特許第6437672号(P6437672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6437672構成部品に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437672
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】構成部品に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/12 20060101AFI20181203BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   G01L5/12
   G01L5/00 103D
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-558545(P2017-558545)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公表番号】特表2018-515775(P2018-515775A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2016054633
(87)【国際公開番号】WO2016180554
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】15167181.5
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517298149
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・クリー
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ヘンゼル
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 特表平05−501765(JP,A)
【文献】 特開平04−228299(JP,A)
【文献】 実開昭57−171550(JP,U)
【文献】 特開平02−160199(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/034712(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3128065(JP,U)
【文献】 特開平04−273032(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0338463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00,5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部材(7)に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法であって、
前記構成部材(7)が、所定位置に固定されており、前記アキシアル方向引張力が、引張装置(1)によって、前記構成部材(7)の自由端から前記構成部材(7)に作用し、前記引張装置(1)が、引張本体(2)を含んでおり、前記引張本体(2)が、中央においてアキシアル方向に延在する主ネジ付ボア(3)と、前記主ネジ付ボア(3)の周囲に沿って等間隔で配置されている複数の補助ネジ付ボア(4)とを有しており、前記引張本体(2)が、前記補助ネジ付ボア(4)に螺入されている引張ボルト(5)をさらに含んでおり、前記引張本体(2)が、前記構成部材(7)の前記自由端に螺合されており、前記引張ボルト(5)が、静止固定部に対して静止且つ当接した状態で締め付けられており、
前記構成部材(7)に作用している前記アキシアル方向引張力が決定される、前記方法において、
前記引張本体(2)のアキシアル方向(Z)に対して横方向における前記引張本体(2)の変形が検出され、
前記構成部材(7)に作用している前記アキシアル方向引張力が、前記引張本体(2)の変形から決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記引張本体(2)の変形が、前記引張本体(2)の少なくとも1つの所定のアキシアル方向位置において決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変形が、前記構成部材(7)の前記静止固定部に向かって面している前記引張本体(2)のアキシアル方向端部領域のアキシアル方向位置において決定されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記引張本体(2)の外周の変形が検出されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記引張本体(2)の変形が、前記引張本体(2)に設けられているか又は前記引張本体(2)に配置されている歪ゲージ(10)によって検出されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記引張本体(2)の変形が、前記引張本体(2)の外周に沿って延在している歪ゲージ(10)によって検出されることを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記引張本体(2)の外周の変形が検出され、
