特許第6438711号(P6438711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438711
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】斜面安定化構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20181210BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   E02D17/20
   E02D3/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-174307(P2014-174307)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-50378(P2016-50378A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 誉
(72)【発明者】
【氏名】広重 敬嗣
(72)【発明者】
【氏名】立石 章
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−038302(JP,A)
【文献】 特開平06−033464(JP,A)
【文献】 特開2000−160560(JP,A)
【文献】 特開2008−045352(JP,A)
【文献】 特開2002−275864(JP,A)
【文献】 特開昭62−045809(JP,A)
【文献】 特開平11−229391(JP,A)
【文献】 特開2012−136898(JP,A)
【文献】 特開2008−303582(JP,A)
【文献】 特開2008−303583(JP,A)
【文献】 国際公開第94/013888(WO,A1)
【文献】 特開2009−185546(JP,A)
【文献】 特開2007−255113(JP,A)
【文献】 特開2007−239202(JP,A)
【文献】 特開2013−189804(JP,A)
【文献】 特開平06−264439(JP,A)
【文献】 特開2003−027491(JP,A)
【文献】 特開2016−003514(JP,A)
【文献】 特開2008−075283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
E02D 17/20
E02D 3/12
E02B 7/02
E02B 7/04
E02B 7/06
E02B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部の地山形状が斜面下流方向に向かうに従って幅が狭くなる沢地形の斜面に堆積した堆積物を地盤改良することにより形成された壁状の改良体を備える斜面安定化構造であって、
前記改良体は、前記斜面の斜面勾配に沿う基準線と交差するように当該斜面を横断するとともに、端部が当該端部以外の部分よりも下流側において原地盤にすり付くように形成されていることを特徴とする、斜面安定化構造。
【請求項2】
前記改良体が、平面視V字状を呈していることを特徴とする、請求項1に記載の斜面安定化構造。
【請求項3】
前記改良体が、平面視円弧状を呈していることを特徴とする、請求項1に記載の斜面安定化構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面安定化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
沢や谷等に盛土を行う場合や、土砂等が堆積した沢等では、沢等の下流部に堰堤を形成し、盛土や堆積物等(以下、単に「堆積物等」という)をせき止めるのが一般的である。
【0003】
ところが、斜面に堆積した堆積物が液状化すると、重力により流動して、堰堤を乗り越えて流出するおそれがある。
このような斜面部の流動対策工としては、例えば、堆積物等に対して液状化対策工を施す方法や、堰堤等を嵩上げする方法が採用されている。
【0004】
液状化対策工としては、例えば特許文献1の造成方法のように、格子状に地盤改良を行うことで、斜面全域の液状化を防止するものがある。
斜面において格子状の改良体を形成する場合には、斜面の勾配方向と平行および直交する向き(平面的に0度および90度の角度をなす向き)に、壁状の地盤改良を行うのが一般的である。
【0005】
一方、堰堤の嵩上げは、鉱さいや土砂等の全てが液状化して流動した場合であっても、流出することがない高さになるまでロック材料や土材料等を盛りたてることにより行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4−54004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
格子状に地盤改良を行う場合は、斜面勾配下流方向に作用する滑動力または流動力に対して直交方向の壁状改良体により抵抗する必要がある。しかしながら、この場合には、壁状改良体に大きな曲げモーメントが作用するので、壁状改良体が曲げ破壊を起こさないように、壁状改良体の引張強度または壁厚を大きくする必要があり、費用および手間がかかる。
【0008】
また、堰堤の嵩上げによる流動対策工は、現地の沢の地形が堰堤の嵩上げに適している必要がある。すなわち、堰堤の両脇の尾根(山)がかさ上げされた堰堤よりも低いと、流動した鉱さいや土砂等の流出を防止することができない。
また、堰堤をかさ上げするには、嵩上げ用の材料(ロック材料や土材料)の調達等に費用がかかってしまう。
【0009】
