特許第6438377号(P6438377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438377
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ケーブル付コネクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20181203BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20181203BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20181203BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20181203BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20181203BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   G02B6/42
   G02B6/44 386
   H05K9/00 C
   H01R13/46 D
   H01R12/71
   H01R13/648
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-220284(P2015-220284)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-90658(P2017-90658A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】島倉 和也
(72)【発明者】
【氏名】菊池 孝博
(72)【発明者】
【氏名】城倉 潔
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−067864(JP,A)
【文献】 特開2008−310066(JP,A)
【文献】 特開2010−237640(JP,A)
【文献】 特開2013−020158(JP,A)
【文献】 特開平11−097797(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0301073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42
G02B 6/44
H01R 12/71
H01R 13/46
H01R 13/648
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルおよび電気ケーブルを別系統として有する複合ケーブルが複合コネクタに接続されたケーブル付コネクタであって、
上記複合コネクタは、該複合コネクタに対する接続対象物としての相手電気コネクタに電気的に接続可能であり、該複合コネクタは、光信号と電気信号とを変換する変換要素と、電気信号の伝送のための回路部が板状の基材に設けられ該回路部に上記変換要素が電気的に接続される回路基板と、上記変換要素、上記回路基板および上記電気ケーブルの端部を収容する収容体とを有しており、
上記光ファイバケーブルは、上記変換要素に接続されており、
上記電気ケーブルは、上記相手電気コネクタに電気的に接続される端子が該電気ケーブルの端部に設けられているケーブル付コネクタにおいて、
上記変換要素および上記回路基板の回路部の少なくとも一方と上記電気ケーブルの端部とが、上記収容体内にて、上記相手電気コネクタとの接続方向に対して直角な方向で該収容体の隔離部または上記回路基板の基材によって隔離されていることを特徴とするケーブル付コネクタ。
【請求項2】
複合コネクタは、回路基板の実装面上に配されて該回路基板の回路部と変換要素とを電気的に接続する電気接続要素をさらに有していることとする請求項1に記載のケーブル付コネクタ。
【請求項3】
複合コネクタは、変換要素を覆うシールド部材をさらに有していることとする請求項1または請求項2に記載のケーブル付コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルおよび電気ケーブルを別系統として有する複合ケーブルが複合コネクタに接続されたケーブル付コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるケーブル付コネクタとして、例えば、特許文献1のケーブル付コネクタが知られている(特許文献1、図17参照)。ケーブル付コネクタの複合コネクタは、該複合コネクタに対する接続対象物に向かう前方(特許文献1の図17にて左方)をコネクタ接続方向として該接続対象物に接続されるようになっている。特許文献1では、複合ケーブルが接続されている光電気複合コネクタ(以下、「複合コネクタ」という)は、ハウジング内に回路基板が設けられている。該回路基板の上面には、光信号と電気信号とを変換する受発光素子と、該受発光素子に電気的に接続される光電変換部電極と、該回路基板の回路配線を介して該光電変換部電極に電気的に接続され電気信号のレベルを調整する制御用半導体とが設けられている。上記受発光素子には複合ケーブルの光ファイバケーブルが光学的に接続されている。一方、回路基板の下面には、前後方向で上記光電変換部電極に近接した位置に電線接続用電極が設けられており、複合ケーブルの電気ケーブルが該電線接続用電極に接続されている。このように特許文献1では、ハウジングの一つの内部空間にて、回路基板の上面側で光信号の伝送、光信号と電気信号との変換そして電気信号の伝送が行われており、上記回路基板の下面側で他の電気信号の伝送が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5342986号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、受発光素子にて、光信号が電気信号へ変換される場合における変換直後の電気信号や、電気信号が光信号へ変換される場合における変換直前の電気信号は、微弱な信号である。したがって、特許文献1のように、回路基板の上面での光信号と電気信号との変換そして該電気信号の回路配線での伝送と、回路基板の下面での該回路基板に対する電気ケーブルの接続とを、一つの回路基板の上面側および下面側で、互いに近接した位置にて同時に行おうとすると、上面側での上述の微弱な電気信号が、回路基板内部を通じて、下面側の上記他の電気信号からのノイズの影響を受けやすくなる。
