特許第6437750号(P6437750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437750
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】面一カバー構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 35/00 20060101AFI20181203BHJP
   B23C 3/00 20060101ALI20181203BHJP
   B23B 41/00 20060101ALI20181203BHJP
   B23C 3/26 20060101ALI20181203BHJP
   B60S 1/60 20060101ALI20181203BHJP
   B60R 19/48 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   B23B35/00
   B23C3/00
   B23B41/00 J
   B23C3/26
   B60S1/60 C
   B60R19/48 L
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-143258(P2014-143258)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-16504(P2016-16504A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】北原 晃治
(72)【発明者】
【氏名】松本 太一
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳
(72)【発明者】
【氏名】堀内 清
(72)【発明者】
【氏名】末田 誉幸
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−061935(JP,U)
【文献】 特開2003−182534(JP,A)
【文献】 特開昭53−134416(JP,A)
【文献】 特開2010−228594(JP,A)
【文献】 特開2009−131913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00
B23B 41/00
B23C 1/00 − 9/00
B60R 19/48
B60S 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外装部材に形成された挿通孔が、前記外装部材の内側に設けられる支持部材に間接的に支持されるとともに前記外装部材に対して面一に設けられるカバー体により塞がれる面一カバー構造の製造方法であって、
前記外装部材の内側における所定の位置に、前記支持部材を固定する工程と、
前記固定する工程の後に、前記外装部材に前記挿通孔を形成する加工、および前記支持部材に前記カバー体を間接的に支持するための支持孔を形成する加工を行う孔開け工程と、を備え
前記孔開け工程は、
前記外装部材の前記挿通孔が形成される範囲内に前記挿通孔よりも小さい予備孔を形成する加工と、前記支持部材に前記支持孔を形成する加工とを共通の工具により同時的に行うことで、前記予備孔および前記支持孔を形成する第1孔開け工程と、
前記予備孔を広げる加工を行うことで、前記挿通孔を形成する第2孔開け工程と、を含む
ことを特徴とする面一カバー構造の製造方法。
【請求項2】
前記第1孔開け工程における加工および前記第2孔開け工程における加工は、共通のエンドミルによる切削加工である
ことを特徴とする請求項に記載の面一カバー構造の製造方法。
【請求項3】
車両の外装部材に形成された挿通孔が、前記外装部材の内側に設けられる支持部材に間接的に支持されるとともに前記外装部材に対して面一に設けられるカバー体により塞がれる面一カバー構造の製造方法であって、
前記外装部材の内側における所定の位置に、前記支持部材を固定する工程と、
前記固定する工程の後に、前記外装部材に前記挿通孔を形成する加工と、前記支持部材に前記カバー体を間接的に支持するための支持孔を形成する加工別々に行う孔開け工程と、を備える
ことを特徴とする面一カバー構造の製造方法。
【請求項4】
前記外装部材は、自動車のバンパであり、
前記支持部材は、前記挿通孔から出没するように設けられたヘッドランプクリーナを支持するブラケットであり、
前記ヘッドランプクリーナは、先端に噴射ノズルが設けられ進退動作するピストンを有し、
前記カバー体は、前記ピストンの先端側に支持固定され、前記ピストンの進退動作にともなって前記ピストンと一体的に移動するように設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の面一カバー構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバンパにおけるヘッドランプクリーナの取付部分のカバー構造の製造方法として好適な面一カバー構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外装部材における面一カバー構造の一例として、外装部材であるバンパにおけるヘッドランプクリーナの取付部分のカバー構造がある。かかるカバー構造においては、ヘッドランプの下方に位置するバンパの内側(裏側)にブラケット等の支持部材を介して固定支持されたヘッドランプクリーナが、バンパに形成された挿通孔から出没するように設けられており、その挿通孔が、バンパに対して面一に設けられるカバー体により塞がれている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には次のとおりである。
【0003】
ヘッドランプクリーナは、先端に噴射ノズルを有しシリンダに対して進退動作するように設けられたピストンを有する。このピストンの先端側に、バンパの挿通孔を塞ぐカバー体が、進退動作するピストンと一体的に移動するように設けられている。カバー体は、バンパの挿通孔の形状・寸法に対応して挿通孔を全面的に塞ぐ部材として構成されている。カバー体は、挿通孔を塞いだ状態で、その表面をバンパの表面(意匠面)に対して面一とする。通常時、つまりヘッドランプクリーナの非作動時には、ピストンおよび噴射ノズルは、バンパの内側に収納されており、バンパの挿通孔は、カバー体により塞がれている。
【0004】
そして、ヘッドランプクリーナの作動時、つまりヘッドランプの洗浄時には、ピストンがその前進動作によってバンパの挿通孔から突出し、バンパの外側に移動した噴射ノズルから洗浄液がヘッドランプへ向けて噴射される。ここで、バンパの挿通孔からのピストンの突出にともない、カバー体は、噴射ノズルとともにバンパの外側へ移動し、ピストンを突出させた状態の挿通孔を開口させる。ヘッドランプクリーナの作動が終了すると、ピストンはその後退動作によってバンパの挿通孔からバンパの内側へと引っ込み、噴射ノズルはバンパの内側に没入する。これにともない、カバー体がバンパの挿通孔内に納まり、バンパと面一となったカバー体によって挿通孔が塞がれた状態となる。
【0005】
以上のような面一カバー構造においては、バンパの挿通孔と、バンパと面一で挿通孔を塞ぐカバー体との間、つまり挿通孔の内周側面と挿通孔を塞ぐカバー体の外周側面との間に、見切り隙と呼ばれるクリアランスが存在する。見切り隙は、自動車の外観上、黒い線として表れ、見栄えに影響する。特に、ヘッドランプクリーナの取付部分は、自動車において比較的目に付きやすい位置に存在するため、カバー構造における見切り隙が見栄えに与える影響は比較的大きい。そして、見切り隙は、自動車の外観上、狭い(小さい)ほど好ましく、また、カバー体の周囲において均一なほど好ましい。
【0006】
したがって、面一カバー構造における外観品質を確保するためには、バンパの挿通孔と、カバー体を支持するヘッドランプクリーナとの間の位置精度、つまりは、バンパの挿通孔と、ヘッドランプクリーナをバンパに支持するためのブラケット等の支持部材との間の位置精度が重要となる。そこで、特許文献1には、バンパとブラケットの相対的な位置決めを行うため、バンパ側において段差状のくぼみに一対の突起を設ける一方、ブラケット側に突起に係合する係合部を設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−228594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、特許文献1に記載された技術によれば、バンパに設けられた突起と、ブラケットに設けられた係合部との係合により、バンパとブラケットの相対的な位置決めについて、その位置精度を向上させることができると考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、あくまでブラケット自体をバンパに位置決めさせることでバンパの挿通孔に対するカバー体の位置精度を向上しようとするものであることから、カバー体の位置精度が、バンパにおける突起およびブラケットの係合部の加工精度に依存することになる。したがって、バンパにおける突起あるいはブラケットの係合部の加工精度が低いと、カバー体の位置精度が低下することになる。
