【課題を解決するための手段】
【0021】
引張本体を含むと共に複数の引張ボルトが螺入されている引張装置の場合には、アキシアル方向において力が作用した結果として、アキシアル方向に対する横方向における引張本体の変形が発生する。アキシアル方向負荷が作用する場合には、引張本体は、とりわけ捩じりに起因する外方に向けられた変形を受ける。当該変形は、引張本体に作用する合力を表わす。本発明では、横方向における引張本体のこのような変形が検出され、当該変形に基づいて、構成部品に伝達されるアキシアル方向引張力が決定される。
【0022】
本発明における横方向の変形についての考察は、従来技術から知られている計測と比較して測定変数が引張ボルトそれぞれについて比較的大きく変化するという利点、及び、比較的高い計測制度を実現することができるという利点を提供する。引張本体の外径は、例えば最大0.2%〜0.3%膨張するが、この変化は容易に計測可能である。
【0023】
引張本体の弾性挙動と引張本体の幾何学的形状とは著しくは経年劣化しないので、本発明における方法は、比較的長期間、特に数年の間構成部品に作用するアキシアル方向引張力について信頼性のある値を計測するのに理想的に適している。
【0024】
本発明における方法を利用することによって、特に引張ボルトそれぞれの負荷が相違することに起因して引張本体の変形が引張本体の周囲に沿って一様でない場合であっても、アキシアル方向力の合力を表わす引張本体の中程度の変形が検出可能とされる。
【0025】
本発明における方法を実施するために、構成部品の周方向に沿って当該構成部品にアクセス可能とされることをさらに必要とする訳ではない。引張力を決定するために引張装置の引張本体のみにアクセス可能であれば良いからである。本発明における方法が、ガスタービンシステムのタイボルトの引張力を決定するために利用される場合には、特にロータを取り外す必要はない。
【0026】
同時に、本発明における方法は、比較的簡単に実施可能とされ、低コストである。従来技術と比較して、引張装置の引張ボルトそれぞれが特別な装備を有していることを必要としない。
【0027】
横方向における引張装置の引張本体の変形が、例えば歪ゲージのような歪センサを利用することによって計測可能とされる。他の手法、例えば所定のアキシアル方向位置における引張本体の外周の長さの単なる計測も実施可能である。
【0028】
本発明において検出される引張本体の変形に基づいて、構成部品に作用するアキシアル方向力を決定するために、既知の力の条件下において記録された較正曲線を利用することができる。当該較正曲線は、対応するアキシアル方向引張力を、所定の変形についての値に、例えば引張本体の外径の大きさの変化についての値や歪ゲージの抵抗値の変化についての値に割り当てている。原理上、数学的モデルを利用することによって、引張本体の変形と作用する引張力との相関関係を決定又はシミュレーションすることができる。
【0029】
本発明における方法の一の実施例では、引張本体の変形が、引張本体の少なくとも1つの所定のアキシアル方向位置において検出される。
【0030】
特に、当該変形は、構成部品が静止固定されている方向に面している引張本体のアキシアル方向端部領域のアキシアル方向位置において検出される。
【0031】
当該変形は、引張本体のアキシアル方向端部領域でアキシアル方向に対する横方向において適切に検出可能とされる。アキシアル方向に対して横方向の変形は、引張本体のアキシアル方向端部領域において最も誇張されている。
【0032】
本発明における方法の一の優位な実施例では、引張本体の外周の変形が検出される。略理想的な単軸のラジアル方向の膨張が、引張本体の外周の領域において発生するので、当該領域は、本発明における方法についての考察に特に適している。歪ゲージが変形の検出のために利用される場合には、交差感度、すなわち、引張本体の外径についての周方向における計測方向に対して横方向の感度が発生せず、計測値の信頼性が特に高い。原則として多軸応力状態が発生するが、引張本体の内周の変形も検出可能とされる。
【0033】
引張本体の変形が、例えば引張本体に配設又は設置されている歪センサ、特に歪ゲージに補助されて、検出可能とされる。
【0034】
