特許第6437984号(P6437984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6437984経口投与用タペンタドールの水性医薬製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437984
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】経口投与用タペンタドールの水性医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20181203BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20181203BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20181203BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20181203BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20181203BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20181203BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20181203BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   A61K31/05
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/16
   A61K47/20
   A61K47/22
   A61K47/18
   A61P25/04
【請求項の数】27
【外国語出願】
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-222084(P2016-222084)
(22)【出願日】2016年11月15日
(62)【分割の表示】特願2013-555796(P2013-555796)の分割
【原出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2017-61521(P2017-61521A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/449,287
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11003601.9
(32)【優先日】2011年5月3日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390035404
【氏名又は名称】グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト・ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】シラー・マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴュルステン・エーファ
(72)【発明者】
【氏名】インゲルブレヒト・サビーネ・カリーネ・カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】エンブレヒツ・ローガー・カロルス・アウグスタ
(72)【発明者】
【氏名】ファイル・ウルリヒ
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/096045(WO,A1)
【文献】 特表2006−512344(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/089767(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/016487(WO,A1)
【文献】 特表2004−527491(JP,A)
【文献】 特表2010−520907(JP,A)
【文献】 特表2013−527152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K47/00−47/69
A61K9/00−9/72
A61P1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タペンタドールまたは生理学的に許容可能なその塩を含み、そして経口投与用に適合されている水性の医薬組成物であって、その組成物がレディー・ツー・ユース(ready to use)型であり、患者に経口で投与される前に、溶剤への溶解を含む特別の処理段階を行う必要がなく、そして上記組成物が少なくとも1週の使用中安定性を有する多回投与用調製物であり、さらに上記組成物が3.0〜9.0の範囲内のpH値を有し、タペンタドールの濃度が組成物の全体積を基準として50mg/mL以下である、上記医薬組成物。
【請求項2】
前記多回投与用調製物が少なくとも4週の使用中安定性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多回投与用調製物が少なくとも6週の使用中安定性を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多回投与用形態が1回を越える投与のためにカスタマイズされている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が1を越える投薬単位を包含する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
(i)さらにバッファーを含み、および/または(ii)3.0〜6.5の範囲内のpH値を有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
(i)保存剤を含まないか、または(ii)追加的に保存剤を含む、請求項1〜のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
保存剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリニジウム、クロルヘキシジン、クロルブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸およびソルビン酸カリウムからなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
保存剤が安息香酸ナトリウムである、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
保存剤の含有量が組成物の全重量を基準として最大で5.0重量%である、請求項7〜9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が保存剤を含み、そしてタペンタドールと保存剤との重量比が、10:1〜0.25:1である、請求項7〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
タペンタドールの濃度および保存剤の濃度の合計が、組成物の全体積を基準として50mg/mL以下である、請求項7〜11のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項13】
保存剤の含有量が、タペンタドールの非存在下において医薬組成物を十分に保存するために欧州薬局方に従って必要であろう含有量の最大で90%である、請求項7〜12のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の含水率が、組成物の全重量を基準として、少なくとも50重量%である、請求項1〜13のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項15】
加速保存条件下で少なくとも3か月の有効期間を示す、請求項1〜14のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項16】
シロップ剤、滴剤、液剤、分散剤、懸濁剤および乳剤からなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物がさらに味増強成分を含む、請求項1〜16のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項18】
味増強成分が甘味剤および/または矯味矯臭剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記甘味剤がスクラロースである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記矯味矯臭剤がラズベリーフレーバーである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物がさらに緩衝系を含む、請求項1〜20のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項22】
前記緩衝系がクエン酸またはクエン酸水和物に由来する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1つに記載の医薬組成物を含む、医薬製剤。
【請求項24】
経口液剤、経口ゲル剤、懸濁剤、乳剤、および液体もしくはゲル充填カプセル剤からなる群から選択される、請求項23に記載の医薬製剤。
【請求項25】
小児患者への投与に適合されている、請求項23または24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
疼痛の治療に使用するための、請求項1〜22のいずれか1つに記載の医薬組成物、または請求項23〜25のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【請求項27】
急性疼痛および慢性疼痛からなる群から選択される、請求項26に記載の医薬組成物または医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タペンタドールまたは生理学的に許容可能なその塩を含み、そして経口投与に適している水性の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タペンタドールはμ−オピオイド受容体のアゴニストとしておよびノレピネフリン再取り込み阻害剤としてデュアル・モードの作用を有する中枢作用性の鎮痛薬である(非特許文献1参照)。タペンタドールの固体の経口剤形は先行技術、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8および特許文献9から公知である。
【0003】
しかしながら、タペンタドールを含んでいる固体の経口剤形はあらゆる点で満足ではなく、既知の固体の経口剤形と比較して長所を有する医薬製剤への需要がある。
【0004】
