(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0025】
図1〜4は本発明の実施形態に係る重心点加速度検出装置の適用対象となる車両10の概略構成を示す図であり、
図5は本発明の実施形態に係る重心点加速度検出装置の概略構成を示す図である。
図1は本実施形態における車両10全体の概略構成を示し、
図2〜4はエンジン要素12の概略構成を示す。運動体としての車両10は、並進回転運動要素としてのエンジン要素12と、並進運動要素としてのばね上要素13及び複数のばね下要素11f,11rとを含む。第1運動要素としてのばね上要素13は、車体等を含んで構成される。第2運動要素としてのばね下要素11f,11rは、タイヤとホイールとロアアーム等を含んで構成され、ばね下要素11fが前輪側に相当し、ばね下要素11rが後輪側に相当する。以下の実施形態では、エンジン要素12、ばね上要素13、及びばね下要素11f,11rの3要素で説明するが、3要素に限定されるものではなく、要素を増加または減少させた場合も下記記載と同様の手順で重心点加速度の検出を行うことが可能である。また、車両10以外の運動体においても、下記記載と同様の手順で重心点加速度の検出を行うことが可能である。
【0026】
ばね上要素13とばね下要素11fは、弾性要素としてのばね要素14x,14zを介して連結されており、ばね上要素13とばね下要素11rは、弾性要素としてのばね要素15x,15zを介して連結されている。ばね上要素13とエンジン要素12は、弾性要素としてのばね要素16x,16z,17x,17z,18x,18z,19x,19zを介して連結されている。
【0027】
ここで、車両前後方向(車両進行方向)をx軸、車両左右方向をy軸、車両上下方向をz軸とする、互いに直交するxyz3次元座標系を車両10に規定する。ばね要素16x,17x,18x,19xはx方向に弾性を有し、ばね要素16z,17z,18z,19zはz方向に弾性を有する。ばね要素16x,17x,16z,17zのy方向位置は互いに等しく、ばね要素18x,19x,18z,19zのy方向位置は互いに等しいとする。ばね要素16x,17xはz方向に互いに距離をおいて位置し、ばね要素18x,19xはz方向に互いに距離をおいて位置し、ばね要素16x,18xはy方向に互いに距離をおいて位置し、ばね要素17x,19xはy方向に互いに距離をおいて位置する。ばね要素16z,17zはx方向に互いに距離をおいて位置し、ばね要素18z,19zはx方向に互いに距離をおいて位置し、ばね要素16z,18zはy方向に互いに距離をおいて位置し、ばね要素17z,19zはy方向に互いに距離をおいて位置する。エンジン要素12は、x方向に平行な重心軸(第1軸)12xまわりに回転運動(ロール運動)可能であり、y方向に平行な重心軸(第2軸)12yまわりに回転運動(ピッチ運動)可能であり、z方向に平行な重心軸(第3軸)12zまわりに回転運動(ヨー運動)可能である。さらに、エンジン要素12は、x方向(第1軸方向)に並進運動可能であり、z方向(第3軸方向)に並進運動可能である。
【0028】
ばね要素14xはx方向に弾性を有し、ばね要素14zはz方向に弾性を有する。ばね下要素11fは、x方向(第1軸方向)に並進運動可能であり、z方向(第3軸方向)に並進運動可能である。同様に、ばね要素15xはx方向に弾性を有し、ばね要素15zはz方向に弾性を有し、ばね下要素11rはx方向及びz方向に並進運動可能である。ばね要素14x,15xはx方向に互いに距離をおいて位置し、ばね上要素13は、x方向(第1軸方向)及びz方向(第3軸方向)に並進運動可能であり、さらに、y方向に平行な重心軸13yまわりに回転運動(ピッチ運動)可能である。
【0029】
タイヤと路面間に作用するx方向のタイヤ駆動力によってばね下要素11fにx方向の外力が作用し、タイヤと路面間に作用するz方向の力によってばね下要素11f,11rにz方向の外力が作用する。ばね要素14xを介してばね下要素11fとばね上要素13間でx方向の力が伝達され、ばね要素14zを介してばね下要素11fとばね上要素13間でz方向の力が伝達される。同様に、ばね要素15xを介してばね下要素11rとばね上要素13間でx方向の力が伝達され、ばね要素15zを介してばね下要素11rとばね上要素13間でz方向の力が伝達される。ばね要素16x,17x,18x,19xを介してエンジン要素12とばね上要素13間でx方向の力が伝達され、ばね要素16z,17z,18z,19zを介してエンジン要素12とばね上要素13間でz方向の力が伝達される。
【0030】
エンジン要素12において、重心軸12xまわりのロール運動は以下の(1)式で表され、重心軸12yまわりのピッチ運動は以下の(2)式で表され、重心軸12zまわりのヨー運動は以下の(3)式で表され、x方向並進運動は以下の(4)式で表され、z方向並進運動は以下の(5)式で表される。ばね下要素11fにおいて、x方向並進運動は以下の(6)式で表され、z方向並進運動は以下の(7)式で表される。ばね下要素11rにおいて、x方向並進運動は以下の(8)式で表され、z方向並進運動は以下の(9)式で表される。ばね上要素13において、x方向並進運動は以下の(10)式で表され、z方向並進運動は以下の(11)式で表され、重心軸13yまわりのピッチ運動は以下の(12)式で表される。ただし、ばね下要素11f,11rのx方向並進運動及びz方向並進運動については、説明の簡易化のため、左右輪で同じ挙動を示すものとして2輪分で表現している。
【0032】
(1)〜(12)式において、θ
xはエンジン要素12の重心軸12xまわりの回転角(ロール角)、θ
yはエンジン要素12の重心軸12yまわりの回転角(ピッチ角)、θ
zはエンジン要素12の重心軸12zまわりの回転角(ヨー角)、x
eはエンジン要素12の重心点のx方向並進変位、z
eはエンジン要素12の重心点のz方向並進変位、x
fはばね下要素11fの重心点のx方向並進変位、z
fはばね下要素11fの重心点のz方向並進変位、x
rはばね下要素11rの重心点のx方向並進変位、z
rはばね下要素11rの重心点のz方向並進変位、x
vはばね上要素13の重心点のx方向並進変位、z
vはばね上要素13の重心点のz方向並進変位、αはばね上要素13の重心軸13yまわりの回転角(ピッチ角)である。ただし、(1)〜(12)式では、時間微分d/dtを・(ドット)で表し(以下の他式も同様)、エンジン要素12の重心軸12xまわりの回転角加速度d
2θ
x/dt
2をθ
xの上に・・を付して表し、エンジン要素12の重心軸12yまわりの回転角加速度d
2θ
y/dt
2をθ
yの上に・・を付して表し、エンジン要素12の重心軸12zまわりの回転角加速度d
2θ
z/dt
2をθ
zの上に・・を付して表し、エンジン要素12の重心点のx方向並進加速度d
2x
e/dt
2をx
eの上に・・を付して表し、エンジン要素12の重心点のz方向並進加速度d
2z
e/dt
2をz
eの上に・・を付して表している。同様に、ばね下要素11fの重心点のx方向並進加速度d
2x
f/dt
2をx
fの上に・・を付して表し、ばね下要素11fの重心点のz方向並進加速度d
2z
f/dt
2をz
fの上に・・を付して表し、ばね下要素11rの重心点のx方向並進加速度d
2x
r/dt
2をx
rの上に・・を付して表し、ばね下要素11rの重心点のz方向並進加速度d
2z
r/dt
2をz
rの上に・・を付して表し、ばね上要素13の重心点のx方向並進加速度d
2x
v/dt
2をx
vの上に・・を付して表し、ばね上要素13の重心点のz方向並進加速度d
2z
v/dt
2をz
vの上に・・を付して表し、ばね上要素13の重心軸13yまわりの回転角加速度d
