(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通信マスタ及び携帯端末キーが無線通信を行うにあたって、最初に互いを認証するペアリングを実行することにより、通信に必要なペアリング情報を互いに登録し、以降、前記無線通信を実施可能とする携帯端末キー登録システムにおいて、
再ペアリングを開始するにあたり、前記ペアリング情報が削除されてしまった前記携帯端末キーとの通信を通じて、当該携帯端末キーと前記通信マスタとを再ペアリングしてよいか否かを判定する可否判定部と、
前記可否判定部が再ペアリングを許可することを条件に、前記ペアリング情報が削除された前記携帯端末キーと前記通信マスタとのペアリングを実行させて、前記ペアリング情報を当該携帯端末キーに再登録させる再登録部とを備え、
前記ペアリングを行うペアリング実行部は、最初のペアリングが済むと、前記携帯端末キーに登録されたキー情報を前記通信マスタに書き込むことにより、当該携帯端末キーを前記通信マスタのキーとして使用可能にし、
前記可否判定部は、前記再ペアリングにおいて、前記携帯端末キーに登録された前記キー情報の正否を確認することにより、再ペアリングの実行可否を判定し、
さらに、前記可否判定部が再ペアリングを許可したとき、再ペアリングの実行を前記ペアリング実行部に要求する再ペアリング要求部を備え、
前記ペアリング実行部は、前記再ペアリング要求部から再ペアリング実行要求を取得すると、前記ペアリング情報が削除された前記携帯端末キーと前記通信マスタとのペアリングを実行して、前記ペアリング情報を当該携帯端末キーに登録し直すことを特徴とする携帯端末キー登録システム。
前記通信マスタ及び携帯端末キーがペアリングを行って実行可能となる通信を第1通信とすると、前記可否判定部は、前記第1通信とは別の通信網の第2通信を使用して、前記携帯端末キーの正否を判定することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末キー登録システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高機能携帯電話等の携帯端末キーにおいては、設定画面等で
ブルートゥース機能を変更することが可能であるので、ユーザの意図に反し、この設定画面において誤ってペアリング情報を削除してしまうことも想定される。このとき、再ペアリングを行う必要があるが、車載ECUをペアリングモードに移行させるには、現在のところ専用の登録ツールが必要である。一般的に、この種の登録ツールは車両販売店で管理されているため、再ペアリングを行おうとするときには、車両販売店に赴かねばならず不便であった。
【0005】
本発明の目的は、再ペアリングの利便性を向上することができる携帯端末キー登録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決する携帯端末キー登録システムは、通信マスタ及び携帯端末キーが無線通信を行うにあたって、最初に互いを認証するペアリングを実行することにより、通信に必要なペアリング情報を互いに登録し、以降、前記無線通信を実施可能とする構成において、再ペアリングを開始するにあたり、前記ペアリング情報が削除されてしまった前記携帯端末キーとの通信を通じて、当該携帯端末キーと前記通信マスタとを再ペアリングしてよいか否かを判定する可否判定部と、前記可否判定部が再ペアリングを許可することを条件に、前記ペアリング情報が削除された前記携帯端末キーと前記通信マスタとのペアリングを実行させて、前記ペアリング情報を当該携帯端末キーに再登録させる再登録部とを備えた。
【0007】
本構成によれば、仮に誤って携帯端末キーのペアリング情報を削除してしまっても、この携帯端末キーが正しいものと判定されれば、この携帯端末キーで再ペアリングを実行することが可能となる。よって、携帯端末キーと通信マスタとを再ペアリングするにあたって、専用の登録ツール等を必要としないので、再ペアリングの利便性をよくすることが可能となる。
【0008】
前記携帯端末キー登録システムにおいて前記通信マスタ及び携帯端末キーがペアリングを行って実行可能となる通信を第1通信とすると、前記可否判定部は、前記第1通信とは別の通信網の第2通信を使用して、前記携帯端末キーの正否を判定することが好ましい。この構成によれば、第1通信とは別の通信網の第2通信を通じて、再ペアリングの可否が判定される。よって、携帯端末キーと通信マスタとにおいて第1通信のペアリングが確立しておらず、第1通信が実施できない状態となっていても、再ペアリングの可否を判定する通信を、第2通信を通じて滞りなく実施することが可能となる。