最終製品中の活性成分の安定性は製剤化する者にとっての一番の関心事である。一般に、原体は固体の剤形より水性溶媒においてそれほど安定しておらず、液体の水性製剤、例えば、液剤、懸濁剤および乳剤を適切に安定させて保存することが重要である。酸塩基反応、酸もしくは塩基触媒作用、酸化および還元が、これらの製品では生じる場合がある。これらの反応は、原体−成分相互作用、成分−成分相互作用又は容器−製品相互作用から発生し得る。pH感受性化合物については、これらの相互作用のうちのいずれもがpHを変え得るものであり、析出を引き起こし得る。
【0005】
酸化に不安定な原体またはビタミン、精油およびほとんどすべての油脂は、自己酸化によって酸化し得る。そのような反応は熱、光、過酸化物または他の不安定な化合物または、重金属、例えば銅または鉄によって開始され得る。
【0006】
微量金属の影響はキレート剤、例えばEDTAの使用により最小限にすることができる。酸化防止剤は、それらが形成されるにつれ、遊離基と急速に反応することにより、酸化を防ぐかまたは遅らせることができる(クエンチング)。一般的な酸化防止剤には、没食子酸のプロピル、オクチルおよびドデシルエステル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウムもしくはナトリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロールまたはビタミンEが含まれる。
【0007】
化学的および物理的な分解に対する医薬調製物の安定化に加えて、液体および半固形調製物、特に多回投与用調製物は通常、微生物汚染から保護されていなければならない。固形調製物とは対照的に、水性の液剤、シロップ剤、乳剤および懸濁剤は、多くの場合に微生物、例えば、かび、酵母および細菌(例えばシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas Aeruginosa)、大腸菌(E.Coli)、サルモネラ(Salmonella spp.)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger))に対して優れた培養培地を供給してしまう。これらの微生物による汚染は、製造の間に、または服用量を多回投与用製剤から取る際に生じ得る。十分な量の水が製剤中にある場合に、微生物の増殖が起こり得る。
【0008】
眼用のおよび注射可能な調製物は、典型的には、オートクレーブ滅菌またはろ過により殺菌される。しかしながら、それらのうちの多くは、それらの一定の有効期間にわたって無菌状態を維持するために、特に多回投与用調製物に関しては、抗菌性保存剤の存在を必要とする。
【0009】
保存剤が必要な場合、その選択はいくつかの考察に基づき、特に、使用する部位が内服用か外用か、眼用かに基づく(さらなる詳細は、例えば非特許文献2を参照することができる)。
【0010】
経口投与用の多くの液体製剤、特に多回投与用製剤は、保存剤としてパラベン、例えば、メチルパラベン(メチル−4−ヒドロキシベンゾアート)およびプロピルパラベン(プロピル−4−ヒドロキシベンゾアート)を含んでいる。例えば、ドイツ連邦共和国では、パラベンを含む液体経口製剤が以下の商標で商品化されている:ben−u−ron(登録商標);Cetirizin−ratiopharm(登録商標);Pipamperon HEXAL(登録商標);Sedotussin(登録商標);TALOXA(登録商標);Truxal(登録商標);XUSAL(登録商標);talvosilen(登録商標);およびTimonil(登録商標)。他の商品化されている液体製剤は、保存剤としてソルビン酸またはそのカリウム塩を含んでいる(例えばイブプロフェン液体製剤、モルヒネ液体製剤)。
【0011】
これらの調製物における賦形剤および添加剤は多数なため、これらの製品が投与された際に過敏な患者に立ちはだかるリスクを減少させるために、全ての成分が容器上に列挙されることが推奨される。
【0012】
保存剤である塩化ベンザルコニウムおよびソルビン酸カリウムも、例えば、点鼻液およびスプレーにおいて、広く使用される。最近、塩化ベンザルコニウムとソルビン酸カリウムによって引き起こされた粘膜の損傷に起因する副作用が報告された(非特許文献3参照)。局所的な眼の治療における保存剤の過敏反応に関する限り、第四級アンモニウム(塩化ベンザルコニウム)は一般に刺激性の毒性反応に関連し、一方、有機水銀化合物(チメロサール)およびアルコール(クロロブタノール)はそれぞれアレルギー反応と高い関連性を有する(非特許文献4参照)。パラベンは、皮膚暴露に伴う接触過敏症の多くの場合に関与していることが示されており(非特許文献5参照)、そして、弱いエストロゲン様活性を発揮することも報告されている(非特許文献6および非特許文献7参照)。
【0013】
既知の保存剤がこれらの望ましくない副作用を有するため、十分な有効期間を示し、保存剤の非存在下においてまたは少なくとも比較的低い量の保存剤の存在下において使用中安定性を示す、経口投与用医薬組成物を提供することが望まれている。
【0014】
特許文献6は、NaClの添加によって等張化された、注射目的用の1Lの水における20gの(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール塩酸塩の非経口的投与用組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 02/067651
【特許文献2】WO 03/035053
【特許文献3】WO 2006/002886
【特許文献4】WO 2007/128412
【特許文献5】WO 2007/128413
【特許文献6】WO 2008/110323
【特許文献7】WO 2009/092601
【特許文献8】WO 2009/067703
【特許文献9】US 2007−128412
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】T.M. Tzschentke et al.,Drugs of the future, 2006, 12, 1053−1061
【非特許文献2】Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition, Lippincott Williams & Wilkins, 2005
【非特許文献3】C.Y. Ho et al., Am J Rhinol. 2008, 22(2), 125−9
【非特許文献4】J. Hong et al., Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2009, 9(5), 447−53
【非特許文献5】M.G. Soni et al., Food Chem Toxicol. 2001, 39(6), 513−32
【非特許文献6】S. Oishi, Food Chem Toxicol. 2002, 40(12), 1807−13
【非特許文献7】M.G. Soni et al., Food Chem Toxicol. 2005, 43(7), 985−015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、先行技術の医薬製剤に対して有利な点を有する、タペンタドールの医薬製剤を提供することを目的とする。前記医薬製剤は、保存剤を含む医薬製剤で典型的に観察される保存剤に基づく副作用、例えばアレルギー反応を有するべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、特許請求の範囲の主題によって達成された。
【0019】
タペンタドールそれ自体が保存剤特性を示し、それ故に比較的不安定な組成物、特に水性の液体組成物もしくは半固形組成物を製剤化する場合、一定の有効期間を達成するために、保存剤を完全に省くか、あるいは少なくとも、比較的低い量で存在させることができることが見出された。
【0020】
本発明の第1の態様は、タペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩を含み、経口投与に適合されている水性の医薬組成物に関する。
【0021】
本明細書の目的において、「タペンタドール」という語句には、遊離塩基((1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール)ならびにその任意の生理学的に許容可能な塩、特に塩酸塩((1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール塩酸塩)が含まれる。従って、特に明記しない限り、用語「タペンタドール」は遊離塩基だけでなく任意の生理学的に許容可能な塩も意味する。さらに、特に明記しない限り、全ての量、含有量および濃度はタペンタドール遊離塩基に対する等量である。
【0022】
本発明による組成物は水性である。本明細書の目的において、「水性」という語句は、その含水率が好ましくは、それらの構成要素の多かれ少なかれ明白な吸湿性によって大気から湿らされた固体の医薬剤形の典型的な含水率より高いことを意味する。
【0023】
好ましくは、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1.0重量%、よりさらに好ましくは少なくとも2.0重量%、より一層好ましくは少なくとも3.0重量%、最も好ましくは少なくとも4.0重量%、特に少なくとも5.0重量%である。
【0024】
好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、よりさらに好ましくは少なくとも20重量%、より一層好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%、特に少なくとも50重量%である。
【0025】
別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、35±30重量%、より好ましくは35±25重量%、よりさらに好ましくは35±20重量%、より一層好ましくは35±15重量%、最も好ましくは35±10重量%、特に35±5重量%の範囲内にある。
【0026】
別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、45±30重量%、より好ましくは45±25重量%、よりさらに好ましくは45±20重量%、より一層好ましくは45±15重量%、最も好ましくは45±10重量%、特に45±5重量%の範囲内にある。
【0027】
別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、55±30重量%、より好ましくは55±25重量%、よりさらに好ましくは55±20重量%、より一層好ましくは55±15重量%、最も好ましくは55±10重量%、特に55±5重量%の範囲内にある。
【0028】
別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、65±30重量%、より好ましくは65±25重量%、よりさらに好ましくは65±20重量%、より一層好ましくは65±15重量%、最も好ましくは65±10重量%、特に65±5重量%の範囲内にある。
【0029】
別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、75±24重量%、より好ましくは75±22重量%、よりさらに好ましくは75±20重量%、より一層好ましくは75±15重量%、最も好ましくは75±10重量%、特に75±5重量%の範囲内にある。
【0030】
