(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートに人が座るなどしてパッドが変形した際に、ヒータがパッドから離れてしまうと、支えを失うことでヒータが不要に変形してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ヒータの不要な変形を抑制することができるシートを提供することを目的とする。
また、本発明は、ヒータの組み付け作業性を向上させたり、部材の取付強度を向上させたりすることができるシートを提供することを目的とする。
また、本発明は、シートのデザイン性を向上させることができるシートを提供することを目的とする。
また、本発明は、パッドの構成を簡略化したり、シートを構成する部品の数を減らしたりすることができるシートを提供することを目的とする。
また、本発明は、ヒータ線にかかる荷重の影響を低減することができるシートを提供することを目的とする。
また、本発明は、パッドを容易に製造することができるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明のシートは、パッドと、前記パッドの着座者側の面に配置されたシート状のヒータと、を備えるシートであって、前記パッドは、着座者側の面において凹む第1の溝を有し、前記ヒータは、前記第1の溝に入り込んで、前記第1の溝の内面に貼り付けられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、パッドが変形した際にヒータをパッドに追従させることができるので、ヒータがパッドによって支えられることで、ヒータの不要な変形を抑制することができる。これにより、例えば、ヒータの耐久性を向上させることができる。
【0008】
前記したシートにおいて、前記ヒータは、前記第1の溝の内面のうち底面に貼り付けられている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、第1の溝にヒータを貼り付けるための部材や接着剤などを配置しやすくなるので、ヒータの組み付け作業性を向上させることができる。
【0010】
前記したシートにおいては、前記ヒータを前記第1の溝の内面に貼り付けるためのシート状の貼付部材を備え、前記パッドは、着座者側の面に、前記第1の溝を挟む第1の面と第2の面を有し、前記貼付部材は、前記第1の面、前記第1の溝の内面および前記第2の面に沿って配置されている構成とすることができる。
【0011】
これによれば、広い面積でヒータをパッドに貼り付けることができるので、ヒータの取付強度を向上させることができる。
【0012】
前記したシートにおいては、前記パッドを覆う表皮材を備え、前記パッドは、着座者側の面に、前記表皮材を吊り込むための第2の溝を有し、前記第1の溝は、前記第2の溝よりも浅い構成とすることができる。
【0013】
これによれば、第1の溝が浅いことで、第1の溝にヒータを貼り付けるための部材や接着剤などを配置しやすくなるので、ヒータの組み付け作業性を向上させることができる。
【0014】
前記したシートにおいて、前記ヒータは、シート状の基材と、前記基材に支持されるヒータ線と、を備え、前記第1の溝は、2つが並んで設けられ、互いの間隔が所定の間隔以下である第1部分と、互いの間隔が前記所定の間隔よりも大きい第2部分とを有し、前記ヒータ線は、着座者側から見て、前記第2部分と重なるように配置された部分を有する構成とすることができる。
【0015】
前記したシートにおいて、前記ヒータ線は、着座者側から見て、前記第1部分と重ならないように2つの前記第1の溝の前記第1部分の間に配置された部分を有する構成とすることができる。
【0016】
前記したシートにおいて、前記ヒータは、シート状の基材と、前記基材に支持されるヒータ線と、を備え、前記ヒータ線は、着座者側から見て、それぞれが前記第1の溝と交差する方向に直線状に延び、前記第1の溝が延びる方向に並んで配置された複数の直線部と、隣接する直線部同士を繋ぐU字状に屈曲した屈曲部とを有するジグザグ状に形成された部分を有し、前記複数の直線部は、着座者側から見て、前記第1の溝の少なくとも一方の縁と交差するように配置されている構成とすることができる。
【0017】
前記したシートにおいては、前記パッドを覆う表皮材を備え、前記ヒータは、前記パッドと前記表皮材の間に配置され、前記表皮材は、前記第1の溝に入り込んで配置されている構成とすることができる。
【0018】
本発明では、ヒータが第1の溝に入り込んでいるため、表皮材を第1の溝に入り込んだ状態で配置することができる。これにより、シートの表面に表皮材の第1の溝に入り込んだ部分によって形成されるラインをきれいに出すことができるので、シートのデザイン性を向上させることができる。
【0019】
前記したシートにおいては、前記パッドを覆う表皮材を備え、前記パッドは、着座者側の面に、前記表皮材を当該パッドに固定するための固定部材を備え、前記第1の溝は、着座者側から見て、他の部分よりも幅が広い幅広部を有し、前記固定部材は、前記幅広部に設けられている構成とすることができる。
【0020】
これによれば、固定部材を第1の溝に設けた構成において、固定部材の面積を大きくできるので、表皮材の取付強度を向上させることができる。
【0021】
前記したシートにおいては、前記パッドを覆う表皮材を備え、前記パッドは、着座者側の面に、前記表皮材を当該パッドに固定するための固定部材を備え、前記固定部材は、前記ヒータの位置決め部材として機能する構成とすることができる。
【0022】
これによれば、パッドに固定部材とヒータの位置決め部材の両方を設ける必要がなくなるので、パッドの構成を簡略化したり、シートを構成する部品の数を減らしたりすることができる。
【0023】
前記したシートにおいて、前記ヒータは、前記パッドと前記表皮材の間に配置されており、前記固定部材が配置された位置に前記固定部材を露出させる開口部を有する構成とすることができる。
【0024】
これによれば、表皮材を固定部材でパッドに固定することができ、この固定によってヒータの開口部の周囲の部分がパッドと表皮材で挟まれるので、ヒータの位置を決めることができる。
【0025】
前記したシートにおいては、前記パッドを覆う表皮材を備え、前記パッドは、着座者側の面に、前記表皮材を当該パッドに固定するための固定部材を備えるとともに、着座者側とは反対側に貫通する穴部を有し、前記固定部材は、前記穴部を挟むように前記穴部の両側に配置されている構成とすることができる。
【0026】
これによれば、穴部の両側で表皮材をパッドに固定できるので、穴部付近での表皮材の撓みを抑制することができる。これにより、ヒータの、パッドの穴部付近に配置される部分の不要な変形も抑制することができる。
【0027】
前記したシートにおいて、前記パッドは、前記第1の溝の縁の少なくとも一方に形成される角部を有し、前記ヒータは、シート状の基材と、前記基材に支持されるヒータ線と、を備え、前記ヒータ線は、屈曲部を有し、前記屈曲部は、着座者側から見て、前記角部を避けて配置されている構成とすることができる。
【0028】
これによれば、着座者が座ったときなどにヒータ線の屈曲部に角部から局所的な荷重がかかることを抑制できるので、ヒータ線にかかる荷重の影響を全体として低減することができる。
【0029】
前記したヒータ線が第1の溝の第1部分と重ならないように配置されたシートにおいては、前記パッドを覆う表皮材を備え、前記パッドは、着座者側の面に、前記表皮材を当該パッドに固定するための固定部材を備え、前記固定部材は、前記第1部分に設けられている構成とすることができる。
