【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車両用シートは、シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部において、シート幅方向の外側の表面を覆う第1表皮と、前記側部におけるシート幅方向の内側の表面を覆い、シート幅方向の外端部が前記第1表皮のシート幅方向の内端部と第1縫製部で縫製された第2表皮と、前記側部の内部に収容され、ガスの供給を受けて前記第1縫製部へ向けて膨張展開するサイドエアバッグを備えたサイドエアバッグモジュールと、前記側部の内部に固定された保持部材に巻き掛けられ、ループ状を成して
折り返され長手方向の両端部が重なる第1重なり部が前記第1縫製部で前記第1表皮と共に縫製され、かつ前記第1縫製部よりもさらに前記第1表皮のシート幅方向の内端側
が前記第1重なり部と共に前記第1表皮と複数箇所縫製された複数の第2縫製部が設けられ、前記サイドエアバッグの膨張展開時に前記第1縫製部に張力を伝達する第1補強布と、前記保持部材に巻き掛けられ、ループ状を成して
折り返され長手方向の両端部が重なる第2重なり部が前記第1縫製部で前記第2表皮と共に縫製され、かつ前記第1縫製部よりもさらに前記第2表皮のシート幅方向の外端側
が前記第2重なり部と共に前記第2表皮と複数箇所縫製された複数の第3縫製部が設けられ、前記サイドエアバッグの膨張展開時に前記第1補強布と共に前記第1縫製部に張力を伝達する第2補強布と、を有
し、前記第1縫製部は、前記第1重なり部における前記第1表皮の裏面で折り返された後の部位と前記第1表皮、並びに、前記第2重なり部における前記第2表皮の裏面で折り返された後の部位と前記第2表皮を縫製し繋いでいる。
【0008】
請求項1に係る車両用シートでは、シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部において、シート幅方向の外側の表面は第1表皮によって覆われており、シート幅方向の内側の表面は第2表皮によって覆われている。そして、第1表皮のシート幅方向の内端部と第2表皮のシート幅方向の外端部は、第1縫製部で縫製されている。
【0009】
また、側部の内部には、ガスの供給を受けて第1縫製部へ向けて膨張展開するサイドエアバッグを備えたサイドエアバッグモジュールが収容されている。つまり、サイドエアバッグがガスの供給を受けて膨張展開するとき、第1縫製部に張力を伝達して第1縫製部を開裂させ、第1補強布及び第1表皮と、第2補強布及び第2表皮との間を通過して、サイドエアバックが車室内側へ膨張展開される。
【0010】
ここで、側部の内部には保持部材が固定されており、保持部材には、サイドエアバッグの膨張展開時に第1縫製部に張力を伝達する第1補強布、第2補強布が、それぞれ巻き掛けられている。第1補強布は、ループ状を成して
折り返され長手方向の両端部が重なる第1重なり部が第1縫製部で第1表皮と共に縫製されており、当該第1縫製部よりもさらに第1表皮のシート幅方向の内端側
が第1重なり部と共に第1表皮と複数箇所縫製された複数の第2縫製部が設けられている。一方、第2補強布は、ループ状を成して
折り返され長手方向の両端部が重なる第2重なり部が第1縫製部で第2表皮と共に縫製されており、当該第1縫製部よりもさらに第2表皮のシート幅方向の外端側
が前記第2重なり部と共に第2表皮と複数箇所縫製された複数の第3縫製部が設けられている。
【0011】
すなわち、本発明では、第1補強布と第2補強布がループ状になった状態で、第1補強布の
長手方向の両端部は第1表皮に縫製され、第2補強布の
長手方向の両端部は第2表皮に縫製されている。したがって、第1補強布及び第2補強布は、二重になった状態で第1表皮、第2表皮にそれぞれ縫製される。
【0012】
このため、第1補強布及び第2補強布が一枚の状態で第1表皮、第2表皮にそれぞれ縫製された場合と比較して、第1補強布及び第2補強布の強度は向上することとなる。これにより、サイドエアバッグが膨張展開するとき、サイドエアバッグの膨出方向を規制することができ、サイドエアバッグの展開圧が上がっても、サイドエアバッグをガイドして、サイドエアバッグの展開ロスを抑制することができる。
【0013】
また、第1補強布及び第2補強部は、