調整可能とされる直径を有している計測リング(11)であって、歪ゲージ(10)が前記計測リング(11)の外周に沿って設けられている、前記計測リング(11)が、所定のアキシアル方向位置において前記引張本体(2)を締め付けており、前記歪ゲージ(10)の変形の値が記録され、基準値と比較されることを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記歪ゲージ(10)がスパッタリングされている前記計測リング(11)が利用されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記引張本体(2)の外周の変形が検出され、マイクロメータ方式ネジゲージによって調整可能とされる直径を有している計測リングであって、長さスケールを有している前記計測リングが、所定のアキシアル方向位置において前記引張本体(2)を締め付けており、長さの値が読み取られ、基準値と比較されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記引張本体(2)の外周の変形が検出され、
前記計測リング(11)が、前記構成部材(7)の前記自由端に向かって面している前記引張本体(2)のアキシアル方向端部領域においてアキシアル方向基準位置で前記引張本体(2)を締め付けており、
長さの値が、前記アキシアル方向基準位置において前記計測リングの目盛りで読まれるか、又は、歪ゲージ(10)の変形についての値が、前記アキシアル方向基準位置において記録され、
前記アキシアル方向基準位置において読まれた前記長さの値が、長さ基準値として格納されるか、又は、前記アキシアル方向基準位置において記録された変形についての値が、変形基準値として格納され、
前記計測リング(11)が、取り外され、前記構成部材(7)の前記静止固定部に向かって滑動され、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において前記引張本体(2)を締め付け、
長さの値が、少なくとも1つの前記アキシアル方向計測位置において前記計測リングの目盛りで読まれるか、又は、前記歪ゲージ(10)の変形についての値が、少なくとも1つの前記アキシアル方向計測位置において記録され、
前記アキシアル方向基準位置における前記長さの値と少なくとも1つの前記アキシアル方向計測位置における前記長さの値との差、又は、前記アキシアル方向基準位置における前記歪ゲージ(10)の変形についての値と少なくとも1つの前記アキシアル方向計測位置における前記歪ゲージ(10)の変形についての値との差が決定されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記計測リング(11)が、前記構成部材(7)の前記静止固定部に向かって面している前記引張本体(2)のアキシアル方向端部領域に位置する、少なくとも1つの前記アキシアル方向計測位置において前記引張本体(2)に螺合されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記主ネジ付ボア(3)が延在しているシリンダー軸線に沿って略シリンドリカル状の形状を有している前記引張装置(1)が、利用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記引張本体(2)を備えている前記引張装置(1)が利用され、前記補助ネジ付ボア(4)が、前記引張本体(2)を貫通してアキシアル方向に又は略アキシアル方向に延在していることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部材に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法であって、構成部材が、所定位置に固定されており、アキシアル方向引張力が、引張装置によって、構成部材の自由端から構成部材に作用され、引張装置が、引張本体を含んでおり、引張本体が、中央においてアキシアル方向に延在する主ネジ付ボアと、主ネジ付ボアの周囲に沿って等間隔で配置されている複数の補助ネジ付ボアとを有しており、補助ネジ付ボアに螺入されている引張ボルトをさらに含んでおり、引張本体が、構成部材の自由端に螺合されており、引張ボルトが、静止固定部に対して静止且つ当接した状態で締め付けられており、構成部材に作用しているアキシアル方向引張力が決定される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な領域の用途において、構成部材に作用する力を決定することについてニーズが存在する。アキシアル方向において構成部材に作用する力については、主に軸、シャフト、又はボルトの形態をした構成部材の場合には、特に関心が高い。
【0003】
例えば力の作用に起因するアキシアル方向における当該構成部材の変形が計測の実施によって検出されることによって、構成部材に作用するアキシアル方向力を決定することができる。アキシアル方向力を決定するために、一般に、複数の計測センサが利用される。これら計測センサは、アキシアル方向において構成部材に沿って互いから離隔配置されており、構成部材のアキシアル方向における伸縮を計測するために利用される。この場合には、構成部材の代表点が常時アクセス可能とされる訳ではないという問題が存在する。従って、複数の計測センサを様々なアキシアル方向位置に位置決めすることは幾分困難である。
【0004】
本発明の目的は、これら欠点を解消することである。特許文献1は、例えば、互いに対してラジアル方向にオフセットされた接触面に接触した状態で計測本体の両端を介して載置されている環状の計測本体にアキシアル方向力を作用させることによって、軸又はシャフトに作用するアキシアル方向力を計測するための方法を開示している。結果として、環状の計測本体は、歪ゲージを介して計測される曲げ変形を受ける。アキシアル方向力は、環状の計測本体の検出された変形から推定される。
【0005】
既知の方法は、特に小さいアキシアル方向力を計測するのに効果的であることが証明されている。しかしながら、数メガニュートン又はそれ以上のアキシアル方向力を計測することについてもニーズが存在する。
