特許第6438511号(P6438511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6438511エッチング保護膜形成用デポガス、プラズマエッチング方法、及びプラズマエッチング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438511
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】エッチング保護膜形成用デポガス、プラズマエッチング方法、及びプラズマエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-45266(P2017-45266)
(22)【出願日】2017年3月9日
(62)【分割の表示】特願2016-24056(P2016-24056)の分割
【原出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2017-108182(P2017-108182A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年4月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝
(72)【発明者】
【氏名】池本 尚弥
(72)【発明者】
【氏名】伊崎 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼ 洋志
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−238891(JP,A)
【文献】 特開2012−114402(JP,A)
【文献】 特開2007−035929(JP,A)
【文献】 特開2010−003725(JP,A)
【文献】 特開2011−124239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、シリコンエッチングにおける保護膜形成用デポガス。
【請求項2】
Fラジカルによるシリコンエッチングにおいて、保護膜形成を行うデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、シリコンエッチングにおける保護膜形成用デポガス。
【請求項3】
Fラジカルを発生させるフッ素系ガスを用いたシリコンエッチングにおいて、保護膜形成を行うデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、シリコンエッチングにおける保護膜形成用デポガス。
【請求項4】
Fラジカルによるシリコンエッチングに対する保護膜を形成するためのデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、シリコンエッチングにおける保護膜形成用デポガス。
【請求項5】
Fラジカルによりシリコンエッチングされる面に保護膜を形成するためのデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、シリコンエッチングにおける保護膜形成用デポガス。
【請求項6】
Fラジカルによりシリコンエッチングされる凹部の内面に保護膜を形成するためのデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、シリコンエッチングにおける保護膜形成用デポガス。
【請求項7】
プラズマ化したエッチングガスを用いて、シリコン基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記シリコン基板の前記プラズマエッチングから保護する部分を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含む、プラズマエッチング方法。
【請求項8】
プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられたシリコン基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記凹部の前記プラズマエッチングから保護する部分を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含む、プラズマエッチング方法。
【請求項9】
プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられたシリコン基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記凹部の内側の少なくとも一部又は全部を覆うように、前記プラズマエッチングから保護する保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含む、プラズマエッチング方法。
【請求項10】
プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられたシリコン基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記凹部の前記プラズマエッチングによって露出した部分を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含み、
前記エッチングステップと、前記保護膜形成ステップとを交互に繰り返し行って、前記シリコン基板を加工する、プラズマエッチング方法。
【請求項11】
プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられたシリコン基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記プラズマエッチングによって露出した前記凹部の内側の少なくとも一部又は全部を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含み、
前記エッチングステップと、前記保護膜形成ステップとを交互に繰り返し行って、前記シリコン基板を加工する、プラズマエッチング方法。
【請求項12】
エッチングガスをプラズマ化して、プラズマエッチングによりシリコン基板に凹部を形成するエッチングステップと、
デポガスとして、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いることで、前記プラズマエッチングにより露出された前記シリコン基板の凹部の側壁を覆う保護膜を形成する側壁保護膜形成ステップと、
を交互に繰り返し行うことで、前記シリコン基板を加工することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項13】
シリコン基板が載置されるサセプタを収容するチャンバと、
前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記シリコン基板をエッチングするエッチングガスを供給するエッチングガス供給源と、
前記チャンバの周囲に配置されたプラズマ発生部と、
前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、シリコンエッチングにおける保護膜形成用のデポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項14】
シリコン基板が載置されるサセプタを収容するチャンバと、
