特許第6437907号(P6437907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437907
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】作業機械の信号線切換装置及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/44 20060101AFI20181203BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   B66C13/44
   E02F9/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-240415(P2015-240415)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-105581(P2017-105581A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船渡 孝次
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 芳昌
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−335879(JP,A)
【文献】 特開昭57−072593(JP,A)
【文献】 特開平09−323900(JP,A)
【文献】 特開平07−277675(JP,A)
【文献】 特開平11−092098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
E02F 9/00− 9/18
E02F 9/24− 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体に設けた各種上部電気要素と、
下部走行体に設けた各種下部電気要素と、
前記各種上部電気要素と前記各種下部電気要素との間で各種電気信号を授受する回転継手と、
前記回転継手の上部側出力端子と前記各種上部電気要素との間に設けた上部切換器と、
前記回転継手の下部側出力端子と前記各種下部電気要素との間に設けた下部切換器と、
前記上部切換器及び前記下部切換器の電気信号線を切換える切換信号を出力する切換信号出力器とを備えることを特徴とする作業機械の信号線切換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の信号線切換装置において、
前記切換信号出力器は、運転室内に乗員が存在することを示す信号状態と運転室内に乗員が存在しないことを示す信号状態を出力するゲートロックレバースイッチであることを特徴とする作業機械の信号線切換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械の信号線切換装置において、
前記各種上部電気要素は前記ゲートロックレバースイッチとコントローラとを含み、前記各種下部電気要素はロアカウンタウエイト検出スイッチを含み、
前記ゲートロックレバースイッチからの前記切換信号の状態にかかわらず、前記ロアカウンタウエイト検出スイッチからのロアカウンタウエイト有/無信号は前記回転継手を介して前記コントローラに入力されることを特徴とする作業機械の信号線切換装置。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械の信号線切換装置において、
前記各種上部電気要素はポンプ容量調整装置を含み、前記各種下部電気要素はサイドフレーム伸縮リモコンを含み、
前記ゲートロックレバースイッチからの前記切換信号が乗員が運転室内にいないことを示す信号状態のときは、前記サイドフレーム伸縮リモコンから前記ポンプ容量調整装置にポンプ傾転角を小さくする指令が出力されることを特徴とする作業機械の信号線切換装置。
【請求項5】
請求項3に記載の作業機械の信号線切換装置と、
吊り荷重と作業半径とに基づいて作業機械の転倒防止処理を行う安全装置とを備え、
