(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437895
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】バッキング防止装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
E21D9/06 311C
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-143705(P2015-143705)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-25533(P2017-25533A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158769
【氏名又は名称】機動建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】庄村 典生
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英史
(72)【発明者】
【氏名】金子 正士
(72)【発明者】
【氏名】西川 和良
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 雅之
(72)【発明者】
【氏名】西田 広治
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 桂三
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−364289(JP,A)
【文献】
特開平03−021790(JP,A)
【文献】
特開平09−328990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法により地盤を所定の方向(以下、該所定の方向を“前方向”とし、その逆の方向を“後方向”とする)に掘進しながら複数の推進管からなる推進管列を敷設する際に水圧や土圧によって該推進管列が後方向に押し戻される現象であるバッキングを防止するバッキング防止装置において、
各推進管の端部に嵌合された略円筒状のカラーにおける後方向側の端部(以下、“カラー後端部”とする)に当接され得るように構成された係止部を有すると共に該係止部が該カラーに近接する方向に移動自在となるように構成されてなる係止手段と、
前記推進管が所定の位置まで推進された際に前記係止部が前記カラー後端部に当接され得るように該係止部を移動させる係止部移動手段と、
該係止部移動手段により前記係止部が移動されて前記カラー後端部に当接された場合に前記係止手段が後方向に移動しないように該係止手段を直接的に又は他の部材(以下、“介装部材”とする)を介して間接的に支持して前記推進管列のバッキングを防止する支持手段と、
を備えたことを特徴とするバッキング防止装置。
【請求項2】
前記係止手段は前記カラーの外側に配置され、前記係止部は該カラーの外側から前記カラー後端部に当接され得るように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載のバッキング防止装置。
【請求項3】
前記係止手段は複数配置され、かつ、前記カラー後端部における複数の箇所であって前記カラーの軸心に対して略点対称となる箇所に複数の前記係止部が当接されるように構成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバッキング防止装置。
【請求項4】
前記支持手段は、地盤に敷設された構造物と該構造物に連結された支持基体とを有し、該構造物及び該支持基体によって前記バッキングによる力を受けるように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバッキング防止装置。
【請求項5】
前記係止部移動手段は、前記係止部を前記カラーに近接するように移動させるジャッキ(以下、“係止部移動用ジャッキ”とする)であり、
前記係止手段は、前記カラーに近接する方向に移動可能となるように直接的又は前記介装部材を介して間接的に前記係止部移動手段に取り付けられてなる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバッキング防止装置。
【請求項6】
前記係止手段は、前記推進管を挟み込むように該推進管の上側と下側とにそれぞれ配置され、
前記係止部移動用ジャッキは、該推進管の上側の係止手段と該推進管の下側の係止手段とが互いに離接可能となるようにそれらの係止手段に直接的又は前記介装部材を介して間接的に接続され、
該係止部移動用ジャッキの下端は、直接的又は他の部材を介して間接的に発進架台に接続されてなる、
ことを特徴とする請求項5に記載のバッキング防止装置。
【請求項7】