前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記シリコン基板をFラジカルによりエッチングするエッチングガスを供給するエッチングガス供給源と、
前記チャンバの周囲に配置されたプラズマ発生部と、
前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、Fラジカルによるシリコンエッチングにおける、エッチング保護膜形成用のデポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項15】
シリコン基板が載置されるサセプタを収容するチャンバと、
前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記シリコン基板をFラジカルによりエッチングするフッ素系エッチングガスを供給するエッチングガス供給源と、
前記チャンバの周囲に配置されたプラズマ発生部と、
前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、Fラジカルによるシリコンエッチングにおける、エッチング保護膜形成用のデポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行うプラズマエッチング処理において、エッチング加工特性を低下させることなく、温室効果ガスの排出量を削減することの可能なプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板(例えば、単結晶シリコン基板)を母材として、マイクロエレクトロメカニカルシステムズ(MEMS)やスルーシリコンビア(TSV)等を形成する場合、シリコン基板に数10〜数100μm程度の深さの深掘りエッチングを行う必要がある。
【0003】
このような深掘りエッチングでは、エッチングガスとして、エッチング加工特性に優れたSFを用いてシリコン基板をプラズマエッチングするエッチングステップと、デポガスとしてC(IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次評価報告書に記載された地球温暖化係数(GWP;Global warming potential)が10300)を用いて、エッチングにより形成される凹部の側面を構成するシリコン基板の側壁に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を交互に繰り返すプラズマエッチング方法が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4090492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記プラズマエッチング方法を用いて、シリコン基板を深掘りエッチングする場合、プラズマエッチング処理時間(エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行うプラズマエッチング処理に要する合計の時間)は、半導体集積回路(回路素子層)を形成する際に、シリコン基板をエッチングする時間(例えば、素子分離用の溝を形成する時間)よりも長い。
【0006】
このため、従来のプラズマエッチング方法を用いて、MEMSやTSV等を形成する場合、温室効果ガスであるSF(エッチングガス)及びC(デポガス)を長時間使用する必要があった。
このため、従来のプラズマエッチング方法を用いた場合、地球の温暖化を促進させてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行うプラズマエッチング処理において、エッチング加工特性を低下させることなく、温室効果ガスの排出量を削減することの可能なプラズマエッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、エッチング保護膜形成用デポガス。
[2] Fラジカルによるエッチングにおいて、保護膜形成を行うデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、エッチング保護膜形成用デポガス。
[3] Fラジカルを発生させるフッ素系ガスを用いたエッチングにおいて、保護膜形成を行うデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、エッチング保護膜形成用デポガス。
[4] Fラジカルによるエッチングに対する保護膜を形成するためのデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、エッチング保護膜形成用デポガス。
[5] Fラジカルによりエッチングされる面に保護膜を形成するためのデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、エッチング保護膜形成用デポガス。
[6] Fラジカルによりエッチングされる凹部の内面に保護膜を形成するためのデポガスであって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる、エッチング保護膜形成用デポガス。
[7] プラズマ化したエッチングガスを用いて、基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記基板の前記プラズマエッチングから保護する部分を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含む、プラズマエッチング方法。
[8] プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられた基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記凹部の前記プラズマエッチングから保護する部分を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含む、プラズマエッチング方法。
[9] プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられた基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記凹部の内側の少なくとも一部又は全部を覆うように、前記プラズマエッチングから保護する保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含む、プラズマエッチング方法。
[10] プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられた基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記凹部の前記プラズマエッチングによって露出した部分を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含み、
前記エッチングステップと、前記保護膜形成ステップとを交互に繰り返し行って、前記基板を加工する、プラズマエッチング方法。
[11] プラズマ化したエッチングガスを用いて、凹部が設けられた基板の少なくとも一部をプラズマエッチングするエッチングステップと、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなるデポガスを用いて、前記プラズマエッチングによって露出した前記凹部の内側の少なくとも一部又は全部を覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、を含み、
