(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
複数の単セルの積層体の積層方向の両端を、一対のターミナル
プレートと一対のエンドプレートとで挟持した構成を有する燃料電池スタックの内部には、各単セルへの反応ガスの供給や、各単セルからのオフガスの排出、および各単セルへの冷却媒体の供給と排出を行うための複数のマニホールドが積層方向と平行に形成されている。少なくとも一方のエンドプレートには、燃料電池スタック内部の複数のマニホールドと連通するように複数の貫通孔が形成されている。一般に、エンドプレートは、アルミニウム合金等の金属により形成されているため、反応ガスや冷却媒体等による絶縁性や防食性の低下を抑制するために、エンドプレートとターミナル
プレートとの接触面や、エンドプレートに形成された貫通孔の内周壁をそれぞれ樹脂層で被覆する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
燃料電池スタックは、単セルの積層体をケースに収容した構成を有することがある。この場合、ケース全体の端面とケースに収容された積層体の端面とがエンドプレートで覆われて、ケースの外縁周辺とエンドプレートとがボルト等で締結される。このとき、エンドプレートとケースとの接触面の気密性および水密性の確保のため、エンドプレートとケースとの接触面の間にガスケット等のシール部材が配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンドプレートに形成された貫通孔の内周壁等を被覆する樹脂層とエンドプレートとの熱膨張率の相違に起因して、燃料電池の運転を繰り返すことによって、樹脂層とエンドプレートとの間に隙間が生じ得る。このため、エンドプレートとケースとの接触面において上述のシール部材が配置されていない部分や、エンドプレートにおいて樹脂層により被覆されていない部分や、樹脂層の外周縁部からケース内部へと水が浸入するおそれがある。そこで、エンドプレートとケースとの接触面におけるケース内部への水の浸入を抑制する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一実施形態によれば、燃料電池スタックが提供される。この燃料電池スタックは、積層された複数の単セルを含む積層体と;前記積層体に対して前記複数の単セルの積層方向の外側に配置され、前記積層方向に貫通する流体流路孔が形成されたエンドプレートと;前記積層体を収容するケースと;を備え;前記エンドプレートは、前記積層体の前記積層方向の端面と前記ケースの前記積層方向の端面とを覆って、前記ケースの前記端面に締結され;前記エンドプレートと前記ケースとの互いに対面する二つの面のうちの少なくとも一方の面には、前記エンドプレートと前記ケースとをシールするためのシール部材を収容する収容溝が形成され;前記エンドプレートは、前記流体流路孔の内周壁面と、前記積層体と対面する面と、前記収容溝の外周側端部と、を連続して覆う樹脂層を有する。
この形態の燃料電池スタックによれば、エンドプレートには、流体流路孔の内周壁面と、エンドプレートと積層体とが対面する面と、収容溝の外周側端部と、を連続して覆う樹脂層が形成されているので、熱膨張率の相違に起因して樹脂層とエンドプレートとの間に隙間が生じてかかる隙間に水が浸入したとしても、水は収容溝の外周側端部に至るに過ぎず、収容溝よりも内側への浸入は、収容溝に収容されるシール部材により抑制される。このため、エンドプレートとケースとの接触面におけるケース内部への水の浸入を抑制できる。
【0008】
本発明は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料電池スタックを備える燃料電池システム、その燃料電池システムを備える車両等の形態においても実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A1.燃料電池スタックの構成:
図1は、本発明の一実施形態における燃料電池スタックの概略構成を示す断面図である。
図1では、燃料電池スタック100の積層方向に沿った断面を示している。
図1では、Z軸は鉛直方向と平行に、X軸およびY軸は水平方向と平行に、それぞれ設定されている。+Z方向は鉛直上方に、−Z方向は鉛直下方にそれぞれ相当する。積層方向は、X軸と平行である。