【0030】
これによれば、第1の溝のヒータ線が配置されているところに固定部材を設けるような構成と比較して、パッドの構成を簡略化したり、固定部材を備えるパッドを容易に製造したりすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ヒータの不要な変形を抑制することができる。
【0032】
また、本発明によれば、ヒータを第1の溝の底面に貼り付けることで、ヒータの組み付け作業性を向上させることができる。
【0033】
また、本発明によれば、ヒータを第1の溝の内面に貼り付けるシート状の貼付部材を第1の溝を挟む第1の面と第2の面および第1の溝の内面に沿って配置することで、ヒータの取付強度を向上させることができる。
【0034】
また、本発明によれば、第1の溝を表皮材を吊り込むための第2の溝よりも浅い構成とすることで、ヒータの組み付け作業性を向上させることができる。
【0035】
また、本発明によれば、表皮材を第1の溝に入り込ませて配置することで、シートのデザイン性を向上させることができる。
【0036】
また、本発明によれば、第1の溝に幅広部を設け、表皮材をパッドに固定するための固定部材を幅広部に設けることで、表皮材の取付強度を向上させることができる。
【0037】
また、本発明によれば、固定部材をヒータの位置決め部材として機能させることで、パッドの構成を簡略化したり、シートを構成する部品の数を減らしたりすることができる。
【0038】
また、本発明によれば、ヒータをパッドと表皮材の間に配置し、ヒータの固定部材が配置された位置に固定部材を露出させる開口部を設けることで、表皮材を固定部材でパッドに固定することができ、ヒータの位置を決めることができる。
【0039】
また、本発明によれば、固定部材をパッドの穴部を挟むように穴部の両側に配置することで、穴部付近での表皮材の撓みを抑制することができ、ヒータのパッドの穴部付近に配置される部分の不要な変形も抑制することができる。
【0040】
また、本発明によれば、ヒータ線の屈曲部を第1の溝の縁に形成される角部を避けて配置することで、ヒータ線にかかる荷重の影響を低減することができる。
【0041】
また、本発明によれば、固定部材を第1の溝の第1部分に設けることで、パッドの構成を簡略化したり、固定部材を備えるパッドを容易に製造したりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明において、前後、左右、上下は、シートに座る者(着座者)を基準とする。
図1に示すように、本実施形態に係るシートは、自動車で使用される車両用シートSとして構成されており、シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3からなる。
【0044】
車両用シートSは、図示しないシートフレームと、シートフレームに被せられたパッドPと、パッドPの着座者側の面に配置されたシート状のヒータHと、パッドPやヒータHを覆う表皮材7とを主に備えている。
パッドPは、シートクッションS1のパッドであるシートクッションパッドP1と、シートバックS2のパッドであるシートバックパッドP2とを含んでいる。また、ヒータHは、シートクッションパッドP1の着座者側の面である上側の面に配置されるシートクッションヒータH1と、シートバックパッドP2の着座者側の面である前側の面に配置されるシートバックヒータH2とを含んでいる。
【0045】
図2に示すように、シートバックパッドP2は、パッド本体としてのバックパッド本体21と、カバー部材としての第1カバー部材22および第2カバー部材23と、第3カバー部材としてのフィルム状部材24とを主に備えて構成され、内部に空気を通すための通気路20が形成されている。また、シートバックパッドP2は、着座者の上体背部に対面するバック中央部P21と、バック中央部P21の左右両側でバック中央部P21よりも前に張り出すように設けられた左右のバック側部P22とを有している。
【0046】
図3に示すように、バックパッド本体21は、ウレタンフォームなどから形成され、バック中央部P21に、前側の面において後方に凹むように形成された、凹部としての第1凹部211および第2凹部212と、穴部213とを有している。
【0047】
第1凹部211は、シートバックS2の着座者側である前側から見て、上下に長い略矩形状をなし、バック中央部P21の中央部から下部にわたるように形成されている。第1凹部211の上端は、中央部が穴部213の下端と繋がるように形成されている。第1凹部211の内部には、第1凹部211の底面から前方に突出する凸部214が上下に並んで設けられている。凸部214は、後述する第1カバー部材22を後から支持する部分である。
第2凹部212は、前側から見て、左右に長い略形状をなし、バック中央部P21の上部において第1凹部211の上端から間隔をあけて形成されている。第2凹部212の下端は、中央部が穴部213の上端と繋がるように形成されている。第1凹部211と第2凹部212の左右の長さは、略同じ長さとなっている。
【0048】
穴部213は、前側から見て、上下に長く形成されており、第1凹部211と第2凹部212の間に設けられている。穴部213の左右の長さは、第1凹部211および第2凹部212の左右の長さよりも小さくなっている。穴部213は、第1凹部211の上端の中央部と、第2凹部212の下端の中央部とを繋ぐように形成されている。第1凹部211、第2凹部212および穴部213の底面は、略面一となっている。穴部213は、その一部である上下方向中央部が、シートバックS2の着座者側とは反対側の後側に貫通する、略長円形状の貫通部213Aとなっている。
【0049】
図4に示すように、第1カバー部材22は、前側から第1凹部211を覆うように配置されて第1凹部211との間で通気路20の一部を形成する部材である。第1カバー部材22は、ウレタンフォームなどから、上下に長い略矩形の板状に形成されている。第1カバー部材22には、通気路20内とシートバックパッドP2の外部とを連通する、前後に貫通した第1通気孔221(通気孔)が設けられている。第1通気孔221は、複数設けられている。より詳細には、第1通気孔221は、第1カバー部材22の左右両端部の上部、中央部および下部にそれぞれ1つずつ設けられている。また、第1通気孔221は、第1カバー部材22の左右方向中央部において、隣り合う凸部214の間に対応する位置と最も下に配置された凸部214の下側に対応する位置にそれぞれ3つが左右に並んで設けられている。また、第1カバー部材22には、前側の面の左右両端に、後方に凹む溝形成凹部222が設けられている。溝形成凹部222は、後述する縫合部配置溝25の一部を形成する。第1カバー部材22は、後側の面の周縁部がバックパッド本体21の第1凹部211の周囲の部分に接着剤によって貼り付けられることで、バックパッド本体21に固定されている。
【0050】
第2カバー部材23は、前側から第2凹部212を覆うように配置されて第2凹部212との間に通気路20の一部を形成する部材である。第2カバー部材23は、ウレタンフォームなどから、左右に長い略矩形の板状に形成されている。第2カバー部材23には、通気路20内とシートバックパッドP2の外部とを連通する、前後に貫通した第2通気孔231(通気孔)が設けられている。第2通気孔231は、複数設けられている。より詳細には、第2通気孔231は、第2カバー部材23の左右両端部に1つずつ設けられている。また、第2カバー部材23には、前側の面の左右方向中央部に、後方に凹む溝部232が、所定の間隔Dで左右に並んで2つ設けられている。溝部232は、第1カバー部材22の溝形成凹部222と同様に、縫合部配置溝25の一部を形成する。第2カバー部材23は、後側の面の周縁部がバックパッド本体21の第2凹部212の周囲の部分に接着剤によって貼り付けられることで、バックパッド本体21に固定されている。