【0009】
前記携帯端末キー登録システムにおいて、前記第2通信は、通信にあたって前記携帯端末キーの電源を必要としないパッシブ型であることが好ましい。この構成によれば、例えば携帯端末キーにおいて電力消費を少なく抑えることが可能となる。
【0010】
前記携帯端末キー登録システムにおいて、前記ペアリングを行うペアリング実行部は、最初のペアリングが済むと、前記携帯端末キーに登録されたキー情報を前記通信マスタに書き込むことにより、当該携帯端末キーを前記通信マスタのキーとして使用可能にし、前記可否判定部は、前記再ペアリングにおいて、前記携帯端末キーに登録された前記キー情報の正否を確認することにより、再ペアリングの実行可否を判定することが好ましい。この構成によれば、再ペアリングの可否判定を、キー情報を用いて精度よく行うことが可能となる。
【0011】
前記携帯端末キー登録システムにおいて、前記再ペアリングの可否判定は、前記キー情報を用いたチャレンジレスポンス認証を少なくとも含むことが好ましい。この構成によれば、再ペアリングの可否判定を、チャレンジレスポンス認証によって精度よく判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、携帯端末キー登録システムにおいて、再ペアリングの利便性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、携帯端末キー登録システムの一実施形態を
図1〜
図3に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、携帯端末キー2を車両キーとして使用可能な携帯端末キーシステム3を備える。携帯端末キー2は、例えば高機能携帯電話(スマートフォン)や専用携帯機にキー機能(専用のアプリケーション)を登録することによって実現される。携帯端末キーシステム3の通信には、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)が使用される。
【0015】
携帯端末キー2は、携帯端末キー2の動作を管理する制御部4と、携帯端末キー2において第1通信(本例はブルートゥース通信)に準じた電波を送受信する第1通信部(アンテナ及び通信回路を含む)5と、外部からの解析攻撃に耐え得るセキュアエレメント6とを備える。セキュアエレメント6には、携帯端末キー2により車両1と無線によるキー照合(ID照合)を行うときに使用されるキー情報7が書き込み保存されている。キー情報7は、携帯端末キー2の固有のIDコードであるキーIDと、通信を暗号化するときに使用する暗号鍵とを含む。セキュアエレメント6は、例えばSIM(Subscriber Identity Module)カードであるとよい。
【0016】
車両1は、携帯端末キー2とのID照合の動作を管理する携帯端末キーECU8と、車両1において第1通信(本例はブルートゥース)に準じた電波を送受信する第1通信部9と、データ書き込み及び読み出しが可能なメモリ10とを備える。メモリ10には、車両1に登録された携帯端末キー2のキー情報7が書き込み保存されている。このキー情報7は、車両1に登録された携帯端末キー2のキーID及び暗号鍵を含む。第1通信部9は、例えばブルートゥーストランシーバである。
【0017】
携帯端末キーシステム3において、車外に位置する携帯端末キー2と車両1との間で、第1通信(ブルートゥース通信)に準じたID照合(車外ID照合)が成立すると、例えば車両ドアの施解錠が許可又は実行される。この場合のID照合には、例えばキーIDの正否を確認するキーID照合と、暗号鍵を用いたチャレンジレスポンス認証とを含むとよい。また、携帯端末キーシステム3において、車内に位置する携帯端末キー2と車両1との間で、第1通信(ブルートゥース通信)に準じたID照合(車内ID照合)が成立すると、例えば車両電源の遷移操作(一例はエンジン始動操作)が許可される。なお、携帯端末キー2の車内外判定は、通信時に受信する電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)から判定するとよい。
【0018】