【0009】
本発明は、上述のような事情のもとになされたものであり、車両の外装部材に形成された挿通孔が外装部材に対して面一に設けられるカバー体により塞がれるカバー構造に関し、カバー体周りの見切り隙を狭くすることができ、外観上の見栄えを向上させることができる面一カバー構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る面一カバー構造の製造方法は、車両の外装部材に形成された挿通孔が、前記外装部材の内側に設けられる支持部材に間接的に支持されるとともに前記外装部材に対して面一に設けられるカバー体により塞がれる面一カバー構造の製造方法であって、前記外装部材の内側における所定の位置に、前記支持部材を固定する工程と、前記外装部材に前記挿通孔を形成する加工、および前記支持部材に前記カバー体を間接的に支持するための支持孔を形成する加工を行う孔開け工程と、を備えるものである。
【0011】
また、本発明の一態様に係る面一カバー構造の製造方法は、前記孔開け工程は、前記外装部材の前記挿通孔が形成される範囲内に前記挿通孔よりも小さい予備孔を形成する加工と、前記支持部材に前記支持孔を形成する加工とを共通の工具により同時的に行うことで、前記予備孔および前記支持孔を形成する第1孔開け工程と、前記予備孔を広げる加工を行うことで、前記挿通孔を形成する第2孔開け工程と、を含むものである。
【0012】
また、本発明の一態様に係る面一カバー構造の製造方法は、前記第1孔開け工程における加工および前記第2孔開け工程における加工は、共通のエンドミルによる切削加工であるものである。
【0013】
また、本発明の一態様に係る面一カバー構造の製造方法は、前記外装部材は、自動車のバンパであり、前記支持部材は、前記挿通孔から出没するように設けられたヘッドランプクリーナを支持するブラケットであり、前記ヘッドランプクリーナは、先端に噴射ノズルが設けられ進退動作するピストンを有し、前記カバー体は、前記ピストンの先端側に支持固定され、前記ピストンの進退動作にともなって前記ピストンと一体的に移動するように設けられているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の外装部材に形成された挿通孔が外装部材に対して面一に設けられるカバー体により塞がれるカバー構造に関し、カバー体周りの見切り隙を狭くすることができ、外観上の見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造の構成を示す裏面側からの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造の構成を示す表面側からの分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造の構成を示す水平断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造の構成を示す垂直断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造についての説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造の構成を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造の製造方法についての説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造の製造過程を示す図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る面一カバー構造の製造方法についての説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係る面一カバー構造に対する比較例の製造方法についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、例えばバンパ等の車両の外装部材に形成された挿通孔が、外装部材に対して面一に設けられるカバー体により塞がれるカバー構造の製造方法として、外装部材の内側においてカバー体を間接的に支持するブラケットを、あらかじめ外装部材に固定した後に、外装部材およびブラケットに対する孔開け加工を行う方法を採用するものである。これにより、本発明は、孔開け精度を向上させ、カバー体周りの見切り隙を狭くすることによる外観上の見栄え向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
[面一カバー構造の構成]
まず、本実施形態に係る面一カバー構造の製造方法の説明に際し、製造対象である面一カバー構造の一例について、図1から図5を用いて説明する。本実施形態では、車両の外装部材における面一カバー構造として、自動車の外装部材であるバンパにおけるヘッドランプクリーナの取付部分のカバー構造を例にとって説明する。
【0018】
図1図5に示すように、本実施形態に係る面一カバー構造(以下単に「カバー構造」ともいう。)1は、自動車が備えるヘッドランプクリーナ10の取付部分に設けられる。カバー構造1は、バンパ2に形成された挿通孔(以下「バンパ挿通孔」という。)3が、バンパ2の内側に設けられる支持部材としてのブラケット4に間接的に支持されるとともにバンパ2に対して面一に設けられるカバー体5により塞がれる構造である。
【0019】
カバー構造1においては、自動車が備えるヘッドランプ6(図5参照)の下方に位置するバンパ2の内側(裏側)にブラケット4を介して固定支持されたヘッドランプクリーナ10が、バンパ挿通孔3から出没するように設けられている。そして、ヘッドランプクリーナ10を出没させるバンパ挿通孔3が、バンパ2に対して面一に設けられるカバー体5により塞がれている。したがって、カバー構造1は、バンパ2において、自動車が備える各ヘッドランプ6の下方に設けられることから、一般的に自動車における左右の2箇所に設けられる。
【0020】
バンパ2は、自動車の前部において、ヘッドランプ6の下側に設けられる外装部品であり、合成樹脂材料の射出成形等により成形される樹脂製の成形部材である。バンパ2は、自動車において凸側を前側とする屈曲形状を有する板状の部材であり、自動車における意匠面(外側の面)となる表面2aと、内側の面である裏面2bとを有する。
【0021】
バンパ2は、上記の屈曲形状をなす部分として、自動車においてバンパ2の上部となり、前下がりの斜面を形成する平面状の上斜面部2cと、上斜面部2cの下側の部分であって上斜面部2cに対して屈曲する下面部2dとを有する。バンパ2は、自動車において、ヘッドランプ6の直下に上斜面部2cを位置させる(図5参照)。バンパ2には、ヘッドランプクリーナ10を挿通させるバンパ挿通孔3が設けられている。
【0022】
バンパ挿通孔3は、バンパ2の上斜面部2cにおける所定の位置に形成されている。つまり、バンパ挿通孔3は、板状の部分である上斜面部2cを貫通するように穿設された開口部であり、上斜面部2cの板面に対して略垂直な面である内周側面3aにより形成される。本実施形態では、バンパ挿通孔3は、横長の平行四辺形状の孔形状を有する。このバンパ挿通孔3を介して、バンパ2の内側に設けられたヘッドランプクリーナ10がその一部を突出させる。
【0023】
ブラケット4は、バンパ2の裏面2b側に設けられ、バンパ挿通孔3から出没するように設けられたヘッドランプクリーナ10をバンパ2に対して支持する部材である。ブラケット4は、合成樹脂材料により成形された樹脂製の部材であり、全体として略矩形板状の外形をなすとともにバンパ2の屈曲形状に沿うような屈曲形状を有する。ブラケット4は、その略矩形板状の外形の長手方向をバンパ2における左右方向とするように、バンパ2の屈曲形状に沿って、バンパ2の裏面2bに貼り付けられた状態で設けられる。
【0024】
ブラケット4は、上記の屈曲形状をなす部分として、バンパ2に貼り付けられた状態で上側の部分となる横長略矩形状のブラケット本体部41と、ブラケット本体部41の一辺側(下辺側)の縁部に沿って設けられた屈曲部42とを有する。
