(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のような構成では、ブレーキケーブルの張力を検知する為には、マイクロスイッチのスイッチボタンに対して、ブレーキケーブルの張力に伴って移動するスイッチ押圧板を接触させる必要がある。ここで、ブレーキケーブルに過剰な張力が生じてしまった場合、マイクロスイッチのスイッチボタンを、マイクロスイッチ内部に必要以上に押し込んでしまうことになり、マイクロスイッチを含む張力検知部の故障や破損の要因となってしまっていた。
【0007】
この点、特許文献1記載のパーキングブレーキ装置においては、マイクロスイッチが配設された取付フレームに、スイッチ押圧板が掛止されるストッパ縁を形成することによって、ブレーキケーブルの張力によるスイッチ押圧板の接近を所定範囲に規制し、過剰な張力がブレーキケーブルに生じた場合であっても、当該過剰な張力に起因する張力検知部の故障や破損を防止している。
【0008】
パーキングブレーキ装置において、張力検知部の位置や形状は、車両のレイアウト等の影響を受ける為、過剰な張力による故障や破損を防止可能な張力検知部として、種々の態様が望まれており、張力検知部の小型化も要望されている。
【0009】
本発明は、操作レバーの回動操作によって、ケーブルを介して、車両に配設されたパーキングブレーキの作動・解除を行うパーキングブレーキ装置に関し、ケーブルの張力を検知可能で、且つ、過剰な張力による故障の発生を防止可能な張力検知部を有するパーキングブレーキ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面に係るパーキングブレーキ装置は、車体に固定されるベース部材と、前記ベース部材に対して回動軸を介して回動可能に軸支され、前記回動軸周りに回動させた場合にケーブルを引っ張ることにより車両の制動装置を作動させる操作レバーと、前記操作レバーの回動に伴って前記ケーブルに生じた張力を検知する張力検知部と、を有するパーキングブレーキ装置であって、前記張力検知部は、前記ケーブルに固設される
ケーブル取付軸と、前記操作レバーに対して取り付けられ、前記操作レバーの回動に伴って移動すると共に、前記ケーブルと前記
ケーブル取付軸とを収容する収容部材と、前記収容部材の内部において前記
ケーブル取付軸によって挿通された状態で収容され、前記ケーブルに生じた張力によって、前記収容部材に対して移動可能に配設された規制部材と、前記収容部材と前記規制部材との間に配設され、前記ケーブルに生じた張力に抗する付勢力を発生させる
コイルスプリングと、前記収容部材と前記規制部材との相対的な距離が所定値以下となった場合に変位する
検知軸を有し、当該
検知軸の変位に基づいて、前記ケーブルに生じた張力を検知する
張力検知スイッチと、を有し、前記規制部材は、前記ケーブルに生じた張力による移動方向に向かって突出形成され、前記収容部材と前記規制部材との相対的な距離を、前記所定値よりも小さな規制値に規制する規制片を有することを特徴とする。
【0011】
そして、本発明の他の側面に係るパーキングブレーキ装置は、請求項1記載のパーキングブレーキ装置であって、前記規制部材における前記規制片の先端は、前記ケーブルに生じた張力によって、前記規制部材が前記収容部材の内部を移動し、前記収容部材の内壁面に当接することによって、前記
張力検知スイッチにおける前記
検知軸の変位量を規制することを特徴とする。
【0012】
又、本発明の他の側面に係るパーキングブレーキ装置は、請求項1又は請求項2記載のパーキングブレーキ装置であって、前記規制部材における前記規制片は、前記収容部材の内側面に対して対向する面に、当該収容部材の内側面に向かって突出形成された突条部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
当該パーキングブレーキ装置は、ベース部材と、操作レバーと、張力検知部とを有しており、操作レバーを回動軸周りに回動させた場合にケーブルを引っ張ることにより車両の制動装置を作動させ、張力検知部によって、前記操作レバーの回動に伴って前記ケーブルに生じた張力を検知するように構成されている。当該パーキングブレーキ装置における張力検知部は、
ケーブル取付軸と、収容部材と、規制部材と、
コイルスプリングと、
張力検知スイッチとを有しており、操作レバーの回動に伴ってケーブルに生じた張力によって、
コイルスプリングの付勢力に抗して前記収容部材と前記規制部材との相対的な距離を変化させて、前記
張力検知スイッチの
