特許第6438537号(P6438537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6438537
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】走行制御装置および走行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   B60L15/20 J
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-128687(P2017-128687)
(22)【出願日】2017年6月30日
【審査請求日】2017年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刀谷 郁也
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−52581(JP,A)
【文献】 特開2005−254975(JP,A)
【文献】 特開2007−323199(JP,A)
【文献】 特開平6−293273(JP,A)
【文献】 特開昭56−99856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両の走行制御装置であって、
前記産業車両のアクセルレバーのレバー移動量から、前記産業車両の走行用モータの指示回転数を算出する指示回転数算出部と、
前記指示回転数に基づいて前記走行用モータの目標回転数を算出するとともに、前記目標回転数を前記指示回転数に段階的に近づけるランプ処理を行う目標回転数算出部と、
前記目標回転数に従って前記走行用モータを制御するモータ制御部と、を備え、
前記目標回転数算出部は、
前記ランプ処理のゲインを前記目標回転数と前記指示回転数との関係に応じて段階的に変更しつつ、前記目標回転数を算出する第1処理部と、
前記ゲインを1段階変化させたときの前記目標回転数の変化量を、前記産業車両を運転する作業者ごとに設定する第2処理部と、を備え
前記モータ制御部は、
前記走行用モータの現在の回転数と前記目標回転数とで、P制御、PI制御またはPID制御を行い、前記走行用モータを制御する
ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記作業者を撮影し、前記作業者の画像データを生成する撮影部と、
前記作業者と前記目標回転数の変化量との関係を示す変化量設定データが予め登録された記憶部と、
前記画像データおよび前記変化量設定データに基づいて前記目標回転数の変化量を決定し、前記第2処理部に前記目標回転数の変化量を設定させる管理部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記作業者の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、
前記目標回転数算出部は、前記生体情報取得部で取得した前記生体情報が所定の閾値を超えている場合に、前記目標回転数の変化量を小さくする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記第1処理部は、
前記目標回転数と前記指示回転数との偏差を算出し、前記偏差と予め設定された複数の閾値との比較を行い、前記目標回転数が前記指示回転数に近づくほど前記ゲインが小さくなるように、前記比較の結果に応じて前記ゲインを変更する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項5】
産業車両の走行制御方法であって、
前記産業車両のアクセルレバーのレバー移動量から、前記産業車両の走行用モータの指示回転数を算出する指示回転数算出ステップと、
前記指示回転数に基づいて前記走行用モータの目標回転数を算出するとともに、前記目標回転数を前記指示回転数に段階的に近づけるランプ処理を行う目標回転数算出ステップと、
前記目標回転数に従って前記走行用モータを制御するモータ制御ステップと、を含み、
前記目標回転数算出ステップは、
前記ランプ処理のゲインを前記目標回転数と前記指示回転数との関係に応じて段階的に変更しつつ、前記目標回転数を算出する第1ステップと、