【0025】
ブラケット本体部41は、略矩形板状の外形を有する部分であり、バンパ2の裏面2bに対する貼り合わせ面となる前面41aと、前面41aと反対側の板面である後面41bとを有する。ブラケット本体部41は、長手方向の中間部に、前面41aに対する凹み部分である凹陥部43を有する。つまり、凹陥部43は、ブラケット4の後面41bに対しては凸部分となる。
【0026】
凹陥部43は、その凹形状をなす部分として、底面部43aと周壁部43bとを有する。本実施形態では、凹陥部43は、ブラケット本体部41の長手方向を長手方向とする横長の略平行四辺形状に形成されている(図2参照)。
【0027】
屈曲部42は、横長略矩形状のブラケット本体部41の短手方向の一側(下側)に設けられており、全体として、ブラケット本体部41よりも短手方向の寸法が短い横長略矩形状板状の外形を有する。屈曲部42は、ブラケット本体部41に対して長手方向の中央部において屈曲状に形成された中央突片部44と、ブラケット本体部41に対して屈曲可能に設けられた複数の屈曲片部45とを有する。本実施形態では、ブラケット本体部41の長手方向の中央部に設けられた中央突片部44の左右両側に、2つずつ屈曲片部45が設けられている。
【0028】
屈曲部42を構成する中央突片部44および屈曲片部45の各片部は、互いの間にスリット状の隙間42sを隔ててブラケット本体部41の下縁から突出しており、ブラケット本体部41の下縁に沿って並んだ状態で設けられている。すなわち、1つの中央突片部44および4つの屈曲片部45の計5つの片部は、屈曲部42全体としての横長略矩形状の一体的な外形に沿うように形成されるとともに、隙間42sを介する分割片部として歯状の態様をなすように形成されている。ブラケット本体部41と屈曲部42との境界部、つまりブラケット本体部41と中央突片部44および屈曲片部45の各片部との境界部は、バンパ2において屈曲形状をなす上斜面部2cと下面部2dとの境界の形状に沿うように形成されている。
【0029】
中央突片部44および複数の(4つの)屈曲片部45は、いずれもブラケット本体部41の下縁においてブラケット本体部41に対して屈曲する向きに突出する略矩形板状の部分であり、上辺側のみブラケット本体部41に繋がっている。また、屈曲片部45は、ブラケット本体部41に対して、ブラケット本体部41と屈曲部42との境界線に沿う溝部45tを介して繋がっている。溝部45tは、各屈曲片部45の上辺に沿って形成されており、ブラケット本体部41と屈曲片部45との間の板厚を部分的に薄くする部分である。溝部45tは、屈曲片部45のブラケット本体部41に対する屈曲変形をしやすくする部分であり、複数の屈曲片部45は、溝部45tを介して互いに独立してブラケット本体部41に対して屈曲変形可能となっている。
【0030】
また、ブラケット4における上辺部、つまりブラケット本体部41の短手方向の屈曲部42が設けられる側と反対側の縁部に、切欠部46aを有する突片部46が設けられている。突片部46は、ブラケット4の上辺部の中間部においてブラケット4の上辺部に沿って横長矩形状にわずかに突出する部分であり、ブラケット4の上辺部の略中央の位置に切欠部46aを形成する。つまり、切欠部46aは、ブラケット4の上辺部において、互いの間に所定の隙間を隔てて設けられた一対の突片部の間に形成された溝部である。また、突片部46により、ブラケット4の上辺部において、突片部46の左右両側の側辺部とブラケット本体部41の上辺部とからなる略「L」字状の角部46bが形成されることになる。つまり、角部46bは、ブラケット本体部41の上辺部から突出する突片部46の突出形状による段差部分となる。
【0031】
このように突片部46により形成される切欠部46aおよび角部46bは、ブラケット4のバンパ2に対する位置決めに用いられる。したがって、バンパ2の裏面2bにおいては、ブラケット4の切欠部46aおよび角部46bに対応する3箇所の位置に、係止突起2eが設けられている(図1参照)。3箇所の係止突起2eは、バンパ2の上斜面部2cの裏面2bにおいて、左右方向に略等間隔を隔てて配設されている。
【0032】
バンパ2の各係止突起2eは、バンパ2の左右方向を板厚方向とする板状の小突起部分である。3箇所の係止突起2eのうち、中央の係止突起2eが切欠部46aに嵌り、左右両側の係止突起2eが左右の角部46bに位置することで、ブラケット4がバンパ2に位置決めされる。言い換えると、突片部46が、その切欠部46aに中央の係止突起2eを嵌めながら左右の係止突起2e間に嵌ることで、ブラケット4がバンパ2に位置決めされる。このように、ブラケット4側において突片部46により形成された切欠部46aおよび角部46bと、バンパ2側において裏面2bに設けられた3箇所の係止突起2eとにより、バンパ2の裏面2bに貼り付けられるブラケット4が、バンパ2に対して係止され位置決めされる。
【0033】
ブラケット4は、接着部材としての両面テープ(固定用テープ)47により接着されることで、バンパ2の裏面2bに貼り付けられる。本実施形態では、両面テープ47は、ブラケット本体部41の凹陥部43の周囲における前面41aの略全面、および4つの屈曲片部45の前面側の略全面のそれぞれの範囲(図2のブラケット4におけるハッチング部分参照)に貼設され、バンパ2の裏面2bとブラケット4との間に介在する。
【0034】
ブラケット4は、両面テープ47によるバンパ2に対する貼付け態様として、上述したように切欠部46aおよび角部46bによって3箇所の係止突起2eにより位置決めされるとともに、バンパ2の上斜面部2cおよび下面部2dによる屈曲形状に、ブラケット本体部41および屈曲部42による屈曲形状を対応させる。すなわち、ブラケット4は、ブラケット本体部41をバンパ2の上斜面部2cに、屈曲部42をバンパ2の下面部2dにそれぞれ対向させるとともに、ブラケット本体部41と上斜面部2cとの間、および各屈曲片部45と下面部2dとの間に、両面テープ47を介在させる。また、ブラケット4のバンパ2に対する貼付け態様において、各屈曲片部45は、溝部45tによるブラケット本体部41に対する屈曲変形によってバンパ2の曲面形状に倣い、全面的に接着される。
【0035】
なお、ブラケット4とバンパ2との間に介在する両面テープ47を設ける部分・範囲等については、本実施形態に限定されない。また、本実施形態では、ブラケット4のバンパ2に対する固定に関し、両面テープ47による接着固定が採用されているが、これはあくまでも一例であり、ブラケット4をバンパ2に固定するための構成・方法は特に限定されない。ブラケット4のバンパ2に対する固定には、例えば、接着剤や、ボルト等の固定部材や、所定の嵌合形状部分同士による嵌込み等が用いられてもよい。
【0036】
以上のようにしてバンパ2の裏面2bに貼り付け固定されるブラケット4においては、バンパ挿通孔3と同様に、ヘッドランプクリーナ10を挿通させる挿通孔(以下「ブラケット挿通孔」という。)8が設けられている。
【0037】
ブラケット挿通孔8は、ブラケット4において、ブラケット本体部41に設けられた凹陥部43の底面部43aの中央部に設けられている。つまり、ブラケット挿通孔8は、板状の部分である底面部43aを貫通するように穿設された開口部であり、底面部43aの板面に対して略垂直な面である内周側面8aにより形成される。本実施形態では、ブラケット挿通孔8は、横長長方形状の孔部の長辺の中間部に矩形状の凹部が形成された略十字状の孔形状を有する。このブラケット挿通孔8を介して、バンパ2の内側に設けられたヘッドランプクリーナ10がその一部を突出させる。
【0038】
このようにブラケット挿通孔8が設けられる凹陥部43の底面部43aは、ブラケット4がバンパ2に固定された状態において、ブラケット本体部41が対向する上斜面部2cに対して、凹陥部43の深さ分だけ、バンパ2の内側(奥側)に離間して位置することになる。つまり、バンパ挿通孔3が形成されたバンパ2の上斜面部2cと、ブラケット挿通孔8が形成されたブラケット4の底面部43aとは、互いの間に凹陥部43の深さに相当する寸法の間隔を隔てた互いに略平行な板面部となり、2層構造をなす。
【0039】
バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8は、上記のとおりバンパ2の内側に設けられたヘッドランプクリーナ10の一部を突出させる孔であり、ヘッドランプクリーナ10の突出経路を確保する。このため、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8は、バンパ2の上斜面部2cとブラケット4の底面部43aとが対向する方向について互いに重なるように設けられている。