前記エッチングステップと、前記保護膜形成ステップとを交互に繰り返し行って、前記基板を加工する、プラズマエッチング方法。
[12] エッチングガスをプラズマ化して、プラズマエッチングにより基板に凹部を形成するエッチングステップと、
デポガスとして、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いることで、前記プラズマエッチングにより露出された前記基板の凹部の側壁を覆う保護膜を形成する側壁保護膜形成ステップと、
を交互に繰り返し行うことで、前記基板を加工することを特徴とするプラズマエッチング方法。
[13] 基板が載置されるサセプタを収容するチャンバと、
前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記基板をエッチングするエッチングガスを供給するエッチングガス供給源と、
前記チャンバの周囲に配置されたプラズマ発生部と、
前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、エッチング保護膜形成用のデポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置。
[14] 基板が載置されるサセプタを収容するチャンバと、
前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記基板をFラジカルによりエッチングするエッチングガスを供給するエッチングガス供給源と、
前記チャンバの周囲に配置されたプラズマ発生部と、
前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、Fラジカルによるエッチングにおける、エッチング保護膜形成用のデポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置。
[15] 基板が載置されるサセプタを収容するチャンバと、
前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記基板をFラジカルによりエッチングするフッ素系エッチングガスを供給するエッチングガス供給源と、
前記チャンバの周囲に配置されたプラズマ発生部と、
前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、Fラジカルによるエッチングにおける、エッチング保護膜形成用のデポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【0009】
また、上記発明によれば、エッチングガスをプラズマ化して、シリコンをプラズマエッチングするエッチングステップと、デポガスとして、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(分子式;CF3−CF=CH2)を用いることで、前記プラズマエッチングにより露出された前記シリコンの側壁を覆う保護膜を形成する側壁保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行うことで、前記シリコンを加工することを特徴とするプラズマエッチング方法が提供される。
【0010】
また、上記発明によれば、前記エッチングガスとして、SFを含むガスを用いることを特徴とする、プラズマエッチング方法が提供される。
【0011】
また、上記発明によれば、前記2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量は、前記SFの流量の0.2〜0.9倍の範囲内であることを特徴とする、プラズマエッチング方法が提供される。
【0012】
また、上記発明によれば、前記2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量は、前記SFの流量の0.4〜0.6倍の範囲内であることを特徴とする、プラズマエッチング方法が提供される。
【0013】
また、上記発明によれば、前記シリコンとして単結晶シリコン基板を用い、前記単結晶シリコン基板を加工することで、MEMSを形成することを特徴とする、プラズマエッチング方法が提供される。
【0014】
また、上記発明によれば、前記シリコンとして単結晶シリコン基板を用い、前記単結晶シリコン基板を加工することで、該単結晶シリコン基板を貫通する貫通孔を形成することを特徴とする、プラズマエッチング方法が提供される。
【0015】
また、上記発明によれば、シリコンが載置されるサセプタを収容するチャンバと、前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記シリコンをエッチングするエッチングガスとしてSFを含むガス(但し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを除く)を供給するエッチングガス供給源と、前記チャンバの周囲に配置されたプラズマ発生部と、前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、デポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置が提供される。
【0016】
また、上記発明によれば、シリコンが載置されるサセプタを収容するチャンバと、前記チャンバ内に、エッチングガス供給ラインを介して、前記シリコンをプラズマエッチングするエッチングガス(但し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを除く)を供給するエッチングガス供給源と、前記チャンバの周囲に配置され、前記エッチングガスをプラズマ化するプラズマ発生部と、前記チャンバ内に、デポガス供給ラインを介して、前記プラズマエッチングにより露出された前記シリコンの側壁を覆う側壁保護膜形成用のデポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを供給するデポガス供給源と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置が提供される。
【0017】
また、上記発明によれば、前記エッチングガスと前記デポガスとを、前記チャンバ内に交互に繰り返し供給可能であることを特徴とするプラズマエッチング装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、デポガスとして、地球温暖化係数が4と小さい2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いて、プラズマエッチングにより露出されたシリコンの側壁を覆う保護膜を形成することで、従来のデポガスであるCを用いて保護膜を形成した場合と比較して、温室効果ガスの排出量を削減できる。
【0019】
また、例えば、エッチングガスとして、エッチング加工特性に優れたSFを用いた場合、エッチング加工特性の低下の抑制、及び生産性の向上を実現した上で、温室効果ガスの排出量を削減できる。
【0020】