検知軸を介して、ケーブルに生じた張力を検知するように構成されている。そして、当該張力検知部における規制部材は、前記ケーブルに生じた張力による移動方向に向かって突出形成された規制片を有しており、前記収容部材と前記規制部材との相対的な距離を、前記所定値よりも小さな規制値に規制する。従って、当該パーキングブレーキ装置によれば、ケーブルに過剰な張力が生じた場合であっても、規制部材の規制片と収容部材の協働によって、
張力検知スイッチの
検知軸を当該過剰な張力から保護することができ、張力検知部の故障や破損を防止し得る。又、張力検知部をこのように構成することによって、張力検知部の小型化に対応することもできる。
【0014】
そして、当該パーキングブレーキ装置によれば、前記規制部材における前記規制片の先端は、前記ケーブルに生じた張力によって、前記規制部材が前記収容部材の内部を移動し、前記収容部材の内壁面に当接する。これによって、ケーブルに生じた過剰な張力から、
張力検知スイッチの
検知軸を保護することができ、より確実に、張力検知部の故障や破損を防止し得る。
【0015】
当該パーキングブレーキ装置において、前記規制部材における前記規制片は、前記収容部材の内側面に対して対向する面に、当該収容部材の内側面に向かって突出形成された突条部を有している為、規制部材と収容部材との接触部分を小さくすることができる。当該パーキングブレーキ装置によれば、ケーブルに生じた張力によって規制部材が収容部材の内部を移動する際に、規制部材に作用する摩擦抵抗を低減することができ、もって、張力検知部によるケーブルの張力の発生を精度よく検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るパーキングブレーキ装置を、パーキングブレーキ装置1に適用した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(パーキングブレーキ装置1の概略構成)
図1〜
図3に示すように、本実施形態に係るパーキングブレーキ装置1は、操作レバー10と、ベース部材20とを有しており、車両に固設されたベース部材20に回動可能に配設された操作レバー10を、運転者によって回動操作させることにより、ブレーキケーブル(図示せず)を介して、パーキングブレーキの作動及び解除可能に構成されている。
【0019】
ベース部材20は、車両のフロア(図示せず)に略垂直に固定された略平板形状の部材であり、回動軸25を介して、操作レバー10を、ベース部材20に対して回動可能に支持している。即ち、ベース部材20は、本実施形態に係るパーキングブレーキ装置1における基礎的構成として機能し、回動軸25は、操作レバー10の回動に関する回動中心として機能する。
【0020】
尚、以下の説明においては、車両に配設された状態のパーキングブレーキ装置1を基準として、各方向を定義する。即ち、ベース部材20が固設された車両のフロア側を、下方向とし、その逆側を上方向とする。又、各図に示すように、当該パーキングブレーキ装置1が配設された車両の前後方向及び左右方向をもって、前後方向及び左右方向として定義して説明する。
【0021】
上述したように、操作レバー10は、パーキングブレーキ装置1において、運転者によって回動操作がなされる主要な構成部材であり、グリップ部11と、レバー本体部12を有している。グリップ部11は、操作レバー10の一端側(前方端部側)において、略円筒形状に形成されており、当該操作レバー10を回動操作する際に運転者によって把持される。
【0022】
そして、レバー本体部12は、操作レバー10における他端側(後方側の端部)を構成しており、車両のフロアに立設されたベース部材20に対して、回動軸25を軸として回動可能に支持されている。そして、当該レバー本体部12には、張力検知部50を介して、ブレーキケーブル(図示せず)の一端が連結されており、当該ブレーキテーブルの他端側は、パーキングブレーキに対して接続されている。
【0023】
そして、ベース部材20は、その側面部の下端側に、前後一対の取付脚部21を有している。当該取付脚部21は、略垂直に立ち上がるベース部材20の主要部に対し、それぞれ側方に逆向きかつ略水平に延びるように折曲されている。そして、取付脚部21は、運転席近傍の据付け部位に対してボルト止めされることで、ベース部材20を据付け部位に固定する機能を果たす。
【0024】
又、ベース部材20の主要部には、回動軸25を中心とする円弧形のガイド溝22が複数形成されており、各ガイド溝22の内部には、操作レバー10のレバー本体部12に形成されたガイドピン13が相対的に移動可能に嵌合している。操作レバー10が引き起こされると、各ガイドピン13が夫々ガイド溝22の一端側(後方側)に移動する。
【0025】
