(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437785
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ピストン駆動装置
(51)【国際特許分類】
F04B 41/06 20060101AFI20181203BHJP
F04B 27/02 20060101ALI20181203BHJP
F04B 37/16 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
F04B41/06
F04B27/02 A
F04B37/16 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-216475(P2014-216475)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-84722(P2016-84722A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】上田 一宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英士
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−209980(JP,A)
【文献】
特開2001−055975(JP,A)
【文献】
実開昭55−017917(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 41/06
F04B 27/02
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースと、
前記クランクケースに固定された第1及び第2圧縮用シリンダと、
前記クランクケースに固定された第1及び第2真空用シリンダと、
前記クランクケース内で回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸に連結されて前記第1及び第2圧縮用シリンダ内でそれぞれ往復動する第1及び第2圧縮用ピストンと、
前記回転軸に連結されて前記第1及び第2真空用シリンダ内でそれぞれ往復動する第1及び第2真空用ピストンと、を備え、
前記第1及び第2圧縮用ピストンのピストンヘッドの各径は、前記第1及び第2真空用ピストンのピストンヘッドの各径よりも小さく、
前記第1及び第2圧縮用ピストンは、前記第1及び第2真空用ピストンを前記回転軸の軸心方向で挟むように前記回転軸に連結され、
前記第1及び第2圧縮用シリンダ内のそれぞれには、前記第1及び第2圧縮用シリンダの往復動によりそれぞれ容積が増減する第1及び第2圧縮用チャンバが形成され、
前記第1及び第2真空用シリンダ内のそれぞれには、前記第1及び第2真空用シリンダの往復動によりそれぞれ容積が増減する第1及び第2真空用チャンバが形成され、
前記第1及び第2圧縮用ピストンは、それぞれ、前記第1及び第2圧縮用チャンバ内に導入された空気を前記第1及び第2圧縮用チャンバ内で圧縮して前記第1及び第2圧縮用チャンバ外へ排出し、
前記第1及び第2真空用ピストンは、それぞれ、前記第1及び第2真空用チャンバ内に吸引した空気を前記第1及び第2真空用チャンバ外へ排出する、ピストン駆動装置。
【請求項2】
前記回転軸に直交し、前記第1及び第2圧縮用ピストン及び第1及び第2真空用ピストンのピストンヘッドと交差する仮想平面が存在する、請求項1のピストン駆動装置。
【請求項3】
前記回転軸を駆動するアウターロータ型モータを備えている、請求項1又は2のピストン駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸に複数のピストンを連結させてピストンを往復動させる装置が知られている。特許文献1には、関連した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−95700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ピストンヘッドの径が異なる複数の圧縮用ピストンと複数の真空用ピストンを回転軸に連結させる場合、圧縮用ピストンと真空用ピストンの並び順によっては、ピストン駆動装置が回転軸の軸心方向に大型化する恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、回転軸の軸心方向への大型化が抑制されたピストン駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