【0040】
本実施形態では、底面部43aにブラケット挿通孔8が形成される凹陥部43が、バンパ挿通孔3の開口範囲のブラケット4に対する投影範囲を含むように設けられている。言い換えると、底面部43aのバンパ2の上斜面部2cに対する投影範囲内に、バンパ挿通孔3が形成されている。また、バンパ挿通孔3は、ブラケット挿通孔8の開口範囲の上斜面部2cに対する投影範囲の全体あるいは略全体を含むように形成されている。言い換えると、バンパ挿通孔3の底面部43aに対する投影範囲内に、ブラケット挿通孔8の全体あるいは略全体が収まるように、ブラケット挿通孔8が形成されている。
【0041】
続いて、ヘッドランプクリーナ10について説明する。ヘッドランプクリーナ10は、先端に噴射ノズル15が設けられ進退動作するピストン14を有し、このピストン14の部分をバンパ挿通孔3からバンパ2の内外に出没させるように設けられたアクチュエータであり、ピストン14および噴射ノズル15をバンパ2から外部へと突出させた状態で、ヘッドランプ6を洗浄する。ヘッドランプクリーナ10は、ピストン14および噴射ノズル15を含むクリーナ装置本体11と、クリーナ装置本体11の先端部に設けられクリーナ装置本体11をブラケット4に取り付けるための取付部12とを有し、ブラケット4に対して一体的に取り付けられるユニット(アッシー)として構成されている。
【0042】
クリーナ装置本体11は、略円筒状のシリンダ13と、シリンダ13に同軸状に内装されたピストン14とを有する。ピストン14は、略円柱状の部材であり、シリンダ13に対して、シリンダ13の筒軸方向の一側から出没可能に設けられている。つまり、クリーナ装置本体11は、ピストン14のシリンダ13からの出没動作(進退動作)により、伸縮するように構成されている。
【0043】
ピストン14の突出側の先端部には、洗浄水(洗浄液)を噴射する噴射ノズル15が設けられている。本実施形態に係るクリーナ装置本体11は、左右一対の噴射ノズル15を有する(図3参照)。ピストン14の噴射ノズル15よりもさらに先端側には、バンパ挿通孔3を塞ぐカバー体5が設けられている。
【0044】
シリンダ13の後端部、つまりピストン14が突出する側と反対側の端部には、洗浄水供給用のホース16が接続される接続部13aが設けられている。ホース16は、図示せぬ洗浄水タンクに接続され、洗浄水タンク内の洗浄水が、ホース16を介してクリーナ装置本体11に供給され、クリーナ装置本体11内の通水路を通って、噴射ノズル15から噴射される。すなわち、クリーナ装置本体11においては、シリンダ13の接続部13aから噴射ノズル15の噴射口まで連通する通水路が設けられている。かかる通水路は、ピストン14においてその軸芯部分に形成された通水孔を含む。
【0045】
ピストン14は、ホース16からシリンダ13内に供給される洗浄水の給水圧力によりシリンダ13の先端側から突出するように設けられている。また、シリンダ13内には、ピストン14をシリンダ13に対する収納状態に付勢する戻しバネ(図示略)が、ピストン14に外嵌された状態で内装されている。また、シリンダ13内には、ピストン14の後端部に、洗浄水の通水路を開閉するチェックバルブ(図示略)が設けられている。
【0046】
このような構成を備えるクリーナ装置本体11が、クリーナ装置本体11の先端側に設けられた取付部12により、ブラケット4に取り付けられる。取付部12は、一側が開放された略箱状の形状を有する係止部材17と、係止部材17をクリーナ装置本体11に固定するためのクランプ部材18とを含む。
【0047】
係止部材17は、その開放側にクリーナ装置本体11の先端側を臨ませるように、クリーナ装置本体11を貫通させた状態でシリンダ13の先端側に装着される。クランプ部材18は、板バネ状の部材であって、係止部材17の開放側と反対側に設けられ、クリーナ装置本体11側における所定の形状部分に当接することで、弾性力によって係止部材17をクリーナ装置本体11に固定支持させる。
【0048】
係止部材17は、その開放側において、互いに対向する面部に設けられた一対の係止爪17aを有する。係止爪17aは、取付部12をブラケット4に係止支持させるための形状部分である。係止爪17aは、ブラケット挿通孔8の縁部に対して係止される。すなわち、ヘッドランプクリーナ10は、クリーナ装置本体11の先端側に設けられた取付部12の係止爪17aの係止作用により、ブラケット4においてブラケット挿通孔8を形成する部分に対して支持固定される。
【0049】
カバー体5は、クリーナ装置本体11において進退動作するピストン14の先端側に支持固定され、ピストン14の進退動作にともなってピストン14と一体的に移動するように設けられている。カバー体5は、噴射ノズル15をピストン14の先端側から覆うように設けられ、ノズルカバーとして機能する部材であり、バンパ挿通孔3の形状・寸法に対応してバンパ挿通孔3を全面的に塞ぐ部材として構成されている。カバー体5は、バンパ挿通孔3を塞いだ状態で、その表面をバンパ2の意匠面となる表面2aに対して略面一とする。
【0050】
カバー体5は、バンパ挿通孔3を全面的に塞ぐ蓋部分であるカバー本体部51と、クリーナ装置本体11のピストン14に支持固定されるための支持部52とを有する。
【0051】
カバー本体部51は、バンパ挿通孔3の形状・寸法と略同じ形状・寸法を有し、バンパ2の上斜面部2cの板厚と略同じ板厚を有する板状の部分であり、バンパ挿通孔3内に嵌り、バンパ2の上斜面部2cと略面一となる部分である。したがって、カバー本体部51は、一方の板面であってバンパ2の表面2aと略面一となる意匠面としての表面51aと、表面51aと反対側の板面である裏面51bと、表面51aと裏面51bとの間の外周側面51cとを有する。カバー本体部51の裏面51b側に、支持部52が設けられている。
【0052】
支持部52は、複数の板状の突片部52aを有し、これらの突片部52aにより、カバー本体部51の裏面51bの中央部に、ピストン14の先端部14aが差し込まれる挿嵌空間53を形成する。先端部14aは、ピストン14の先端部に設けられる一対の噴射ノズル15より先端側に突出する部分である。ピストン14の先端部14aが支持部52の挿嵌空間53に差し込まれることにより、噴射ノズル15がピストン14の先端側からカバー本体部51により覆われることになる。
【0053】
ピストン14の先端部14aが挿嵌空間53に差し込まれた状態においては、支持部52およびピストン14のそれぞれに設けられた所定の係合部により、ピストン14と支持部52とが互いに係合することで、ピストン14が支持部52に固定支持される。このようにして、カバー体5がヘッドランプクリーナ10の先端部に支持固定される。
【0054】
このように、カバー体5は、ブラケット4に対してヘッドランプクリーナ10を介して間接的に支持される。すなわち、ヘッドランプクリーナ10のシリンダ13部分が、クリーナ装置本体11の先端部に設けられた取付部12によってブラケット4の底面部43aに支持固定され、シリンダ13に対して進退動作するピストン14の先端部に、カバー体5が支持固定されている。言い換えると、ヘッドランプクリーナ10を構成する取付部12およびクリーナ装置本体11のシリンダ13側の部分は、ブラケット4を介してバンパ2側(車両側)に固定され、このバンパ2側に対する固定部分に含まれるシリンダ13に対して、先端にカバー体5が設けられたピストン14が進退動作するように設けられている。
【0055】
また、ヘッドランプクリーナ10を構成する取付部12は、その係止部材17によってブラケット4のブラケット挿通孔8に対して係止支持される。したがって、ヘッドランプクリーナ10においてピストン14の先端部に設けられるカバー体5は、ブラケット挿通孔8に対して取付部12、クリーナ装置本体11のシリンダ13、ピストン14等を介して間接的に支持される。このように、ブラケット4のブラケット挿通孔8は、ブラケット4にカバー体5を間接的に支持するための支持孔となる。
【0056】
以上のような構成において、通常時、つまりヘッドランプクリーナ10の非作動時には、ピストン14および噴射ノズル15は、バンパ2の内側に収納されており、バンパ挿通孔3は、カバー体5により塞がれている。
【0057】
そして、ヘッドランプクリーナ10の作動時、つまりヘッドランプ6の洗浄時には、シリンダ13に供給される洗浄水の水圧により、ピストン14が、シリンダ13に内装された戻しバネの付勢力に抗して前進動作し、シリンダ13から進出してバンパ挿通孔3から突出し、ピストン14の先端部の噴射ノズル15がバンパ2の外側斜め前上方における所定の噴射位置まで移動する(図5参照)。ここで、バンパ挿通孔3からのピストン14の突出にともない、ピストン14の先端部に設けられたカバー体5は、バンパ挿通孔3を閉じた状態から噴射ノズル15とともにバンパ2の外側へ移動し、ピストン14を突出させた状態のバンパ挿通孔3を開口させる。