別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、85±14重量%、は85±12重量%、よりさらに好ましくは85±10重量%、より一層好ましくは85±10重量%、最も好ましくは85±7.5重量%、特に85±5重量%の範囲内にある。
【0031】
さらに別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、95±4.75重量%、より好ましくは95±4.5重量%、よりさらに好ましくは95±4重量%、より一層好ましくは95±3.5重量%、最も好ましくは95±3重量%、特に95±2.5重量%の範囲内にある。
【0032】
好ましい実施形態において、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、75〜99.99重量%、より好ましくは80〜99.98重量%、よりさらに好ましくは85〜99.95重量%、より一層好ましくは90〜99.9重量%、最も好ましくは95〜99.7重量%、特に96.5〜99.5重量%の範囲内にある。
【0033】
好ましい実施形態において、組成物は、15±12mPas、より好ましくは15±10mPas、よりさらに好ましくは15±8mPas、より一層好ましくは15±6mPas、最も好ましくは15±4mPas、特に15±2mPasの範囲内の粘度を有する。
【0034】
別の好ましい実施形態において、組成物は、30±28mPas、より好ましくは30±20mPas、よりさらに好ましくは30±16mPas、より一層好ましくは30±12mPas、最も好ましくは30±8mPas、特に30±4mPasの範囲内の粘度を有する。
【0035】
さらに別の実施形態において、組成物は、60±56mPas、より好ましくは60±40mPas、よりさらに好ましくは60±32mPas、より一層好ましくは60±24mPas、最も好ましくは60±16mPas、特に60±8mPasの範囲内の粘度を有する。
【0036】
さらに別の好ましい実施形態において、組成物は、120±112mPas、より好ましくは120±80mPas、よりさらに好ましくは120±64mPas、より一層好ましくは120±48mPas、最も好ましくは120±32mPas、特に120±16mPasの範囲内の粘度を有する。
【0037】
別の好ましい実施形態において、組成物は、240±224mPas、より好ましくは240±160mPas、よりさらに好ましくは240±128mPas、より一層好ましくは240±96mPas、最も好ましくは240±64mPas、特に240±32mPasの範囲内の粘度を有する。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態において、組成物は、500±400mPas、より好ましくは500±300mPas、よりさらに好ましくは500±200mPas、より一層好ましくは500±150mPas、最も好ましくは500±100mPas、特に500±50mPasの範囲内の粘度を有する。
【0039】
医薬組成物の粘度を測定する方法は当業者に公知である。好ましくは、粘度は室温で測定される。
【0040】
水に加えて、本発明による組成物はさらなる溶剤を含んでいてもよい。
【0041】
さらなる好適な溶剤には、常温または室温で通常液体の、生理学的に許容可能な物質全てが含まれる。好ましくは、さらなる溶剤は水溶性であるか、または水混和性である。さらなる溶剤は、プロピレングリコール、エタノール、ポリ(エチレングリコール)またはPEG、炭酸プロピレン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポロキサマー、グリコフロール、グリセロール、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0042】
さらなる溶剤には、界面活性剤(乳化剤)および/または脂肪が含まれる。
【0043】
好ましい実施形態では、組成物は界面活性剤を含む。好ましい実施形態では、組成物は単一の界面活性剤を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、2種またはそれ以上の界面活性剤の混合物を含む。
【0044】
好ましくは、界面活性剤は少なくとも10の親水‐親油性バランス(HLB)を有する。より好ましくは、親水‐親油性バランス(HLB)は少なくとも12である。最も好ましくは、親水‐親油性バランス(HLB)は14〜16の範囲内にある。
【0045】
界面活性剤は、イオン性界面活性剤、両性界面活性剤または非イオン性界面活性剤であることができる。
【0046】
好ましい実施形態では、界面活性剤はイオン性、特に陰イオン性である。好適な陰イオンのイオン性界面活性剤にはラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)セチルステアリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドキュセートナトリウム);これらの対応するカリウムまたはカルシウム塩が含まれるが、これらに限定はされない。
【0047】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤は非イオン性である。好適な非イオン性界面活性剤には以下が含まれるが、これらに制限はされない:
− ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル(例えばモノ−、トリ−ラウリル、パルミチル、ステアリル、オレイルエステル)、例えば、「ポリソルベート」の名称で公知のタイプや、界面活性剤tween 20[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート]、tween 40[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート]、60[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート]、tween 65[ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート]、tween 80[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート]、tween 85[ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレアート]、tween 21[ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート]およびtween 81[ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレアート]を含む商標名「Tween(登録商標)」で市販されているタイプ;
−ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、好ましくは約8〜約18の炭素原子を有する脂肪酸、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸のポリオキシエチレンエステル、例えば、商標名「Solutol(登録商標)」で公知であり市販されているタイプ;
−α−コハク酸トコフェリルのポリオキシエチレンエステル、例えば、D−アルファ−トコフェリル−PEG−1000−スクシナート(TPGS);
−ポリグリコライズドグリセリド(polyglycolyzed glycerides)、例えば、商標「Gelucire(登録商標)」および「Labrasol(登録商標)」で公知であり市販されているタイプ;
−天然もしくは硬化ヒマシ油およびエチレンオキシドの反応生成物、例えば商標「Cremophor(登録商標)」で公知であり市販されている様々な液体の界面活性剤;
−グリセロール脂肪酸エステル、例えばモノ−、トリ−ラウリル、パルミチル、ステアリル、オレイルエステル、例えば商標「Peceol(登録商標)」で公知であり市販されているグリセリルモノオレアート40。
【0048】
脂肪の例には、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノパルミテート、ステアリン酸、ステアリン酸ジグリコール、グリセロールトリオレエート、カルナウバろう、蜜蝋、セチルステアリルアルコール等が含まれる。
【0049】
しかしながら、好ましくは、水が、本発明による組成物の唯一の液体の要素である。
【0050】
本発明による組成物は経口投与に適合されている。これに関して、経口投与には、口腔を通した全ての投与、例えば経口、舌下腺、バッカル等が含まれる。好ましくは、経口投与は、えん下におけるタペンタドールの全身投与の目的を有する。
【0051】
用語「医薬組成物」には、ヒトまたは動物に投与されるためにカスタマイズされたあらゆる医薬調製物もしくは製剤が含まれる。好ましくは、組成物は1種またはそれ以上の生理学的に許容可能なキャリアー、好ましくは水、および/または賦形剤を含む。医薬組成物は、医薬剤形のサブユニット、例えばカプセルの液体コアであることができる。
【0052】
好ましくは、本発明による組成物は緩衝されており、すなわち、1種またはそれ以上のバッファーおよび緩衝系(すなわち、共役酸‐塩基対)をそれぞれ含む。好ましい緩衝系は、以下の酸に由来する:有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、マンデル酸、クエン酸、酒石酸;あるいは無機酸、例えばリン酸。クエン酸またはクエン酸一水和物が特に好ましい。緩衝系が上記酸のいずれかに由来する場合、緩衝系は前記酸およびその共役塩基から構成される。
【0053】
驚くべきことに、タペンタドールの抗菌活性がpH値に依存することが見出された。
【0054】
好ましくは、組成物は、3.0〜6.5、より好ましくは3.0〜6.0、よりさらに好ましくは3.0〜5.5、より一層好ましくは3.0〜5.0、最も好ましくは3.2〜4.8、特に3.4〜4.6の範囲内のpH値を有する。より高いpH値、例えば3.0〜9.0、3.0〜8.5、3.0〜8.0または3.0〜7.5もまた可能である。
【0055】
好ましい実施形態では、前記組成物は、3.0±1.4又は3.0±1.3、より好ましくは3.0±1.2又は3.0±1.1、よりさらに好ましくは3.0±1.0又は3.0±0.9、より一層好ましくは3.0±0.8又は3.0±0.7、さらに一層好ましくは3.0±0.6又は3.0±0.5、最も好ましくは3.0±0.4又は3.0±0.3、そして特に3.0±0.2又は3.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0056】
好ましい実施形態では、前記組成物は、3.5±1.4又は3.5±1.3、より好ましくは3.5±1.2又は3.5±1.1、よりさらに好ましくは3.5±1.0又は3.5±0.9、より一層好ましくは3.5±0.8又は3.5±0.7、さらに一層好ましくは3.5±0.6又は3.5±0.5、最も好ましくは3.5±0.4又は3.5±0.3、そして特に3.5±0.2又は3.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0057】
