けることにより、ボンディング開始時に隣接するボンディングの終了したワイヤループ30にキャピラリ20の表面が接触することをより効果的に抑制することができる。従って、高さの高いワイヤループ30の形状をより安定して形成することができる。