(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両には、ドアやトランクなどにキーシリンダーが設けられている。すなわち、これらキーシリンダーから不正に鍵山を読みとることにより、正規のキー以外によるOBDポートへのアクセスが可能となるおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、高いセキュリティ性を有するOBDポートのロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、OBDポートのロック装置は、アクチュエータの駆動により、OBDポートへのアクセスを規制するロック位置と前記アクセスを許容するアンロック位置との間を変位するロック部材と、車載制御部と電子キーとの間の無線通信が成立することを条件に、前記ロック部材が前記ロック位置から前記アンロック位置へ変位するように前記アクチュエータを制御するロック制御部とを備えることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、OBDポートへアクセスするには、車載制御部と電子キーとの間で無線通信が成立する必要がある。車外に露出するキーシリンダーから電子キーの複製は不可能であるから、この構成のロック装置は、従来と比較してセキュリティ性が高い。
【0009】
上記構成において、人的操作を検出する操作検出部を備え、前記ロック制御部は、前記操作検出部を通じて人的操作が検出されたことをトリガとして、前記ロック部材が前記ロック位置から前記アンロック位置へ変位するように前記アクチュエータを制御することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、OBDポートへアクセスするには、車載制御部と電子キーとの間で無線通信が成立するのに加えて、人的操作も必要となるため、時間を要する。したがって、よりセキュリティ性が高まる。
【0011】
上記構成において、前記ロック部材の位置を検出する位置検出部を備え、前記ロック制御部は、前記車載制御部と前記電子キーとの間の無線通信が成立していないこと及び前記人的操作が検出されないことの少なくとも一方を認識した状態で、前記位置検出部を通じて前記ロック部材が変位したことを検出した場合に、その旨示す情報を車両及び電子キーの少なくとも一方に設けられる報知部から報知させることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ロック部材を無理に変位させた場合、その旨示す情報が報知されるので、よりセキュリティ性が高まる。
上記構成において、前記操作検出部は、前記人的操作として物理的操作を検出することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、OBDポートへアクセスするには、無線通信の成立に加えて物理的操作も必要なため、この構成のロック装置は、よりセキュリティ性が高い。
上記構成において、前記操作検出部は、前記人的操作として前記電子キーの近接を検出することにより同電子キーとの間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、OBDポートへアクセスするには、電子キーを近距離無線通信部に近接させること、すなわち、電子キーを所持していることが必要なため、この構成のロック装置は、よりセキュリティ性が高い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のOBDポートのロック装置は、高いセキュリティ性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、OBDポートのロック装置を有する電子キーシステムの一実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、電子キーシステム1は、電子キー2と車載機3とを備え、これら両者間で行われる無線通信により車載機器の駆動を制御する。
【0018】
電子キー2は、LF(Low Frequency)帯の無線信号を受信及びUHF(Ultra Hi
gh Frequency)帯の無線信号を送信することができる。また、電子キー2は、車載機3との相互認証に必要なIDコードを有する。電子キー2は、車載機3からの求めに応じてIDコードを無線信号に含ませて送信する。
【0019】
車載機3は、通信装置4、ドアロック装置5、エンジン装置6、報知部7、OBDポートのロック装置8、及び車載制御部9を備える。車載制御部9を除く各構成は、それぞれ車載制御部9と電気的に接続され、当該車載制御部9により制御される。
【0020】
通信装置4は、信号を変調及び復調することができるとともに、LF(Low Frequency)帯の無線信号を送信及びUHF(Ultra Hi
gh Frequency)帯の無線信号を受信することができる。