【0011】
燃料電池スタック100は、積層体20と、第1のエンドプレート30と、第2のエンドプレート31と、ケース40と、複数のボルト50と、を備えている。積層体20は、積層方向に沿って積層された複数の単セル10を含んで構成されている。具体的には、積層体20は、複数の単セル10と、図示しないターミナルプレートと、図示しないインシュレータと、を備えている。各単セル10は、固体高分子型燃料電池であり、固体高分子電解質膜を挟んで設けられたアノード側触媒電極層およびカソード側触媒電極層に供給される反応ガスを用いた電気化学反応により電力を発生する。各単セル10において各極の触媒電極層の外側には、例えば、カーボンペーパーおよびカーボンクロス等のカーボン多孔質体により形成されたガス拡散層が配置されている。また、各極のガス拡散層の外側には、導電性を有するセパレータが配置されている。燃料電池スタック100の内部には、各単セル10に対する反応ガスの供給、各単セル10からのオフガスの排出、および各単セル10への冷却媒体の供給と排出を行うための複数のマニホールドが、積層方向と平行に形成されている。
【0012】
第1のエンドプレート30は、積層体20の積層方向の2つの端面のうちの一方の端面に対し、積層方向の外側(−X方向)に位置する。より具体的には、単セル10の−X方向側の端面には図示しないターミナルプレートが接して配置され、第1のエンドプレート30は、かかるターミナルプレートに対して図示しないインシュレータを介在して積層方向の外側に配置されている。
【0013】
第1のエンドプレート30は、板状の部材であり、本実施形態では、アルミニウム合金により形成されている。なお、アルミニウム合金に代えて、チタニウム合金や、ステンレス等の任意の金属で形成されてもよい。第1のエンドプレート30の平面視形状は、略矩形であり、その面積は、積層体20の積層方向に沿った端面の平面視形状の面積よりも大きい。第1のエンドプレート30は、第2のエンドプレート
31とともに、所定の圧力で積層体20を挟み込む。そして、第1のエンドプレート30とケース
40とがボルト50により締結されることにより、積層体20の積層状態が保持される。第1のエンドプレート30には、厚さ方向(積層方向)に貫通する複数の貫通孔が形成されている。これら複数の貫通孔は、積層体20の内部に形成されている複数のマニホールドと連通する流体流路孔として機能する。具体的には、積層体20への反応ガスおよび冷却媒体の供給、積層体20からのオフガスおよび冷却媒体の排出のためのガス流路や、流体流路孔(後述の流体流路孔70)として機能する。
【0014】
第2のエンドプレート31は、積層体20の積層方向の2つの端面のうち、第1のエンドプレート30が配置された側とは反対側の端面に対し、積層方向の外側(+X方向)に位置する。上述の第1のエンドプレート30と同様、単セル10の他方の端面には、ターミナルプレートが接して配置され、第2のエンドプレート31は、かかるターミナルプレートに対してインシュレータを介在して積層方向の外側に配置されている。第2のエンドプレート31は、第1のエンドプレート30と同様の形状を有し、第1のエンドプレート30と同様の材料から成る。X軸方向に見て、第2のエンドプレート31は、第1のエンドプレート30よりも小さい。
【0015】
ケース40は、−X方向の端部に開口が形成された筒状の外観形状を有する。ケース40の内側には、積層体20と、第2のエンドプレート31とが収容されている。図示するように、第1のエンドプレート30は、自身の+X方向の端面が積層体20の−X方向の端面と、ケース40の−X方向の端面とをそれぞれ覆うように配置され、ボルト50によりケース40の外縁周辺と締結されている。ケース40は、防水性、防塵性、耐衝撃性に優れており、本実施形態では、アルミニウム合金により形成されている。
【0016】
A2.第1のエンドプレート30の詳細構成:
図2は、第1のエンドプレート30の構成を拡大して示す断面図である。
図2では、
図1に示す燃料電池スタック100の−X方向端部側の構成を拡大して示している。第1のエンドプレート30は、流体流路孔70と、収容溝80と、シール部材SLと、樹脂層90と、を備える。
【0017】