前記安全装置は、前記ロアカウンタウエイト検出スイッチからロアカウンタウエイト無の信号が出力されているときは第1定格荷重曲線を選択し、前記ロアカウンタウエイト検出スイッチからロアカウンタウエイト有の信号が出力されているときは、前記第1定格荷重曲線より最大吊上荷重が大きく設定されている第2定格荷重曲線を選択して前記転倒防止処理を実行することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の信号線切換装置及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
上部旋回体と下部走行体との間で各種電気信号を授受する回転継手を有する作業機械がある。このような作業機械において、上部旋回体と下部走行体との間で接続すべき電気信号線の本数を低減する試みがなされている(特許文献1)。
一方で、作業機械のうち、クローラクレーンは種々の仕様が設定されている。そのため、標準仕様に新たな機能を追加する際、追加した機能に必要な電気信号線を追加した大型な回転継手が必要な場合がある。たとえば、下部走行体にロアカウンタウエイトを搭載して吊上荷重を増加して作業を行う仕様がある。このような追加仕様に伴い、上部旋回体と下部走行体との間で授受する電気信号線が増えることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−328397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上部旋回体と下部走行体との間の電気信号線に追加が生じた場合、追加した電気信号線に対応した回転継手へ交換する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の第1の態様による作業機械の信号線切換装置は、作業機械の信号線切換装置は、上部旋回体に設けた各種上部電気要素と、下部走行体に設けた各種下部電気要素と、前記各種上部電気要素と前記各種下部電気要素との間で各種電気信号を授受する回転継手と、前記回転継手の上部側出力端子と前記各種上部電気要素との間に設けた上部切換器と、前記回転継手の下部側出力端子と前記各種下部電気要素との間に設けた下部切換器と、前記上部切換器及び前記下部切換器の電気信号線を切換える信号を出力する切換信号出力器と、を備える。
(2)本発明の第2の態様による作業機械は、上記作業機械の信号線切換装置と、吊荷荷重と作業半径とに基づいて作業機械の転倒防止処理を行う安全装置とを備える。各種上部電気要素はゲートロックレバースイッチとコントローラとを含み、各種下部電気要素はロアカウンタウエイト検出スイッチを含む。ゲートロックレバースイッチからの切換信号の状態にかかわらず、ロアカウンタウエイト検出スイッチからのロアカウンタウエイト有/無信号は回転継手を介してコントローラに入力される。コントローラは安全装置を含み、安全装置は、ロアカウンタウエイト検出スイッチからロアカウンタウエイト無の信号が出力されているときは第1定格荷重曲線を選択し、ロアカウンタウエイト検出スイッチからロアカウンタウエイト有の信号が出力されているときは、第1定格荷重曲線より最大吊上荷重が大きく設定されている第2定格荷重曲線を選択して転倒防止処理を実行する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電気信号線に追加が生じた場合でも、追加した電気信号線に対応した回転継手へ交換する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】作業機械の外観側面図である。
図2】安全装置を説明する図である。
図3】ゲートロックレバーを下げた状態の電気回路図である。
図4】ゲートロックレバーを上げた状態の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図4を参照して、本発明による作業機械の一実施の形態を説明する。図1は、本実施形態に係る作業機械の一例としてのクローラクレーンの外観側面図である。
クローラクレーン100は、下部走行体10と、この下部走行体10上に旋回可能に設けられた上部旋回体20と、上部旋回体20に積載されたカウンタウエイト21とを有する。
【0009】
下部走行体10は、不図示のトラックフレームの左右に設けられた一対のサイドフレーム11を有する。また、必要に応じて、下部走行体10にロアカウンタウエイトを搭載する仕様がある。
【0010】