この場合には、特に引張本体の変形が、引張本体の外周に沿って、具体的には引張本体の外周全体に沿って延在している歪ゲージによって検出される。歪センサは、例えば引張本体の外周に沿って環状面の全体に亘って延在している。歪センサが引張本体の外周全体に沿って延在している場合には、特に優位であえる。
【0035】
歪ゲージは、引張本体の上に配設されているか、又は引張本体に直接設けられている。一の優位な実施例では、歪ゲージは、引張本体に設けられており、歪ゲージは、引張本体に直接スパッタリングされている。スパッタリングは、歪ゲージを引張本体に固定するために接着剤を利用する必要がないという利点を有している。接着剤は、比較的長い期間が経過すると保持力を失う場合がある。
【0036】
本発明における方法の技術的範囲内で利用される歪ゲージとしては、例えばNiCr、SiO2が付着されたNi−DLCやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が挙げられる。
【0037】
本発明における方法のさらなる他の実施例は、引張本体の外周の変形が検出され、調整可能とされる直径を有している計測リングであって、歪ゲージが計測リングの外周に沿って設けられている、計測リングが、所定のアキシアル方向位置において引張本体を締め付けており、歪ゲージの変形の値が記録され、特に基準値と比較されることを特徴とする。
【0038】
一の優位な実施例では、歪ゲージが、計測リングの周全体の周りに延在している。計測リングの場合も同様に、接着剤を利用した場合における不利益を回避するために、歪ゲージが計測リングにスパッタリングされている。
【0039】
歪ゲージを具備する計測リングの利用の代替として、引張本体の外周の変形が検出され、マイクロメータ方式ネジゲージによって調整可能とされる直径を有している計測リングであって、長さスケールを有している計測リングが、所定のアキシアル方向位置において引張本体を締め付けており、長さの値が読み取られ、特に参照値と比較される。
【0040】
引張本体の変形を計測するための、計測リングすなわち引張本体から独立した他の構成部品の利用は、引張本体が装備を全く必要としないという利点を提供する。本発明における方法は、計測リングによって、既存の引張装置において特に容易な方法で実施可能とされる。
【0041】
計測リングは、特に高い信頼性を有する計測値を得るために、所定の接線方向応力によって引張本体を締め付けている。
【0042】
優位には、計測リングは、引張本体に締め付けられるように、引張要素を、例えば引張バネやボルトを備えている。優位には、計測リングは、開いたリングとして構成されており、計測リングの端部は、計測リングの直径を変化させると共に計測リングを引張装置の引張本体に固定するために、引張要素によって、互いに向かって又は互いから離隔するように移動可能とされる。
【0043】
計測リングは、テフロン(登録商標)、カプトン膜(登録商標)、又はノメックス膜(登録商標)から作られている。
【0044】
本発明における方法の一の改善例では、引張本体の外周の変形が検出され、
− 計測リングが、構成部材の自由端に向かって面している引張本体のアキシアル方向端部領域において所定のアキシアル方向基準位置で引張本体を締め付けており、
− 長さの値が、アキシアル方向基準位置において計測リングの目盛りで読まれるか、又は、歪ゲージの変形についての値が、アキシアル方向基準位置において記録され、
− アキシアル方向基準位置において読まれた長さの値が、長さ基準値として格納されるか、又は、アキシアル方向基準位置において記録された変形についての値が、変形基準値として格納され、
− 計測リングが、取り外され、構成部材の静止固定部に向かって滑動され、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において引張本体を締め付け、
− 長さの値が、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において計測リングの目盛りで読まれるか、又は、歪ゲージの変形についての値が、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において記録され、
− アキシアル方向基準位置における長さの値と少なくとも1つのアキシアル方向計測位置における長さの値との差、又は、アキシアル方向基準位置における歪ゲージの変形についての値と少なくとも1つのアキシアル方向計測位置における歪ゲージの変形についての値との差が決定される。
