(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438265
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】飲料用容器の殺菌装置
(51)【国際特許分類】
B65B 55/08 20060101AFI20181203BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20181203BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
B65B55/08 A
B65B55/04 C
A61L2/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-212498(P2014-212498)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-78895(P2016-78895A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】久保山 幸司
(72)【発明者】
【氏名】田中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩一
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−055915(JP,A)
【文献】
特開平03−000625(JP,A)
【文献】
特開2000−053111(JP,A)
【文献】
特開2013−006608(JP,A)
【文献】
特表2005−519816(JP,A)
【文献】
特開2009−213561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/08
A61L 2/10
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給を受けて紫外線を発光する複数のLED光源と、
複数の前記LED光源を支持し、殺菌対象である容器に対して相対的に進退が可能な光源支持体と、
少なくとも前記LED光源を覆う、光拡散カバーと、を備え、
前記光源支持体は、
前記容器の側面に対向する側面と、
前記容器の底面に対向する先端と、を備え、
複数の前記LED光源は、
前記光源支持体の前記側面に均等間隔で設けられるとともに、前記光源支持体の前記先端に設けられ、
前記光拡散カバーは、
透明な基材と、
前記基材に含まれる、前記基材とは屈折率の異なる材料からなる粒子と、を含む複合材からなることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
電力の供給を受けて紫外線を発光する複数のLED光源と、
複数の前記LED光源を支持し、殺菌対象である容器に対して相対的に進退が可能な光源支持体と、
少なくとも前記LED光源を覆う、光拡散カバーと、を備え、
前記光源支持体は、
前記容器の側面に対向する側面と、
前記容器の底面に対向する先端と、を備え、
複数の前記LED光源は、
前記光源支持体の前記側面に均等間隔で設けられるとともに、前記光源支持体の前記先端に設けられ、
前記光拡散カバーは、
前記LED光源が対向する面側にレンズ拡散機能を備える光学材料により形成されることを特徴とする殺菌装置。
【請求項3】
前記容器の内部への往路及び前記容器から外部への復路の両方において、前記LED光源から紫外線を照射する請求項1または請求項2に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用容器に紫外線を照射して殺菌する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のボトルに代表される飲料用容器(以下、単に容器ということがある)に飲料を充填するにあたって、容器の内外が殺菌される。また、ボトル成形前のプリフォームの段階で殺菌されることもある。
この容器成形前及び容器成形後に殺菌するのに、過酸化水素や次亜塩素酸ソーダ等の殺菌用薬剤溶液を容器の内部に注入した後、その薬剤溶液を排出し、さらに、容器の内側を水で洗浄する作業が行われていた。
【0003】
しかし、薬剤溶液による殺菌処理方法は、環境負荷が大きく、薬剤コストや廃液処理コストも高いという問題があるために、いわゆる乾式の殺菌方法が提案されている。乾式の殺菌方法としては、紫外線を照射する方法(例えば、特許文献1)及び電子線を照射する方法が知られている。ところが、電子線を照射する方法は、電子線照射により二次的に生成するX線を外部に漏洩させないための遮蔽構造が大きくかつ重い。また、電子線を容器に照射する殺菌装置は、電子線照射によってオゾンが生じるので、それを排気する装置が必要であり、このオゾンの回収装置も手伝って、大がかりなものになる傾向がある。これに比べて、紫外線を照射する方法は、殺菌装置の構成が簡易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−24092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線照射による容器の殺菌において、紫外線を容器にムラなく照射することが容易でない。特許文献1に記載されるように、光源で発光した紫外線を容器に導くのに線状又は棒状の導光体を用いることができるが、紫外線は導光体の先端から出射されるので、容器の内部を殺菌する場合に、底には紫外線を十分に照射できるものの、側面に殺菌に足りる紫外線を照射することは難しい。
