【文献】
木村 知史,日産,量産工程の立ち上げ時間を半減 ITツールで検討品質を向上,日経ものづくり,日本,日経BP社,2006年10月 1日,第625号,p.25〜27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クランパの可動部の移動に関する設定と、前記ワークに当接する前記可動部の当接位置とを入力可能な入力部を備え、前記調整部は、前記指定されたワークの寸法又は形状と、入力された前記当接位置とに基づいて前記可動部の寸法を自動的に調整する、請求項1に記載の治具設計支援装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る治具設計支援装置の一構成例を示す図である。
【
図2】
図1の治具設計支援装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】ワークの種類を指定する際の画面表示例を示す図である。
【
図4】ワークと該ワークを取り付けるプレートを仮想空間内に自動配置した例を示す図である。
【
図5】位置決めブロックの種類を選択する際の画面表示例を示す図である。
【
図6】位置決めブロックの配置方法を選択する際の画面表示例を示す図である。
【
図7a】位置決めブロックの配置場所を指定する際の画面表示例を示す図である。
【
図7b】位置決めブロックを指定の場所に配置した状態の画面表示例を示す図である。
【
図7c】位置決めブロックを複数配置した状態の画面表示例を示す図である。
【
図8a】ワークの側面に配置した位置決めブロックの高さを自動調整する例を示す図である。
【
図8b】ワークの下面に配置した位置決めブロックの高さを自動調整する例を示す図である。
【
図9a】円柱形状のワークの側面に配置したV字ブロックの高さを自動調整する例を示す図である。
【
図9b】直方体形状のワークの側面に配置したL字ブロックの高さを自動調整する例を示す図である。
【
図10】円柱形状のワークの穴内にピンブロックを配置した状態の画面表示例を示す図である。
【
図11】クランパの種類を選択する際の画面表示例を示す図である。
【
図12a】クランパの配置場所を選択する際の画面表示例を示す図である。
【
図12b】クランパを指定の場所に配置した状態の画面表示例を示す図である。
【
図13】クランパの可動部の移動に関する定義・設定を行う際の画面表示例を示す図である。
【
図14a】
図1の治具設計支援装置によって設計・作成された治具をロボットシミュレータに適用した場合の画面表示例であり、クランパが閉じている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本開示の好適な実施形態に係る治具設計支援装置(以降、単に支援装置とも称する)の一構成例を示す図である。支援装置は、工作機械等(図示せず)で加工されるワークを所定位置に固定するための治具の詳細設計を行う前に、大まかな治具の3次元モデルを作成し、設計者の詳細設計を支援するための装置であり、より具体的には、治具を構成する部品(後述する位置決めブロックやクランパ等)間の干渉や、ワークの把持等の作業を行うロボットハンドと治具との干渉等を検討するために、大まかな治具モデルを作成する。
【0011】
支援装置10は、例えばパーソナルコンピュータ等の、演算処理装置(プロセッサ)及び記憶装置(メモリ)を有する装置として提供可能であり、後述する3次元画像(仮想3次元空間)を表示するディスプレイ12と、設計者(作業者)の入力操作を受け付ける入力部14とを有する。なお入力部14としては例えば、パーソナルコンピュータのマウス16、キーボード18又はタッチパネル(図示せず)等が使用可能であるが、ディスプレイ12が設計者のタッチ入力を受け付けるタッチパネルの機能を具備してもよい。
【0012】
支援装置10は、ディスプレイ12に仮想の3次元空間を表示させる処理を行う表示(処理)部19と、ワーク、位置決めブロック、クランパ、及びワークが取り付け可能な取り付けプレートの3次元モデルを記憶する記憶部20と、治具によって固定されるワークの種類を指定するための入力を受け付けるワーク指定部22と、ワーク指定部22によって指定されたワークのCADモデルを記憶部20から読み出すとともに、指定されたワークが取り付け可能な取り付けプレートの3次元モデルを記憶部20から読み出して、読み出した取り付けプレートに指定されたワークを取り付けた状態で3次元空間内に自動的に配置するワーク配置部24と、位置決めブロックの種類及び配置方法を選択するための入力を受け付ける位置決めブロック選択部26と、クランパの種類を選択するための入力を受け付けるクランパ選択部28と、指定されたワークの3次元モデルにおける、位置決めブロック又はクランパが当接するモデル部位(モデル表面)を指定するための入力を受け付けるモデル部位指定部30と、指定されたモデル部位、及び位置決めブロック選択部26又はクランパ選択部28の選択内容に基づいて、位置決めブロックの3次元モデル又はクランパの3次元モデルを記憶部20から読み出して3次元空間内に配置する治具配置部32と、治具配置部32により配置された位置決めブロックの3次元モデル又はクランパの3次元モデルの寸法又は形状を、指定されたワークの寸法又は形状に応じて自動的に調整する調整部34とを備える。