【0006】
比較的大きい力を計測することは、例えばガスタービンシステムの場合に関心ごとである。アキシアル方向においてロータディスクを互いに対して締め付けるためのタイボルト7の場合には、故障時であっても主にトルク伝達及び機械的一体性を確保するために、タイボルト7の正しい張力が耐用寿命に亘って調整される必要がある。
【0007】
新しいシステムの最初のスタートアップの際に、タイボルト7の張力は、既知の力を利用した規定の液圧式伸長装置によって、タイボルト7の弾性的な伸長を介して実現されている。ガスタービンの耐用寿命に亘ってタイボルト7の張力を監視することが望ましい。
【0008】
具体的には、ガスタービンのロータディスクを懸架しているタイボルトは、タイボルトの一方の端部において所定位置に固定されており、アキシアル方向力は、タイボルトの自由端からタイボルトに作用する。例えば従来技術に基づくナットが、タイボルトの自由端に設けられた雄ネジ部に螺入され、タイボルトの静止固定部に対して静止且つ当接した状態で締め付けられているからである。非特許文献1は、タイボルトを具備するガスタービンシステムを開示している。
【0009】
従来技術に基づくナットの場合には、当該ナットを締め付けるために必要とされるトルクが、ナットのサイズが大きくなるに従って大きくなるので、比較的大きいナットを必要とする部材を引っ張るために、とりわけ、ガスタービンシステムのタイボルトを引っ張るために、従来技術に基づく引張装置の代わりに改良された引張装置が利用される場合がある。引張装置は、アキシアル方向を中心とする主ネジ付ボアと主ネジ付ボアの周囲に沿って等間隔で配置されている補助ネジ付ボアとを有している略シリンドリカル状の引張本体と、補助ネジ付ボアに螺入されている複数のタイボルトとを備えている。構成部品に負荷を作用させるために、引張本体は当該構成部品の自由端に螺合されている。しかしながら、負荷を作用させるために、引張本体はさらに回転されないが、引張ボルトは構成部品の静止固定部に対して静止且つ当接した状態で締め付けられている。
【0010】
大きい直径を有しているボルト継手では、このような引張装置は、大きいプリロードを吸収し、当該プリロードを引張ボルトに分配することができる。このような引張装置の一の実施例が特許文献2に開示されている。また、複数の引張ボルトを具備する引張装置がMJT(マルチジャックボルト・テンショナー)として知られている。
【0011】
複数の引張ボルトを具備する引張装置を介して構成部材に伝達されるプリロードを決定するために、引張ボルトそれぞれに内在するプリロードを決定し個々の値を合算することによって、最終的なプリロードを得ることが知られている。引張ボルトそれぞれに作用するプリロードは、負荷状態及び無負荷状態におけるボルト長さを示差測定することによって決定可能とされる。超音波信号が−ボルト頭それぞれに設けられたセンサによって−特定のボルトに発信され、ボルトの下側端部において反射され、当該センサによって再び捕捉される。長さの変化は超音波信号の通過時間の差から決定され、プリロードは当該長さの変化から決定される。
【0012】
プリロードを決定するための既知の方法の利点は、引張ボルトそれぞれが別体のセンサを装着する必要があるので、特別な機能を確保することができることである。このことは、比較的大きい労力を要求すると共に比較的コスト高となる。さらに、複数の計測が個別に実施された後に個別の値が合算される当該手法の精度は常に満足できるとは限らない。
【0013】
特許文献3は、磁場センサを利用してボルトの引張力を決定するための計測装置を開示している。ボルトの引張力を決定するために、磁場センサがボルトのボルト頭の側面に取り付けられている。磁場の変化は、ボルトの引張力に基づいて決定可能とされる。従って、ボルトの引張力は、決定された計測値に基づいて決定可能とされる。
【0014】
従前の方法が、ボルトの引張力を決定するための簡便な手法を提供するが、幾つかの外乱変数は、−一般にガスタービンのロータに当て嵌まるが、特に複雑な形状の場合に−計測結果に計り知れない影響を及ぼし得る。
【0015】
特許文献4は、歪ゲージを具備するリングが取り付けられたシャフトに作用する引張力を決定するためのさらなる他の計測方法を開示している。プロペラの駆動シャフトの場合には、最終的にはシャフトの周方向において捩じれが発生するが、当該捩じれは歪ゲージによって決定可能とされる。
【0016】
上述の計測装置は、対象とされる用途において問題を有している。緊張状態にある領域内おいて直接計測する必要があるからである。当該領域は、ガスタービンのロータのタイロッドの場合にはアクセスすることができない。さらに、上述の方法は、信頼性の高い捩じれの決定を実現することができるにすぎない。
【0017】
上述の先行技術から進んで、本発明によって処置される一の問題は、構成部材に伝達されるアキシアル方向力の特に簡便でコスト効果に優れ且つ確実な決定を可能とするように、冒頭で言及したタイプの方法を改善するという問題である。この場合には、当該方法によって、例えば数メガニュートンの大きさとされる特に比較的大きい力を決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】独国特許出願公開第10206679号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第69937246号明細書
【特許文献3】特開昭57−161526号
【特許文献4】米国特許出願公開第4246780号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】“Stationaere Gasturbinen”, 著者Ch. Lechner及びJ. Seume, Springer-Verlag 2003, ISBN 3-540-42831-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