このような観点から、本発明は、簡易かつ安価に、斜面上の堆積物等の滑動または崩壊を防止することができる斜面安定化構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、側部の地山形状が斜面下流方向に向かうに従って幅が狭くなる沢地形の斜面に堆積した堆積物を地盤改良することにより形成された壁状の改良体を備える斜面安定化構造であって、前記改良体は、前記斜面の斜面勾配に沿う基準線と交差するように当該斜面を横断するとともに、端部が当該端部以外の部分よりも下流側において原地盤にすり付くように形成されていることを特徴としている。
なお、前記改良体は、平面視V字状または円弧状に形成されているのが望ましい。
【0011】
かかる斜面安定化構造によれば、改良体の端部が端部以外の部分よりも下流側において原地盤にすり付くように形成されているため、堆積物が液状化した場合であっても、斜面の安定化を図ることができる。すなわち、改良体は、液状化した堆積物の滑動力および流動力を、軸圧縮力として地山に伝達することで斜面の安定性を保持する。改良体に軸圧縮力が作用すれば、改良体積(改良厚)を最小限に抑えることが可能となり、施工の手間や費用の低減化を図ることができる。
改良体は、原地盤と改良体との間に未改良の堆積物が介在することがないように、改良体の端部が原地盤にすり付くように形成されているため、改良体に作用する力を確実に地山に伝達できる。また、法面との密着性を確保しているため、有効面積(投影面積)に対して所定の軸力を地山に伝達することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の斜面安定化構造によれば、簡易かつ安価に、斜面上の堆積物等の滑動または崩壊を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は第一の実施形態の斜面安定化構造を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
図2】(a)は図1に示す斜面安定化構造の力の作用状況を示す模式図、(b)は従来の斜面安定化構造の力の作用状況を示す模式図である。
図3】(a)は第二の実施形態の斜面安定化構造を示す平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一の実施形態>
第一の実施形態では、図1の(a)および(b)に示すように、山間部等の沢地形の斜面(原地盤)上に堆積する堆積物10の安定化を図る斜面安定化構造1について説明する。
堆積物10は、斜面部11と平場部12とを有した状態で堆積されている。
斜面安定化構造1は、堰堤2と改良体3とを備えている。
【0015】
堰堤2は、堆積物10をせき止めるために、堆積物10の下流側に設けられている。
本実施形態の堰堤2は、岩石を積み上げてなる、いわゆるロックフィルダムである。なお、堰堤2の構造は限定されるものではなく、例えば、土を盛りたてることにより形成する、いわゆるアースダムであってもよいし、コンクリートダムであってもよい。
【0016】
堰堤2は、図1の(b)に示すように、断面視台形状に形成されている。なお、堰堤2の高さは、原地形と堆積物10の量に応じて適宜設定する。また、堰堤2の断面形状は台形に限定されない。
【0017】
改良体3は、堆積物10に対して固結工法による地盤改良を行って構築したものであり、壁状に形成されている。なお、堆積物10の地盤改良方法は限定されるものではなく、例えば、セメント等の固化材を堆積物10に撹拌混合することにより形成してもよい。
改良体3は、原地盤Gに着底している。なお、改良体3は、原地盤Gに根入れされていてもよい。
【0018】
本実施形態の改良体3は、図1の(a)に示すように、メイン改良体31とサブ改良体32とが一体に形成されることにより、平面視格子状を呈している。
また、本実施形態では、斜面部11の上端(斜面部11と平場部12との境界部)に、上端部改良体33が形成されている。なお、上端部改良体33は、必要に応じて形成すればよい。
【0019】
メイン改良体31は、斜面を横断するとともに、端部が端部以外の部分よりも下流側において原地盤にすり付くように形成されている。本実施形態のメイン改良体31は、平面視V字状を呈していて、メイン改良体31の端部は、メイン改良体31の頂部よりも下流側で原地盤Gにすり付いている。
すなわち、メイン改良体31の端部は、底面が原地盤Gの形状に応じて先端に向かうに従って高さが小さくなるように傾斜しているとともに、上面が原地盤Gの地表面に先端が一致するように形成されていることで、未改良部分が介在することなく、原地盤Gに当接している。
【0020】
メイン改良体31は、斜面勾配に沿う基準線BLに対して平面的に45°の角度をなす向きに各片が形成されている。また、各片同士の内角は90°である。
本実施形態では、複数のメイン改良体31が、基準線BLに沿って間隔をあけて配設されている。本実施形態では、複数のメイン改良体31の頂部同士を結ぶ線と、基準線BLとが同一直線状にある場合について説明するが、基準線BLの位置は限定されない。
【0021】
サブ改良体32は、V字状に形成されたメイン改良体31の二つの片の交点(頂部)から、一方の片の延長線に沿って上流側に延びるように形成されている。
すなわち、サブ改良体32は、下流側のメイン改良体31の頂部から上流側に延びるように形成されていることで、下流側のメイン改良体31と上流側のメイン改良体31とを連結している。
【0022】
本実施形態の斜面安定化構造1によれば、格子状の改良体3が、地震等により堆積物10が液状化した場合や、集中豪雨等により地下水位が上昇して堆積物10が不安定になった場合等の滑動力または流動力に抵抗するため、斜面の安定性を確保することができる。
すなわち、改良体3は、上方から作用する堆積物10の滑動力および流動力(図中のP)を、軸圧縮力Nとして原地盤G(改良体3の端部がすり付く原地盤G)に伝達することで斜面の安定性を保持する。改良体3に作用する力Pによって、改良体3に軸圧縮力Nを作用させることで、改良体積(改良厚)を最小限に抑えることが可能となり、施工の手間や費用の低減化を図ることができる。