長手方向の両端部が第1表皮、第2補強布にそれぞれ縫製されている。このため、例えば、第1補強布、第2補強部の一端部が第1表皮、第2補強布に縫製された場合と比較して、第2縫製部、第3縫製部の強度を向上させることができる。したがって、サイドエアバッグの展開圧が上がっても第2縫製部、第3縫製部における糸切れを抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記第1補強布及び前記第2補強布は、側面視で前記保持部材側を開口とするU字状を成しており、矩形状を成す本体部と、前記本体部の上部から延出され、前記本体部と重なる第1延出片と、前記本体部の下部から延出され、前記本体部と重なる第2延出片と、を含んで構成されている。
【0015】
請求項2に記載の車両用シートでは、第1補強布及び第2補強布は、側面視で保持部材側を開口とするU字状を成している。具体的に説明すると、第1補強布及び第2補強布は、矩形状を成す本体部を備えており、本体部の上部、下部からは、第1延出片、第2延出片が延出されている。そして、第1延出片、第2延出片は、それぞれ本体部と重なるようになっている。
【0016】
このため、延出片が1つしか設けられていない場合と比較して、補強布の強度が向上すると共に、サイドエアバッグが膨張展開するとき、当該サイドエアバッグを正確にガイドすることができる。
【0017】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記保持部材は、前記第1補強布が巻き掛けられた第1ブラケットと、前記第2補強布が巻き掛けられた第2ブラケットと、を含んで構成され、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとは互いに結合されて一体化されている。
【0018】
請求項3に記載の車両用シートでは、保持部材は、第1補強布が巻き掛けられた第1ブラケットと、第2補強布が巻き掛けられた第2ブラケットと、を含んで構成され、第1ブラケットと第2ブラケットとを互いに結合することによって一体化されるようにしている。
【0019】
すなわち、第1補強布、第2補強布を第1ブラケット、第2ブラケットに巻き掛ける際は、第1ブラケットと第2ブラケットとは、それぞれ独立した状態となっている。このため、第1補強布を第1ブラケットに巻き掛け、第2補強布を第2ブラケットに巻き掛ける作業をそれぞれ行った後、第1ブラケットと第2ブラケットを結合させる。したがって、縫製の作業がしやすく、コストを削減することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の力布の縫製方法は、シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部の内部において、シート幅方向の外側に固定される第1ブラケットに請求項1に記載の第1補強布を巻き掛ける第1工程と、前記第1補強布における請求項1に記載の第1重なり部と請求項1に記載の第1表皮とを重ね、第4縫製部で互いに縫製させる第2工程と、前記側部の内部において、シート幅方向の内側に固定される第2ブラケットに、請求項1に記載の第2補強布を巻き掛ける第3工程と、前記第2補強布における請求項1に記載の第2重なり部と請求項1に記載の第2表皮とを重ね、第5縫製部で互いに縫製させる第4工程と、を有している。
【0021】
請求項4に記載の力布の縫製方法では、第1工程で、シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部の内部において、シート幅方向の外側に固定される第1ブラケットに第1補強布を巻き掛ける。そして、第2工程では、第1補強布が巻き掛けられループ状を成して重なる当該第1補強布の第1重なり部と第1表皮とを重ね、第4縫製部で互いに縫製する。
【0022】
一方、第3工程では、シートバックの側部の内部において、シート幅方向の内側に固定される第2ブラケットに第2補強布を巻き掛ける。そして、第4工程では、第2補強布が巻き掛けられループ状を成して重なる当該第2補強布の第2重なり部と第2表皮とを重ね、第5縫製部で互いに縫製する。
【0023】
すなわち、本発明では、第1補強布と第2補強布がループ状になった状態で、第1補強布の両端部を第1表皮と共に縫製し、第2補強布の両端部を第2表皮と共に縫製する。したがて、第1補強布及び第2補強布は、二重になった状態で第1表皮、第2表皮にそれぞれ縫製されることとなる。
【0024】