上部旋回体20は、回動可能に軸支されたブーム22を有する。上部旋回体20の右側前部には運転室23が設けられ、運転室23の入り口にはゲートロックレバーが設置されている。オペレータは運転室23に入り、ゲートロックレバーを下げることにより運転操作が可能になる。上部旋回体20には巻き上げ用のウインチドラムである巻上ドラム24と、起伏用のウインチドラムである起伏ドラム25が搭載されている。
【0011】
巻上ドラム24には巻上ロープ26が巻回され、巻上ドラム24の駆動により巻上ロープ26が巻き取りまたは繰り出され、フック27が昇降する。起伏ドラム25には起伏ロープ28が巻回され、起伏ドラム25の駆動により起伏ロープ28が巻き取りまたは繰り出され、ブーム22が起伏する。巻上ドラム24は巻上用油圧モータにより駆動され、起伏ドラム25は起伏用油圧モータにより駆動される。これら油圧モータの回転は不図示のブレーキ装置によって制動可能である。
【0012】
図2に示すように、クローラクレーン100はモーメントリミッタと呼ぶ安全装置200を有している。
安全装置200は、吊荷の荷重を検出する荷重検出装置201と、吊荷の作業半径を検出する作業半径検出装置202と、検出した吊荷の荷重と作業半径とに基づいてクローラクレーン100が転倒しないようにブーム22の角度を制限する制御装置203とを備えている。制御装置203には、作業半径とその作業半径で吊上可能な荷重とに基づく定格荷重曲線が設定されている。
【0013】
上述したように、クローラクレーン100は下部走行体10に不図示のロアカウンタウエイトを搭載する仕様がある。この仕様では、上部旋回体20に設置したカウンタウエイト21のみで吊上作業を行う標準仕様に比べて吊上荷重が大きい。
制御装置203には、ブーム22の長さが等しい場合であっても、上部旋回体20にのみカウンタウエイトを搭載した仕様における第1定格荷重曲線203Aと、下部走行体10にロアカウンタウエイトを搭載した仕様における第2定格荷重曲線203Bとが記憶される。第1定格荷重曲線203Aと第2定格荷重曲線203Bは、それぞれ入力された作業半径から定格吊上荷重を読み出す。
【0014】
制御装置203は検出スイッチ203Cを備えている。後述するコントローラ44から出力されるロアカウンタウエイト有信号が制御装置203に入力されると、検出スイッチ203Cは接点aに切り換わり、第1定格荷重曲線203Aの出力が選択される。ロアカウンタウエイト無信号が制御装置203に入力されると、検出スイッチ203Cは接点bに切り換わり、第2定格荷重曲線203Bの出力が選択される。
検出スイッチ203Cの出力である定格吊上荷重信号は比較器203Dに入力され、吊り荷重検出装置201からの荷重信号と比較される。荷重検出装置201からの荷重信号が定格吊上荷重信号を上回ると、比較器203Dはブーム22の下げ動作を禁止するブーム下げ動作禁止信号を出力する。すなわち安全装置200は転倒防止処理を行う。
この実施形態では、ロアカウンタウエイトの有無を検知して荷重曲線を切り替える機能を追加機能と呼ぶ。
【0015】
ブーム22の俯仰動作は、俯仰レバー操作によりコントロールバルブを切換え、油圧ポンプからの圧油を俯仰用油圧モータに供給して行われる。俯仰レバーが操作されると、ブーム下げパイロット油圧またはブーム上げパイロット油圧がリモコン弁から出力されてコントロールバルブが切換えられる。ブーム下げ動作禁止信号は上記パイロット油圧回路系に配置された電磁切換弁を閉位置に切換え、これによりブーム下げ動作が停止する。
【0016】
図3、4は実施形態のクローラクレーン100の電気回路図を示す。図3はゲートロックレバーを下げた状態の電気回路図、図4はゲートロックレバーを上げた状態の電気回路図である。ゲートロックレバー下げ状態はオペレータが運転室内でレバー操作を行ってクローラクレーン100を操作できる。ゲートロックレバー上げ状態では運転席のレバー操作を無効としてクローラクレーン100の操作が禁止される。
【0017】
クローラクレーン100は、下部電気要素と上部電気要素との間で各種電気信号を授受する回転継手30を有している。回転継手30の上部旋回体20側には、回転継手30の上部側出力端子と上部電気要素との間に上部切換器31が設けられている。回転継手30の下部走行体10側には、回転継手30の下部側出力端子と下部電気要素との間に下部切換器32が設けられている。上部切換器31と下部切換器32は半導体スイッチング回路を使用することができるが、機械的に電気回路を切換えるスイッチ装置でもよい。