【0005】
特に、受発光素子で光信号が電気信号に変換される場合、変換直後の微弱な電気信号は、該電気信号に上記ノイズが重畳したまま制御用半導体で増幅されることとなるので、該ノイズも増幅されてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑み、光信号と電気信号との変換前あるいは変換後の電気信号が他の電気信号からのノイズの影響を受けにくいケーブル付コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るケーブル付コネクタは、光ファイバケーブルおよび電気ケーブルを別系統として有する複合ケーブルが複合コネクタに接続されたケーブル付コネクタであって、上記複合コネクタは、該複合コネクタに対する接続対象物としての相手電気コネクタに電気的に接続可能であり、該複合コネクタは、光信号と電気信号とを変換する変換要素と、電気信号の伝送のための回路部が板状の基材に設けられ該回路部に上記変換要素が電気的に接続される回路基板と、上記変換要素、上記回路基板および上記電気ケーブルの端部を収容する収容体とを有しており、上記光ファイバケーブルは、上記変換要素に接続されており、上記電気ケーブルは、上記相手電気コネクタに電気的に接続される端子が該電気ケーブルの端部に設けられている。
【0008】
かかるケーブル付コネクタにおいて、本発明では、上記変換要素および上記回路基板の回路部の少なくとも一方と上記電気ケーブルの端部とが、上記収容体内にて、上記相手電気コネクタとの接続方向に対して直角な方向で該収容体の隔離部または上記回路基板の基材によって隔離されていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、上記変換要素および上記回路基板の回路部の少なくとも一方と上記電気ケーブルの端部とが、上記相手電気コネクタとの接続方向に対して直角な方向で該収容体の隔離部または上記回路基板の基材によって隔離されており、両者が近接して位置することがない。したがって、上記変換要素における光信号と電気信号との変換前あるいは変換後の電気信号は、上記電気ケーブルで伝送される電気信号からのノイズの影響を受けにくい。
【0010】
本発明において、複合コネクタは、回路基板の実装面上に配されて該回路基板の回路部と変換要素とを電気的に接続する電気接続要素をさらに有していてもよい。
【0011】
本発明において、複合コネクタは、変換要素を覆うシールド部材をさらに有していてもよい。このようなシールド部材を設けることにより、上記変換要素における光信号と電気信号との変換前あるいは変換後の電気信号が、電気ケーブルで伝送される電気信号からのノイズの影響を受けることを、より確実に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変換要素および回路基板の回路部の少なくとも一方と電気ケーブルの端部とが、収容体内にて、相手電気コネクタとの接続方向に対して直角な方向で該収容体の隔離部または上記回路基板の基材によって隔離されているので、両者が近接して位置することがなく、上記変換要素における光信号と電気信号との変換前あるいは変換後の電気信号が、上記電気ケーブルで伝送される電気信号からのノイズの影響を受けることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るケーブル付コネクタおよび相手電気コネクタのコネクタ嵌合接続前の状態を示す斜視図である。
図2図1のケーブル付コネクタのコネクタ幅方向に対して直角な面での斜視断面図である。
図3図1のケーブル付コネクタのコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図である。
図4】ケーブル付コネクタの製造工程の一部を示す概略図であり、(A)は、変換要素側光ファイバ心線とケーブル側光ファイバ心線とが接続される前の状態、(B)は、(A)の光ファイバ心線同士が接続されその接続部分が光ファイバ接続支持体で支持された状態、(C)は、(B)の変換要素が回路基板上の電気接続要素に接続されるとともに、光ファイバ接続支持体が回路基板上に配された状態を示している。
図5】回路基板の実装面上に光ファイバ接続支持体等が配された状態を示す斜視図である。
図6図5の回路基板を電気ケーブル等とともに示した斜視図である。
図7図6の回路基板を内側収容部材で収容した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るケーブル付コネクタ1および相手電気コネクタ2のコネクタ嵌合接続前の状態を示す斜視図である。ケーブル付コネクタ1は、光ファイバケーブルOC(図4参照)および電気ケーブルEC(図3図6参照)を別系統として有する複合ケーブルCが後述の複合コネクタ10に接続されて構成されている。該ケーブル付コネクタ1は、図1での左下方へ向かう方向をコネクタ接続方向として相手電気コネクタ2に嵌合されて電気的に接続されるようになっている。本実施形態では、図1での左下方へ向かう方向、すなわちコネクタ接続方向を「前方」、その逆方向(図1での右上方へ向かう方向)を「後方」、前後方向および上下方向の両方に対して直角な方向を「コネクタ幅方向」という。
【0016】