また、飲料容器としてのプリフォームを殺菌の対象とする場合には、プリフォームの開口の径が例えば20mm程度と小さいために、プリフォームに挿入する紫外線照射部分の寸法に制約がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、小型の紫外線照射部分を備えながらも、容器の内部に挿入された状態で、容器の底に加えて側面にもムラなく紫外線を照射することができる容器の殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとになされた本発明の容器の殺菌装置は、電力の供給を受けて紫外線を発光す
る複数のLED光源と、
複数のLED光源を支持し、容器の内部を相対的に往復移動して進退が可能な光源支持体と、
少なくともLED光源を覆う、光拡散カバーとを備
え、光源支持体は、容器の側面に対向する側面と、容器の底面に対向する先端と、を備え、複数のLED光源は、光源支持体の側面に均等間隔で設けられるとともに、光源支持体の先端に設けられる。
【0007】
本発明における光拡散カバーは、透明な基材と、基材に含まれる、基材とは屈折率の異なる材料からなる粒子と、を含む複合材からなる。
または、本発明における
光拡散カバーは、LED光源が対向する面側にレンズ拡散機能を備える光学材料により形成される。
LED光源から放射される紫外線は指向性が高いので、容器をムラなく殺菌するためには、LED光源の数を確保すればよい。これに対して、LED光源から
発光される紫外線を光拡散カバーにて受光し、光拡散カバーから拡散して容器に向けて照射するようにすれば、LED光源を設ける数を少なくすることができる。
【0008】
本発明の殺菌装置において、容器の内部への往路及び容器から外部への復路の両方において、LED光源から紫外線を照射することが好ましい。これにより、往路だけの場合又は復路だけの場合に比べて、容器が受ける紫外線の照射量を増やすことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫外線の発光源として小型化が可能なLEDを用いるので、例えば、容器としてプリフォームを殺菌対象にする場合でも、容器の内部に無理なく挿入することができる。また、LEDにより発光される紫外線はある程度の指向性を有しているが、照射方向を相違させた複数のLEDを配置することにより、容器の底及び容器の側面をムラなく殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態における容器の殺菌装置の構成概略を示す図である。
【
図2】
図1の殺菌装置の要部を示し、(a)は側面図、(b)は(a)のIIb−IIb線矢視断面図、(c)は底面図である。
【
図3】第2実施形態における殺菌装置の要部を示す図である。
【
図4】第3実施形態における殺菌装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における容器の殺菌装置1の最小限の構成要素を示している。
殺菌装置1は、電源2と、電源2から電力の供給を受けて紫外線UVを発光する複数のLED光源4と、複数のLED光源4を支持し、PETボトルの前駆体であるプリフォーム30の内部を進退する光源支持体6と、を備えている。殺菌装置1は、プリフォーム30の内部を紫外線UVにより殺菌する装置である。LED光源4は、殺菌処理時に、光源支持体6を操作することにより、把持具3で支持されたプリフォーム30の開口31を通過して、プリフォーム30の内部に挿入され、往復進退される。LED光源4は、プリフォーム30の内部を進退しながら、紫外線UVをプリフォーム30の底面33及び側面35に向けて照射する。ここで、底面33及び側面35という直交する二つの面に向けて、紫外線UVを照射するために、複数のLED光源4は、以下に説明するように配置されている。
【0012】
LED光源4は、
図2に示すように、光源支持体6の先端6Eに設けられている。先端6Eに設けられるLED光源4(4Eとする)は、専らプリフォーム30の底面33を対象にして紫外線UVを照射して殺菌処理する。また、LED光源4は、光源支持体6の先端6Eに近い側面6Sにも設けられている。側面6Sに設けられるLED光源4(4Sとする)は、専らプリフォーム30の側面35を対象にして紫外線UVを照射して殺菌処理する。本実施形態においては、複数(4つ)のLED光源4Sが、側面6Sの周方向に均等間隔で設けられており、この4つで一列をなすLED光源4Sが、軸方向(図中の上下方向)に二列に並んで配列されている。なお、光源支持体6には、LED光源4に電力を供給する配線が設けられるが、図示を省略している。
【0013】
さて、プリフォーム30を殺菌処理するには、
図1(a)に示すように、LED光源4を、プリフォーム30の開口31に挿入される際に発光させておき、開口31に挿入されたLED光源4は、
図1(b)に示す最下端の位置までの往路を移動する間に発光を継続する。LED光源4は、最下端まで降下すると、
図1(c)に示すように、発光を停止して、そのまま開口31から退出する復路を移動して、当初の位置に復帰する。なお、復路を移動する際は、殺菌処理に関わらないので、往路よりも移動速度を速くすることができる。
【0014】