前記係止手段は、前記係止部が前記カラーに近接する方向に移動可能となる状態で直接的又は前記介装部材を介して間接的に前記支持手段に取り付けられ、
前記係止部移動手段は、前記係止手段と前記支持手段又は前記介装部材との間に配置されると共に前記係止部を前記カラーに押し付ける弾性部材である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバッキング防止装置。
【請求項8】
前記係止手段は、揺動自在となるようにヒンジを介して前記支持手段又は前記介装部材に取り付けられた、
ことを特徴とする請求項7に記載のバッキング防止装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、スプリング、樹脂製部材又はゴム製部材である、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のバッキング防止装置。
【請求項10】
前記係止手段は、前記推進管を挟み込むように該推進管の上側と下側とにそれぞれ配置され、
該推進管の上側の係止手段と該推進管の下側の係止手段とが互いに離接可能となるようにそれらの係止手段には直接的又は前記介装部材を介して間接的に係止部移動用ジャッキが取り付けられ、
該係止部移動用ジャッキの下端は、直接的又は他の部材を介して間接的に発進架台に接続されてなる、
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のバッキング防止装置。
【請求項11】
前記係止手段は、前記係止部が前記カラーに近接する方向に移動可能となる状態で直接的又は前記介装部材を介して間接的に前記支持手段に取り付けられると共に、バネ鋼で形成されることにより前記係止部移動手段としても機能するように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバッキング防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法により推進管列を敷設する際における該推進管列のバッキングを防止するバッキング防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推進管列を敷設するために推進工法が実施されているが、切羽前面の土圧や水圧が高い場合にはそれらの圧力によって掘進方向とは逆の方向に推進管列が押し戻されるという現象(バッキング)が生じてしまうことがある。そのようなバッキングが生じると、スペースが無くなって次の推進管を据え付けることができなくなる等の種々の問題が生じてしまう。
【0003】
そこで、そのような推進管列のバッキングを防止するための装置(バッキング防止装置)については様々な構造のものが提案されており、具体的には、
・ 推進管を貫通して該推進管の外周面から外側に突出するように棒状の突出桿を設け、該突出桿を利用してバッキングを防止するようにしたもの(例えば、特許文献1参照)や、
・ 推進管の外周に環状体を固設し、該環状体を利用してバッキングを防止するようにしたもの(例えば、特許文献2参照)や、
・ 半径方向に油圧で推進管を締め付けることによってバッキングを防止するようにしたもの(例えば、特許文献3参照)や、
・ 推進管に複数のナットを埋設し、該ナットを利用してバッキングを防止するようにしたもの(例えば、特許文献4参照)
などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−82068公報
【特許文献2】特開2003−176688公報
【特許文献3】特開2000−337085公報
【特許文献4】特開平10−18767公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、推進管に孔開け等の加工を施す場合にはその作業に時間が掛かってしまい作業効率が低下するという問題があった。また、半径方向に油圧で推進管を締め付けることによってバッキングを防止するものでは、推進管にひび割れが生じないような対策を施さなければならず、やはり作業効率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできるバッキング防止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、
図1(a)〜(c)及び
図2(a)〜(c)に例示するものであって、推進工法により地盤(
図3(a)(b)の符号G参照)を所定の方向(同図の符号Df参照。以下、該所定の方向Dfを“前方向”とし、その逆の方向Dbを“後方向”とする)に掘進しながら複数の推進管(A)からなる推進管列(AR)を敷設する際に水圧や土圧によって該推進管列(AR)が後方向(Db)に押し戻される現象であるバッキングを防止するバッキング防止装置(1,11)において、
