特許第6438692号(P6438692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438692
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】医療用布帛
(51)【国際特許分類】
   D03D 3/02 20060101AFI20181210BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20181210BHJP
   A61L 29/00 20060101ALI20181210BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20181210BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   D03D3/02
   A61F2/07
   A61L29/00
   D03D1/00 Z
   D03D15/00 C
   D03D15/00 F
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-137143(P2014-137143)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-14204(P2016-14204A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(72)【発明者】
【氏名】中澤 彰仁
(72)【発明者】
【氏名】奥野 登起男
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/137263(WO,A1)
【文献】 特開平11−302944(JP,A)
【文献】 国際公開第94/021848(WO,A1)
【文献】 特開2004−115976(JP,A)
【文献】 特開2009−161890(JP,A)
【文献】 特開2003−183948(JP,A)
【文献】 特開2011−245282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00−27/18
A61F2/00−4/00
A61L15/00−33/18
D02G1/00−3/48
D02J1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7〜120dtexである極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配し、厚みが10〜90μmである織物において、該経糸及び/又は該緯糸のフィラメントが50〜1000回/mで撚ってあり、該経糸断面の重なり係数である経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上であり、かつ、針刺し前後の透水率が300cc/cm/min以下であることを特徴とする医療用布帛。
【請求項2】
前記経糸の撚数Twと前記緯糸の撚数Tfが、Tw≧(Tf+200)の関係を満たす、請求項1に記載の医療用布帛。
【請求項3】
前記高密度織物断面の経糸及び/又は緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)の比が1.5<Dh/Dv<10である、請求項1又は2に記載の医療用布帛。
【請求項4】
前記経糸のカバーファクター(CFw)と前記緯糸のカバーファクター(CFf)の和(CFw+CFf)が1600〜2400である、請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項5】
前記経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)の比が2≦Dw/Df≦20である、請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項6】
前記経糸及び緯糸の織縮み率が20%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項7】
筒状のシームレス布帛の形態にある、請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の医療用布帛を含むステントグラフト。
【請求項9】
請求項に記載のステントグラフトが挿入されたカテーテル。
【請求項10】
請求項に記載のステントグラフトを構成要素として含むステントデリバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内埋め込み型資材として好適な医療用布帛であって、薄いにも関わらず透水性に優れており、ステントグラフトの布帛等に好適に用いることのできる医療用布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈瘤の治療には人工血管を用いた人工血管置換術が行われていたが、最近ではステントグラフトを用いたカテーテル血管内治療が急速に拡大しつつある。これは、ステントグラフト手術が開胸、開腹手術を伴わないため身体的・経済的負担が低減されるためである。このステントグラフトは、カテーテルに入れて、足の付け根の動脈から挿入し、手術部位まで移送される。そのため、動脈が細い患者も適応できるように、細径のカテーテルが求められ、ステントグラフトも小さく折りたためることが望まれている。
ステントグラフトを細くするためには、ステントグラフト用布帛の厚みを薄くすることが必要であり、ステントグラフト用布帛の厚みを薄くするためには、布帛を構成する繊維の総繊度及び単糸繊度を細くすること、即ち極細糸を用いることが必要である。
【0003】
以下の特許文献1には、繊維の総繊度及び単糸繊度を細くしたステントグラフト用布帛が記載されているが、低い織速度(40rpm以下)では糸切れなく製造できるが、繊維の総繊度及び単糸繊度を細いため、高い織速度(80rpm以上)にすると、経糸及び/又は緯糸は糸切れや毛羽の問題が発生するため、生産速度を上げることが困難である。
また、以下の特許文献2には、細くした繊維の総繊度及び単糸繊度に撚糸をかけているが、撚数を十分考慮しておらず、撚数が少ない場合には毛羽や糸切れが多くなる。また、撚りをかけることで糸が扁平になりにくく、透水性が高くなり、血液漏れが多くなるという問題が発生する。
このように、高生産性であり、かつ厚みが薄く、低透水性の医療用布帛はこれまで得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2013/137263号国際公開公報
【特許文献2】特表2013−515177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高い織速度でも毛羽、糸切れがなく生産でき、低透水性で、厚みが薄い医療用布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、経糸及び/又は緯糸の撚数の範囲を決め、製織条件の経糸及び/又は緯糸の糸重なり率を調整することで、高い織速度の毛羽や糸切れの問題と透水性の問題を解決できることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明は以下のとおりのものである。