、クランクケースと、前記クランクケースに固定された第1及び第2圧縮用シリンダと、前記クランクケースに固定された第1及び第2真空用シリンダと、前記クランクケース内で回転可能に支持された回転軸と、前記回転軸に連結されて前記第1及び第2圧縮用シリンダ内でそれぞれ往復動する第1及び第2圧縮用ピストンと、前記回転軸に連結されて前記第1及び第2真空用シリンダ内でそれぞれ往復動する第1及び第2真空用ピストンと、を備え、前記第1及び第2圧縮用ピストンのピストンヘッドの各径は、前記第1及び第2真空用ピストンのピストンヘッドの各径よりも小さく、前記第1及び第2圧縮用ピストンは、前記第1及び第2真空用ピストンを前記回転軸の軸心方向で挟むように前記回転軸に連結されている、ピストン駆動装置によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転軸の軸心方向への大型化が抑制されたピストン駆動装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜3は、それぞれピストン駆動装置Aの正面図、側面図、背面図である。ピストン駆動装置Aは、4つのシリンダ10a〜10d、4つのシリンダ10a〜10dが固定されたクランクケース20、クランクケース20の上部に配置されたモータM、を含む。シリンダ10a〜10dは、クランクケース20の周囲に放射状に固定されている。シリンダ10aは、クランクケース20に固定されたシリンダ本体12a、シリンダ本体12aに固定されたシリンダヘッド15aを含む。シリンダ本体12aとシリンダヘッド15aとの間には仕切板14aが介在している。同様に、シリンダ10b〜10dもそれぞれシリンダ本体12b〜12d、シリンダヘッド15b〜15dを含む。シリンダ本体12b〜12dのそれぞれと、シリンダヘッド15b〜15dのそれぞれとの間には、仕切板14b〜14dが介在している。シリンダ10a等やクランクケース20は金属製であり、具体的には放熱性がよいアルミ製である。クランクケース20にはノズルNが固定されている。ノズルNはクランクケース20内に導入された空気を外部へと排出する。また、シリンダヘッド15aには、開口Ha1、Ha2が設けられている。同様に、シリンダヘッド15b〜15dには、それぞれ、開口Hb1、Hb2、Hc1、Hc2、Hd1、Hd2が設けられている。
【0010】
図4は、
図3のA−A断面図である。モータMは、コイル30、ロータ40、ステータ50、プリント基板PB等を含む。ステータ50は、クランクケース20に固定されている。ステータ50には、複数のコイル30が巻回されている。コイル30は、プリント基板PBと電気的に接続されている。尚、プリント基板PBには、
図1、2、3に示すように、ケーブルを介してコネクタC1、C2が接続されている。コイル30が通電されることにより、ステータ50が励磁される。ロータ40は、回転軸42、ヨーク44、1つまたは複数の永久磁石46、を有している。回転軸42は、クランクケース20内に配置された複数の軸受に回転可能に支持されている。回転軸42には、ハブ43を介してヨーク44が固定されており、ヨーク44は回転軸42と共に回転する。ヨーク44は、略円筒状であり金属製である。ヨーク44の内周側面には、1つまたは複数の永久磁石46が固定されている。永久磁石46は、ステータ50の外周面と対向している。コイル30が通電されることにより、ステータ50が励磁される。従って、永久磁石46とステータ50との間に磁気的吸引力、反発力が作用する。この磁力の作用により、ロータ40は回転する。このように、モータMはロータ40が回転するアウターロータ型のモータである。
【0011】
ファンFは、ロータ40のヨーク44に固定されており、ロータ40と共に回転する。これにより、クランクケース20、シリンダ10a〜10dが冷却される。また、可動部分での摩擦による温度上昇なども抑制できる。
【0012】
図4に示すように、モータMの軸心を含む断面から見た場合、ファンFとモータMとは、ファンFの径方向に並ぶ。具体的には、ファンFと、コイル30と、ロータ40と、ステータ50とが、ファンFの径方向に並ぶ。従って、例えば、ファンFをモータMよりも軸方向端部(
図4での右側)に配置して回転軸先端に固定した場合と比較して、本実施例のピストン駆動装置Aは回転軸42の軸心方向での厚みが低減されている。更に、ファンFとシリンダ10a〜10dとの距離が近づくため冷却効果が高まる。
【0013】