ケーブル付コネクタ1に対する接続対象物としての相手電気コネクタ2は、電気機器(図示せず)の一部として設けられており、後方からケーブル付コネクタ1が嵌合接続されるようになっている。ケーブル付コネクタ1と相手電気コネクタ2とは、いわゆるプッシュプル方式のコネクタ組立体を構成しており、その嵌合動作自体は公知である。
【0017】
ケーブル付コネクタ1は、図1に見られるように、前後方向に延びる円筒状の外形をなす複合コネクタ10に複合ケーブルCが後方から接続されて構成されている。該複合ケーブルCは、複数の光ファイバケーブルOC(図4参照)と複数の電気ケーブルECとが一括して被覆されていて、全体として一本のケーブルとして作られている。本実施形態では、複合ケーブルCは、二本の光ファイバケーブルOCと四本の電気ケーブルECとを有しており、複合コネクタ10の上半部および下半部のそれぞれに、一本の光ファイバケーブルOCと二本の電気ケーブルECとが接続されている。本実施形態では、光ファイバケーブルOCは高速信号を伝送し、電気ケーブルECは低速信号あるいは電源電流を伝送するようになっている。
【0018】
複合ケーブルCの端部からは、各光ファイバケーブルOCおよび各電気ケーブルECが露呈している。また、光ファイバケーブルOCの端部からは光ファイバ心線OC1(以下、「ケーブル側光ファイバ心線OC1」という)が露呈している。また、電気ケーブルECの端部には、相手電気コネクタ2に電気的に接続される電気ケーブル用端子170が、例えば圧着により取り付けられている(図3,6参照)。
【0019】
複合コネクタ10は、相手電気コネクタ2に電気的に嵌合接続される。該相手電気コネクタ2との嵌合接続状態にて、複合コネクタ10は、光ファイバケーブルOCから伝送された光信号を電気信号に変換して該電気信号を相手電気コネクタ2側へ伝送する。つまり、複合コネクタ10は光電気変換コネクタとしての機能を有している。なお、複合コネクタ10は、電気ケーブルECから電気信号については、信号の変換を行うことなくそのまま電気信号として相手電気コネクタ2側へ伝送する。
【0020】
図2,3では、複合コネクタ10の内部の構成が示されている。図2は、図1のケーブル付コネクタ1のコネクタ幅方向に対して直角な面での斜視断面図であり、コネクタ幅方向中央よりも手前側(図2にて右下方)にずれた位置での断面を示している。図3は、図1のケーブル付コネクタ1のコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図であり、コネクタ幅方向で図2の断面位置よりも図3での奥側へ若干ずれた位置、具体的には、後述する端子保持孔部84Aの位置での断面を示している。また、図2,3では、光ファイバケーブルOCおよび電気ケーブルECは、複合コネクタ10内に収容されている部分のみが示されており、それ以外の部分は図示が省略されている(図5ないし図7についても同様)。
【0021】
複合コネクタ10は、図2,3に見られるように、主に、電気信号を伝送する回路基板20と、該回路基板20の実装面に実装された電気接続要素30と、光信号と電気信号とを変換するとともに電気接続要素30に対して電気的に接続される変換要素40と、電気接続要素30および変換要素40を覆うシールド部材50と、回路基板20の実装面に配されて後述の変換要素側光ファイバ心線42とケーブル側光ファイバ心線OC1との接続部分を支持する光ファイバ接続支持体60と、回路基板20、電気接続要素30、変換要素40、シールド部材50、光ファイバ接続支持体60、電気ケーブルECの前端部を収容する収容体70と、該収容体70の前端部に取り付けられる外筒部材100と、収容体70の後端部に取り付けられる締付部材110とを有している。
【0022】
図2図3に見られるように、本実施形態では、複合コネクタ10は、上下方向中央位置に配された回路基板20に対して上下方向(回路基板20の板厚方向)で対称をなした構成をなしている。以下、複合コネクタ10の構成については、回路基板20の構成を除き、上半部について説明し、下半部については、上記上半部を単に上下反転させた構成であるので説明を省略する。
【0023】
回路基板20は、図2に見られるように、その板面が上下方向に対して直角をなした姿勢で前後方向に延びており、収容体70内で上下方向中央位置に設けられている。該回路基板20は、電気絶縁材製の板状をなす基材21の上面および下面のそれぞれに、電気信号の伝送のための回路部が形成されており、該上面および下面のそれぞれが実装面をなしている。上記回路部は、上記基材21の前後方向中間位置で電気接続要素30が半田接続される実装部(図示せず)と、上記基材21の前端部に形成され相手電気コネクタ2に接続可能な接続部22(図5図6をも参照)と、前後方向に延びて上記実装部と接続部22とを結ぶ配線(図示せず)とを有している。
【0024】
電気接続要素30は、本実施形態では、回路基板20の上記実装部に半田接続されるとともに、上方から変換要素40が嵌合されることにより該変換要素40と電気的に接続される回路基板用電気コネクタである(図4(C)参照)。該電気接続要素30は、前後方向に配列される複数の端子(図示せず)と、該複数の端子(図示せず)を配列保持するハウジング31とを有している。該ハウジング31には、図4(C)に見られるように、変換要素40を受け入れるための受入部31Aが上方に開口して形成されている。
【0025】
本実施形態では、変換要素40は、光ファイバケーブルOCから伝送された光信号を電気信号に変換するコネクタである。該変換要素40は、図4(C)に見られるように、電気接続要素30の受入部31Aへ上方から嵌合される変換要素本体41と、該変換要素本体41から後方(図4(C)にて右方)へ延出する光ファイバ心線42(以下、「変換要素側光ファイバ心線42」という)とを有している。
【0026】