【0007】
[1]単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7〜120dtexである極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配し、厚みが10〜90μmである織物において、該経糸及び/又は該緯糸のフィラメントが50〜1000回/mで撚ってあり、該経糸断面の重なり係数である経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上であり、かつ、針刺し前後の透水率が300cc/cm/min以下であることを特徴とする医療用布帛。
【0008】
[2]前記経糸の撚数Twと前記緯糸の撚数Tfが、Tw≧(Tf+200)の関係を満たす、前記[1]に記載の医療用布帛。
【0010】
]前記高密度織物断面の経糸及び/又は緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)の比が1.5<Dh/Dv<10である、前記[1]又は[2]に記載の医療用布帛。
【0011】
]前記経糸のカバーファクター(CFw)と前記緯糸のカバーファクター(CFf)の和(CFw+CFf)が1600〜2400である、前記[1]〜[]のいずれかに記載の医療用布帛。
【0012】
]前記経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)の比が2≦Dw/Df≦20である、前記[1]〜[]のいずれかに記載の医療用布帛。
【0013】
]前記経糸及び緯糸の織縮み率が20%以下である、前記[1]〜[]のいずれかに記載の医療用布帛。
【0014】
]筒状のシームレス布帛の形態にある、前記[1]〜[]のいずれかに記載の医療用布帛。
【0015】
]前記[1]〜[]のいずれかに記載の医療用布帛を含むステントグラフト。
【0016】
]前記[]に記載のステントグラフトが挿入されたカテーテル。
【0017】
10]前記[]に記載のステントグラフトを構成要素として含むステントデリバリー装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の医療用布帛は、製織加工工程において糸切れや毛羽の発生がなく、高い生産性での製造が可能となる。また、本発明の医療用布帛は、厚みが薄く、透水率が小さいため、高品位のステントグラフト用布帛や人工血管等として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の医療用布帛の一例を示した模式図である。
図2】経糸及び/又は緯糸の重なり度(TT又はWW)について説明する本実施形態の医療用布帛の一例を示した断面模式図である。
図3】経糸及び/又は緯糸の垂直水平方向の比(Dh/Dv)について説明する本実施形態の医療用布帛の一例を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の医療用布帛は、特定の極細繊維が配された布帛である。特定の極細繊維は、単糸繊度が0.5dtex以下であり、かつ、総繊度が7〜120dtexである繊維である。総繊度とは、単糸フィラメント1本あたりの繊度と総フィラメント数の積である。
本実施形態の医療用布帛に使用する極細繊維としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリシクロヘキサンテレフタレート、PTFEやETFEなどフッ素樹脂の繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。生体内で構造安定性が高く、長期耐久性、取扱い性の良さの観点から、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルやPTFEやETFEなどのフッ素樹脂が好ましい。生体内の温度変化により繊維の強度低下しないガラス転移温度が50℃以上のポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルやPTFEやETFEなどのフッ素樹脂がさらに好ましい。
極細繊維としては、目的に応じて1種又は2種以上の繊維素材又は繊度違いを組み合わせて使用することができる。組合せの態様としては、2種以上の繊維を撚り合わせて複合繊維として使用することもできるし、織物の経糸、緯糸に別々の繊維を使用することができ、或いはその一部として部分的に使用することもできる。組み合わせ方の例として、ポリエステル繊維とフッ素樹脂の極細繊維同士の組み合わせや、ポリエステル繊維の極細繊維と単糸繊度が0.5dtex以上のポリエステル繊維との組み合わせ、ポリエステル繊維の極細繊維と単糸繊度が0.5dtex以上のフッ素樹脂繊維との組み合わせなどが挙げられる。
透水性を低くし、柔軟性を向上させるためには、フィラメント数が100以上のマルチフィラメントがより好ましい。
【0021】
本実施形態の医療用布帛では、単糸繊度が0.5dtex以下であり、かつ、総繊度が7〜120dtexである極細繊維が、織物の経糸及び/又は緯糸に配されている必要がある。また、幅方向の柔軟性や防シワの観点から、少なくとも緯糸に極細繊維を用いることが好ましい。透水率を低下させるために、極細繊維は、織物の経糸と緯糸の両者に配されていることがより好ましい。
【0022】
本実施形態の医療用布帛では、経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)の比が2≦Dw/Df≦20になるように経糸、緯糸を選択することが好ましく、より好ましくは5≦Dw/Df≦20であり、さらに好ましくは10≦Dw/Df≦20である。Dw/Dfを2以上にして、経糸と緯糸の単糸断面径に差をつけることは、以下の点で望ましい。通常、ステントグラフトでは血液が流れる方向が経糸方向であり、経糸に引張の負荷が大きくかかるため、緯糸よりも経糸の単糸繊度を太くして経糸方向の引張強度が強くすることが好ましい。また、経糸の単糸繊度よりも、緯糸の単糸繊度を細くすることで、柔軟性が上がり、変形しやすく、皺になりにくいので好ましい。また、Dw/Dfを20以下にすることで、緯糸の織縮率が低く抑えられて、透水率を低くすることができるので望ましい。
【0023】
本実施形態の医療用布帛に使用する極細繊維の総繊度は、ステントグラフト用布帛の薄膜化と製織時に毛羽や糸切れの問題を発生させないために、7dtex以上120dtex以下であること必要がある。また、総繊度を120dtex以下にすることで、高密度の織物が製造することができる。
尚、ステントグラフトが用いられる血管で最も太いのは、胸部大動脈であり通常内径40〜50mm程度である。胸部大動脈では最大内径50mmのステントグラフトを18フレンチ(内径6mm)以下のカテーテルに挿入できることが求められているが、直径6mmの孔を通過することができる内径50mmの筒状の布帛の厚みは最大で90μmであることが本発明者らのこれまでの検討により明らかになっており、この厚みは筒状布帛の内径が変化しても大きく変わることはないので、本実施形態の極細繊維を特定するにおいては、布帛の厚み90μm以下を基準とする。
【0024】