また、ファンFをモータMよりも軸方向端部に配置して回転軸先端に固定する場合、長い回転軸が必要となる。回転軸が長いと、その回転軸の回転を支持するために大きな軸受け又は複数の軸受けが必要になる。本実施例のピストン駆動装置Aでは短い回転軸42を採用できるため、小さな軸受け又は少ない数の軸受けで支持することができる。このため、ピストン駆動装置A全体の重量も低減されている。
【0014】
図5は、
図3のB−B断面図である。尚、
図5においては、モータMについては断面を示していない。
図5に示すように、シリンダ本体12aは、クランクケース20の外周壁に形成された孔と連通するようにクランクケース20の外周壁に固定されている。また、シリンダ本体12aの先端には、仕切板14aを介してシリンダヘッド15aが固定されている。シリンダ本体12a内にはチャンバ13aが形成されている。チャンバ13aは、シリンダ本体12a、ピストンPaのピストンヘッド25a、仕切板14aによって画定される。モータMの回転に伴ってピストンPaが往復動することにより、チャンバ13aの容積が増減する。ピストンPaの根元部はクランクケース20内に位置しており、モータMから回転動力を受ける回転軸42に軸受を介して連結されている。詳細には、回転軸42の中心位置に対して偏心した位置でピストンPaの根元部が連結されており、回転軸42の一方向の回転に伴ってピストンPaは往復動する。他のシリンダ10b〜10d内にも、シリンダ10b〜10d内をそれぞれ往復動するピストンPb〜Pdが設けられている。これらピストンは、それぞれ位置位相が90度毎にずれている。また、ピストンPa〜Pdは、回転軸42周りに90度の等間隔を空けて配置されている。ピストンPaは、回転軸42に連結された根元部を有するピストンロッド21a、ピストンロッド21aの先端に不図示のネジにより固定されたピストンヘッド25a、を含む。同様に、ピストンPb〜Pdは、それぞれ、ピストンロッド21b〜21d、ピストンヘッド25b〜25dを含む。尚、回転軸42には、ピストンPa〜Pdを挟むようにバランサB1、B2が回転軸42に対して回転不能に固定されている。
【0015】
ここで、ピストン駆動装置Aは、外部から空気を吸引して圧縮して外部へ排出する圧縮機としての機能と、外部から空気を吸引して排気する真空機としての機能とを有する。具体的には、クランクケース20を介して互いに反対側に固定されたシリンダ10a、10cは、それぞれ第1及び第2圧縮用シリンダの一例であり、ピストンPa、Pcは、それぞれ第1及び第2圧縮用ピストンの一例である。具体的には、ピストンPaが往復動することにより、開口Ha2から空気がチャンバ13a内に導入されてピストンPaによりチャンバ13a内で圧縮されてチャンバ13a外へ排出されて、開口Ha1からピストン駆動装置Aの外部へと排出される。同様に、ピストンPcが往復動することにより、開口Hc2から空気がチャンバ13c内に導入されてピストンPcによりチャンバ13c内で圧縮されてチャンバ13c外へ排出されて、開口Hc1からピストン駆動装置Aの外部へと排出される。
図3には、ピストンPa、Pcの往復動による空気の流れる方向を矢印で示している。チャンバ13a、13cは、それぞれ第1及び第2圧縮用チャンバの一例である。
【0016】
また、クランクケース20を介して互いに反対側に固定されたシリンダ10b、10dは、それぞれ第1及び第2真空用シリンダの一例であり、ピストンPb、Pdは、それぞれ第1及び第2真空用ピストンの一例である。具体的には、ピストンPbが往復動することにより、開口Hb2から空気がチャンバ13b内に吸引されて、ピストンPbのピストンヘッド25bを介してチャンバ13b外であるクランクケース20内に空気が排出されてノズルNから外部に排出される。同様に、ピストンPdが往復動することにより、開口Hd1から空気がチャンバ13d内に吸引されて、ピストンPdのピストンヘッド25dを介してチャンバ13d外であるクランクケース20内に空気が排出されてノズルNから外部に排出される。
図3には、ピストンPb、Pdの往復動によって外部からクランクケース20内に吸引される空気の方向を矢印で示している。チャンバ13b、13dは、それぞれ第1及び第2真空用チャンバの一例である。ピストンPb、Pdについては詳しくは後述する。
【0017】
以上のように、ピストンPa、Pcにより圧縮された空気と、ピストンPb、Pdにより吸引された空気とは、ピストン駆動装置A内では合流せずに外部へと排出される。これにより、ピストン駆動装置Aは、単体で圧縮機としての機能と真空機としての機能を有している。
【0018】
ここで
