特許第6438812号(P6438812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438812
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】内燃機関の変速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20181210BHJP
【FI】
   F16H57/04 M
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-54263(P2015-54263)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-173169(P2016-173169A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100067840
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 望
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誉文
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏治
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−290662(JP,A)
【文献】 特開平11−118029(JP,A)
【文献】 特開2007−032649(JP,A)
【文献】 実開昭57−075256(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00−57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン軸(52)と、
前記メイン軸(52)と平行に配設されるカウンタ軸(54)と、
前記メイン軸(52)と前記カウンタ軸(54)に設けられる歯車群(56)と、
前記歯車群(56)を変速させるシフトフォーク(64,65,66,100)と、
前記シフトフォーク(64,65,66,100)を軸方向に移動可能に支持するシフトフォーク軸(63)と、
前記メイン軸(52)、前記カウンタ軸(54)、前記歯車群(56)および前記シフトフォーク(64,65,66,100)を収納する変速機ケース(80)と、
前記シフトフォーク(64,65,66,100)が嵌合され、前記シフトフォーク(64,65,66,100)を軸方向に移動させるシフトドラム(61)と、を備え、
前記歯車群(56)のうちの一部は、軸と一体に回転するとともに軸方向に移動可能なシフタ(SG)として形成され、
前記シフタ(SG)には、前記シフトフォーク(64,65,66,100)が係合するフォーク溝(59)が形成され、
前記シフタ(SG)と該シフタ(SG)に隣接する歯車(FG)との間には、前記シフタ(SG)と該シフタ(SG)に隣接する歯車(FG)とを接続または離脱させるドグクラッチ(D)が設けられる内燃機関(3)の変速装置(5)において、
前記シフトドラム(61)および前記シフトフォーク軸(63)が、前記メイン軸(52)および前記カウンタ軸(54)の下方に配置され、
前記変速機ケース(80)の上壁部(81)の内壁面(82)の一部は、下方へ向けて突出するとともに、上方視で、前記メイン軸(52)または前記カウンタ軸(54)の軸方向に対して斜めの方向に指向する斜めリブ(84)として形成され、
前記斜めリブ(84)は、複数形成され、
前記斜めリブ(84)は、前記メイン軸(52)および前記カウンタ軸(54)のうち、少なくともいずれか一方の上方で、交差した交差部(X)を有し、
前記交差部(X)は、前記シフトフォーク軸(63)の軸方向に長く形成され、上方視で前記ドグクラッチ(D)のニュートラル状態における前記フォーク溝(59)を、前記シフトフォーク軸(63)の軸方向で跨ぎ、
前記交差部(X)には、前記上壁部(81)の前記内壁面(82)から下方へ向けて突出する第一の突起部(91)が複数箇所形成され
複数の前記第一の突起部(91)は、前記ドグクラッチ(D)のニュートラル状態における前記フォーク溝(59)の位置に対して、前記シフトフォーク軸(63)の軸方向に振り分けて、前記交差部(X)の両側に配置され、
前記第一の突起部(91)は、上方視で、前記ドグクラッチ(D)の各々の接続状態における前記フォーク溝(59)と重なる位置にそれぞれ1箇所以上配置されることを特徴とする内燃機関(3)の変速装置(5)。
【請求項2】
前記第一の突起部(91)は、前記メイン軸(52)または前記カウンタ軸(54)の軸方向に沿って複数形成されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関(3)の変速装置(5)。
【請求項3】
前記第一の突起部(91)は、上方視で、前記シフタ(SG)の回転軸線(L3,L4,L5)上に位置することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関(3)の変速装置(5)。
【請求項4】
前記交差部(X)は、三か所以上形成されるとともに、前記メイン軸(52)および前記カウンタ軸(54)のそれぞれの上方に位置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関(3)の変速装置(5)。
【請求項5】
前記変速機ケース(80)の前記上壁部(81)の前記内壁面(82)は、水平面(H)に対して傾斜していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関(3)の変速装置(5)。
【請求項6】
前記変速機ケース(80)の前記上壁部(81)の前記内壁面(82)の一部は、下方へ向けて突出するとともに、前記メイン軸(52)の軸方向に平行な方向に指向する平行リブ(87)として形成され、
前記平行リブ(87)は、上方視で、前記メイン軸(52)と前記カウンタ軸(54)との間に位置することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関(3)の変速装置(5)。
【請求項7】
前記平行リブ(87)には、該平行リブ(87)から下方へ向けて突出する第二の突起部(92)が形成され、
前記第二の突起部(92)は、上方視で、前記歯車群(56)の歯が形成されている領域(T)に位置することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関(3)の変速装置(5)。
【請求項8】
前記シフトフォーク(100)は、シフトフォーク軸(63)に軸方向に移動自在に支持され、
前記シフトフォーク(100)には、前記シフトフォーク軸(63)の軸方向に向けて突出するフォークリブ(104)が設けられ、
前記フォークリブ(104)は、前記シフトフォーク(100)の前記フォークリブ(104)が突出する側に隣接する歯車(m3,m4,c3,c4,c5,c6)の径方向下方に、該歯車(m3,m4,c3,c4,c5,c6)の歯先円(Q)に沿って湾曲して形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の内燃機関(3)の変速装置(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の歯車群とシフトフォークとの間の潤滑状態を向上させた内燃機関の変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動二輪車等のエンジンには、常時噛合い式の変速機が設けられていることが多い。この変速機は、エンジンのクランク軸からの回転駆動力がクラッチを介して伝達されるメイン軸と、メイン軸から伝達される回転駆動力を駆動輪に伝達するカウンタ軸と、メイン軸およびカウンタ軸に設けられる歯車群と、を備えている。