変換要素本体41は、光ファイバケーブルOCから伝送された光信号を電気信号に変換する受光素子(図示せず)と、該受光素子を駆動する駆動デバイス(図示せず)と、上記受光素子で光信号から変換された電気信号を伝送するための複数の端子(図示せず)と、上記受光素子、上記駆動デバイスおよび上記複数の端子を保持するハウジング41A(図4(A)ないし(C)参照)とを有している。上記受光素子は、例えば、光信号を電気信号に変換するための光半導体素子であり、面受光型の受光素子(例えば、フォトダイオード(PD))等により構成される。上記駆動デバイスは、例えば、トランスインピーダンスアンプ/リミッティングアンプ(TIA/LA)で構成されている。
【0027】
また、本実施形態では、上記駆動デバイスを駆動するための電源は、回路基板20側から電気接続要素30を経て供給されている。したがって、電気ケーブルECを電源ケーブルとして使用する場合においても、上記駆動デバイスは電気ケーブルECから電源の供給を受けることはない。この結果、後述するように、変換要素40を内側収容部材80内に配するとともに電気ケーブルECの前端部を内側収容部材80外に配して、該内側収容部材80の隔離部としての上壁85によって両者を隔離することが可能となる(例えば図3参照)。
【0028】
変換要素側光ファイバ心線42は、その前端部が変換要素本体41の受光素子に対して調心された状態でハウジング41Aに保持されることにより該変換要素本体41に接続されている。また、変換要素側光ファイバ心線42の後端部は、後述するように、光ファイバ接続支持体60の支持孔部61内で、ケーブル側光ファイバ心線OC1に対して調心された状態で該ケーブル側光ファイバ心線OC1の前端部に接続されている(図4(B),(C)参照)。
【0029】
本実施形態では、変換要素40は、既述のように、光信号を電気信号に変換することとしたが、これに代えて、該変換要素40は、電気接続要素30から伝送された電気信号を光信号に変換するようになっていてもよい。この場合、変換要素40には、受光素子に代えて、例えば、面発光型の発光素子(例えば、垂直共振器面発光(VCSEL)レーザ型の発光素子)等を設けることが可能である。この場合、駆動デバイスとしては、例えば、上記発光素子を駆動するためのデバイス(例えば、VCSELドライバ)が設けられる。
【0030】
シールド部材50は、金属板部材が板厚方向に屈曲されて作られており、図2,3に見られるように、下方に開口した直方体外形の箱状をなしている。該シールド部材50は、互いに嵌合接続状態にある電気接続要素30および変換要素40を覆うようにして、回路基板20の実装面に半田付けされて固定されている。つまり、シールド部材50は、電気接続要素30および変換要素40を、上方からそして上下方向に対して直角をなす四方(前後方向での両側およびコネクタ幅方向での両側)から囲っている。その結果、該電気接続要素30と該変換要素40との間で伝送される電気信号が、外部からのノイズ、特に、電気ケーブルECで伝送されている他の電気信号からノイズの影響を受けにくくなる。
【0031】
光ファイバ接続支持体60は、図3ないし図6に見られるように、変換要素側光ファイバ心線42の後端部とケーブル側光ファイバ心線OC1の前端部との接続部分を支持するための部材であり、本実施形態では、キャピラリによって構成されている。該光ファイバ接続支持体60は、前後方向に延びる円筒状外形をなしており、その内部には、図4(B),(C)に見られるように、各光ファイバ心線42,OC1よりも若干大きい径をもつ支持孔部61が前後方向に延びて貫通形成されている。該光ファイバ接続支持体60では、変換要素側光ファイバ心線42の後端部を前方からそしてケーブル側光ファイバ心線OC1の前端部を後方から支持孔部61に挿入して当接させることにより、両者を該支持孔部61内で自動的に調心することが可能となっている。つまり、該支持孔部61は、光ファイバ心線42,OC1を支持することにより両者を自動的に調心する調心支持部としての機能を有している。また、光ファイバ心線42,OC1同士の接続の際には、支持孔部61内に接着剤が予め注入されており、該支持孔部61内での光ファイバ心線42,OC1同士の当接後、上記接着剤が硬化することにより、両者の接続部分が固定そして支持される。
【0032】
光ファイバ接続支持体60としては、上述のようなキャピラリに限られず、種々の部材を採用することができ、例えば、光ファイバ心線の端部同士を支持して調心する溝部を有するメカニカルスプライス等の部材を採用してもよい。
【0033】
光ファイバ接続支持体60は、シールド部材50で覆われた電気接続要素30および変換要素40よりも後方位置、かつ、コネクタ幅方向での中央位置で、テープ等によって回路基板20の実装面上に固定されている(図5,6参照)。本実施形態では、光ファイバ接続支持体60と電気接続要素30および変換要素40とが、コネクタ幅方向で重複範囲をもった位置関係で配されており、これによって、上記コネクタ幅方向で複合コネクタ10の小型化が図られている。また、図5,6によく見られるように、コネクタ幅方向での光ファイバ接続支持体60の両側には、規制部材180が光ファイバ接続支持体60に隣接するようにして回路基板20の上面に取り付けられており、この二つの規制部材180によって、コネクタ幅方向での光ファイバ接続支持体60の不用意な移動が阻止されている。
【0034】
収容体70は、図2,3に見られるように、前後方向に延びる電気絶縁材製の内側収容部材80と、前後方向に延び該内側収容部材80を収容する電気絶縁材製の外側収容部材90とを有している。
【0035】
内側収容部材80は、図7によく見られるように、上面および下面が平坦面をなしコネクタ幅方向での両側面が凸湾曲面をなした外形で作られている。図2に見られるように、内側収容部材80の内部には、前後方向に対して四角形の断面をなす空間が前後方向に貫通して形成されている。該空間は、前端寄り位置に形成された隔壁81によって前後方向で二分されている。