好ましい実施形態では、前記組成物は、4.0±1.4又は4.0±1.3、より好ましくは4.0±1.2又は4.0±1.1、よりさらに好ましくは4.0±1.0又は4.0±0.9、より一層好ましくは4.0±0.8又は4.0±0.7、さらに一層好ましくは4.0±0.6又は4.0±0.5、最も好ましくは4.0±0.4又は4.0±0.3、そして特に4.0±0.2又は4.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0058】
好ましい実施形態では、前記組成物は、4.5±1.4又は4.5±1.3、より好ましくは4.5±1.2又は4.5±1.1、よりさらに好ましくは4.5±1.0又は4.5±0.9、より一層好ましくは4.5±0.8又は4.5±0.7、さらに一層好ましくは4.5±0.6又は4.5±0.5、最も好ましくは4.5±0.4又は4.5±0.3、そして特に4.5±0.2又は4.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0059】
好ましい実施形態では、前記組成物は、5.0±1.4又は5.0±1.3、より好ましくは5.0±1.2又は5.0±1.1、よりさらに好ましくは5.0±1.0又は5.0±0.9、より一層好ましくは5.0±0.8又は5.0±0.7、さらに一層好ましくは5.0±0.6又は5.0±0.5、最も好ましくは5.0±0.4又は5.0±0.3、そして特に5.0±0.2又は5.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、前記組成物は、5.5±1.4又は5.5±1.3、より好ましくは5.5±1.2又は5.5±1.1、よりさらに好ましくは5.5±1.0又は5.5±0.9、より一層好ましくは5.5±0.8又は5.5±0.7、さらに一層好ましくは5.5±0.6又は5.5±0.5、最も好ましくは5.5±0.4又は5.5±0.3、そして特に5.5±0.2又は5.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0061】
好ましい実施形態では、前記組成物は、6.0±1.4又は6.0±1.3、より好ましくは6.0±1.2又は6.0±1.1、よりさらに好ましくは6.0±1.0又は6.0±0.9、より一層好ましくは6.0±0.8又は6.0±0.7、さらに一層好ましくは6.0±0.6又は6.0±0.5、最も好ましくは6.0±0.4又は6.0±0.3、そして特に6.0±0.2又は6.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0062】
好ましい実施形態では、前記組成物は、6.5±1.4又は6.5±1.3、より好ましくは6.5±1.2又は6.5±1.1、よりさらに好ましくは6.5±1.0又は6.5±0.9、より一層好ましくは6.5±0.8又は6.5±0.7、さらに一層好ましくは6.5±0.6又は6.5±0.5、最も好ましくは6.5±0.4又は6.5±0.3、そして特に6.5±0.2又は6.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0063】
好ましい実施形態では、前記組成物は、7.0±1.4又は7.0±1.3、より好ましくは7.0±1.2又は7.0±1.1、よりさらに好ましくは7.0±1.0又は7.0±0.9、より一層好ましくは7.0±0.8又は7.0±0.7、さらに一層好ましくは7.0±0.6又は7.0±0.5、最も好ましくは7.0±0.4又は7.0±0.3、そして特に7.0±0.2又は7.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0064】
好ましい実施形態では、前記組成物は、7.5±1.4又は7.5±1.3、より好ましくは7.5±1.2又は7.5±1.1、よりさらに好ましくは7.5±1.0又は7.5±0.9、より一層好ましくは7.5±0.8又は7.5±0.7、さらに一層好ましくは7.5±0.6又は7.5±0.5、最も好ましくは7.5±0.4又は7.5±0.3、そして特に7.5±0.2又は7.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0065】
好ましい実施形態では、前記組成物は、8.0±1.4又は8.0±1.3、より好ましくは8.0±1.2又は8.0±1.1、よりさらに好ましくは8.0±1.0又は8.0±0.9、より一層好ましくは8.0±0.8又は8.0±0.7、さらに一層好ましくは8.0±0.6又は8.0±0.5、最も好ましくは8.0±0.4又は8.0±0.3、そして特に8.0±0.2又は8.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0066】
好ましい実施形態では、前記組成物は、8.5±1.4又は8.5±1.3、より好ましくは8.5±1.2又は8.5±1.1、よりさらに好ましくは8.5±1.0又は8.5±0.9、より一層好ましくは8.5±0.8又は8.5±0.7、さらに一層好ましくは8.5±0.6又は8.5±0.5、最も好ましくは8.5±0.4又は8.5±0.3、そして特に8.5±0.2又は8.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、前記組成物は、9.0±1.4又は9.0±1.3、より好ましくは9.0±1.2又は9.0±1.1、よりさらに好ましくは9.0±1.0又は9.0±0.9、より一層好ましくは9.0±0.8又は9.0±0.7、さらに一層好ましくは9.0±0.6又は9.0±0.5、最も好ましくは9.0±0.4又は9.0±0.3、そして特に9.0±0.2又は9.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0068】
好ましくは、バッファーおよび緩衝系の濃度をそれぞれ、好ましくはクエン酸またはその一水和物の濃度を、十分な緩衝能力を提供するために調節する。
【0069】
好ましくは、バッファーおよび緩衝系の含有量はそれぞれ、好ましくはクエン酸またはその一水和物は、組成物の全重量を基準として、0.0001〜5.0重量%、より好ましくは0.0005〜4.5重量%、さらに好ましくは0.001〜4.0重量%、さらに好ましくは0.005〜3.5重量%、最も好ましくは0.01〜3.0重量%、特に0.05〜2.5重量%の範囲内にある。
【0070】
好ましい実施形態において、バッファーおよび緩衝系はそれぞれ、好ましくはクエン酸またはその一水和物は、組成物の全体積を基準として、1.0±0.6mg/mL、より好ましくは1.0±0.5mg/mL、さらにより好ましくは1.0±0.4mg/mL、より一層好ましくは1.0±0.3mg/mL、最も好ましくは1.0±0.2mg/mL、そして特に1.0±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0071】
別の好ましい実施形態において、バッファーおよび緩衝系はそれぞれ、好ましくはクエン酸またはその一水和物は、組成物の全体積を基準として、1.5±0.6mg/mL、より好ましくは1.5±0.5mg/mL、さらにより好ましくは1.5±0.4mg/mL、より一層好ましくは1.5±0.3mg/mL、最も好ましくは1.5±0.2mg/mL、そして特に1.5±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0072】
さらに別の好ましい実施形態において、バッファーおよび緩衝系はそれぞれ、好ましくはクエン酸またはその一水和物は、組成物の全体積を基準として、2.0±0.6mg/mL、より好ましくは2.0±0.5mg/mL、さらにより好ましくは2.0±0.4mg/mL、より一層好ましくは2.0±0.3mg/mL、最も好ましくは2.0±0.2mg/mL、そして特に2.0±0.1 mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0073】
さらに別の好ましい実施形態において、バッファーおよび緩衝系はそれぞれ、好ましくはクエン酸またはその一水和物は、組成物の全体積を基準として、2.5±0.6mg/mL、より好ましくは2.5±0.5mg/mL、さらにより好ましくは2.5±0.4mg/mL、より一層好ましくは2.5±0.3mg/mL、最も好ましくは2.5±0.2mg/mL、そして特に2.5±0.1 mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0074】
多プロトン酸が1を越える緩衝系を形成できることは、当業者にはよく知られている。例えば、クエン酸は、共役酸−塩基対、クエン酸−二水素シトレート、二水素シトレート−水素シトレートおよび水素シトレート−シトレートを形成するような三塩基酸である。すなわち、クエン酸、二水素シトレートおよび水素シトレートのいずれも、共役塩基を有する緩衝系の酸であることができる。本明細書の目的において、「バッファーおよび緩衝系は、それぞれ」という表現は、好ましくは酸およびその共役塩基の両方の量を表す。さらに、緩衝系、例えば共役系クエン酸/クエン酸二水素ナトリウムは、クエン酸および適当な量の水酸化ナトリウムを添加するか、またはクエン酸およびそのようなものとしてのクエン酸二水素ナトリウムを添加することによって構築できることが、当業者にはよく知られている。
【0075】
好ましい実施形態において、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.01〜50重量%、より好ましくは0.05〜45重量%、さらにより好ましくは0.1〜40重量%、より一層好ましくは0.5〜35重量%、最も好ましくは1.0〜30重量%、特に5.0〜25重量%の範囲内にある。
【0076】
好ましい実施形態において、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.0001〜5.0重量%、より好ましくは0.0005〜4.5重量%、さらにより好ましくは0.001〜4.0重量%、より一層好ましくは0.005〜3.5重量%、最も好ましくは0.01〜3.0重量%、特に0.05〜2.5重量%の範囲内にある。好ましい実施形態において、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.01〜3.0重量%、より好ましくは0.005〜2.8重量%、さらにより好ましくは0.1〜2.6重量%、より一層好ましくは0.2〜2.4重量%、最も好ましくは0.3〜2.2量%、特に0.4〜2.0重量%の範囲内にある。
【0077】
好ましくは、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、200mg/mL以下、より好ましくは150mg/mL以下、さらにより好ましくは100mg/mL以下、より一層好ましくは75mg/mL以下、最も好ましくは50mg/mL以下、特に30mg/mL以下である。
【0078】
好ましくは、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、0.5〜200mg/mLの範囲内、より好ましくは1.0〜150mg/mLの範囲内、さらにより好ましくは1.5〜100mg/mLの範囲内、より一層好ましくは2.0〜75mg/mLの範囲内、最も好ましくは2.5〜50mg/mLの範囲内、特に3.0〜25mg/mLの範囲内である。
【0079】
好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度、組成物の全体積を基準として、20mg/mL以下である。