携帯端末キーシステム3は、携帯端末キー2を通信マスタ14(本例は携帯端末キーECU8、以下同様)に登録するときに作動する携帯端末キー登録システム15を備える。携帯端末キー2を車両1と通信可能とするには、車載された携帯端末キーECU8と携帯端末キー2とをペアリングする必要がある。本例の携帯端末キー登録システム15は、携帯端末キー2及び携帯端末キーECU8が最初に通信を行うにあたって、互いを認証するペアリングを行って、以降の通信を可能にし、さらに携帯端末キー2に登録されているキー情報7を携帯端末キーECU8に書き込むことにより、携帯端末キー2による車両操作を可能にする。
【0019】
携帯端末キー登録システム15は、第1通信(本例はブルートゥース通信)におけるペアリングを実行するペアリング実行部16を備える。本例のペアリング実行部16は、携帯端末キー2側の16aと、通信マスタ14側の16bとからなり、16aが携帯端末キー2の制御部4に設けられ、16bが携帯端末キーECU8に設けられる。ペアリング実行部16は、例えば所定のコード情報(PINコード、暗証番号、パスキー等)を基にリンクキーを作成し、これをペアリング情報17として携帯端末キー2及び通信マスタ14の両者に登録する。携帯端末キー2のペアリング情報17は、メモリ18に書き込み保存され、通信マスタ14のペアリング情報17は、メモリ10に書き込み保存される。
【0020】
通信マスタ14には、通信マスタ14をペアリングモードに切り替えるときに用いる登録ツール19が接続可能となっている。登録ツール19は、有線又は無線のいずれで通信マスタ14に接続されてもよい。通信マスタ14のペアリング実行部16bは、登録ツール19からペアリング実行要求を入力すると、通信マスタ14の動作モードを「ペアリングモード」に切り替え、携帯端末キー2とのペアリングを実施可能とする。
【0021】
携帯端末キー登録システム15は、携帯端末キー2のキー情報7を通信マスタ14に登録するときに作動するキー情報登録部20を備える。本例のキー情報登録部20は、携帯端末キー2の制御部4に設けられる。携帯端末キー2は、携帯端末キー2において第2通信(本例は近距離無線通信)に準じた電波を送受信する第2通信部(アンテナ及び通信回路を含む)21と、携帯端末キー2においてネットワーク通信を可能とする第3通信部(アンテナ及び通信回路を含む)22とを備える。通信マスタ14は、通信マスタ14において第2通信に準じた電波を送受信する第2通信部23を備える。近距離無線通信(近接場型通信)としては、例えばNFC(Near Field Communication)やRFID(Radio Frequency IDentification)を用いるとよい。ネットワーク通信としては、汎用のインターネット通信であるとよい。第2通信部23は、例えばNFCリーダライタである。
【0022】
キー情報登録部20は、キー情報7を配信可能なサーバを持つセンター26から、ネットワークを通じてキー情報7を取得し、これをメモリ18に書き込むことにより、キー情報7の登録を実行する。ペアリング実行部16は、ペアリングの作動時において、第2通信(本例はNFC通信)を通じて携帯端末キー2からキー情報7を通信マスタ14に送信し、通信マスタ14にキー情報7を登録する。これにより、携帯端末キー2が通信マスタ14に専用キーとして紐付けされる。
【0023】
携帯端末キー登録システム15は、通信マスタ14にペアリング登録が済んだ携帯端末キー2を使用しての再ペアリングを可能とする再ペアリング機能を備える。ところで、この種の携帯端末キー2においては、ブルートゥース機能の設定画面等で、携帯端末キー2に登録したペアリング情報17を容易に削除できてしまう現状がある。このため、ユーザが意図せずに携帯端末キー2からペアリング情報17を誤って消去してしまうことも想定される。このとき、携帯端末キー2にペアリング情報17を再登録するにあたって、仮に登録ツール19を使用する態様をとると、登録ツール19は車両販売店等にしかないので、再登録のために車両販売店に行かなくてはならず、再登録の作業が面倒であった。そこで、本例は再登録の作業を簡便に行うことを実現する。
【0024】
携帯端末キー登録システム15は、携帯端末キー2と通信マスタ14とを再ペアリングしてよいか否かを判定する可否判定部27を備える。本例の可否判定部27は、携帯端末キー2側の27aと、通信マスタ14側の27bとからなり、27aが携帯端末キー2の制御部4に設けられ、27bが携帯端末キーECU8に設けられる。可否判定部27は、例えばキー情報7を用いたチャレンジレスポンス認証の成立可否を確認することにより、再ペアリングの実施可否を判定する。
【0025】