【0051】
シートバックパッドP2は、第1カバー部材22および第2カバー部材23に複数の通気孔221,231が設けられていることで、前側の面に、通気路20内と外部とを連通する通気孔221,231を複数有している。
【0052】
フィルム状部材24は、前側から穴部213を覆うように配置されて穴部213との間で通気路20の一部を形成する部材であり、第1カバー部材22と第2カバー部材23の間に配置されている。フィルム状部材24は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などの合成樹脂系材料からなるフィルムであり、上下に長く、第1カバー部材22および第2カバー部材23よりも薄い略矩形の板状に形成されている。フィルム状部材24は、バックパッド本体21、第1カバー部材22および第2カバー部材23よりも通気性が低い構成である。具体的に、フィルム状部材24は、バックパッド本体21、第1カバー部材22および第2カバー部材23よりも通気性が低い材料から形成され、前後に貫通する孔が設けられていないことで、バックパッド本体21、第1カバー部材22および第2カバー部材23よりも通気性が低くなっている。なお、通気性は、フラジール形法(JIS L 1096(織物及び編物の生地試験方法) 8.26.1 A法)などにより測定して比較することができる。フィルム状部材24は、後側の面の左右両端部がバックパッド本体21の穴部213の左右両側の部分に接着剤によって貼り付けられることで、バックパッド本体21に固定されている。
【0053】
シートバックS2は、図示しないブロアによって貫通部213Aから通気路20内の空気が吸引されることで、第1通気孔221および第2通気孔231から空気を吸い込むように構成されている。なお、シートバックS2は、第1通気孔221および第2通気孔231から空気を吹き出すように構成されていてもよい。
【0054】
シートバックパッドP2は、前側の面において後方に凹むように形成された、第1の溝としての縫合部配置溝25と、第2の溝としての吊り込み溝26とを有している。
吊り込み溝26は、表皮材7を吊り込むための溝であり、バック中央部P21と左右のバック側部P22との間に1つずつ設けられている。各吊り込み溝26は、縫合部配置溝25よりも深い溝として形成されており、略上下方向に沿って延びるように設けられている。
【0055】
縫合部配置溝25は、表皮材7の後述する縫合部7Aが入り込んで配置される溝であり、バック中央部P21の左右方向中央部において2つが左右に並んで設けられている。各縫合部配置溝25は、略上下方向に沿って延びるように設けられている。より詳細には、縫合部配置溝25は、前側から見て、互いの間隔が所定の間隔D以下である第1部分251と、第1部分251の下に設けられた、互いの間隔が所定の間隔Dよりも大きい第2部分252とを有している。そして、第1部分251は、バック中央部P21の左右方向中央部の上端から、第2カバー部材23の溝部232を通って、穴部213(フィルム状部材24)の左側または右側の部分まで、上下方向に沿って略まっすぐ延びるように設けられている。また、第2部分252は、第1部分251の下端から、バック中央部P21の穴部213の左側または右側の部分を第1カバー部材22の上端に沿って左右方向外側に向けて延びて溝形成凹部222の上側で下方に向けて屈曲した後、第1カバー部材22の溝形成凹部222を通って、バック中央部P21の下端まで、上下方向に沿って略まっすぐ延びるように設けられている。各縫合部配置溝25は、第1部分251において第2凹部212と交差するように設けられている。
【0056】
各縫合部配置溝25は、第1部分251の下端部、より詳細には、穴部213(フィルム状部材24)の左または右に位置する部分に幅広部253を有している。幅広部253は、第1部分251の左右方向外側の縁が第1部分251の他の部分よりも外側に広がるように形成されていることで、縫合部配置溝25の他の部分よりも幅が広くなっている。各縫合部配置溝25の第1部分251に設けられた幅広部253には、それぞれ、固定部材としてのシート状の第1ファスナ部材51が、底面に貼り付けられるなどして設けられている。
【0057】
第1ファスナ部材51は、表皮材7をパッドPに固定するための部材であり、表皮材7に設けられるシート状の第2ファスナ部材52(
図7参照)とともに面ファスナ5を構成している。第1ファスナ部材51と第2ファスナ部材52は、例えば、公知の面ファスナで採用される構成を有し、互いに着脱可能となっている。第1ファスナ部材51は、幅広部253に設けられていることで、バックパッド本体21の前側の面に備えられている。第1ファスナ部材51は、穴部213およびフィルム状部材24を挟むように、穴部213およびフィルム状部材24の左右両側に配置されている。また、第1ファスナ部材51は、シートバックヒータH2の位置決め部材として機能する。
【0058】
図5(a)に示すように、シートバックヒータH2は、シート状の基材41と、基材41に支持される複数のヒータ線42とを主に備えて構成され、シートバックパッドP2と表皮材7の間に配置されている。また、シートバックヒータH2は、着座者の上体背部に対面する中央部ヒータH21と、中央部ヒータH21の左右両側に設けられた左右の側部ヒータH22とを有している。
【0059】
基材41は、不織布からなり、通気性を有している。基材41は、中央部ヒータH21を構成する上下に長い略矩形状の基材中央部411と、左右の側部ヒータH22を構成する左右の基材側部412とを有している。左右の基材側部412は、基材中央部411を挟んでH字形状をなすように、左右対称に形成されている。より詳細に、左右の基材側部412は、それぞれが、上下に細長い側部本体412Aと、側部本体412Aの上下方向略中央部分から左右方向内側(中央部ヒータH21)に向けて延びて基材中央部411(中央部ヒータH21)に繋がる連結部412Bとを有する略T字形状に形成されている。
【0060】
基材中央部411(中央部ヒータH21)は、前側から見て、バック中央部P21の前側の面の略全体を覆うように配置されている。より詳細に、基材中央部411(中央部ヒータH21)は、フィルム状部材24を覆うように配置されることで、フィルム状部材24と重なって配置されている。これにより、貫通部213A(穴部213の貫通した部分)は、フィルム状部材24および基材41の両方によって覆われている。また、基材中央部411は、すべての第1通気孔221および第2通気孔231を覆うように配置されている。さらに、基材中央部411は、第1カバー部材22および第2カバー部材23の全体を覆うように配置されている。基材中央部411は、第1ファスナ部材51が配置された位置に開口部413を1つずつ有している。開口部413は、前後に貫通する矩形の穴状に形成されており、第1ファスナ部材51を露出させる。
基材側部412(側部ヒータH22)は、対応するバック側部P22の前側の面の下部において左右方向内側に寄せて配置されている。
【0061】