【0003】
歯車群は、支持軸(メイン軸またはカウンタ軸)と一体に回転するとともに軸方向に移動可能なシフタを有している。シフタには、シフトフォークが係合されるフォーク溝が形成されている。
シフタと、シフタに隣接する歯車との間には、シフタとシフタに隣接する歯車とを接続または離脱させるドグクラッチが設けられている。シフトフォークがシフタを軸方向に移動させると、シフタとシフタに隣接する歯車との間に設けられたドグクラッチが接続または離脱されて変速機の変速段が変更されるようになっている。
【0004】
このような変速機においては、部材の摩滅や焼き付き等を防止するため、潤滑および冷却用のオイルが供給される。
【0005】
例えば、特許文献1には、ドッグクラッチ(ドグクラッチ)を離脱させるときにシフトフォークとギアの摺動溝(フォーク溝)とが擦れ合う部分に、ドライブ軸(カウンタ軸)の前下方からオイルを噴射するオイル噴射孔がクランクケースに設けられ、シフトフォークと摺動溝との間の潤滑状態を向上させるエンジンの多段変速機が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、クラッチ室の上壁部に形成されたリブがクラッチ室内に飛散したオイルを捕獲し、捕獲したオイルを、オイルの被供給部材(第二クラッチ)の必要部位に上方から滴下するそのオイル供給構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−61468号公報
【特許文献2】特開2011−214610号公報 図8図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された発明においては、その構成上、クランクケースにオイル噴射孔用のオイル通路を設ける必要があるだけでなく、オイル噴射孔を正確な位置に形成する必要がある。そのため、オイルをフォーク溝に供給する構造が複雑となり、クランクケースの製造工数および製造コストが増加するという課題があった。
【0009】
これに対して、特許文献2に開示された構造を、シフト歯車のフォーク溝へのオイル供給に適用することで構造の簡素化を図ることが考えられる。しかし、その場合、クラッチ室の上壁部(すなわち右ケースカバー)とは異なり比較的複雑な形状に成形されるクランクケースの上壁部からフォーク溝へのピンポイントでのオイルの滴下を実現するためには、特許文献2に開示された構造では十分とは言えない。
【0010】
すなわち、単にリブを形成するだけでは、リブが捕獲したオイルはリブの最下部に集中して滴下されることとなる。そのため、比較的複雑な形状に成形されるクランクケースにおいては、リブの形状(高さ)を変形させて、最下部の位置をフォーク溝の上方に合せなければ、リブが捕獲したオイルをフォーク溝にピンポイントで滴下することができない。また、特許文献2に開示されている前後張り出し部をリブに形成しようとする場合には、クランクケースの型抜きや加工の面で容易ではない。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、簡易な構成でシフタに形成されるフォーク溝にオイルを供給し、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させる内燃機関の変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の変速装置は、メイン軸と、前記メイン軸と平行に配設されるカウンタ軸と、前記メイン軸と前記カウンタ軸に設けられる歯車群と、前記歯車群を変速させるシフトフォークと、前記シフトフォークを軸方向に移動可能に支持するシフトフォーク軸と、前記メイン軸、前記カウンタ軸前記歯車群および前記シフトフォークを収納する変速機ケースと、前記シフトフォークが嵌合され、前記シフトフォークを軸方向に移動させるシフトドラムと、を備え、
前記歯車群のうちの一部は、軸と一体に回転するとともに軸方向に移動可能なシフタとして形成され、前記シフタには、前記シフトフォークが係合するフォーク溝が形成され、前記シフタと該シフタに隣接する歯車との間には、前記シフタと該シフタに隣接する歯車とを接続または離脱させるドグクラッチが設けられる内燃機関の変速装置において、
前記シフトドラムおよび前記シフトフォーク軸が、前記メイン軸および前記カウンタ軸の下方に配置され、前記変速機ケースの上壁部の内壁面の一部は、下方へ向けて突出するとともに、上方視で、前記メイン軸または前記カウンタ軸の軸方向に対して斜めの方向に指向する斜めリブとして形成され、前記斜めリブは複数形成され、前記斜めリブは、前記メイン軸および前記カウンタ軸のうち、少なくともいずれか一方の上方で、交差した交差部を有し、前記交差部は、前記シフトフォーク軸の軸方向に長く形成され、上方視で前記ドグクラッチのニュートラル状態における前記フォーク溝を、前記シフトフォーク軸の軸方向で跨ぎ、前記交差部には、前記上壁部の前記内壁面から下方へ向けて突出する第一の突起部が複数箇所形成され、複数の前記第一の突起部は、前記ドグクラッチのニュートラル状態における前記フォーク溝の位置に対して、前記シフトフォーク軸の軸方向に振り分けて、前記交差部の両側に配置され、前記第一の突起部は、上方視で、前記ドグクラッチの各々の接続状態における前記フォーク溝と重なる位置にそれぞれ1箇所以上配置されることを特徴とする。

【0013】
このような構成によれば、走行中にオイルパンから跳ねたり、歯車群から遠心力により飛散したりして、変速機ケースの上部壁の内壁面に付着したオイルが、オイルの持つ表面張力や重力の作用によって第一の突起部に集まることとなる。そして、第一の突起部に集められたオイルは、ドグクラッチの接続状態において第一の突起部の下方に位置するフォーク溝に、第一の突起部から滴下される。そのため、変速機ケースに突起部を設けるという簡易な構成で、ドグクラッチの接続状態でのシフタのフォーク溝にオイルを供給することが可能となり、変速機ケースの製造コストを増加させることなく、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させることができる。
【0014】
前記構成において、前記変速機ケースの前記上壁部の前記内壁面の一部を、下方へ向けて突出するとともに、上方視で、前記メイン軸または前記カウンタ軸の軸方向に対して斜めの方向に指向する斜めリブとして形成し、前記第一の突起部を、前記斜めリブに形成してもよい。
【0015】
このような構成によれば、変速機ケースの上部壁の内壁面に付着したオイルを、斜めリブにより広範囲に亘って集めることができる。斜めリブに集められたオイルは、斜めリブを伝って斜めリブから下方へ向けて突出する第一の突起部に集まることとなる。そして、第一の突起部に集められたオイルは、ドグクラッチの接続状態において第一の突起部の下方に位置するフォーク溝に、第一の突起部から滴下される。そのため、ドグクラッチの接続状態でのフォーク溝に、斜めリブの形状を特に変形させない簡易な構成でオイルを供給して、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させることができる。
また、メイン軸およびカウンタ軸の軸方向に対して斜めの方向に斜めリブを形成することで、変速機ケース上壁部の剛性を向上させ、シフト操作時の変速機ケースの音鳴りを低減することができる。
【0016】
前記構成において、前記斜めリブを複数形成し、前記斜めリブを前記メイン軸または前記カウンタ軸のうち、少なくともいずれか一方の上方で交差して配設してもよい。
【0017】