本実施形態の医療用布帛に使用する極細繊維の総繊度が7dtex未満であると布帛の厚みは薄くなり、ステントグラフトの細径化ニーズに適うが、製織加工をはじめとする成形加工工程において毛羽や糸切れが多発する等工程通過性に劣る。また、極細繊維の総繊度が120dtexを超えると、例え単糸繊度が0.5dtex以下であっても布帛の厚みが90μmを超え、例えば、内径50mmの筒状の布帛とした時に直径6mmの孔(内径6mmのカテーテルを想定)を通過することができない。布帛の薄膜化と破裂強度を両立するという観点から、極細繊維の総繊度は、10dtex以上100dtex以下が好ましく、より好ましくは15dtex以上80dtex以下であり、さらに好ましくは20dtex以上50dtex以下である。
【0025】
一方、極細繊維の単糸繊度は、ステントグラフト用布帛の極薄化の観点から、0.5dtex以下であることが好ましい。ここで、単糸繊度とは単糸フィラメント1本あたりの繊度である。単糸繊度が0.5dtexを超えると、たとえ総繊度が120dtex以下であっても布帛の厚みを90μm以下に薄膜化することは困難である。布帛の薄膜化の観点から極細繊維の単糸繊度は好ましくは0.4dtex以下、より好ましくは0.3dtex以下である。単糸繊度の下限に特に限定はないが、織編加工等の後処理工程性の観点から0.01dtex以上が好ましく、より好ましくは0.03dtex以上である。
【0026】
本実施形態の医療用布帛に使用する経糸及び/又は緯糸のフィラメントは製織前に50〜1000回/mで撚っている必要があり、好ましくは50〜750回/mであり、より好ましくは50〜500回/mである。50回/m以上の撚数とすることで、平滑性を上げ、さらに引張りや曲げ等の応力が均一にフィラメントへかかるようになり、製織時の毛羽や糸切れの問題を減らし、工程安定性の向上に繋がる。1000回/m以下の撚数とすることで、織物上の経糸及び緯糸は扁平になりやすく、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が減り、透水率を低くすることができる。製織時は、経糸に糸同士の摩耗や金属との摩耗、引張や曲げ等の負荷が大きくかかるため、少なくとも経糸に撚糸を用いて、耐摩耗性、平滑性を向上させることが好ましい。さらに極細繊維は、単糸繊度が小さいため、製織時に毛羽や糸切れが起こりやすいので、撚糸をかけて工程安定性が向上させることが、より好ましい。
撚糸は、2種以上の異なる繊維素材又は異なる繊度を撚り合わせて複合繊維として使用することもできる。また、緯糸、経糸は各々別の撚数の撚糸を用いてもいい。さらに緯糸及び経糸の撚り方向を同一方向にすることが好ましい。これは緯糸及び経糸の撚り方向を同一方向にすることで、緯糸及び経糸の密着性を上げ、透水率を低くすることができ、かつ織物は薄くなるので好ましい。
【0027】
経糸の撚数Twと緯糸の撚数TfがTw≧(Tf+200)であることが好ましく、より好ましくはTw≧(Tf+300)であり、さらに好ましくはTw≧(Tf+400)である。経糸の撚り数は、製織時の糸切れや毛羽の問題を抑えるため、経糸の撚数Twは多くし、耐摩耗性、平滑性を向上させることが好ましい。緯糸も糸切れ、毛羽を抑えるため、撚りをかけることが好ましいが、緯糸は経糸に比べ、織機のヘルドや筬等の摩耗による負荷がないため、緯糸の撚り数Tfは少なくてもよい。また、緯糸も経糸のように多い撚数にすると緯糸重なり度(WW)が0.9以下になりやすく、透水率が低下する。そのためTw≧(Tf+200)にすることで、製織性の糸切れ、毛羽の問題と透水率の問題の両方を解決できるようになる。
【0028】
本実施形態の医療用布帛に使用する経糸及び/又は緯糸のフィラメントは製織前に糊剤が被覆されることが好ましい。これにより、耐摩耗性を向上させ、製織時に毛羽や糸切れの発生を抑制することができる。糊付け方法の1つの例としては、糸を糊剤に浸し、乾燥させることが挙げられる。糊剤としては、ポバール系糊剤やアクリル系糊剤等が挙げられ、2種以上の糊剤を組み合わせて使用することもできる。耐糊落ち性の観点から、ポバール系糊剤とアクリル系糊剤を組み合わせた糊剤が好ましい。また、生体安全性の観点からは、糊剤を使用しないことも好ましい。
【0029】
本実施形態の医療用布帛の織物構造としては、平織、綾織、朱子織、梨地織等があり特に限定するものではないが、布帛の薄膜化と血液漏れが少ないという点から平織構造や綾織構造が好ましい。さらに強度の観点からは、リップストップ組織を有すると引裂き強力や引張強度を上げることができ好ましい。製織後は必要に応じて、精練、ヒートセットを行う。
【0030】
経糸重なり度(TT)及び/又は緯糸重なり度(WW)が0.9以上であることが好ましい。透水率を低くするため、経糸重なり度(TT)、緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上であることがより好ましい。また、無撚の糸に比べ撚糸は、扁平になりにくく、糸重なり度が低いため、撚糸が0.9以上の糸重なり度を満たすことが好ましい。
緯糸重なり度(WW)を0.9以上にする方法は特に限定されるものではないが、1つの例として、極細糸を緯糸に使用し、かつ緯糸の打ち込み数、経糸張力を調整する方法が挙げられる。
極細糸を用いることで、糸が扁平になりやすく、緯糸の糸重なり度が向上する。
緯糸の打ち込み数に関しては、緯糸のカバーファクターが800以上となるようにサーフェスロールの速度を調整することが好ましい。緯糸のカバーファクターが800以上とすることで、緯糸密度が向上し、緯糸重なり度を向上させることができる。
緯糸のカバーファクターは、W1/2×NW{式中、W:緯糸の繊度(dtex)、NW:緯糸の本数(本/2.54cm)}で計算される。
また、経糸張力の調整範囲は0.5〜1.5g/dtにすることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.5g/dtex、さらに好ましくは0.7〜1.5g/dtexである。経糸張力を0.5g/dtex以上にすることで、緯糸の打ちこみ時、緯糸の打ち込み性が向上し、緯糸重なり度が0.9以上になる。1.5g/dtex以下にすることで糸切れや毛羽がなく、安定して製織することができる。
【0031】
経糸重なり度(TT)を0.9以上にする方法は特に限定されるものではないが、1つの実施例として経糸の筬通し本数を調整する方法が挙げられる。経糸のカバーファクターが800以上となるように経糸を準備して、筬通しすることで可能となる。
経糸のカバーファクターは、T1/2×NT{式中、T:経糸の繊度(dtex)、NT:経糸の本数(本/2.54cm)}で計算される。
【0032】
織物断面の経糸及び/又は緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)の比が1.5<Dh/Dv<10であることが好ましく、より好ましくは2<Dh/Dv<10であり、さらに好ましくは2.5<Dh/Dv<10である。また、織物断面の経糸、緯糸の両方の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)の比が1.5<Dh/Dv<10であることが、透水率が低くなるのでより好ましい。Dh/Dvが1.5超であると、糸が扁平になり隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が減り、透水率を低くすることができる。Dh/Dvが10未満であると、糸の厚みが薄くなり過ぎずに、透水率の悪化を防ぐことができる。さらに、無撚糸に比べ撚糸はDh/Dvが1.5未満になりやすいため、撚糸が1.5<Dh/Dv<10を満たすことがより好ましい。透水率を低くするため、経糸と緯糸の両方が1.5<Dh/Dv<10を満たすことがより好ましい。