各推進管(A)の端部に嵌合された略円筒状のカラー(C)における後方向(Db)側の端部(符号Ca参照。以下、“カラー後端部”とする)に当接され得るように構成された係止部(20,120)を有すると共に該係止部(20,120)が該カラー(C)に近接する方向(F)に移動自在となるように構成されてなる係止手段(2,12)と、
前記推進管(A)が所定の位置まで推進された際に前記係止部(20,120)が前記カラー後端部(Ca)に当接され得るように該係止部(20,120)を移動させる係止部移動手段(3,13)と、
該係止部移動手段(3,13)により前記係止部(20,120)が移動されて前記カラー後端部(Ca)に当接された場合に前記係止手段(2,12)が後方向(Db)に移動しないように該係止手段(2,12)を直接的に又は他の部材(符号4A,4B参照。以下、“介装部材”とする)を介して間接的に支持して前記推進管列(AR)のバッキングを防止する支持手段(
図3(a)(b)の符号5参照)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、前記係止手段(2,12)は前記カラー(C)の外側に配置され、前記係止部(20,120)は該カラー(C)の外側から前記カラー後端部(Ca)に当接され得るように構成されたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、前記係止手段(2,12)は複数配置され、かつ、前記カラー後端部(Ca)における複数の箇所であって前記カラー(C)の軸心(C0)に対して略点対称となる箇所に複数の前記係止部(20,120)が当接されるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、前記支持手段(5)は、
図3(a)(b)に例示するように、地盤(G)に敷設された構造物(50)と該構造物(50)に連結された支持基体(51)とを有し、該構造物(50)及び該支持基体(51)によって前記バッキングによる力を受けるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、前記係止部移動手段(3)は、前記係止部(20)を前記カラー(C)に近接するように移動させるジャッキ(以下、“係止部移動用ジャッキ”とする)であり、
前記係止手段(2)は、前記カラー(C)に近接する方向(F)に移動可能となるように直接的又は前記介装部材(4A,4B)を介して間接的に前記係止部移動手段(3)に取り付けられてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、前記係止手段(2)は、
図1(a)に例示するように、前記推進管(A)を挟み込むように該推進管(A)の上側と下側とにそれぞれ配置され、
前記係止部移動用ジャッキ(3)は、該推進管(A)の上側の係止手段(2)と該推進管(A)の下側の係止手段(2)とが互いに離接可能となるようにそれらの係止手段(2)に直接的又は前記介装部材(4A,4B)を介して間接的に接続され、
該係止部移動用ジャッキ(3)の下端は、直接的又は他の部材を介して間接的に発進架台(
図3(a)(b)の符号7参照)に接続されてなることを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の観点は、前記係止手段(12)は、
図2(a)〜(c)及び
図3(a)(b)に例示するように、前記係止部(120)が前記カラー(C)に近接する方向(F)に移動可能となる状態で直接的又は前記介装部材(4A,4B)を介して間接的に前記支持手段(5)に取り付けられ、
前記係止部移動手段(13)は、前記係止手段(12)と前記支持手段(5)又は前記介装部材(4A,4B)との間に配置されると共に前記係止部(120)を前記カラー(C)に押し付ける弾性部材(13)であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の観点は、前記係止手段(12)は、揺動自在となるようにヒンジ(14)を介して前記支持手段(5)又は前記介装部材(4A,4B)に取り付けられたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の観点は、前記弾性部材(13)は、スプリング、樹脂製部材又はゴム製部材であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第10の観点は、前記係止手段(12)は、前記推進管(A)を挟み込むように該推進管(A)の上側と下側とにそれぞれ配置され、
該推進管(A)の上側の係止手段(12)と該推進管(A)の下側の係止手段(12)とが互いに離接可能となるようにそれらの係止手段(12)には直接的又は前記介装部材(4A,4B)を介して間接的に係止部移動用ジャッキ(3)が取り付けられ、