【0036】
該隔壁81より前方の空間は、上下方向中央位置にて、隔壁81を貫通して前方へ突出した回路基板20の前端部、すなわち接続部22が形成されている部分を収容しており、該前端部によって上下方向に二分されている。この二分されたそれぞれの空間は、相手電気コネクタ2の対応内側嵌合部(図示せず)を前方から受け入れるための内側嵌合凹部82として形成されている。また、上記空間内の前端位置かつ上下方向中央位置には、図2に見られるように、コネクタ幅方向で対向する内壁面同士間にわたってコネクタ幅方向に延びる位置決め部82Aが形成されており、回路基板20の前端面が該位置決め部82Aの後面に当接することにより該回路基板20が前後方向で位置決めされるようになっている。
【0037】
該隔壁81より後方の空間は、回路基板20の前端部を除いた部分を上下方向中央位置に収容しており、該回路基板20によって上下方向に二分されている。二分されたそれぞれの空間は、電気接続要素30、変換要素40(図4(A)ないし(C)参照)、シールド部材50および光ファイバ接続支持体60を収容する内側収容空間83として形成されている。
【0038】
図7によく見られるように、内側収容部材80は、前端側の位置で上面から略直方体外形をなして突出する端子保持部84が形成されている。該端子保持部84には、電気ケーブルECの前端部に取り付けられた電気ケーブル用端子170を保持するための二つの端子保持孔部84Aがコネクタ幅方向に配列形成されている。該二つの端子保持孔部84Aは、端子保持部84を前後方向に貫通して形成されており、後方から挿入された電気ケーブル用端子170を保持している。
【0039】
また、図7によく見られるように、端子保持部84の上面には、前後方向に延びる溝部84Bが形成されている。該溝部84Bは、後述するように、外側収容部材90の突条部91とコネクタ幅方向で係止することにより、該外側収容部材90をコネクタ幅方向で位置決めするようになっている。
【0040】
また、図2,3に見られるように、端子保持部84よりも後方には、内側収容部材80と外側収容部材90との間で前後方向に延びる外側収容空間71が形成されており、該外側収容空間71には、電気ケーブルECの前端部が収容されている。このように、本実施形態では、回路基板20、電気接続要素30そして変換要素40は内側収容部材80内に位置し、電気ケーブルECの前端部は内側収容部材80外に位置している。つまり、両者は内側収容部材80の隔離部としての上壁85によって上下方向で隔離されているので、両者が近接して位置することがない。したがって、変換要素40で光信号から変換された電気信号が、上記電気ケーブルECで伝送される他の電気信号からのノイズの影響を受けにくくなっている。特に、電気ケーブルECが電源ケーブルとして使用される場合には、通常、電源電流の電流値が高く、発生するノイズが大きいので、本実施形態によれば、ノイズの影響の低減について高い効果が得られる。
【0041】
外側収容部材90は、図2に見られるように、前後方向で内側収容部材80および回路基板20よりも長く延びた略円筒形状をなしており、その後端は内側収容部材80および回路基板20のそれぞれの後端よりも後方に位置している。外側収容部材90の前端部には、上端位置で内周面から下方へ突出するとともに、前後方向に延びる突条部91が形成されている。該突条部91は、内側収容部材80の端子保持部84の溝部84B(図7参照)内に収められ、既述したように、コネクタ幅方向で該溝部84Bと係止することにより該コネクタ幅方向で位置決めされる。また、外側収容部材90は、前端寄り位置で外周面から周方向全域にわたって半径方向外方へ突出する外周突部92が形成されている。
【0042】
外筒部材100は、図1ないし図3によく見られるように、前後方向に延びる中空円筒状をなしており、収容体70の前端部を収容するようにして、該前端部に取り付けられている。該外筒部材100の内周面と収容体70の外側収容部材90の前端部の外周面の間に形成された円環状の空間は、相手電気コネクタの対応外側嵌合部230(図1参照)を前方から受け入れるための外側嵌合凹部101として機能する。
【0043】
外筒部材100は、前後方向中間位置で内周面から周方向全域にわたって半径方向内方へ突出する内周突部102が形成されている。該内周突部102は、図2図3によく見られるように、外側収容部材90の外周突部92よりも前方に位置している。図3に見られるように、前後方向で外筒部材100の内周突部102と外側収容部材90の外周突部92との間に形成された空間にはコイルばね160が設けられている。外筒部材100は、いわゆるプッシュプル方式での相手電気コネクタ2との嵌合過程において、コイルばね160の伸縮により外側収容部材90に対して前後方向にスライド可能となっている。上記既述したようにプッシュプル方式の嵌合動作自体は公知であるので、嵌合動作についての説明は省略する。
【0044】
締付部材110は、図2,3に見られるように、前後方向に延びる円筒状をなしており、複合ケーブルCが挿通されるとともに、外側収容部材90の後端部の外周面に対してねじ留めされて取り付けられている。該締付部材110の後端部には、その内周面から周方向全域にわたって半径方向内方へ突出する押圧突部111が形成されている。該押圧突部111の前端面は、前方へ向かうにつれて締付部材110の半径方向外方へ傾斜するテーパ状の押圧面111Aとして形成されている。
【0045】
また、締付部材110の内部には、複合ケーブルCを保持するためのケーブル保持部材120が設けられている。ケーブル保持部材120は、前後方向に軸線をもつ中空円筒状をなしており、複合ケーブルCが挿通されている。該ケーブル保持部材120は、後半部全域で前後方向に延びるスリット(図示せず)が周方向での複数箇所に形成されることにより、半径方向で弾性変位可能な複数のケーブル保持片121が形成されている。
【0046】