【0033】
本実施形態の医療用布帛は、好ましくは、経糸のカバーファクター(CFw)と緯糸のカバーファクター(CFf)の和がCFw+CFf=1600〜2400である高密度織物であり、より好ましくはCFw+CFf=2000〜2400であり、さらに好ましくはCFw+CFf=2500〜2400である。CFwとCFfの和を1600以上とすることで、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が減り、透水率を低くすることができる。また、CFwとCFfの和を2400以下とすることで、製織時の経糸同士の摩擦を防ぎ、生産安定性を保つことができる。低透水率の観点から、経糸重なり度(TT)及び緯糸重なり度(WW)を0.9以上にするために、CFw及びCFfはそれぞれ800以上であることがより好ましい。
【0034】
本実施形態の医療用布帛では、経糸及び緯糸の織縮み率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは織縮み率が15%以下であり、さらに好ましくは織縮み率が10%以下である。経糸、緯糸の織縮み率がそれぞれ20%以下であることで、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が減り、透水率を低くすることができる。
【0035】
ステントグラフト用布帛としては、シート状の布帛を筒状に張り合わせて使用することも可能であるが、貼り合わせ部分の厚みが増し、細く布帛を折り畳むことができなくなる。また、血液漏れ防止の観点からは、ステントグラフト用布帛は織物構造であることが必要である。従って、本実施形態の医療用布帛は、ステントグラフトの細径化実現及び血液漏れ防止の観点から筒状のシームレス布帛(織物)の形態にあることが好ましい。
【0036】
本実施形態のシームレス織物の厚みは、細径化の観点から10μm以上90μm以下であり、好ましくは15μm以上80μm以下であり、より好ましくは20μm以上70μm以下である。ここで、シームレス布帛の厚みは、筒状織物の周方向(径により任意)、長さ方向(10cm〜30cm)の範囲内で任意に選択された10箇所の布帛の厚みを、厚みゲージを用いて測定した値の平均値で定義される。シームレス布帛の厚みが90μmを超えると、例えば、内径50mmの筒状織物とした時に直径6mmの孔を通過することができない。他方、シームレス布帛の厚みが10μmよりも薄くなると十分な破裂強度を保持することができない。
本実施形態のシームレス布帛の外径は、ステントグラフトが用いられる血管の内径に依存し、一般的には3mm以上50mm以下であるが、必ずしもこの領域に限定されない。
【0037】
本実施形態の医療用布帛では、針刺し前後の透水率が300cc/cm/min以下であることが必要である。布帛の透水率は血液漏れ防止の指標となり、透水率が300cc/cm/min以下であることで、布帛壁面からの血液漏れを抑えられる。一方、ステントグラフト用布帛は、金属製のステントと縫合糸で縫い合わせることで最終製品であるステントグラフトに仕上げるが、その際布帛に大きな針孔が開くと、そこから血液漏れが生じる。即ち、ステントグラフト用布帛の実用性能としては針を刺した後の透水率も300cc/cm/min以下であることが必要である。ここで、針刺し後の透水率は、テーパー形状の3/8ニードル針を用い、任意で1cm当り10回数針を通した後に測定される値である。本実施形態の筒状シームレス布帛には、極細繊維が用いられているため、織組織において単糸フィラメントが扁平に押し広げられ経糸と緯糸交差点の隙間が埋まり、針刺し前の透水率が低く抑えられる。実用性能の観点から、本実施形態の医療用布帛の針刺し前後の透水率は、好ましくは250cc/cm/min以下、より好ましくは200cc/cm/minである。
【0038】
本実施形態の筒状シームレス織物は、所望の厚みや外径等の要件を逸脱しない範囲内で抗血栓材料、コラーゲン、ゼラチン、ヘパリン、アセチルサリチル酸、ポリウレタン等でコーティングされていてもよい。特に、コラーゲン、ゼラチンは生体親和性が優れ、低い抗原性のため、より好ましい。コーティングされることで透水性を低下させることができ、血液漏れを抑制することができる。
また、本実施形態の筒状シームレス織物は親水加工をコーティングされていてもよい。親水加工することにより細胞が吸着しやすくなり、優れた生体適合性を発現する。さらに血液漏れの抑制効果があると期待できる。親水剤は特に限定しないが、例としてポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の筒状シームレス織物はカレンダー等のプレス処理をされていてもよい。プレス加工により、緯糸及び経糸の扁平性が向上し、糸−糸間の隙間が小さくなり、低透水率が期待できる。筒状シームレス織物をクリンプ加工することもできる。クリンプ加工をすることで、屈曲によるキンクが発生なくなるので、クリンプ加工は有効な方法である。
【0040】
本実施形態の筒状のシームレス織物は、拡張可能部材となるステント(バネ状の金属)と組み合わせることでステントグラフトとして使用され得る。ステントグラフトのタイプとしては、筒状の単純ストレートタイプ、枝血管に対応可能な分枝タイプや開窓タイプ、分岐タイプと組み合わせ可能なテーパータイプ、変形可能な蛇腹タイプ、胸部大動脈用の弓型タイプ等が挙げられ、患部の状態や形状に応じて選択できる。
【0041】
ステントの材料としては、従来公知の部材から適宜選択して用いることができる。公知部材としては、形状記憶合金、超弾性金属、合成高分子材料を用いた自己拡張型の素材があるが特に限定されない。金属合金には、ニッケルチタン合金(ニチノール)、コバルトクロム鉄合金(エルジロイ合金)、コバルトクロム合金、ニッケルクロム合金(インコネル合金)、鉄クロム合金等が挙げられ、上記の部材の中では、自己拡張型のニッケル−チタン合金(ニチノール)は、ステントグラフトを血管への固定力が高いことや耐腐食性の観点から好ましい。ステントは従来技術のいかなるデザインであってもよい。ステントは自己拡張型に代わってバルーンで広げるタイプでも適応可能である。また、ステントは、モノフィラメントやマルチフィラメント、テープ状等の構造を取ることができ、これら2つ以上を組み合わせることも可能である。拡張力や強度を必要とする場合は、モノフィラメントのステントを用いることが好ましい。膜厚を薄くする観点からは、テープ状のステントが好ましい。ステントの太さは細い方がカテーテルに挿入しやすいが、細過ぎると拡張力がなくなり、ステントが血管に固定できないという問題が発生するので、拡張力を確保しつつ、可能な限り細径のステントを選択することが好ましい。
ステントの形状としては、直線形状、ジグザク形状、ダイヤモンド形状等が挙げられ、グラフトの動きにより、変形可能なジグザグ形状が好ましい。
また、筒状のシームレス織物に取り付けられるステントは連続したワイヤをらせん状に取り付けてもよく、分離したリング状のステントを2つ以上取り付けることやリング状のステントを部分的に結合することもできる。
【0042】