該係止部移動用ジャッキ(3)の下端は、直接的又は他の部材を介して間接的に発進架台(7)に接続されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の第11の観点は、前記係止手段(12)は、前記係止部(120)が前記カラー(C)に近接する方向(F)に移動可能となる状態で直接的又は前記介装部材(4A,4B)を介して間接的に前記支持手段(5)に取り付けられると共に、バネ鋼で形成されることにより前記係止部移動手段としても機能するように構成されたことを特徴とする。
【0018】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
上記した第1,4,5,7乃至9及び11の観点によれば、バッキング防止のための加工(孔を開けたりボルトを埋め込んだりする等の加工)を推進管の側に施す必要がなく、その分、作業効率を高めることができる。また、推進管を半径方向に油圧で締め付ける方式でも無いため、推進管にひび割れが生じないような対策を施す必要も無く、その分、作業効率を高めることができる。
【0020】
上記した第2の観点によれば、新しい推進管を後方から挿入する場合において前記係止部が該新しい推進管と干渉することを防止できる。
【0021】
上記した第3の観点によれば、前記推進管にバッキング力が作用した場合に該推進管が前記軸心に対して傾くことを防止できる。
【0022】
上記した第6及び10の観点によれば、推進管列の浮き上がりも防止することができるので、バッキング防止装置と浮き上がり防止装置とを別々に設けなければならない場合に比べて装置のコンパクト化を図ることができ、狭い立坑や既設シールドトンネル内であっても有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(a)は、本発明に係るバッキング防止装置の構成の一例を示す正面図であり、同図(b)はそのJ−J端面図であり、同図(c)はK−K端面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明に係るバッキング防止装置の構成の他の例を示す正面図であり、同図(b)はそのL−L端面図であり、同図(c)はM−M端面図である。
【
図3】
図3(a)(b)は、本発明に係るバッキング防止装置の構成及び使用状態の一例を示す側面図である。
【
図4】
図4(a)(b)は、本発明に係るバッキング防止装置の構成及び使用状態の他の例を示す側面図である。
【
図5】
図5(a)〜(e)は、本発明に係るバッキング防止装置の使用状態の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)〜(e)は、本発明に係るバッキング防止装置の使用状態の他の例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、係止手段の取り付け状態の詳細構造の一例を示す正面図である。
【
図8】
図8は、スペーサー部材を配置した状態の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1乃至
図8に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
本発明に係るバッキング防止装置は、上述したバッキング(つまり、推進工法により地盤(
図3(a)(b)の符号G参照)を所定の方向(同図の符号Df参照。以下、該所定の方向Dfを“前方向”とし、その逆の方向Dbを“後方向”とする)に掘進しながら複数の推進管Aからなる推進管列ARを敷設する際に水圧や土圧によって該推進管列ARが後方向Dbに押し戻される現象)を防止するための装置であって、
図1(a)〜(c)及び
図2(a)〜(c)に符号1,11で例示するように、
・ 各推進管Aの端部に嵌合された略円筒状で金属製(例えば、鋼製やステンレス製)のカラー(いわゆる埋込カラーとか継手カラーとか称されるもの)Cにおける後方向Db側の端部(符号Ca参照。以下、“カラー後端部”とする)に当接され得るような形状に構成された係止部20,120を有する手段(以下、“係止手段”とする)2,12と、
・ 前記推進管Aが所定の位置まで推進された際に前記係止部20,120が前記カラー後端部Caに当接され得るように該係止部20,120を前記カラーCに近接する方向Fに移動させる係止部移動手段3,13と、
・ 該係止部移動手段3,13により前記係止部20,120が前記カラーCに近接する方向Fに移動されて前記カラー後端部Caに当接された場合に前記係止手段2,12が後方向Dbに移動しないように該係止手段2,12を他の部材(以下、“介装部材”とする)4A,4Bを介して間接的に支持して前記推進管列ARのバッキングを防止する支持手段(
図3(a)(b)の符号5参照)と、
を備えている。なお、前記係止部20,120は前記カラーCに近接する方向Fに移動自在となるように構成されている。一方、上述した係止手段2,12は、前記カラーCの内側(つまり、該カラーCの内周面に対向する側)に配置されて、前記係止部20,120が該カラーCの内側から前記カラー後端部Caに当接され得るような構成を本発明の範囲から除外するものではないが、