流体流路孔70は、第1のエンドプレート30の厚さ方向(積層方向)に沿って形成された貫通孔である。上述のように、流体流路孔70は、積層体20に形成されているマニホールドと連通しており、冷却媒体の流路として用いられる。
【0018】
収容溝80は、第1のエンドプレート30の+X方向の面に形成されている。具体的には、第1のエンドプレート30の+X方向の面とケース40の−X方向の面とが締結された際に、第1のエンドプレート30とケース40とが対面する面において、ケース40の外縁周辺に対応する位置に形成されている。収容溝80内には、シール部材SLが収容されている。シール部材SLは、第1のエンドプレート30とケース40との接触面をシールするために用いられる。シール部材SLは、燃料電池スタック100が締結された際の締結荷重を受け、シール部材SLの面圧により、第1のエンドプレート30とケース40との間を密封する。これにより、燃料電池スタック100の気密性および水密性を確保できる。本実施形態において、シール部材SLは、ゴムにより形成されている。ゴムとしては、例えば、ブチルゴムやシリコンゴムを採用してもよい。
【0019】
樹脂層90は、流体流路孔70の近傍に形成される。樹脂層90は、冷却媒体による絶縁性や、防食性の低下を抑制するために用いられる。樹脂層90は、以下の3つの領域を連続して覆って形成されている。第1に、樹脂層90は、流体流路孔70の内周壁面を覆って形成されている。第2に、樹脂層90は、積層体20の−X方向の面と第1のエンドプレート30の+X方向の面とが対面する面を覆って形成されている。第3に、樹脂層90は、第1のエンドプレート30の+X方向の面とケース40の−X方向の面とが対面する位置において収容溝80の外周側端部を覆って形成されている。また、樹脂層90は、これら3つの領域間にも形成されている。すなわち、樹脂層90は、流体流路孔70の内周壁面と、第1のエンドプレート30と積層体20とが対面する面と、収容溝80の外周側端部と、を連続して覆うように形成されている。本実施形態において、樹脂層90は、絶縁性高分子材料、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアミド(PA)やポリフェニレンスルファイド(PPS)等のエンジニアリングプラスチック、フッ素ゴムやシリコンゴム等のエラストマー、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂などにより形成されている。好適な材料として、芳香族ポリアミドまたはポリフェニレンスルファイド(PPS)を用いることができる。樹脂層90は、第1のエンドプレート30に樹脂層90の形状をした金型を配置し、樹脂部材を射出成形することによって形成できる。このように形成することによって、第1のエンドプレート30と積層体20とケース40とが隙間なく接合される。
【0020】
上述のように、樹脂層90が、流体流路孔70の内周壁面と、第1のエンドプレート30と積層体20とが対面する面と、収容溝80の外周側端部と、を連続して覆うことにより、水がケース40内に浸入することが抑制できる。具体的には、例えば、第1のエンドプレート30と樹脂層90との境界のうち、第1のエンドプレート30における−X方向の端面に露出している端部P1から水が浸入して、第1のエンドプレート30と樹脂層90との境界に沿って浸透した場合について検討する。この場合、第1のエンドプレート30における+X方向の端面に露出している端部P2まで水が浸入し得る。しかしながら、樹脂層90は、収容溝80の外周側端部まで覆っているため、端部P2は、ケース40内部(内部空間)に対し、収容溝80(シール部材SL)を挟んで反対側に位置する。このため、端部P2に達した水は、シール部材SLにより、ケース40内部へ浸入することを抑制される。
【0021】
A3.比較例:
図3は、比較例としての燃料電池スタック500における第1のエンドプレート530の構成を拡大して示す断面図である。
図3に示すように、比較例の第1のエンドプレート530では、樹脂層590は、流体流路孔70の内周壁面と、第1のエンドプレート530と積層体20とが対面する面と、を連続して覆うように形成されているが、収容溝80の外周側端部とを連続して覆うようには形成されていない。このため、第1のエンドプレート530と樹脂層590との境界のうち、第1のエンドプレート530における−X方向の端面に露出している端部P11から浸入した水は、第1のエンドプレート530における+X方向の端面に露出している端部P12まで浸入し得る。端部P12は、収容溝80(シール部材SL)の内周側、かつ、ケース40の内周側に位置するため、端部P12に達した水は、ケース40内部へ浸入するおそれがある。