【0021】
ドアロック装置5は、ドア錠のロックとアンロックとを切り替える。
エンジン装置6は、エンジンの始動や停止の制御を行う。
報知部7は、例えば、メータディスプレイやスピーカであって、表示や音など人間の感覚に訴えることによる報知を行う。
【0022】
OBDポートのロック装置8は、車載制御部9と電気的に接続されているOBDポート10への専用コネクタの接続が可能とされる状態と不能とされる状態とを切り替える。なお、OBDポートのロック装置8の詳細については後述する。
【0023】
車載制御部9は、電子キー2との相互認証に必要なIDコードを有する。車載制御部9は、通信装置4を介した無線信号の授受を通じて、電子キー2との間のID照合を試みる。そして、ID照合が成立する場合、車載制御部9は、ドアロック装置5によるドア錠のロックとアンロックと
の切り替えや、エンジン装置6によるエンジンの始動を許可する。
【0024】
OBDポートのロック装置8は、上述の車載制御部9に加えて、モータ11と、スライドドア12と、ロック制御部13とを有する。車載制御部9とロック制御部13との間は、電気的に接続されている。
【0025】
モータ11は、ロック制御部13と電気的に接続され、当該ロック制御部13により制御される。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、スライドドア12は、モータ11が駆動することにより、OBDポート10を覆うロック位置と、OBDポート10を開放するアンロック位置との間を変位する。スライドドア12がロック位置にあるときOBDポート10への図示しない専用コネクタの接続が不能となり、スライドドア12がアンロック位置にあるときOBDポート10への専用コネクタの接続が可能となる。
【0026】
また、
図1に示すように、OBDポートのロック装置8は、外部から押し操作可能とされるスイッチ14と、スライドドア12に取り付けられる磁石15と、第1のホール素子16と、第2のホール素子17とを有する。なお、磁石15及びホール素子16,17が位置検出部に相当する。
【0027】
スイッチ14は、車載制御部9と電気的に接続されている。なお、スイッチ14が操作検出部に相当する。
第1のホール素子16は、ロック制御部13と電気的に接続されるとともに、後述するアンロック位置に位置するスライドドア12の磁石15と対向する。第2のホール素子17は、ロック制御部13と電気的に接続されるとともに、後述するロック位置に位置するスライドドア12の磁石15と対向する。
【0028】
車載制御部9は、スイッチ14への操作をトリガとして、スイッチ14が操作された旨示す情報及び電子キー2との間のID照合が成立しているか否かを示す情報を含む信号をロック制御部13へ送信する。
【0029】
ロック制御部13は、第1及び第2のホール素子16,17を通じて、スライドドア12の位置を判断する。ロック制御部13は、スライドドア12がロック位置に位置した状態で、スイッチ14が操作された旨示す情報及び電子キー2との間のID照合が成立していることを示す情報を含む信号を認識すると、モータ11の駆動の制御を通じてスライドドア12をロック位置からアンロック位置へ変位させる。また、ロック制御部13は、スライドドア12がアンロック位置に位置した状態で、スイッチ14が操作された旨示す情報を含む信号を認識すると、モータ11の駆動の制御を通じてスライドドア12をアンロック位置からロック位置へ変位させる。
【0030】
なお、ロック制御部13は、車載制御部9からスイッチ14が操作された旨示す情報を含む信号を認識しない状態で、第1及び第2のホール素子16,17を通じて、スライドドア12が変位したことを認識すると、スライドドア12の異常動作を示す信号を生成する。
【0031】
車載制御部9は、スライドドア12の異常動作を示す信号を認識すると、その旨示す情報を報知部7を通じて報知する。
次に、OBDポートのロック装置8の動作について説明する。説明の前提として、スライドドア12がロック位置に位置しているものとする。また、電子キー2と車載制御部9とのID照合が成立しているものとする。
【0032】
図2(a)に示すように、スライドドア12がロック位置に位置している状態で、スイッチ14が操作されると、車載制御部9は、スイッチ14が操作された旨示す情報及び電子キー2との間のID照合が成立している旨示す情報を含む信号をロック制御部13へ送信する。
【0033】
ロック制御部13は、スイッチ14が操作されたこと及びID照合が成立したことを認識すると、モータ11を駆動させて、スライドドア12をロック位置からアンロック位置へ変位させる。これにより、
図2(b)に示すように、OBDポート10が開放されて、当該OBDポート10への専用コネクタの接続が可能となる。
【0034】
当該