このような構成によれば、変速機ケースの上部壁の内壁面に付着したオイルを、複数の斜めリブによりさらに広範囲に亘って集めることができる。複数の斜めリブに集められたオイルは、リブを伝って突起部だけでなく交差する部位にも集まる。そして、交差する部位に集められたオイルは、交差する部位からメイン軸およびカウンタ軸のうち、少なくともいずれか一方に滴下される。そのため、複数の斜めリブを交差させるという簡易な構成で、メイン軸とカウンタ軸の少なくともいずれか一方と、歯車群に対してもオイルを供給することができる。
【0018】
前記構成において、前記第一の突起部を前記斜めリブが交差する交差部に形成してもよい。
【0019】
このような構成によれば、複数の斜めリブから交差部に集められたオイルが、交差部に形成される第一の突起部に集められる。そして、第一の突起部から、ドグクラッチの接続状態において交差部の下方に位置するフォーク溝に滴下される。そのため、ドグクラッチの接続状態でのシフタのフォーク溝に、簡易な構成で効率良くオイルを供給することが可能となり、変速機ケースの製造コストを増加させることなく、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させることができる。
【0020】
前記構成において、前記第一の突起部を、前記メイン軸および前記カウンタ軸の軸方向に沿って複数形成してもよい。
【0021】
このような構成によれば、変速機ケースの上部壁の内壁面に付着したオイルが、複数か所のドグクラッチの接合状態において、第一の突起部の下方に位置するフォーク溝に滴下される。そのため、簡易な構成で複数個所のフォーク溝にオイルを供給することが可能となり、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させることができる。
【0022】
前記構成において、前記第一の突起部は、上方視で、前記シフタの回転軸線上に位置してもよい。
【0023】
このような構成によれば、変速機ケースの上壁部の内壁面に付着したオイルが、第一の突起部から回転軸線上のフォーク溝に滴下される。このオイルは、フォーク溝内でシフタの周方向に沿ってシフタの回転方向と、逆回転方向との二方向に流れることとなり、効率的にフォーク溝にオイルを広げることができる。また、振動や慣性等によりオイルの滴下位置がずれたとしても、オイルがフォーク溝に滴下され易くなる。
【0024】
前記構成において、前記交差部は三か所以上形成されるとともに、前記メイン軸および前記カウンタ軸のそれぞれの上方に位置してもよい。
【0025】
このような構成によれば、変速機ケースの上壁部の内壁面に付着したオイルが、メイン軸に設けられるシフタのフォーク溝、およびカウンタ軸に設けられるシフタのフォーク溝のいずれにも滴下される。そのため、メイン軸およびカウンタ軸のいずれが高回転で稼働していても、シフタのフォーク溝に、確実にオイルを供給することが可能となり、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させることができる。
【0026】
前記構成において、前記変速機ケースの前記上壁部の前記内壁面は、水平面に対して傾斜してもよい。
【0027】
このような構成によれば、変速機ケースの上壁部の内壁面に付着したオイルが、傾斜に沿って流れることとなる。そのため、オイルの流れの途中に位置する突起部やリブにオイルが集まる効率が向上し、突起部からのオイル滴下量が増す結果、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させることができる。
【0028】
前記変速機ケースの前記上壁部の前記内壁面の一部は、下方へ向けて突出するとともに、前記メイン軸の軸方向に平行な方向に指向する平行リブとして形成され、前記平行リブは、上方視で、前記メイン軸と前記カウンタ軸との間に位置してもよい。
【0029】
このような構成によれば、変速機ケースの上壁部の内壁面に付着したオイルが、平行リブにも集まる。そして、平行リブに集まったオイルは、メイン軸とカウンタ軸との間に滴下される。メイン軸とカウンタ軸との間には、歯車群が設けられるとともに、歯車の噛合い部が位置している。そのため、平行リブを形成するという簡易な構成で、メイン軸とカウンタ軸との間に設けられている歯車群にもオイルを供給することができる。
【0030】
前記平行リブに、該平行リブから下方へ向けて突出する第二の突起部を形成し、前記第二の突起部が、上方視で、前記歯車群の歯が形成されている領域に位置してもよい。
【0031】
このような構成によれば、変速機ケースの上壁部に付着したオイルが平行リブを伝って第二の突起部に集まり、第二の突起部の下方に位置する歯車群の歯に滴下される。そのため、簡易な構成で、歯車群にオイルを供給することが可能となり、歯車群の噛合いの潤滑を向上させることができる。
【0032】
前記シフトフォークに、前記シフトフォーク軸の軸方向に向けて突出するフォークリブを設け、前記フォークリブを、前記シフトフォークの前記フォークリブが突出する側に隣接する歯車の径方向下方に、該歯車の歯先円に沿って湾曲して形成してもよい。
【0033】
このような構成によれば、変速機ケースの上壁部の突起部や斜めリブの交差部等から滴下されたオイルや、フォークリブが突出する側に隣接する歯車の歯面等に付着したオイルが、フォークリブに捕獲され、フォークリブの湾曲した部位に集まる。この集まったオイルは、歯車の歯先に接触して該歯車およびその噛合い部を潤滑する。また、この集まったオイルは、歯車の歯先に跳ね上げられることで変速機ケースの上壁部へ付着するとともに、一部はシフトフォークを伝ってシフト歯車のフォーク溝にも供給される。そのため、シフトフォークの形状を変更するだけで、シフトフォークに隣接する歯車とその噛合い部およびシフトフォークが係合するフォーク溝との潤滑を向上させることができる。
また、シフトフォークの剛性を強化することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかる内燃機関の変速装置によれば、ドグクラッチの接続状態でのシフト歯車のフォーク溝に、変速機ケースに突起部を設けるという簡易な構成でオイルを供給することが可能となり、変速機ケースの製造コストを増加させることなく、フォーク溝とシフトフォーク間の潤滑を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る内燃機関の変速装置を搭載した自動二輪車を左側方から見た左側面図である。
図2図1の内燃機関部分を拡大した左側面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図3の変速機を拡大した拡大断面図である。
図5】上ユニットケース半体部のうち、上変速機ケース半体部部分を拡大して下方から見た底面図である。図中、二点鎖線は、各ギアの歯が形成されている領域を示す。
図6図2の上変速機ケース半体部を透過して、一部省略した変速機を見たVI矢視図である。図中、上変速機ケース半体部に形成されているものを破線にて示す。
図7】五速被動ギアのドグクラッチの接続状態における第一突起部の位置を示す説明図である。
図8】六速被動ギアのドグクラッチの接続状態における第一突起部の位置を示す説明図である。
図9】三速駆動ギアおよび四速駆動ギアのドグクラッチの接続状態における第一突起部の位置を示す説明図である。
図10図9のX−X線断面図である。
図11】本発明に係る内燃機関の変速装置の第二の実施の形態におけるシフトフォークの左側面図である。
図12】第二の実施の形態における第二シフトフォークと六速被動ギアを拡大して、左斜め後方から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る内燃機関の変速装置の第一の実施の形態について、図を用いて説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前後左右上下の向きは、本実施の形態に係る内燃機関の変速装置を適用した自動二輪車1の向きに従うものとし、図中の矢印FRは前方を、REは後方を、LTは左方を、RTは右方を、UPは上方を、DWは下方を、それぞれ示している。