当該問題を解決するために、本発明は、引張本体のアキシアル方向に対して横方向における引張本体の変形が検出されること、及び、構成部材に作用しているアキシアル方向引張力が引張本体の変形から決定されることを特徴とする、冒頭で言及したタイプの方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
引張本体を含むと共に複数の引張ボルトが螺入されている引張装置の場合には、アキシアル方向において力が作用した結果として、アキシアル方向に対する横方向における引張本体の変形が発生する。アキシアル方向負荷が作用する場合には、引張本体は、とりわけ捩じりに起因する外方に向けられた変形を受ける。当該変形は、引張本体に作用する合力を表わす。本発明では、横方向における引張本体のこのような変形が検出され、当該変形に基づいて、構成部品に伝達されるアキシアル方向引張力が決定される。
【0022】
本発明における横方向の変形についての考察は、従来技術から知られている計測と比較して測定変数が引張ボルトそれぞれについて比較的大きく変化するという利点、及び、比較的高い計測制度を実現することができるという利点を提供する。引張本体の外径は、例えば最大0.2%〜0.3%膨張するが、この変化は容易に計測可能である。
【0023】
引張本体の弾性挙動と引張本体の幾何学的形状とは著しくは経年劣化しないので、本発明における方法は、比較的長期間、特に数年の間構成部品に作用するアキシアル方向引張力について信頼性のある値を計測するのに理想的に適している。
【0024】
本発明における方法を利用することによって、特に引張ボルトそれぞれの負荷が相違することに起因して引張本体の変形が引張本体の周囲に沿って一様でない場合であっても、アキシアル方向力の合力を表わす引張本体の中程度の変形が検出可能とされる。
【0025】
本発明における方法を実施するために、構成部品の周方向に沿って当該構成部品にアクセス可能とされることをさらに必要とする訳ではない。引張力を決定するために引張装置の引張本体のみにアクセス可能であれば良いからである。本発明における方法が、ガスタービンシステムのタイボルトの引張力を決定するために利用される場合には、特にロータを取り外す必要はない。
【0026】
同時に、本発明における方法は、比較的簡単に実施可能とされ、低コストである。従来技術と比較して、引張装置の引張ボルトそれぞれが特別な装備を有していることを必要としない。
【0027】
横方向における引張装置の引張本体の変形が、例えば歪ゲージのような歪センサを利用することによって計測可能とされる。他の手法、例えば所定のアキシアル方向位置における引張本体の外周の長さの単なる計測も実施可能である。
【0028】
本発明において検出される引張本体の変形に基づいて、構成部品に作用するアキシアル方向力を決定するために、既知の力の条件下において記録された較正曲線を利用することができる。当該較正曲線は、対応するアキシアル方向引張力を、所定の変形についての値に、例えば引張本体の外径の大きさの変化についての値や歪ゲージの抵抗値の変化についての値に割り当てている。原理上、数学的モデルを利用することによって、引張本体の変形と作用する引張力との相関関係を決定又はシミュレーションすることができる。
【0029】
本発明における方法の一の実施例では、引張本体の変形が、引張本体の少なくとも1つの所定のアキシアル方向位置において検出される。
【0030】
特に、当該変形は、構成部品が静止固定されている方向に面している引張本体のアキシアル方向端部領域のアキシアル方向位置において検出される。
【0031】
当該変形は、引張本体のアキシアル方向端部領域でアキシアル方向に対する横方向において適切に検出可能とされる。アキシアル方向に対して横方向の変形は、引張本体のアキシアル方向端部領域において最も誇張されている。
【0032】
本発明における方法の一の優位な実施例では、引張本体の外周の変形が検出される。略理想的な単軸のラジアル方向の膨張が、引張本体の外周の領域において発生するので、当該領域は、本発明における方法についての考察に特に適している。歪ゲージが変形の検出のために利用される場合には、交差感度、すなわち、引張本体の外径についての周方向における計測方向に対して横方向の感度が発生せず、計測値の信頼性が特に高い。原則として多軸応力状態が発生するが、引張本体の内周の変形も検出可能とされる。
【0033】
引張本体の変形が、例えば引張本体に配設又は設置されている歪センサ、特に歪ゲージに補助されて、検出可能とされる。
【0034】
この場合には、特に引張本体の変形が、引張本体の外周に沿って、具体的には引張本体の外周全体に沿って延在している歪ゲージによって検出される。歪センサは、例えば引張本体の外周に沿って環状面の全体に亘って延在している。歪センサが引張本体の外周全体に沿って延在している場合には、特に優位であえる。
【0035】
歪ゲージは、引張本体の上に配設されているか、又は引張本体に直接設けられている。一の優位な実施例では、歪ゲージは、引張本体に設けられており、歪ゲージは、引張本体に直接スパッタリングされている。スパッタリングは、歪ゲージを引張本体に固定するために接着剤を利用する必要がないという利点を有している。接着剤は、比較的長い期間が経過すると保持力を失う場合がある。
【0036】
本発明における方法の技術的範囲内で利用される歪ゲージとしては、例えばNiCr、SiO2が付着されたNi−DLCやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が挙げられる。
【0037】