【0045】
当該実施例では、引張本体の変形が検出可能とされ、例えば計測リングが、構成部品の静止固定部の反対側に面している引張本体の端部領域において一旦引張本体に固定され、このアキシアル方向位置が基準位置とみなされる。この地点における歪ゲージの変形すなわち当該アキシアル方向位置における計測リングから読み取られた長さの値が、基準値として、特にゼロ値として選択される。引張本体の変形は、当該地点において最も小さいか、又は全くないからである。この場合には、優位には、構成部品の自由端に面している引張本体の端面に最も近接して配置されているアキシアル方向位置が、最小の変形量を基準値として有している位置を利用するために選定される。
【0046】
その後に、計測リングが取り外され、構成部品の静止固定部に向かってアキシアル方向に滑動され、構成部品の静止固定部に近接した他のアキシアル方向位置において再び引張本体に固定され、このアキシアル方向計測位置において歪ゲージの変形が検出されるか、又は長さの値が計測される。この場合には、変形すなわち長さの値が、唯一のアキシアル方向計測位置において検出可能若しくは計測可能とされるか、又は複数のアキシアル方向計測位置において検出可能若しくは計測可能とされる。計測位置において記録された値と基準値とが比較されるか、又は隣り合う計測位置において記録された値が互いに比較される。
【0047】
歪ゲージの抵抗値が、既知の方法によって、歪ゲージの変形についての値として検出される。
【0048】
本発明における方法の一の改善例では、計測リングが、構成部材の静止固定部に向かって面している引張本体のアキシアル方向端部領域に位置する、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置において引張本体に螺合されている。
【0049】
特に唯一の基準値がアキシアル方向基準位置に記録されており、且つ、一の計測値がアキシアル方向計測位置で記録されている場合については、一のアキシアル方向計測位置は、優位には、アキシアル方向に対する横方向における変形が最大となる構成部品の静止固定部に面している引張本体の端部に最も近接している。値が複数のアキシアル方向計測位置で記録されている場合には、一の優位な実施例では、少なくとも1つのアキシアル方向計測位置が当該端部に最も近接している。
【0050】
静止固定部に面している引張本体の端部に近接している適切なアキシアル方向位置は、例えば引張本体の当該端部から、アキシアル方向において1ミリメートル〜数ミリメートルの距離で離隔している。
【0051】
本発明では、主ネジ付ボアが延在しているシリンダー軸線に沿って略シリンドリカル状の形状を有している引張装置が利用される。この形状は、引張本体に対して効果的である。
【0052】
さらなる他の実施例は、引張本体を備えている引張装置が利用され、補助ネジ付ボアが、引張本体を貫通してアキシアル方向に又は略アキシアル方向に延在していることを特徴とする。
【0053】
最後に、ガスタービンのタイボルトに作用するアキシアル方向力が決定され、アキシアル方向におけるタイボルトの機械適応力が特にタイボルトに作用するアキシアル方向力に基づいて計算される。本発明における方法は、例えばガスタービンのタイボルトに作用するアキシアル方向引張力を決定するために実施可能とされる。このことは、特にガスタービンシステムの中央に配置されたタイボルトに当て嵌まる。
【0054】
原理上、本発明における方法は、引張本体と複数の引張ボルトとを備えている引張装置によってアキシアル方向引張力が作用される任意のタイプの構成部品のために利用可能とされる。従来技術に基づくナットを、引張本体と複数の引張ボルトとを備えている引張装置に置き換えることができるので、本発明は、従来技術に基づくナットが構成部品にアキシアル方向引張力を作用させるすべての分野に適用可能とされる。例えば、−引張本体と複数の引張ボルトとを備えている引張装置と共にフランジを圧縮する−ボルトに作用するアキシアル方向力は、本発明によって決定可能とされる。
【0055】
本発明のさらなる特徴及び利点については、本発明における方法の一の実施例についての以下の説明から、添付図面を参照して明らかとなる。