2α/dt
2をαの上に・・を付して表している。
【0033】
また、(1)〜(12)式において、J
exはエンジン要素12の重心軸12xまわりの慣性モーメント、J
eyはエンジン要素12の重心軸12yまわりの慣性モーメント、J
ezはエンジン要素12の重心軸12zまわりの慣性モーメント、m
eはエンジン要素12の質量、m
fはばね下要素11fの質量、m
rはばね下要素11rの質量、m
vはばね上要素13の質量、J
vはばね上要素13の重心軸13yまわりの慣性モーメントである。T
eはエンジントルク、T
mはトランスミッションから受けるトルク反力、λはトランスミッション出口でのトータルギヤ比、Fはばね下要素11fに作用するx方向の外力(タイヤ駆動力)、z
f0はばね下要素11f位置での路面のz方向並進変位、z
r0はばね下要素11r位置での路面のz方向並進変位、k
ftはばね下要素11fにおけるタイヤのz方向のばね定数、k
rtはばね下要素11rにおけるタイヤのz方向のばね定数であり、k
ft×(z
f−z
f0)が路面からばね下要素11fに作用するz方向の外力に相当し、k
rt×(z
r−z
r0)が路面からばね下要素11rに作用するz方向の外力に相当する。k
fxはばね要素14xのx方向のばね定数、k
fzはばね要素14zのz方向のばね定数、k
rxはばね要素15xのx方向のばね定数、k
rzはばね要素15zのz方向のばね定数、H
vは重心軸13yとばね要素14x,15xとのz方向距離、L
fは重心軸13yとばね要素14zとのx方向距離、L
rは重心軸13yとばね要素15zとのx方向距離である。
【0034】
また、(1)〜(12)式において、各ばね定数k
xT,k
xx,k
vx,k
yT,k
yx,k
yy,k
yz,k
vy,k
zT,k
zy,k
zz,k
vz,kx,kx
y,kx
z,k
xev,kz,kz
x,kz
y,k
zev,k
vαは、以下の(13)〜(33)式で表される。(13)〜(33)式において、k
1はばね要素16xのx方向のばね定数、k
2はばね要素17xのx方向のばね定数、k
3はばね要素18xのx方向のばね定数、k
4はばね要素19xのx方向のばね定数、k
aはばね要素16zのz方向のばね定数、k
bはばね要素17zのz方向のばね定数、k
cはばね要素18zのz方向のばね定数、k
dはばね要素19zのz方向のばね定数である。l
11はエンジン要素12の重心点とばね要素18x,19x,18z,19zとのy方向距離、l
12はエンジン要素12の重心点とばね要素16x,17x,16z,17zとのy方向距離、d
11はエンジン要素12の重心点とばね要素16z,18zとのx方向距離、d
12はエンジン要素12の重心点とばね要素17z,19zとのx方向距離、h
11はエンジン要素12の重心点とばね要素16x,18xとのz方向距離、h
12はエンジン要素12の重心点とばね要素17x,19xとのとのz方向距離である。D
eは重心軸12yと重心軸13yとのx方向距離、H
eは重心軸12yと重心軸13yとのz方向距離である。
【0036】
(1)〜(3)式のエンジン要素12の回転運動、及び(12)式のばね上要素13のピッチ運動があっても、(4)、(6)、(8)、(10)式の総和をとることで、x方向の並進力のみで釣り合いを表すことができ、以下の(34)式に示すように、エンジン要素12とばね下要素11f,11rとばね上要素13のx方向慣性力の総和がx方向外力(タイヤ駆動力)Fに等しくなる。同様に、(5)、(7)、(9)、(11)式の総和をとることで、z方向の並進力のみで釣り合いを表すことができ、以下の(35)式に示すように、エンジン要素12とばね下要素11f,11rとばね上要素13のz方向慣性力の総和がz方向外力の総和k
ft×(z
f−z
f0)+k
rt×(z
r−z
r0)に等しくなる。
【0038】
以下の説明では、本実施形態に係る重心点加速度検出装置により、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を検出する例について説明する。なお、以下に説明するエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を検出する処理を実行する前は、エンジン要素12の重心点(重心軸12x,12y,12z)の位置は未知である。
【0039】
エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を検出するために、
図3,4に示すように、各々がx方向並進加速度及びz方向並進加速度を検出する複数(3つ)の2軸加速度センサ22−1,22−2,22−3がエンジン要素12に付設されている。2軸加速度センサ22−1と2軸加速度センサ22−2はy方向に互いに距離l
1+l
2をおいた状態でエンジン要素12に設置され、2軸加速度センサ22−1と2軸加速度センサ22−3はy方向に互いに距離l
1+l
3をおいた状態でエンジン要素12に設置されている。2軸加速度センサ22−1と2軸加速度センサ22−2とでx方向位置及びz方向位置は互いに等しく、2軸加速度センサ22−1,22−2と2軸加速度センサ22−3は、x方向に互いに距離d
1+d
3をおき、z方向に互いに距離h
1+h
3をおいた状態で、エンジン要素12に設置されている。
【0040】
エンジン要素12において、2軸加速度センサ22−1の付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
1/dt
2は以下の(36)式で表され、2軸加速度センサ22−2の付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
2/dt
2は以下の(37)式で表され、2軸加速度センサ22−3の付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
3/dt
2は以下の(38)式で表される。そして、2軸加速度センサ22−1の付設箇所でのz方向並進加速度d
2z
1/dt
2は以下の(39)式で表され、2軸加速度センサ22−2の付設箇所でのz方向並進加速度d
2z
2/dt
2は以下の(40)式で表され、2軸加速度センサ22−3の付設箇所でのz方向並進加速度d
2z
3/dt
2は以下の(41)式で表される。ただし、(36)〜(41)式でも、x方向並進加速度d
2x
1/dt
2,d
2x
2/dt
2,d
2x
3/dt
2をx
1,x
2,x
3の上に・・を付して表し、z方向並進加速度d
2z
1/dt
2,d
2z
2/dt
2,d
2z
3/dt
2をz
1,z
2,z
3の上に・・を付して表している。(36)〜(41)式において、l
1はエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1の付設箇所とのy方向距離、l
2はエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−2の付設箇所とのy方向距離、l
3はエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−3の付設箇所とのy方向距離、h
1はエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1,22−2の付設箇所とのz方向距離、h
3はエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−3の付設箇所とのz方向距離、d
1はエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1,22−2の付設箇所とのx方向距離、d
3はエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−3の付設箇所とのx方向距離である。
【0042】
また、エンジン要素12において、重心軸12xまわりの回転角加速度d
2θ
x/dt
2は以下の(44)式で表され、重心軸12yまわりの回転角加速度d
2θ
y/dt
2は以下の(42)式で表され、重心軸12zまわりの回転角加速度d
2θ
z/dt
2は以下の(43)式で表される。なお、2軸加速度センサ22−1と2軸加速度センサ22−2のy方向距離l
1+l
2と、2軸加速度センサ22−1と2軸加速度センサ22−3のy方向距離l
1+l
3と、2軸加速度センサ22−1,22−2と2軸加速度センサ22−3のx方向距離d
1+d
3及びz方向距離h
1+h
3は既知であるが、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を検出する処理を実行する前は、距離l
1,l
2,l
3,h
1,h
3,d
1,d
3は未知である。
【0044】
ばね上要素13の重心点でのx方向並進加速度d
2x
v/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
v/dt
2を検出するために、x方向並進加速度及びz方向並進加速度を検出する2軸加速度センサ23がばね上要素13に付設されている。ここでは、ばね上要素13の重心軸13yの位置は既知であり、2軸加速度センサ23は重心軸13y上に設置されている。
【0045】
ばね下要素11fの重心点でのx方向並進加速度d
2x
f/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
f/dt
2を検出するために、x方向並進加速度及びz方向並進加速度を検出する2軸加速度センサ21fがばね下要素11fに付設されている。同様に、ばね下要素11rの重心点でのx方向並進加速度d
2x
r/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
r/dt
2を検出するために、x方向並進加速度及びz方向並進加速度を検出する2軸加速度センサ21rがばね下要素11rに付設されている。ばね下要素11f,11rの重心点は、質量分布より図示しないタイヤ近傍にあり、この位置に2軸加速度センサ21f,21rを設置すればよい。
【0046】
ばね下要素11fに作用するx方向外力(タイヤ駆動力)Fを検出するために、タイヤ前後力センサ24がばね下要素11fに付設されている。ただし、ドライブシャフトトルクセンサと車輪速度センサとタイヤ慣性モーメントとタイヤ半径に基づきx方向外力(タイヤ駆動力)Fを検出することも可能である。また、ばね下要素11fに作用するz方向外力k
ft×(z
f−z
f0)を検出するために、ばね下要素11fの重心点と路面とのz方向相対変位z
f−z
f0を検出する変位センサ25fがばね下要素11fに付設されている。同様に、ばね下要素11rに作用するz方向外力k
rt×(z
r−z
r0)を検出するために、ばね下要素11rの重心点と路面とのz方向相対変位z
r−z
r0を検出する変位センサ25rがばね下要素11rに付設されている。ここでは、ばね下要素11fにおけるタイヤのz方向のばね定数k
ft、及びばね下要素11rにおけるタイヤのz方向のばね定数k
rtは既知である。ただし、タイヤ上下力センサによりz方向外力k
ft×(z
f−z
f0),k
rt×(z
r−z
r0)を検出することも可能である。
【0047】
重心点加速度検出装置において、情報処理装置70は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成可能である。情報処理装置70の機能ブロック図の一例を
図5に示す。情報処理装置70には、2軸加速度センサ22−1,22−2,22−3の付設箇所でのエンジン要素12のx方向並進加速度d
2x
1/dt
2,d
2x
2/dt
2,d
2x
3/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
1/dt
2,d
2z
2/dt
2,d
2z
3/dt
2と、2軸加速度センサ23によるばね上要素13の重心点でのx方向並進加速度d
2x
v/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
v/dt
2と、2軸加速度センサ21fによるばね下要素11fの重心点でのx方向並進加速度d
2x
f/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
f/dt
2と、2軸加速度センサ21rによるばね下要素11rの重心点でのx方向並進加速度d
2x
r/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
r/dt
2が入力される。さらに、情報処理装置70には、タイヤ前後力センサ24によるばね下要素11fのx方向外力(タイヤ駆動力)F、変位センサ25fによるばね下要素11fの重心点と路面とのz方向相対変位z
f−z
f0、及び変位センサ25rによるばね下要素11rの重心点と路面とのz方向相対変位z
r−z
r0が入力される。
【0048】
情報処理装置70において、設定定数記憶装置72には、エンジン要素12の質量m
e、ばね上要素13の質量m
v、ばね下要素11fの質量m
f、ばね下要素11rの質量m
r、2軸加速度センサ22−1と2軸加速度センサ22−2のy方向距離l
1+l
2、2軸加速度センサ22−1と2軸加速度センサ22−3のy方向距離l
1+l
3、2軸加速度センサ22−1,22−2と2軸加速度センサ22−3のz方向距離h
1+h
3、ばね下要素11fにおけるタイヤのz方向のばね定数k
ft、及びばね下要素11rにおけるタイヤのz方向のばね定数k
rtが記憶されている。設定定数記憶装置72に記憶するm
e,m
v,m
f,m
r,l
1+l
2,l
1+l
3,h
1+h
3,k
ft,k
rtの値については、予め計測しておくか設計値を用いる。
【0049】
エンジン角加速度算出装置71は、エンジン要素12の回転角加速度d
2θ
x/dt
2,d
2θ
y/dt
2,d
2θ
z/dt
2を算出する。重心軸12xまわりの回転角加速度d
2θ
x/dt
2は、2軸加速度センサ22−3,22−1で検出されたz方向並進加速度の差d
2z
3/dt
2−d
2z
1/dt
2と、設定定数記憶装置72に記憶された2軸加速度センサ22−3,22−1間のy方向距離l
1+l
3とに基づいて、(44)式を用いて算出される。重心軸12yまわりの回転角加速度d
2θ
y/dt
2は、2軸加速度センサ22−1,22−3で検出されたx方向並進加速度の差d
2x
1/dt
2−d
2x
3/dt
2と、設定定数記憶装置72に記憶された2軸加速度センサ22−1,22−3間のz方向距離h
1+h
3とに基づいて、(42)式を用いて算出される。重心軸12zまわりの回転角加速度d
2θ
z/dt
2は、2軸加速度センサ22−1,22−3で検出されたx方向並進加速度の差d
2x
1/dt
2−d
2x
3/dt
2と、設定定数記憶装置72に記憶された2軸加速度センサ22−1,22−3間のy方向距離l
1+l
3とに基づいて、(43)式を用いて算出される。
【0050】
外力算出装置73は、ばね下要素11f,11rに作用するz方向外力を算出する。ばね下要素11fに作用するz方向外力は、変位センサ25fで検出されたz方向相対変位z
f−z
f0と設定定数記憶装置72に記憶されたばね定数k