本発明における方法のさらなる他の実施例は、引張本体の外周の変形が検出され、調整可能とされる直径を有している計測リングであって、歪ゲージが計測リングの外周に沿って設けられている、計測リングが、所定のアキシアル方向位置において引張本体を締め付けており、歪ゲージの変形の値が記録され、特に基準値と比較されることを特徴とする。
【0038】
一の優位な実施例では、歪ゲージが、計測リングの周全体の周りに延在している。計測リングの場合も同様に、接着剤を利用した場合における不利益を回避するために、歪ゲージが計測リングにスパッタリングされている。
【0039】
歪ゲージを具備する計測リングの利用の代替として、引張本体の外周の変形が検出され、マイクロメータ方式ネジゲージによって調整可能とされる直径を有している計測リングであって、長さスケールを有している計測リングが、所定のアキシアル方向位置において引張本体を締め付けており、長さの値が読み取られ、特に参照値と比較される。
【0040】
引張本体の変形を計測するための、計測リングすなわち引張本体から独立した他の構成部品の利用は、引張本体が装備を全く必要としないという利点を提供する。本発明における方法は、計測リングによって、既存の引張装置において特に容易な方法で実施可能とされる。
【0041】
計測リングは、特に高い信頼性を有する計測値を得るために、所定の接線方向応力によって引張本体を締め付けている。
【0042】
優位には、計測リングは、引張本体に締め付けられるように、引張要素を、例えば引張バネやボルトを備えている。優位には、計測リングは、開いたリングとして構成されており、計測リングの端部は、計測リングの直径を変化させると共に計測リングを引張装置の引張本体に固定するために、引張要素によって、互いに向かって又は互いから離隔するように移動可能とされる。
【0043】
計測リングは、テフロン(登録商標)、カプトン膜(登録商標)、又はノメックス膜(登録商標)から作られている。
【0044】
本発明における方法の一の改善例では、引張本体の外周の変形が検出され、
− 計測リングが、構成部材の自由端に向かって面している引張本体のアキシアル方向端部領域において所定のアキシアル方向基準位置で引張本体を締め付けており、
− 長さの値が、アキシアル方向基準位置において計測リングの目盛りで読まれるか、又は、歪ゲージの変形についての値が、アキシアル方向基準位置において記録され、
− アキシアル方向基準位置において読まれた長さの値が、長さ基準値として格納されるか、又は、アキシアル方向基準位置において記録された変形についての値が、変形基準値として格納され、
− 計測リングが、取り外され、構成部材の静止固定部に向かって滑動され、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において引張本体を締め付け、
− 長さの値が、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において計測リングの目盛りで読まれるか、又は、歪ゲージの変形についての値が、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において記録され、
− アキシアル方向基準位置における長さの値と少なくとも1つのアキシアル方向計測位置における長さの値との差、又は、アキシアル方向基準位置における歪ゲージの変形についての値と少なくとも1つのアキシアル方向計測位置における歪ゲージの変形についての値との差が決定される。
【0045】
当該実施例では、引張本体の変形が検出可能とされ、例えば計測リングが、構成部品の静止固定部の反対側に面している引張本体の端部領域において一旦引張本体に固定され、このアキシアル方向位置が基準位置とみなされる。この地点における歪ゲージの変形すなわち当該アキシアル方向位置における計測リングから読み取られた長さの値が、基準値として、特にゼロ値として選択される。引張本体の変形は、当該地点において最も小さいか、又は全くないからである。この場合には、優位には、構成部品の自由端に面している引張本体の端面に最も近接して配置されているアキシアル方向位置が、最小の変形量を基準値として有している位置を利用するために選定される。
【0046】
その後に、計測リングが取り外され、構成部品の静止固定部に向かってアキシアル方向に滑動され、構成部品の静止固定部に近接した他のアキシアル方向位置において再び引張本体に固定され、このアキシアル方向計測位置において歪ゲージの変形が検出されるか、又は長さの値が計測される。この場合には、変形すなわち長さの値が、唯一のアキシアル方向計測位置において検出可能若しくは計測可能とされるか、又は複数のアキシアル方向計測位置において検出可能若しくは計測可能とされる。計測位置において記録された値と基準値とが比較されるか、又は隣り合う計測位置において記録された値が互いに比較される。
【0047】
歪ゲージの抵抗値が、既知の方法によって、歪ゲージの変形についての値として検出される。
【0048】
本発明における方法の一の改善例では、計測リングが、構成部材の静止固定部に向かって面している引張本体のアキシアル方向端部領域に位置する、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において引張本体に螺合されている。
【0049】
特に唯一の基準値がアキシアル方向基準位置に記録されており、且つ、一の計測値がアキシアル方向計測位置で記録されている場合については、一のアキシアル方向計測位置は、優位には、アキシアル方向に対する横方向における変形が最大となる構成部品の静止固定部に面している引張本体の端部に最も近接している。値が複数のアキシアル方向計測位置で記録されている場合には、一の優位な実施例では、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置が当該端部に最も近接している。