つまり、本発明によれば、エッチング加工特性及び生産性が向上できるとともに温室効果ガスの排出量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を行う際に使用するプラズマエッチング装置の主要部を示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を説明するための断面図(その1)であり、具体的には、開口部を有したレジストマスクが形成された単結晶シリコン基板を示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を説明するための断面図(その2)であり、具体的には、開口部を有したレジストマスクが形成された単結晶シリコン基板に、凹部を形成するステップを説明するための断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を説明するための断面図(その3)であり、具体的には、図3に示す工程で形成された凹部の側壁を覆う保護膜を形成するステップを説明するための断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を説明するための断面図(その4)であり、具体的には、図3に示す工程で形成された凹部の下方に位置する単結晶シリコン基板に凹部を形成するステップを説明するための断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を説明するための断面図(その5)であり、具体的には、単結晶シリコン基板を貫通する貫通孔が形成された状態を模式的に示す断面図である。
図7】比較例の単結晶シリコンウェハに形成された開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の断面SEM写真を示す。
図8】実施例1〜4の単結晶シリコンウェハに形成された開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のプラズマエッチング装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0023】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を行う際に使用するプラズマエッチング装置の主要部を示す断面図である。図1では、プラズマエッチング装置10の構成要素の一部(具体的には、チャンバ11、サセプタ12、エッチングガス供給源14、デポガス供給源15、エッチングガス供給ライン17、デポガス供給ライン18、及び排ガスライン22のみ)を図示する。
【0024】
始めに、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法(言い換えれば、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行うプラズマエッチング方法)を行う際に使用するプラズマエッチング装置10の構成について説明し、その後、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0025】
図1を参照するに、プラズマエッチング装置10は、チャンバ11と、サセプタ12と、プラズマ発生部13と、エッチングガス供給源14と、デポガス供給源15と、エッチングガス供給ライン17と、デポガス供給ライン18と、排ガスライン22と、を有する。
【0026】
チャンバ11は、プラズマエッチング処理が行われる反応室である。チャンバ11は、対向配置された上壁11A及び下壁11Bを有する。プラズマエッチング処理時において、チャンバ11内は、真空とされている。
【0027】
サセプタ12は、チャンバ11内に収容されている。サセプタ12は、チャンバ11の下壁11B上に配置されている。サセプタ12は、シリコン(エッチング対象物)である単結晶シリコン基板25が載置される基板載置面12aを有する。
【0028】
なお、以下、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法により加工されるシリコンとして、単結晶シリコン基板25(より具体的には、単結晶シリコンウェハ)を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0029】
プラズマ発生部13は、コイル13−1と、高周波電源13−2と、を有する。コイル13−1は、チャンバ11の周囲に配置されており、高周波電源13−2と接続されている。高周波電源13−2は、チャンバ11の外側に配置されている。
プラズマ発生部13は、エッチングガス供給源14から供給されたエッチングガスをプラズマ化させる機能を有する。
【0030】
エッチングガス供給源14は、エッチングガス供給ライン17の一端と接続されている。エッチングガス供給源14は、エッチングステップを実施する際、エッチングガス供給ライン17を介して、チャンバ11内にエッチングガスを供給する。
【0031】
エッチングガスとしては、SFを含むエッチングガスを用いるとよい。このように、エッチングガスとして、エッチング加工特性に優れたSFを含むガスを用いることで、良好な形状に単結晶シリコン基板25を加工することができる(言い換えれば、エッチング加工特性の低下を抑制できる。)。
【0032】
デポガス供給源15は、デポガス供給ライン18の一端と接続されている。デポガス供給源15は、保護膜形成ステップを実施する際、デポガス供給ライン18を介して、チャンバ11内に、保護膜を形成するために必要なデポガスを供給する。
【0033】
デポガスとしては、地球温暖化係数が4と低い2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いるとよい。
このように、保護膜を形成する際のデポガスとして、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いることで、従来のデポガスであり、かつ地球温暖化係数が10300であるCを用いた場合と比較して、温室効果ガスの排出量を削減できる。
【0034】
エッチングガス供給ライン17は、一端がエッチングガス供給源14と接続され、他端がチャンバ11の上壁11Aと接続されている。エッチングガス供給ライン17の他端は、チャンバ11の上壁11Aを貫通している。エッチングガス供給ライン17は、エッチングガスをチャンバ11内に供給するためのラインである。
【0035】
デポガス供給ライン18は、一端がデポガス供給源15と接続され、他端がチャンバ11の上壁11Aと接続されている。デポガス供給ライン18の他端は、チャンバ11の上壁11Aを貫通している。デポガス供給ライン18は、デポガスをチャンバ11内に供給するためのラインである。
【0036】
排ガスライン22は、一端がチャンバ11の下壁11Bと接続されている。排ガスライン22の一端は、チャンバ11の下壁11Bを貫通している。排ガスライン22の他端は、ドライポンプ(図示せず)を介して、除害装置(図示せず)と接続されている。
排ガスライン22は、チャンバ11からエッチングガス、デポガス、それぞれの解離種及び反応生成物を排出するためのラインである。
【0037】
図2図6は、本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法を説明するための断面図である。具体的には、図2は、開口部を有したレジストマスクが形成された単結晶シリコン基板を示す断面図である。図3は、開口部を有したレジストマスクが形成された単結晶シリコン基板に、凹部を形成するステップを説明するための断面図である。
【0038】