本実施形態の筒状のシームレス織物は、ステントの内面又は/及び外面に取り付けられ、ステントグラフトを作製することができる。ステントによる血流阻害と血栓の抑制のために、シームレス織物はステントの外面ではなく、内面に取り付けることが好ましい。筒状のシームレス織物へのステントの取り付け方としては、糸による縫合、接着剤による固定、リベットによる固定等が挙げられる。結合強度や密着性の観点から糸による縫合が、好ましい。
縫合糸としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、PTFEやETFEなどフッ素樹脂の繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。これらはモノフィラメントでもマルチフィラメントでもよく、極細繊維でもよい。極細繊維を用いることで、縫合による穴を小さくでき、低透水率が期待できる。目的に応じて1種又は2種以上の繊維素材と組み合わせて使用することができ、組合せの態様としては、2種以上の繊維を撚り合わせて複合繊維として使用することもできるし、織物の経糸、緯糸を別の繊維を使用することができ、或いはその一部として部分的に使用することもできる。好ましくは、生体内で構造安定性が高く、長期耐久性、取扱い性の良さの観点から、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルやPTFEやETFEなどのフッ素樹脂が好ましい。生体内の温度変化により、繊維の強度低下しないガラス転移温度が50℃以上のポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルやPTFEやETFEなどのフッ素樹脂がより好ましい。
【0043】
接着剤としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。縫合に比べ、接着剤による固定は、シームレス織物を傷付けないため、縫合穴からの血液漏れをなくすことができるため、縫合よりも好ましい。ステントグラフトを展開するときに位置決めしやすいように、ステントグラフトへX線不透過マーカーを組み込み、X線可視性の向上させることもできる。X線不透過マーカーとしては、金、タンタル、プラチナ・イリジウム等の貴金属が挙げられる。金やプラチナはX線不透過性も極めて高いため、視認性を高める点から、より好ましい。
【0044】
本実施形態のステントグラフトは、アンカリングステントをつけることができる。アンカリングステントとは、大動脈などの内壁にステントをひっかけるフックである。アンカリングステントがあることにより、長期間の血管の拍動によるステントグラフトのズレが抑えられる。
【0045】
本実施形態の筒状シームレス織物には穴をつけ、ステントグラフト取り付け箇所の周辺にある血管を閉塞しないようにすることができる。穴周囲は、裂けたりしないように縫製や熱溶融などで処理されていることが好ましい。穴の数や直径は、ステントグラフトを取り付ける箇所の周辺にある血管の数や直径と同一であることが好ましい。穴の形は限定されないものの、円形、長円形、三角形、正方形、多角形、又はランダム形状が挙げられる。また、手術中に穴の位置を確認するため、穴周囲に透過マーカーを取り付けることがより好ましい。
【0046】
好ましい態様では、ステントグラフトは、カテーテルに挿入されて血管内で移送される。本実施形態のステントグラフトは、布帛の厚みが90μm以下と薄くかつ柔軟性が高いので、細い径のカテーテルに挿入することができ、その結果血管内の移送が容易であり、血管壁を損傷するリスクが低減される。尚、カテーテルとしては、ステントデリバリー用のチューブタイプやバルーンタイプ等の公知の様々な技術を使用できる。また、本発明の細い径のカテーテルに挿入されたステントグラフトは、公知の様々な技術のデリバリーシステムを使用して血管内で移送、留置することができる。本実施形態の筒状シームレス織物をステントグラフト用布帛として用いた場合、ステントグラフトを細径化できるので、入院期間の短縮など患者の身体的・経済的負担を低減することができ、また、血管壁損傷等のリスクも低減することができる。更に動脈の細い女性やアジア人等、これまで経カテーテル的血管内治療適応から除外されていた症例に対しても適用範囲を広めることができる。
【0047】
以下、本実施形態の極細繊維とシームレス織物の製造方法について説明するが、本発明は、これらの方法に制限されることを意図されない。
また、例として、極細繊維にはポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げるが、この材料に限定されない。このポリエチレンテレフタレート(PET)のポリマーには、溶融紡糸し、引き続く延伸によって極細繊維を製造する、いわゆる直接溶融紡糸法を採用することが好ましい。溶融紡糸機は、乾燥機、押出機、紡糸頭を設けた公知の紡糸機を使用することができる。溶融されたPETは、紡糸頭に装着された複数の吐出ノズルより吐出され、紡出直後に紡口表面下方に設けられた冷却設備により冷却風を吹き付けて冷却固化され、マルチフィラメントとして紡糸される。
【0048】
ポリエチレンテレフタレート(PET)の極細繊維の製造には、還元粘度が0.85dl/g以上のPETポリマーを用いることが繊維の強度発現、高タフネス実現の観点から好ましいが、紡糸安定性の観点から、原料PETポリマーの還元粘度の上限値は1.60dl/gである。また、紡糸する際の紡口表面温度が290℃以上320℃以下の範囲で制御され、かつ、吐出ノズルが多重配列である場合、紡口表面温度分布(最外配列から最内配列間の温度分布)が10℃以内であることが好ましい。還元粘度や紡糸温度は繊維の種類や物性に応じて、変更する。
【0049】
本実施形態では、紡口1個につき吐出ノズル数が20〜1500ホール穿孔されていることが好ましい。吐出ノズルの配列は、円周配列や直交配列等特に限定されないが、円周配列の場合、ノズル数を増やす目的からは多重の円周配列とすることが好ましい。多重円周配列の配列数、配列間距離、円周配列上の吐出ノズル間距離、さらに冷却風流路のデザインは、所望する単糸数と単糸繊度、並びに許容紡口サイズの範囲内で任意に設計すればよい。
吐出ノズルの孔径は、0.15mmφ以下0.05mmφ以上であることが好ましい。
【0050】
極細繊維の製造方法においては、紡口直下から5cm以上50cm以下の位置で吐出糸条を集束することが、糸条の糸揺れを抑制し、紡糸安定性を向上する観点から好ましい。また、集束された後、繊維束に仕上げ剤を付与し、300m/min以上3000m/min以下で紡糸することが紡糸効率及び高タフネス化の観点から、好ましい。また、仕上げ剤の油付率は、嵩高加工や織編加工の工程通過性の観点から、1重量%以上3重量%以下が好ましい。
極細繊維の製造方法においては、未延伸糸の段階又は延伸糸の段階で交絡処理を付与することが、嵩高加工や織編加工時の毛羽や糸切れ低減の観点から好ましい。交絡処理は、公知の交絡ノズルを採用し、交絡数は1〜50個/mの範囲が好ましい。
【0051】