【0013】
なお本実施形態では、記憶部20の機能は上記記憶装置(メモリ)が担い、ワーク指定部22、位置決めブロック選択部26、クランパ選択部28及びモデル部位指定部30の機能は上記入力部(マウス16、キーボード18、タッチパネル等)が担い、表示部19、ワーク配置部24、治具配置部32及び調整部34の機能は上記演算処理装置(プロセッサ)が担うものとするが、これは一例である。また記憶装置(記憶部20)は、支援装置10を構成するパーソナルコンピュータ等とは外観上、別の装置とすることもできるが、そのような形態も本開示に含まれるものとする。
【0014】
以下、支援装置10の作用について、
図2のフローチャート等を参照しつつ説明する。先ず、
図3に例示するような、メニュー画面(ナビゲータ)36がディスプレイ12に表示され、設計者(作業者)がマウス16等を操作して、ワークの種類を指定する(ステップS1)。ここでは一例として、ワークは
図4に示すようなコンロッド(コネクティングロッド)38とする。
【0015】
次に、指定されたワーク38の3次元モデル(CADモデルデータ)が記憶部20から読み出され(ステップS2)、さらに、ワーク38の大きさや形状に適した取り付けプレート40の3次元モデル(データ)が自動的に記憶部20から読み出され、
図4に示すように、ワーク38が取り付けプレート40に取り付けられた状態で、仮想3次元空間(ディスプレイ12上)に配置・表示される(ステップS3)。なお取り付けプレート40の種類は、指定されたワーク38の種類に基づいて記憶部20から自動的に抽出可能であるが、
図3に例示したメニュー画面36から作業者が選択・指定できるようにしてもよい。
【0016】
次にステップS4において、作業者は
図4に例示するようなメニュー画面36から、配置された取り付けプレート40の位置及び寸法が適当か否かを判断する。適当でないと判断される場合、作業者はマウス16やキーボード18を操作して、取り付けプレート40の位置、形状及び寸法の少なくとも1つを適宜修正することができる(ステップS5)。
【0017】
次のステップS6では、
図5に例示するようなブロック選択メニュー42がディスプレイ12に表示され、作業者がマウス16等を操作して、位置決めブロックの種類を選択する。なお各ブロックは、円柱形状、又はV字、L字若しくはT字形状等の周知のものでよいが、これらに限られない。
【0018】
次のステップS7では、
図6に例示するようなブロック配置メニュー44がディスプレイ12に表示され、作業者がマウス16等を操作して、位置決めブロックの配置方法を選択する。ここで、ステップS6で選択した位置決めブロックの種類に適用できない配置方法は選択できないように設定してもよい。
【0019】
次のステップS8では、作業者がマウス16等を操作して、位置決めブロックの配置位置を指定する。例えば
図7aの矢印で示すように、作業者がワーク(コンロッド)38の大径部分46の外側面上の一箇所を指定することにより、
図7bに示すように、ステップS6において位置決めブロックとして選択されたピンブロック48の3次元モデルデータが記憶部20から読み出され、大径部分46の指定された箇所に当接するように配置・表示される(ステップS9)。
【0020】
位置決めブロックが複数ある場合は、例えば
図7cに示すように、作業者がワーク(コンロッド)38の大径部分46の外側面上の複数箇所(ここでは4箇所)を指定することにより、4つのピンブロック48を大径部分46の指定された複数箇所にそれぞれ当接するように配置・表示することができる。同様に、作業者がワーク38の小径部分50の内側面を指定することにより、ワーク38の小径部分50に嵌合するピンブロック52が配置・表示される。さらに、作業者がワーク38の下面の複数箇所を指定することにより、ワーク38を支持する複数のT字ブロック54を配置することができる。
【0021】
或いは、作業者が大径部分46等のワークの1箇所を指定しただけで、