そして、操作レバー10のレバー本体部12には、押圧部14が形成されており、当該押圧部14は、回動軸25を中心として操作レバー10を回動に伴って移動することで、ウォーニングランプスイッチ45の検知軸46に当接・離間する。
【0026】
図1〜
図3に示すように、操作レバー10は、金属板材を主体として構成されており、レリーズロッド15と、レリーズノブ16と、スプリング17と、ポール30とを有している。具体的には、操作レバー10のグリップ部11内部には、レリーズロッド15、スプリング17を収容しており、レバー本体部12内部には、ポール30等の構成部材や、ラチェット35を含むベース部材20を介在させている。
【0027】
レリーズロッド15は、金属板材にプレス加工を施すことによって形成された棒状部材であり、円筒形状に形成されたグリップ部11の内側において、グリップ部11の軸方向に沿ってスライド移動可能に配設されている。
【0028】
そして、レリーズノブ16は、レリーズロッド15の前端部に取り付けられており、操作レバー10の前側端面から突出するように配設される。当該パーキングブレーキ装置1においては、レリーズノブ16の押込み操作を行うことによって、レリーズロッド15をスライド移動させている。
【0029】
図1等に示すように、スプリング17は、圧縮コイルスプリングによって構成されており、レリーズロッド15によって挿通された状態で配設されている。当該スプリング17は、操作レバー10のグリップ部11内部に対して取り付けられている為、操作レバー10の前方側に向かって、レリーズロッド15を付勢している。従って、スプリング17の付勢力は、レリーズロッド15及びレリーズノブ16を操作レバー10の前方側へ付勢するように作用する。
【0030】
ポール30は、操作レバー10のレバー本体部12内部における後方側に位置しており、揺動可能に配設されている。
図1、
図3に示すように、当該ポール30は、レリーズロッド15の後端部に連結されている為、レリーズロッド15のスライド移動に伴って揺動する。ポール30の係止爪31は、当該ポール30の揺動に伴って、ラチェット35の歯部36に対して当接・離間する。
【0031】
ラチェット35は、ベース部材20の主要部に対して固設されており、回動軸25を中心とする円弧を描くように列設された複数の歯部36を有している。ラチェット35の歯部36は、ポール30の一端部に形成された係止爪31がポール30の揺動に伴って噛み合うように形成されている。当該パーキングブレーキ装置1においては、ポール30の係止爪31がラチェット35の歯部36に対して噛み合うことで、回動軸25を中心とした操作レバー10の解除方向への回動が制限される。そして、レリーズノブ16の押込み操作によって、レリーズロッド15が後方にスライド移動し、ポール30が揺動することで、ラチェット35の歯部36に対する噛み合いが解除される。従って、この場合においては、操作レバー10の解除方向への回動が許容されることになり、ブレーキケーブルを介して、パーキングブレーキを解除することができる。
【0032】
そして、運転者の操作によって、操作レバー10を上方へ引き起こす方向(以下、作動方向)へ回動した場合、操作レバー10は、当該作動方向への回動に伴って、レバー本体部12に連結されているブレーキケーブルを引っ張り、車両のパーキングブレーキを作動させる。一方、運転者の操作によって、車両のフロアに近づけるように、操作レバー10を下方向(以下、解除方向)への回動した場合、操作レバー10は、当該解除方向への回動に伴って、張力検知部50に連結されているブレーキケーブルの張力を緩め、車両のパーキングブレーキを解除させる。このように、本実施形態に係るパーキングブレーキ装置1は、操作レバー10の回動操作に応じて、車両のパーキングブレーキによる制動力を付与又は解除し得る。
【0033】
そして、当該パーキングブレーキ装置1においては、収納リンク40が操作レバー10の内部に配設されており、パーキングブレーキの制動状態を維持したままで操作レバー10を初期位置に収納するための機構を構成する。収納リンク40は、操作レバー10のレバー本体部12側に対して回動可能に枢支されており、その上端側は、操作レバー10の外部に突出して収納操作部41として形成されている。操作レバー10が制動状態である場合に、収納操作部41を操作レバー10のグリップ部11における後方に移動させると、収納リンク40が回動して、パーキングブレーキの制動状態を維持したまま、操作レバー10をイニシャル位置に収納されるように構成されている。
【0034】