以上の製造方法により得られた極細繊維を用いて撚糸を作製する。撚糸を作製するための撚糸機としては、公知又は慣用の撚糸方法を利用することができ、例えば、リング撚糸機、ダブルツイスター、イタリー式撚糸機、カバリング機、仮撚機など公知の撚糸機が挙げられる。撚糸の形態としては、フィラメントを1本又は2本以上引き揃えて、S又はZ方向に加撚した片撚り糸であってもよいし、このような片撚り糸を2本以上引き揃えてさらに上撚りをかけた諸撚り糸であってもよい。撚数は50〜1000回/mで撚っている必要があり、好ましくは50〜750回/mであり、より好ましくは50〜500回/mである。50回/m以上の撚数とすることで、平滑性を向上させ、引張りや曲げ等の応力を均一にフィラメントへかかるようにして、製織時の毛羽や糸切れの問題を減らし、工程安定性の向上に繋がる。1000回/m以下の撚数とすることで、織物上の経糸、緯糸は扁平になりやすく、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が減り、透水率を低くすることができる。
【0052】
以上の製造方法により得られた撚糸された極細繊維を用いて筒状のシームレス織物を製造することができる。筒状シームレス織物を製造するための織機は、特に限定されるものではないが、杼(シャトル)の往復運動によって緯糸を通すシャトル織機を用いることが織物の耳部(筒状織物の折り返し部分)の織密度低下を抑制し、織物の厚みを均一化する観点から好ましい。エアバック等の比較的単糸繊度及び総繊度が太い繊維を用い、厚みが厚く織幅も広い袋状織物を調製する場合、エアジェットルーム、ウォータージェットルーム、レピアルーム等のシャトルレス織機を用いることは可能であるが、これらのシャトルレス織機で本実施形態の如き厚みが薄く、高密度の均一織物を調製する場合、織物の耳部の織密度低下が著しく、部分的に透水率増加が起こり、引いてはステントグラフト用布帛として利用する場合の血液漏れ等致命的欠陥に繋がる。
【0053】
また、本実施形態の筒状のシームレス織物の調製では、織前を安定化させ、織物の厚みや径を均一化させる目的や、加工時の糸切れ等を抑制するという目的で、全面テンプルを用いることが好ましい。本実施形態の筒状のシームレス織物では、極細繊維が使用されており、また、厚みがごく薄いので、全面テンプルを用いる場合、当該全面テンプルによる織物の擦過を抑制する目的で、織物と全面テンプルとの接触面積をできるだけ減らす構造にすることが好ましく、また、織物と接触する部分の全面テンプルの部材は摩擦係数の小さい素材を選定することが好ましい。全面テンプルの構造や用いる部材の摩擦係数については、用いる極細繊維の単糸繊度や総繊度、経糸や緯糸の織密度によって、適宜設計選定すればよい。
【0054】
次に、筒状のシームレス織物を調製する場合、経糸の上げ下げの制御が必要であり、そのための装置としては、ジャガード式開口装置やドビー式開口装置等を用いることができる。
織加工条件については、経糸張力の調整範囲を0.5〜1.5g/dtにすることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.5g/dtex、さらに好ましくは0.7〜1.5g/dtexである。経糸張力を0.5g/dtex以上にすることで、緯糸の打ちこみ時、緯糸の打ち込み性が向上し、緯糸重なり度が0.9以上になる。1.5g/dtex以下にすることで糸切れや毛羽がなく、安定して製織することができる。
緯糸の打ち込み数は緯糸のカバーファクターが800以上となるようにサーフェスロールの速度を調整することが好ましい。緯糸のカバーファクターが800以上とすることで、緯糸密度が向上し、緯糸重なり度を向上させることができる。
経糸の筬通し本数の調整では、経糸のカバーファクターが800以上となるように経糸を準備して、筬通しすることで可能となる。織機回転数は、生産性の観点から80rpm以上が好ましい。製織後は、油剤等の除去を目的とした精錬処理、形態安定性を目的とした熱セットを行うことが好ましい。以上の方法で調製された筒状のシームレス織物は、縫合糸を用いてステントと組み合わせ、かつカテーテルに挿入しステントグラフトとして利用することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)還元粘度(ηsp/c)
還元粘度(ηsp/c)は、以下のとおり計測する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)の場合は以下のようになる。
・1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)0.25デシリットルにポリエチレンテレフタレート(PET)試料0.35gを室温で溶解して希釈溶液を調整する。溶媒や溶媒量については、ポリマーの種類に応じて変更することができる。
・ウベローデ粘度管(管径:0.03)を用いて希釈溶液とHFIP溶媒の落下秒数を25℃で計測し比粘度(ηsp)を求める。
・比粘度(ηsp)をポリマー濃度C(g/dl)で除して還元粘度ηsp/cを算出する。
【0056】
(2)総繊度・単糸繊度(糸からの評価)
総繊度(dtex)は、繊維束を1周1mのかせに50回転巻き取り、その糸条の重量を計測し、それを200倍した値である。単糸繊度(dtex)は、前記方法で求めた総繊度を単糸数で除した値である。
【0057】
(3)織縮み率
JIS L−1096(2010) 8.7 B法記載の方法で測定した。
たて方向及びよこ方向にそれぞれ3か所で200mmの距離に印を付け、この印内のたて糸及びよこ糸をそれぞれほどき、初荷重の下で真っすぐに張った長さ(mm)を測り、織縮みを算出した。
【0058】
(4)分解糸総繊度・単糸繊度(織物からの評価)
JIS L−1096(2010)8.9.1.1 A法に基づき測定した。
200mm×200mmの試験片を3枚採取する。1枚につき、たて糸及びよこ糸それぞれ25本の糸をほどいてその質量(mg)を量り、繊度を算出した単糸繊度は、前記方法で求めた総繊度を単糸数で除した値である。
【0059】
(5)分解糸撚り数(織物からの評価)
JIS L−1096(2010) 附属書Iに基づき測定した。検撚器を用い、生地から取り出した分解糸を20cmのつかみ幅で計測し、1mあたりの撚り数に換算した。
【0060】
(6)経糸張力
糸の張力測定装置を用い、織機稼動中に経糸ビームとバックローラーの中央部分において、経糸一本当たりに加わる張力を測定した。製織稼動時間10分間の最大値5点と最小値5点を抽出し平均を取ることで経糸一本当たりの張力とし繊度で割り返した値を用いた。
【0061】
(7)経糸・緯糸の織密度
JIS L−1096(2010)8.6.1に基づき測定した。試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、異なる5か所について2.54cmの区間の経糸及び緯糸の本数を数え、それぞれの平均値を算出した。
【0062】
(8)経糸又は緯糸のカバーファクター
カバーファクターは(7)の織密度を用いて次式により算出した。
経糸カバーファクター=(経糸総繊度:dtex)1/2×(経糸織密度:本/2.54cm)
緯糸カバーファクター=(緯糸総繊度:dtex)1/2×(緯糸織密度:本/2.54cm)
経糸又は緯糸は、(4)の織物から評価された分解糸総繊度を用いた。
【0063】
(9)経糸重なり度(TT)、緯糸重なり度(WW)
織物の経、緯方向の任意の断面画像(図2)を撮影する。織物の経方向又は緯方向の断面を撮影するための試料を通常の方法でSEM試料台にセットした。この時、垂直に乱れなく糸断面を切出すために、定規を用いて糸の間を糸に沿って刃を入れるように切出した。例えば、経糸重なり度(TT)を測定する場合は、経糸断面を撮影する必要があり、緯糸の間を緯糸に沿って刃を入れる。その後、SEMにて一視野に4から6本程度のマルチフィラメントが見やすく収まる程度の倍率(倍率200倍)で断面写真を撮影した。