【0037】
図1に示されるように、自動二輪車1の車体フレーム10は、ヘッドパイプ11の後部から後方やや斜め下向きに延出して途中下方へ向けて屈曲する左右一対のメインフレーム12と、メインフレーム12の中央近傍から後方斜め上向きに延びる左右一対のリアフレーム13と、メインフレーム12とリアフレーム13との間に架設されるサブフレーム14と、メインフレーム12の前部寄りから下方斜め後ろ向きに延びるダウンフレーム15とを備えている。
【0038】
ヘッドパイプ11には、下方へ延びるフロントフォーク16が転舵可能に支承されている。フロントフォーク16の下端には前輪17が回転自在に支持されている。フロントフォーク16の上端には、操向ハンドル18が一体に結合されている。
【0039】
自動二輪車1には、変速装置5が一体に連結される水冷式二気筒の四ストローク内燃機関(以下、「内燃機関3」という)が、車体フレーム10の複数のブラケット10aに支持されてクランク軸32を車体幅方向に指向させていわゆる横置きに搭載されている。
メインフレーム12の下端寄りには、後方へ延出するスイングアーム19の前端部がピボット軸19aにより上下搖動可能に支持されている。スイングアーム19の後端には後輪20が、後輪軸20aにより回転自在に支持されている。変速装置5の出力軸(カウンタ軸)54に嵌着される駆動スプロケット75と、後輪軸20aに嵌着される従動スプロケット21との間には、無端状のチェーン22が架渡されている。
【0040】
図2および図3に示されるように、内燃機関3は、クランク軸32を回転自在に支承するクランクケース31と、変速機構50を収容する変速機ケース80とが、クランクケース31を前半部、変速機ケース80を後半部として前後に一体的に形成されるユニットケース30を備えている。また、ユニットケース30は、上クランクケース半体部31Uと上変速機ケース半体部80Uとが一体に形成される上ユニットケース半体部30Uと、下クランクケース半体部31Dと下変速機ケース半体部80Dとが一体に形成される下ユニットケース半体部30Dとからなる上下割に構成されている。上下ユニットケース半体部30U,30Dの割り面30aには、前方からウェイト軸34、クランク軸32、変速機51のメイン軸52およびカウンタ軸54が回転軸線を平行に配設されている。メイン軸52の上方には、スタータモータ48が配設されている。下ユニットケース半体部30Dの下部にはオイルパン35が、取付けられている。
【0041】
上クランクケース半体部31Uの上部には、二つのシリンダボア36a,36aが左右方向に直列に配列されるシリンダブロック36が、幾らか前方に傾いて重ねられ、シリンダブロック36の上にはシリンダヘッド37が重ねられて一体に締結されている。シリンダヘッド37の上にはヘッドカバー38が被せられている。
【0042】
図3に示されるように、シリンダブロック36の二つのシリンダボア36a,36aには、それぞれピストン39,39が往復摺動可能に嵌合されている。ピストン39は、コネクティングロッド40を介してクランク軸32に連結されている。
シリンダヘッド37には、二つのピストン39,39に対向して二つの燃焼室37a,37aが形成されるとともに、二つの点火プラグ41,41が、それぞれ燃焼室37a,37aに臨んで装着されている。
【0043】
クランク軸32は、上下クランクケース半体部31U,31Dの割り面31a(すなわち上下ユニットケース半体部30U,30Dの割り面30a)に形成された軸受部33aに主軸受33を介して挟持されることで、クランクケース31に回転自在に支持されている。クランクケース31の右側の主軸受33から右方に延びるクランク軸32の右側部分には、主軸受33から右方に向って、プライマリ駆動ギア42、カムチェーン駆動スプロケット43が順次嵌着されている。
シリンダヘッド37の図示されないカム軸に嵌着される図示されないカムチェーン被動スプロケットと、カムチェーン駆動スプロケット43との間にタイミングチェーン44が架け渡されている。
【0044】
クランク軸32の左側の主軸受33から左方に延びるクランク軸32の左側部分には、主軸受33から左方に向って、始動用被動ギア45、交流発電機46が順次設けられている。交流発電機46の左方には、発電機カバー47が被せられている。
【0045】
始動用被動ギア45は、クランク軸32に軸受45aを介して回転自在に支持されるとともに、クランク軸32に嵌着されている交流発電機46のアウタロータ46aに一方向クラッチ45bを介して連結されている。始動用被動ギア45には、図示されない中間ギアおよび始動用駆動ギアを介してスタータモータ48が連結されている。発電機カバー47には、交流発電機46のインナステータ46bが支持され、インナステータ46bは、アウタロータ46aの内側に配置されている。
【0046】
ユニットケース30の内側は、クランクケース31の内側でクランク軸32を収容するクランク室Cと、クランク室Cより後方に位置して変速機ケース80の内側で変速機構50を収容する変速機構室Mとに分けられている。
【0047】
内燃機関3の駆動力を所定の変速段に変速する変速装置5は、常時噛合い式の変速機51および変速機51の変速段を操作する変速操作機構60を具備する変速機構50と、変速機構50を収容する変速機ケース80と、摩擦クラッチ70とを備えている。
【0048】
図3および図4に示されるように、変速機ケース80に収容される変速機51は、入力軸たるメイン軸52、出力軸たるカウンタ軸54、メイン軸52およびカウンタ軸54に設けられる歯車群56を備えている。
【0049】
変速機51のメイン軸52およびカウンタ軸54は、上下変速機ケース半体部80U,80Dの割り面80a(すなわち上下ユニットケース半体部30U,30Dの割り面30a)に形成された左右軸受部53a,55aに軸受53,55を介して挟まれて、変速機ケース80に回転自在に支持されている。
【0050】
図4に示されるように、変速機構室M内では、メイン軸52に一速から六速までの変速比の六個の駆動ギアm1〜m6が、カウンタ軸54に一速から六速まで変速比の六個の被動ギアc1〜c6が、それぞれ支持されている。駆動ギアm1〜m6と被動ギアc1〜c6は、右側から一速、五速、四速、三速、六速、二速の順に対応するギアが配列されて互いに噛合い、駆動ギアm1〜m6と被動ギアc1〜c6とにより歯車群56が構成されている。
以下説明のため、これら各駆動ギアm1〜m6と対応する被動ギアc1〜c6との噛合い部を、それぞれ、一速ギア〜六速ギアの噛合い部G1〜G6とする。
【0051】
駆動ギアm1〜m6のうち、三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4は、メイン軸52にスプライン嵌合されてメイン軸52と一体に回転するとともに、メイン軸52の軸方向である左右方向に移動可能なシフタSGとして一体に形成されている。
三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4の右方に隣接する歯車である五速駆動ギアm5と、左方に隣接する歯車である六速駆動ギアm6は、メイン軸52と相対回転可能であり軸方向に移動不能に固定されるフリーギアFGとして形成されている。
【0052】
被動ギアc1〜c6のうち、五速被動ギアc5と六速被動ギアc6は、カウンタ軸54にスプライン嵌合されてカウンタ軸54と一体に回転するとともに、カウンタ軸54の軸方向である左右方向に移動可能なシフタSGとしてそれぞれ形成されている。
五速被動ギアc5の右方に隣接する歯車である一速被動ギアc1および左方に隣接する歯車である四速被動ギアc4、並びに、六速被動ギアc6の右方に隣接する歯車である三速被動ギアc3および左方に隣接する歯車である二速被動ギアc2は、カウンタ軸54と相対回転可能であり軸方向に移動不能に固定されるフリーギアFGとして形成されている。