又、パーキングブレーキ装置1には、ウォーニングランプスイッチ45が配設されており、当該ウォーニングランプスイッチ45の検出結果は、パーキングブレーキに関する警告灯(ウォーニングランプ)の点灯・消灯制御に用いられる。ウォーニングランプスイッチ45は、ウォーニングランプスイッチ45本体に対して変位可能な検知軸46を有しており、操作レバー10の回動操作に連動して、操作レバー10の押圧部14が検知軸46に当接・離間するように配設されている。具体的には、
図1に示すように、操作レバー10が倒された際、押圧部14がウォーニングランプスイッチ45の検知軸46と接触して押し込み、パーキングブレーキに係る警告灯を消灯させる。
図3に示すように、操作レバー10が引き起こされた場合、押圧部14がウォーニングランプスイッチ45の検知軸46から離間し、パーキングブレーキに係る警告灯を点灯させる。
【0035】
図1〜
図3に示すように、本実施形態に係るパーキングブレーキ装置1においては、操作レバー10に対して、張力検知部50が配設されている。張力検知部50は、パーキングブレーキの作動・解除する為に、ブレーキケーブルに発生した張力を検知する部分であり、その具体的な構成については、後に詳細に説明する。
【0036】
(張力検知部50の具体的構成)
本実施形態に係る張力検知部50の具体的構成について、
図1〜
図6を参照しつつ詳細に説明する。
図1〜
図3に示すように、当該張力検知部50は、パーキングブレーキの作動・解除する為に、ブレーキケーブルに発生した張力を検知する部分であり、収容部材60と、ケーブル取付軸65と、規制部材70と、コイルスプリング75と、張力検知スイッチ80とを有して構成されている。
【0037】
そして、張力検知部50は、ブレーキケーブルに固定されたケーブル取付軸65を含んで構成されており、支持軸85を中心として操作レバー10に対して揺動可能に取り付けられている。操作レバー10の回動操作に伴い、支持軸85の位置も変位する為、張力検知部50も移動する。そして、ブレーキケーブルは、収容部材60の前端側から張力検知部50へ取り込まれており、コイルスプリング75内部、規制部材70を通過した後、ケーブル取付軸65を固着して接続されている。
【0038】
具体的には、操作レバー10の引き起こしによって、支持軸85を介して張力検知部50の収容部材60がパーキングブレーキ装置1における後方に移動すると、ケーブル取付軸65、規制部材70及びコイルスプリング75の協働により、張力検知部50における前方へ規制部材70が移動し、ブレーキケーブルが後方に引っ張られる。これにより、当該パーキングブレーキ装置1においては、パーキングブレーキによって車両に制動力が発生した制動状態がもたらされる。そして、張力検知部50の収容部材60における規制部材70の位置が変化することによって、張力検知スイッチ80は、ブレーキケーブルに生じた張力を検知する。
【0039】
収容部材60は、平面視で略コ字状に金属板材を折り曲げることによって構成されており、当該張力検知部50の外郭を構成する。収容部材60は、操作レバー10のレバー本体部12を跨ぐように配設されており、レバー本体部12の支持軸85によって、収容部材60の後端側を揺動可能に軸支している(
図1〜
図3参照)。
【0040】
そして、
図4〜
図6に示すように、当該収容部材60の前面部には、取付孔61が、その中央部分に形成されている。当該取付孔61は、ケーブル取付軸65及びブレーキケーブルの外径よりも大きな径をもって形成されている為、ケーブル取付軸65及びブレーキケーブルをスライド移動可能に挿通することができる。
【0041】
収容部材60の前面部における下端縁には、センサ取付部62が、収容部材60の後方側に向かって突出形成されており、張力検知部50を構成する張力検知スイッチ80がネジ等によって取り付けられる。
【0042】
ケーブル取付軸65は、ブレーキケーブルに対して取り付けられる軸状の部材であり、後端部分にフランジ部66を有している。当該ケーブル取付軸65は、後述する規制部材70の挿通孔71を、規制部材70の後方から挿通して取り付けられる。フランジ部66は、ケーブル取付軸65の外表面における後端部分において、径方向外側に向かって突出形成されており、挿通孔71の内径よりも大径を為している。従って、ケーブル取付軸65及びブレーキケーブルが、規制部材70に対して相対的に前方側へ移動した場合には、フランジ部66が規制部材70に当接し、規制部材70を移動させる(
図5、
図6参照)。
【0043】
そして、本実施形態に係るケーブル取付軸65は、ブレーキケーブルに対する固定位置を加減することで、車種の違いによる張力検知部50の取付位置の違いを吸収するほか、ブレーキケーブルから規制部材70に加えられる張力の検知タイミングを調節することができる。
【0044】