携帯端末キー登録システム15は、携帯端末キー2から通信マスタ14に対して再ペアリングの実施を要求する再ペアリング要求部28を備える。再ペアリング要求部28は、携帯端末キー2の制御部4に設けられる。本例の再ペアリング要求部28は、可否判定部27による再ペアリング許可が下りていて、かつ第2通信(例えばNFC通信)が確立するとき、再ペアリング実行要求Sdmを通信マスタ14に送信する。
【0026】
携帯端末キー登録システム15は、ペアリング情報17が削除された携帯端末キー2と通信マスタ14とのペアリング(再ペアリング)を実行させる再登録部29を備える。再登録部29は、携帯端末キーECU8に設けられる。再登録部29は、可否判定部27が再ペアリングを許可することを条件に、ペアリング情報17が削除された携帯端末キー2と通信マスタ14とのペアリングを実行させて、この携帯端末キー2にペアリング情報17を再登録させる。
【0027】
次に、
図2及び
図3を用いて、携帯端末キー登録システム15の動作を説明する。なお、本例においては、携帯端末キー2を携帯端末キーECU8に初めて登録する「初期登録」と、ペアリング情報17が削除されてしまった携帯端末キー2を携帯端末キーECU8に再登録する「再ペアリング処理」とについて述べる。
【0028】
[初期登録]
図2に示すように、ステップ101において、キー情報登録部20は、キー情報7を配信してほしい旨のキー情報取得要求をセンター26に送信する。本例の場合、キー情報取得要求は、ネットワーク通信を通じて携帯端末キー2からセンター26に送信される。
【0029】
ステップ102において、センター26は、携帯端末キー2からキー情報取得要求を受信すると、ネットワーク通信を通じて、キー情報7を携帯端末キー2に送信する。
ステップ103において、キー情報登録部20は、センター26から受信したキー情報7を、携帯端末キー2のセキュアエレメント6に書き込む。
【0030】
ステップ104において、ペアリング実行部16bは、車両1に接続された登録ツール19からペアリング実行要求を入力すると、これをトリガとして、携帯端末キーECU8の動作モードを、一般的な通常時にとる「通常モード」から、携帯端末キー2とのペアリングを実行可能な「ペアリングモード」に設定する。すなわち、登録ツール19を操作してペアリング実行要求を登録ツール19から携帯端末キーECU8に入力することにより、携帯端末キーECU8を「ペアリングモード」に切り替える。
【0031】
ステップ105において、携帯端末キー2でペアリング開始操作が行われると、ペアリング実行部16aは、携帯端末キーECU8との間で、第1通信(本例はブルートゥース通信)を通じて、ペアリングを開始する。ペアリング開始操作としては、例えば携帯端末キー2のディスプレイにペアリング画面を表示して、ペアリングに必要なコード情報(PINコード、暗証番号、パスキー等)を入力し、画面上のペアリング開始ボタンをタップ操作する。
【0032】
ステップ106において、ペアリング実行部16(16a,16b)は、携帯端末キー2においてペアリング開始操作が実行されると、携帯端末キー2及び携帯端末キーECU8のペアリングを実行する。このとき、携帯端末キー2に入力されたコード情報を基にリンクキーが作成され、これがペアリング情報17として携帯端末キー2及び携帯端末キーECU8に登録される。これにより、ブルートゥース通信を行うときに必要となるペアリング情報17が、携帯端末キー2及び携帯端末キーECU8の両者に保存されたことになる。よって、携帯端末キー2及び携帯端末キーECU8が紐付けされ、以降はブルートゥースを実行するにあたって、わざわざペアリングする必要はない。
【0033】
ステップ107において、ペアリング実行部16は、ペアリングが完了したことを確認すると、第2通信(本例はNFC等の近距離無線通信)を通じてキー情報7を携帯端末キーECU8に送信する。
【0034】
ステップ108において、ペアリング実行部16bは、携帯端末キー2からキー情報7を受信すると、これをメモリ10に書き込んで、キー情報7を携帯端末キーECU8に登録する。これにより、携帯端末キー2が車両キーとして車両1に登録される。
【0035】
[再ペアリング処理]
図3に示すように、ステップ201において、通信マスタ14(携帯端末キーECU8、以下同様)は、第2通信部23を作動させてポーリングを実行し、第2通信部23の近傍に携帯端末キー2が存在するか否かを探索する。ポーリングは、通信マスタ14側から定期的に電波を繰り返し送信して、この電波に対する応答を受信できるか否かを探索する動作である。
【0036】