ヒータ線42は、基材41の着座者側の面に接着剤によって貼り付けられることで、基材41に固定されている。なお、参照する図面においては、理解を容易にするため、ヒータ線42を実線で示している。ヒータ線42は、シートバックパッドP2において、着座者の肩部を除く背中部分に対面するように配置され、前側から見て、略ジグザグ状に屈曲して形成された、第1ヒータ部42Aと、第2ヒータ部42Bと、第3ヒータ部42Cとを有している。
【0062】
第1ヒータ部42Aは、着座者の背中の上下方向中央から腰にかけての部分に対面するように、中央部ヒータH21に設けられている。第1ヒータ部42Aは、前側から見て、第1カバー部材22の全体と重なるように配置されている。また、第1ヒータ部42Aは、左右両端が、縫合部配置溝25の第2部分252(溝形成凹部222)と重なるように配置されている。より詳細に、第1ヒータ部42Aの左右両端部を構成するヒータ線42は、
図5(b)に示すように、複数の直線部421と、複数の屈曲部422とを有している。複数の直線部421は、それぞれが略左右方向(第2部分252と交差する方向)に沿うように直線状に延びて、略上下方向(第2部分252が延びる方向)に並んで配置されており、屈曲部422は、隣接する直線部421の端同士を繋ぐU字状に屈曲している。そして、ヒータ線42は、前側から見て、複数の直線部421が第2部分252の左右方向内側の縁25Eと交差するように配置され、左右方向外側の屈曲部422が第2部分252の左右方向外側の縁25Eにかからないように左右の縁25Eの間に配置されている。
【0063】
図6に示すように、シートバックパッドP2は、縫合部配置溝25の縁25Eに、第1カバー部材22の前側の面と、縫合部配置溝25の左右方向内側の面とによって形成される角部25Aを有している。屈曲部422は、前側から見て、角部25Aを避けて配置されている。より詳細には、ヒータ線42は、角部25Aに、屈曲部422ではなく、直線部421が載るように配置されている。
【0064】
図5(a)に示すように、第2ヒータ部42Bは、着座者の背中の肩部(肩胛骨)の間の部分に対面するように、中央部ヒータH21に設けられている。第2ヒータ部42Bは、前側から見て、フィルム状部材24と重なるように配置されている。シートバックS2においては、第2ヒータ部42Bがフィルム状部材24と重なるように配置され、第1ヒータ部42Aが第1カバー部材22と重なるように配置されていることで、ヒータ線42は、フィルム状部材24および第1カバー部材22の両方と重なるように配置されている。また、第2ヒータ部42Bは、縫合部配置溝25の第1部分251と重ならないように、2つの縫合部配置溝25の第1部分251の間に収まるように配置されている。
第3ヒータ部42Cは、着座者の背中の上下方向中央から腰にかけての部分の左右両側に対面するように、左右の側部ヒータH22にそれぞれ設けられている。
【0065】
このように構成されたシートバックヒータH2は、数箇所の位置で、シートバックパッドP2の前側の面に両面テープによって貼り付けられることで、シートバックパッドP2に固定されている。ここで、基材中央部411は、前側から見て、ヒータ線42が配置される範囲よりも外側まで延びている。具体的には、基材中央部411の上端部は、第2ヒータ部42Bの上端よりも上側まで延びており、基材中央部411の下端部は、第1ヒータ部42Aの最も下に配置された直線部421よりも下側まで延びている。また、基材中央部411の左右の端部は、第1ヒータ部42Aの左右の端よりも左右方向外側まで延びている。これにより、シートバックヒータH2を、基材41の上端部や下端部などでシートバックパッドP2に取り付けることができるので、シートバックヒータH2の取付強度を向上させることができる。
【0066】
また、シートバックヒータH2は、数箇所の位置で、
図6に例示するように、縫合部配置溝25の内面に、シート状の貼付部材としての両面テープ6によって貼り付けられている。より詳細に説明すると、両面テープ6は、ヒータHを縫合部配置溝25の内面などに貼り付けるための部材であり、符号を省略して示すテープ基材の前後両方の面に粘着層を有している。シートバックパッドP2は、前側の面に、一の縫合部配置溝25を挟む第1の面F1と第2の面F2を有している。両面テープ6は、第1の面F1、縫合部配置溝25の内面(具体的には、左右方向内側の面、底面、左右方向外側の面)、および、第2の面F2に沿って貼り付けられて配置されている。シートバックヒータH2は、両面テープ6により、当該両面テープ6を介して、第1の面F1、縫合部配置溝25の左右方向内側の面、縫合部配置溝25の底面、縫合部配置溝25の左右方向外側の面、および、第2の面F2に沿うように貼り付けられている。これにより、シートバックヒータH2は、縫合部配置溝25に対向する部分が、縫合部配置溝25に入り込んで配置されている。縫合部配置溝25は、吊り込み溝26よりも浅い溝なので、縫合部配置溝25に両面テープ6を配置しやすくなっている。これにより、ヒータHの組み付け作業性を向上させることができる。
【0067】
さらに、
図7に示すように、シートバックヒータH2は、フィルム状部材24に対向する部分が、フィルム状部材24の前側の面に両面テープ6によって貼り付けられている。
なお、両面テープ6は、ヒータHをパッドPの着座者側の面に貼り付けるための両面テープと同じものであってもよい。
【0068】
図8に示すように、表皮材7は、第1シート71と、第2シート72と、第3シート73とを備える3層構造を有し、第1シート71、第2シート72および第3シート73が縫い合わされることで一のシート状の部材を形成している。第1シート71は、表皮材7の表面部分を構成する部材であり、複数の微細な貫通孔71A(円形のパンチ穴)を有している。第3シート73は、表皮材7の裏側部分(パッドP側の部分)を構成する部材であり、通気性を有している。第2シート72は、第1シート71と第3シート73の間に配置される部材であり、通気性を有している。第2シート72は、第1シート71の着座者側とは反対側に配置されていることで、第1シート71の貫通孔71Aから露出している。第1シート71と第2シート72の色は互いに異なっている。一例として、第1シート71は黒色であり、第2シート72は青色である。
【0069】
図7に示すように、表皮材7は、複数枚(2枚)が縫い合わされることで形成された縫合部7Aを有している。縫合部7Aは、シートバックパッドP2に設けられた縫合部配置溝25の形状に沿うように形成されている。なお、本発明において、縫合部7Aの構造や形成の仕方などは特に限定されない。表皮材7の後側の面、具体的には、縫合部配置溝25に対向するように設けられた縫合部7Aの、第1ファスナ部材51に対向する部分には、第1ファスナ部材51とともに面ファスナ5を構成する第2ファスナ部材52が設けられている。第2ファスナ部材52は、表皮材7に、接着剤で貼り付けられたり、縫い合わせられたりすることで、表皮材7に固定されている。表皮材7は、第2ファスナ部材52が、シートバックヒータH2の開口部413を通ってシートバックパッドP2の第1ファスナ部材51に取り付けられることで、シートバックパッドP2に固定されている。そして、
図6に示すように、表皮材7は、その一部である縫合部7Aが、シートバックヒータH2とともに、縫合部配置溝25に入り込んで配置されている。これにより、縫合部7Aが前側に突出するのを抑制できるので、縫合部7Aの当たり感を抑制することができる。
【0070】