ケーブル保持片121の後端部には、後方に向かうにつれてケーブル保持部材120の半径方向内方へ傾斜するテーパ状の被押圧面121Aが形成されている。該被押圧面121Aが締付部材110の押圧面111Aと接面しており、該押圧面111Aから上記半径方向内方へ向けた押圧力および前方へ向けた押圧力を同時に受けるようになっている。後述するように、該被押圧面121Aが上記半径方向内方へ向けた押圧力を受けると、ケーブル保持片121が同方向へ弾性変位して複合ケーブルCを保持する。また、後述するように、被押圧面121Aが前方へ向けた押圧力を受けることにより回路基板20が前後方向で位置決めされる。締付部材110は、外側収容部材90の後端部に対してねじ止めにより取り付けられることとしたが、締付部材の取付形態はこれに限られず、例えば、外側収容部材の後端部が締付部材に圧入されるような形態で、該締付部材が後方から取り付けられてもよい。
【0047】
ケーブル保持部材120より前方には、複合ケーブルCの前端から露出したケブラー(登録商標)を留めておくための金属製のケブラー留め部材130および金属製のカシメリング140が設けられている。図3によく見られるように、ケブラー留め部材130およびカシメリング140の前端は、複合ケーブルCの前端と同位置にある。ケブラー留め部材130は、前後方向に軸線をもつ中空円筒状をなしており、複合ケーブルCが挿通され、該複合ケーブルCの外周面に取り付けられている。図示はされていないが、該ケブラー留め部材130の後端面は、該ケブラー留め部材130の周方向での一部の領域でケーブル保持部材120の前端面と部分的に接面しており、後述するように、該ケーブル保持部材120からの前方へ向けた押圧力を受けることが可能となっている。
【0048】
カシメリング140は、前後方向に軸線をもつ中空円筒状をなしており、ケブラー留め部材130が挿通されている。複合ケーブルCの端部から露出したケブラーは、カシメリング140とケブラー留め部材130との間に配されて、カシメリング140が半径方向でカシメられることにより、該カシメリング140とケブラー留め部材130とで挟持されている。また、カシメリング140がカシメられてもケブラー留め部材130が半径方向で変形することはなく、複合ケーブルC内の光ファイバケーブルOCおよび電気ケーブルECの損傷が防止されている。
【0049】
ケブラー留め部材130およびカシメリング140より前方には、ゴムリング150が設けられている。ゴムリング150は、前後方向に軸線をもち複合ケーブルCの被覆の内径とほぼ同径の孔部を有している。ゴムリング150の前端面には、上下方向中央位置に、回路基板20の後端部を保持するためのスリット151が形成されている。該ゴムリング150の後端面は、ケブラー留め部材130およびカシメリング140の前端面と接面しており、後述するように、該ケブラー留め部材130およびカシメリング140からの前方へ向けた押圧力を受けることが可能となっている。
【0050】
相手電気コネクタ2は、図1に見られるように、前後方向に延びる略円筒状外形をなしており、後方からケーブル付コネクタ1が嵌合接続されるようになっている。該相手電気コネクタ2は、図1に見られるように、上下方向での中央域に配列された複数の内側相手端子210と、該内側相手端子210を上下方向で挟むように位置する複数の外側相手端子220とを有している。内側相手端子210は、ケーブル付コネクタ1との嵌合接続状態にて、該ケーブル付コネクタ1の回路基板20の接続部22に接続される。また、外側相手端子220は、ケーブル付コネクタ1との嵌合接続状態にて、該ケーブル付コネクタ1の電気ケーブルECに取り付けられた電気ケーブル用端子170に接続される。内側相手端子210および外側相手端子220のそれぞれは、ハウジング外へ前方に延出する接続脚部211,221を有しており、該接続脚部211,221で電気機器の対応回路部(図示せず)に接続されるようになっている。また、相手電気コネクタ2の円筒状の対応外側嵌合部230には、コネクタ幅方向での両側に、ケーブル付コネクタ1のロック部(図示せず)とのロックのための対応ロック部231が形成されている。
【0051】
次に、本実施形態に係るケーブル付コネクタ1の製造工程について説明する。ここでは、複合コネクタ10の上半部での工程を中心に説明し、下半部での工程については、上下反転している点を除いて上半部での工程と同様であるので、説明を省略する。また、以下で説明する各工程の順序はあくまでも一例であり、必要に応じて工程の順序を入れ替えてもよい。
【0052】
まず、複合ケーブルCの前端部に締付部材110、ケーブル保持部材120、ケブラー留め部材130、カシメリング140およびゴムリング150をこの順で前方から挿通させる。次に、複合ケーブルCの前端部の被覆を除去して、該前端部から二本のケーブル側光ファイバ心線および四本の電気ケーブルECを露呈させる。次に、複合ケーブルCの前端部の被覆を除去した際に露呈したケブラーを後方へ折り返してケブラー留め部材130とカシメリング140との間に配し、カシメリング140を半径方向にカシメることにより、上記ケブラーをケブラー留め部材130とカシメリング140とで挟持する。また、各電気ケーブルECの前端に、金属板部材を屈曲して形成した電気ケーブル用端子170を圧着して取り付ける。
【0053】
一方、受光素子、駆動デバイスおよび複数の端子をハウジング41Aで、例えば一体モールド成形により保持させて変換要素本体41を作っておき、変換要素側光ファイバ心線42を上記受光素子に対して調心させた状態で該変換要素本体41に接続して変換要素40を完成させる。
【0054】