図1(b)(c)及び
図2(b)(c)に例示するように、前記係止手段2,12を前記カラーCの外側(つまり、該カラーCの外周面に対向する側)に配置して前記係止部20,120が該カラーCの外側から前記カラー後端部Caに当接され得るようにすると良い。そのようにした場合には、
図5(c)(d)及び
図6(c)(d)に例示するように、新しい推進管Aを後方から挿入する場合において該係止部20,120が該新しい推進管Aと干渉することを防止できる。その場合、前記係止部20,120は、推進管Aが挿入される際に該推進管Aと干渉しないように、さらには該推進管Aの端面部分に取り付けられたゴム輪SRに干渉しないような高さにすると良く、好ましくは、面取り加工を施しておくと良い。また、
図1(a)及び
図2(a)に示す例では、前記係止手段2,12は前記介装部材4A,4Bを介して前記支持手段5に間接的に支持されているが、もちろんこれに限られるものではなく、そのような介装部材4A,4Bを介さずに前記支持手段5に直接的に支持されるようにしても良い。
【0026】
ところで、前記支持手段5は、
図3(a)(b)に例示するように、地盤Gに敷設された構造物50と該構造物50に連結された支持基体(例えば、鋼製の支保工)51とを有し、該構造物50及び該支持基体51によって前記バッキングによる力を受けるように構成すると良い。なお、
図3(a)(b)に符号50で例示する構造物は、立坑Eの内部であって前記支持基体51の後方向Dbに設けられた支圧壁であるが、前記バッキングによる力を受けることができる構造のものでは何でも良く、前記支持基体51の後方向Dbではなく前方向Dfに設けるようにしても良く、さらには、
図4(a)(b)に例示するように坑内から掘進するようにしても良い。また、支持基体51も、バッキングによる力を受けることができる構造であれば何でも良い。
【0027】
一方、上述した係止部移動手段は、
図1(a)に符号3で例示するように、前記係止部20を前記カラーCに近接するように移動させるジャッキ(以下、“係止部移動用ジャッキ”とする)にすると良い。該係止部移動手段に用いることができるジャッキとしては、
・ 複動式の油圧ジャッキ(油圧ホースが2本付いていて押し動作及び引き動作の両方を油圧で行う形式のもの)や、
・ スクリュージャッキや、
・ キリンジャッキ
などを挙げることができる。なお、
図1(a)に例示する係止手段2は、前記カラーCに近接する方向Fに移動可能となるように前記介装部材4A,4Bを介して間接的に前記係止部移動手段3に取り付けられているが、もちろんこれに限られるものではなく、そのような介装部材4A,4Bを介さないで直接的に前記係止部移動手段3に取り付けるようにしても良い。
【0028】
ところで、前記係止手段2及び前記係止部20を1つだけ備えたものを本発明の範囲から除外するものではないが、該係止手段2を複数配置し、かつ、前記カラー後端部Caにおける複数の箇所であって前記カラーCの軸心C0に対して略点対称となる箇所に複数の前記係止部20,…が当接されるように構成するようにすると良い。そのようにした場合には、前記推進管Aにバッキング力が作用した場合に該推進管Aが前記軸心C0に対して傾くことを防止できる。ここで、複数の前記係止部20,…が前記カラーCの軸心C0に対して略点対称となる箇所に配置される1つの態様としては、
図1(a)に例示するように、前記推進管Aの上側に複数の前記係止手段2を配置すると共に前記推進管Aの下側に複数の前記係止手段2を配置し(つまり、前記推進管Aの上側と下側にそれぞれ沿うように前記係止手段2を1列ずつ配置し)、それぞれの係止手段2の係止部20を、前記カラーCの軸心C0に対して略点対称となる位置に配置する態様を挙げることができるが、もちろんこれに限られるものではなく、それ以外の箇所(つまり、上側と下側以外)に配置されていても良く、3箇所以上(3列以上)に配置されていても良い。また、
図1(a) に例示するように、前記推進管Aを挟み込むように該推進管Aの上側と下側にそれぞれ前記係止手段2を配置し、かつ、前記係止部移動用ジャッキ3が該推進管Aの上側の係止手段2と該推進管Aの下側の係止手段2とが互いに離接可能となるようにそれらの係止手段2に直接的又は前記介装部材4A,4Bを介して間接的に接続されるような場合には、該係止部移動用ジャッキ3の下端は、直接的又は他の部材(前記介装部材や、その他の部材)を介して間接的に発進架台(
図3(a)(b)の符号7参照)に接続されてなるようにすると良い。そのようにした場合には、後述するように推進管列ARの浮き上がりを防止することができる。
【0029】
さらに、
図1(a)に示すように前記係止手段2,…を複数枚並べた状態に取り付ける場合には、