【0050】
静止固定部に面している引張本体の端部に近接している適切なアキシアル方向位置は、例えば引張本体の当該端部から、アキシアル方向において1ミリメートル〜数ミリメートルの距離で離隔している。
【0051】
本発明では、主ネジ付ボアが延在しているシリンダー軸線に沿って略シリンドリカル状の形状を有している引張装置が利用される。この形状は、引張本体に対して効果的である。
【0052】
さらなる他の実施例は、引張本体を備えている引張装置が利用され、補助ネジ付ボアが、引張本体を貫通してアキシアル方向に又は略アキシアル方向に延在していることを特徴とする。
【0053】
最後に、ガスタービンのタイボルトに作用するアキシアル方向力が決定され、アキシアル方向におけるタイボルトの機械適応力が特にタイボルトに作用するアキシアル方向力に基づいて計算される。本発明における方法は、例えばガスタービンのタイボルトに作用するアキシアル方向引張力を決定するために実施可能とされる。このことは、特にガスタービンシステムの中央に配置されたタイボルトに当て嵌まる。
【0054】
原理上、本発明における方法は、引張本体と複数の引張ボルトとを備えている引張装置によってアキシアル方向引張力が作用される任意のタイプの構成部品のために利用可能とされる。従来技術に基づくナットを、引張本体と複数の引張ボルトとを備えている引張装置に置き換えることができるので、本発明は、従来技術に基づくナットが構成部品にアキシアル方向引張力を作用させるすべての分野に適用可能とされる。例えば、−引張本体と複数の引張ボルトとを備えている引張装置と共にフランジを圧縮する−ボルトに作用するアキシアル方向力は、本発明によって決定可能とされる。
【0055】
本発明のさらなる特徴及び利点については、本発明における方法の一の実施例についての以下の説明から、添付図面を参照して明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】引張本体及び複数の引張ボルトを具備する、無負荷状態における引張装置の概略的な断面図である。
図2図1に表わす引張装置の引張本体の外面図である。
図3図2に表わす引張本体の上面図である。
図4図1に表わす引張装置によってアキシアル方向に負荷が作用しているガスタービンシステムの中央のタイボルトの概略的な断面図である。
図5図4に表わす負荷状態の引張本体の概略的な断面図である。
図6】引張ボルトを介して高く一様に力が作用している負荷状態における、図4に表わす引張本体の概略的な断面図である。
図7】歪ゲージがボルトの外周に沿って設けられた状態における、ボルトを具備する計測リングの一の実施例の概略図である。
図8】歪ゲージが引張バネの外周に沿って設けられた状態における、引張バネを具備する計測リングのさらなる他の実施例の概略図である。
図9】本発明における、構成部品に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法の一の実施例の方法ステップを表わす。
図10】本発明における、構成部品に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法の一の実施例の方法ステップを表わす。
図11】本発明における、構成部品に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法の一の実施例の方法ステップを表わす。
図12】本発明における、構成部品に作用するアキシアル方向引張力を決定するための方法の一の実施例の方法ステップを表わす。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、シリンダー状の引張本体2を備えている引張装置1を表わす。引張本体2は、中心軸線上に位置する主ネジ付ボア3と、ネジ付主ボア3の周囲に沿って等間隔で配置されている複数の補助ボア4とを備えている。ネジ付主ボア3は、シリンダー状の引張本体2を貫通して、引張本体2のシリンダー軸線Zに沿って延在している。主ネジ付ボア3の直径は、補助ネジ付ボア4の直径より実質的に大きい。具体的には、主ネジ付ボア3の直径は、補助ネジ付ボア4の直径の4倍より大きい。
【0058】
図1に表わす引張装置1の引張本体2の外観を表わす図2及び図3から明らかなように、図示の典型的な実施例では、中央の主ネジ付ボア3の周りに等間隔で配置されている合計で9つのアキシアル方向の補助ネジ付ボア4が引張本体2に設けられている。
【0059】
引張ボルト5は、補助ネジ付ボア4それぞれに螺入されており、アキシアル方向における両側面において引張本体2から突出している。ボルト頭部6は、図1における上方に向いている引張ボルト5それぞれの端部に設けられている。ボルト頭部6によって、引張ボルト5を螺合又は螺合解除するための図示しない適切なツールを既知の方法で適応させることができる。
【0060】
引張装置1の引張本体2は、図示しないガスタービンシステムの−図1に部分的にのみ表わす−中央タイボルト7の自由端に設けられている雄ネジ部7aに螺合されている。中央タイボルト7と中央タイボルト7に螺合されている引張本体2とは、図4に概略的にあらわされている。
【0061】