図7に戻り、シートバックS2においては、シートバックヒータH2が第1ファスナ部材51を露出させる開口部413を有しているので、表皮材7を第2ファスナ部材52と第1ファスナ部材51でシートバックパッドP2に固定することができる。そして、この固定によって、シートバックヒータH2の開口部413の周囲の部分が、シートバックパッドP2と表皮材7で挟まれるので、シートバックヒータH2の位置を決めることができる。このように、第1ファスナ部材51が位置決め部材として機能することで、パッドPに、ヒータHを固定するための部材と、ヒータHの位置を決めるための部材の両方を設ける必要がなくなるので、パッドPの構成を簡略化したり、車両用シートSを構成する部品の数を減らしたりすることができる。
【0071】
図9に示すように、シートクッションパッドP1は、クッションパッド本体11と、第4カバー部材12と、第5カバー部材13とを主に備え、内部に空気を通すための通気路10が形成されている。また、シートクッションパッドP1は、クッション中央部P11と、クッション中央部P11の左右両側でクッション中央部P11よりも上に張り出すように設けられた左右のクッション側部P12とを有している。
【0072】
クッションパッド本体11は、ウレタンフォームなどから形成されている。クッションパッド本体11は、クッション中央部P11の前部に、上側の面において下方に凹むように形成され、第4カバー部材12および第5カバー部材13が係合可能な、第3凹部111を有している。第3凹部111の底面には、後端部の右寄りの位置に、シートクッションS1の着座者側とは反対側の下側に貫通する貫通孔112が設けられている。
【0073】
第4カバー部材12は、第3凹部111に係合して通気路10を形成する部材である。第4カバー部材12は、ウレタンフォームなどから、前後に長く、前端部が下方に延出した略板状に形成されている。第4カバー部材12には、通気路10を形成する、上下に貫通した通気路形成穴121が設けられている。通気路形成穴121は、貫通孔112に対向する位置から左右方向中央に向けて延びた後、前方に屈曲して延びる第1形成穴122と、第1形成穴122の前端から左右方向外側に向けて分岐するように延びた後、左右方向の端から略前方に向けて延びる第2形成穴123とを有している。第4カバー部材12は、下側の面がクッションパッド本体11の第3凹部111の底面に接着剤によって貼り付けられることで、クッションパッド本体11に固定されている。
【0074】
第5カバー部材13は、第4カバー部材12を覆うように第3凹部111に係合することでクッション中央部P11の前部の表面部分を形成する部材である。第5カバー部材13は、ウレタンフォームなどから、前後に長く、前端部が下方に延出した略板状に形成されている。第5カバー部材13には、通気路10内とシートクッションパッドP1の外部とを連通する、上下に貫通した第3通気孔131が設けられている。第3通気孔131は、複数設けられている。より詳細には、
図10に示すように、第3通気孔131は、シートクッションS1の着座者側である上側から見て、第2形成穴123の左右両端部と重なるように配置されている。そして、第3通気孔131は、左右それぞれにおいて、2つが左右に並んで設けられ、左右に並んだ2つの第3通気孔131の組が略前後に並んで4つ設けられている。また、第5カバー部材13には、上側の面のうち左右方向中央部付近に、下方に凹む溝形成凹部132が設けられている。第5カバー部材13は、下側の面が第4カバー部材12の上側の面に接着剤によって貼り付けられることで、第4カバー部材12を介してクッションパッド本体11に固定されている。シートクッションパッドP1は、第5カバー部材13に第3通気孔131が設けられていることで、上側の面に、通気路10内と外部とを連通する第3通気孔131を有している。
【0075】
シートクッションS1は、図示しないブロアによって貫通孔112から通気路10内に空気が送り込まれることで、第3通気孔131から空気を吹き出すように構成されている。なお、シートクッションS1は、第3通気孔131から空気を吸い込むように構成されていてもよい。
【0076】
シートクッションパッドP1は、上側の面において下方に凹むように形成された、第1の溝としての縫合部配置溝15と、第2の溝としての吊り込み溝16とを有している。
吊り込み溝16は、表皮材7を吊り込むための溝であり、クッション中央部P11と左右のクッション側部P12との間に1つずつ設けられている。各吊り込み溝16は、縫合部配置溝15よりも深い溝として形成されており、略前後方向に沿って延びるように設けられている。
【0077】
縫合部配置溝15は、表皮材7の縫合部7Aが入り込んで配置される溝であり、クッション中央部P11の左右方向中央部において2つが左右に並んで設けられている。縫合部配置溝15は、上側から見て、前端部同士の間隔が後端部同士の間隔よりも若干大きくなるように、略前後方向に沿って延びるように設けられている。縫合部配置溝15の前端部は、第5カバー部材13に設けられた溝形成凹部132によって形成されている。各縫合部配置溝15は、それぞれ、最も後ろの左右方向内側に配置された第3通気孔131(131A)の一部、具体的には、第3通気孔131の左右方向内側の端部と、重なるように設けられている。各縫合部配置溝15は、前後方向中央部に幅広部153を有している。幅広部153は、幅広部253と同様に、縫合部配置溝15の左右方向外側の縁が他の部分よりも外側に広がるように形成されていることで、縫合部配置溝15の他の部分よりも幅が広くなっている。幅広部153には、それぞれ、第1ファスナ部材51が、底面に貼り付けられるなどして設けられている。
【0078】
図11(a)に示すように、シートクッションヒータH1は、シート状の基材31と、基材31に支持される複数のヒータ線32とを主に備えて構成され、シートクッションパッドP1と表皮材7の間に配置されている。また、シートクッションヒータH1は、中央部ヒータH11と、中央部ヒータH11の左右両側に設けられた左右の側部ヒータH12とを有している。
【0079】
基材31は、不織布からなり、通気性を有している。基材31は、中央部ヒータH11を構成する前後に長い略矩形状の基材中央部311と、左右の側部ヒータH12を構成する左右の基材側部312とを有している。左右の基材側部312は、左右対称に形成され、それぞれが、前後に細長い側部本体312Aと、側部本体312Aの後端から左右方向内側に向けて延びて基材中央部311に繋がる連結部312Bとを有する略L字形状に形成されている。
【0080】
基材中央部311は、上側から見て、クッション中央部P11の上側の面の略全体を覆うように配置されている。より詳細に、基材中央部311は、すべての第3通気孔131(
図10参照)を覆うように配置されている。基材中央部311は、第1ファスナ部材51が配置された位置に開口部313を1つずつ有している。開口部313は、上下に貫通する矩形の穴状に形成されており、第1ファスナ部材51を露出させる。
基材側部312は、対応するクッション側部P12の上側の面において左右方向内側に寄せて配置されている。
【0081】
ヒータ線32は、基材31の着座者側の面に接着剤によって貼り付けられることで、基材31に固定されている。ヒータ線32は、上側から見て、略ジグザグ状に屈曲して形成された、第4ヒータ部32Aと、第5ヒータ部32Bと、第6ヒータ部32Cとを有している。
【0082】