以上説明したように、本実施形態の殺菌装置1は、紫外線の発光源として小型化が可能なLED光源4(4E,4D)を用いるので、例えば、容器としてプリフォーム30を殺菌対象にする場合でも、プリフォーム30の内部に無理なく挿入することができる。また、LED光源4により発光される紫外線はある程度の指向性を有しているが、殺菌装置1は、専ら底面33を殺菌対象とするLED光源4Eと、専ら側面35を殺菌対象とするLED光源4Sを備え、かつ、光源支持体6をプリフォーム30に進退させながら紫外線UVを照射させるので、プリフォーム30の底面33及び側面35をムラなく殺菌することができる。
【0015】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を、
図3を参照して説明する。
第2実施形態は、LED光源4を周囲から取り囲む光拡散カバー10を備えることに加えて、LED光源4の数が減らされている点で、第1実施形態と相違する。以下、この相違点を中心にして、第2実施形態を説明する。
【0016】
光拡散カバー10は、概ねカップ状の形態をなしており、その内部に光源支持体6に設けられたLED光源4が収容されるように、光源支持体6に固定される。この固定の手段は任意であるが、光拡散カバー10の開口している上部は、LED光源4から発光された紫外線UVが漏れ出ないように、光学的に封止されていることが好ましく、本実施形態では、光拡散カバー10の内部に臨む面が紫外線UVを反射する膜を備える光遮蔽蓋11で、光拡散カバー10の開口を閉じる。
【0017】
本実施形態において、LED光源4から発光された紫外線UVは、光拡散カバー10により受光され、光拡散カバー10を透過する過程で拡散されることにより、光拡散カバー10から出射される際には、光拡散カバー10の表面が全体的に均一な照度で発光する。これにより、光拡散カバー10に対向するプリフォーム30の部分は、光拡散カバー10からムラのない均一な紫外線UVが照射される。
【0018】
光拡散カバー10は、受光した紫外線UVを拡散してから均一な照度で発光させる機能を有している限り、限定されるものでないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ガラスからなる透明な基材の中に、基材とは屈折率の異なる材料からなる粒子、例えばアクリル粒子、スチレン粒子を拡散材として含む複合材を用いることができる。また、受光面側、ここでは光拡散カバー10のLED光源4が対向する面側にレンズ拡散機能を備える光学材料により形成される。レンズ拡散機能とは、微小でランダムなレンズアレイを、ポリカーボネートやアクリルなどの基材の表面に多数有することにより生じる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態は、光拡散カバー10を設けることにより、LED光源4からの指向性の高い紫外線UVを均一な照度でプリフォーム30の殺菌対象面にムラなく照射することができる。これにより、光源支持体6に設けるLED光源4を減らしても、ムラのない殺菌処理を実現できる。光拡散カバー10の光り拡散性能によっては、1つのLED光源4だけでも、プリフォーム30の殺菌処理を実現することができる。
【0020】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を、
図4を参照して説明する。第3実施形態は、用いる殺菌装置1の構成は第1,2実施形態を問わないが、プリフォーム30を殺菌処理する手順が第1,2実施形態と相違する。以下では、この相違点を中心にして説明する。
第3実施形態は、
図4(a)に示すように、LED光源4が、プリフォーム30の開口31に挿入される際にはすでに発光されており、開口31に挿入されたLED光源4は、
図4(b)に示す最下端の位置までの往路を移動する間に発光を継続する。LED光源4は、最下端まで降下すると、今度は、開口31から退出する復路を移動するが、
図4(c),(d)に示すように、この復路を移動する間も、発光を継続する。
【0021】
以上説明したように、第3実施形態は、プリフォーム30を進退移動する間中、発光を継続して、プリフォーム30の殺菌処理を行う。このことは、以下のことを示唆する。
LED光源4が往路及び復路のそれぞれを移動するのに要する時間をtとし、この時間tをかけてLED光源4が往路又は復路の片道だけ移動すれば、所望する殺菌性能が得られるものとする。この場合には、2t時間をかけてプリフォーム30を殺菌処理するので、片道だけよりもまんべんなく紫外線UVを照射することができるので、殺菌をより確実に行うことができる。一方で、LED光源4が移動する速度を2倍にしたとしても、往路及び復路の両方で殺菌処理をt時間だけ行うことができるので、所望する殺菌性能を得ることができる。このように、往路及び復路の両方でLED光源4を発光させ、さらに、進退の移動速度を調整することにより、任意の殺菌性能を得ることができる。
【0022】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、殺菌処理対象はプリフォーム30に限るものではなく、プリフォーム30から成形されたペットボトルを殺菌処理する際に本発明の殺菌装置を用いることができる。
また、複数のLED光源4を備える場合には、殺菌処理する容器あるいは要求される殺菌性能に対応して発光させるLED光源4の数を増減することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 殺菌装置
2 電源
3 把持具
4 LED光源
4E LED光源
4S LED光源
6 光源支持体
6E 先端
6S 側面
10 光拡散カバー
11 光遮蔽蓋
30 プリフォーム
31 開口
33 底面
35 側面
UV 紫外線