【0080】
タペンタドールの抗菌効果、その保存剤効果は、pH値の相関的要素であることが見出された。従って、特定のpH値では、タペンタドールの特定の最小濃度が所望の保存効果を達成するために既に十分であるが、一方で、別のpH値では、同一の保存効果を達成するためにはタペンタドールの別の最小濃度が必要である。特定のpH値のためのこの最小濃度は、日常的な実験作業によって決定することができる。
【0081】
好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、20±6mg/mL、より好ましくは20±5mg/mL、さらにより好ましくは20±4mg/mL、より一層好ましくは20±3mg/mL、最も好ましくは20±2mg/mL、特に20±1mg/mLの範囲内である。
【0082】
好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、17.5±6mg/mL、より好ましくは17.5±5mg/mL、さらにより好ましくは17.5±4mg/mL、より一層好ましくは17.5±3mg/mL、最も好ましくは17.5±2mg/mL、特に17.5±1mg/mLの範囲内である。
【0083】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、15±6mg/mL、より好ましくは15±5mg/mL、さらにより好ましくは15±4mg/mL、より一層好ましくは15±3mg/mL、最も好ましくは15±2mg/mL、特に15±1mg/mLの範囲内である。
【0084】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、12.5±6mg/mL、より好ましくは12.5±5mg/mL、さらにより好ましくは12.5±4mg/mL、より一層好ましくは12.5±3mg/mL、最も好ましくは12.5±2mg/mL、特に12.5±1mg/mLの範囲内である。
【0085】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、10±6mg/mL、より好ましくは10±5mg/mL、さらにより好ましくは10±4mg/mL、より一層好ましくは10±3mg/mL、最も好ましくは10±2mg/mL、特に10±1mg/mLの範囲内である。
【0086】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、7.5±6mg/mL、より好ましくは7.5±5mg/mL、さらにより好ましくは7.5±4mg/mL、より一層好ましくは7.5±3mg/mL、最も好ましくは7.5±2mg/mL、特に7.5±1mg/mLの範囲内である。
【0087】
さらなる好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、4±3mg/mL、より好ましくは4±2.5mg/mL、さらにより好ましくは4±2mg/mL、より一層好ましくは4±1.5mg/mL、最も好ましくは4±1mg/mL、特に4±0.5mg/mLの範囲内である。
【0088】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度、組成物の全体積を基準として、20mg/mL以上である。
【0089】
好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、22.5±6mg/mL、より好ましくは22.5±5mg/mL、さらにより好ましくは22.5±4mg/mL、より一層好ましくは22.5±3mg/mL、最も好ましくは22.5±2mg/mL、特に22.5±1mg/mLの範囲内である。
【0090】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、25±6mg/mL、より好ましくは25±5mg/mL、さらにより好ましくは25±4mg/mL、より一層好ましくは25±3mg/mL、最も好ましくは25±2mg/mL、特に25±1mg/mLの範囲内である。
【0091】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、27.5±6mg/mL、より好ましくは27.5±5mg/mL、さらにより好ましくは27.5±4mg/mL、より一層好ましくは27.5±3mg/mL、最も好ましくは27.5±2mg/mL、特に27.5±1mg/mLの範囲内である。
【0092】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、30±6mg/mL、より好ましくは30±5mg/mL、さらにより好ましくは30±4mg/mL、より一層好ましくは30±3mg/mL、最も好ましくは30±2mg/mL、特に30±1mg/mLの範囲内である。
【0093】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、32.5±6mg/mL、より好ましくは32.5±5mg/mL、さらにより好ましくは32.5±4mg/mL、より一層好ましくは32.5±3mg/mL、最も好ましくは32.5±2mg/mL、特に32.5±1mg/mLの範囲内である。
【0094】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、35±6mg/mL、より好ましくは35±5mg/mL、さらにより好ましくは35±4mg/mL、より一層好ましくは35±3mg/mL、最も好ましくは35±2mg/mL、特に35±1mg/mLの範囲内である。
【0095】
好ましい実施形態では、組成物は保存剤を含まない。明細書の目的において、「保存剤」は、好ましくは、微生物分解または微生物増殖から医薬組成物を保護するために、それらに通常添加される任意の物質を指す。この点に関して、典型的には微生物増殖が本質的な役割を果たし、すなわち、保存剤は、微生物汚染を回避するという主要な目的を果たす。副次的な態様として、活性成分および賦形剤に対する微生物の影響を避けること、すなわち、微生物分解を回避することが望ましいかもしれない。
【0096】
保存剤の代表的な例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロルブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸およびソルビン酸カリウムが含まれる。
安息香酸ナトリウムは特に好ましい。
【0097】
タペンタドールの含有量が、その保存剤特性により所望の有効期間または使用中安定性が薬剤自体の存在によって達成できるほど十分に高い場合、組成物には保存剤が完全に存在しないことが好ましい。好ましくは、これらの状況下では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、少なくとも10mg/mL、少なくとも12.5mg/mL、少なくとも15mg/mLまたは少なくとも17.5mg/mLである。
【0098】
水性組成物のpH値が、その保存剤特性により所望の有効期間または使用中安定性が薬剤自体の存在によって達成できるほど十分に高い場合、組成物には保存剤が完全に存在しないことも好ましい。好ましくは、これらの状況下では、組成物のpH値は、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、または少なくとも4.5mg/mLである。
【0099】
本明細書の目的において、好ましくは、有効期間と使用中安定性とは区別される。有効期間は、好ましくは、医薬組成物の閉じた容器の保管安定性を表す。使用中安定性は、好ましくは、最初に利用された多回投与用調製物を含む保管容器を表す。典型的には、多回投与用調製物の有効期間は、その使用中安定性よりもはるかに長い。
【0100】
他の好ましい実施態様において、前記組成物はさらに、好ましくは以下からなる群から選択される保存剤を含む:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロルブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸およびソルビン酸カリウム。
【0101】
驚くべきことに、安息香酸ナトリウムを含有する水性タペンタドール組成物が、パラベンを含有する水性タペンタドール組成物と比較して、50℃での保存効果の減少が低いことおよび分解産物が少ないことが見出された。
【0102】
したがって、安息香酸ナトリウムは本発明において特に好ましい保存剤である。
【0103】
好ましくは、保存剤の含有量は、組成物の全重量を基準として、最大で5.0重量%、より好ましくは最大で4.0重量%、よりさらに好ましくは最大で3.0重量%、より一層好ましくは最大で2.0重量%、最も好ましくは最大で1.0重量%、特に最大で0.5重量%である。
【0104】
好ましい実施形態において、保存剤、好ましくは安息香酸またはそのナトリウム塩は、組成物の全体積を基準として、1.0±0.6mg/mL、より好ましくは1.0±0.5mg/mL、さらにより好ましくは1.0±0.4mg/mL、より一層好ましくは1.0±0.3mg/mL、最も好ましくは1.0±0.2mg/mL、そして特に1.0±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0105】
好ましい実施形態において、保存剤、好ましくは安息香酸またはそのナトリウム塩は、組成物の全体積を基準として、1.5±0.6mg/mL、より好ましくは1.5±0.5mg/mL、さらにより好ましくは1.5±0.4mg/mL、より一層好ましくは1.5±0.3mg/mL、最も好ましくは1.5±0.2mg/mL、そして特に1.5±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0106】
さらに別の好ましい実施形態において、保存剤、好ましくは安息香酸またはそのナトリウム塩は、組成物の全体積を基準として、2.0±0.6mg/mL、より好ましくは2.0±0.5mg/mL、さらにより好ましくは2.0±0.4mg/mL、より一層好ましくは2.0±0.3mg/mL、最も好ましくは2.0±0.2mg/mL、そして特に2.0±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0107】
さらに別の好ましい実施形態において、保存剤、好ましくは安息香酸またはそのナトリウム塩は、組成物の全体積を基準として、2.5±0.6mg/mL、より好ましくは2.5±0.5mg/mL、さらにより好ましくは2.5±0.4mg/mL、より一層好ましくは2.5±0.3mg/mL、最も好ましくは2.5±0.2mg/mL、そして特に2.5±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0108】
タペンタドールの含有量が、その保存剤特性により所望の有効期間または使用中安定性が薬剤自体の存在によって達成できないほど非常に低い場合、組成物に保存剤が追加的に存在することが好ましい。上述のように、タペンタドールの保存剤特性はpH値の相関的要素であり、従って、1つのpH値では、別の保存剤の添加が必要かもしれないが、別のpH値では、それを完全に省略することができる。好ましくは、これらの状況下では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、最大で12.5mg/mL、最大で10mg/mL、最大で8mg/mL、最大で7.5mg/mL、最大で5.0mg/mL、最大で4.0mg/mL、最大で3.0mg/mLまたは最大で2.5mg/mLである。