図4、5に示すように、圧縮用ピストンであるピストンPa、Pcのピストンヘッド25a、25cのそれぞれの径Da、Dcは、真空用ピストンであるピストンPb、Pdのピストンヘッド25b、25dのそれぞれの径Db、Ddよりも小さい。この理由は次による。圧縮用ピストンであるピストンPa、Pcのほうが空気を圧縮して外部へ排出するため、ピストンヘッドが受ける単位面積当たりの圧力が比較的大きい。これに対して、真空用ピストンであるピストンPb、Pdは、空気を圧縮しないため、ピストンヘッド25b、25dが受ける単位面積当たりの圧力は比較的小さい。ここで、ピストンPa、Pcが受ける力と、ピストンPb、Pdが受ける力との差が大きいと、回転軸42に対して悪影響を与える恐れがある。そのため、このような力の差を小さくするために、ピストンPa、Pcのピストンヘッド25a、25cの径Da、Dcは、ピストンPb、Pdのピストンヘッド25b、25dのそれぞれの径Db、Ddよりも小さく設定されている。尚、径Da、Dcは同じ大きさであり、径Db、Dcも同じ大きさである。また、シリンダ10a〜10dの大きさも、それぞれ、ピストンヘッド25a〜25dの径Da〜Ddに対応して設定されている。具体的には、ピストンヘッド25a〜25dがそれぞれ摺動するシリンダ本体12a〜12dの内面の内径は、それぞれ径Da〜Ddと略同じである。
【0019】
ここで、ピストンPa、Pcは、ピストンPb、Pdを挟むようにして回転軸42に連結されている。換言すれば、4つのピストンのうち、ピストンPa、Pcが最も外側に配置されている。この理由は、比較的大きい径Db、Ddを有したピストンPb、Pdの少なくとも一方が4つのピストンの内最も外側に配置されると、回転軸42の軸心方向に装置が大形化するためである。本実施例では、比較的小さい径Da、Dcを有したピストンPa、Pcが、比較的大きい径Db、Ddを有したピストンPb、Pdを挟むように配置することにより、回転軸42の軸心方向でのピストン駆動装置Aの大型化を抑制している。
【0020】
尚、
図4、5では、回転軸42に直交する仮想平面VPを示している。仮想平面VPは、全てのピストンPa〜Pdのピストンヘッド25a〜25dに交差する。換言すれば、ピストンPa〜Pdのピストンヘッド25a〜25dが仮想平面VPに交差する程度に、ピストンPa〜Pdは互いに接近して配置されている。このように接近して配置されるピストンPa〜Pdにおいて、ピストンPa、PcがピストンPb、Pdを挟むように配置することにより、回転軸42の軸心方向でのピストン駆動装置Aの大型化を抑制している。
【0021】
次に、ピストンPbの構造について説明する。尚、ピストンPdは、ピストンPbと同じ構造を有しているため説明を省略する。
図6は、真空用のピストンPbの説明図である。尚、
図6は、ピストン駆動装置Aを底面から見た場合のシリンダ10bの断面図である。シリンダヘッド15bは、互いに仕切られた室18b、19bが設けられ、室18b、19bにそれぞれ連通した開口Hb2、Hb1が設けられている。仕切板14bには、室18bとチャンバ13bとを連通する孔部16bが形成されている。尚、仕切板14bには、室19bとチャンバ13bとを連通する貫通孔は形成されていないが、室19bとチャンバ13bとを連通する貫通孔が形成されこの貫通孔が塞がれていてもよい。
【0022】
仕切板14bには、室18bから孔部16bを介してチャンバ13bへの空気の流れを許容するが逆方向の流れは規制する逆止弁V1が固定されている。逆止弁V1は、ピストンヘッド25bと対向する仕切板14bの内面にネジS1により固定されている。逆止弁V1の基端がネジS1により仕切板14bに固定されており、逆止弁V1の先端が自由端であって孔部16bを開閉するように弾性変形する。逆止弁V1は、チャンバ13bと室18bとの圧力差により弾性変形して孔部16bを開閉する。逆止弁V1は、チャンバ13b内に設けられている。逆止弁V1は、例えばステンレス等の金属製であるがこれに限定されない。
【0023】
ピストンPbは、回転軸42に連結された根元部を有するピストンロッド21b、ピストンロッド21bの先端に不図示のネジにより固定されたピストンヘッド25b、を含む。ピストンロッド21bとピストンヘッド25bとの間には、シールリングCが挟まれている。シールリングCは、ピストンPbとシリンダ本体12bの内側面との間をシールするものであり、たとえばフッ素樹脂などの自己潤滑性に優れた材料により形成されている。
【0024】
ピストンロッド21bの先端とピストンヘッド25bとの間には空間SPが形成されている。具体的には、ピストンロッド21bの先端に凹部23bが形成されており、凹部23bの周囲に段部24bが形成されている。ピストンヘッド25bは段部24bに嵌合して固定されている。ピストンヘッド25bには、空間SPに連通した貫通孔26bが形成されている。ピストンロッド21bには、空間SPに連通した貫通孔22bが形成されている。