タイボルト7が、ガスタービンシステムの前方の中空シャフト8に螺入されるので、中央のタイボルト7は、図4における下方に向いている端部において所定位置に固定されている。図4に表わさない複数のロータディスクが、既知の方法でタイボルト7に向かって滑動している。図4は、すべてのロータディスクと後方中空シャフトとを含むロータドラムTの単なる概略図である。ロータディスクは、タイボルト7によって互いに対して平行とされる状態で保持されており、引張装置1によって互いに対して押圧されている。このために、引張装置1の引張ボルト5は、タイボルト7が中空シャフト8に静止状態で固定されている方向において、特に硬質材料から作られている圧力ディスク9に対して締め付けられており、図1のみに表わす圧力ディスク9は、引張本体2とロータディスクとの間に配置されており、静止当接部として機能する。引張ボルト5が引張本体2の補助ネジ付ボア4に螺入された結果として、静止当接部として機能している圧力と締め付けに螺合されている引張本体2との間における距離が大きくなるので、結果として、アキシアル方向の引張力がタイボルト7に伝播する。
【0062】
ガスタービンシステムの安全な動作を確保するために、中央タイボルト7に伝播したアキシアル方向の引張力を規定値とするべきである。タイボルト7に伝播したアキシアル方向の引張力は、ガスタービンシステムの初始動の前に所定値に調整可能とされる。ガスタービンシステムの耐用寿命に亘ってタイボルトの張力を監視することが望ましい。本発明における方法の一の実施例は、タイボルト7に伝播したアキシアル方向の引張力を決定するために実施される。
【0063】
本発明では、アキシアル方向に対して横方向における引張装置1の引張本体2の変形が検出され、タイボルト7に伝播したアキシアル方向の引張力が、横方向における引張本体2の変形に基づいて決定される。
【0064】
負荷状態では、引張本体2は、引張本体2に作用するアキシアル方向力に起因して、アキシアル方向に対して横方向の変形を、具体的には捩じり変形を受ける。このようなアキシアル方向すなわちZ方向に対して横方向の変形は、補助ネジ付ボア4及び引張ボルト5を省略して単純化された図4から、引張本体2の断面図である図5に表わされる。横方向の変形は、図解を目的として、図5において特に強調して表わされている。対応する矢印を以って図4に概略的に示すように、アキシアル方向の力によって、引張本体2がアキシアル方向に対して横方向に変形する。
【0065】
図示の実施例では、シリンダー軸線Zに対して横方向における引張本体2の変形を計測するために、歪ゲージ10が引張本体2に設けられている。具体的には、歪ゲージ10は−図2及び図3から明らかなように−引張本体2の外周全体に沿って環状表面に亘って、実際には、タイボルト7が中空シャフト8に静的に固定されている箇所に面している引張本体2のアキシアル方向端部の領域において延在している。歪ゲージ10は、引張本体2にスパッタリングされている。
【0066】
引張本体2が図5に表わす状態に変形されることに起因して、歪ゲージ10は、−既知の方法で−引張本体2が捩じられていない無負荷状態における抵抗とは異なる抵抗を有することになる。このような抵抗の変化は、一定の引張本体2の変形を示している。図示の典型的な実施例では、既知のアキシアル方向の力の値について事前に記録された較正曲線を利用することによって、実際の力についての値が、計測された変形すなわち歪ゲージ10の記録された抵抗値に割り付けられる。アキシアル方向の力についての抵抗値及び変形量は、既知の方法で、歪ゲージ10に接続されている−図示しない−計測評価ユニットにおいて記録される。
【0067】
本発明では、任意の時点におけるアキシアル方向の力が、歪ゲージ10によって決定される。引張本体2には、容易にアクセス可能とされる。本発明における方法を実施するために、ガスタービンのロータを取り外す必要はない。
【0068】
引張本体2の弾性挙動及び幾何学的変形は、実際には著しい経年劣化を受けないので、長年、特にガスタービンシステムの耐用寿命に亘り、歪ゲージ10によって信頼性が高い計測値を得ることができる。歪ゲージ10が引張本体2にスパッタリングされているので、歪ゲージ10は、比較的長い期間に亘って特に高い信頼性を以って存続し、接着剤に関連する不利益を、特に不慮に歪ゲージ10が引張本体2から脱落するという不利益を回避することができる。
【0069】
特に引張本体2の変形は、理想的には略ラジアル方向に引張本体2の外周に沿っている。歪ゲージ10の交差感度、すなわち、引張本体2の外周の周方向における意図された計測方向に対する横方向の感度による影響がほとんど発生しないので、特に高い信頼の計測値を得ることができる。
【0070】
本発明における方法は、既知の方法と比較して容易にひいては低コストで実施可能である。
【0071】
本発明における方法の更なるほかの利点は、図6に表わすように、引張本体2の外周に沿った引張本体2の変形が、引張ボルト5それぞれの負荷が異なることに起因して一様でない場合であっても、単一の歪ゲージ10のみによって、力の合計を表わす引張本体2の中程度の変形を検出可能とされることである。図6において、引張本体2の一様でない変形は、図解を目的として誇張されて表わされている。
【0072】
歪ゲージ10が直接貼り付けられている引張本体2を具備する引張装置1が利用される、上述の典型的な実施例の代替として、本発明における方法は、引張本体2とは別体の計測装置、具体的には計測リング11を利用することによって実施可能とされる。
【0073】
図7及び図8はそれぞれ、本発明における方法のために利用可能とされる計測リング11の一の実施例を表わす概略図である。計測リング11は、開いたリングとして構成されており、計測リング11の端部はそれぞれ、計測リング11の直径を調整するために、引張要素によって、互いに向かって又は互いから離隔するように移動可能とされる。さらに、計測リング11の外周全体に亘って延在している歪ゲージ10が、両方の計測リング11の外周に設けられている。2つの計測リング11それぞれが、テフロン(登録商標)から作られている。
【0074】
図7及び図8に表わす2つの計測リング11は、計測リング11を引張装置1の引張本体2の外周に複数の引張ボルト5を介して取り付けるために設けられた引張要素に関してのみ相違する。
【0075】