前記ゲインを1段階変化させたときの前記目標回転数の変化量を、前記産業車両を運転する作業者ごとに設定する第2ステップと、を含み、
前記モータ制御ステップは、
前記走行用モータの現在の回転数と前記目標回転数とで、P制御、PI制御またはPID制御を行い、前記走行用モータを制御する
ことを特徴とする走行制御方法。
【請求項6】
前記第2ステップは、
撮影部で前記作業者を撮影し、前記作業者の画像データを生成する撮影ステップと、
前記画像データと、記憶部に予め登録された前記作業者と前記目標回転数の変化量との関係を示す変化量設定データと、に基づいて前記目標回転数の変化量を設定する変化量設定ステップと、を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の走行制御方法。
【請求項7】
前記第1ステップでは、
前記作業者の生体情報を取得し、前記生体情報が所定の閾値を超えている場合に、前記目標回転数の変化量を小さくする
ことを特徴とする請求項5または6に記載の走行制御方法。
【請求項8】
前記第1ステップでは、
前記目標回転数と前記指示回転数との偏差を算出し、前記偏差と予め設定された複数の閾値との比較を行い、前記目標回転数が前記指示回転数に近づくほど前記ゲインが小さくなるように、前記比較の結果に応じて前記ゲインを変更する
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両の走行制御装置および走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行制御装置を備えた産業車両としては、例えば、特許文献1に記載のフォークリフトが知られている。特許文献1に記載のフォークリフトでは、走行制御装置が、アクセルレバーの倒し角から、走行用モータの回転数の目標値である目標回転数(目標速度)を算出する。そして、走行制御装置は、目標回転数と走行用モータの現在の回転数(現在の速度)とでPI制御を行い、走行用モータに対して制御信号(トルク指令)を出力して、走行用モータの現在の回転数(現在の速度)を目標回転数(目標速度)に一致させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−90463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記フォークリフト含む従来のフォークリフトでは、一般に、走行制御として、平坦路では加速制限を行い、登坂路ではオートトルクアップを行い、さらにニュートラル回生や降坂時回生なども行うため、制御が複雑になるという問題があった。また、上記フォークリフトのようにPI制御を行った場合、走行速度が荷物の重さによってほとんど変わらないため、操作フィーリングが良くないという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、制御を簡素化することが可能で、かつ操作フィーリングが改善された走行制御装置および走行制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る走行制御装置は、
産業車両の走行制御装置であって、
前記産業車両のアクセルレバーのレバー移動量から、前記産業車両の走行用モータの指示回転数を算出する指示回転数算出部と、
前記指示回転数に基づいて前記走行用モータの目標回転数を算出するとともに、前記目標回転数を前記指示回転数に段階的に近づけるランプ処理を行う目標回転数算出部と、
前記目標回転数に従って前記走行用モータを制御するモータ制御部と、を備え、
前記目標回転数算出部は、
前記ランプ処理のゲインを前記目標回転数と前記指示回転数との関係に応じて段階的に変更しつつ、前記目標回転数を算出する第1処理部と、
前記ゲインを1段階変化させたときの前記目標回転数の変化量を、前記産業車両を運転する作業者ごとに設定する第2処理部と、を備え
前記モータ制御部は、
前記走行用モータの現在の回転数と前記目標回転数とで、P制御、PI制御またはPID制御を行い、前記走行用モータを制御する
ことを特徴とする。
【0007】
上記走行制御装置は、