【0025】
ピストンロッド21bの凹部23bと対向するピストンヘッド25bの内面には、ネジS2により逆止弁V2が固定されている。ネジS2は、固定部材の一例である。逆止弁V2の基端がネジS2によりピストンヘッド25bに固定され、逆止弁V2の先端が自由端であって貫通孔26bを開閉するように弾性変形する。逆止弁V2は、チャンバ13bとクランクケース20内との圧力差により弾性変形して貫通孔26bを開閉する。逆止弁V2は、空間SP内に設けられ、空間SP内で弾性変形可能である。逆止弁V2は、チャンバ13bから貫通孔26b、空間SP、貫通孔22bを介してクランクケース20内への空気の流れは許容するが逆方向の流れは規制する。逆止弁V2は、例えばステンレス等の金属製であるがこれに限定されない。逆止弁V2は、弾性変形可能な程度の厚みを有した板状の部材である。
【0026】
ピストンPbの往復動によってチャンバ13bの容積が最小値から増大すると、外部の空気が開口Hb2を介して室18b内に導入され、逆止弁V1の先端が孔部16bから離れるように反って弾性変形して孔部16bを開いて空気がチャンバ13b内に導入される。チャンバ13bの容積が最大値から低下すると、逆止弁V2の先端が貫通孔26bから離れるように反って弾性変形して貫通孔26bを開き、チャンバ13b内の空気が貫通孔26b、空間SP、貫通孔22bを介してクランクケース20内に導入される。尚、この際には、チャンバ13bの内圧により逆止弁V1は孔部16bを閉じたままに維持される。このように、ピストンPbの往復動により外部からチャンバ13bを介してクランクケース20内に空気が導入される。尚、シリンダ10d内に配置されたピストンPdについても同様の構造を有している。従って、クランクケース20内にはこれらピストンの往復動によって外部から空気が導入される。
【0027】
図6に示すように、逆止弁V2は、ピストンロッド21bの先端とピストンヘッド25bとの間に配置されている。このため、逆止弁V2の先端が貫通孔26bから離れるように反って弾性変形する際に、逆止弁V2の先端が凹部23bの底面に当接することにより、逆止弁V2のそれ以上の弾性変形は制限される。従って、逆止弁V2の最大の弾性変形量が一定に制限されている。例えば、このような逆止弁が変形量の大きい弾性変形を繰り返すと、逆止弁の耐久性が低下するおそれがある。また、逆止弁の変形量が大きいと弾性限界を超えて塑性変形し、適切に貫通孔を閉じることができなくなるおそれもある。このように逆止弁の性能が低下するおそれがある。本実施例では、逆止弁V2はピストンロッド21bとピストンヘッド25bとの間に配置されピストンロッド21bによって弾性変形量が制限されている。このため、弾性変形量が大きすぎることに伴う逆止弁V2の性能の低下を抑制できる。
【0028】
また、貫通孔22bは、逆止弁V2をピストンヘッド25bに固定しているネジS2を逃がしている。具体的には、空間SP内に突出したネジS2の頭部との干渉を回避するように、ネジS2と略同軸上に貫通孔22bが形成されている。従って、ネジS2の突出量を考慮せずに、空間SPの厚みを設定できる。これにより、例えば空間SPの厚みをネジS2の頭部よりも薄く設定することもでき、ピストンロッド21bの先端とピストンヘッド25bとの合計の厚みを薄くすることもできる。
【0029】
また、貫通孔26bは、チャンバ13bに突出したネジS1の頭部を逃がす位置に形成されている。このため、ネジS1とピストンヘッド25bとの干渉が回避される。これにより、ネジS1の頭部がチャンバ13bに突出しているような場合であっても、貫通孔26bがネジS1の頭部を逃がすことにより、チャンバ13bの容積の最小値をできる限り小さくすることができ、チャンバ13bの容積の最小値に対する最大値の比率を確保できる。これにより、多くの空気をクランクケース20内に導入することができる。
【0030】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
A ピストン駆動装置
M モータ
10a、10c シリンダ(第1及び第2圧縮用シリンダ)
10b、10d シリンダ(第1及び第2真空用シリンダ)
12a〜12d シリンダ本体
13a、13c チャンバ(第1及び第2圧縮用チャンバ)
13b、13d チャンバ(第1及び第2真空用チャンバ)
15a〜15d シリンダヘッド
20 クランクケース
Pa、Pc ピストン(第1及び第2圧縮用ピストン)
Pb、Pd ピストン(第1及び第2真空用ピストン)
25a〜25d ピストンヘッド
VP 仮想平面