ftとの積k
ft×(z
f−z
f0)により算出される。ばね下要素11rに作用するz方向外力は、変位センサ25rで検出されたz方向相対変位z
r−z
r0と設定定数記憶装置72に記憶されたばね定数k
rtとの積k
rt×(z
r−z
r0)により算出される。
【0051】
(36)式を変形して(34)式に代入すると、以下の(45)式が得られる。(45)式において、質量m
e,m
f,m
r,m
vは設定定数記憶装置72に記憶された値から既知となり、x方向並進加速度d
2x
f/dt
2,d
2x
r/dt
2,d
2x
v/dt
2は2軸加速度センサ21f,21r,23による検出値から既知となり、x方向外力Fはタイヤ前後力センサ24による検出値から既知となる。そして、エンジン要素12のx方向並進加速度d
2x
1/dt
2は2軸加速度センサ22−1による検出値から既知となり、エンジン要素12の回転角加速度d
2θ
y/dt
2,d
2θ
z/dt
2はエンジン角加速度算出装置71による算出値から既知となる。その結果、(45)式における未知パラメータは、距離h
1,l
1となる。(45)式を以下の(46)式のように書き換える。(46)式において、Tは転置を表す(以下の他式も同様)。
【0053】
パラメータ同定装置74は、2軸加速度センサ22−1で複数回検出されたx方向並進加速度d
2x
1(n)/dt
2(nはサンプリング時刻)、エンジン角加速度算出装置71で複数回算出された回転角加速度d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2、2軸加速度センサ21f,21r,23で複数回検出されたx方向並進加速度d
2x
f(n)/dt
2,d
2x
r(n)/dt
2,d
2x
v(n)/dt
2、及びタイヤ前後力センサ24で複数回検出されたx方向外力F(n)に基づいて、y方向及びz方向におけるエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1の付設箇所との距離l
1,h
1を、(46)式を用いて算出する。(46)式の左辺及び右辺第1項は、各サンプリング時刻i,i+1,i+2,〜毎に得ることができ、以下の(47)式のように表すことが可能である。パラメータ同定装置74は、各サンプリング時刻n毎に得られるd
2x
1(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2,d
2x
f(n)/dt
2,d
2x
r(n)/dt
2,d
2x
v(n)/dt
2,F(n)を用いて、(47)式における未知パラメータh
1,l
1を最小二乗法により同定する。なお、前記d
2x
1(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2,d
2x
f(n)/dt
2,d
2x
r(n)/dt
2,d
2x
v(n)/dt
2,F(n)の各信号は、事前((47)式演算前)にバンドパスフィルタ処理されたものを用いてもよい。
【0055】
(47)式を以下の(48)式のように書き換える。ただし、(48)式のA,Y,Xは以下の(49)〜(51)式でそれぞれ表される。
【0057】
(50)、(51)式はNサンプリング点からなる既知の縦ベクトルであり、未知パラメータAは以下の(52)式により算出される。算出された未知パラメータA(h
1,l
1)は設定定数記憶装置72に記憶される。同様の手順により、未知パラメータである距離l
2,l
3,h
3を算出することが可能である。
【0059】
エンジン重心点加速度算出装置78は、パラメータ同定装置74で算出されたy方向及びz方向におけるエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1の付設箇所との距離l
1,h
1と、2軸加速度センサ22−1で検出されたx方向並進加速度d
2x
1(n)/dt
2と、エンジン角加速度算出装置71で算出された回転角加速度d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2を、(36)式を用いて算出する。ただし、ここでは、距離l
2,h
1と、2軸加速度センサ22−2で検出されたx方向並進加速度d
2x
2(n)/dt
2と、回転角加速度d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2を、(37)式を用いて算出することも可能である。また、距離l
3,h
3と、2軸加速度センサ22−3で検出されたx方向並進加速度d
2x
3(n)/dt
2と、回転角加速度d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2を、(38)式を用いて算出することも可能である。
【0060】
また、(39)式を変形して(35)式に代入すると、以下の(53)式が得られる。(53)式において、質量m
e,m
f,m
r,m
vは設定定数記憶装置72に記憶された値から既知となり、z方向並進加速度d
2z
f/dt
2,d
2z
r/dt
2,d
2z
v/dt
2は2軸加速度センサ21f,21r,23による検出値から既知となり、z方向外力k
ft×(z
f−z
f0),k
rt×(z
r−z
r0)は外力算出装置73による算出値から既知となる。そして、エンジン要素12のz方向並進加速度d
2z
1/dt
2は2軸加速度センサ22−1による検出値から既知となり、エンジン要素12の回転角加速度d
2θ
x/dt
2,d
2θ
y/dt
2はエンジン角加速度算出装置71による算出値から既知となる。さらに、距離l
1は(52)式により算出されたため既知となる。その結果、(53)式における未知パラメータは、距離d
1となる。(53)式を以下の(54)式のように書き換える。
【0062】
パラメータ同定装置74は、2軸加速度センサ22−1で複数回検出されたz方向並進加速度d
2z
1(n)/dt
2、エンジン角加速度算出装置71で複数回算出された回転角加速度d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2、2軸加速度センサ21f,21r,23で複数回検出されたz方向並進加速度d
2z
f(n)/dt
2,d
2z
r(n)/dt
2,d
2z
v(n)/dt
2、及び外力算出装置73で複数回算出されたz方向外力k
ft×(z
f(n)−z
f0(n)),k
rt×(z
r(n)−z
r0(n))に基づいて、x方向におけるエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1の付設箇所との距離d
1を、(54)式を用いて算出する。(54)式の左辺及び右辺第1項も、各サンプリング時刻i,i+1,i+2,〜毎に得ることができる。パラメータ同定装置74は、各サンプリング時刻n毎に得られるd
2z
1(n)/dt
2,d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2,d
2z
f(n)/dt
2,d
2z
r(n)/dt
2,d
2z
v(n)/dt
2,k
ft×(z
f(n)−z
f0(n)),k
rt×(z
r(n)−z
r0(n))を用いて、(54)式における未知パラメータd
1を最小二乗法により同定する。なお、前記d
2z
1(n)/dt
2,d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2,d
2z
f(n)/dt
2,d
2z
r(n)/dt
2,d
2z
v(n)/dt
2,k
ft×(z
f(n)−z