【0053】
各シフタSG(m3,m4,c5,c6)の隣接するフリーギアFGと対向する面には、シフタ側ドグ歯Daが形成されている。また、各フリーギアFGのうち、五速駆動ギアm5と六速駆動ギアm6のシフタSGと対向する面にはフリー側ドグ歯Dbが、一速被動ギアc1、二速被動ギアc2、三速被動ギアc3および四速被動ギアc4のシフタSGと対向する面にはフリー側ドグ溝Dcが、それぞれ形成されている。
【0054】
シフタ側ドグ歯Daとフリー側ドグ歯Dbおよびフリー側ドグ溝Dcは、シフタSGが対応するフリーギアFGに近接した際に噛合うことでシフタSGが対応するフリーギアFGに相互に相対回転不能に接続され、そのシフタSGが対応するフリーギアFGから離間した際に接続が解除されてシフタSGがフリーギアFGから離脱されるドグクラッチDを構成する。ドグクラッチDは、各シフタSG(m3,m4,c5,c6)と各シフタSG(m3,m4,c5,c6)に隣接する歯車であるフリーギアFG(m5,m6,c1,c2,c3,c4)との間に設けられている。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「ドグクラッチDの接続状態」とは、シフタ側ドグ歯Daとフリー側ドグ歯Dbまたはフリー側ドグ溝Dcとが噛合っている状態を指す。
【0055】
各シフタSG(m3,m4,c5,c6)の外周面には、後述するシフトフォーク64,65,66の先端部64b,65b,66bが係合されるフォーク溝59が、周方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0056】
次に変速操作機構60について説明する。
図3に示されるように、変速操作機構60は、シフトドラム61、シフトフォーク64,65,66、シフトスピンドル67およびリンク機構69を備え、シフトスピンドル67がリンク機構69を介してシフトドラム61を間欠的に回動させることでシフトフォーク64,65,66を移動させ、変速機51の各シフタSGを軸方向に移動させて変速機51の変速段を切り替えるものである。
【0057】
図2および図3に示されるように、メイン軸52の下方にはシフトドラム61が、下変速機ケース半体部80Dに設けられる左右軸受部62aに、軸受62を介して回転自在に支持されている。シフトドラム61の外周面61aには、シフトドラム61の周方向に沿う三本のリード溝61bが形成されている。
【0058】
図3に示されるように、メイン軸52とカウンタ軸54間の下方には、シフトフォーク軸63が、下変速機ケース半体部80Dに設けられる左右軸受部63aに両端を嵌着されて支持されている。
シフトフォーク軸63には、右側から順に第一シフトフォーク64、第二シフトフォーク65および第三シフトフォーク66が、それぞれ軸方向に移動可能に支持されている。各シフトフォーク64,65,66のシフトピン64a,65a,66aは、シフトドラム61のリード溝61bにそれぞれ嵌合されている。各シフトフォーク64,65,66の先端部64b,65b,66bは二股に分かれており、第一シフトフォーク64の先端部64bは五速被動ギアc5のフォーク溝59に、第二シフトフォーク65の先端部65bは三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4のフォーク溝59に、第三シフトフォーク66の先端部66bは六速被動ギアc6のフォーク溝59に、それぞれ係合されている。
【0059】
また、シフトドラム61の後方にはシフトスピンドル67が、下変速機ケース半体部80Dに設けられる軸受部68aに、軸受68を介して回転自在に支持されている。シフトスピンドル67およびシフトドラム61の右端には、シフトスピンドル67の回転によりシフトドラム61を間欠的に回動させるリンク機構69が設けられている。シフトドラム61、シフトフォーク軸63およびシフトスピンドル67は、メイン軸52およびカウンタ軸54と軸方向を平行にしてそれぞれ配設される。
【0060】
メイン軸52の右側の軸受から右方へ延びるメイン軸52の右端部には、多板式の摩擦クラッチ70が設けられている。摩擦クラッチ70のクラッチインナ70aは、メイン軸52の右端部にスプライン嵌合されている。メイン軸52の右側の軸受53aとクラッチインナ70aとの間においてメイン軸52に回転自在に支持されるプライマリ被動ギア71には、摩擦クラッチ70のクラッチアウタ70bが支持されている。
【0061】
摩擦クラッチ70を切断するクラッチレリーズ機構72は、変速機ケース80の左側方に設けられている。クラッチレリーズ機構72は、クラッチケーブル73(図10参照)に接続されるレバー部72a回動させ、シャフト部72bを右方向に移動させてレリーズロッド74でプレッシャプレート70cを右方へと押すことで、クラッチアウタ70bからクラッチインナ70aへの駆動力の伝達を切断する。
【0062】
カウンタ軸54の左側の軸受55から左方へ延びるカウンタ軸54の左端部には、駆動スプロケット75が嵌着されている。駆動スプロケット75の左方はチェーンカバー49に覆われている。
【0063】
図6は、図2の上変速機ケース半体部を透過して変速機を見たVI矢視図である。図6において、後述するリブおよび突起部は破線部にて図示するとともに、主要なギア以外は一部省略するとともに、ハッチングを除いて図示している。
図5および図6に示されるように、上変速機ケース半体部80Uの上壁部81には、五速被動ギアc5の上方に位置して五速駆動ギアm5に指向して開口するセンサ用開口81aが設けられている。図2も参照して、センサ用開口81aには、速度センサ89が上変速機ケース半体部80Uの上方から五速駆動ギアm5に向って斜めに挿入されている。
【0064】
図5に示されるように、上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82には、内壁面82の一部が下方に向って突出してリブ83が形成されている。すなわち、上壁部81の内壁面82の一部は、下方へ向けて突出するリブ83として形成されている。図10に示されるように、リブ83は、上壁部81の内壁面82の形状に沿って、上下方向に略一定の高さとなるように形成されている。
【0065】
図6も参照して、リブ83は、上方視で、メイン軸52またはカウンタ軸54の軸方向(以下単に「軸方向」という)に対して斜めの方向に指向する斜めリブ84と、軸方向に対して平行な方向に指向する平行リブ87とからなる。
なお、リブ83は、一部がセンサ用開口81aによって分断されているが、以下の説明においては分断部分によるリブ83の増減はないものとする。
【0066】
斜めリブ84は、図5にαで例示されるように、軸方向に対する角度が鋭角(本実施の形態では約30度)となるように左斜め前方から右斜め後方へ指向する第一斜めリブ85と、図5にβで例示されるように、軸方向に対する角度が鋭角(本実施の形態では約30度)となるように右斜め前方から左斜め後方へ延びる第二斜めリブ86とを有している。
【0067】
図5に示されるように、第一斜めリブ85および第二斜めリブ86は、それぞれ四つ形成され、第一斜めリブ85同士および第二斜めリブ86同士が相互に略平行となるように配設されている。そして、図6も参照して、第一斜めリブ85および第二斜めリブ86は、上方視で、メイン軸52の前方からカウンタ軸54の後方までの領域に亘って、第一斜めリブ85同士および第二斜めリブ同士86の相互の間隔を後方に行くに連れて若干狭めるようにして略均等に配列されている。
このように上壁部81の内壁面82の一部が斜めリブ84として形成されることで上壁部81の剛性を向上させ、シフト操作時の変速機ケース80の音鳴りが低減される。
【0068】
