特許第6438243号(P6438243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438243
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】車両のドアハンドル
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20181203BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20181203BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20181203BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20181203BHJP
【FI】
   E05B85/16 E
   E05B85/16 C
   B60J5/04 H
   B60R25/24
   !E05B49/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-181378(P2014-181378)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-56519(P2016-56519A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】井ヶ田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野 高志
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/146918(WO,A1)
【文献】 特開2005−134178(JP,A)
【文献】 特開2012−114884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/16
E05B 1/00
B60R 25/24
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者にドア開閉操作時の手掛け部を提供する握り部を備えてドアに固定されるハンドル本体と、
前記ハンドル本体に初期回転位置と作動回転位置との間で回転操作可能に連結されて握り部の裏面に位置するレバーハンドルと、
回路基板部、および検出電極を備えて利用者の接近を検出する静電容量センサとを有し、
前記握り部には、裏面に向けて開口し、前記レバーハンドルが進退する空隙部が形成されるとともに、
前記静電容量センサは、前記回路基板部を含む検出ユニット本体部をハンドル本体の前記空隙部の天井面に固定してハンドル本体に固定され、
前記検出電極は、検出ユニット本体部をハンドル本体に固定した状態において前記空隙部の対向する両内壁面に沿って配置されてハンドル本体の側壁に位置する車両のドアハンドル。
【請求項2】
前記レバーハンドルには、作動回転位置において前記回路基板部を格納可能な格納スペースが形成される請求項1記載の車両のドアハンドル。
【請求項3】
前記空隙部の天井面に、利用者が所持する携帯器との交信用アンテナが収容される請求項1または2記載の車両のドアハンドル。
【請求項4】
前記検出ユニット本体部は、利用者が所持する携帯器との交信用アンテナとともに前記回路基板部を一体化して形成される請求項1、2または3記載の車両のドアハンドル。
【請求項5】
前記検出ユニット本体部は、利用者の接近を検知した際に施錠動作開始信号を出力する第2静電容量センサを含む請求項4記載の車両のドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
利用者によるドア開閉操作を検出するために内部に静電容量センサを収容した車両のドアハンドルとしては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、ドアパネルの裏面には予めハンドルベースが固定されており、ドアハンドルのドアへの装着は、先端部に突設されたアームをドアの表面側からハンドルベースに係止させて行われる。ハンドルベースへの連結状態でドアハンドルをハンドルベースとの係止部周りに回転操作すると、ドア内のドアロック装置が操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-114884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、ドアへの装着には別途ドアに固定されるハンドルベースを要する上に、ドアにはドアハンドルの回転端に当接して該ドアハンドルのハンドルベースとの係止解除方向の移動を規制するための外部カバーを外部に露出させて配置する必要があるために、デザインの自由度を低下させてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、外部に露出する外部カバーを要することなくドアに固定することができる車両のドアハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
利用者にドア開閉操作時の手掛け部を提供する握り部1を備えてドア2に固定されるハンドル本体3と、
前記ハンドル本体3に初期回転位置と作動回転位置との間で回転操作可能に連結されて握り部の裏面に位置するレバーハンドル4と、
回路基板部8、および検出電極6を備えて利用者の接近を検出する静電容量センサ5とを有し、
前記握り部1には、裏面に向けて開口し、前記レバーハンドル4が進退する空隙部7が形成されるとともに、
前記静電容量センサ5は、前記回路基板部8を含む検出ユニット本体部11をハンドル本体4の前記空隙部7の天井面に固定してハンドル本体3に固定され、
前記検出電極6は、検出ユニット本体部11をハンドル本体4に固定した状態において前記空隙部7の対向する両内壁面に沿って配置されてハンドル本体4の側壁に位置する車両のドアハンドルを提供することにより達成される。
【0008】