f0(n)),k
rt×(z
r(n)−z
r0(n))の各信号は、事前((54)式演算前)にバンドパスフィルタ処理されたものを用いてもよい。
【0063】
A,Y,Xを以下の(55)〜(57)式でそれぞれ表すと、未知パラメータAは(52)式により算出される。算出された未知パラメータA(d
1)は設定定数記憶装置72に記憶される。同様の手順により、未知パラメータである距離d
3を算出することが可能である。
【0065】
エンジン重心点加速度算出装置78は、パラメータ同定装置74で算出されたx方向及びy方向におけるエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1の付設箇所との距離d
1,l
1と、2軸加速度センサ22−1で検出されたz方向並進加速度d
2z
1(n)/dt
2と、エンジン角加速度算出装置71で算出された回転角加速度d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を、(39)式を用いて算出する。ただし、ここでは、距離d
1,l
2と、2軸加速度センサ22−2で検出されたz方向並進加速度d
2z
2(n)/dt
2と、回転角加速度d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を、(40)式を用いて算出することも可能である。また、距離d
3,l
3と、2軸加速度センサ22−3で検出されたz方向並進加速度d
2z
3(n)/dt
2と、回転角加速度d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を、(41)式を用いて算出することも可能である。
【0066】
情報処理装置70によりエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を算出する処理の一例を
図6のフローチャートに示す。ステップS101では、設定定数記憶装置72に記憶された既知パラメータm
e,m
v,m
f,m
r,l
1+l
2,l
1+l
3,h
1+h
3,k
ft,k
rtが読み出される。ステップS102では、センサ22−1,22−2,22−3,23,21f,21r,24,25f,25rによる各検出値d
2x
1(n)/dt
2,d
2z
1(n)/dt
2,d
2x
2(n)/dt
2,d
2z
2(n)/dt
2,d
2x
3(n)/dt
2,d
2z
3(n)/dt
2,d
2x
v(n)/dt
2,d
2z
v(n)/dt
2,d
2x
f(n)/dt
2,d
2z
f(n)/dt
2,d
2x
r(n)/dt
2,d
2z
r(n)/dt
2,F(n),z
f(n)−z
f0(n),z
r(n)−z
r0(n)が読み込まれる。ステップS103では、(42)〜(44)式を用いてエンジン要素12の回転角加速度d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2が算出される。ステップS104では、各検出値に基づいて(52)式を用いて未知パラメータである距離l
1,l
2,l
3,h
1,h
3,d
1,d
3が同定される。ステップS105では、同定した距離l
1,l
2,l
3,h
1,h
3,d
1,d
3に基づいて(36)〜(41)式のいずれかを用いてエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2が算出される。
【0067】
本実施形態に係る重心点加速度検出装置によりエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を算出した結果の一例を
図7に示す。
図7(a)は、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及び2軸加速度センサ22−1によるx方向並進加速度d
2x
1(n)/dt
2を真値と比較した時系列波形を示し、
図7(b)は、エンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2及び2軸加速度センサ22−1によるz方向並進加速度d
2z
1(n)/dt
2を真値と比較した時系列波形を示す。
図7に示すように、2軸加速度センサ22−1によるx方向並進加速度d
2x
1(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
1(n)/dt
2が真値から大きくずれているのに対して、本実施形態による重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2が真値にほぼ一致していることがわかる。つまり、本実施形態に係る重心点加速度検出装置により、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を精度よく検出できていることがわかる。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、エンジン要素12において、重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2、加速度センサ22−1の付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
1/dt
2、回転角加速度d
2θ
y/dt
2,d
2θ
z/dt
2、及び重心点と加速度センサ22−1の距離l
1,h
1の関係を表す(36)式と、エンジン要素12とばね下要素11f,11rとばね上要素13のx方向慣性力の総和がx方向外力Fに等しい関係を表す(34)式を用いて、未知パラメータである距離l
1,h
1を精度よく同定することができる。したがって、実働状態でのエンジン要素12内部の冷却水やオイルの質量分布が不明で、エンジン要素12の重心点位置が予めわかっていなくても、エンジン要素12のy方向及びz方向における重心点位置を精度よく同定することができる。そして、同定した距離l
1,h
1を用いて(36)式によりエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2を精度よく算出することができる。
【0069】
同様に、エンジン要素12において、重心点でのz方向並進加速度d
2z
e/dt
2、加速度センサ22−1の付設箇所でのz方向並進加速度d
2z
1/dt
2、回転角加速度d
2θ
y/dt
2,d
2θ
x/dt
2、及び重心点と加速度センサ22−1の距離l
1,d
1の関係を表す(39)式と、エンジン要素12とばね下要素11f,11rとばね上要素13のz方向慣性力の総和がz方向外力の総和k
ft×(z
f−z
f0)+k
rt×(z
r−z
r0)に等しい関係を表す(35)式を用いて、未知パラメータである距離d
1を精度よく同定することができる。したがって、実働状態でのエンジン要素12内部の冷却水やオイルの質量分布が不明で、エンジン要素12の重心点位置が予めわかっていなくても、エンジン要素12のx方向における重心点位置を精度よく同定することができる。そして、同定した距離d
1を用いて(39)式によりエンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を精度よく算出することができる。
【0070】
したがって、エンジン要素12からばね上要素13に作用するx方向慣性力及びz方向慣性力の検出が可能となり、振動・騒音低減、ばね上振動抑制に関する信号が検出できる結果、車両性能向上に寄与できる効果を持つ。その際には、エンジン要素12の重心点位置が予めわかっていなくても、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を算出することができる。