図4は、図3に示す工程で形成された凹部の側壁を覆う保護膜を形成するステップを説明するための断面図である。図5は、図3に示す工程で形成された凹部の下方に位置する単結晶シリコン基板に凹部を形成するステップを説明するための断面図である。図6は、単結晶シリコン基板を貫通する貫通孔が形成された状態を模式的に示す断面図である。
【0039】
次に、図1図6を参照して、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行う本実施の形態のプラズマエッチング方法について説明する。
以下、本実施の形態では、本実施の形態のプラズマエッチング方法を用いて、単結晶シリコン基板25を貫通する貫通孔38(図6参照)を加工する場合を例に挙げて説明する。
【0040】
始めに、図2に示す工程では、レジストマスク付き基板30を準備する。レジストマスク付き基板30は、例えば、以下の方法により形成する。
周知の手法により、薄板化されていない単結晶シリコン基板25の表面25b(裏面25aの反対側に位置する面)に、回路素子層41(例えば、トランジスタ等の素子及び貫通孔38が露出する導体42を含む多層配線構造体)を形成する(図6参照)。
【0041】
次いで、例えば、バックサイドグラインダーを用いて、単結晶シリコン基板25の裏面25a側から単結晶シリコン基板25を薄板化する。薄板化された単結晶シリコン基板25の厚さは、例えば、50〜400μmとすることができる。
【0042】
次いで、フォトリソグラフィ技術により、薄板化された単結晶シリコン基板25の裏面25aに、開口部31Aを有したレジストマスク31を形成する。このとき、開口部31Aは、図6に示す貫通孔38の形成領域に対応する単結晶シリコン基板25の裏面25aを露出するように形成する。これにより、図2に示すレジストマスク付き基板30が形成される。
単結晶シリコン基板25の厚さが50μmの場合、開口部31Aの開口径は、例えば、400μmとすることができる。
【0043】
次いで、図2に示すレジストマスク付き基板30を、図1に示すプラズマエッチング装置10のチャンバ11内に搬入し、その後、サセプタ12の基板載置面12aにレジストマスク付き基板30を固定する。
このとき、レジストマスク31が形成された側が上面側となるように、レジストマスク付き基板30を固定する。次いで、ドライポンプ(図示せず)により、チャンバ11内を真空とする。
【0044】
次いで、図3に示す工程では、レジストマスク31を介して、単結晶シリコン基板25を等方性ドライエッチングすることで、貫通孔38(図6参照)の一部となる凹部33を形成する。
具体的には、誘導結合プラズマ(ICP)により、SFを含むエッチングガスをプラズマ化して、シリコンをプラズマエッチング(具体的には、F系のラジカルを用いた等方性ドライエッチング)することで、凹部33を形成する(エッチングステップ)。
このように、等方性ドライエッチングを行う際のエッチングガスとして、SFを含むガスを用いることにより、凹部33を良好な形状に加工することができる。
単結晶シリコン基板25の裏面25aを基準としたときの凹部33の深さは、例えば、1μmとすることができる。
【0045】
次いで、図4に示す工程では、プラズマエッチングにより露出された凹部33の側面33a(言い換えれば、プラズマエッチングにより露出されたシリコン(単結晶シリコン基板25)の側壁)と、単結晶シリコン基板25から露出されたレジストマスク31の面(レジストマスク31の上面31a、及び開口部31Aの側面31bを含む面)と、を覆う保護膜34を形成する(保護膜形成ステップ)。
この段階において、保護膜34は、凹部33の底面33bを露出している。
【0046】
具体的には、以下の方法により、凹部33の底面33bを露出する保護膜34を形成する。
始めに、デポガスとして、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いて、プラズマエッチングにより露出された凹部33の内面33c(側面33a及び底面33bよりなる面)と、単結晶シリコン基板25から露出されたレジストマスク31の面と、を覆う保護膜34を成膜する。この段階では、凹部33の底面33bは、保護膜34で覆われている。
【0047】
次いで、エッチングガスとして、SFを含むガスを用いた異方性ドライエッチングにより、凹部33の底面33bに成膜された保護膜34を選択的に除去する。
これにより、凹部33の側面33aを覆い、かつ凹部33の底面33bを露出する保護膜34が形成される。
【0048】
このように、デポガスとして、地球温暖化係数が4と小さい2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いて、プラズマエッチングにより露出された凹部33の側面33aを覆う保護膜34を形成することで、従来のデポガスであるC(地球温暖化係数;10300)を用いて保護膜を形成した場合と比較して、温室効果ガスの排出を削減できる。
【0049】
また、デポガスとして2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いることで、C(炭素)比率の高い成膜のため、Fラジカルとの反応性の低い(言い換えれば、エッチングされにくい)保護膜34を形成することが可能となる。
【0050】
これにより、Cを用いて形成される保護膜よりも、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いて形成される保護膜34の厚さを薄くすることが可能となる。
を用いて形成される保護膜と同等の性能を得るために必要な保護膜34の厚さは、Cを用いて形成される保護膜の厚さの1/4〜1/2程度でよい。
【0051】
また、デポガスとして、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いることで、保護膜34を成膜する時間(成膜時間)を、デポガスとしてCを用いる場合と同じか、或いはCを用いる場合よりも短くすることが可能となる。
これにより、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行うプラズマエッチング処理時間を短くすることが可能となるので、生産性を向上させることができる。
【0052】
また、異方性ドライエッチング(凹部33の底面33bに成膜された保護膜34を除去するエッチング)を行う際のエッチングガスとして、SFを含むガスを用いることにより、凹部33の底面33bに成膜された保護膜34を精度良く選択的に除去することができる。
【0053】
また、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量は、例えば、SFの流量の0.2〜0.9倍の範囲内に設定するとよい。これにより、デポガスとしてCを用いた場合と同等のエッチング加工特性を得ることができる。
【0054】
また、好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量は、例えば、SFの流量の0.4〜0.6倍の範囲内に設定するとよい。
これにより、良好なエッチング加工形状を得ることができると共に、同じエッチングステップを使用する場合でも保護膜形成に必要な時間が短くなるため、単結晶シリコン基板25のエッチングレートを速くすることが可能となるので、生産性を向上させることができる。
【0055】