【0109】
好ましい一実施形態において、タペンタドールと保存剤との相対重量比は、10:1〜0.25:1、より好ましくは9:1〜0.33:1、さらに好ましくは8:1〜0.5:1、さらに好ましくは7:1〜0.66:1、最も好ましくは6:1〜0.75:1、特に5:1〜1:1の範囲内である。好ましくは、タペンタドールと保存剤との相対重量比は、5:1〜1:1、より好ましくは4.5:1〜1:1、さらに好ましくは4:1〜1:1、さらに好ましくは3.5:1〜1:1、最も好ましくは3:1〜1:1、特に2.5:1〜1:1の範囲内である。
【0110】
好ましくは、タペンタドールの濃度および保存剤の濃度の合計は、組成物の全体積を基準として、50mg/mL以下、好ましくは20mg/mL以下である。
【0111】
好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度および保存剤の濃度の合計は、組成物の全体積を基準として、4.0±3.5mg/mL、より好ましくは4.0±3.0mg/mL、さらにより好ましくは4.0±2.5mg/mL、より一層好ましくは4.0±2.0mg/mL、最も好ましくは4.0±1.5mg/mL、特に4.0±1.0mg/mLの範囲内である。
【0112】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度および保存剤の濃度の合計は、組成物の全体積を基準として、6.0±3.5mg/mL、より好ましくは6.0±3.0mg/mL、さらにより好ましくは6.0±2.5mg/mL、より一層好ましくは6.0±2.0mg/mL、最も好ましくは6.0±1.5mg/mL、特に6.0±1.0mg/mLの範囲内である。
【0113】
更に別の実施形態では、タペンタドールの濃度および保存剤の濃度の合計は、組成物の全体積を基準として、8.0±3.5mg/mL、より好ましくは8.0±3.0mg/mL、さらにより好ましくは8.0±2.5mg/mL、より一層好ましくは8.0±2.0mg/mL、最も好ましくは8.0±1.5mg/mL、特に8.0±1.0mg/mLの範囲内である。
【0114】
好ましい実施形態では、保存剤の含有量は、タペンタドールの非存在下で医薬組成物を、その有効期間に関して、または多回投与用調製物の場合には場合によりその使用中安定性に関して十分に保存するために欧州薬局方に従って必要とされる含有量の、最大で90%、より好ましくは最大で80%、さらにより好ましくは最大で70%、より一層好ましくは最大で60%、最も好ましくは最大で50%、特に最大で40%である。欧州薬局方による十分な保存は、好ましくは、実験欄において定義されるとおりである(例えば、カビおよび酵母に関しては、14日後にlogが1減少し、28日後に増加はない)。
【0115】
好ましくは、本発明による組成物は、欧州薬局方の要件、好ましくは2010年バージョンにおける要件を満たす抗菌ロバストネス(antimicrobial robustness)を示す。好ましくは、抗菌ロバストネスは、大腸菌、S.アウレウス、Ps.エルジノーサ、S.spp、C.アルビカンスおよび/またはA.ニガーに対して達成され、好ましくは14日後にlogが1減少し、28日後に増加はないという要件を満たす。特に好ましい実施態様において、抗菌ロバストネスは細菌に対して達成され、14日後にlogが3減少し、カビおよび酵母に対して14日後にlogが1減少するという要件を満たす。
【0116】
好ましくは、本発明による組成物は、加速保存条件下において、少なくとも1月、より好ましくは少なくとも2月、さらにより好ましくは少なくとも3月、より一層好ましくは少なくとも4月、最も好ましくは少なくとも5月、特に少なくとも6月の有効期間を示す。好ましくは、有効期間は、特に実験欄に記載のように、欧州薬局方に従って決定される。加速保存条件は、好ましくは、40℃/75%RHを意味する。
【0117】
好ましくは、本発明による組成物は、周囲条件下において、少なくとも6月、より好ましくは少なくとも12月、さらにより好ましくは少なくとも15月、より一層好ましくは少なくとも18月、最も好ましくは少なくとも21月、特に少なくとも24月の有効期間を示す。
【0118】
好ましくは、本発明による組成物は、周囲条件下において、少なくとも1週、より好ましくは少なくとも2週、さらにより好ましくは少なくとも3週、より一層好ましくは少なくとも4週、最も好ましくは少なくとも5週、特に少なくとも6週の使用中安定性を示す多回投与用調製物である。
【0119】
好ましくは、本発明による組成物は液体かまたは半固形である。
【0120】
好ましくは、本発明による組成物は、シロップ剤、滴剤、液剤、分散剤、懸濁剤および乳剤からなる群から選ばれる。乳剤は、o/w−タイプ(水中油)またはw/o−タイプ(油中水)であることができる。
【0121】
医薬組成物が液剤である場合、それは、芳香水剤、水性酸、希釈された酸、灌注液、浣腸剤、含嗽剤、洗口剤、ジュース剤および洗浄液から成る群から選択されてもよい。
【0122】
好ましくは、組成物は、シロップ剤、蜜剤、漿剤およびゼリー剤を包含する甘味および他の粘着性水溶液の群に属する。
【0123】
本発明による組成物の他の例にはコロジオン剤、エリキシル剤、グリセリン剤、リニメント剤および酒精剤が含まれる。
【0124】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は、乳剤であり、好ましくは、慣用のエマルション、マルチプルエマルション、マイクロエマルションおよびリポソームからなる群から選択される乳剤である。
【0125】
別の好ましい実施形態では、本発明による組成物は、懸濁剤、好ましくは徐放性懸濁剤、ゲル剤およびマグマ剤ならびにローション剤から成る群から選択される懸濁剤である。
【0126】
好ましくは、組成物は多回投与用形態であり、すなわち1回を越える投与のためにカスタマイズされている。
【0127】
本明細書の目的において、「多回投与用」とは、好ましくは、組成物が1を越える投薬単位を包含することを意味する。
【0128】
例えば、組成物が多回投与用の経口液剤である場合、その全体積は、典型的に1回に経口投与されるべき体積を越えるものである。あるいは、多回投与用の経口液剤は、典型的には数日を包含する治療期間にわたって投与されるための多数の投薬単位に分けられるようにカスタマイズされている。例えば、保管容器の中に含まれる多回投与用経口剤形が250mLの全体積を有し、処方された投薬単位が1日1回25mLである場合には、治療期間の1日目に患者は25mLを取り、その結果225mLが保存容器に残り、治療期間の2日目に患者はさらに25mLをとり、その結果200mLが保管容器に残り、10日目に全量が患者によって取られるまで、同様である。
【0129】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は、レディー・ツー・ユース(ready to use)型であり、すなわち、患者に経口で投与される前に、特別の処理段階、例えば溶剤への溶解を行う必要がない。
【0130】
あるいは本発明による水性組成物が、最初の使用の前に適当な量の水に溶解もしくは分散させるための乾燥粉末の形態の前駆体として商品化できることは、当業者には理解される。
【0131】
好ましくは、本発明による組成物はさらに味増強成分を含む。
【0132】
好ましい実施形態では、前記味増強成分は少なくとも1種の甘味剤、好ましくはシクラマート(E 952)、サッカリン(E 954)もしくはナトリウムサッカリン、アスパルテーム(E 951)、スクラロース(E 955)、ネオテーム、ソーマチン(E 957)、ネオヘスペリジン(E 959)、アセスルファムカリウム(アセスルファムK、E 950)およびアセスルファム−アスパルテーム塩(E 962)、およびソルビトール(E 420)からなる群から選択される甘味剤を含む。スクラロースが特に好ましい。
【0133】
好ましくは、甘味剤の含有量は、組成物の全重量を基準として、好ましくは≦20重量%、より好ましくは≦15重量%、さらにより好ましくは≦10重量%、最も好ましくは≦5.0重量%、特に≦1.0重量%である。
【0134】
好ましい実施形態では、甘味剤、好ましくはスクラロースの濃度は、組成物の全体積を基準として、2.0±1.5mg/mL、より好ましくは2.0±1.25mg/mL、さらにより好ましくは2.0±1.0mg/mL、より一層好ましくは2.0±0.75mg/mL、最も好ましくは2.0±0.5mg/mL、特に2.0±0.25mg/mLの範囲内である。
【0135】
好ましい実施形態では、甘味剤、好ましくはスクラロースの濃度は、組成物の全体積を基準として、2.5±1.5mg/mL、より好ましくは2.5±1.25mg/mL、さらにより好ましくは2.5±1.0mg/mL、より一層好ましくは2.5±0.75mg/mL、最も好ましくは2.5±0.5mg/mL、特に2.5±0.25mg/mLの範囲内である。
【0136】
好ましい実施形態では、味増強成分は、少なくとも1種の矯味矯臭剤を含む。矯味矯臭剤は当業者に知られている。これに関連して、例えば、欧州委員会の「Decision of the Commission concerning a register of flavouring agents used in or on foodstuffs, of 23 February 1999; last consolidated version dated 29.03.06」を参照することができる。果物の天然のもしくはネイチャーアイデンティカルの矯味矯臭剤が特に好ましい。好適な矯味矯臭剤の例には、オレンジフレーバー、ブラッドオレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ストロベリーフレーバー、ラズベリーフレーバー、クロフサスグリフレーバー、アカフサスグリフレーバー、パイナップルフレーバー、ブルーベリーフレーバー、チェリーフレーバー、クルマバソウフレーバー、バニラフレーバーおよびこれらの混合物、例えばワイルドベリーフレーバーまたはストロベリー−バニラフレーバーが含まれる。ラズベリーフレーバーが特に好ましい。
【0137】
好ましい実施形態では、矯味矯臭剤、好ましくはラズベリーフレーバーの濃度は、組成物の全体積を基準として、2.0±1.5mg/mL、より好ましくは2.0±1.25mg/mL、さらにより好ましくは2.0±1.0mg/mL、より一層好ましくは2.0±0.75mg/mL、最も好ましくは2.0±0.5mg/mL、特に2.0±0.25mg/mLの範囲内である。
【0138】
組成物は、湿潤剤、乳化剤、等張化剤、界面活性剤成分、可溶化剤、増粘剤、着色剤および酸化防止成分を含む群から選択される1種またはそれ以上のさらなる賦形剤を含んでいてもよい。
【0139】