【0023】
改良体3は、平面視して基準線BLに対して45°傾斜しているため、滑動力または流動力の分力(0.7P程度)に抵抗し得る強度または壁厚に設計すればよい(図2の(a)参照)。
なお、図2の(b)に示す従来の改良体のように、平面的に、基準線BLに対して90°および0°格子状の改良体103を形成した場合には、滑動力または流動力Pを勾配直交方向(90°)の改良体により負担する構造となるため、改良体の強度または壁厚を大きくする必要がある。
【0024】
また、改良体3では、滑動力または流動力によって、改良体3(壁体)に軸圧縮力が作用することとなる。改良体3に軸圧縮力が作用すると、側圧(上流側から作用する応力)に対する強度が増強する。そのため、改良体3の強度または壁厚を従来の方法に比べて小さくすることができ、施工費および施工時の手間を抑えることが可能となる。
【0025】
このように、本実施形態の斜面安定化構造1は、沢地形の側部の地山形状が、斜面下流方向に向かうに従って幅が狭くなることと、改良体3が引張強度は小さいが圧縮強度が大きいという特徴とを利用するものである。斜面安定化構造1によれば、斜面に堆積する堆積物10の滑動力または流動力を改良体内部の軸圧縮力に変換して、側方の地山へ伝達し、側方の地山から反力を利用することで、改良体の強度や壁厚を従来の改良体よりも小さくすることを可能としている。
【0026】
また、改良体3は、端部が原地盤にすり付くように形成されていて、原地盤Gと改良体3との間に未改良部分が介在していないため、改良体3に作用する力を確実に地山に伝達できる。また、改良体3と法面との密着性を確保しているため、有効面積(投影面積)に対して所定の軸力を地山に伝達することができる。
【0027】
<第二の実施形態>
第二の実施形態の斜面安定化構造1は、図3の(a)および(b)に示すように、堰堤2と改良体3とを備えている。堆積物10は、斜面部11と平場部12とを有した状態で堆積されている。
第二の実施形態の堰堤2の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0028】
改良体3は、堆積物10に対して固結工法による地盤改良を行って構築したものであり、壁状に形成されている。なお、堆積物10の地盤改良方法は限定されるものではなく、例えば、セメント等の固化材を堆積物10に撹拌混合することにより形成してもよい。
改良体3は、原地盤Gに着底している。なお、改良体3は、原地盤Gに根入れされていてもよい。
【0029】
本実施形態の改良体3は、図3の(a)に示すように、平面視円弧状を呈している。
改良体3は、斜面を横断するとともに、端部が端部以外の部分よりも下流側において原地盤Gにすり付くように形成されている。
すなわち、改良体3の端部は、底面が原地盤Gの法面の形状に応じて先端に向かうに従って高さが小さくなるように傾斜していて、上面が原地盤Gの地表面に先端が一致するように形成されていることで、未改良部分が介在することなく、原地盤Gに当接している。
【0030】
本実施形態の斜面安定化構造1によれば、円弧状の改良体3の端部が端部以外の部分よりも下流側において原地盤Gにすり付くように形成されているため、地震等により堆積物10が液状化した場合や、集中豪雨等により地下水位が上昇して堆積物10が不安定になった場合等であっても、斜面の安定化を図ることができる。
すなわち、改良体3は、その上方(上流側)から作用する堆積物10の滑動力および流動力Pを、軸圧縮力Nとして原地盤Gに伝達することで斜面の安定性を保持する。このように改良体3に作用する力Pによって改良体3に軸圧縮力を作用させることで、改良体積(改良厚)を最小限に抑えることが可能となり、施工の手間や費用の低減化を図ることができる。
【0031】
また、改良体3に軸圧縮力Nが作用すると、側圧(上流側から作用する応力)に対する強度が増強する。そのため、改良体3の強度または壁厚を従来の方法に比べて小さくすることができ、施工費および施工時の手間を抑えることが可能となる。
【0032】
このように、本実施形態の斜面安定化構造1も、沢地形の側部の地山形状が、斜面下流方向に向かうに従って幅が狭くなることと、改良体3が引張強度は小さいが圧縮強度が大きいという特徴とを利用するものである。斜面安定化構造1によれば、斜面に堆積する堆積物10の滑動力または流動力を改良体内部の軸圧縮力として、側方の地山へ伝達し、側方の地山から反力を利用することで、改良体の強度や壁厚を従来の改良体よりも小さくすることを可能としている。
【0033】
また、改良体3は、端部が原地盤にすり付くように形成されていて、原地盤Gと改良体3との間に未改良部分が介在していないため、改良体3に作用する力を確実に地山に伝達できる。また、改良体3と法面との密着性を確保しているため、有効面積(投影面積)に対して所定の軸力を地山に伝達することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0035】
例えば、斜面安定化構造を形成する場所は、限定されるものではなく、例えば、鉱さい堆積場や盛土斜面等であってもよい。
堰堤は必要に応じて形成すればよい。
【0036】
改良体の平面形状は、前記各実施形態で示した形状に限定されるものではなく、例えば、平面視V字状であってもよい。
斜面の基準線に対する改良体の傾斜角は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
各改良体は、位置に応じて壁厚や強度を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 斜面安定化構造
10 堆積物
2 堰堤
3 改良体
31 メイン改良体
32 サブ改良体
図1
図2
図3