次いで、図5に示す工程では、保護膜34をマスクとする等方性ドライエッチング(エッチングガスとしてSFを含むガスを用いたプラズマによるラジカルエッチング)により、凹部33の下方に位置する単結晶シリコン基板25をエッチングすることで、凹部33と同様な形状とされ、かつ側面36a及び底面36bよりなる内面36cを有する凹部36を形成する(エッチングステップ)。
【0056】
このとき、レジストマスク31及び凹部33の側面33aは、保護膜34で覆われているため、エッチングされることはない。これにより、上記等方性ドライエッチングにより、図3に示す凹部33の開口径が拡がることが抑制できると共に、レジストマスク31が膜減りすること(言い換えれば、開口部31Aの開口径が拡がることや、レジストマスク31の厚さが薄くなること)を抑制できる。
【0057】
次いで、図6に示す工程では、先に説明した図4に示す工程(言い換えれば、保護膜形成ステップ)と、図5に示す工程(言い換えれば、エッチングステップ)と、を交互に繰り返し行うことで、回路素子層41を構成する導体42の面42aを露出する貫通孔38を形成する。
【0058】
本実施の形態のプラズマエッチング方法によれば、エッチング加工特性に優れたSFを含むエッチングガスをプラズマ化して、シリコンをプラズマエッチングすることで、エッチング加工特性の低下を抑制できる。
【0059】
また、デポガスとして、地球温暖化係数が4と小さい2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いて、プラズマエッチングにより露出された凹部33,36の側面33a,36aを覆う保護膜34を形成することで、従来のデポガスであるC(地球温暖化係数;10300)を用いて保護膜を形成した場合と比較して、温室効果ガスの排出を削減できる。
【0060】
つまり、本発明のプラズマエッチング方法によれば、エッチング加工特性を低下させることなく、温室効果ガスの排出を削減できる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0062】
例えば、本実施の形態では、エッチングガスとしてSFを含むガスを例に挙げて説明したが、SFに替えて、IF、NF、F等のガスを用いてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、一例として、本実施の形態のプラズマエッチング方法を用いて、単結晶シリコン基板25に貫通孔38を形成する場合を例に挙げて説明したが、本実施の形態のプラズマエッチング方法は、機械要素部品、センサー、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板上に集積化したデバイスであるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を形成する際にも適用可能であり、本実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0064】
(比較例1)
始めに、シリコンである単結晶シリコンウェハ(口径200mm)を準備した。次いで、フォトリソグラフィ技術により、該単結晶シリコンウェハの表面に、異なる開口径(30μm及び50μmの開口径を含む)とされた複数の開口部を有するレジストマスクを形成することで、評価サンプルAを作製した。
【0065】
次いで、図1に示すプラズマエッチング装置10に設けられたデポガス供給源15の替わりに、デポガスとしてCを供給するデポガス供給源(図示せず)を有する以外は、プラズマエッチング装置10と同様な構成とされたプラズマエッチング装置B(図示せず)を準備した。
次いで、該プラズマエッチング装置のサセプタの基板載置面に、評価サンプルAを固定し、その後、チャンバ11内を真空状態とした。
【0066】
表1に、評価サンプルAを処理する際の最適化された比較例1のプラズマエッチングの条件(具体的には、エッチングステップの条件、及び保護膜形成ステップの条件)を示す。
表1は、エッチングガスとしてSF、デポガスとしてCを用いた場合の側壁保護性を考慮し、流量を最適化したプラズマエッチング条件である。
表1に示すように、比較例1では、Cの流量を450sccm、保護膜形成時間を3.8秒とした。なお、保護膜形成時間とは、1回の保護膜形成ステップでの処理時間であって、側壁保護性を考慮し最適化した時間のことをいう。
【0067】
【表1】
【0068】
次いで、表1の条件を用いて、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を19回繰り返し行った。
このとき、表1に示すように、比較例1のエッチングステップでは、エッチング加工特性に優れたガスであるSFを用い、比較例1の保護膜形成ステップでは、デポガスとして地球温暖化係数が10300と高いCを用いた。
【0069】
また、上記プラズマエッチング時における単結晶シリコンウェハのエッチングレートと、該プラズマエッチング処理で使用したデポガス(この場合、C)の使用量(トータルの使用量)と、を表2に示す。
なお、ここでの「単結晶シリコンウェハのエッチングレート」とは、50μm幅のレジストマスクを介して、単結晶シリコンをエッチングした際の単結晶シリコンのエッチングレートのことをいう。
【0070】
【表2】
【0071】
表2を参照するに、比較例1では、単結晶シリコンウェハのエッチングレートが36.5μm/min、デポガス(この場合、C)の使用量が4.83gであった。
また、図7に、比較例の単結晶シリコンウェハに形成された開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の断面SEM写真を示す。
【0072】
(実施例1)
比較例1で説明した方法と同様な手法により、評価サンプルAを作製した。次いで、図1に示すプラズマエッチング装置10のサセプタ12の基板載置面12aに、評価サンプルAを固定し、その後、チャンバ11内を真空状態とした。
【0073】
表3に、実施例1のプラズマエッチングの条件(具体的には、エッチングステップの条件、及び保護膜形成ステップの条件)を示す。
実施例1では、エッチングガスとしてSFを用い、デポガスとして2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いた。
【0074】
【表3】
【0075】
つまり、実施例1では、比較例1のデポガスであるCに替えて、地球温暖化係数の低い2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いたことが大きく異なる。
表3に示すように、実施例1では、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を100sccm、保護膜形成時間を3.8秒とした。
【0076】
次いで、表3の条件を用いて、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を19回繰り返し行った。
【0077】
また、上記プラズマエッチング時における単結晶シリコンウェハのエッチングレートと、該プラズマエッチング処理で使用したデポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の使用量(合計の使用量)と、を表2に示す。
表2を参照するに、実施例1では、単結晶シリコンウェハのエッチングレートが35.4μm/min、デポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)使用量が0.61gであった。
【0078】