図7cに示すように大径部分46等の複数箇所に当接する位置決めブロックを自動的に配置することもできる。この場合、ワークの各部(例えば大径部分46)にいくつの位置決めブロック(ここではピンブロック48)をどのような間隔(ここでは90度の等角度間隔)で配置するかというような、複数の位置決めブロックの配置ルールを予め定めておくことにより、作業者が大径部分46の1箇所を指定すれば、該配置ルールに基づいて該指定箇所を含む複数の部位にピンブロックが自動配置される。同様に、後述するクランパについても、複数のクランパの配置ルールを予め定めておくことにより、作業者がクランパで把持すべきワークの1箇所を指定すれば、該指定箇所を含む複数の部位にクランパを自動配置することができる。
【0022】
図8a及び
図8bは、ステップS9における、位置決めブロックの形状又は寸法を、指定したワーク表面の位置に応じて自動で調整する処理について説明する図である。例えば
図8aに示すように、ピンブロック48を配置するために作業者がワーク38の外側面を指定する(ステップS8)前に、ピンブロック48の配置方法として「(ワークの)高さに合わせる」を選択しておく(ステップS7)と、ピンブロック48の高さは、自動的にワーク38の大径部分46と同じ高さに調整される。
【0023】
同様に、例えば
図8bに示すように、T字ブロック54を配置するために作業者がワーク38の下面を指定する(ステップS8)前に、T字ブロック54の配置方法として「(ワークの)面に合わせる」(
図6参照)を選択しておく(ステップS7)と、T字ブロック54の上面がワーク38の下面に当接するように、自動的にT字ブロック54の高さが調整される。このようにして、作業者が具体的な数値等を入力せずとも、位置決めブロックの形状及び寸法の少なくとも一方を、作業者の意図したものに自動的に調整することができる。
【0024】
図9a及び
図9bは、ステップS9における、位置決めブロックの配置位置を、指定したワークの面又はエッジの位置及び形状に応じて自動で調整する処理について説明する図である。例えば
図9aに示すように、V字ブロック56を配置するために作業者が円盤状又は円柱状のワーク58の外側面(矢印60で示す)を指定する(ステップS8)前に、V字ブロック56の配置方法として「曲面支持」を選択しておく(ステップS7)と、V字ブロック56の配置位置は、自動的にワーク58の曲面(外周面)に当接するように調整される。
【0025】
同様に、例えば
図9bに示すように、L字ブロック62を配置するために作業者が略直方体形状のワーク64の側面を指定する(ステップS8)前に、L字ブロック62の配置方法として「(ワークの)面に合わせる」(
図6参照)を選択しておく(ステップS7)と、L字ブロック62がワーク64の角部(矢印66で示す)に当接するように、自動的にL字ブロック64の位置が調整される。このようにして、作業者が位置決めブロックの位置を手動で変更せずとも、位置決めブロックの配置位置を、作業者の意図したものに自動的に調整することができる。
【0026】
なお
図9a又は
図9bの例において、位置決めブロックの形状及び寸法の少なくとも一方を、ワークの形状や寸法に応じて自動で調整するようにしてもよい。例えば、
図8aの例と同様に、V字ブロック56又はL字ブロック64の高さを、ワークの高さと同一となるように自動的に調整することができる。
【0027】
図10は、ステップS9における、円形形状(ここでは円形の穴)の面又はエッジを指定し、指定された位置及び形状に応じて位置決めブロックの配置位置を自動で調整する例について説明する図である。ワーク68が少なくとも1つの穴70を有する場合、穴70内にピンブロック72を挿入してワーク68を位置決めすることができるが、この場合において、作業者が穴70を指定する(ステップS8)前に、ピンブロック72の配置方法として「穴に合わせる」(
図6参照)を選択しておく(ステップS7)と、ピンブロック72は、自動的に穴70内に挿入された状態で配置される。またステップS7において、「径も合わせる」を選択すると、ピンブロック72の外径が穴70の内径に等しくなるように自動的に調整(拡径又は縮径)された上で、穴70内に配置される。
【0028】
次にステップS10において、作業者は
図7a−
図10に例示したような表示画面から、配置された位置決めブロックの位置及びサイズが適当か否かを判断する。適当でないと判断される場合、作業者はマウス16やキーボード18を操作して、位置決めブロックの位置やサイズを変更する(ステップS11)。なおステップS6−S11の処理は、位置決めブロックが複数ある場合、その個数と同じ回数だけ反復することができる(ステップS12)。
【0029】
次のステップS13では、