【0022】
以上説明した、第1実施形態の燃料電池スタック100によれば、第1のエンドプレート30には、流体流路孔70の内周壁面と、第1のエンドプレート30と積層体20とが対面する面と、収容溝80の外周側端部と、を連続して覆う樹脂層90が形成されているので、熱膨張率の相違に起因して樹脂層90と第1のエンドプレート30との間に隙間が生じてかかる隙間に水が浸入したとしても、水は収容溝80の外周側端部に至るに過ぎず、収容溝80よりも内側への浸入は、収容溝80に収容されるシール部材SLにより抑制される。このため、第1のエンドプレート30とケース40との接触面におけるケース40内部への水の浸入を抑制できる。
【0023】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態としての燃料電池スタック100aにおける第1のエンドプレート30aの構成を拡大して示す断面図である。第2実施形態の燃料電池スタック100aは、第1のエンドプレート30に代えて第1のエンドプレート30aを備えている点と、ケース40に代えてケース40aを備えている点と、収容溝80に代えて収容溝80aを備えている点と、樹脂層90に代えて樹脂層90aを備えている点とにおいて、第1実施形態の燃料電池スタック100と異なる。第2実施形態の燃料電池スタック100aにおけるその他の構成は、第1実施形態の燃料電池スタック100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0024】
第2実施形態の第1のエンドプレート30aは、収容溝80が形成されていない点において、第1実施形態の第1のエンドプレート30と異なる。第2実施形態のケース40aは、収容溝80aが形成されている点において、第1実施形態のケース40と異なる。第2実施形態の収容溝80aは、ケース40aの−X方向の面の外周縁部に形成されている。収容溝80aのZ軸に沿った配置位置は、第1実施形態の収容溝80と同様である。第2実施形態の樹脂層90aは、流体流路孔70の内周壁面と、第1のエンドプレート30aと積層体20とが対面する面と、収容溝80aの外周に対応する位置と、を連続して覆うように形成されている。すなわち、収容溝80a外周側端部に対応する位置まで樹脂層90aにより連続して覆われている。
【0025】
以上の構成を有する第2実施形態の燃料電池スタック100aは、第1実施形態の燃料電池スタック100と同様な効果を有する。加えて、樹脂層90aの形状は、複雑ではないため、樹脂層90aの金型構造が複雑化せず、製造コストを低減できる。
【0026】
C.変形例:
C1.変形例1:
上記各実施形態において、収容溝80、80aは、第1のエンドプレート30
、30aとケース40
、40aとの互いに対面する二つの面のうちのいずれか一方に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1のエンドプレート30とケース40との互いに対面する二つの面の双方に形成されていてもよい。この場合、第1のエンドプレート30に形成された収容溝とケース40に形成された収容溝とは、Z軸に沿った配置位置が互いに異なっていてもよい。このとき、樹脂層90は、2つの収容溝のうち、より外周側に位置する収容溝の外周側端部まで覆うことが好ましい。但し、より内周側に位置する収容溝の外周側端部までを覆い、より外周側に位置する収容溝の外周側端部を覆わなくてもよい。このような構成においても、上記実施形態と同様な効果を奏する。
【0027】
C2.変形例2:
上記各実施形態において、流体流路孔70は、冷却媒体の流路として用いられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、反応ガスや、オフガスの流路孔として用いてもよい。このような構成においても、上記実施形態と同様な効果を奏する。
【0028】
本発明は、上述の実施形態および変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。