ステップ202において、携帯端末キー2で再ペアリングモードへの移行操作が実行されると、制御部4は、再ペアリングモードに移行する。すなわち、携帯端末キー2において誤ってペアリング情報17を削除してしまったときには、携帯端末キー2を再ペアリングモードに切り替え操作する。このとき、可否判定部27aは、第2通信部21を有効に切り替える指示として、起動要求Saを第2通信部21に出力する。第2通信部21は、可否判定部27aから起動要求Saを入力すると、待機状態から起動状態に切り替わり、通信を開始する。
【0037】
ステップ203において、ユーザは、自身が所持する携帯端末キー2を、通信マスタ14の第2通信部23にかざす。携帯端末キー2が通信マスタ14の第2通信部23に十分に近づくと、携帯端末キー2及び通信マスタ14の間の近距離無線通信が確立する。
【0038】
ステップ204において、可否判定部27a,27bは、近距離無線通信の確立を確認すると、携帯端末キー2と通信マスタ14との間で、第2通信(本例はNFC)を通じた相互認証を実施する。具体的には、携帯端末キー2のセキュアエレメント6に書き込み保存されたキー情報7の暗号鍵と、通信マスタ14のメモリ10に書き込み保存されたキー情報7の暗号鍵とを用い、第2通信経由のチャレンジレスポンス認証を実行する。
【0039】
ステップ205において、可否判定部27bは、ステップ204に記載の通信マスタ14及びセキュアエレメント6の間の相互認証が成立することを確認すると、前述の起動要求Saをトリガとした通信接続を開始する。このとき、可否判定部27bは、携帯端末キー2のアプリケーションを通じた通信を開始するのに必要となる通信接続開始要求Sbを第2通信部23に出力する。
【0040】
ステップ206において、第2通信部23は、可否判定部27bから通信接続開始要求Sbを入力すると、アプリケーションを通じた第2通信の可否を判断する通信接続処理を開始する。本例の場合は、第2通信部23から「Connect」の電波が送信され、この電波を携帯端末キー2の第2通信部21が受信することができれば、「Connection」の電波が返信される。
【0041】
ステップ207において、第2通信部23は、通信接続処理が完了したことを確認すると、接続完了通知Scを通信マスタ14に出力する。この接続完了通知Scは、アプリケーションを通じた第2通信が可能であることを通信マスタ14に通知するためのものである。
【0042】
ステップ208において、可否判定部27bは、接続完了通知Scを入力すると、アプリケーションを通じた第2通信が実行できる旨の通知としての通信開始許可Sdを、第2通信部23を通じて携帯端末キー2に送信する。携帯端末キー2で受信した通信開始許可Sdは、制御部4に送られる。
【0043】
ステップ209において、可否判定部27aは、携帯端末キー2が再ペアリングモードに入っている状態下で、通信マスタ14から通信開始許可Sdを取得すると、携帯端末キー2及び通信マスタ14の再ペアリングを開始する。このとき、再ペアリング要求部28は、ペアリング(再ペアリング)を開始するのに必要となる再ペアリング実行要求Sdmを第2通信部21に出力する。この再ペアリング実行要求Sdmは、第2通信を通じて通信マスタ14に送信され、第2通信部23を通じて携帯端末キーECU8に出力される。
【0044】
ステップ210において、再登録部29は、携帯端末キー2から再ペアリング実行要求Sdmを取得すると、携帯端末キー2及び通信マスタ14の間でペアリングを実施する。具体的にいうと、再ペアリング実行要求Sdmの取得をトリガに携帯端末キーECU8が「ペアリングモード(再ペアリングモード)」に切り替わり、携帯端末キー2のアプリケーションと携帯端末キーECU8との間で、第1通信に準じたペアリング処理が実行される。このペアリングでは、通信マスタ14のメモリ10に書き込まれているペアリング情報17が携帯端末キー2に送信され、これが携帯端末キー2のメモリ18に書き込まれることにより、携帯端末キー2のペアリング情報17が登録し直される。これにより、携帯端末キー2及び通信マスタ14の両方に、互いに紐付けがなされたペアリング情報17が書き込まれて、両者のペアリングが完了する。
【0045】
ステップ211において、ユーザは、以前の通り、携帯端末キー2の第1通信(ブルートゥース通信)を通じて、通信マスタ14を遠隔操作することが可能となる。
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0046】