前記作業者を撮影し、前記作業者の画像データを生成する撮影部と、
前記作業者と前記目標回転数の変化量との関係を示す変化量設定データが予め登録された記憶部と、
前記画像データおよび前記変化量設定データに基づいて前記目標回転数の変化量を決定し、前記第2処理部に前記目標回転数の変化量を設定させる管理部と、を備える
ことが好ましい。
【0008】
上記走行制御装置は、
前記作業者の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、
前記目標回転数算出部は、前記生体情報取得部で取得した前記生体情報が所定の閾値を超えている場合に、前記目標回転数の変化量を小さくしてもよい。
【0009】
前記第1処理部は、
前記目標回転数と前記指示回転数との偏差を算出し、前記偏差と予め設定された複数の閾値との比較を行い、前記目標回転数が前記指示回転数に近づくほど前記ゲインが小さくなるように、前記比較の結果に応じて前記ゲインを変更してもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る走行制御方法は、
産業車両の走行制御方法であって、
前記産業車両のアクセルレバーのレバー移動量から、前記産業車両の走行用モータの指示回転数を算出する指示回転数算出ステップと、
前記指示回転数に基づいて前記走行用モータの目標回転数を算出するとともに、前記目標回転数を前記指示回転数に段階的に近づけるランプ処理を行う目標回転数算出ステップと、
前記目標回転数に従って前記走行用モータを制御するモータ制御ステップと、を含み、
前記目標回転数算出ステップは、
前記ランプ処理のゲインを前記目標回転数と前記指示回転数との関係に応じて段階的に変更しつつ、前記目標回転数を算出する第1ステップと、
前記ゲインを1段階変化させたときの前記目標回転数の変化量を、前記産業車両を運転する作業者ごとに設定する第2ステップと、を含み、
前記モータ制御ステップは、
前記走行用モータの現在の回転数と前記目標回転数とで、P制御、PI制御またはPID制御を行い、前記走行用モータを制御する
ことを特徴とする。
【0011】
前記第2ステップは、
撮影部で前記作業者を撮影し、前記作業者の画像データを生成する撮影ステップと、
前記画像データと、記憶部に予め登録された前記作業者と前記目標回転数の変化量との関係を示す変化量設定データと、に基づいて前記目標回転数の変化量を設定する変化量設定ステップと、を含んでもよい。
【0012】
前記第1ステップでは、
前記作業者の生体情報を取得し、前記生体情報が所定の閾値を超えている場合に、前記目標回転数の変化量を小さくしてもよい。
【0013】
前記第1ステップでは、
前記目標回転数と前記指示回転数との偏差を算出し、前記偏差と予め設定された複数の閾値との比較を行い、前記目標回転数が前記指示回転数に近づくほど前記ゲインが小さくなるように、前記比較の結果に応じて前記ゲインを変更してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制御を簡素化することが可能で、かつ操作フィーリングが改善された走行制御装置および走行制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る走行制御装置を示す図である。
図2】本発明に係る走行制御装置のブロック図である。
図3】アクセルレバーの倒し角とレバー移動量との関係を示す図である。
図4】レバー移動量と指示回転数との関係を示す図である。
図5】本発明に係る走行制御方法のフローチャートである。
図6】本発明に係る走行制御方法の第2ステップのフローチャートである。
図7】ランプ処理のゲインを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る走行制御装置および走行制御方法の実施形態について説明する。なお、以下では、産業車両としてフォークリフトを例に挙げて説明する。
【0017】
[走行制御装置]
図1に、フォークリフト100および管理サーバ40を示す。管理サーバ40は、複数のフォークリフト100の走行および荷役作業を管理する。本実施形態に係る走行制御装置は、フォークリフト100の一部の構成(制御装置10、車載カメラ30)と、管理サーバ40の一部の構成(記憶部41、管理部42)と、を含む。