図7に詳示するように、係止手段2と係止手段2との間に間隙部材(帯鉄)8,…を配置してそれらの係止手段2の離間間隔を一定に保持するようにすると良い。また、前記推進管列ARのバッキングを防止できるのであれば、そのように複数枚並べた状態に配置せずに1枚だけ(例えば、カラー後端部Caと係止部20との接触面積が広くなるように、該係止手段2を前記カラーCの外周面に沿って湾曲させたもの)を配置するようにしても良い。さらに、
図1(b)及び(c)に示す例では、前記係止手段2は前記介装部材4A,4Bの凹部に嵌め込まれてバッキング力を受けるように構成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、他の構造であっても良い。例えば、溶接とかボルトとかによって接続されていても良く、或いは、前記係止手段2と前記介装部材4A,4Bとを一体で形成するようにしても良い。
【0030】
次に、
図1(a)〜(c)に例示するバッキング防止装置1の使用方法の一例を
図5(a)〜(e)に沿って説明する。
【0031】
前記推進管列ARの先端に取り付けたシールド掘進機(不図示)によって推進管1本分の掘削が完了すると、押環16を介して加えられる元押ジャッキ6の推進力によって推進管列ARを前方向Dfに押し出す(
図5(a)参照)。この際、上側の前記係止手段2と推進管Aとの間にスペーサー部材(材木やゴム片や樹脂片など)9を挟み込み、押し出される推進管列ARが上方向に浮き上がらないようにしておくと良い。次に、該スペーサー部材9を取り除いて、前記係止部移動用ジャッキ3を駆動すると前記係止手段2が前記カラーCに近接する方向Fに移動され、その係止部20が前記カラー後端部Caに当接される(同図(b)参照)。この状態で、前記元押ジャッキ6を引き戻したとしても、前記推進管列ARのバッキングは防止される。そして、前記元押ジャッキ6を引き戻して出来たスペースに1本の推進管Aを新たに挿入する(
図3(b)及び
図5(c)参照)。新たに挿入した推進管Aは前記元押ジャッキ6によって前方向Dfに押し出され、先に挿入していた推進管Aと接続される(
図5(d)参照)。次に、前記係止部移動用ジャッキ3を少しだけ伸ばして上側の前記係止手段2と推進管Aとの間にスペーサー部材9を挟み込み、該係止部移動用ジャッキ3で締め付けるようにすると良い。そのようにした場合には、前記推進管列ARの浮き上がりを防止することができる。このようにして、前記推進管列ARを徐々に長くして管路を構築していくことができる。
【0032】
一方、上述した係止部移動手段は
図2(b)(c)に符号13で例示するような構造にしても良い。すなわち、前記係止手段12は、前記係止部120が前記カラーCに近接する方向Fに移動可能となる状態に前記介装部材4A,4Bを介して間接的に前記支持手段5に取り付けておき、前記係止部移動手段13は、前記係止手段12と前記介装部材4A,4Bとの間に配置されると共に前記係止部120を前記カラーCに押し付ける弾性部材にすると良い。また、上述のような介装部材4A,4Bを介さずに前記係止手段12を前記支持手段5に直接的に取り付けると共に、前記係止部移動手段(弾性部材)13は該係止手段12と前記支持手段5との間に配置するようにしても良い。
【0033】
ところで、前記係止手段12及び前記係止部120を1つだけ備えたものを本発明の範囲から除外するものではないが、該係止手段12を複数配置し、かつ、前記カラー後端部Caにおける複数の箇所であって前記カラーCの軸心C0に対して略点対称となる箇所に複数の前記係止部120,…が当接されるように構成するようにすると良い。そのようにした場合には、前記推進管Aにバッキング力が作用した場合に該推進管Aが前記軸心C0に対して傾くことを防止できる。ここで、複数の前記係止部120,…が前記カラーCの軸心C0に対して略点対称となる箇所に配置される1つの態様としては、
図2(a)に例示するように、前記推進管Aの上側に複数の前記係止手段12を配置すると共に前記推進管Aの下側に複数の前記係止手段12を配置し(つまり、前記推進管Aの上側と下側にそれぞれ沿うように前記係止手段12を1列ずつ配置し)、それぞれの係止手段12の係止部120を、前記カラーCの軸心C0に対して略点対称となる位置に配置する態様を挙げることができるが、もちろんこれに限られるものではなく、それ以外の箇所(つまり、上側と下側以外)に配置されていても良く、3箇所以上(3列以上)に配置されていても良い。また、
図2(a)に例示するように、前記推進管Aを挟み込むように該推進管Aの上側と下側にそれぞれ前記係止手段12を配置し、かつ、前記係止部移動用ジャッキ3が該推進管Aの上側の係止手段12と該推進管Aの下側の係止手段12とが互いに離接可能となるようにそれらの係止手段12に直接的又は前記介装部材4A,4Bを介して間接的に接続されるような場合には、該係止部移動用ジャッキ3の下端は、直接的又は他の部材(前記介装部材や、その他の部材)を介して間接的に発進架台(
図3(a)(b)の符号7参照)に接続されてなるようにすると良い。そのようにした場合には、後述するように推進管列ARの浮き上がりを防止することができる。