(1)携帯端末キー2に登録されているペアリング情報17を仮に誤って削除してしまったときには、この携帯端末キー2を通信マスタ14の第2通信部23にかざし、第2通信(NFC通信)を通じて携帯端末キー2が正しいものであることが確認されると、携帯端末キー2と通信マスタ14との間で再ペアリングが実行される。よって、携帯端末キー2と通信マスタ14とを再ペアリングするにあたって、専用の登録ツール等を必要としないので、再ペアリングの利便性をよくすることができる。
【0047】
(2)再ペアリングのとき、正規の携帯端末キー2であるか否かの判定は、第1通信(ブルートゥース通信)とは別の通信網である第2通信(NFC通信)を通じて実行される。このため、携帯端末キー2でペアリング情報17が削除されてしまって、通信マスタ14と第1通信を実行できない状態となっていても、再ペアリングの可否を判定する通信を、第2通信を通じて滞りなく実行することができる。
【0048】
(3)第2通信は、NFCやRFID等とすることにより、通信にあたって携帯端末キー2の電源を必要としないパッシブ型が使用されている。よって、携帯端末キー2において消費電力を少なく抑えることができる。また、仮に携帯端末キー2の電池残量が少なくなっていても、再ペアリングの途中で携帯端末キー2が電池切れになってしまう状況が生じ難くなり、再ペアリングを滞りなく完了させるのに有利となる。
【0049】
(4)再ペアリングにおいての携帯端末キー2の正否の確認は、携帯端末キー2を電子キー(車両キー)として使用するために登録したキー情報7を基に実行される。よって、再ペアリングの可否判定を、キー情報7を用いて精度よく行うことができる。
【0050】
(5)再ペアリングの可否判定は、キー情報7に含まれる暗号鍵を用いたチャレンジレスポンス認証である。よって、再ペアリングの可否判定を、チャレンジレスポンス認証によって
精度よく判定することができる。
【0051】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・初期登録において、登録ツール19を使用して通信マスタ14をペアリングモードに切り替えることに限定されない。例えば、車内のマルチメディア(カーナビゲーションシステム)等を用いて切り替えるなど、他の方法に変更可能である。
【0052】
・初期登録において、携帯端末キー2にキー情報7を付与する外部装置は、センター26に限定されず、例えば専用のツールからなど、他の態様に変更可能である。
・携帯端末キー2においてキー情報7が書き込まれるメモリは、セキュアエレメント6に限定されず、他の記憶領域に変更してもよい。
【0053】
・初期登録において、携帯端末キー2のキー情報7は、第2通信を通じて通信マスタ14に登録されることに限らず、例えば第1通信を通じて通信マスタ14に登録されてもよい。
【0054】
・再ペアリングは、通信の最初に実行されるペアリングと同じ処理内容としてもよいし、或いは再ペアリングための専用の処理としてもよい。
・再ペアリングの可否判定は、キー情報7を用いた認証(チャレンジレスポンス認証)に限定されない。要は、以前に通信マスタ14に登録されていた携帯端末キー2かどうかを判断できれば、種々の態様に変更することができる。
【0055】
・再ペアリングの可否判定は、第1通信とは別の通信網を使用することに限らず、第1通信を用いて行ってもよい。
・再ペアリング実行要求Sdmは、通信マスタ14側から携帯端末キー2に出力されてもよい。
【0056】
・第1通信は、ブルートゥース以外の他の通信に変更可能である。また、第2通信は、近距離無線通信以外の他の通信に変更可能である。
・ペアリングは、携帯端末キー2と通信マスタ14との通信路を確保するための作業をいい、ペアリング情報17は、ペアリングに必要な情報でれば、種々のものに変更することが可能である。
【0057】
・車両1は、例えばボディECUやエンジンECU等が設けられていて、ボディECUにより車両ドアの施解錠が制御され、エンジンECUによってエンジンが制御される。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0058】
(イ)前記携帯端末キーシステムにおいて、前記可否判定部が再ペアリングを許可したとき、再ペアリングの実行を前記ペアリング実行部に要求する再ペアリング要求部を備え、前記ペアリング実行部は、前記再ペアリング要求部から再ペアリング実行要求を取得すると、前記ペアリング情報が削除された前記携帯端末キーとペアリングを実行して、前記ペアリング情報を当該携帯端末キーに登録し直す。この構成によれば、
可否判定部が再ペアリングを許可しないと再ペアリングが開始に移行しないので、再ペアリングを正しく実施するのに有利となる。