図6に示されるように、平行リブ87は、上方視でメイン軸52とカウンタ軸54との間であって、二速ギアの噛合い部G2および三速ギアの噛合い部G3の上方を通る位置に、上壁部81の左端から右端までに亘って一つ形成されている。
なお、平行リブ87は、上方視で、メイン軸52とカウンタ軸54との間に配設されていればよいが、本実施の形態のように第一〜第六ギアの噛合い部G1〜G6の少なくともいずれか一つの上方に配設されると好適である。
【0069】
第一斜めリブ85と第二斜めリブ86は網目状に配列され、斜めリブ84には、第一斜めリブ85と第二斜めリブ86とが交差する交差部Xが形成される。交差部Xは、軸方向に長く形成されている。本実施の形態において交差部Xは七つ形成されており、上方視で、二つの交差部X1,X2はカウンタ軸54の軸中心線L2上に、交差部X3はメイン軸52の軸中心線L1上に、交差部X4,X6はメイン軸52とカウンタ軸54の間に、二つの交差部X5メイン軸52の前方に、それぞれ配置されている。
【0070】
図6に示されるように、カウンタ軸54の軸中心線L2の上方に位置する二つの交差部X1,X2は、一方の交差部(以下「第一交差部X1」という)が、ドグクラッチDが接続されていない状態(以下「ニュートラル状態Pn」という)における五速被動ギアc5のフォーク溝59の上方に交差部Xの中心(以下「交差点Y」という)が位置して、上方視でフォーク溝59を軸方向に跨ぎ、他方の交差部(以下「第二交差部X2」という)が、ニュートラル状態Pnの六速被動ギアc6のフォーク溝59の上方に交差点Yが位置して、上方視でフォーク溝59を軸方向に跨いで、それぞれ形成されている。
【0071】
メイン軸52の軸中心線L1の上方に位置する交差部(以下「第三交差部X3」という)は、ニュートラル状態Pnにおける三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4のフォーク溝59の上方に交差点Yが位置し、上方視でフォーク溝59を軸方向に跨いで形成されている。
【0072】
図5には、下方から上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82に投影された各ギアの歯が形成されている領域(以下「歯領域T」といい、括弧にて各ギアの符号m1〜m6,c1〜c6を添える)が、二点鎖線でそれぞれ示されている。
図5も参照して、上方視でメイン軸52の前方に位置する二つの交差部X5,X5は、それぞれ五速駆動ギアm5と六速駆動ギアm6の歯領域T(m5),T(m6)の上方に形成されている。
【0073】
また、上方視でメイン軸52とカウンタ軸54の間に位置する交差部X4,X6のうち、メイン軸52寄りの交差部(以下「第四交差部X4」という)は六速駆動ギアm6の歯領域T(m6)の上方に、カウンタ軸54寄りの交差部X6は三速被動ギアc3および四速被動ギアc4の歯領域T(m3),T(m4)の上方に、それぞれ形成されている。なお、第四交差部X4には、平行リブ87も交差している。
【0074】
リブ83(すなわち上壁部81の内壁面82の一部)には、リブ83の一部が下方に向って突出して突起部90が形成されている。突起部90は、斜めリブ84の一部が下方に向けて突出して形成される第一の突起部である第一突起部91と、平行リブ87の一部が下方に向けて突出して形成される第二の突起部である第二突起部92とを有している。図10も参照して、突起部90は、下端が半球状に形成されるとともに、縦断面視で、下端に向うに連れてやや先細りとなるように形成されている。
【0075】
図6に示されるように、第一突起部91は、第一交差部X1、第二交差部X2および第三交差部X3に、それぞれ形成されている。以下、第一突起部91の配置について、具体的に説明する。
【0076】
図7に網掛にて示されるように、第一交差部X1に形成される第一突起部91は、上方視で、カウンタ軸54の軸中心線L2(すなわち五速被動ギアc5の回転軸線L3)上であって、五速被動ギアc5が一速被動ギアc1とドグクラッチDの接続状態となる一速位置P1、および図7に二点鎖線で示す五速被動ギアc5が四速被動ギアc4とドグクラッチDの接続状態となる四速位置P4、における五速被動ギアc5のフォーク溝59に重なる位置に、それぞれ一つ形成されている。
【0077】
図8に網掛にて示されるように、第二交差部X2に形成される第一突起部91は、上方視で、カウンタ軸54の軸中心線L2(すなわち六速被動ギアc6の回転軸線L4)上であって、六速被動ギアc6が三速被動ギアc3とドグクラッチDの接続状態となる三速位置P3、および図8に二点鎖線で示す六速被動ギアc6が二速被動ギアc2とドグクラッチDの接続状態となる二速位置P2、における六速被動ギアc6のフォーク溝59に重なる位置に、それぞれ一つ形成されている。
【0078】
図9に網掛にて示されるように、第三交差部X3に形成される第一突起部91は、上方視で、メイン軸52の軸中心線L1(すなわち三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4の回転軸線L5)上であって、三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4が五速駆動ギアm5とドグクラッチDの接続状態となる五速位置P5、並びに三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4が六速駆動ギアm6とドグクラッチDの接続状態となる六速位置P6における三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4のフォーク溝59に重なる位置に、それぞれ一つ形成されている。
【0079】
図5および図6に示されるように、平行リブ87に形成される第二突起部92は、ニュートラル状態Pnにおける上方視で、一速被動ギアc1、四速駆動ギアm4および六速駆動ギアm6の歯領域T(m4),T(m6)、二速ギアおよび三速ギアの噛合い部G2,G3における歯幅中央にそれぞれ一つずつ形成されている。なお、第二突起部92のうち、四速駆動ギアm4の歯領域T(m4)の上方に位置する第二突起部92は、第四交差部X4の中心に形成されている。
【0080】
図10に示されるように、上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82は、側方視で、後端82aから前後方向で中央やや前方寄りの部位(以下「内壁面低部82c」という)に向うに連れて内壁面82の位置が低くなるように水平面Hに対して傾斜し、内壁面低部82cから前端82bに向うに連れて内壁面82の位置が高くなるように、水平面Hに対して前後方向に傾斜して形成されている。すなわち、内壁面低部82cは、上壁部81の内壁面82の中で最も下方に位置している。なお、内壁面低部82cは、メイン軸52の軸中心線L1と平行リブ87との間の上方に位置している。
【0081】
前述したように、リブ83は、上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82の形状に沿って、上下方向に略一定の高さとなるように形成されていることから、斜めリブ84は、内壁面82の傾斜に沿った傾斜を有している。一方、平行リブ87は軸方向に対して平行に形成されているため、傾斜を有していない。
【0082】
前記のように上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82に形成されたリブ83と突起部90は、以下のように作用する。
【0083】
メイン軸52およびカウンタ軸54が回転すると、メイン軸52およびカウンタ軸54の内部に形成されているオイル通路52a,54aから吐出して各駆動ギアm1〜m6および各被動ギアc1〜c6を潤滑するオイルが、遠心力で跳ね上がり、上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82に付着する。また、自動二輪車1が走行すると、揺れや振動によってオイルパン35内のオイルが跳ね上がり、同内壁面82に付着する。