【0018】
フォークリフト100は、車体1の前側に延出された左右一対のストラドルレッグ2と、ストラドルレッグ2に沿って前後方向に移動するキャリッジ3と、キャリッジ3に立設された左右一対のマスト装置4と、マスト装置4に昇降可能に取り付けられた左右一対のフォーク5と、ストラドルレッグ2に設けられた左右一対の前輪6と、車体1の右後部(運転席7の下側)に設けられたキャスタ輪(図示略)と、車体1の内部に設けられた制御装置10と、を備える。
【0019】
フォークリフト100は、車体1の左後部に、駆動輪20と、走行用モータ21とを備える。制御装置10の制御下で走行用モータ21が回転駆動すると、走行用モータ21の動力が駆動輪20に伝達され、駆動輪20が正転または逆転する。さらに、フォークリフト100は、車体1の上面に、駆動輪20を操舵するためのステアリングハンドル8と、レバー類9と、を備える。レバー類9は、荷役レバー(リフトレバー、ティルトレバーおよびリーチレバー)とアクセルレバーと、を含む。
【0020】
ニュートラル位置のアクセルレバーを前傾または後傾させるアクセルON操作が行われると、制御装置10は、前傾の場合に駆動輪20を正転させ、後傾の場合に駆動輪20を逆転させる。前傾状態のアクセルレバーを後傾状態にさせたり後傾状態のアクセルレバーを前傾状態にさせたりするアクセル反転操作が行われると、制御装置10は、駆動輪20の回転方向を変える。前傾状態または後傾状態のアクセルレバーをニュートラル位置に戻すアクセルOFF操作が行われると、制御装置10は、駆動輪20の回転を停止させる。
【0021】
フォークリフト100は、フォークリフト100を運転する作業者を撮影するための車載カメラ30(本発明の「撮影部」に相当)を備える。車載カメラ30は、作業者を撮影すると、当該作業者の画像データを生成する。生成された画像データは、管理サーバ40に出力される。
【0022】
管理サーバ40は、記憶部41と、管理部42と、を備える。管理サーバ40は、複数のフォークリフト100と相互に通信を行うことができる。
【0023】
記憶部41には、作業者データと、作業者と後述する目標回転数の変化量との関係を示す変化量設定データと、が予め登録されている。作業者データには、作業者の顔画像と、作業者の氏名、所属部署、ID等が含まれる。変化量設定データには、例えば、作業者Aは変化量1(1[rpm])、作業者Bは変化量2(2[rpm])、作業者Cは変化量3(3[rpm])というような、作業者ごとに関連付けされた変化量が含まれる。
【0024】
管理部42は、記憶部41の作業者データおよび変化量設定データを参照して、車載カメラ30の画像データから作業者の顔画像を特定し、特定した作業者の目標回転数の変化量を決定する。決定した目標回転数の変化量は、制御装置10に出力される。
【0025】
図2に、制御装置10の具体的な構成を示す。制御装置10は、レバー移動量算出部11と、指示回転数算出部12と、目標回転数算出部を構成する第1処理部13および第2処理部14と、モータ制御部15と、を備える。制御装置10は、例えば、少なくとも1つのマイコンにより構成される。
【0026】
レバー移動量算出部11は、アクセルレバーの倒し角からレバー移動量を算出する。アクセルレバーの倒し角は、アクセルレバーに設けられた倒し角検出手段(例えば、ポテンショメータ)から入力される。レバー移動量は、倒し角と非線形関係を有する。具体的には、図3に示すとおり、倒し角が大きいとレバー移動量も大きくなる(倒し角が最大のときにレバー移動量も最大になる)が、倒し角が大きいほどレバー移動量の変化量が大きくなり、倒し角が小さいほどレバー移動量の変化量が小さくなる。このため、倒し角が大きい範囲では高速走行を容易に行うことができ、倒し角が小さい範囲では微速走行を容易に行うことができる。その結果、操作フィーリングが向上する。
【0027】
指示回転数算出部12は、レバー移動量から、走行用モータ21の回転数の指示値である指示回転数を算出する。図4に示すとおり、指示回転数は、レバー移動量と線形関係を有する。このため、指示回転数算出部12は、レバー移動量に所定の係数を乗算することで、指示回転数を算出することができる。算出された指示回転数は、目標回転数算出部の第1処理部13に出力される。