【0018】
下部走行体10には、サイドフレーム伸縮リモコン33、サイドフレームシリンダ伸縮装置34、ロアウエイト検出スイッチ35が備えられている。
サイドフレーム伸縮リモコン33は、サイドフレーム11の伸縮を遠隔操作するためのリモコンであり、ダイオード36、37を介してそれぞれ伸長方向または収縮方向の信号をサイドフレームシリンダ伸縮装置34に与える。
【0019】
サイドフレームシリンダ伸縮装置34は、油圧によりサイドフレーム11を作動させる装置である。ロアウエイト検出スイッチ35は、下部走行体10にロアカウンタウエイトが設置された場合にこれを検出するスイッチである。
【0020】
上部旋回体20には、ポンプ容量調整装置40、電源41、ゲートロックレバースイッチ42、サイドフレーム操作スイッチ43、コントローラ44が備えられている。
【0021】
ポンプ容量調整装置40は、サイドフレームシリンダ伸縮装置34の油圧シリンダに圧油を供給する油圧ポンプの傾転角、すなわち押除け容積を少なくして、サイドフレーム11の動作をゆっくり行うためのものである。電源41は、ゲートロックレバースイッチ42や上部切換器31へ信号用の電圧を印加する。
【0022】
ゲートロックレバースイッチ42は、運転室23の入り口に設置されたゲートロックレバーが下げられたことを検出するスイッチである。オペレータが運転室23に入りゲートロックレバーを下げると運転室内でサイドフレーム操作スイッチ43等の操作が可能になる。ゲートロックレバースイッチ42は、上部切換器31及び下部切換器32の電気信号線を切換える信号を出力する切換信号出力器として機能する。
【0023】
サイドフレーム操作スイッチ43は、サイドフレーム11を伸縮するための操作スイッチであり、上部切換器31、回転継手30、下部切換器32を介して伸長方向または収縮方向の信号をサイドフレームシリンダ伸縮装置34に与える。
コントローラ44は図2の制御装置203を含む。制御装置203は、ロアウエイト検出スイッチ35からの検出信号を受けて、ロアウエイトの有無に応じた第1定格荷重曲線203Aまたは第2定格荷重曲線203Bに切り替える。上記検出信号が図2で説明したロアカウンタウエイト有/無信号である。
【0024】
このようにクローラクレーン100は、上部旋回体20に設けた各種上部電気要素、すなわち電力消費要素を有する。電力消費要素は、上述の他に、例えばスタータモータ、空調装置、制御装置などがある。
クローラクレーン100はまた、下部走行体10に設けた各種下部電気要素、すなわち電力消費要素を有する。電力消費要素は、上述の他に、例えばジャッキアップシリンダ駆動用電磁弁などがある。
【0025】
回転継手30は、4本の接続線A〜Dを有する。一方、下部走行体10には、サイドフレーム伸縮リモコン33、サイドフレームシリンダ伸縮装置34の他に、ロアウエイト検出スイッチ35が追加機能して加えられたものとする。このため、通常であれば6本の接続線を有する回転継手に交換する必要があるが、本実施形態では上部切換器31及び下部切換器32の電気信号線を切り替えることにより、4本の接続線A〜Dを有する回転継手30を用いることができる。
【0026】
以下に、クローラクレーン100の電気回路の動作について図3、4を参照して説明する。
図3の回路はゲートロックレバーを下げた状態であり、オペレータは運転室内にいる。図4の回路はゲートロックレバーを上げた状態であり、オペレータは運転室外にいる。オペレータが運転室内に乗車しているときはサイドフレーム操作スイッチ43によりサイドフレームを収縮することができる。一方、オペレータが運転室外にいるときはサイドフレーム伸縮リモコン33によりサイドフレームを収縮することができる。
以下、図3図4の電気回路について詳細に説明する。
【0027】
図3は、ゲートロックレバーが下げられて、上部切換器31がON、下部切換器32がOFFの状態を示す。すなわち、ゲートロックレバーが下げられると、ゲートロックレバースイッチ42が閉じられ、電源41からの電圧が切換信号S1Uとして上部切換器31に入力され、上部切換器31がON状態になる。切換信号S1Uの電圧レベルがローレベルで上部切換器31が図4のOFF状態となる。
【0028】