【0034】
さらに、
図2(a)に示すように前記係止手段12,…を複数枚並べた状態に取り付ける場合には、
図7に詳示するように、係止手段12と係止手段12との間に間隙部材(帯鉄)8,…を配置してそれらの係止手段12の離間間隔を一定に保持するようにすると良い。そのようにした場合には、前記係止部移動手段(弾性部材)13の適正位置への設置が容易にできると共に、該適正位置からの該係止部移動手段(弾性部材)13の横ズレ(つまり、
図7の左右方向へのズレ)も防止することができる。また、前記推進管列ARのバッキングを防止できるのであれば、そのように複数枚並べた状態に配置せずに1枚だけ(例えば、カラー後端部Caと係止部120との接触面積が広くなるように、該係止手段12を前記カラーCの外周面に沿って湾曲させたもの)を配置するようにしても良い。さらに、
図2(b)及び(c)に示す例では、前記係止手段12は、揺動自在となるようにヒンジ14を介して前記介装部材4A,4B(又は、前記支持手段5)に取り付けられているが、前記係止部120が前記カラーCに近接する方向Fに移動可能(揺動可能)となるならば、ヒンジ以外の固定方法(例えば、溶接等による固定方法)を用いても良い。一方、弾性部材13としては、スプリングや樹脂製部材(例えば、ウレタン製の板状部材)やゴム製部材などを挙げることができる。
【0035】
次に、
図2(a)〜(c)に例示するバッキング防止装置11の使用方法の一例を
図6(a)〜(e)に沿って説明する。
【0036】
前記推進管列ARの先端に取り付けたシールド掘進機(不図示)によって推進管1本分の掘削が完了すると、押環16を介して加えられる元押ジャッキ6の推進力によって推進管列ARを前方向Dfに押し出す(
図6(a)参照)。この際、前記係止部移動用ジャッキ3を駆動して前記係止部120を前記推進管Aの外周面に当接させておいて(つまり、前記弾性部材13の弾性力で該係止部120を前記推進管Aの外周面に付勢させておいて)、押し出される推進管列ARが上方向に浮き上がらないようにしておくと良い。そして、前記元押ジャッキ6によって前記推進管列ARが所定の位置まで押し出されると、前記係止部120が前記弾性部材13の弾性力によって移動されて前記カラー後端部Caに係合される(同図(b)参照)。この状態で、前記元押ジャッキ6を引き戻したとしても、前記推進管列ARのバッキングは防止される。そして、前記元押ジャッキ6を引き戻して出来たスペースに1本の推進管Aを新たに挿入する(
図3(b)及び
図6(c)参照)。新たに挿入した推進管Aは前記元押ジャッキ6によって前方向Dfに押し出され、先に挿入していた推進管Aと接続される(
図6(d)参照)。さらに、前記元押ジャッキ6によって前記推進管列ARを前方向Dfに押し出すと、前記係止部120は、前記カラー後端部Caとの係合が解除されるが、前記弾性部材13の弾性力によって前記推進管Aを下方向に押し下げることとなり、前記推進管列ARの浮き上がりを防止することができる。このようにして、前記推進管列ARを徐々に長くして管路を構築していくことができる。本方法によれば、
図5に示す方法のときのように、前記係止部移動用ジャッキ3を細かく駆動制御する必要はなく、スペーサー部材9を挟み込む必要も無いので、掘進作業が簡素化される。
【0037】
一方、前記係止手段12は、前記係止部120が前記カラーCに近接する方向Fに移動可能となる状態で直接的又は前記介装部材4A,4Bを介して間接的に前記支持手段5に取り付けられると共に、バネ鋼で形成されることにより前記係止部移動手段としても機能するように構成しても良い。そのようにした場合には、前記弾性部材13を省略することができる。
【0038】
本発明によれば、バッキング防止のための加工(孔を開けたりボルトを埋め込んだりする等の加工)を推進管Aの側に施す必要がなく、その分、作業効率を高めることができる。また、推進管Aを半径方向に油圧で締め付ける方式でも無いため、推進管にひび割れが生じないような対策を施す必要も無く、その分、作業効率を高めることができる。さらに、本発明に係るバッキング防止装置1,11によって推進管列ARの浮き上がりも防止することができるので、バッキング防止装置と浮き上がり防止装置とを別々に設けなければならない場合に比べて装置のコンパクト化を図ることができ、狭い立坑や既設シールドトンネル内であっても有効に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 バッキング防止装置
2 係止手段
3 係止部移動手段(係止部移動用ジャッキ)
4A,4B 介装部材
5 支持手段
7 発進架台
11 バッキング防止装置
12 係止手段
13 係止部移動手段(弾性部材)
14 ヒンジ
20 係止部
50 地盤に敷設された構造物
51 支持基体
120 係止部
A 推進管
AR 推進管列
C カラー
C0 カラーの軸心
Ca カラー後端部
Db 後方向
Df 前方向
G 地盤