【0058】
こうしたピストン14の前進動作の過程において、ピストン14が所定の位置に達すると、ピストン14の基端側のチェックバルブが開き、シリンダ13内に供給された洗浄水が、通水路内をピストン14の先端側へ向けて圧送され、所定の噴射位置にある噴射ノズル15の噴射口からヘッドランプ6を構成する前面カバーとしてのヘッドランプレンズ21の表面21aへ向けて噴射される(図5、符号X1参照)。なお、ヘッドランプ6においては、ヘッドランプレンズ21と、開放側をヘッドランプレンズ21側に向けて設けられる凹状のハウジング部材22とにより灯室が形成され、この灯室内に、リフレクタ、バルブ、レンズ等が配設される。
【0059】
そして、シリンダ13への洗浄水の供給が停止すると、シリンダ13内のチェックバルブが閉じるとともに、噴射ノズル15からの洗浄水の噴射が停止する。これにともない、ピストン14が、シリンダ13内の戻しバネの付勢力によって後退動作し、シリンダ13内に引き込まれる。このように、ヘッドランプクリーナ10の作動が終了すると、ピストン14はその後退動作によってバンパ挿通孔3からバンパ2の内側へと引っ込み、ピストン14および噴射ノズル15はバンパ2の内側に没入する。これにともない、カバー体5がバンパ挿通孔3内に納まり、バンパ2と略面一となったカバー体5のカバー本体部51によってバンパ挿通孔3が塞がれた状態となる。
【0060】
カバー体5によってバンパ挿通孔3が塞がれた状態においては、カバー体5の表面51aは、バンパ2の上斜面部2cにおける表面2aと略面一となる。なお、本実施形態では、カバー本体部51は、バンパ2に対してわずかに外側に突出している。つまり、カバー本体部51の表面51aは、バンパ2の上斜面部2cの表面2aに対してわずかに(例えば、0.数mm程度)外側に位置する。このようなカバー体5とバンパ2との関係は、バンパ挿通孔3の縁部に形成される外側のエッジ部がカバー構造1において最外側に位置することを回避させる観点に基づく。このように、本発明に係る面一カバー構造としては、本実施形態のカバー構造1のように、カバー体5の表面51aがバンパ2の表面2aよりもわずかに突出し、これらの表面同士が略面一となる構造も含まれる。
【0061】
以上のような面一カバー構造においては、図6に示すように、バンパ挿通孔3と、バンパ2と面一でバンパ挿通孔3を塞ぐカバー体5との間、つまりバンパ挿通孔3の内周側面3aとカバー体5の外周側面51cとの間のクリアランス(符号S1参照)として、見切り隙60が存在する。見切り隙60は、自動車の外観上、黒い線として表れ、見栄えに影響する。特に、ヘッドランプクリーナ10の取付部分は、自動車において比較的目に付きやすい位置に存在するため、カバー構造1における見切り隙60が見栄えに与える影響は比較的大きい。
【0062】
そこで、本実施形態に係るカバー構造1の製造方法は、見切り隙60の狭小化を図るべく、バンパ2の内側においてカバー体5を間接的に支持するブラケット4を、あらかじめバンパ2に固定した後に、バンパ2およびブラケット4に対する孔開け加工を行う方法を採用するものである。以下、本実施形態のカバー構造の製造方法について説明する。
【0063】
[面一カバー構造の製造方法]
(第1実施形態)
本実施形態のカバー構造の製造方法の第1実施形態について、図7および図8を用いて説明する。
【0064】
図7(a)に示すように、本実施形態のカバー構造の製造方法においては、まず、合成樹脂材料の射出成形等により成形された成形品としてのバンパ2に対して塗装を施す塗装工程が行われる。この塗装工程では、所定の塗装装置71により、バンパ2の表面2a等に塗料が吹き付けられ、バンパ2の塗装が行われる。
【0065】
次に、バンパ2の内側における所定の位置に、ブラケット4を固定する工程(以下「ブラケット固定工程」という。)が行われる。すなわち、図7(b)に示すように、両面テープ47により、ブラケット4をバンパ2の所定の位置に貼り付ける工程が行われる。
【0066】
ブラケット固定工程では、両面テープ47は、ブラケット4における所定の部位、本実施形態ではブラケット4の前面側のブラケット本体部41および各屈曲片部45の部位(図2のブラケット4におけるハッチング部分参照)にあらかじめ貼着される。そして、両面テープ47が貼着されたブラケット4が、バンパ2に対して、中央の切欠部46aおよび左右の角部46bに、裏面2bに設けられた3箇所の係止突起2eを位置させ、3箇所の係止突起2eに突片部46を係合させることで位置決めされ、バンパ2の裏面2bに貼り付けられて固定される。
【0067】
ブラケット4がバンパ2に貼り付け固定された状態においては、ブラケット4は、ブラケット本体部41および屈曲部42による屈曲形状、および各屈曲片部45の溝部45tによるブラケット本体部41に対する屈曲変形によって、バンパ2の上斜面部2cおよび下面部2dによる屈曲形状および曲面形状に倣い、略全面的に接着される。ブラケット4のバンパ2に対する固定状態においては、ブラケット本体部41が両面テープ47を介してバンパ2の上斜面部2cに対向し、屈曲部42が両面テープ47を介してバンパ2の下面部2dに対向した状態となる。そして、ブラケット本体部41とバンパ2の上斜面部2cとの対向部分においては、係止突起2eと切欠部46aおよび角部46bとによるバンパ2に対するブラケット4の位置決めの精度で、バンパ2においてバンパ挿通孔3が形成される部分に対して、ブラケット4においてブラケット挿通孔8が形成される部分が位置決めされる。
【0068】
なお、ブラケット固定工程において、ブラケット4とバンパ2との間に介在する両面テープ47を設ける部分・範囲等については特に限定されない。また、両面テープ47は、ブラケット4側ではなく、バンパ2の裏面2bにおける所定の部位にあらかじめ貼着してもよい。また、バンパ2に対するブラケット4の固定方法は、両面テープを用いる方法に限定されず、例えば、上述のとおり、接着剤や、ボルト等の固定部材や、所定の嵌合形状部分同士による嵌込み等を用いた方法であってもよい。ただし、製造工程の簡便化を図る観点や、バンパ2に対するブラケット4の固定について必要十分な固定強度を得る観点からは、本実施形態のように両面テープ47を用いた方法が好ましい。
【0069】
続いて、バンパ2にバンパ挿通孔3を形成する加工、およびブラケット4にブラケット挿通孔8を形成する加工を行う孔開け工程が行われる。本実施形態では、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8の孔開けは、エンドミル72を備える汎用エンドミル加工機による切削加工によって行われる。
【0070】
本実施形態の孔開け工程では、バンパ2に最終的にバンパ挿通孔3となる予備的な孔を形成するとともに、ブラケット4にブラケット挿通孔8を形成する加工を行う第1孔開け工程と、ブラケット挿通孔8と同時にバンパ2に形成した予備的な孔に加工を施すことでバンパ挿通孔3を形成する加工を行う第2孔開け工程とによる2段階の孔開け加工が行われる。
【0071】
すなわち、本実施形態において、第1孔開け工程は、バンパ2のバンパ挿通孔3が形成される範囲内にバンパ挿通孔3よりも小さい予備孔3Xを形成する加工と、ブラケット4にブラケット挿通孔8を形成する加工とを共通の工具により同時的に行うことで、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8を形成する工程である。また、第2孔開け工程は、バンパ2に形成された予備孔3Xを広げる加工を行うことで、バンパ挿通孔3を形成する工程である。このような第1孔開け工程および第2孔開け工程を含む本実施形態の孔開け工程は、具体的には次のようにして行われる。
【0072】
まず、孔開け工程における孔開け加工に際しては、ブラケット4が固定されたバンパ2が、汎用エンドミル加工機において、加工対象であるワークとして所定の治具にセットされる。
【0073】
そして、図7(c)に示すように、第1孔開け工程では、互いの間に凹陥部43の深さに相当する寸法の間隔を隔てた互いに略平行な2層の板面部であるバンパ2の上斜面部2cとブラケット4の底面部43aに対して、これらの板面部の板面に略垂直な方向を回転軸方向とするエンドミル72が作用し、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8(内周側面8a)が同時的な切削加工(第1切削加工)によって同時に形成される。なお、予備孔3Xは、板状の部分である上斜面部2cを貫通するように穿設された開口部であり、上斜面部2cの板面に対して略垂直な面である内周側面3Xaにより形成される。