上部切換器31がON状態では、電源41からの電圧線V1Uが上部切換器31内の電気信号線を介して、回転継手30の接続線Bに接続される。回転継手30の接続線Bは、下部切換器32内の電気信号線を介してロアウエイト検出スイッチ35へ入力される。ロアウエイト検出スイッチ35の出力線は下部切換器32内の電気信号線を介して回転継手30の接続線Aへ接続される。そして、回転継手30の接続線Aからコントローラ44へ接続される。すなわち、回転継手30の接続線A、Bは、ロアウエイト検出スイッチ35をコントローラ44へ接続している。したがって、ロアカウンタウエイトの有無を検知して荷重曲線を切り替えることができる。
【0029】
ロアウエイト検出スイッチ35の出力線は下部切換器32内の電気信号線から切換信号S1Lとして下部切換器32に印加される。この切換信号S1Lの電圧レベルにより下部切換器32のON/OFF状態が設定される。この例では、切換信号S1Lの電圧レベルがハイレベルで下部切換器32が図3のOFF状態となり、ハイレベルで図4のON状態となる。
【0030】
更に、ゲートロックレバーが下げられた状態では、図3に示すように、回転継手30の接続線C、Dは、サイドフレーム操作スイッチ43とサイドフレームシリンダ伸縮装置34を接続している。したがって、運転室23内のオペレータはサイドフレーム操作スイッチ43を操作してサイドフレームシリンダ伸縮装置34によるサイドフレーム11の操作が可能である。
【0031】
一方、ゲートロックレバーが下げられた状態では、サイドフレーム伸縮リモコン33は使用されないので、電源41からサイドフレーム伸縮リモコン33へ電圧は供給されていない。
【0032】
図4は、ゲートロックレバーが上げられて、上部切換器31がOFF、下部切換器32がONの状態を示す。すなわち、ゲートロックレバーが上げられると、ゲートロックレバースイッチ42が開かれ、電源41からの切換信号SIUの信号状態がローレベルとなり、上部切換器31がOFF状態になる。上部切換器31がOFF状態になると、回転継手30の接続線Aが電源41に接続され、接続線Aから下部切換器32に対してハイレベルな切換信号S1Lが入力されて、下部切換器32がON状態となって図4に示すように電気信号線が切り替わる。この結果、回転継手30の接続線Aを介して電源41からサイドフレーム伸縮リモコン33へ電力が供給され、サイドフレーム伸縮リモコン33から回転継手30の接続線Bを介してポンプ容量調整装置40へポンプ傾転角を小さくする指令信号が伝達される。
【0033】
サイドフレーム伸縮リモコン33は、ダイオード36、37を介してそれぞれ伸長方向または収縮方向の信号をサイドフレームシリンダ伸縮装置34に与え、サイドフレーム11の伸縮を遠隔操作する。また、ポンプ容量調整装置40には、サイドフレーム伸縮リモコン33から回転継手30の接続線Bを介してポンプ傾転角を小さくする信号が伝達されているので、サイドフレーム11の動作をゆっくり行ことができる。
【0034】
また、図3に示すように、回転継手30の接続線C、Dは、ロアウエイト検出スイッチ35をコントローラ44へ接続している。したがって、上述したように、ロアカウンタウエイトの有無を検知して荷重曲線を切り替えることができる。
一方、ゲートロックレバーが上げられた状態では、サイドフレーム操作スイッチ43は使用されないので、サイドフレーム操作スイッチ43と接続される信号線に接続される電気信号線は上部切換器31に存在しない。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)作業機械の信号線切換装置は、上部旋回体20に設けた各種上部電気要素と、下部走行体10に設けた各種下部電気要素と、各種上部電気要素と各種下部電気要素との間で各種電気信号を授受する回転継手30と、回転継手30の上部側出力端子と各種上部電気要素との間に設けた上部切換器31と、回転継手30の下部側出力端子と各種下部電気要素との間に設けた下部切換器32と、上部切換器31及び下部切換器32の電気信号線を切換える信号を出力する切換信号出力器、すなわちゲートロックレバースイッチ42と、を備える。これにより、電気信号線に追加が生じた場合でも、追加した電気信号線に対応した回転継手へ交換する必要がない。
【0036】
(2)作業機械の信号線切換装置において、上部切換器31及び下部切換器32の電気信号線を切換える信号を出力する切換信号出力器はゲートロックレバースイッチ42である。これにより、ゲートロックレバーの操作に応じて上部切換器31及び下部切換器32の電気信号線を切換えることができる。