次に、光ファイバ接続支持体60の支持孔部61に予め接着剤を注入しておき、図4(A),(B)に見られるように、変換要素40の変換要素側光ファイバ心線42の後端部を光ファイバ接続支持体60の支持孔部61の前方から挿通するとともに、ケーブル側光ファイバ心線OC1の前端部を該支持孔部61の後方から挿通して、光ファイバ心線同士の端面を突き合わせる。この結果、光ファイバ心線同士は自動的に調心されるとともに、上記接着剤の硬化により接続され、その接続部分が上記支持孔部61内で支持される。なお、光ファイバ心線42,OC1は、必要に応じて、コーティングが除去された状態で接続してもよい。
【0055】
また、回路基板20の実装面上の実装部に電気接続要素30を半田付けにより実装する(図4(C)参照)。次に、図4(C)に見られるように、電気接続要素30に対して変換要素40を上方から嵌合接続するとともに、該電気接続要素30よりも後方位置で光ファイバ接続支持体60を回路基板20の実装面にテープ等により固定する。また、光ファイバ接続支持体60のコネクタ幅方向での両側位置に、規制部材180を実装面に取り付けて、コネクタ幅方向での光ファイバ接続支持体60の不用意な移動を規制する。
【0056】
次に、嵌合状態にある電気接続要素30および変換要素40を覆うようにシールド部材50が上方から配され、該シールド部材50が回路基板20の実装面に半田付けにより固定される(図5参照)。図5では、複合ケーブルC、締付部材110やゴムリング150等の図示が省略されているが、実際には、図6に示されるように、ゴムリング150によって回路基板20の後端部が保持されており、複合ケーブルCから露呈している電気ケーブルECが光ファイバ心線よりも上方に配された状態にある。
【0057】
次に、図7に見られるように、内側収容部材80を前方からもたらして、回路基板20を内側収容部材80の内部空間へ後方から収容する。このとき、回路基板20は内側収容部材80の位置決め部82Aに当接するまで挿入される。この結果、上記内部空間が回路基板20によって上下方向で二つの内側収容空間83に分割され、電気接続要素30、変換要素40、シールド部材50および光ファイバ接続支持体60が内側収容空間83に収容される(図2,3を参照)。
【0058】
また、電気ケーブルECの前端に取り付けられている電気ケーブル用端子170を内側収容部材80の端子保持孔84Aへ後方から挿入して取り付けて、電気ケーブルECを内側収容部材80に接続する。この結果、図3に見られるように、電気ケーブル用端子170が端子保持部84で保持されるととともに、電気ケーブルECの前端部が内側収容部材80外で該内側収容部材80の上面に沿って前後方向に延びた状態となる。
【0059】
また、外筒部材100へ外側収容部材90を前方から挿通することにより、該外筒部材100を外側収容部材90の前端部に取り付ける。このとき、外側収容部材90の前端部にコイルばね160を予め取り付けておくことにより、外筒部材100の取付けが完了した状態において、前後方向での外筒部材100の内周突部102と外側収容部材90の外周突部92との間にコイルばね160が収められ、外筒部材100がコイルばね160の伸縮により外側収容部材90に対して前後方向でスライド可能となる。
【0060】
次に、外筒部材100が取り付けられた外側収容部材90を、内側収容部材80へ前方から取り付ける。このとき、外側収容部材90の突条部91が内側収容部材80の端子保持部84の溝部84B内に前方から挿入され、コネクタ幅方向で該溝部84Bと係止することにより、外側収容部材90がコネクタ幅方向で位置決めされる。また、外側収容部材90の内周面が内側収容部材80の端子保持部84の上面と当接することにより、該外側収容部材90が上下方向で位置決めされる。このようにして外側収容部材90が内側収容部材80に取り付けられた状態において、外側収容部材90と内側収容部材80との間に外側収容空間71が形成され、図2,3に見られるように、該外側収容空間71には電気ケーブルECの前端部が収容されることとなる。
【0061】
次に、締付部材110を外側収容部材90の後端部にねじ止めする。ねじ止めの過程にて、締付部材110が前方へ移動すると、該締付部材110の押圧面111Aがケーブル保持部材120のケーブル保持片121の被押圧面121Aに接面し、該被押圧面121Aを押圧する。その結果、該被押圧面121Aには、半径方向内方へ向けた押圧力および前方へ向けた押圧力が同時に作用する。
【0062】
被押圧面121Aが上記半径方向内方へ向けた押圧力を受けると、ケーブル保持片121が半径方向内方へ向けて弾性変位して複合ケーブルCの外周面に押し当てられる。その結果、ケーブル保持片121によって複合ケーブルCが保持され、複合コネクタ10からの複合ケーブルCの不用意な抜け等が防止される。また、被押圧面121Aが上記前方へ向けた押圧力を受けると、該ケーブル保持部材120が前方へ移動してケブラー留め部材130の後端面を前方へ向けて押圧する。
【0063】
ケブラー留め部材130の後端面が前方へ押圧されると、該ケブラー留め部材130、カシメリング140および複合ケーブルCが前方へ向けて移動して、ゴムリング150の後端面を前方へ向けて押圧する。ゴムリング150が押圧されると、該ゴムリング150が回路基板20とともに前方へ向けて移動する。そして、該回路基板20の前端が内側収容部材80の位置決め部82Aに当接してそれ以上の前方への移動が規制されることにより、該回路基板20が前後方向で位置決めされ、その時点で締付部材110のねじ止め作業を完了する。このようにしてケーブル付コネクタ1の製造工程が完了する。
【0064】
本実施形態では、既述したように、ケーブル付コネクタ1の製造の際には、変換要素40の変換要素側光ファイバ心線42と光ファイバケーブルOCのケーブル側光ファイバ心線OC1とが接続され、その接続部分が光ファイバ接続支持体60によって支持される。つまり、複合ケーブルCの体部分(製品としての複合ケーブルの全長をなす部分)に連続している上記ケーブル側光ファイバ心線OC1の端部を変換要素本体41に対して調心する必要がない。また、変換要素側光ファイバ心線42とケーブル側光ファイバ心線OC1との接続の際には、両光ファイバ心線42,OC1を光ファイバ接続支持体60の支持孔部61に配するだけで光ファイバ心線42,OC1同士が自動的に調心されるので、光ファイバ心線42,OC1同士の接続作業が簡単である。したがって、本実施形態では、変換要素40と光ファイバケーブルOCの本体部分とを短時間で簡単に接続できる。