図7に表わす計測リング11は、引張本体2を締め付けるためのボルト12であって、開いた計測リング11の端部領域に設けられた2つの開口部を貫通して延在しているボルト12を備えているが、図8に表わす計測リング11では、−図8に両矢印によってのみ概略的に示す−引張バネ14が、開いたバネの2つの端部領域から突出している2つの突出部13の間に設けられている。
【0076】
本発明では、計測リング11は、複数の引張ボルト5を具備する引張装置1の引張本体2の変形を検出するために利用される。計測リング11は、引張本体2が歪ゲージを備えていない場合であっても、横方向における変形を検出することができる。
【0077】
計測リングを利用する本発明の一の実施例の実施について、図9図12を参照しつつ以下に説明する。
【0078】
第1のステップでは、代替的には図7に表わすボルト12又は図8に表わす引張バネ14を具備する場合がある計測リング11が、外部から引張本体2に載置され(図9参照)、タイボルト7のアキシアル方向端部領域のアキシアル方向基準位置において引張本体2を締め付ける(図10及び図11参照)。タイボルト7は、図9図12には図示しない。図4及び図5の場合と同様に、図9図12には図示しないタイボルト7の自由端は上方に向いている。図示の典型的な実施例では、アキシアル方向基準位置が、図1から明らかなように、引張本体2の上方に向いた端部に直接位置している。
【0079】
計測リング11を引張本体2に締め付けるための手順について、図11に矢印を利用して概略的に示す。
【0080】
図7に表わす計測リング11が利用される場合には、単にボルト12をさらに回転させることによって、計測リング11が外部から引張本体2に締め付けられるので、開いた計測リング11の2つの端部領域が互いに向かってさらに移動され、これにより計測リング11の直径が小さくなる。
【0081】
図8に表わす計測リング11を利用することによって、引張バネ14が必然的に圧縮されるので、計測リング11の直径が大きくなると共に、計測リング11が引張本体2に関するアキシアル方向基準位置に位置決めされる。計測リング11がアキシアル方向基準位置に配置されている場合には、引張バネ14が解放され、これにより、2つの突出部13が離隔されるように押圧され、その結果として、計測リング11の直径が小さくなり、引張本体2を締め付ける。
【0082】
好ましくは、計測リング11が、特に高い信頼性を有する計測値を得るために、所定の接線方向応力によって引張本体2を締め付けている。
【0083】
計測リング11に設けられている歪ゲージ10の変形、特に歪ゲージ10の対応する抵抗値が、計測リング11の締付状態においてアキシアル方向基準位置で検出される。この値は、抵抗基準値、特にゼロ値として格納される。アキシアル方向基準位置では、変形が最小とされるか又は全く無いからである。
【0084】
計測リング11は、その後に位置に取り外され、タイボルト7が静的に固定されている箇所に向かって、すなわち図9図12において下方に滑動され、第1のアキシアル方向計測位置において引張本体2を締め付ける。第1のアキシアル方向計測位置pは、図12に破線で表わすように、計測リング11の最上位の輪郭部に配置されている。
【0085】
第1のアキシアル方向計測位置pにおいて、歪ゲージ10の変形についての値、特に抵抗値が記録され、再度格納される。
【0086】
その後に、抵抗値が記録され、図12に表わす2つ以上の更なるアキシアル方向計測位置p〜pそれぞれに格納される。
【0087】
引張本体2の変形は、抵抗値の(アキシアル方向における)増加から決定され、タイボルト7に作用するアキシアル方向引張力が、例えば上述の較正曲線を利用することによって、引張本体2の変形に基づいて決定される。
【0088】
また、引張本体2の複数のアキシアル方向位置において抵抗値を記録することの代替として、例えば図12に表わす計測リング11の位置での図9図12において下方に向いている引張本体2の端部領域の単一の計測のみを実施可能とされる。基準値、特にゼロ値が既に得られている場合には、引張本体2の変形が、計測値それぞれと基準値との比較から決定可能とされ、アキシアル方向力が、引張本体2の変形に基づいて決定可能とされる。
【0089】
また、2つの計測を、すなわち、−図9図12に表わす−引張本体2の上側端部における基準計測と−図9図12に表わす−引張本体2の下側端部における基準計測とを正確に実施可能とされる。
【0090】
計測リング11に設けられている歪ゲージ10の抵抗値を記録することと、アキシアル方向力を決定することとは、計測リング11に設けられている歪ゲージ10に接続されている−図示しない−計測評価ユニットにおいて既知の方法で実施される。
【0091】
計測リング11を利用することによって、本発明における方法は実施可能とされる。
【0092】
計測リング11のさらなる他の利点は、アキシアル方向には応力が作用しないことであり、これにより、歪ゲージ10が交差感度に起因して破損された信号を生成することが防止される。
【0093】
本発明について、好ましい典型的な実施例を介して詳細に図解及び説明をしたが、本発明は、開示された実施例によって限定される訳ではなく、本発明の保護範囲から逸脱しないことを条件として、他の変形例も実施可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 引張装置
2 引張本体
3 主ネジ付ボア
4 補助ネジ付ボア
5 引張ボルト
6 ボルト頭部
7 中央タイボルト
7a (中央タイボルト7の自由端に設けられている)雄ネジ部
9 圧力ディスク
10 歪ゲージ
11 計測リング
12 ボルト
13 突出部
14 引張バネ
T ロータドラム
Z (引張本体2の)アキシアル方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12