ドアハンドルは、ハンドル本体3と、ハンドル本体3に対して回転操作可能なレバーハンドル4とを有して構成され、レバーハンドル4を初期回転位置から作動回転位置に回転操作することによりドア2内のドア2ロック装置を操作することができる。
【0009】
回転操作部品であるレバーハンドル4をハンドル本体3に連結した本発明は、それ自体回転操作部品となるために、支持部材であるハンドルベースを要する従来例とは異なり、ドアハンドルを直接ドア2に固定することが可能になるために、別途外部カバーを装着する必要がなく、デザインの自由度を高めることができる。
【0010】
また、ドアハンドルへの利用者の接近を検出するための静電容量センサ5を固定部材であるハンドル本体3に装着することにより、可動部分であるレバーハンドル4を軽量化することができる。レバーハンドル4の軽量化により、車両に側面衝突荷重が負荷された際にレバーハンドル4に発生する慣性力によって該レバーハンドル4が作動回転位置方向に回転するのを防止するためのカウンタウエイトを設定する場合には、該カウンタウエイトの重量も軽量にすることが可能になるために、車両の軽量化にも資することができる。
【0011】
さらに、静電容量センサ5の検出電極6をハンドル本体3の握り部1の側壁に配置することにより、ハンドル本体3の握り部1に手を掛けてドア2を操作する動作が行われた際、握り部1に手が掛けられる前の手のハンドル本体3への接近時にいち早くドア開閉操作を検出することができる。
【0012】
静電容量センサ5からの検出信号は、一般に車両に搭載した認証装置から利用者が所持する携帯器へのID要求信号を出力するためのトリガ信号として利用され、ID要求信号に応答して携帯器から出力されるID信号の認証装置における認証成立を条件に解錠動作が行われる。
【0013】
したがって、ハンドル本体3への接近を早期に検知することが可能な本発明において、認証動作完了までの時間を短縮することができるために、利用者によるレバーハンドル4への操作が行われた際に未だに認証動作が未完了で、レバーハンドル4への操作のやり直しが必要になる等の不都合を防止することができる。
【0014】
また、前記握り部1には、裏面に向けて開口し、前記レバーハンドル4が進退する空隙部7が形成されるとともに、前記静電容量センサ5は、該静電容量センサ5の検出回路が実装された回路基板部8が前記空隙部7の天井面に固定され、かつ、回路基板部8から引き出される前記検出電極6が空隙部7の対向する両内壁面に配置される。
【0015】
ハンドル本体3の握り部1に形成される空隙部7は、レバーハンドル4の操作スペースを提供しており、該レバーハンドル4の初期回転位置におけるハンドル本体3からの突出寸法を操作上必要な量に制限することを可能にする。
【0016】
また、空隙部7の天井壁を回路基板部8の固定面として利用することにより該空隙部7を静電容量センサ5の収容スペースとして利用することが可能になり、ハンドル本体3の握り部1の断面積を利用者が握り易い寸法に設定することが可能になる。
【0017】
さらに、静電容量センサ5の検出電極6は空隙部7の対向する両内壁面に配置されているために、ハンドル本体3が車長方向に沿って取り付けられた場合を例に取ると、握り部1とドア2との間のスペースに上下いずれの方向から手を入れても進入方向に対応する検出電極6により早急な検出を行うことが可能になる。
【0018】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記レバーハンドル4には、作動回転位置において前記回路基板部8を格納可能な格納スペース9が形成される車両のドアハンドルを構成することができる。
【0019】
本態様において、レバーハンドル4を作動回転位置まで回転操作した際、すなわち、レバーハンドル4がハンドル本体3の空隙部7内に進入した際の回路基板部8の収容スペースを提供するために、握り部1内のスペースを有効利用することができる。
【0020】
また、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記空隙部7の天井壁24に、利用者が所持する携帯器との交信用アンテナ10が収容される車両のドアハンドルを構成することができる。
【0021】
本態様において、上記空隙部7は交信用アンテナ10の収容スペースとして利用されるために、握り部1内のスペースを有効利用することができる。
【0022】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記検出ユニット本体部11は、利用者が所持する携帯器との交信用アンテナ10とともに前記回路基板部8を一体化して形成される車両のドアハンドルを構成することができる。


【0023】
本態様において、静電容量センサ5の回路基板部8と交信用アンテナ10は予めモールド樹脂等を使用してユニット化されているために、ハンドル本体3への組み付け作業が容易になる。
【0024】
この場合、前記検出ユニット本体部11は、利用者の接近を検知した際に施錠動作開始信号を出力する第2静電容量センサ12を含む車両のドアハンドルを構成することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、外部に露出する外部カバーを要することなくドアに固定することができるために、デザインの自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ドアハンドルの正面図である。
図2図1の2A方向矢視図である。
図3図1の3A-3A線断面図である。
図4】検出ユニット本体部を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図5図1の断面図で、(a)は5A-5A線断面図、(b)は5B-5B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1以下に示すように、ドアハンドルは、ハンドル本体3にレバーハンドル4を連結して形成され、図1において左側を車両先頭に向けた姿勢で車両のドア2に固定される。
【0028】