図8は、実施例1〜4の単結晶シリコンウェハに形成された開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の断面SEM写真である。図8では、アッシングによりレジストマスクを除去した状態で、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4700)を用いて、孔が形成された単結晶シリコンウェハの断面観察を行った。
図8を参照するに、実施例1の開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔は、上部がやや拡がった形状になったが、問題無い形状であることが確認できた。
【0079】
(実施例2)
比較例1で説明した方法と同様な手法により、評価サンプルAを作製した。次いで、図1に示すプラズマエッチング装置10のサセプタ12の基板載置面12aに、評価サンプルAを固定し、その後、チャンバ11内を真空状態とした。
【0080】
表4に、実施例2のプラズマエッチングの条件(具体的には、エッチングステップの条件、及び保護膜形成ステップの条件)を示す。
実施例2では、エッチングガスとして実施例1と同じ流量のSFを用い、デポガスとして、実施例1よりも100sccm増量された2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いた。
【0081】
【表4】
【0082】
表4に示すように、実施例2では、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を200sccm、保護膜形成時間を2.0秒とした。
【0083】
次いで、表4の条件を用いて、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を22回繰り返し行った。
【0084】
また、上記プラズマエッチング時における単結晶シリコンウェハのエッチングレートと、該プラズマエッチング処理で使用したデポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の使用量(合計の使用量)と、を表2に示す。
表2を参照するに、実施例2では、単結晶シリコンウェハのエッチングレートが40.0μm/min、デポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の使用量が0.73gであった。
【0085】
図8に、実施例2の単結晶シリコンウェハに形成された開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の断面SEM写真を示す。
図8を参照するに、実施例2の開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の形状は、略ストレートな形状であり、良好な形状に加工できることが確認できた。
【0086】
(実施例3)
比較例1で説明した方法と同様な手法により、評価サンプルAを作製した。次いで、図1に示すプラズマエッチング装置10のサセプタ12の基板載置面12aに、評価サンプルAを固定し、その後、チャンバ11内を真空状態とした。
【0087】
表5に、実施例3のプラズマエッチングの条件(具体的には、エッチングステップの条件、及び保護膜形成ステップの条件)を示す。
実施例3では、エッチングガスとして実施例2と同じ流量のSFを用い、デポガスとして、実施例2よりも100sccm増量された2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いた。
【0088】
【表5】
【0089】
表5に示すように、実施例3では、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を300sccm、保護膜形成時間を1.0秒とした。
【0090】
次いで、表5の条件を用いて、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を23回繰り返し行った。
【0091】
また、上記プラズマエッチング時における単結晶シリコンウェハのエッチングレートと、該プラズマエッチング処理で使用したデポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の使用量(合計の使用量)と、を表2に示す。
表2を参照するに、実施例3では、単結晶シリコンウェハのエッチングレートが42.6μm/min、デポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の使用量が0.59gであった。
【0092】
図8に、実施例3の単結晶シリコンウェハに形成された開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の断面SEM写真を示す。
図8を参照するに、実施例3の開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の形状は、略ストレートな形状であり、良好な形状に加工できることが確認できた。
【0093】
(実施例4)
比較例1で説明した方法と同様な手法により、評価サンプルAを作製した。次いで、図1に示すプラズマエッチング装置10のサセプタ12の基板載置面12aに、評価サンプルAを固定し、その後、チャンバ11内を真空状態とした。
【0094】
表6に、実施例4のプラズマエッチングの条件(具体的には、エッチングステップの条件、及び保護膜形成ステップの条件)を示す。
実施例4では、エッチングガスとして実施例3と同じ流量のSFを用い、デポガスとして、実施例3よりも150sccm増量された2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いた。
【0095】
【表6】
【0096】
表6に示すように、実施例4では、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を450sccm、保護膜形成時間を0.8秒とした。
【0097】
次いで、表6の条件を用いて、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を23回繰り返し行った。
【0098】
また、上記プラズマエッチング時における単結晶シリコンウェハのエッチングレートと、該プラズマエッチング処理で使用したデポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の使用量(合計の使用量)と、を表2に示す。
表2を参照するに、実施例4では、単結晶シリコンウェハのエッチングレートが35.5μm/min、デポガス(この場合、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の使用量が0.72gであった。
【0099】
図8に、実施例4の単結晶シリコンウェハに形成された開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔の断面SEM写真を示す。
図8を参照するに、実施例4の開口径が30μm狙いの孔、及び開口径が50μm狙いの孔は、底部がやや拡がった形状になったが、問題無い形状であることが確認できた。
【0100】
(比較例1及び実施例1〜4の結果のまとめ)