【0071】
本実施形態に係る重心点加速度検出装置により検出されたエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2については、例えばアクティブマウント(能動型防振装置)の制御に用いることが可能である。つまり、エンジン重心点加速度算出装置78で算出されたエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2に基づいてアクティブマウントのアクチュエータの制御信号を生成することで、エンジン制振が可能となり、ばね上要素13の不快なx方向振動及びz方向振動を抑制することができる。
【0072】
なお、距離l
1,h
1の同定にはタイヤ前後力センサ24やドライブシャフトトルクセンサと車輪速度センサが必要であるが、距離l
1,h
1の同定後は、タイヤ前後力センサ24やドライブシャフトトルクセンサと車輪速度センサは不要であり、加速度センサ22−1,22−2,22−3だけでエンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2を算出することが可能となる。同様に、距離d
1の同定には変位センサ25f,25rやタイヤ上下力センサが必要であるが、距離d
1の同定後は、変位センサ25f,25rやタイヤ上下力センサは不要であり、加速度センサ22−1,22−2,22−3だけでエンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を算出することが可能となる。そこで、例えば車両10の出荷前に試験所や工場内での試験走行により距離d
1,l
1,h
1を同定しておくことで、車両10の出荷後の一般走行において、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を算出する際には、高価なタイヤ前後力センサ24やドライブシャフトトルクセンサと車輪速度センサ、及び変位センサ25f,25rやタイヤ上下力センサは不要となる。
【0073】
上記の実施形態では、エンジン要素12に2軸加速度センサ22−1,22−2,22−3を付設して、エンジン要素12において、2軸加速度センサ22−1の付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
1/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
1/dt
2と、重心軸12x,12y,12zまわりの回転角加速度d
2θ
x/dt
2,d
2θ
y/dt
2,d
2θ
z/dt
2を検出する例について説明した。ただし、本実施形態では、
図8に示すように、エンジン要素12に2軸加速度センサ22−1と3軸角速度センサ32を付設して、エンジン要素12において、2軸加速度センサ22−1の付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
1/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
1/dt
2と、重心軸12x,12y,12zまわりの回転角加速度d
2θ
x/dt
2,d
2θ
y/dt
2,d
2θ
z/dt
2を検出することも可能である。
図8の構成例において、3軸角速度センサ32は、エンジン要素12において、重心軸12xまわりの回転角速度dθ
x/dtと、重心軸12yまわりの回転角速度dθ
y/dtと、重心軸12zまわりの回転角速度dθ
z/dtを検出する。情報処理装置70において、微分回路75は、3軸角速度センサ32で検出された回転角速度dθ
x/dtを微分することでエンジン要素12の重心軸12xまわりの回転角加速度d
2θ
x/dt
2を算出し、3軸角速度センサ32で検出された回転角速度dθ
y/dtを微分することでエンジン要素12の重心軸12yまわりの回転角加速度d
2θ
y/dt
2を算出し、3軸角速度センサ32で検出された回転角速度dθ
z/dtを微分することでエンジン要素12の重心軸12zまわりの回転角速度d
2θ
z/dt
2を算出する。
【0074】
本実施形態では、
図9,10に示すように、ばね下要素11fは、z方向(重心軸12z)に平行な重心軸(第4軸)11−1zまわりに回転運動可能であってもよいし、ばね下要素11rは、z方向(重心軸12z)に平行な重心軸(第4軸)11−2zまわりに回転運動可能であってもよい。さらに、本実施形態では、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e/dt
2及びz方向並進加速度d
2z
e/dt
2を検出する処理の実行前に、ばね下要素11f,11rの重心軸11−1z,11−2zの位置が未知であってもよい。以下、その場合に、ばね下要素11f,11rの重心点でのx方向並進加速度d
2x
f/dt
2,d
2x
r/dt
2を検出する処理について説明する。
【0075】
ばね下要素11fには、
図9に示すように、x方向並進加速度及びz方向並進加速度を検出する2軸加速度センサ21fの他に、x方向並進加速度を検出する1軸加速度センサ31fがさらに付設されている。2軸加速度センサ21fと1軸加速度センサ31fは、y方向に互いに距離H
fをおいてばね下要素11fに設置されている。同様に、ばね下要素11rには、
図10に示すように、x方向並進加速度及びz方向並進加速度を検出する2軸加速度センサ21rの他に、x方向並進加速度を検出する1軸加速度センサ31rがさらに付設されている。2軸加速度センサ21rと1軸加速度センサ31rは、y方向に互いに距離H
rをおいてばね下要素11rに設置されている。ここでは、重心軸11−1z,11−2zまわりの回転運動以外のばね下要素11f,11rの回転運動は、ばね下要素11f,11rの並進運動に比べて十分小さく、ばね下要素11f,11rのz方向並進加速度は、どの位置で計測しても重心点と同じz方向並進加速度となる。
【0076】
ばね下要素11fにおいて、重心軸11−1zまわりの回転角加速度d
2θ
zf/dt
2、重心軸11−1zのx方向並進加速度d
2x
f/dt
2、2軸加速度センサ21fの付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
f1/dt
2、1軸加速度センサ31fの付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
f2/dt
2、重心軸11−1zと2軸加速度センサ21fの付設箇所とのy方向距離l
f1、及び重心軸11−1zと1軸加速度センサ31fの付設箇所とのy方向距離l
f2(=l
f1+H
f)の関係は、以下の(58)、(59)式で表される。同様に、ばね下要素11rにおいて、重心軸11−2zまわりの回転角加速度d
2θ
zr/dt
2、重心軸11−2zのx方向並進加速度d
2x
r/dt
2、2軸加速度センサ21rの付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
r1/dt
2、1軸加速度センサ31rの付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
r2/dt
2、重心軸11−2zと2軸加速度センサ21rの付設箇所とのy方向距離l
r1、、及び重心軸11−2zと1軸加速度センサ31rの付設箇所とのy方向距離l
r2(=l
r1+H
r)の関係は、以下の(60)、(61)式で表される。ただし、(58)〜(61)式でも、回転角加速度d
2θ