【0084】
図6を参照して、このオイルは、オイル自体の表面張力やオイルにかかる重力の作用により、近くに位置する斜めリブ84と平行リブ87に集まる。そして、斜めリブ84に集まったオイルの多くは、斜めリブ84を伝って交差部Xに集まる。そのうち、交差部X5,X6に集まったオイルは、交差部X5,X6の下方に位置する三速被動ギアc3、四速被動ギアc4、五速駆動ギアm5および六速駆動ギアm6の歯領域Tに滴下され、これらのギアの噛合い部G3〜G6を潤滑する。
【0085】
一方、第一交差部X1、第二交差部X2および第三交差部X3に集まったオイルは、それぞれに形成されている第一突起部91に集まる。そして、第一突起部91に集まったオイルは、ドグクラッチDの接続状態にあるいずれかのシフタSG(m3,m4,c5,c6)のフォーク溝59に滴下され、フォーク溝59とシフトフォーク64,65,66の先端部64b,65b,66bを潤滑する。
例えば、図7に示されるように、変速段が五速被動ギアc5と一速被動ギアc1とのドグクラッチDの接続状態である一速位置P1にある場合、五速被動ギアc5のフォーク溝59に第一交差部X1の右側の第一突起部91からオイルが滴下され、フォーク溝59およびフォーク溝59に係合している第一シフトフォーク64の先端部64bが潤滑される。このように、ドグクラッチDの接続時および離脱時にシフトフォーク64,65,66の先端部64b,65b,66bがフォーク溝59の側壁に強く接触しても、フォーク溝59とこれに係合するシフトフォーク64,65,66の先端部64b,65b,66bとの間の潤滑を十分に保つことができるようになっている。
【0086】
図6ないし図10に示されるように、第一突起部91は、各シフタSGの回転軸線L3〜L5(メイン軸52およびカウンタ軸54の軸中心線L1,L2)上に位置している。そのため、内壁面82に付着したオイルが、第一突起部91からフォーク溝59の周方向の頂点部59aに滴下される。このオイルは、フォーク溝59内の前方と後方の二方向に流れることとなり、効率的にフォーク溝59にオイルを広げることができる。また、振動や慣性等によりオイルの滴下位置が前後にずれたとしても、オイルがフォーク溝59に滴下され易くなる。
【0087】
平行リブ87に集まったオイルは、第二突起部92に集まり、第二突起部92の下方に位置する一速被動ギアc1、四速駆動ギアm4および六速駆動ギアm6の歯領域T(m4),T(m6)、二速ギアおよび三速ギアの噛合い部G2,G3にそれぞれ滴下され、これらのギアの噛合い部G1〜G4,G6を潤滑する。なお、本実施の形態では、第二突起部92に集まったオイルは、速度センサ89の設置により五速ギアの噛合い部G5を潤滑していないが、五速ギアの噛合い部G5も潤滑されるように構成してもよい。
【0088】
上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82は水平面Hに対して前後方向に傾斜しており、内壁面82に付着したオイルは、傾斜に沿って流れる。そのため、内壁面82に付着したオイルは、付着箇所よりも下方に位置する斜めリブ84や平行リブ87に集まり易くなる。また、斜めリブ84自体も傾斜面に沿う傾斜を有しているため、斜めリブ84を伝うオイルは、その斜めリブ84よりも下方に位置する交差部Xに集まり易くなる。なお、平行リブ87は傾斜を有していないため、平行リブ87に集まったオイルは、一方向に向って流れることが無く、全ての第二突起部92に略均等に集まることとなる。
【0089】
以上、詳細に説明した本発明の第一の実施の形態に係る内燃機関3の変速装置5においては、以下の効果を奏する。
上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82の一部は、下方へ向けて突出するとともに、上方視で、軸方向に対して斜めの方向に指向する斜めリブ84として形成されている。そして、斜めリブ84には、交差部X1〜X6が形成されている。交差部X1〜X3には、上方視で、ドグクラッチDの接続状態における各シフタSGのフォーク溝59と重なる位置に、交差部X1〜X3から下方へ向けて突出する第一突起部91が形成されている。
このような構成によれば、上壁部81の内壁面82に付着したオイルを、斜めリブ84により広範囲から集める(捕獲)することができる。そして、斜めリブ84に集まったオイルは、斜めリブ84を伝って交差部X1〜X6に集まる。交差部X1〜X3に集まったオイルは、第一突起部91から、ドグクラッチDの接続状態において第一突起部91の下方に位置するフォーク溝59に滴下される。そのため、ドグクラッチDの接続状態でのフォーク溝59に、内壁面82の一部を斜めリブ84や第一突起部91として形成するという簡易な構成でオイルを供給することが可能となり、変速機ケース80の製造コストを増加させることなく、フォーク溝59とシフトフォーク64,65,66間の潤滑を向上させることができる。
【0090】
また、交差部X4〜X6に集まったオイルは、交差部の下方に位置するギアm5,m6,c3,c4の歯領域T(m5),T(m6),T(c3),T(c4)に滴下されるため、交差部Xを設けるという簡易な構成で三速ギア〜6速ギアの噛合い部G3〜G6を潤滑することができる。
さらに、斜めリブ84が、上壁部81の内壁面82の全体に略均等に形成されているため、上壁部81の剛性を向上させることが可能となり、併せてシフト操作材の変速機ケース80の音鳴りを低減させることが可能となる。
【0091】
交差部X1〜X3が、メイン軸52およびカウンタ軸54の上方に位置しているため、斜めリブ84を伝って交差部X1〜X3に集まったオイルを、メイン軸52、カウンタ軸54および歯車群56に滴下してこれらの潤滑を向上させることができる。
【0092】
第一突起部91は、軸方向に沿って複数形成されている。そのため、一つのシフタSGに対して二か所のドグクラッチDの接合状態におけるフォーク溝59にオイルを滴下することができる。また、本実施の形態における五速被動ギアc5および六速被動ギアc6のように、ひとつの支持軸(本実施の形態ではカウンタ軸54)上にシフタSGが二つ配設されている場合に、それぞれのシフタSGのドグクラッチDの接合状態におけるフォーク溝59にオイルを滴下することができる。
【0093】
第一突起部91は、各シフタSGの回転軸線L3〜L5(メイン軸52およびカウンタ軸54の軸中心線L1,L2)上に位置しており、内壁面82に付着したオイルが、第一突起部91からフォーク溝59の周方向の頂点部59aに滴下される。このオイルは、フォーク溝59で歯車の周方向に沿って前方と後方の二方向に流れることとなり、効率的にフォーク溝59にオイルを広げることができる。また、振動や慣性等によりオイルの滴下位置が前後にずれたとしても、オイルがフォーク溝59に確実に滴下される。
【0094】
交差部Xのうち、第一突起部91が形成される交差部X1〜X3は、第一交差部X1および第二交差部X2がカウンタ軸54の上方に、第三交差部X3がメイン軸52の上方に、あわせて三か所形成されている。そして、交差部X1〜X3に集まったオイルが、メイン軸52に設けられる三速駆動ギアm3および四速駆動ギアm4のフォーク溝59、およびカウンタ軸54に設けられる五速被動ギアc5と六速被動ギアc6のフォーク溝59のいずれにも滴下される。そのため、メイン軸52およびカウンタ軸54のいずれが高回転で稼働していても、各シフタSGのフォーク溝59に、確実にオイルを供給することが可能となり、フォーク溝59とシフトフォーク64,65,66間の潤滑を向上させることができる。
【0095】