【0028】
目標回転数算出部は、第1処理部13と、第2処理部14と、を含む。第1処理部13は、第2処理部14の情報(第2処理部14で設定された目標回転数の変化量)を共有している。
【0029】
第1処理部13は、所定の周期(例えば、2[ms])で、指示回転数に基づいて走行用モータ21の回転数の目標値である目標回転数を算出する。具体的には、第1処理部13は、目標回転数を指示回転数に段階的に近づけるランプ処理を行い、かつ目標回転数と指示回転数との偏差に応じてランプ処理のゲインを変更しつつ、目標回転数を算出する。目標回転数は、指示回転数が正(正転)の場合には指示回転数以下の値になり、指示回転数が負(逆転)の場合に目標回転数が指示回転数以上の値になる。
【0030】
ランプ処理のゲインは、ランプ処理において目標回転数を変化させる度合に相当する。ゲインを大きくすると、目標回転数を変化させる(増加または減少させる)度合も大きくなるので、目標回転数が指示回転数に達するまでの時間が短くなる。すなわち、走行用モータ21の現在の回転数(現在回転数)が指示回転数に達するまでの時間が短くなる。一方、ゲインを小さくすると、目標回転数を変化させる度合も小さくなるので、目標回転数が指示回転数に達するまでの時間が長くなる。すなわち、現在回転数が指示回転数に達するまでの時間が長くなる。本実施形態では、目標回転数と指示回転数との偏差の絶対値が大きければゲインは大きくなり、偏差の絶対値が小さければゲインは小さくなる。
【0031】
第2処理部14は、ゲインを1段階変化させたときの目標回転数の変化量を、作業者ごとに設定する。本実施形態では、第2処理部14は、管理部42から入力された目標回転数の変化量を設定する。本実施形態に係る走行制御装置が、作業者の生体情報(例えば、心拍数)を取得する生体情報取得部を備えている場合、第2処理部14は、生体情報取得部で取得した生体情報が所定の閾値を超えているときに、設定した目標回転数の変化量を小さくしてもよい。生体情報取得部は、例えば、作業者の手首に装着可能な心拍センサを含む。
【0032】
モータ制御部15は、目標回転数に従って走行用モータ21を制御する。具体的には、モータ制御部15は、目標回転数と走行用モータ21の現在の回転数(現在回転数)とでP制御(比例制御)を行い、走行用モータ21に対して制御信号(トルク指令)を出力する。走行用モータ21の現在回転数は、例えば、走行用モータ21に設けられたエンコーダから入力される。
【0033】
上記のとおりP制御を行うことで、フォーク5上の荷物が重くなれば目標回転数(目標速度)に達するまでの時間が長くなり、フォーク5上の荷物が軽くなれば目標回転数(目標速度)に達するまでの時間が短くなる。これにより、操作フィーリングが向上する。
【0034】
結局、本実施形態に係る走行制御装置では、第1処理部13が、目標回転数と指示回転数との偏差に応じてランプ処理のゲインを変更しつつ目標回転数を算出するので、複数の走行制御を使い分ける(例えば、平坦路では加速制限を行い、登坂路ではオートトルクアップを行い、さらにニュートラル回生や降坂時回生なども行う)必要がなくなる。したがって、本実施形態に係る走行制御装置によれば、制御を簡素化することできる。
【0035】
また、本実施形態に係る走行制御装置によれば、第2処理部14が、ゲインを変化させたときの目標回転数の変化量を作業者ごとに設定するので、作業者の好みの操作フィーリングを実現することができる。さらに、本実施形態では、車載カメラ30、記憶部41、管理部42により、目標回転数の変化量が自動的に設定されるので、作業者は、目標回転数の変化量を設定する作業が不要となる。
【0036】
[走行制御方法]
図5および図6に、本実施形態に係る走行制御方法のフローチャートを示す。本実施形態に係る走行制御方法は、図1に示す走行制御装置により実現される。以下では、目標回転数[rpm]を目標速度とし、指示回転数[rpm]を指示速度とする。
【0037】
本実施形態に係る走行制御方法は、指示回転数算出ステップ(S1、S2)と、目標回転数算出ステップ(S3〜S12、S14〜S18、S101、S102)と、モータ制御ステップ(S13)と、を含む。