第4ヒータ部32Aは、着座者の大腿部に対面するように、中央部ヒータH11に設けられている。第4ヒータ部32Aの左右方向内側に位置するヒータ線32は、
図11(b)に示すように、複数の直線部321と、複数の屈曲部322とを有している。複数の直線部321は、それぞれが略左右方向(縫合部配置溝15と交差する方向)に沿うように直線状に延びて、略前後方向(縫合部配置溝15が延びる方向)に並んで配置されており、屈曲部322は、隣接する直線部321の端同士を繋ぐU字状に屈曲している。そして、ヒータ線32は、上側から見て、複数の直線部321が、縫合部配置溝15の左右両側の縁15Eと交差するように配置されている。
図12に示すように、シートクッションパッドP1は、縫合部配置溝15の縁15Eの両方に、シートクッションパッドP1の上側の面と、縫合部配置溝15の左または右の面とによって形成される角部15Aを有している。屈曲部322は、角部15Aを避けて配置されている。より詳細には、ヒータ線32は、角部15Aに、屈曲部322ではなく、直線部321が載るように配置されている。
【0083】
図11(a)に示すように、第5ヒータ部32Bは、着座者の臀部に対面するように、中央部ヒータH11に設けられている。第5ヒータ部32Bの左右両端部を構成するヒータ線32も、複数の直線部321および屈曲部322を有し、上側から見て、複数の直線部321が縫合部配置溝15の左右方向外側の縁15Eと交差するように配置され、左右方向内側の屈曲部322が縫合部配置溝15の左右方向内側の縁15Eにかからないように左右の縁15Eの間に配置されている。屈曲部322は、縁15Eに形成される角部15Aを避けて配置されている。
第6ヒータ部32Cは、着座者の臀部から大腿部にかけての部分の左右両側に対面するように、左右の側部ヒータH12にそれぞれ設けられている。
【0084】
このように構成されたシートクッションヒータH1は、数箇所の位置で、シートクッションパッドP1の上側の面に両面テープによって貼り付けられることで、シートクッションパッドP1に固定されている。ここで、基材中央部311は、上側から見て、ヒータ線32が配置される範囲よりも外側まで延びている。具体的には、基材中央部311の前端部は、ヒータ線32の前端よりも前側まで延びており、基材中央部311の後端部は、第5ヒータ部32Bの最も後ろに配置された直線部321よりも後側まで延びている。また、基材中央部311の左右の端部は、第4ヒータ部32Aの左右の端よりも左右方向外側まで延びている。これにより、シートクッションヒータH1を、基材31の前端部や後端部でシートクッションパッドP1に取り付けることができるので、シートクッションヒータH1の取付強度を向上させることができる。
【0085】
また、シートクッションヒータH1は、シートバックヒータH2と同様に、数箇所の位置で、
図12に例示するように、縫合部配置溝15の内面に、両面テープ6によって貼り付けられている。より詳細に説明すると、シートクッションパッドP1は、上側の面に、一の縫合部配置溝15を挟む第1の面F1と第2の面F2を有し、両面テープ6は、第1の面F1、縫合部配置溝15の内面および第2の面F2に沿って貼り付けられて配置されている。シートクッションヒータH1は、両面テープ6により、当該両面テープ6を介して、第1の面F1、縫合部配置溝15の内面および第2の面F2に沿うように貼り付けられている。これにより、シートクッションヒータH1は、縫合部配置溝15に対向する部分が、縫合部配置溝15に入り込んで配置されている。縫合部配置溝15は、吊り込み溝16よりも浅い溝なので、シートバックS2と同様に、ヒータHの組み付け作業性を向上させることができる。
【0086】
シートクッションパッドP1を覆う表皮材7は、シートバックS2と同様に、縫合部7Aが、シートクッションヒータH1とともに、縫合部配置溝15に入り込んで配置されている。
図11(a)に示すように、シートクッションS1においても、シートクッションヒータH1が第1ファスナ部材51を露出させる開口部313を有しているので、表皮材7を図示しない第2ファスナ部材と第1ファスナ部材51でシートクッションパッドP1に固定することができる。そして、この固定によって、シートクッションヒータH1の開口部313の周囲の部分が、シートクッションパッドP1と表皮材7で挟まれるので、シートクッションヒータH1の位置を決めることができる。
【0087】
以上説明した本実施形態によれば、
図4に示した、シートバックパッドP2のカバー部材22,23やフィルム状部材24について、それぞれ最適な構成や材料などを設定することができ、また、凹部211,212および穴部213が対応するカバー部材22,23やフィルム状部材24によって覆われているので、通気路20内、具体的には、貫通部213Aと通気孔221,231との間で空気を良好に流すことができる。これにより、車両用シートSの空調性能を向上させることができる。
【0088】
また、フィルム状部材24は、バックパッド本体21やカバー部材22,23よりも通気性が低いので、穴部213付近からの空気漏れを抑制できるため、通気路20内で空気をより良好に流すことができる。これにより、車両用シートSの空調性能をより向上させることができる。
【0089】
また、バックパッド本体21とは別部品として設けられたカバー部材22,23が通気孔221,231を有するので、例えば、パッド本体とカバー部材が一体に形成されたような構成のパッドと比較して、通気路20や通気孔221,231を有するパッドPを容易に製造することができる。シートクッションS1についても同様である。
【0090】
また、第2凹部212と縫合部配置溝25とが交差するように設けられているので、車両用シートSの空調性能を阻害することなく、縫合部配置溝25に表皮材7の縫合部7Aを配置することができる(縫製ラインを通すことができる)。これにより、空調性能を向上させつつ、車両用シートSのデザインの自由度を向上させることができる。
【0091】
また、
図5(a)に示したように、基材41がすべての通気孔221,231を覆うように配置されているので、各通気孔221,231での空気の流れやすさを略均一にすることができる。これにより、各通気孔221,231で空気を良好に流すことができるので、車両用シートSの空調性能を向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0092】
また、穴部213の貫通部213Aがフィルム状部材24および基材41の両方によって覆われているので、貫通部213A付近が二重に覆われることになり、シートバックパッドP2の貫通部213A付近の強度を向上させることができる。また、貫通部213Aがフィルム状部材24と基材41の両方によって覆われることで、穴部213付近の通気性がより低下するので、穴部213付近からの空気漏れをより抑制することができる。これにより、通気路20内で空気を一層良好に流すことができるので、車両用シートSの空調性能を一層向上させることができる。
【0093】
また、ヒータ線42(第2ヒータ部42B)がフィルム状部材24と重なるように配置されているので、シートバックパッドP2の穴部213が形成された箇所にもヒータ線42を配置することができる。これにより、車両用シートSの暖房性能を向上させることができる。
【0094】
また、ヒータ線42が着座者の肩部を除く背中部分に対面するように配置されているので、着座者とシートバックS2が密着する部分にヒータ線42を配置することができる。これにより、車両用シートSの暖房性能を向上させることができる。