本発明の液体組成物には、湿潤剤または界面活性剤成分が含まれることができ、使用される場合、それは1種またはそれ以上の第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよび塩化セチルピリジニウム;TPGS、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えばノノキシノール9、ノノキシノール10およびオクトキシノール9;ポロキサマー類(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンブロックコポリマー);ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび油、例えば、ポリオキシエチレン(8)カプリル酸/カプリン酸モノ−およびジグリセリド、ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油およびポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレン(20)セトステアリルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばポリオキシエチレン(40)ステアレート;ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリソルベート20およびポリソルベート80;プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えば、プロピレングリコールラウレート;ラウリル硫酸ナトリウム;脂肪酸およびその塩類、例えばオレイン酸、オレイン酸ナトリウムおよびトリエタノールアミンオレアート;グリセリル脂肪酸エステル、例えばモノステアリン酸グリセリン;ソルビタンエステル、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノパルミテートおよびソルビタンモノステアレート;チロキサポール;レシチン;ステアリルトリエタノールアミン;ラウリルアミノプロピオン酸;およびこれらの混合物を含む。そのような界面活性剤成分または湿潤剤は、存在する場合、典型的には、組成物の全重量の約0.25重量%〜約15重量%、好ましくは約0.4重量%〜約10重量%、そしてより好ましくは約0.5重量%〜約5重量%を一緒に形成する。
【0140】
増粘剤または粘度増強剤は、一般に液体組成物を濃厚化するために含ませることができ、これは典型的には、組成物の口当たりを改善し、および/または胃腸管の内面を覆うのに役立つ。任意の好適な増粘剤を本発明の組成物に含ませることができるが、好ましい増粘剤は、使用される場合、アラビアゴム、アルギン酸ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウムもしくはナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、グリセリン、ゼラチン、ガーゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、炭酸プロピレン、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、トラガントおよびキサンタンガム、およびこれらの任意の組み合わせのうちの1種またはそれ以上を含む。より好ましい増粘剤は、グリセリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびキサンタンガム、ならびにこれらの任意の組み合わせである。そのような増粘剤は、存在する場合、典型的には、組成物の全重量の約0.1重量%〜20重量%、好ましくは約0.3重量%〜約15重量%、そしてより好ましくは約0.5重量%〜4重量%を形成する。
【0141】
着色剤は、含まれた場合、より美的なそして/または特色のある外観を組成物に付与することができる。本発明へ包含されるために望ましい着色剤は1つ以上の水溶性合成有機食品添加剤(例えば食用色素、例えば食用赤色色素2号および3号、食用黄色色素4号および5号、食用青色色素1号および2号)、不水溶性のレーキ色素(例えば、上記の水溶性合成有機食品添加剤のアルミニウム塩等)および天然顔料(例えばβ−カロテン、葉緑素、弁柄など)である。そのような着色剤は、存在する場合、典型的には、組成物の全重量の約0.001重量%〜1重量%、好ましくは約0.001重量%〜約0.5重量%、そしてより好ましくは約0.0075重量%〜0.25重量%を形成する。
【0142】
使用される場合、好適な抗酸化成分の例には、下記のうちの1つまたはそれ以上が含まれる:亜硫酸塩;アスコルビン酸;アスコルビン酸塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウムまたはアスコルビン酸カリウム);パルミチン酸アスコルビル;フマル酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはそのナトリウムもしくはカルシウム塩;トコフェロール;没食子酸塩(例えば没食子酸プロピル、没食子酸オクチルまたは没食子酸ドデシル);ビタミンE;およびこれらの混合物。抗酸化成分は、液体組成物に長期の安定性を付与する。抗酸化成分の添加は、組成物の安定性を増強し保証するのを助けることができ、そして40℃で6か月後でさえ組成物を安定にする。抗酸化成分(存在する場合)の好適な量は、組成物の全重量を基準として、約0.01重量%〜約3重量%、好ましくは約0.05重量%〜約2重量%である。
【0143】
液体キャリアに一般に不溶性の活性成分もしくは他の賦形剤のより均一な分散を促進するために、可溶化剤および乳化剤を含むことができる。好適な乳化剤(使用される場合)の例には、例えば、ゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アラビアゴム、トラガカントゴム、ツノマタ、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコールおよびこれらの混合物が含まれる。好ましくは、可溶化剤はグリセリンを含む。可溶化剤または乳化剤は、概して活性成分、すなわちタペンタドールを溶解もしくは分散するのに十分な量でキャリアー内に存在する。可溶化剤または乳化剤が含まれる場合の典型的な量は、組成物の全重量の約1重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約65重量%、そしてより好ましくは約25重量%〜約55重量%である。
【0144】
好適な等張化剤(使用される場合)には、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール、D‐ソルビトール、グルコースおよびこれらの混合物が含まれる。等張化剤(含まれる場合)の好適な量は、典型的には、組成物の全重量の約0.01重量%〜約15重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約4重量%、そしてより好ましくは約0.5重量%〜約3重量%である。
【0145】
本発明の組成物に関する特に好ましい実施形態E〜Eを、以下の表にまとめる:
【0146】
【表1】

本発明の組成物に関する特に好ましい実施形F〜Fを、以下の表にまとめる:
【0147】
【表2】

本発明のさらなる態様は、本発明の医薬組成物を含む医薬剤形に関する。本発明による組成物に関して上述されたすべての好ましい実施形態は、本発明の剤形にも当てはまる。
【0148】
好ましくは、剤形は、経口液剤、経口ゲル剤、懸濁剤、乳剤、液体もしくはゲル充填カプセル剤、液体充填ロゼンジ、計量された液体の投与デバイス、アトマイザー、ネブライザー、スプレー剤および液体放出食用カプセルからなる群から選択される。
【0149】
固体の剤形と比較して、液体の剤形はいくつかの有利な点を有する。それらは、例えば、患者の体重(これは小児患者において特に重要になり得る)に応じて、正確な用量であることができる。さらに、それらは、例えば患者が幼い場合または呑み込むことに問題がある場合、プローブによって投与することができる。
【0150】
更に、液体の剤形はより速い放出を有する傾向があり、すなわち、血清または血漿中の活性成分の濃度が、固体の剤形(たとえ当該固体剤形が即時放出剤形(IR)として認められる場合であっても)の投与後よりも、早く増加する(急速な発現)。疼痛の緩和ができるだけ速く達成されるので、そのような急速な発現は疼痛の治療において特に望ましい。
【0151】
好ましくは、本発明による剤形は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日に5回、1日に6回の投与、またはさらに頻繁な投与にさえも適合する。
【0152】
好ましい実施態様において、本発明の剤形は、小児患者への投与に適合する。明細書の目的において、小児患者には好ましくは幼児、子供および若者が包含される。好ましくは、そのような患者の年齢の上限は12、13、14、15、16、17、18、19、20または21である。
【0153】
この点に関して、薬剤承認当局は小児患者用薬剤における保存剤の存在に関してより厳格な基準を設定しているので、タペンタドールの驚くべき保存剤特性はさらに有益である。さらに、タペンタドールが重度の障害を患う患者における疼痛を治療するために、例えば癌性疼痛を治療するために適しているので、小児患者を含むこのような患者は通常、重度の副作用を有する他の薬剤、例えば化学療法剤で同時に治療される。これらの状況下では、回避可能な場合、そのような小児患者を保存剤に暴露させないほうがさらに望ましい。
【0154】
本発明のさらなる態様は、疼痛の治療において使用するための、上記のような本発明の医薬組成物または上記のような本発明の医薬剤形に関する。
【0155】
本発明のさらに別の態様は、疼痛の治療のための上記のような本発明の医薬組成物または上記のような本発明の医薬剤形を製造するためのタペンタドールの使用に関する。
【0156】
本発明のさらに別の態様は、上記のような本発明の医薬組成物または上記のような本発明の医薬剤形をそれを必要とする対象に経口投与することを含む、疼痛の治療方法に関する。
【0157】
好ましくは、疼痛は、炎症性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、内臓痛、片頭痛および癌性疼痛からなる群から選択される。
【0158】
本発明の別の態様は、保存剤としてのタペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩の使用に関する。
【実施例】
【0159】
以下の例は、本発明をさらに例証するが、本発明の範囲を限定するものとして解してはならない。
【0160】
例1:
タペンタドール塩酸塩の抗菌有効濃度の決定
タペンタドール塩酸塩が10mg/mL遊離塩基の濃度で、高い抗菌活性および高い酵母に対する活性を示すことが最初の試験で明らかになった。かび(アスペルギルス・ニガー)に対する活性はそれより低いが、なおも欧州薬局方の要件の制限内にある。アスペルギルス・ニガーに対するタペンタドール塩酸塩の活性を、緩衝系としてのクエン酸ならびにpHを調節するための塩酸および水酸化ナトリウムを含む製剤において、より低い薬剤濃度ならびにpH4.0および5.0で評価した。
【0161】
結果:
pH5において、14および28日後にpH4におけるよりも良好なタペンタドール塩酸塩の抗菌活性が存在する(表1を参照)。
【0162】
【表3】

経口液剤に関する欧州薬局方の要件(カビA.ニガーに関して14日後にlogが1減少し、28日後に増加はない)は、8mg/mL以上のタペンタドール濃度に関してはpH4で、4mg/mL以上の濃度に関してはpH5で満たされる。