このため、第1補強布及び第2補強布が一枚の状態で第1表皮、第2表皮にそれぞれ縫製された場合と比較して、第1補強布及び第2補強布の強度は向上することとなる。これにより、サイドエアバッグの展開圧が上がっても、サイドエアバッグの膨出方向を規制することができ、サイドエアバッグの展開ロスを抑制することができる。
【0025】
なお、ここでは、「第1工程」の作業後に「第2工程」の作業が行われ、「第3工程」の作業後に「第4工程」の作業が行われるようになっているが、「第1工程」と「第3工程」については、特に作業の順番を示すものではなく、「第1工程」と「第3工程」の作業の順番は逆でもよいし、略同時に行われてもよい。後述する「第6工程」と「第7工程」においてもこれと同様、特に作業の順番を示すものではない。
【0026】
請求項5に記載の力布の縫製方法は、請求項4に記載の力布の縫製方法において、前記第4縫製部で縫製された前記第1表皮と前記第5縫製部で縫製された前記第2表皮とを請求項1に記載の第1縫製部で互いに縫製させる第5工程をさらに有している。
【0027】
請求項5に記載の力布の縫製方法では、第5工程において、第4縫製部で縫製された第1表皮と第5縫製部で縫製された第2表皮とを第1縫製部で互いに縫製させる。この第1縫製部は、サイドエアバッグがガスの供給を受けて膨張展開するとき張力が伝達されて開裂する。
【0028】
請求項6に記載の力布の縫製方法は、請求項5に記載の力布の縫製方法において、前記第1縫製部と前記第4縫製部の間で、前記第1表皮と前記第1重なり部を請求項1に記載の第2縫製部で複数箇所縫製する第6工程と、前記第1縫製部と前記第5縫製部の間で、前記第2表皮と前記第2重なり部を請求項1に記載の第3縫製部で複数箇所縫製する第7工程と、をさらに有している。
【0029】
請求項6に記載の力布の縫製方法では、第6工程において、第1縫製部と第4縫製部の間で、第1表皮と第1重なり部を第2縫製部で複数箇所縫製する。一方、第7工程において、第1縫製部と第5縫製部の間で、第2表皮と第2重なり部を第3縫製部で複数箇所縫製する。
【0030】
このように、第1表皮と第1重なり部を第2縫製部で複数箇所縫製し、第2表皮と第2重なり部を第3縫製部で複数箇所縫製することによって、これらの部位が1回縫製された場合と比較して、縫製強度を向上させ、サイドエアバッグの展開圧が上がっても縫製部における糸切れを抑制することができる。
【0031】
請求項7に記載の力布の縫製方法は、請求項4を引用する請求項6に記載の力布の縫製方法において、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットを互いに結合させて一体化させる第8工程をさらに有している。
【0032】
請求項7に記載の力布の縫製方法では、第8工程において、第1ブラケットと第2ブラケットを互いに結合させて一体化させることで、第1補強布及び第2補強布が適正に縫製された後に第1ブラケットと第2ブラケットを互いに結合させることで、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、請求項1に記載の車両用シートによれば、力布の強度を向上させることができる。
【0034】
請求項2に記載の車両用シートによれば、サイドエアバッグが膨張展開するとき当該サイドエアバッグを第1補強布及び第2補強布で正確にガイドすることができる。
【0035】
請求項3に記載の車両用シートによれば、縫製の作業性を上げることができ、縫製作業の手間を低減して、コストの削減を図ることができる。
【0036】
請求項4に記載の力布の縫製方法によれば、第1補強布及び第2補強布が一枚の状態で第1表皮、第2表皮にそれぞれ縫製された場合と比較して、第1補強布及び第2補強布の強度を向上させることができる。
【0037】
請求項5に記載の力布の縫製方法によれば、サイドエアバッグがガスの供給を受けて膨張展開するとき開裂する第1縫製部を縫製することができる。
【0038】
請求項6に記載の力布の縫製方法によれば、第1表皮と第1重なり部を複数の第2縫製部で複数箇所縫製し、第2表皮と第2重なり部を複数の第3縫製部で複数箇所縫製することによって、サイドエアバッグの展開圧が上がっても縫製部における糸切れを抑制することができる。
【0039】
請求項7に記載の力布の縫製方法によれば、縫製の作業性を上げることができ、縫製作業の手間を低減することができる。