変速機ケース80の上壁部81の内壁面82が、水平面Hに対して傾斜しているため、上壁部81の内壁面82に付着したオイルが、傾斜に沿って流れることとなる。そのため、オイルの流れの途中に位置する突起部90やリブ83にオイルが集まる効率が向上し、突起部90からのオイル滴下量が増す結果、フォーク溝59とシフトフォーク64,65,66間の潤滑を向上させることができる。
【0096】
変速機ケース80の上壁部81の内壁面82の一部は、下方へ向けて突出するとともに、軸方向に平行な方向に指向する平行リブ87として形成されている。そして、平行リブ87は、上方視で、メイン軸52とカウンタ軸54との間に位置している。平行リブ87には、平行リブ87から下方へ向けて突出する第二突起部92が、上方視で、歯領域T(m4),T(m6),T(c1)と、噛合い部G2,G3に位置して形成されている。
内壁面82に付着したオイルは、平行リブ87にも集まり、平行リブ87を伝わって第二突起部92に集まる。第二突起部92に集まったオイルは、メイン軸52とカウンタ軸54との間に配設されている歯車の歯領域T(m4),T(m6),T(c1)や噛合い部G2,G3に滴下される。そのため、簡易な構成で、メイン軸52とカウンタ軸54との間に設けられている歯車群56にもオイルを供給することができる。
【0097】
以上、本発明の第一の実施の形態について図を参照して説明したが、第一の実施の形態は前記の説明に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
【0098】
例えば、本実施の形態では、上変速機ケース半体部80Uの上壁部81の内壁面82の一部をリブ83として形成しているが、内壁面82の一部を直接突起部90として形成してもよい。この場合、リブ83によるオイルの捕集効果は得ることができないが、突起部90の周囲に付着したオイルは突起部90に集められ、各ギアの歯領域TやドグクラッチDの接続状態における突起部90の下方に位置するフォーク溝59等に、突起部90から滴下される。そのため、上壁部81の内壁面82に突起部90を設けるだけという簡易な構成でドグクラッチDの接続状態でのフォーク溝59にオイルを供給することが可能となり、変速機ケース80の製造コストを増加させることなく、フォーク溝59とシフトフォーク64,65,66間の潤滑を向上させることができる。
【0099】
本実施の形態では、斜めリブ84は、第一斜めリブ85と第二斜めリブ86からなり、交差部Xに第一突起部91が形成されている。しかし、斜めリブ84は、第一斜めリブ85若しくは第二斜めリブ86のいずれか一方のみを形成して、その形成された第一斜めリブ85若しくは第二斜めリブ86に第一突起部91を形成してもよい。
【0100】
本実施の形態では、第一突起部91は各シフタSGの上方に合せて六か所に形成されているが、必要に応じて数を減じて形成されてもよい。
また、上壁部81の内壁面82は、水平面に対して傾斜して形成されることが望ましいが、水平面に対して平行に形成されてもよい。
【0101】
平行リブ87は、上方視で、メイン軸52とカウンタ軸54との間に一つ配設されているが、第一〜第六ギアの噛合い部G1〜G6の全ての上方に位置するように、分断して前後の位置をずらして形成されてもよい。
また、シフタはギアに限定されず、歯車の形成されていないものであってもよい。
【0102】
次に、本発明に係る内燃機関3の変速装置5の第二の実施の形態について、図を参照して説明する。第二の実施の形態において、前述した第一の実施の形態と同一の部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0103】
図11に示されるように、シフトフォーク100には、シフトフォーク軸63の軸方向に向けて突出するフォークリブ104が形成されている。フォークリブ104は、シフトフォーク100のフォークリブ104が突出する側に隣接する図示されない歯車であるギアの径方向下方に、該ギアの歯先円Qに沿って下方に向って凸となるように湾曲して形成されている。
なお、フォークリブ104は、シフトフォーク100の軸方向の一方だけでなく、一つのシフトフォーク100について軸方向の両方向に向けて突出形成してもよい。
【0104】
以下、フォークリブ104を、第二シフトフォーク102に形成した例を用いて説明する。
図12に示されるように、第二シフトフォーク102の左側面102aには、フォークリブ104が左側方へ突出して形成されている。フォークリブ104は、第二シフトフォーク102のフォークリブ104が突出する側(すなわち左側方)に隣接する六速被動ギアc6の径方向下方に、六速被動ギアc6の歯先円Qに沿って下方に向って凸となるように湾曲して形成されている。
【0105】
そのため、第二交差部X2の第一突起部91から滴下されたオイルや、第四交差部X4の第二突起部92から滴下されたオイルが、六速被動ギアc6や第二シフトフォーク102を伝ってフォークリブ104の湾曲部104aに溜められる。湾曲部104aに溜められたオイルは、六速被動ギアc6の歯先が接触して六速被動ギアc6および六速ギアの噛合い部G6を潤滑するとともに、一部は六速被動ギアc6の歯先に跳ね上げられ、変速機ケース80の上壁部81の内壁面82に付着する他、一部は第二シフトフォーク102を伝って六速被動ギアc6のフォーク溝59にも供給される。
また、高回転となる六速被動ギアc6の下方に、フォークリブ104が配置されるので、高回転となり潤滑が要求される六速被動ギアc6と、六速ギアの噛合い部G6をより効果的に潤滑することができる。
【0106】
なお、フォークリブ104は、第二シフトフォーク102ではなく、図示されない第一シフトフォークや第三シフトフォーク103に形成されてもよい。この場合、フォークリブ104は、最大で、三速駆動ギアm3、四速駆動ギアm4、三速〜六速被動ギアc3〜c6の下方(三速被動ギアc3については三速位置P3における三速被動ギアc3の下方、四速被動ギアc4については四速位置P4における四速被動ギアc4の下方)に形成することができる。
【0107】
以上、図を用いて詳細に説明した本発明の第二の実施の形態に係る内燃機関の変速装置は、以下の作用を奏する。
シフトフォーク100には、シフトフォーク軸63の軸方向に向けて突出するフォークリブ104が形成されている。フォークリブ104は、シフトフォーク100のフォークリブ104が突出する側に隣接するギアの径方向下方に、該ギアの歯先円Qに沿って湾曲して形成されている。
そのため、リブ83、交差部Xおよび突起部90から滴下されたオイルが、フォークリブ104の湾曲部104aに溜められ、フォークリブ104の上方に位置するギアおよび該ギアの噛合い部Gを潤滑することができる。また、湾曲部104aに溜められたオイルは、ギアの歯先が接触して跳ね上げられ、変速機ケース80の上壁部81の内壁面82に付着する他、一部はシフトフォーク100を伝ってシフタSGのフォーク溝59にも供給される。
このように、シフトフォーク100の形状を変更するだけで、シフトフォーク100に隣接する歯車m3,m4,C3〜C6およびその噛合い部G3〜G6とシフトフォーク100が係合するフォーク溝59との潤滑を向上させることができる。
【符号の説明】
【0108】
3…内燃機関、5…変速装置、52…メイン軸、54…カウンタ軸、56…歯車群、59…フォーク溝、64,65,66…シフトフォーク、80…変速機ケース、81…上壁部、82…内壁面、84…斜めリブ、87…平行リブ、91…第一の突起部、92…第二の突起部、100…シフトフォーク、104…フォークリブ
D…ドグクラッチ、H…水平面、L2,L3,L4…回転軸線、Q…歯先円、X…交差部、m3,m4,c3,c4,c5,c6…シフトフォークに隣接する歯車、SG…シフタ、FG…フリーギア(シフタに隣接する歯車)
図1
図2
図3
図4
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図11
図12