経糸重なり度(TT)、緯糸重なり度(WW)は、織物の経、緯方向の撮影した断面画像(図2)からX1、X2、Yの値を計測し、次式により算出した。
糸重なり度=(X1+X2)/Y
{式中、X1:任意の糸断面の幅、X2:X1に隣接する糸断面の幅、Y:X1とX2間の幅}。
経糸重なり度(TT)を測定する場合は、経糸断面画像から上記の計算式を用いて算出する。また、緯糸重なり度(WW)を測定する場合は、緯糸断面画像から上記の計算式を用いて算出する。
【0064】
(10)経糸又は緯糸断面の垂直水平方向の比
織物断面画像を(9)のように撮影し、織物断面画像から図3のように任意の経糸及び緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)を計測し、垂直水平方向の比Dh/Dvを算出した。
【0065】
(11)経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)の比
経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)を(2)のように測定し、Dw/Dfを算出した。
【0066】
(12)織物の厚み
布帛の膜厚シックネスゲージを用いて、荷重1Nの加圧下で、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さをn=5で測定し、平均値を算出した。
【0067】
(13)製織性
ジャガード式開口装置のシャトル織機で40rpm、80rpmで30cmサンプルを作製した時、経糸又は緯糸に毛羽や糸切れが発生する回数N(回)を確認し、下記基準で判定した。
○:N=0
△:1≦N≦5
×:6≦N
【0068】
(14)織物の針刺し前後の透水率
ジャガード式開口装置のシャトル織機で40rpm、80rpmで作製したサンプルの透水率を次の方法で測定した。ANSI/AAMI/ISO 7198:1998/2001に準拠して織物の針刺し前後の透水率測定を行う。ここで針刺し後の透水率試験は、テーパー形状の3/8ニードル針を用い、任意で1cm当り10回数針を通した後に測定される値である。針刺し前後ともに測定をn=5で行い、その針刺し前後の透水率T(cc/cm/min)の平均値を算出し、下記基準で判定した。
○:T≦300
△:300<T≦500
×:500<T
【0069】
[実施例1]
<極細繊維>
原料にポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、65dtexの未延伸糸を巻き取るべく溶融紡糸を行った。
ゲルマニウム触媒で重合された原料PETの性状は下記とおりであった。
還元粘度(ηsp/c):1.162dl/g
チタン含有量:2ppm
ジエチレングリコール含有量:0.8重量%
オリゴマー含有量:1.2重量%
用いた紡口は、孔径0.08mmφが穿孔された5重配列紡口であり、最内配列の吐出ノズル間距離が1.7mm、全配列間距離は8mmであった。糸条の冷却は、基本的に仰角37°の吹出し口を有する冷却風吹出し装置を用いた。また、2000m/minで未延伸糸を巻き取った。巻き取られた未延伸糸を公知の熱ロールを有する延伸機により引張伸度30%を目安に延伸熱処理を行い、極細繊維を得た。
【0070】
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
経糸に用いる総繊度39.4dtex/24フィラメントは、適した紡口を選択し、冷却温度を10℃に設定し溶融紡糸を行い、さらに延伸倍率を設定して作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800以上となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を0.9g/dtex、織機回転数は40rpmと80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0071】
[実施例2]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度72.4dtex/450フィラメントを作製した。
経糸に用いる総繊度34.1dtex/24フィラメントは、適した紡口を選択し、冷却温度を10℃に設定し溶融紡糸を行い、さらに延伸倍率を設定して作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0072】
[実施例3]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度20.1dtex/155フィラメントを作製した。
実施例2と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度34.1dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0073】
[実施例4]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、経糸として総繊度30.3dtex/150フィラメント、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0074】
[実施例5]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度50.2dtex/125フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0075】
[実施例6]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は900回/mの撚りをかけ撚糸を作製し、緯糸は無撚りの糸を使用した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0076】
[実施例7]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は100回/m、緯糸は500回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、実施例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0077】
[比較例1]
<経糸、緯糸>
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸、緯糸ともに総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800以上となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を0.1g/dtex、織機回転数は40rpmと80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0078】
[比較例2]
<経糸、緯糸>
経糸に用いる総繊度76.1dtex/30フィラメント、緯糸に用いる総繊度39.4dtex/24フィラメントは、適した紡口を選択し、冷却温度を10℃に設定し溶融紡糸を行い、さらに延伸倍率を設定して作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0079】