zf/dt
2,d
2θ
zr/dt
2をθ
zf,θ
zrの上に・・を付して表し、x方向並進加速度d
2x
f1/dt
2,d
2x
f2/dt
2,d
2x
r1/dt
2,d
2x
r2/dt
2をx
f1,x
f2,x
r1,x
r2の上に・・を付して表している。
【0078】
また、ばね下要素11fの重心軸11−1zまわりの回転角加速度d
2θ
zf/dt
2は以下の(62)式で表され、ばね下要素11rの重心軸11−2zまわりの回転角加速度d
2θ
zr/dt
2は以下の(63)式で表される。なお、2軸加速度センサ21fと1軸加速度センサ31fのy方向距離H
f、及び2軸加速度センサ21rと1軸加速度センサ31rのy方向距離H
rは既知であるが、ばね下要素11f,11rの重心点でのx方向並進加速度d
2x
f/dt
2,d
2x
r/dt
2を検出する処理を実行する前は、距離l
f1,l
f2,l
r1,l
r2は未知である。
【0080】
図11に示すように、情報処理装置70において、設定定数記憶装置72には、加速度センサ21f,31f間のy方向距離H
f、及び加速度センサ21r,31r間のy方向距離H
rがさらに記憶されている。ばね下角加速度算出装置81は、ばね下要素11f,11rの回転角加速度d
2θ
zf/dt
2,d
2θ
zr/dt
2を算出する。ばね下要素11fの重心軸11−1zまわりの回転角加速度d
2θ
zf/dt
2は、加速度センサ31f,21fで検出されたx方向並進加速度の差d
2x
f2/dt
2−d
2x
f1/dt
2と、設定定数記憶装置72に記憶された距離H
fとに基づいて、(62)式を用いて算出される。ばね下要素11rの重心軸11−2zまわりの回転角加速度d
2θ
zr/dt
2は、加速度センサ31r,21rで検出されたx方向並進加速度の差d
2x
r2/dt
2−d
2x
r1/dt
2と、設定定数記憶装置72に記憶された距離H
rとに基づいて、(63)式を用いて算出される。
【0081】
(58)、(60)式を変形して(45)式に代入すると、以下の(64)式が得られる。(64)式において、質量m
e,m
f,m
r,m
vは設定定数記憶装置72に記憶された値から既知となり、x方向並進加速度d
2x
v/dt
2は2軸加速度センサ23による検出値から既知となり、x方向外力Fはタイヤ前後力センサ24による検出値から既知となる。そして、そして、エンジン要素12のx方向並進加速度d
2x
1/dt
2は2軸加速度センサ22−1による検出値から既知となり、エンジン要素12の回転角加速度d
2θ
y/dt
2,d
2θ
z/dt
2はエンジン角加速度算出装置71による算出値から既知となる。さらに、ばね下要素11f,11rのx方向並進加速度d
2x
f1/dt
2,d
2x
r1/dt
2は2軸加速度センサ21f,21rによる検出値から既知となり、ばね下要素11f,11rの回転角加速度d
2θ
zf/dt
2,d
2θ
zr/dt
2はばね下角加速度算出装置81による算出値から既知となる。その結果、(64)式における未知パラメータは、距離h
1,l
1,l
f1,l
r1となる。(64)式を以下の(65)式のように書き換える。
【0083】
パラメータ同定装置74は、2軸加速度センサ22−1で複数回検出されたx方向並進加速度d
2x
1(n)/dt
2、エンジン角加速度算出装置71で複数回算出された回転角加速度d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2、2軸加速度センサ21f,21rで複数回検出されたx方向並進加速度d
2x
f1(n)/dt
2,d
2x
r1(n)/dt
2、ばね下角加速度算出装置81で複数回算出された回転角加速度d
2θ
zf(n)/dt
2,d
2θ
zr(n)/dt
2、2軸加速度センサ23で複数回検出されたx方向並進加速度d
2x
v(n)/dt
2、及びタイヤ前後力センサ24で複数回検出されたx方向外力F(n)に基づいて、距離h
1,l
1,l
f1,l
r1を、(65)式を用いて算出する。(65)式の左辺及び右辺第1項は、各サンプリング時刻i,i+1,i+2,〜毎に得ることができる。パラメータ同定装置74は、各サンプリング時刻n毎に得られるd
2x
1(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2,d
2x
f1(n)/dt
2,d
2x
r1(n)/dt
2,d
2θ
zf(n)/dt
2,d
2θ
zr(n)/dt
2,d
2x
v(n)/dt
2,F(n)を用いて、(65)式における未知パラメータh
1,l
1,l
f1,l
r1を最小二乗法により同定する。なお、前記d
2x
1(n)/dt
2,d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2,d
2x
f1(n)/dt
2,d
2x
r1(n)/dt
2,d
2θ
zf(n)/dt
2,d
2θ
zr(n)/dt
2,d
2x
v(n)/dt
2,F(n)の各信号は、事前((65)式演算前)にバンドパスフィルタ処理されたものを用いてもよい。
【0084】
A,Y,Xを以下の(66)〜(68)式でそれぞれ表すと、未知パラメータAは(52)式により算出される。算出された未知パラメータA(h
1,l
1,l
f1,l
r1)は設定定数記憶装置72に記憶される。
【0086】
ばね下重心点加速度算出装置76は、パラメータ同定装置74で算出された距離l
f1と、2軸加速度センサ21fで検出されたx方向並進加速度d
2x
f1(n)/dt
2と、ばね下角加速度算出装置81で算出された回転角加速度d
2θ
zf(n)/dt
2とに基づいて、ばね下要素11fの重心点でのx方向並進加速度d
2x
f(n)/dt
2を、(58)式を用いて算出する。同様に、ばね下重心点加速度算出装置76は、パラメータ同定装置74で算出された距離l
r1と、2軸加速度センサ21rで検出されたx方向並進加速度d
2x
r1(n)/dt
2と、ばね下角加速度算出装置81で算出された回転角加速度d
2θ
zr(n)/dt
2とに基づいて、ばね下要素11rの重心点でのx方向並進加速度d
2x
r(n)/dt
2を、(60)式を用いて算出する。ただし、ここでは、距離l
f2(=l
f1+H
f)と、1軸加速度センサ31fで検出されたx方向並進加速度d
2x
f2(n)/dt
2と、回転角加速度d
2θ
zf(n)/dt
2とに基づいて、ばね下要素11fの重心点でのx方向並進加速度d
2x
f(n)/dt
2を、(59)式を用いて算出することも可能である。同様に、距離l
r2(=l
r1+H
r)と、1軸加速度センサ31rで検出されたx方向並進加速度d
2x
r2(n)/dt
2と、回転角加速度d
2θ
zr(n)/dt
2とに基づいて、ばね下要素11rの重心点でのx方向並進加速度d
2x
r(n)/dt
2を、(61)式を用いて算出することも可能である。
【0087】
エンジン重心点加速度算出装置78は、パラメータ同定装置74で算出された距離l
1,h
1と、2軸加速度センサ22−1で検出されたx方向並進加速度d
2x
1(n)/dt
2と、エンジン角加速度算出装置71で算出された回転角加速度d
2θ
y(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのx方向並進加速度d
2x
e(n)/dt
2を、(36)式を用いて算出する。なお、エンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e(n)/dt
2を算出する処理については、上記に説明した処理と同様である。