【0095】
また、第1ファスナ部材51がパッドPの着座者側の面に設けられているので、前側から表皮材7をパッドPに固定できるため、表皮材7の組み付け作業性を向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0096】
また、第1ファスナ部材51が縫合部配置溝25に設けられているので、表皮材7を、縫合部7Aが縫合部配置溝25に入り込んだ状態で、かつ、縫合部配置溝25の位置で固定することできる。これにより、表皮材7の位置を良好に決めることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0097】
また、第1ファスナ部材51が第1部分251に設けられているので、例えば、第2部分252のような、縫合部配置溝のヒータ線が配置されているところに第1ファスナ部材を設けるような構成と比較して、シートバックパッドP2の構成を簡略化することができる。また、第1ファスナ部材51をシートバックパッドP2に取り付けやすくなるので、第1ファスナ部材51を備えるシートバックパッドP2を容易に製造することができる。
【0098】
また、第1ファスナ部材51が幅広部253に設けられているので、第1ファスナ部材51の面積を大きくすることできる。これにより、表皮材7の取付強度を向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0099】
また、基材41が通気性を有し、通気孔221,231を覆うように配置されているので、ヒータHに通気孔221,231を露出させるための貫通穴などを設ける必要がない。そのため、ヒータHの構成を簡略化することができる。また、ヒータHに貫通穴などがないことでヒータHの組み付けの際にヒータHと通気孔221,231との位置合わせなどが不要となるので、ヒータHの組み付け作業性を向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0100】
また、基材41がカバー部材22,23の全体を覆うように配置されているので、基材41をカバー部材22,23の周囲でバックパッド本体21に取り付けることができる。これにより、基材41によってカバー部材22,23を押さえることができるので、カバー部材22,23の取付強度を向上させることができる。
【0101】
また、吊り込み溝26が縫合部配置溝25よりも深いので、表皮材7を吊り込み溝26に吊り込んだ際の、バック中央部P21と、バック中央部P21よりも前に張り出すバック側部P22との段差(高低差)による表皮材7のしわの発生を抑制することができる。これにより、車両用シートSの外観性を向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0102】
図6に示したように、ヒータHがパッドPの縫合部配置溝25に入り込んで、縫合部配置溝25の内面に貼り付けられているので、パッドPが変形した際にヒータHをパッドPに追従させることができる。これにより、ヒータHがパッドPによって支えられることになるので、ヒータHの不要な変形を抑制することができる。その結果、例えば、ヒータHの耐久性を向上させて、長寿命化を図ることなどが可能となる。シートクッションS1についても同様である。
【0103】
また、ヒータHが縫合部配置溝25に入り込んでいるため、表皮材7を縫合部配置溝25に入り込んだ状態で配置することができる。これにより、車両用シートSの表面に表皮材7の縫合部配置溝25に入り込んだ部分によって形成されるラインをきれいに出すことができるので、車両用シートSのデザイン性を向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0104】
また、表皮材7の縫合部7Aが縫合部配置溝25に入り込むことで、表皮材7の位置を決めることができる。また、表皮材7(縫合部7A)の位置が決まることで、縫合部7Aのラインをきれいに見せることができるので、車両用シートSのデザイン性をより向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0105】
また、縫合部配置溝25に縫合部7Aが入り込むことで表皮材7の位置が決まるので、第1ファスナ部材51の設置箇所、すなわち、表皮材7の固定箇所を最小としつつ、表皮材7の固定と位置決めを良好に行うことができる。シートクッションS1についても同様である。
【0106】
また、ヒータHを縫合部配置溝25の内面に貼り付ける両面テープ6が、第1の面F1、縫合部配置溝25の内面および第2の面F2に沿って配置されているので、例えば、両面テープを縫合部配置溝の底面だけに配置するような構成と比較して、広い面積でヒータHをパッドPに貼り付けることができる。これにより、ヒータHの取付強度を向上させることができる。シートクッションS1についても同様である。
【0107】
また、ヒータ線42の屈曲部422が縫合部配置溝25の縁に形成される角部25Aを避けて配置されているので、着座者が座ったときなどに屈曲部422に角部25Aから局所的な荷重がかかることを抑制することができる。これにより、ヒータ線42にかかる荷重の影響を全体として低減することができる。シートクッションS1についても同様である。
【0108】
図7に示したように、バックパッド本体21の穴部213を覆うように配置されて穴部213との間で通気路20の一部を形成する部材として、薄いフィルム状部材24を採用したので、通気路20の大きさを確保しながら、シートバックパッドP2の薄型化を図ることができる。そして、シートバックヒータH2がフィルム状部材24と重なって配置されているので、フィルム状部材24によってシートバックヒータH2を支えることができるため、シートバックヒータH2の不要な変形を抑制することができる。これにより、シートバックヒータH2の耐久性を向上させて、長寿命化を図ることなどが可能となる。
【0109】
また、第1ファスナ部材51が穴部213およびフィルム状部材24を挟むように、穴部213およびフィルム状部材24の両側に配置されているので、穴部213の両側で表皮材7をシートバックパッドP2に固定することができる。これにより、穴部213付近での表皮材7の撓みを抑制することができるとともに、撓みの抑制によって、シートバックヒータH2の、穴部213付近に配置される部分の不要な変形をより抑制することができる。また、バックパッド本体21に固定された表皮材7によってフィルム状部材24を押さえることができるので、フィルム状部材24の取付強度を向上させることができる。
【0110】
また、表皮材7の固定に面ファスナ5を用いるので、表皮材7の浮きを抑制でき、車両用シートSの外観性を向上させることができる。また、固定に面ファスナ5を用いることで、表皮材7を簡単に固定できるので、表皮材7の組み付け作業性を向上させることができる。
【0111】
また、
図8に示したように、表皮材7が、第1シート71と、第1シート71の貫通孔71Aから露出する第2シート72とを備えるので、例えば、第1シート71と第2シート72を異なる材質などで形成可能となる。これにより、表皮材7の機能性を向上させたり、車両用シートSのデザインの自由度を向上させたりすることができる。
【0112】
また、第1シート71と第2シート72の色が異なるので、立体的なデザインを実現することができ、車両用シートSのデザイン性をより向上させることができる。
【0113】
また、