図7に示す比較例の断面SEM写真、及び図8に示す実施例1〜4の断面SEM写真から、デポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を、SFの流量(この場合、500sccm)の0.2〜0.9倍の範囲内にすることで、デポガスとしてCを用いた場合と同等のエッチング加工形状(図7参照)を得ることができることが確認できた。
【0101】
また、デポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を、SFの流量(この場合、500sccm)の0.4〜0.6倍の範囲内にすることで、略ストレート形状とされた良好な孔が形成できることが確認できた。
【0102】
また、表2に示す実施例1〜4の結果から、保護膜形成時間は、デポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量が増加するにつれて、短くできることが確認できた。
表2に示す比較例1及び実施例1〜4の結果から、デポガスとして2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いることで、比較例1のデポガス(具体的には、C)を用いたときよりもデポガスの使用量を大幅に低減でき、温室効果ガスの排出量を大幅に削減できることが確認できた。
【0103】
また、表2に示す実施例1〜4の結果から、実施例2,3のエッチングレートと比較して、実施例1,4のエッチングレートが遅くなることが確認できた。
実施例1のエッチングレートが遅くなる理由としては、保護膜形成ステップが長いことが挙げられる。
【0104】
また、実施例4のエッチングレートが遅くなる理由としては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは重合性の高いガスであるため、流量が多いなどで分解が不十分な場合、未結合部を含む重合が起こり、保護膜厚が厚く、さらに膜中に存在する多くの未結合部でエッチングステップ時にエッチャントのFラジカルが消費されるため、エッチングレートが出ないのではないかと考えられる。
また、表2に示す実施例1〜4の結果から、実施例2,3のエッチングレートは、実施例1,4のエッチングレートよりも1割程度速くなることが確認できた。
【0105】
上記結果をまとめると、デポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を、SFの流量(この場合、500sccm)の0.2〜0.9倍の範囲内にすることで、デポガスとしてCを用いた場合と同等のエッチング加工形状(図示せず)を得ることができ、かつデポガスの使用量を削減できることが確認できた。
【0106】
また、デポガスである2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの流量を、SFの流量(この場合、500sccm)の0.4〜0.6倍の範囲内にすることで、略ストレート形状とされた孔を加工でき、かつデポガスの使用量を削減でき、さらにエッチングレートが向上すること(速くなること)で、生産性を向上できることが確認できた。
【0107】
(比較例2)
始めに、シリコンである単結晶シリコンウェハ(口径200mm、厚さ725μm)を準備した。次いで、フォトリソグラフィ技術により、該単結晶シリコンウェハの表面に、開口径が20μmとされた開口部を複数有するレジストマスクを形成することで、評価サンプルBを作製した。
【0108】
次いで、図1に示すプラズマエッチング装置10のサセプタ12の基板載置面12aに、評価サンプルBを固定し、その後、チャンバ11内を真空状態とした。
【0109】
次いで、先に説明した表1の条件(比較例1の条件)を用いて、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を繰り返して保護膜で覆われた貫通孔(図示せず)を形成した。
次いで、ULVAC−PHI社製のQuanteraSXMを用いて、比較例2の貫通孔の側壁(具体的には、貫通孔の深さ方向の中心部に位置する側壁)に形成された保護膜のXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析を行った。
【0110】
表7に、この分析から取得されるデータを加工することで得られる比較例2のC(%)、F(%)、及びF/Cの比率と、CF:CF2:CF3の比率と、を示す。表7は、比較例2及び実施例5のC(%)、F(%)、及びF/Cの比率と、CF:CF:CFの比率(言い換えれば、炭素に結合したフッ素の数の比率)と、を示す表である。
【0111】
【表7】
【0112】
(実施例5)
始めに、比較例2で説明した手法により、評価サンプルBを作製した。次いで、図1に示すプラズマエッチング装置10のサセプタ12の基板載置面12aに、評価サンプルBを固定し、その後、チャンバ11内を真空状態とした。
【0113】
次いで、先に説明した表5の条件(実施例3の条件)を用いて、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を繰り返して保護膜で覆われた貫通孔(図示せず)を形成した。
次いで、ULVAC−PHI社製のQuanteraSXMを用いて、実施例5の貫通孔の側壁(具体的には、貫通孔の深さ方向の中心部に位置する側壁)に形成された保護膜のXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析を行った。この結果を、表7に示す。
【0114】
(比較例2及び実施例5の結果について)
表7を参照するに、比較例2の保護膜は、F/Cの比率が2倍に近く、CFの比率がCFの比率の約1.6倍、CFの比率がCFの比率の約2倍であることから、CFを主体とするポリマーが形成されることが確認できた。
【0115】
一方、実施例5の保護膜は、F/Cの比率が比較例2のF/Cの比率よりも低く、CFよりも炭素−炭素結合(C−C結合)が多くなっていることが分かった。
また、実施例5のCF及びCFの比率が、比較例2のCF及びCFの比率よりも低いことから、炭素−炭素の3次元ネットワークが構成され、部分的にフッ素が炭素に結合した組成であることが推測された。
【0116】
上記結果から、デポガスとして2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを用いることにより、緻密で、かつFラジカルに対して反応性の低い保護膜を形成することが可能となるため、従来よりも厚さの薄い保護膜でよいことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、エッチングステップと、保護膜形成ステップと、を交互に繰り返し行うプラズマエッチング方法に適用できる。
【符号の説明】
【0118】
10…プラズマエッチング装置、11…チャンバ、11A…上壁、11B…下壁、12…サセプタ、12a…基板載置面、13…プラズマ発生部、13−1…コイル、13−2…高周波電源、14…エッチングガス供給源、15…デポガス供給源、17…エッチングガス供給ライン、18…デポガス供給ライン、22…排ガスライン、25…単結晶シリコン基板、25a…表面、25b…裏面、30…レジストマスク付き基板、31…レジストマスク、31a…上面、31b…側面、31A…開口部、33,36…凹部、33a,36a…側面、33b,36b…底面、33c,36c…内面、34…保護膜、38…貫通孔、41…回路素子層、42…導体、42a…面
図1
図2
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図8