【0074】
第1孔開け工程では、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8を形成するための所定の移動経路(破線矢印A1参照)に沿って所定の回転速度で軸回転しながら所定の送り速度で移動する共通のエンドミル72による切削加工を、いずれも樹脂製の部品であるバンパ2およびブラケット4に対して同時加工として施すことにより、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8が同時に形成される。したがって、エンドミル72は、少なくとも、互いの間に凹陥部43の深さ分の間隔を隔てたバンパ2の上斜面部2cおよびブラケット4の底面部43aに対して同時に作用して孔開けのための切削加工を行うことができる長さを有する。
【0075】
このようにエンドミル72によるバンパ2およびブラケット4に対する同時加工が行われる第1孔開け工程において、バンパ2およびブラケット4のそれぞれにおける切削加工形状は、互いに共通となる。つまり、第1孔開け工程におけるバンパ2およびブラケット4に対する切削範囲の形状・寸法は互いに共通となり、予備孔3Xとブラケット挿通孔8とは、互いに同一あるいは略同一の形状・寸法の孔として形成される。本実施形態では、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8は、略横長矩形状の孔として形成されている(図8(a)参照)。
【0076】
次に、第2孔開け工程が行われる。図7(d)に示すように、第2孔開け工程では、エンドミル72により、バンパ2のみに対する切削加工(第2切削加工)が行われ、バンパ挿通孔3が形成される。すなわち、第2孔開け工程では、予備孔3Xからバンパ挿通孔3を形成するための所定の移動経路(破線矢印A2参照)に沿って所定の回転速度で軸回転しながら所定の送り速度で移動するエンドミル72による切削加工を、バンパ2のみに対して施すことにより、予備孔3Xの外縁部分が切除され、予備孔3Xが拡げられてバンパ挿通孔3が形成される。
【0077】
第2孔開け工程が行われることで、バンパ2において、ブラケット4のブラケット挿通孔8よりも一回り以上大きなバンパ挿通孔3が形成される。本実施形態では、バンパ挿通孔3は、横長の略平行四辺形状の孔として形成されている(図8(b)参照)。第2孔開け工程によってバンパ挿通孔3が形成されることで、孔開け工程の加工は完了する。
【0078】
以上のように、本実施形態の孔開け工程においては、第1孔開け工程における加工および第2孔開け工程における加工は、共通のエンドミル72による切削加工として行われている。すなわち、第1孔開け工程および第2孔開け工程が行われる孔開け工程において、孔開け加工に際し、ブラケット4が貼り付けられたバンパ2がワークとして所定の治具にセットされた状態で、汎用エンドミル加工機が備えるエンドミル72により、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8を形成するための切削加工(第1切削加工)、および予備孔3Xを広げてバンパ挿通孔3を形成するための切削加工(第2切削加工)が、2段階の切削加工として順番に行われる。
【0079】
なお、本実施形態に係るカバー構造1は、上述のとおり自動車が備える左右のヘッドランプ6に対応してバンパ2において左右の2箇所に設けられるが、左右のカバー構造1についての孔開け工程(孔開け加工)は、同時に行われたり片方ずつ所定の順序で順番に行われたりする。同時に行われる場合、汎用エンドミル加工機が各カバー構造1に対応して右用・左用の2つのエンドミル72を備え、左右のカバー構造1についての孔開け工程(孔開け加工)が同じタイミングで行われることになる。
【0080】
また、孔開け工程におけるエンドミル72の回転速度および送り速度等の切削条件に関しては、汎用エンドミル加工機において第1孔開け工程および第2孔開け工程の各工程について適宜設定された切削条件が用いられる。例えば、第2孔開け工程で形成されるバンパ挿通孔3は、カバー体5とともに見切り隙60を形成する孔であり、外観に現れる。このため、バンパ挿通孔3の切削面(内周側面3a)の仕上がりを良好にすべく、第2孔開け工程におけるエンドミル72の回転速度は、第1孔開け工程におけるエンドミル72の回転速度よりも速く設定され、第2孔開け工程におけるエンドミル72の送り速度は、第1孔開け工程におけるエンドミル72の送り速度よりも遅く設定される。
【0081】
以上のような本実施形態のカバー構造の製造方法によれば、バンパ2に形成されたバンパ挿通孔3がバンパ2に対して面一に設けられるカバー体5により塞がれるカバー構造1に関し、カバー体5周りの見切り隙60を狭くすることができ、外観上の見栄えを向上させることができ、しかも、高い汎用性を得ることができる。このような作用効果について、具体的に説明する。
【0082】
まず、本実施形態のカバー構造の製造方法によれば、ブラケット4のバンパ2に対する位置決めについて、その位置決め精度が、カバー体5のバンパ挿通孔3における位置決めの精度、つまり見切り隙60の大きさに直接的には影響しない。このことは、ヘッドランプクリーナ10を介してカバー体5を間接的に支持するブラケット挿通孔8の、バンパ挿通孔3に対する位置決めの精度が、ブラケット4のバンパ2に対する位置決めの精度に依存しないことに基づく。
【0083】
すなわち、本実施形態のカバー構造の製造方法によれば、あらかじめブラケット4がバンパ2に固定された後に、このバンパ2およびブラケット4の一体的な構造体に対して、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8を形成する孔開け加工が行われることから、見切り隙60の大きさに影響するバンパ挿通孔3とブラケット挿通孔8の位置関係についての精度は、実質的にはエンドミル72によるバンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8の加工精度のみに依存することになる。
【0084】
したがって、バンパ挿通孔3に対するブラケット挿通孔8の位置のばらつきを小さくすることができるので、ヘッドランプクリーナ10を介してブラケット挿通孔8に支持されるカバー体5の、バンパ挿通孔3に対する位置決めの精度を向上することができ、見切り隙60を小さくすることができる。結果として、カバー構造1における外観上の見栄えを向上することができる。
【0085】
なお、本実施形態のカバー構造の製造方法によれば、上述のとおりブラケット4のバンパ2に対する位置決め精度が見切り隙60の大きさに直接的には影響しないことから、ブラケット固定工程におけるブラケット4のバンパ2に対する位置決めに関しては、バンパ挿通孔3に対するブラケット挿通孔8の相対的な位置関係についての精度に対して比較的粗い精度による位置決めにより対応することができる。このため、ブラケット4のバンパ2に対する位置決め精度を確保するための負担が軽減され、ブラケット4をバンパ2に固定するための工程の効率化・時間の短縮化を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態のカバー構造の製造方法によれば、バンパ2およびブラケット4において、見切り隙60を小さくすべく、バンパ2に対するブラケット4の位置決め精度、つまりバンパ挿通孔3に対するブラケット挿通孔8の位置決め精度を向上させるための形状部分を設ける必要がない。このため、ブラケット4の形状をシンプルにすることができる。ここで、バンパに対するブラケットの位置決めに、ブラケットに設けた所定の位置決め用の形状部分とバンパ挿通孔とを用いたカバー構造およびその製造方法の一例を、本実施形態に係るカバー構造の製造方法に対する比較例として、図10を用いて説明する。
【0087】
この比較例のカバー構造においては、図10(d)に示すように、ブラケット104に、バンパ102に対する位置決め用の形状部分として、リブ部148が設けられている。リブ部148は、ブラケット本体部141の前面141aから、ブラケット挿通孔108が形成される凹陥部143側と反対側、つまりバンパ102側に突出するように設けられた筒状あるいは突片状の部分である。
【0088】
リブ部148は、ブラケット104のバンパ102に対する固定に際し、バンパ挿通孔103内に挿嵌され、ブラケット104のバンパ102に対する位置決めに用いられる。すなわち、リブ部148の外側面148aがバンパ挿通孔103の内周側面103aに接触ないし対向した状態となり、バンパ102に対してブラケット104が位置決めされる。