図11に例示するようなクランパ選択メニュー74がディスプレイ12に表示され、作業者がマウス16等を操作して、クランパの種類を選択する。なおクランパの種類としては、フック式クランパ(クランパ1)、ガイド付きシリンダ(クランパ2)、スイング式クランパ(クランパ3)、シリンダ(クランパ4)、等が挙げられるが、これらに限られない。
【0030】
次のステップS14では、作業者がマウス16等を操作して、選択したクランパの配置位置を指定する。例えば
図12aに示すように、作業者がワーク38の被把持部位(ロッド部)76を指定することにより、
図12bに示すように、記憶部20から読み出されたクランパ(ここではスイングクランパ)78の3次元モデルが、ロッド部76を把持するように自動的に配置・表示される(ステップS15)。
【0031】
ステップS14において、クランパの可動部の移動に関する定義(設定)を作業者が入力部14等から行えるようにしてもよい。例えば、
図12bに示すスイングクランパ78は、
図13に示すように、本体80と、本体80に対して直進及び回転可能なシャフト82と、シャフト82の先端に取り付けられた可動部(爪)84とを有し、この場合作業者は、入力部14(マウス16やキーボード18等)を操作して、シャフト82の回転軸及び回転角度、並びに直進移動量、さらにワーク38(のロッド部76)に対する爪84の当接位置(図示例では爪84の下面)86等を定義・設定することができる。このようにすれば、
図12bに示すように、ロッド部76と爪84の当接位置86とが合致するように、クランパ78の寸法や形状を自動的に調整(例えば爪84の長さを変更)することができる。
【0032】
次にステップS16において、作業者は
図12bに例示したような表示画面から、配置されたクランパの位置及びサイズが適当か否かを判断する。適当でないと判断される場合、作業者はマウス16やキーボード18を操作して、位置決めブロックの位置やサイズを変更する(ステップS17)。なおステップS13−S17の処理は、クランパが複数ある場合、その個数と同じ回数だけ反復することができる(ステップS18)。
【0033】
本実施形態に係る支援装置によれば、治具の配置位置に加え、治具の寸法及び形状の一方又は双方が、指定されたワークの形状や治具の配置方法に基づいて自動的に調整されるので、比較的不慣れな作業者であっても、どのようなサイズの治具(位置決めブロック及びクランパ)をどの位置に配置するのかを適切に把握することができる。従って該支援装置は、大まかではあるが治具の全体構造の把握には十分な治具モデルを作成できるので、治具の詳細設計の前に利用することが特に有用である。
【0034】
図14a及び
図14bは、支援装置10によって設計又は作成した治具の3次元モデルを、ロボットの仮想3次元モデルが配置された仮想空間内に配置し、該ロボットの動作シミュレーションを行うロボットシミュレーション装置(ロボットシミュレータ)88(
図1に概略図示)に適用した例を示す図である。この例では、クランパの開閉動作とロボットによるワークのハンドリング動作とを連動させるシミュレーションを行っており、より具体的には、
図13に示したスイングクランパ78を2つ用いて
図9bに示したような直方体形状のワーク64を把持する操作、すなわち「クランパ閉」の状態(
図14a)と、
図14aの状態から、クランパ78の爪84を旋回させる操作、すなわち「クランパ開」の状態(
図14b)と、
図14bの状態から、仮想表示されたロボット90のロボットハンド92によってワーク64を把持して取り出す操作(図示せず)とをシミュレートすることができる。
【0035】
クランパの開閉動作とロボットのハンドリング動作とを連動して行う場合、ロボットハンドの形状、ハンドによるワークの把持位置、ハンドの開閉動作、さらにはクランパの開閉動作等を考慮して、ロボットと干渉しない治具を設計する必要があり、これには熟練した作業者でも多くの手間がかかっていた。しかし上述のようなシミュレータを使用することにより、干渉チェックを容易に行うことができ、治具の設計を容易に行うことができるようになる。
【0036】
なおロボットシミュレータ88は、支援装置10と同様に、例えばパーソナルコンピュータ等の、演算処理装置(プロセッサ)及び記憶装置(メモリ)を有する装置として提供可能であり、
図14a及び
図14bに例示したような仮想3次元空間を画面表示することができる。またロボットシミュレータ88は、支援装置10と通信可能に構成されており、支援装置10で作成された治具の形状や動作に関するデータを信号等の形態で取り込んで、上述のようなロボットの動作シミュレーションに利用することができる。或いは支援装置10の機能(プロセッサやメモリ等)を、ロボットシミュレータ内に組み込むことも可能である。