[比較例3]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0080】
[比較例4]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800以下となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を0.1g/dtex、織機回転数は40rpmと80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0081】
[比較例5]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて、経糸、緯糸ともに撚りをかけずに使用した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0082】
[比較例6]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて、経糸、緯糸ともに30回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0083】
[比較例7]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて、経糸、緯糸ともに2000回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、比較例1と同様の条件で、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。さらに、この織物に精錬、熱セットを施し仕上げた。得られた布帛の評価結果を以下の表1、2に示す。
【0084】
[比較例8]
<極細繊維>
実施例1と同様の条件で極細繊維を作製した。
<経糸、緯糸>
上記の紡糸から、緯糸として総繊度30.3dtex/300フィラメントを作製した。
実施例1と同様の条件で紡糸を行い、経糸として総繊度39.4dtex/24フィラメントを作製した。
<撚糸>
公知の撚糸機を用いて経糸は500回/m、緯糸は100回/mの撚りをかけ撚糸を作製した。
<製織>
上記の経糸、緯糸を用い、シャトル織機とジャガード式開口装置を用いて、経糸カバーファクター800以上となるように筬通し幅と経糸本数を調整し、経糸張力を3.0g/dtex、織機回転数は40rpmと80rpmで動かし、内径50mmの平織筒状シームレス織物を作製した。製織中は目視で経糸又は緯糸の糸切れや毛羽を確認した。その結果、比較例8では、織加工過程で糸切れが多発し、布帛を得ることができなかった。これは経糸張力が1.5g/dtex以上あり、経糸が引張荷重に耐えられず、糸切れが多発したものと考えられる。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
実施例1〜6では、80rpmと織速度を上げても、糸切れも毛羽もなく織加工の工程性も良好で得られた布帛も目標物性(厚み90μm以下、針刺し前後の透水率300cc/cm/min以下)を満足できた。
実施例7では、80rpmと織速度を上げると、数回(5回以下)毛羽が確認されたが、得られた布帛も目標物性(厚み90μm以下、針刺し前後の透水率300cc/cm/min以下)は満足できた。これは経糸の撚数Twと緯糸の撚数Tfが(Tw+200)≧Tfを満たしていないため、毛羽が発生したと考えられる。
比較例1、2では、針刺し前後の透水率を満足することができなかった。これは単糸繊維度が太く、製織時の経糸張力が0.5g/dtex未満で、緯糸のカバーファクターが800未満だったため、緯糸、経糸重なり度が0.9未満になったので、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。また比較例2は経糸の繊度が特に太いため、緯糸の織縮率が20%以上になり、隣接する緯糸−緯糸間の隙間がさらに大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。
比較例3では、針刺し前後の透水率を満足することができなかった。これは製織時の経糸張力が0.5g/dtex未満だったため、緯糸の打ちこみ時、緯糸の打ち込み性が低下し、さらには緯糸のカバーファクターが800未満だったため、緯糸及び経糸重なり度が0.9未満になったので、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。
比較例4では、針刺し前後の透水率を満足することができなかった。これは製織時の経糸張力が0.5g/dtex未満だったため、緯糸の打ちこみ時、緯糸の打ち込み性が低下し、さらには緯糸及び経糸のカバーファクターが800未満だったため、緯糸及び経糸重なり度が0.9未満になったので、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。
比較例5、6では、織機回転数を40rpmの時には緯糸、経糸ともに撚数が50回/m未満だったため、緯糸、経糸重なり度が0.9以上になり針刺し前後の透水率は満足する。しかし、撚数が少ないため、緯糸及び経糸の摩擦耐久性が低下し、織機回転数を80rpmに上げると、糸切れや毛羽が多発し、透水率を満足することができなかった。
比較例7では、撚数が緯糸、経糸ともに撚数が1000回/mを超えていたため、針刺し前後の透水率を満足することができなかった。これは1000回/m以上の撚数とすることで、織物断面の経糸及び緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)の比Dh/Dvが1.5未満となり、経糸、緯糸は扁平になっておらず、糸重なり度も0.9未満になったため、隣接する緯糸−緯糸間及び/又は経糸−経糸間の隙間が大きくなり、透水率が大きくなったと考えられる。
比較例8では、織加工過程で糸切れが多発し、布帛を得ることができなかった。これは経糸張力が1.5g/dtex以上あり、経糸が引張荷重に耐えられず、糸切れが多発したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の医療用布帛は、人工血管、鼠径ヘルニア用治療等に用いられる人工繊維布、癒着防止剤、人工靭帯、人工弁等の体内埋め込み型資材として好適に利用可能であり、また、体内埋め込み型資材以外にも体外での血液ろ過材、細胞分離膜、細胞吸着材、或いは細胞培養基材等のメディカル用資材としても好適に利用可能である。さらに、本発明の医療用布帛使用した筒状シームレス織物は、ステントグラフトを細径化できるので、入院期間の短縮など患者の身体的・経済的負担を低減することができ、また、血管壁損傷等のリスクも低減することもできる。更に該筒状シームレス織物の提供により、動脈の細い女性やアジア人等、これまで経カテーテル的血管内治療適応から除外されていた症例に対しても適応範囲を広めることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 撚糸された経糸
2 撚糸された緯糸
X1 任意の糸断面の幅
X2 X1に隣接する糸断面の幅
Y X1とX2間の幅
Dh 経糸及び/又は緯糸の水平方向の径
Dv 経糸及び/又は緯糸の垂直方向の径
図1
図2
図3