【0163】
結論:
アスペルギルス・ニガーに関しては、pH4で、8mg/mLのタペンタドール最小濃度が、欧州薬局方の要件を満たすために必要である。タペンタドールの抗菌効果に関して、pHに依存して4〜8mg/mLの濃度限界が存在する。
【0164】
例2:
20mg/mLのタペンタドール経口液剤の抗菌ロバストネス試験
タペンタドールの20mg/mLの液剤を抗菌ロバストネス試験に付した。原体タペンタドール塩酸塩が保存剤として作用するので、製剤の抗菌活性を、100%および90%の原体で、3つの異なるpHレベル(標的、上限および下限−3.5−4−4.5)で決定した。以下の組成の製剤を抗菌ロバストネス試験に使用した(表2):
【0165】
【表4】

試験結果より、3つ全ての試験pHレベルにおいて、90%というより低い濃度であっても、20mg/mLのタペンタドール経口液剤が高い抗菌効果および高いC・アルビカンスの増殖阻害効果を有することが明らかになった。A.ニガーにおける効果はそれより低いが、欧州薬局方および米国薬局方の要件を両方の濃度に関して満たしており、これは、保存剤としてのタペンタドール塩酸塩の全般にわたるスペクトルを示している。
【0166】
例3:
4mg/mLタペンタドール経口液剤(より低い濃度の安息香酸ナトリウム)の抗菌ロバストネス試験
タペンタドールの4mg/mLの液剤も抗菌ロバストネス試験に付した。この濃度では、原体タペンタドール塩酸塩の抗菌効果は十分に明らかでない。したがって、安息香酸ナトリウムを製剤において保存剤として使用した。標的pHの4で100%の安息香酸ナトリウムにおいて、および3.5と4.5のpH限界で80%において、製剤の抗菌活性を決定した。
【0167】
以下の組成の製剤を抗菌ロバストネス試験に使用した(表3):
【0168】
【表5】

試験結果より、1.77mg/mLの安息香酸ナトリウムを含む4mg/mLタペンタドール経口液剤は、標的pHで、14日目〜28日目までPs.エルジノーサの増加が観察されたので、欧州薬局方および米国薬局方の要件を満たさなかった。
【0169】
前記のpH限界で80%保存剤を含む2つの製剤は、上記要件を満たしたが、大腸菌に対して、得られたlog減少3.3はボーダーラインである。
【0170】
例4:
4mg/mLのタペンタドール経口液剤(より高い濃度の安息香酸ナトリウム)の抗菌ロバストネス試験
得られた結果に基づいて、1.77mg/mLの安息香酸ナトリウムの代わりに2.36mg/mLというより高い保存剤濃度を含む製剤を使用して試験を繰り返した。
【0171】
例3に関する上記試験を、4mg/mLのタペンタドールおよび2.36mg/mLの安息香酸ナトリウム(2mg/mLの安息香酸に相当)の製剤を使用して繰り返した。標的pHの4で100%の安息香酸ナトリウムにおいて、および3.5と4.5のpH限界で80%において、製剤の抗菌活性を決定した。
【0172】
以下の組成の製剤を抗菌ロバストネス試験に使用した(表4):
【0173】
【表6】

試験結果より、米国薬局方および欧州薬局方からの全ての要件が、標的pH4および100%安息香酸ナトリウム、ならびに他の2つの製剤(80%安息香酸ナトリウムでpH限界)で満たされることが明らかとなった。したがって、2.36mg/mLの安息香酸ナトリウム(2mg/mLの安息香酸に相当)が、4mg/mLのタペンタドール塩酸塩経口液剤に抗菌効果を付与するのに十分であると結論付けることができる。
【0174】
例5:
20mg/mLのタペンタドール経口液剤を用いた使用中安定性試験
多回投与用剤形としての使用が意図されるタペンタドールの経口液剤について、使用中安定性試験を、微生物安定性に焦点を当てて行った。従って、4週の期間内に、約1mLの製品を、患者にとっての家庭での条件を擬態する非管理環境において、全ての実行日に2回取り出した。試験は、総量10本のボトルで行なわれた。液剤を代表的な方法(計量ピペット)で除去し、ボトルを各除去後に室温で保管した。4週の期間の後、微生物数の計測を、全ての試験ボトルの残余溶液において行った。
【0175】
微生物増殖は全てのボトルに関して観察されず、これは、20mg/mLの経口液剤におけるタペンタドール塩酸塩の全般にわたる良好な抗菌特性を示している。組み込まれた原体に由来する十分な抗菌効果を製剤が示すことが実証された。
【0176】
例6:
10mg/mLのタペンタドール経口液剤の化学的安定性のスクリーニング
10mg/mLの濃度でタペンタドール塩酸塩を含む予備製剤の化学的特性を、6か月の保管期間にわたって異なる温度で評価した。1つの製剤アプローチにおいて安息香酸ナトリウムを保存剤として使用し、別個の製剤アプローチにおいてメチル−およびプロピルパラベンを使用した。
【0177】
結果:
室温(25℃)および高温(50℃)での1、3および6か月後に、10mg/mLの液剤を、APIタペンタドール、分解産物のパラメーターアッセイ、ならびに保存剤のアッセイに関して評価した。APIアッセイは6か月の保管期間内において安定したままである。パラベン製剤については、分解産物が3か月後に、より高い温度でのレベルの増加とともに観察された。
【0178】
結論:
パラベン製剤と比較して、安息香酸ナトリウムを含む製剤はより少ない分解産物を示した。従って、安息香酸ナトリウムを、さらなる開発用に選択された保存剤として使用した。
【0179】
例7:
4および20mg/mLのタペンタドール経口液剤の化学的安定性
異なる濃度(4および20mg/mL)でのタペンタドール経口液剤の化学安定性を調査するために、安定性試験を3か月にわたって行い、以下のパラメーターを評価した:外観、タペンタドールのアッセイ、分解、アッセイ保存(4mg/mL製剤に関してのみ)、および25℃/60%、40℃/75%RHおよび50℃でのpH。さらに、4mg/mL溶液については、2週サイクル試験(−15℃〜30℃および5℃〜40℃)を行った。
【0180】
結果:
使用したフレーバー(ラズベリーまたはマスキングフレーバー)とは独立したタペンタドール経口液剤の両方の製剤(4および20mg/mL)に関する安定性の傾向は、3か月の保管期間後には明らかにならず、このことはAPIタペンタドール塩酸塩の液剤中における良好な安定性を示している。
【0181】
例8:
pH3およびpH8でのタペンタドールの抗菌効果
15mg/mLのタペンタドール(遊離塩基)濃度を有するタペンタドール液剤を調製した。pH値を、クエン酸および1N NaOH溶液を使用して、3または8の標的値にそれぞれ調節した。追加の緩衝系は添加しなかった。プラセボ溶液が抗菌効果自体を示さないことを保証するために、pH調節用に異なる量の1N NaOH溶液を使用する場合であっても、同一のpH値に焦点を当ててプラセボ溶液pH8を調製した。
【0182】
製剤を調製し、ガラスのボトルに満たし、オートクレーブにおいて121℃および2barで30分間滅菌した。滅菌したガラスのボトルを、欧州薬局方「6.6 monograph 5.1.3.」に基づいた試験「Efficacy of antimicrobial preservation」のために、スタフィロコッカス・アウレウス(Staph. aureus)、シュードモナス・エルジノーサ(Ps. aerouginosa)、アスペルギルス・ニガー(Asp. niger)およびカンジダ・アルビカンスでスパイクした。
【0183】
非経口用調製物に関する欧州薬局方の試験合否基準を表に記載する(NI=増加なし、NR=回復なし)。A基準は、達成されるべき推奨の効果を示し、例えば有害反応のリスク増加の理由によりA基準に到達できないという正当な場合には、B基準が満たされなければならない。pH値実験のこの第一のセットアップのための実験の量を減らすために、6および24時間の試験時間点を30分の試験時間点で置き換えた(表5)。
【0184】
【表7】

液剤の微生物試験に関する結果を、細菌/真菌に関して表6および9に示す。
【0185】
【表8】
【0186】
【表9】
【0187】
【表10】
【0188】
【表11】

追加の保存剤がない場合、タペンタドール溶液pH3は、アスペルギルス・ニガーおよびカンジダ・アルビカンスに関しては欧州薬局方(基準AおよびB)に従って十分に保存されないが、タペンタドール溶液pH8は、試験を行った全ての細菌および真菌に対して基準AおよびBを満たした。プラセボpH8溶液は溶液自体の保存効果を示さないので、タペンタドールHClを含む製剤の抗菌効果は追加量のタペンタドールHClの結果である。この結果を考慮すると、タペンタドールHCl溶液の保存効果におけるpH値の明瞭な依存性が示された。
【0189】
より高いpH値8を有するタペンタドールHCl溶液は、pH3溶液と比較して改善された抗菌効果を有し、従って、タペンタドールの保存効果における当該溶液のpH値の明瞭な依存性が見出された。

さらに、本発明は下記の実施の態様を包含する:
(1)タペンタドールまたは生理学的に許容可能なその塩を含み、そして経口投与用に適合されている水性の医薬組成物。
(2)(i)さらにバッファーを含み、および/または(ii)3.0〜6.5の範囲内のpH値を有する、前記(1に記載の組成物。
(3)タペンタドールの濃度が組成物の全体積を基準として50mg/mL以下である、前記(1)または(2)に記載の組成物。
(4)(i)保存剤を含まないか、または(ii)追加的に保存剤を含む、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の組成物。
(5)保存剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリニジウム、クロルヘキシジン、クロルブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸およびソルビン酸カリウムからなる群から選択される、前記(4)に記載の組成物。
(6)保存剤の含有量が組成物の全重量を基準として最大で5.0重量%である、前記(4)または(5)に記載の組成物。
(7)タペンタドールの濃度および保存剤の濃度の合計が、組成物の全体積を基準として50mg/mL以下である、前記(4)〜(6)のいずれか1つに記載の組成物。
(8)保存剤の含有量が、タペンタドールの非存在下において医薬組成物を十分に保存するために欧州薬局方に従って必要であろう含有量の最大で90%である、前記(4)〜(7)のいずれか1つに記載の組成物。
(9)加速保存条件下で少なくとも3か月の有効期間を示す、前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の組成物。
(10)シロップ剤、滴剤、液剤、分散剤、懸濁剤および乳剤からなる群から選択される、前記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の組成物。
(11)前記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の医薬組成物を含む、医薬製剤。
(12)経口液剤、経口ゲル剤、懸濁剤、乳剤、および液体もしくはゲル充填カプセル剤からなる群から選択される、前記(11)に記載の製剤。
(13)小児患者への投与に適合されている、前記(11)または(12)に記載の剤形。
(14)疼痛の治療に使用するための、前記(1〜10のいずれか1つに記載の医薬組成物、または前記(11)〜(13)のいずれか1つに記載の医薬製剤。
(15)急性疼痛および慢性疼痛からなる群から選択される、前記(14)に記載の医薬組成物または医薬製剤