【0037】
(3)上記(2)の装置において、ゲートロックレバースイッチ42からの切換信号の状態にかかわらず、ロアウエイト検出スイッチ35からのロアカウンタウエイト有/無信号は回転継手30を介してコントローラ44、すなわち安全装置200入力される。
そのため、運転室外からクローラクレーンを操作する場合もロアカウンタウエイト有りの第2定格荷重曲線2030bを用いて吊上作業を行うことができる。
【0038】
(4)上記(2)または(3)の装置において、ゲートロックレバースイッチ42からの切換信号が乗員が運転室内にいないことを示す信号状態のときは、サイドフレーム伸縮リモコン33からポンプ容量調整装置40にポンプ傾転角を小さくする指令が出力される。
そのため、運転室外からサイドフレーム伸縮リモコン33でサイドフレームの拡縮操作を行うときの拡縮油圧シリンダの伸縮速度は、運転室内からサイドフレーム操作スイッチ43でサイドフレームの拡縮操作を行うときの拡縮油圧シリンダの伸縮速度に比べて遅くすることができる。
【0039】
(5)実施の形態のクローラクレーンは、吊荷荷重と作業半径とに基づいて作業機械の転倒防止処理を行う安全装置200を備える。安全装置200は、ロアウエイト検出スイッチ35からロアカウンタウエイト無の信号が出力されているときは第1定格荷重曲線203Aを選択し、ロアウエイト検出スイッチ35からロアカウンタウエイト有の信号が出力されているときは、第1定格荷重曲線203Aより最大吊上荷重が大きく設定されている第2定格荷重曲線203Bを選択して転倒防止処理、たとえばブーム下げ動作禁止処理を実行する。
したがって、追加機能により回転継手内の電気信号線の本数が増えても、回転継手内に設けた電気信号線の数量は変更することなく、追加機能を実現することができる。
【0040】
さらに実施の形態の信号線切換装置の作用効果を説明する。
実施の形態を適用しない場合、すなわち、図3の電気回路の接続状態でしか使用できない場合、サイドフレーム伸縮リモコン33でサイドフレームの伸縮を操作するとき、ポンプ傾転角を小さくすることができない。図4の接続状態でしか使用できない場合、サイドフレーム操作スイッチ43ではサイドフレームの伸縮を操作することができない。しかし、実施の形態のように図3の電気回路の接続状態と図4の電気回路の接続状態とを選択できるようにすれば、運転室からサイドフレーム伸縮リモコン33でサイドフレームの伸縮を操作するとき、ポンプ傾転角を小さくすることができるし、運転室内からサイドフレーム操作スイッチ43でサイドフレームの伸縮を操作することができる。
【0041】
本発明は以下のように変形して実施することができる。
(1)以上では、ゲートロックレバーの操作にしたがって図3図4の電気回路の状態を切換えるようにした。しかし、本発明はこれに限定されず、専用の切換えスイッチを設けてオペレータが図3図4の電気回路を切換えるようにしてもよい。あるいは、ゲートロックレバー以外の操作部材に連動する切換えスイッチを使用してもよい。
【0042】
(2)以上では、追加機能としてロアカウンタウエイトを追加した仕様があるクローラクレーンについて説明した。クローラクレーンの追加機能は、ロアカウンタウエイトを追加した仕様以外でも種々想定されるので、本発明は実施の形態に限定されない。また、クローラクレーン以外の建設機械を含む作業機械であって、上部旋回体に搭載した上部電気機器要素と下部走行体に搭載した下部電気機器要素との間で各種信号を授受する回転継手を有する種々の作業機械にも本発明を適用できる。
【0043】
(3)以上説明した実施の形態では、電気信号線のみを有する回転継手として説明したが、電気信号線に加えて、上部旋回体に搭載した上部油圧機器要素と下部走行体に搭載した下部油圧機器要素との間で各種油圧を授受するようにした回転継手に本発明を適用してもよい。
【0044】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 下部走行体
20 上部旋回体
30 回転継手
31 上部切換器
32 下部切換器
33 サイドフレーム伸縮リモコン
34 サイドフレームシリンダ伸縮装置
35 ロアウエイト検出スイッチ
40 ポンプ容量調整装置
41 電源
42 ゲートロックレバースイッチ
43 サイドフレーム操作スイッチ
44 コントローラ
図1
図2
図3
図4