【0065】
また、本実施形態では、変換要素側光ファイバ心線42とケーブル側光ファイバ心線OC1との接続に先立って、変換要素40が製造される。既述したように、該変換要素40の製造の際、変換要素本体41に対して変換要素側光ファイバ心線42を調心して接続する作業が必要となる。しかし、変換要素側光ファイバ心線42は全長が短いので、従来のように長尺の光ファイバケーブルの本体部分に連続しているケーブル側光ファイバ心線を変換要素本体に接続する場合と比べて、変換要素本体41に対する変換要素側光ファイバ心線42の接続作業は簡単である。
【0066】
また、製品として複合ケーブルCの本体部分の全長が確定する前に、所定の長さの変換要素側光ファイバ心線42を有する変換要素40を予め用意しておけば、上記全長が確定してから変換要素側光ファイバ心線42とケーブル側光ファイバ心線OC1とを接続しても、その接続作業は短時間で済むので、結果として、製品の製造手配から完成に至るまでに時間を従来よりも大幅に短縮することができる。また、製品毎に上記本体部分の全長が異なっていても、全ての製品において、同じ長さの変換要素側光ファイバ心線を有する変換要素40を使用することができるので、変換要素側光ファイバ心線の長さが異なる複数種の変換要素を用意する必要がなく、また、各製品の複合ケーブルCの本体部分の全長に応じた専用の調心装置を用意する必要もなく、コストの増大を抑制できる。
【0067】
本実施形態では、変換要素40は、電気接続要素30を介して間接的に回路基板20の回路部に接続されることとしたが、これに代えて、電気接続要素を省略し、変換要素が回路基板の回路部に直接半田接続されていてもよい。また、本実施形態では、回路基板20の前端部に形成された接続部22で相手電気コネクタ2の内側相手端子210(対応接続部)に対して電気的に接続されることとしたが、これに代えて、例えば、回路基板の前端部の実装面上に電気コネクタを配して回路部と接続し、該電気コネクタで相手電気コネクタと嵌合接続されるようになっていてもよい。
【0068】
複合コネクタ10は、複合ケーブルCの長手方向両端に接続されていてもよく、また、いずれか一端にのみ接続されていてもよい。
【0069】
本実施形態では、複合コネクタ10を回路基板20に対して上下方向で対称をなした構成として、回路基板20の両面側に電気接続要素30、変換要素40、光ファイバ接続支持体60等の要素が配されるようにしたので、回路基板20の片面側にこれらの要素が配される場合と比べて、一つの複合コネクタで接続可能な光ファイバケーブルおよび電気ケーブルを倍増させることができる。
【0070】
本実施形態では、電気ケーブルECと回路基板20の回路部、電気接続要素30および変換要素40とが上下方向で隔離されることとしたが、隔離される方向はこれに限られず、コネクタ接続方向に対して直角な方向であればよい。したがって、例えば、コネクタ幅方向に対して直角な板面をもつ隔離部としての隔壁を収容体に形成し、電気ケーブルと回路基板の回路部等とをコネクタ幅方向で隔離するようにしてもよい。
【0071】
本実施形態では、収容体70を内側収容部材80および外側収容部材90の二部材で構成し、内側収容部材80で回路基板20、電気接続要素30、変換要素40収容し、外側収容部材90と内側収容部材80との間の空間で電気ケーブルECを収容することとしたが、収容体を二部材で構成することは必須ではなく、例えば、一部材で構成してもよい。収容体を一部材で構成する場合には、例えば、収容体の内部空間を前後方向に対して直角な方向で分割する隔壁を隔離部として該収容体に形成し、電気ケーブルと回路基板の回路部、電気接続要素および変換要素とを上記前後方向に対して直角な方向で隔離することができる。また、この場合、上記隔離部が上記隔壁のような壁状であることは必須ではなく、例えば、収容体の内部空間内で前後方向に対して直角な方向に延びる梁状部を収容体に少なくとも一つ形成し、該梁状部を隔離部としてもよい。
【0072】
本実施形態では、一つの回路基板20の両方の板面にそれぞれ回路部を形成し、それぞれの板面側に電気接続要素30、変換要素40、光ファイバ接続支持体60等の要素を配することとしたが、これに代えて、回路基板の一方の板面にのみ回路部を形成し、該一方の板面側に上記要素を配することとしてもよい。また、この場合、回路基板における回路部が形成されていない他方の板面側に電気ケーブルを配することにより、上記回路基板の基材で、電気ケーブルと、回路基板の回路部、電気接続要素および変換要素とを隔離してもよい。
【0073】
本実施形態では、複合コネクタ10に設けられる回路基板は一つであったが、回路基板の数はこれに限られず、複数であってもよい。また、本実施形態では、回路基板の板面に回路部が形成されていることとしたが、これに代えて、回路部が基材の内部に形成されていてもよい。また、回路基板は、回路部としての少なくとも一つの端子が基材で保持されることにより形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ケーブル付コネクタ 60 光ファイバ接続支持体
2 相手電気コネクタ 61 支持孔部(調心支持部)
10 複合コネクタ 70 収容体
20 回路基板 85 上壁(隔離部)
21 基材 170 電気ケーブル用端子
30 電気接続要素 C 複合ケーブル
40 変換要素 OC 光ファイバケーブル
42 変換要素側光ファイバ心線 OC1 ケーブル側光ファイバ心線
50 シールド部材 EC 電気ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7