図2(b)に示すように、スライドドア12がアンロック位置に位置している状態で、スイッチ14が操作されると、車載制御部9は、スイッチ14が操作された旨示す情報及び電子キー2との間のID照合が成立している旨示す情報を含む信号をロック制御部13へ送信する。
【0035】
ロック制御部13は、スイッチ14が操作されたことを認識すると、モータ11を駆動させて、スライドドア12をアンロック位置からロック位置へ変位させる。これにより、
図2(a)に示すように、OBDポート10がスライドドア12に覆われて、当該OBDポート10への専用コネクタの接続が不能となる。
【0036】
このように、スライドドア12をアンロック位置からロック位置へ変位させる場合、電子キー2と車載制御部9との間で必ずしもID照合が成立している必要はない。
なお、ロック制御部13は、スライドドア12がロック位置及びアンロック位置のいずれにあるにもかかわらず、スイッチ14が操作されたことを認識しない状態で、スライドドア12が変位した場合には、スライドドア12の異常動作を示す信号を生成する。これにより、報知部7を通じてスライドドア12の異常動作が報知される。
【0037】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)車載制御部9と電子キー2との間のID照合が成立することを条件に、スライドドア12がOBDポート10を覆うロック位置からOBDポート10を開放するアンロック位置へ変位するようにモータ11の駆動を制御するロック制御部13を備えてOBDポートのロック装置8を構成した。
【0038】
すなわち、OBDポート10へアクセスするには、車載制御部9と電子キー2との間でID照合が成立する必要がある。車外に露出するキーシリンダーから電子キー2の複製は不可能であるから、当該OBDポートのロック装置8によれば、従来と比較してセキュリティ性が高い。
【0039】
(2)スイッチ14の操作をトリガとして、スライドドア12が変位するように車載制御部9及びロック制御部13を構成した。これにより、OBDポート10へアクセスするには、ID照合の成立に加えて、スイッチ14への物理的操作も必要なため、時間を要する。このため、よりセキュリティ性が高まる。
【0040】
(3)第1及び第2のホール素子16,17を通じて、スライドドア12がロック位置及びアンロック位置のいずれにあるにもかかわらず、スイッチ14が操作されたことを認識しない状態で、スライドドア12が変位した場合に、スライドドア12の異常動作を示す情報を含む信号を生成するようにロック制御部13を構成した。そして、異常動作を示す情報を含む信号を認識すると、報知部7を通じてスライドドア12の異常動作を報知するように車載制御部9を構成した。
【0041】
すなわち、スライドドア12を無理に変位させた場合、その旨示す情報が報知部7を介して報知されるので、電子キー2を所持しない者、車両を通常に使用しない者、車両整備を行わない者によるOBDポート10への不正なアクセスが抑制される。
【0042】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、物理的操作を検出するスイッチ14に代えて、
図3に示すように、電子キー2の近接を検出することにより同電子キー2との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部18を設けてもよい。そして、近距離無線通信部18を介して電子キー2とのID照合が成立する場合に、スライドドア12をロック位置からアンロック位置へ変位させる。このように構成すれば、電子キー2を近距離無線通信部18にかざすという人的操作が必要となるため、セキュリティ性が高まる。
【0043】
・上記実施形態において、異常
動作を報知するものとして車両に設けられる報知部7について説明したが、報知部は電子キーに設けられてもよい。この場合、車載制御部9は、異常
動作を示す情報を含む信号を受信したとき、当該信号を電子キー2に無線送信し、電子キー2に設けられる報知部を通じてその旨報知させる。このように構成した場合でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
・上記実施形態において、ロック制御部13は、スイッチ14が操作されたことを認識しない状態で、スライドドア12が変位した場合にスライドドア12の異常動作を示す情報を含む信号を生成したが、当該信号は、電子キー2と車載制御部9との間のID照合が成立しない状態でスライドドア12が変位した場合に生成してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、スライドドア12をロック部材として説明したが、これは一例である。ロック部材はOBDポート10への専用のコネクタの接続を不能とすればよく、その形状はバー状のものなど、種々の形状を採用することができる。
【0046】
・上記実施形態において、OBDポート10へのアクセスを規制する状態と許容する状態とを切り替える(スライドドア12を変位させる)駆動源はモータであったが他の駆動源を採用してもよい。