図10に示したように、縫合部配置溝15と第3通気孔131Aとは、一部が重なるように設けられているので、車両用シートSの空調性能を阻害することなく、縫合部配置溝25に表皮材7の縫合部7Aを配置することができる(縫製ラインを通すことができる)。これにより、空調性能を向上させつつ、車両用シートSのデザインの自由度を向上させることができる。
【0114】
以上、実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0115】
前記実施形態では、
図3に示したように、穴部213の一部である貫通部213Aが着座者側とは反対側に貫通するように形成されていたが、これに限定されず、例えば、穴部は、その全体が着座者側とは反対側に貫通するように形成されていてもよい。
【0116】
前記実施形態では、
図4に示したように、第2凹部212と縫合部配置溝25とが着座者側から見て交差するように設けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、第2凹部ではなく、第1凹部と縫合部配置溝とが、着座者側から見て、交差するように設けられていてもよい。また、第1凹部および第2凹部の両方と縫合部配置溝とが、着座者側から見て、交差するように設けられていてもよい。
【0117】
前記実施形態では、第1カバー部材22や第2カバー部材23、フィルム状部材24が接着剤によってバックパッド本体21に貼り付けられることで固定されていたが、これに限定されるものではない。例えば、第1カバー部材や第2カバー部材、フィルム状部材(第3カバー部材)は、両面テープなどによってパッド本体に貼り付けられることで固定されていてもよい。
【0118】
前記実施形態では、第3カバー部材として、PPやPEなどの合成樹脂系材料からなる薄いフィルム状部材24を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、第3カバー部材は、前記実施形態の第1カバー部材22や第2カバー部材23と同様に、ウレタンフォームなどから、前記実施形態のフィルム状部材24よりも厚い板状に形成されていてもよい。また、第3カバー部材は、合成樹脂系材料、発泡体、紙、布地などの繊維系材料、これらの複合材料などから形成されていてもよい。また、前記実施形態では、フィルム状部材24(第3カバー部材)は、貫通孔が設けられていないことで、第1カバー部材22および第2カバー部材23よりも通気性が低い構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、第3カバー部材は、貫通孔(通気孔)を有していてもよく、この場合、第1カバー部材や第2カバー部材の通気孔よりも、孔の数を少なくしたり、孔の径を小さくしたりすることで、第1カバー部材および第2カバー部材よりも通気性が低い構成としてもよい。
【0119】
前記実施形態では、パッドPが2つのカバー部材(第1カバー部材22および第2カバー部材23)を備えていたが、これに限定されず、例えば、カバー部材は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、パッドは、パッド本体とカバー部材が一体に形成されたような構成であってもよい。
【0120】
前記実施形態では、パッドPが着座者側の面に縫合部配置溝15,25を有していたが、これに限定されず、例えば、パッドは、着座者側の面に、縫合部配置溝(第1の溝)が設けられていない構成であってもよい。
【0121】
前記実施形態では、表皮材7をパッドPに固定する部材として、第1ファスナ部材51と第2ファスナ部材52からなる面ファスナ5を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、表皮材をパッドに固定する部材は、スナップボタンなどであってもよい。また、パッドに設けられる固定部材は、例えば、両面テープなどであってもよい。
【0122】
前記実施形態では、
図5(a)に示したように、基材41がすべての通気孔221,231を覆うように配置されていたが、これに限定されず、例えば、基材は、複数の通気孔のうち、一部の通気孔だけを覆うように配置されていてもよい。また、前記実施形態では、ヒータHに設けられた開口部313,413が穴状に形成されていたが、これに限定されず、例えば、開口部は、一部が外側に開いた切欠状に形成されていてもよい。
【0123】
前記実施形態では、
図6に示したように、ヒータHが縫合部配置溝25の内面の全体に貼り付けられていたが、これに限定されず、例えば、ヒータは、縫合部配置溝の内面のうち底面だけに貼り付けられていてもよい。このような構成によれば、縫合部配置溝に両面テープなどを配置しやすくなるので、ヒータの組み付け作業性を向上させることができる。また、ヒータは、両面テープではなく、例えば、接着剤などによって縫合部配置溝の内面に貼り付けられていてもよい。
【0124】
前記実施形態では、
図7に示したように、フィルム状部材24が接着剤によってバックパッド本体21に貼り付けられ、シートバックヒータH2が貼付部材としての両面テープ6によってフィルム状部材24に貼り付けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、
図13に示すように、フィルム状部材24は、シートバックヒータH2をバックパッド本体21に貼り付けるための粘着層24Aを少なくとも前側の面に有し、シートバックヒータH2が、両面テープを介さずに、フィルム状部材24の粘着層に貼り付けられていてもよい。また、フィルム状部材24は、粘着層24Aを前後両方の面に有し、シートバックヒータH2が、いわば両面テープとして機能するフィルム状部材24によって、直接バックパッド本体21に貼り付けられていてもよい。このような構成によれば、フィルム状部材24と、シートバックヒータH2をバックパッド本体21に貼り付けるための部材とを一度に取り付けられるので、組み付け作業性を向上させることができる。
【0125】
前記実施形態では、
図10に示したように、縫合部配置溝15と第3通気孔131Aとが着座者側から見て一部が重なるように設けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、
図10を参考にして説明すると、縫合部配置溝15と第3通気孔131Aとは、着座者側から見て、第3通気孔131Aの全体が縫合部配置溝15と重なるように、言い換えれば、第3通気孔131Aが縫合部配置溝15内に配置されるように設けられていてもよい。
【0126】
前記実施形態では、縫合部7Aが複数枚の表皮材7を縫い合わせることで形成されていたが、これに限定されず、例えば、縫合部は、1枚の表皮材を折り重ね、折り重ねた部分同士を縫い合わせることで形成されていてもよい。
【0127】
前記実施形態では、パッドPが、シートクッションパッドP1とシートバックパッドP2を含んで構成されていたが、これに限定されず、例えば、パッドは、シートクッションパッドとシートバックパッドが一体に形成されたような構成であってもよい。
【0128】
前記実施形態では、シートとして、自動車で使用される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、シートは、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などで使用されるシートであってもよい。また、シートは、乗物用のシートに限定されず、例えば、家庭などで使用されるシートであってもよい。