【0089】
比較例のカバー構造の製造方法について、図10を用いて説明する。図10(a)に示すように、比較例のカバー構造の製造方法においては、上述のとおり、まず、合成樹脂材料の射出成形等により成形された成形品としてのバンパ102の表面102a等に対して塗装を施す塗装工程が行われる。
【0090】
次に、バンパ102にバンパ挿通孔103を形成する加工を行う孔開け工程が行われる。ここでは、図10(b)に示すように、例えば、エンドミル172を備えるエンドミル加工機による切削加工、または、ポンチ173とダイス(図示略)による孔開け加工により、バンパ102における所定の部位に、バンパ挿通孔103が形成される。
【0091】
続いて、図10(c)に示すように、バンパ102の内側における所定の位置に、ブラケット104を固定する工程が行われる。ここでバンパ102に固定されるブラケット104には、あらかじめブラケット挿通孔108が、エンドミル加工機による切削加工やポンチ・ダイスによる孔開け加工等により形成されている。そして、このブラケット104をバンパ102に固定する工程においては、ブラケット104のリブ部148が用いられ、バンパ挿通孔103により、ブラケット104がバンパ102に対して位置決めされ、両面テープ147によりブラケット104がバンパ102に貼り付けられて固定される。これにより、図10(d)に示すように、比較例のカバー構造が製造される。
【0092】
以上のように、比較例のカバー構造およびその製造方法では、エンドミル172あるいはポンチ173によってあらかじめバンパ102に形成されたバンパ挿通孔103の内周側面103aに、ブラケット104のリブ部148をあてがうことで、バンパ102に対するブラケット104の位置決めが行われている。そして、互いに固定されるバンパ102およびブラケット104には、それぞれバンパ挿通孔103、ブラケット挿通孔108があらかじめ形成されていることから、ブラケット104のバンパ102に対する位置決めの精度が、バンパ挿通孔103とブラケット挿通孔108の位置関係についての精度に直接的に影響する。
【0093】
このような比較例のカバー構造およびその製造方法によれば、バンパ挿通孔103におけるカバー体105周りの見切り隙160(符号S2参照)について、見切り隙160内に位置決め用のリブ部148の存在スペースを確保する必要がある分、見切り隙160が広くなってしまう。また、ブラケット104のバンパ102に対する位置決め精度については、バンパ挿通孔103およびリブ部148の両方の成型誤差が効いてくることから、バンパ102とブラケット104の間のガタが多くなり、このことも、見切り隙160を広くする原因となる。
【0094】
以上のような比較例のカバー構造およびその製造方法に対し、本実施形態に係るカバー構造およびその製造方法によれば、上述のとおり、あらかじめブラケット4がバンパ2に固定された後に、このバンパ2およびブラケット4に対して、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8を形成するための同時加工が行われることから、バンパ挿通孔3に対するブラケット挿通孔8の位置のばらつきを小さくすることができ、見切り隙60(図6参照)を小さくすることができる。また、本実施形態に係るカバー構造およびその製造方法によれば、カバー体5とバンパ挿通孔3との間に、比較例におけるリブ部148のような位置決め用の形状部分が存在しないことから、その分のスペースを確保する必要がなく、このことからも、見切り隙60を小さくすることができる。
【0095】
上述した比較例との関係では、本実施形態に係るカバー構造およびその製造方法によれば、見切り隙の寸法を半分程度にすることができる。具体的には、比較例の場合における見切り隙が1.3mm程度であるのに対し、本実施形態に係るカバー構造およびその製造方法によれば、見切り隙を0.7mm程度にすることができる。
【0096】
また、上述した比較例のカバー構造の製造方法のように、バンパ挿通孔103を形成するための加工としては、ポンチ・ダイスによる孔開け加工が一般に行われている。この場合、合成樹脂材料の射出成形等により成形されるバンパ102に対し、成形工程の後加工で、ポンチ・ダイスによってバンパ挿通孔103が形成される。しかしながら、ポンチ・ダイスによる孔開け加工によれば、加工精度や量産性の面で比較的有利ではあるが、車種や部品の種類ごとに専用の設備が必要となるため、汎用性に乏しく、大きな設備投資が必要となり、また、設備が大がかりなものとなるため、設備の設置スペースを確保することが困難となる。
【0097】
この点、本実施形態に係るカバー構造の製造方法は、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8の形成に際し、バンパ2の上斜面部2cおよびブラケット4の底面部43aによる2層構造に対する同時加工を行うものである。このため、上述した比較例のようなポンチ・ダイスによる孔開け加工は実質的に困難であり、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8を形成するための加工としては、エンドミル加工機による切削加工が好適に採用される。
【0098】
バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8を形成するための加工として、エンドミル加工機による切削加工を採用することにより、既存設備の汎用加工機を使用することができるので、新規の設備投資、新しい設備スペースの確保が不要となり、製法の導入を容易に行うことができる。また、エンドミル加工機として汎用加工機を使用することができるので、複数の車種や部品の種類に適用することができ、高い汎用性を得ることができる。
【0099】
以上のように、本実施形態に係るカバー構造の製造方法によれば、高い汎用性を得ながら、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8の孔開け精度を向上させることができ、カバー体5周りの見切り隙60を狭くすることによる外観上の見栄え向上を図ることができる。
【0100】
特に、本実施形態に係るカバー構造の製造方法において、孔開け加工は、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8を形成するために、バンパ2およびブラケット4に対する同時加工を行う第1孔開け工程と、バンパ挿通孔3を形成するためにバンパ2に対する加工を行う第2孔開け工程とを含むものである。したがって、バンパ挿通孔3は、第1孔開け工程において予備孔3Xを形成する加工と、第2孔開け工程において最終的なバンパ挿通孔3を形成する加工との2段階の加工によって形成されている。
【0101】
このような加工方法によれば、後に広げられてバンパ挿通孔3となる予備孔3X、および外観には現れずにヘッドランプクリーナ10を支持する機能を果たすブラケット挿通孔8については、その切削加工面、つまり各孔の内周側面3Xa、8aの仕上がりを比較的粗くすることが許容される。このため、第1孔開け工程において同時に形成される予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8の切削条件については、比較的にエンドミル72の回転速度を遅くしたりエンドミル72の送り速度を速くしたりすることができる。
【0102】
特に、第1孔開け工程における切削加工に関しては、バンパ2の上斜面部2cおよびブラケット4の底面部43aの2段の板状部に対する同時加工であることから、加工時にエンドミル72に作用する負荷が、1段の板状部に対する加工(第2切削加工)に比して大きい。このため、同時加工により形成される予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8の切削加工面について外観に現れる孔のような高い仕上がりを得ようとすると、切削による孔開け加工に時間がかかってしまうことになる。したがって、第1孔開け工程においてエンドミル72の送り速度を速くできることは、加工時間を短縮させる意味で有利に作用する。
【0103】