【0047】
例えば、駆動源にソレノイド(ソレノイドアクチュエータ)を採用する場合、OBDポートのロック装置は、次に示す構成としてもよい。なお、上記実施形態と同一の符号が付された構成は、上記実施形態と同様に機能するものであるため、その説明を割愛する。
【0048】
すなわち、
図4(a)に示すように、OBDポートのロック装置40は、OBDポート10を収容する箱状のケース41を備える。ケース41には、専用のコネクタが進入するための開口部42と、開口部42を塞いだり開放したりするスイングドア43とがそれぞれ設けられている。
【0049】
スイングドア43は、板状をなし、開口部42が設けられるケース41の内面41aに接触して開口部42を塞ぐ揺動ロック位置(
図4(a)中
の実線)と、OBDポート10の上部を覆うケース41の内面41bに接触して開口部42を開放する揺動アンロック位置(
図4(a)中
の二点鎖線)との間で揺動する。なお、スイングドア43が揺動アンロック位置に位置するとき、開口部42とOBDポート10との間に他の構成が存在しない。したがって、この場合、専用のコネクタを開口部42からケース41の内部に進入させれば当該専用のコネクタとOBDポート10とを接続することができる。
【0050】
また、スイングドア43は、揺動中心の軸部44に設けられる捩りばね45により、揺動ロック位置に向かって、すなわち、
図4(a)中における反時計方向へ常時付勢されている。
【0051】
さらに、OBDポートのロック装置40は、スイッチ46及びソレノイド47を備え、これら両構成は、スイングドア43の揺動軌跡上、ここでは、スイングドア43の揺動ロック位置よりも若干揺動アンロック位置側に設けられる。
【0052】
スイッチ46は、スイングドア43の揺動軌跡上に位置し、スイングドア43との接触により弾性変位する弾性スイッチ片48を有する。
ソレノイド47は、スイングドア43の揺動軌跡上に進出してスイングドア43の揺動を規制するロック位置(
図4(a)及び
図4(b)で図示される位置)と、ソレノイド47を構成するコイル部分に引き込まれて先の揺動軌跡上から離脱してスイングドア43の揺動を許容するアンロック位置(図示せず)との間を変位するプランジャ49を有する。すなわち、プランジャ49は、ロック部材として機能する。
【0053】
なお、ソレノイド47は、スイングドア43の揺動軌跡上において、開口部42からの距離がスイッチ46と同等とされる位置若しくはスイッチ46よりも開口部42から離間した位置(OBDポート10側)に設けられる。
【0054】
続いて、OBDポートのロック装置40の動作について説明する。なお、プランジャ49がロック位置に位置し、スイングドア43の揺動ロック位置から揺動アンロック位置への変位が規制されているものとする。
【0055】
ロック制御部13は、電子キー2と車載制御部9との間のID照合が成立していること、及びスイッチ46を通じてスイングドア43が揺動ロック位置から揺動アンロック位置へ向かって押し込まれたことを認識すると、ソレノイド47を駆動させてプランジャ49をロック位置からアンロック位置へ変位させる。
【0056】
これにより、スイングドア43の揺動ロック位置から揺動アンロック位置への揺動が許容される。ユーザが専用のコネクタを開口部42からケース41の内部に進入させようとすれば、スイングドア43が捩りばね45の付勢力に抗して揺動ロック位置から揺動アンロック位置へ変位するので、専用のコネクタの更なるケース41の内部への進入が許容される。これにより、OBDポート10への専用のコネクタ
の接続
が可能となる。
【0057】
OBDポート10から専用のコネクタが引き抜かれると、スイングドア43は捩りばね45の付勢力により揺動アンロック位置から揺動ロック位置へ揺動復帰する。この復帰の際、スイングドア43とスイッチ46(正確には弾性スイッチ片48)とが接触する。ロック制御部13は、スイッチ46を通じてスイングドア43が揺動アンロック位置から揺動ロック位置へ揺動復帰したことを認識すると、ソレノイド47を駆動させてプランジャ49をアンロック位置からロック位置へ変位させる。
【0058】
以上のように、OBDポートのロック装置40を構成した場合でも、上記実施形態の(1),(2)の効果と同様の効果を得ることができる。
なお、当該別例において、捩りばね45は、スイングドア43を揺動アンロック位置から揺
動ロック位置へ付勢するものであればよく、コイルばねなど他の種類のばねであってもよいし、磁力を利用した付勢部材であってもよい。
【0060】
・上記実施形態において、スライドドア12の位置検出
部として磁石15及びホール素子16,17を採用したが、スライドドア12と接触するスイッチなど他の
位置検出部を採用してもよい。
【0061】
・上記実施形態において、電子キー2は、車両専用のキーに限らず、スマートフォンなどの携帯端末であってもよい。