【0038】
指示回転数算出ステップ(S1、S2)は、走行用モータ21の指示回転数(指示速度)を算出するステップである。具体的には、ステップS1において、アクセルレバーの角度(倒し角)がレバー移動量算出部11に入力されると、レバー移動量算出部11は、レバー移動量を算出し、指示回転数算出部12に出力する。ステップS2において、指示回転数算出部12は、レバー移動量から指示速度を算出する。
【0039】
目標回転数算出ステップ(S3〜S12、S14〜S18、S101、S102)は、走行用モータの目標回転数(目標速度)を算出するとともに、目標速度を指示速度に段階的に近づけるランプ処理を行うステップである。この目標回転数算出ステップは、ランプ処理のゲインを段階的に変更しつつ目標速度を算出する第1ステップ(S3〜S12、S14〜S18)と、ゲインを1段階変化させたときの目標速度の変化量を設定する第2ステップ(S101、S102)と、を含む。
【0040】
図6に示すように、第2ステップは、撮影ステップ(S101)と、変化量設定ステップ(S102)と、を含む。具体的には、ステップS101において、作業者がフォークリフト100に搭乗すると、車載カメラ30は、作業者を撮影して当該作業者の画像データを生成する。生成された画像データは、管理サーバ40の管理部42に出力される。
【0041】
ステップS102において、管理部42は、記憶部41の作業者データおよび変化量設定データを参照して、車載カメラ30の画像データから作業者の顔画像を特定し、特定した作業者の目標速度の変化量を決定する。決定した目標速度の変化量は、制御装置10の第2処理部14に出力され、第2処理部14において、目標速度の変化量が設定される。本実施形態では、目標速度の変化量が1[rpm]に設定されたものとする。
【0042】
再び図5を参照し、ステップS3において、第1処理部13は、ブレーキがオン(例えば、ブレーキペダルが踏まれている)か否かを判定する。ブレーキがオンでない(例えば、ブレーキペダルが踏まれていない)場合、ステップS4において、第1処理部13は、目標速度と指示速度との偏差を算出する。本実施形態では、偏差=指示速度−目標速度である。なお、フォークリフト100の始動時(停止状態のフォークリフト100において、アクセルレバーを前傾または後傾させるアクセルON操作が行われた時)は、ステップS4の目標速度は0になる。すなわち、偏差=指示速度となる。一方、フォークリフト100の始動後は、ステップS4の目標速度は、直前に算出した目標速度になる。
【0043】
第1処理部13は、偏差と予め設定された複数の閾値との比較を行い、比較の結果に応じてゲインを決定する(ステップS5〜S12)。本実施形態では、指示速度の最大値を3000[rpm]とし、最小値を−3000[rpm]とする。
【0044】
まず、第1処理部13は、偏差と0との比較を行い、偏差>0の場合は目標速度を1段階(+1[rpm])アップさせる(ステップS5)。次に、第1処理部13は、偏差と1000[rpm]との比較を行い、偏差>1000[rpm]の場合は目標速度を1段階(+1[rpm])アップさせる(ステップS6)。次に、第1処理部13は、偏差と2000[rpm]との比較を行い、偏差>2000[rpm]の場合は目標速度を1段階(+1[rpm])アップさせる(ステップS7)。次に、第1処理部13は、偏差と3000[rpm]との比較を行い、偏差>3000[rpm]の場合は目標速度を1段階(+1[rpm])アップさせる(ステップS8)。
【0045】
次に、第1処理部13は、偏差と0との比較を行い、偏差<0の場合は目標速度を1段階(−1[rpm])ダウンさせる(ステップS9)。次に、第1処理部13は、偏差と−1000[rpm]との比較を行い、偏差<−1000[rpm]の場合は目標速度を1段階(−1[rpm])ダウンさせる(ステップS10)。次に、第1処理部13は、偏差と−2000[rpm]との比較を行い、偏差<−2000[rpm]の場合は目標速度を1段階(−1[rpm])ダウンさせる(ステップS11)。次に、第1処理部13は、偏差と−3000[rpm]との比較を行い、偏差<−3000[rpm]の場合は目標速度を1段階(−1[rpm])ダウンさせる(ステップS12)。