一方、外観に現れるバンパ挿通孔3の切削加工面、つまり内周側面3aの仕上がりについては、外観上、相当程度の精度が要求される。このため、第2孔開け工程において形成されるバンパ挿通孔3の切削条件については、比較的にエンドミル72の回転速度を速くしたりエンドミル72の送り速度を遅くしたりする必要がある。また、第2孔開け工程における切削加工に関しては、バンパ2の上斜面部2cの1段の板状部に対する加工であり、しかも予備孔3Xがあらかじめ形成された部分に対する加工であることから、加工時にエンドミル72に作用する負荷が、第1切削加工のような2段のしかも予備的な孔が形成されていない板状部に対する加工に比して小さい。このため、バンパ挿通孔3の内周側面3aについては、比較的容易に綺麗な仕上がりとすることができる。
【0104】
このように、本実施形態に係るカバー構造の製造方法によれば、必要に応じて、効率良く、仕上がりの良い切削加工を実現することができる。つまり、孔開け加工の作業効率と、外観上の見栄えの両立を図ることができる。
【0105】
また、本実施形態に係るカバー構造の製造方法は、予備孔3Xおよびブラケット挿通孔8を形成するための第1孔開け工程における第1切削加工、および予備孔3Xを広げてバンパ挿通孔3を形成するための第2孔開け工程における第2切削加工を、共通のエンドミル72による切削加工として行うものである。このため、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8を形成するための加工を同軸の切削加工として行うことができるので、両方の孔の切削加工軸が全くずれることがなく、高い孔開け精度を得ることができ、効果的に見切り隙60を小さくすることができる。
【0106】
(第2実施形態)
本実施形態のカバー構造の製造方法の第2実施形態について、図9を用いて説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については、共通の符号を用いる。
【0107】
本実施形態の製造方法は、バンパ挿通孔3を形成するに際して予備孔3Xを形成することなく、先にバンパ2のみに加工を施してバンパ挿通孔3を形成してから、次にブラケット4のみに加工を施してブラケット挿通孔8を形成するものである。つまり、本実施形態の孔開け工程では、バンパ2にバンパ挿通孔3を形成する加工を行うバンパ孔開け工程と、ブラケット4にブラケット挿通孔8を形成する加工を行うブラケット孔開け工程とによる2段階の孔開け加工が行われる。
【0108】
図9(a)に示すように、本実施形態のカバー構造の製造方法においては、第1実施形態の場合と同様に、まず、合成樹脂材料の射出成形等により成形された成形品としてのバンパ2に対して所定の塗装装置71により塗装を施す塗装工程が行われる。
【0109】
次に、バンパ2の内側における所定の位置に、ブラケット4を固定する工程(ブラケット固定工程)が行われる。すなわち、図9(b)に示すように、第1実施形態の場合と同様に、両面テープ47により、ブラケット4をバンパ2の所定の位置に貼り付ける工程が行われる。
【0110】
続いて、バンパ2にバンパ挿通孔3を形成する加工、およびブラケット4にブラケット挿通孔8を形成する加工を行う孔開け工程が、順次行われる。本実施形態では、バンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8の孔開けは、エンドミル72を備える汎用エンドミル加工機による切削加工により行われる。エンドミル72は、例えば、汎用エンドミル加工機においてロボットアーム等により支持される。
【0111】
本実施形態の孔開け工程では、上記のとおりバンパ挿通孔3を形成するバンパ孔開け工程と、ブラケット挿通孔8を形成するブラケット孔開け工程とによる2段階の孔開け加工が行われる。このようなバンパ孔開け工程およびブラケット孔開け工程を含む本実施形態の孔開け工程は、具体的には次のようにして行われる。
【0112】
まず、孔開け工程における孔開け加工に際しては、ブラケット4が固定されたバンパ2が、汎用エンドミル加工機において、加工対象であるワークとして所定の治具にセットされる。
【0113】
そして、図9(c)に示すように、バンパ孔開け工程では、エンドミル72により、バンパ2のみに対する切削加工が行われ、バンパ挿通孔3(内周側面3a)が形成される。バンパ孔開け工程では、バンパ挿通孔3を形成するための所定の移動経路(破線矢印B1参照)に沿って所定の回転速度で軸回転しながら所定の送り速度で移動するエンドミル72による切削加工を、バンパ2の上斜面部2cにおける所定の部位に対して施すことにより、バンパ挿通孔3が形成される。
【0114】
次に、ブラケット孔開け工程が行われる。図9(d)に示すように、ブラケット孔開け工程では、エンドミル72により、ブラケット4のみに対する切削加工が行われ、ブラケット挿通孔8(内周側面8a)が形成される。ブラケット孔開け工程では、バンパ挿通孔3を貫通した状態で、ブラケット挿通孔8を形成するための所定の移動経路(破線矢印B2参照)に沿って所定の回転速度で軸回転しながら所定の送り速度で移動するエンドミル72による切削加工を、ブラケット4の底面部43aにおける所定の部位に対して施すことにより、ブラケット挿通孔8が形成される。
【0115】
ブラケット孔開け工程によってブラケット挿通孔8が形成されることで、孔開け工程の加工は完了する。なお、本実施形態の孔開け工程においても、バンパ孔開け工程における加工およびブラケット孔開け工程における加工は、共通のエンドミル72による切削加工として行われている。これにより、上述のとおりバンパ挿通孔3およびブラケット挿通孔8を同軸の切削加工により形成することができ、孔開け精度を向上することができる。
【0116】
また、孔開け工程におけるエンドミル72の回転速度および送り速度等の切削条件に関しては、汎用エンドミル加工機においてバンパ孔開け工程およびブラケット孔開け工程の各工程について適宜設定された切削条件が用いられる。例えば、バンパ挿通孔3は外観に現れるため、バンパ挿通孔3の切削面(内周側面3a)の仕上がりを良好にすべく、バンパ孔開け工程におけるエンドミル72の回転速度は、ブラケット孔開け工程におけるエンドミル72の回転速度よりも速く設定され、バンパ孔開け工程におけるエンドミル72の送り速度は、ブラケット孔開け工程におけるエンドミル72の送り速度よりも遅く設定される。
【0117】
以上説明した第2実施形態のカバー構造の製造方法のように、先にバンパ2のみに加工を施してバンパ挿通孔3を形成してから、次にブラケット4のみに加工を施してブラケット挿通孔8を形成することもできる。
【0118】
以上説明した本発明の実施の形態に係るカバー構造の製造方法は、自動車の外装部材であるバンパにおけるヘッドランプクリーナの取付部分のカバー構造への適用例であるが、本発明に係るカバー構造の製造方法は、車両の外装部材に形成された挿通孔が、外装部材の内側に設けられる支持部材に間接的に支持されるとともに外装部材に対して面一に設けられるカバー体により塞がれるカバー構造であれば、適用することが可能である。他の適用例としては、自動車のバンパにおいて障害物を検知するセンサの配設部分のカバー構造等が挙げられる。つまり、本発明に係るカバー構造の製造方法は、ヘッドランプクリーナやセンサ等のように、バンパ等の外装部品の内側にブラケット等の支持部材を介して付設されるとともに外装部品の挿通孔と面一となるカバー体を支持する機器等の取付部分において適用の可能性がある。
【0119】
また、本発明に係るカバー構造の製造方法は、上述した実施形態に係る製造方法に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。例えば、孔開けの加工対象としては、バンパ2等の樹脂部品に限定されず、金属製の部品等であってもよい。また、バンパ挿通孔3やブラケット挿通孔8や予備孔3Xを形成するための加工方法としては、エンドミル加工機による切削加工に限らず、レーザーを用いた孔開け加工であってもよい。ただし、本発明に係る孔開け工程における加工対象は、外装部品および支持部材の2層構造であり、孔開け部分が互いに異なる高さ位置に存在することから、作業効率や汎用性の観点からは、エンドミル加工機による切削加工が好ましいと言える。また、上述した実施形態のバンパ2のように、孔開け工程に際してあらかじめ塗装が施される部品が加工対象である場合も、塗装を保持する観点から、エンドミル加工機による切削加工が好ましいと言える。
【符号の説明】
【0120】
1 カバー構造(面一カバー構造)
2 バンパ(外装部品)
3 バンパ挿通孔
3X 予備孔
4 ブラケット(支持部材)
5 カバー体
6 ヘッドランプ
8 ブラケット挿通孔(支持孔)
10 ヘッドランプクリーナ
11 クリーナ装置本体
12 取付部
13 シリンダ
14 ピストン
15 噴射ノズル
47 両面テープ
72 エンドミル
図1
図2
図3
図4
図5
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図10