ハンドル本体3は、図5に示すように、側壁25、および天井壁24により空隙部7を囲んだ中空形状を有しており、長手方向中央部には、下縁26を上縁27に接近させて低背とした握り部1が形成される。握り部1の両端には膨隆部1aが設けられ、ハンドル本体3の前後端部から握り部1が区画される。
【0029】
このハンドル本体3は、前端部に固定されたブラケット13、および後端部に固定されたスタッド14を使用してドア2に固定され、ドア2との境界にガスケット15が介装される(図3参照)。
【0030】
レバーハンドル4は、前端部にヒンジ突片4aを有しており、図2、3に示すように、該ヒンジ突片4aをハンドル本体3から前方に突設されるヒンジ受け3aに連結される。連結状態においてレバーハンドル4は、図2、3に示す初期回転位置から、ヒンジ受け3aとの連結位置を回転中心(C4)として図3において反時計回りに回転させた作動回転位置まで回転操作することができる。
【0031】
また、レバーハンドル4の中央部には、ハンドル本体3の握り部1に対応して両端が膨隆部16aにより区画された操作部16が形成され、この操作部16をハンドル本体3の空隙部7内に押し込ませることによりレバーハンドル4への回転操作が行われる。
【0032】
図3に示すように、ハンドル本体3の後端部には上記レバーハンドル4の回転面に平行な面内で回転中心(C17)周りに回転自在な第1中継レバー17と、第1中継レバー17の回転中心(C17)に直交する回転中心(C18)周りに回転自在な第2中継レバー18とが連結される。
【0033】
図2、3に示すように、第1中継レバー17は、一端に上記レバーハンドル4の自由端部に形成された突部4bに対応する入力片部17aと、回転中心(C17)を挟んで反対端に形成されるフォーク形状の出力片部17bとを備える。第1中継レバー17の出力片部17bは第2中継レバー18に形成される係止突部18aに係止されており、第1中継レバー17が図2に示す初期回転位置から回転すると、第2中継レバー18は係止突部18aが押されて回転中心(C18)周りに作動回転位置まで回転操作される。
【0034】
したがってこの実施の形態において、レバーハンドル4を作動回転位置まで回転操作すると、第1中継レバー17を経由して第2中継レバー18が作動回転位置まで回転し、該第2中継レバー18に連結される図外のドアロック装置が作動する。また、第2中継レバー18にはトーションスプリング19により付勢力が付与され、上述した伝達経路と逆方向の経路を経由してレバーハンドル4に初期回転位置への保持力を付与する。
【0035】
以上のように構成されるハンドル本体3には、検出ユニット本体部11が取り付けられる。検出ユニット本体部11は、利用者がハンドル本体3に手を掛けたことを検出するための静電容量センサ5と、利用者が所持する携帯器との間で交信するための交信用アンテナ10と、利用者の接触操作を検出するための第2静電容量センサ12とを有する。
【0036】
静電容量センサ5は、検出回路が実装された回路基板部8と、回路基板部8に接続される検出電極6とを有し、利用者を検出すると検出信号を車両に搭載された図外の認証装置に通知する。検出信号を受信した認証装置は、利用者の携帯器にID出力要求信号を出力し、携帯器からのID信号送信を待つ。
【0037】
受信したID信号に対する認証装置での認証が成立すると、認証装置はドアロック装置に対する施錠状態を解除し、以後、レバーハンドル4への操作によるラッチ解除動作が可能になる。
【0038】
交信用アンテナ10は、上述した認証装置と携帯器との交信を使用する際に使用され、この交信用アンテナ10、および静電容量センサ5の回路基板部8はモールド樹脂等によりブロック状に一体化される。このブロック状部分22からは、上記交信用アンテナ10、静電容量センサ5、および第2静電容量センサ12を認証装置に接続するハーネス20が引き出される。
【0039】
第2静電容量センサ12は、ドアロック装置の施錠操作を行うために配置されるもので、内部に回路基板が封入するとともに、表面に検出電極12aを配置して形成される。この第2静電容量センサ12は上述したブロック状部分22に連結脚21を介して連結されており、第2静電容量センサ12からのハーネスはこの連結脚21内を挿通してブロック状部分22に導入された後、ハーネス20としてブロック状部分22から引き出される。
【0040】
以上のように構成される検出ユニット本体部11は、ハンドル本体3の空隙部7の天井壁に粘着テープ、あるいは接着剤を使用して固定される。また、図5(b)に示すように、第2静電容量センサ12は、取付翼片12bに開設された貫通孔12cにハンドル本体3から突設されたボス3bを挿通させ、さらにガスケット15から突設される筒部15aにより取付翼片12bをハンドル本体3に押し付けて固定される。
【0041】
さらに、図5(a)において鎖線で示すように、レバーハンドル4を作動回転位置まで回転操作した際にレバーハンドル4とブロック状部分22が干渉しないように、レバーハンドル4は薄肉状に形成されてブロック状部分22を格納するための格納スペース9が形成されるとともに、ブロック状部分22はレバーハンドル4への対向面が細幅とされた階段状断面形状に形成される。
【0042】
図4に示すように、静電容量センサ5の検出電極6は、前後方向に長い短冊形状に形成されてスクリュー23により回路基板部8に固定、連結され、検出ユニット本体部11をハンドル本体3に固定した状態において、図1図5(a)に示すように、検出電極6は、ハンドル本体3の空隙部7の両内壁面に沿って配置される。
【0043】
したがってこの実施の形態において、レバーハンドル4を操作しようとして利用者が手を握り部1に近付かせると、握り部1を握り終える前の握り部1の側壁への接近時点で利用者が検出されるために、認証動作の開始時期を早めることができる。
【0044】
また、検出電極6が握り部1の両壁面に配置されるために、握り部1への手の進入方向が上下いずれであっても、手の進入方向に対応する検出電極6による検出が行われる。
【符号の説明】
【0045】
1 握り部
2 ドア
3 ハンドル本体
4 レバーハンドル
5 静電容量センサ
6 検出電極
7 空隙部
8 回路基板部
9 格納スペース
10 交信用アンテナ
11 検出ユニット本体部
12 第2静電容量センサ
図1
図2
図3
図4
図5