【0046】
結局、本実施形態では、第1処理部13は、ランプ処理のゲインを4段階に変更することができる。−1000[rpm]≦偏差≦1000[rpm]の場合は、目標速度を1段階アップまたはダウンさせる(1[rpm]増加または減少させる)第1ゲインとなる。1000[rpm]<偏差≦2000[rpm]または−2000[rpm]≦偏差<−1000[rpm]の場合は、目標速度を2段階アップまたはダウンさせる(2[rpm]増加または減少させる)第2ゲインとなる。2000[rpm]<偏差≦3000[rpm]または−3000[rpm]≦偏差<−2000[rpm]の場合は、目標速度を3段階アップまたはダウンさせる(3[rpm]増加または減少させる)第3ゲインとなる。偏差>3000[rpm]または偏差<−3000[rpm]の場合は、目標速度を4段階アップまたはダウンさせる(4[rpm]増加または減少させる)第4ゲインとなる。
【0047】
モータ制御ステップ(S13)は、目標回転数に従って走行用モータ21を制御するステップである。具体的には、ステップS13において、モータ制御部15は、第1処理部13が算出した目標速度と、走行用モータ21に設けられたエンコーダから入力された入力速度(現在回転数)とでP制御を行い、トルクを計算する。そして、モータ制御部15は、走行用モータ21に対して制御信号(トルク指令)を出力する。
【0048】
図7(A)に、指示速度が3000[rpm]、最初の目標速度が−3000[rpm]の場合における、ランプ処理のゲインの変化を示す。目標速度が0になるまでは、偏差>3000[rpm]となるので、ゲインは目標速度を4段階アップさせる(4[rpm]増加させる)第4ゲインとなる。その後、目標速度が指示速度に近づくにつれて、ゲインは第3ゲイン、第2ゲイン、第1ゲインと変化する。
【0049】
図7(B)に、指示速度が−3000[rpm]、最初の目標速度が3000[rpm]の場合における、ランプ処理のゲインの変化を示す。目標速度が0になるまでは、偏差<−3000[rpm]となるので、ゲインは目標速度を4段階ダウンさせる(4[rpm]減少させる)第4ゲインとなる。その後、目標速度が指示速度に近づくにつれて、ゲインは第3ゲイン、第2ゲイン、第1ゲインと変化する。
【0050】
図7(C)に、指示速度が2000[rpm]、最初の目標速度が−2000[rpm]の場合における、ランプ処理のゲインの変化を示す。目標速度が−1000[rpm]になるまでは、偏差>3000[rpm]となるので、ゲインは目標速度を4段階アップさせる(4[rpm]増加させる)第4ゲインとなる。その後、目標速度が指示速度に近づくにつれて、ゲインは第3ゲイン、第2ゲイン、第1ゲインと変化する。
【0051】
再び図5を参照し、ステップS3においてブレーキがオン(例えば、ブレーキペダルが踏まれている)場合、ステップS14、S16において、第1処理部13は、目標速度と所定の閾値との比較を行う。所定の閾値は、最大のゲイン(第4ゲイン)のときの目標速度の増減値(+4[rpm]または−4[rpm])である。
【0052】
ステップS14において、目標速度>閾値(+4[rpm])の場合、ステップS15において、第1処理部13は目標速度を4段階ダウンさせる(4[rpm]減少させる)。ステップS16において、目標速度<閾値(−4[rpm])の場合、ステップS17において、第1処理部13は目標速度を4段階アップさせる(4[rpm]増加させる)。ステップS14、S16において、ともにNOの場合(−4[rpm]≦目標速度≦+4[rpm]の場合)、ステップS18において、第1処理部13は目標速度を0にする。次いで、ステップS13に移行する。
【0053】
上記のとおり、第1ステップ(S3〜S12、S14〜S18)において、目標速度と指示速度との偏差に応じてランプ処理のゲインを変更しつつ目標速度を算出するので、複数の走行制御を使い分ける(例えば、平坦路では加速制限を行い、登坂路ではオートトルクアップを行い、さらにニュートラル回生や降坂時回生なども行う)必要がなくなる。したがって、本実施形態に係る走行制御方法によれば、制御を簡素化することできる。