【0088】
この構成例によれば、ばね下要素11f,11rの重心点位置が予めわかっていなくても、距離l
f1,l
r1(重心軸11−1z,11−2zのy方向位置)を精度よく同定することができる。そして、同定した距離l
f1,l
r1を用いて(58)、(60)式によりばね下要素11f,11rのx方向並進加速度d
2x
f/dt
2,d
2x
r/dt
2を精度よく算出することができる。
【0089】
上記の説明では、ばね下要素11fに加速度センサ21f,31fを付設して、ばね下要素11fにおいて、加速度センサ21fの付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
f1/dt
2と、重心軸11−1zまわりの回転角加速度d
2θ
zf/dt
2を検出し、ばね下要素11rに加速度センサ21r,31rを付設して、ばね下要素11rにおいて、加速度センサ21rの付設箇所でのx方向並進加速度d
2x
r1/dt
2と、重心軸11−2zまわりの回転角加速度d
2θ
zr/dt
2を検出するものとした。ただし、加速度センサ31fに代えて、ばね下要素11fの重心軸11−1zまわりの回転角速度dθ
zf/dtを検出する角速度センサをばね下要素11fに付設し、角速度センサで検出された回転角速度dθ
zf/dtを微分することで、ばね下要素11fの重心軸11−1zまわりの回転角加速度d
2θ
zf/dt
2を算出することも可能である。同様に、加速度センサ31rに代えて、ばね下要素11rの重心軸11−2zまわりの回転角速度dθ
zr/dtを検出する角速度センサをばね下要素11rに付設し、角速度センサで検出された回転角速度dθ
zr/dtを微分することで、ばね下要素11rの重心軸11−2zまわりの回転角加速度d
2θ
zr/dt
2を算出することも可能である。
【0090】
以上の実施形態では、ばね要素14x,14zを介してばね下要素11fとばね上要素13間で力が伝達され、ばね要素15x,15zを介してばね下要素11rとばね上要素13間で力が伝達され、ばね要素16x,16z,17x,17z,18x,18z,19x,19zを介してエンジン要素12とばね上要素13間で力が伝達される例について説明した。ただし、本実施形態では、ダンパー等の減衰要素(粘性要素)を介してばね下要素11fとばね上要素13間で力が伝達されてもよいし、減衰要素を介してばね下要素11rとばね上要素13間で力が伝達されてもよいし、減衰要素を介してエンジン要素12とばね上要素13間で力が伝達されてもよい。その場合でも、(34)、(35)式が成立する。
【0091】
また、本実施形態では、エンジン要素12とばね下要素11f,11rとばね上要素13はy方向に並進運動可能であってもよい。タイヤと路面間に作用するy方向のタイヤ横力によってばね下要素11f,11rにy方向の外力が作用し、ばね下要素11f,11rとばね上要素13間でy方向の力が伝達され、エンジン要素12とばね上要素13間でy方向の力が伝達される。ばね下要素11f,11rに作用するy方向外力(タイヤ横力)F
fy,F
ryについては、例えばタイヤ横力センサにより検出可能である。その場合でも、以下の(69)式に示すように、エンジン要素12とばね下要素11f,11rとばね上要素13のy方向慣性力の総和が、ばね下要素11f,11rに作用するy方向外力(タイヤ横力)F
fy,F
ryの総和に等しくなる。ただし、(69)式でも、エンジン要素12の重心点のy方向並進加速度d
2y
e/dt
2をy
eの上に・・を付して表し、ばね下要素11fの重心点のy方向並進加速度d
2y
f/dt
2をy
fの上に・・を付して表し、ばね下要素11rの重心点のy方向並進加速度d
2y
r/dt
2をy
rの上に・・を付して表し、ばね上要素13の重心点のy方向並進加速度d
2y
v/dt
2をy
vの上に・・を付して表している。したがって、エンジン要素12の重心点でのz方向並進加速度d
2z
e/dt
2(あるいはx方向並進加速度d
2x
e/dt
2)を検出する処理と同様に、エンジン要素12の重心点でのy方向並進加速度d
2y
e/dt
2を検出することが可能である。その場合の処理としては、上記の説明において、y方向とz方向(あるいはx方向)を置き換えたものを考えればよい。
【0093】
エンジン要素12において、加速度センサ22−1の付設箇所でのy方向並進加速度d
2y
1/dt
2は以下の(70)式で表され、加速度センサ22−2の付設箇所でのy方向並進加速度d
2y
2/dt
2は以下の(71)式で表され、加速度センサ22−3の付設箇所でのy方向並進加速度d
2y
3/dt
2は以下の(72)式で表される。ただし、(70)〜(72)式でも、y方向並進加速度d
2y
1/dt
2,d
2y
2/dt
2,d
2y
3/dt
2をy
1,y
2,y
3の上に・・を付して表している。
【0095】
(70)式を変形して(69)式に代入すると、以下の(73)式が得られる。(73)式において、質量m
e,m
f,m
r,m
vは設定定数記憶装置72に記憶された値から既知となり、y方向並進加速度d
2y
f/dt
2,d
2y
r/dt
2,d
2y
v/dt
2は加速度センサ21f,21r,23による検出値から既知となり、y方向外力F
fy,F
ryはタイヤ横力センサによる検出値から既知となる。そして、エンジン要素12のy方向並進加速度d
2y
1/dt
2は加速度センサ22−1による検出値から既知となり、エンジン要素12の回転角加速度d
2θ
x/dt
2,d
2θ
z/dt
2はエンジン角加速度算出装置71または微分回路75による算出値から既知となる。さらに、距離h
1は(52)式により算出されるため既知となる。その結果、(73)式における未知パラメータは、距離d
1となる。
【0097】
パラメータ同定装置74は、加速度センサ22−1で複数回検出されたy方向並進加速度d
2y
1(n)/dt
2、エンジン角加速度算出装置71または微分回路75で複数回算出された回転角加速度d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2、加速度センサ21f,21r,23で複数回検出されたy方向並進加速度d
2y
f(n)/dt
2,d
2y
r(n)/dt
2,d
2y
v(n)/dt
2、及びタイヤ横力センサで複数回算出されたy方向外力F
fy(n),F
ry(n)に基づいて、x方向におけるエンジン要素12の重心点と加速度センサ22−1の付設箇所との距離d
1を、(73)式を用いて算出する。そして、エンジン重心点加速度算出装置78は、パラメータ同定装置74で算出されたx方向及びz方向におけるエンジン要素12の重心点と2軸加速度センサ22−1の付設箇所との距離d
1,h
1と、加速度センサ22−1で検出されたy方向並進加速度d
2y
1(n)/dt
2と、エンジン角加速度算出装置71または微分回路75で算出された回転角加速度d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2とに基づいて、エンジン要素12の重心点でのy方向並進加速度d
2y
e(n)/dt
2を、(70)式を用いて算出する。なお、前記d
2y
1(n)/dt
2,d
2θ
x(n)/dt
2,d
2θ
z(n)/dt
2,d
2y
f(n)/dt
2,d
2y
r(n)/dt
2,d
2y
v(n)/dt
2,F
fy(n),F
ry(n)の各信号は、事前((73)式演算前)にバンドパスフィルタ処理されたものを用いてもよい。
【0098】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。