【0054】
また、本実施形態に係る走行制御方法によれば、第2ステップ(S101、S102)において、ゲインを変化させたときの目標速度の変化量を作業者ごとに自動的に設定するので、作業者の好みの操作フィーリングを実現することができ、かつ、作業者は目標回転数の変化量を設定する作業が不要となる。
【0055】
さらに、本実施形態に係る走行制御方法では、作業者の生体情報(例えば、心拍数)を所定の周期で取得し、当該生体情報が所定の閾値を超えているときに、第2ステップ(S101、S102)で設定した目標速度の変化量を小さくしてもよい。例えば、目標速度の変化量を1[rpm]から0.5[rpm]に変更してもよい。これにより、第1ステップにおいて目標速度を1段階アップ/ダウンさせたときの目標速度の変化量は、1[rpm]から0.5[rpm]に変更される。
【0056】
以上、本発明に係る走行制御装置および走行制御方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記実施形態では、第1処理部13が、目標回転数(目標速度)と指示回転数(指示速度)との偏差に応じてランプ処理のゲインを4段階に変更しているが、3段階以下に変更してもよいし、5段階以上に変更してもよい。
【0058】
第1処理部13は、指示回転数、目標回転数および車速0点の大小関係に応じてランプ処理のゲインを変更してもよい。車速0点とは、フォークリフト100の車速がゼロのときの走行用モータ21の回転数のことであり、回転数ゼロのことである。例えば、第1処理部13は、
(1)車速0点<目標回転数<指示回転数の場合、または車速0点>目標回転数>指示回転数の場合に、ゲインを第2ゲインとし、
(2)車速0点<指示回転数<目標回転数の場合、または車速0点>指示回転数>目標回転数の場合に、ゲインを第1ゲインとし、
(3)指示回転数<車速0点<目標回転数の場合、または指示回転数>車速0点>目標回転数の場合に、ゲインを第3ゲインとしてもよい。
【0059】
すなわち、第1処理部13は、目標回転数(目標速度)と指示回転数(指示速度)との関係に応じてランプ処理のゲインを変更するのであれば、適宜構成を変更できる。
【0060】
上記実施形態では、目標回転数の変化量を自動的に設定するために、車載カメラ30、記憶部41、管理部42を設けているが、作業者が目標回転数の変化量を設定する作業を許容できるのであれば、上記の構成を省略することができる。
【0061】
モータ制御部15はP制御を行うことが好ましいが、本発明では、アクセルレバーの倒し角と非線形関係にあるレバー移動量から指示回転数を算出することにより操作フィーリングがある程度向上するので、モータ制御部15は、P制御以外の制御、例えば、PI制御やPID制御を行っても良い。
【0062】
本発明に係る産業車両は、フォークリフト以外の荷役車両を含む。
【符号の説明】
【0063】
1 車体
2 ストラドルレッグ
3 キャリッジ
4 マスト装置
5 フォーク
6 前輪
7 運転席
8 ステアリングハンドル
9 レバー類
10 制御装置
11 レバー移動量算出部
12 指示回転数算出部
13 第1処理部
14 第2処理部
15 モータ制御部
20 駆動輪
21 走行用モータ
30 車載カメラ
40 管理サーバ
41 記憶部
42 管理部
100 フォークリフト
【要約】
【課題】制御を簡素化することが可能で、かつ操作フィーリングが改善された走行制御装置および走行制御方法を提供する。
【解決手段】産業車両の走行制御装置であって、走行用モータの指示回転数を算出する指示回転数算出部12と、走行用モータの目標回転数を算出するとともに、目標回転数を指示回転数に段階的に近づけるランプ処理を行う目標回転数算出部と、目標回転数に従って走行用モータを制御するモータ制御部15と、を備える。目標回転数算出部は、ランプ処理のゲインを目標回転数と指示回転数との関係に応じて段階的に変更しつつ目標回転数を算出する第1処理部13と、ゲインを1段階変化させたときの目標回転数の変化量を設定する第2処理部14と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7