そして、規制部材70は、収容部材60内部において、ケーブル取付軸65及びブレーキケーブルを挿通した状態で、張力検知部50の前後方向に移動可能に配設されており、収容部材60に取り付けられた張力検知スイッチ80の検知する際に用いられる。当該規制部材70は、平面視で前方側が開放された略コ字状に金属板材を折り曲げることによって構成されており、挿通孔71と、規制片72と、ボルト支持片73と、作動用ボルト74とを有している。
【0045】
図4〜
図6に示すように、当該規制部材70の後面部には、挿通孔71が、その中央部分に形成されている。当該挿通孔71は、ケーブル取付軸65及びブレーキケーブルの外径よりも大きく、且つ、フランジ部66の外径よりも小さな径をもって形成されている為、ケーブル取付軸65及びブレーキケーブルを、ある程度、スライド移動可能に挿通し、規制部材とケーブル取付軸65のフランジ部66と接触した時点で、ブレーキケーブルの張力を作用させることができる。即ち、当該規制部材70は、ブレーキケーブルからの張力に従って、コイルスプリング75を圧縮し、コイルスプリング75の付勢力に対抗しながら、張力が付勢力よりも大きくなった時点で、張力検知部50の前方側(張力検知スイッチ80側)に向かって移動し得る。
【0046】
規制部材70の後面部における左右両端縁には、規制片72が形成されており、金属板材を張力検知部50の前方側に折り曲げることによって、前方に突出するように形成されている。当該規制片72は、収容部材60の内、操作レバー10の左右両側に沿って延びる内面に沿って延びている。
図6に示すように、収容部材60内部で規制部材70が移動すると、規制片72は、その先端が収容部材60の前面部に当接することで、前記規制部材70の前方への移動を規制し、過剰な張力がコイルスプリング75や張力検知スイッチ80等に作用し、張力検知部50の故障や破損を招来することを防止する。
【0047】
図4に示すように、各規制片72には、突条部72Aが、規制部材70の左右方向外側に向かって突出し、且つ、張力検知部50の前後方向に沿って形成されている。上述したように、各規制片72は、収容部材60の内、操作レバー10の左右両側に沿って延びる内面に沿って延びている為、各突条部72Aは、当該収容部材60の内面と部分接触し得る。これにより、規制部材70における突条部72Aは、収容部材60の内部を、規制部材70が移動する際に生じる摩擦抵抗を、面接触する場合に比べて低減し得る。又、突条部72Aは、規制片72の前後方向に沿って延びている為、当該規制片72の剛性を高める機能も果たしている。
【0048】
規制部材70の後面部における下端縁には、ボルト支持片73が、規制部材70の下方に向かって突出形成されており、作動用ボルト74を取り付け可能に構成されている。当該ボルト支持片73は、収容部材60のセンサ取付部62に取り付けられた張力検知スイッチ80の検知軸81に対して、作動用ボルト74が対向するように保持する。従って、ボルト支持片73に対する作動用ボルト74の取付態様を加減することで、車種の違いによる張力検知部50の取付位置の違いを吸収するほか、ブレーキケーブルから規制部材70に加えられる張力の検知タイミングを微調整することができる。
【0049】
コイルスプリング75は
、収容部材60内部において、収容部材60と規制部材70の間に配設されている。当該コイルスプリング75は、ケーブル取付軸65の外径よりもやや大きな巻径で形成されており、ブレーキケーブルに取り付けられたケーブル取付軸65によって挿通されている。当該コイルスプリング75は、収容部材60と規制部材70の間において、収容部材60内部から規制部材70を後方側へ付勢している。
【0050】
張力検知スイッチ80は、ブレーキケーブルに生じた張力を検知する為のマイクロスイッチであり、ブレーキケーブルに生じた張力によって、収容部材60内部における規制部材70の相対的な距離が所定値以下となった場合に押圧される検知軸81を有している。当該張力検知スイッチ80は、検知軸81が張力検知部50の後方側を向くように、収容部材60のセンサ取付部62に対してネジ等によって取り付けられ、検知軸81が規制部材70のボルト支持片73に支持された作動用ボルト74と対向している。
【0051】
操作レバー10を引き起こし、ブレーキケーブルの張力を発生させると、規制部材70は、ブレーキケーブルの張力に従って、収容部材60の内部を前方側へ向かって移動し、規制部材70の作動用ボルト74と、張力検知スイッチ80の検知軸81が接近し、検知軸81を張力検知スイッチ80に対して押し込む。張力検知スイッチ80は、この検知軸81の変位によって、ブレーキケーブルにおける張力の発生を検知し得る。
【0052】
(パーキングブレーキの作動及び解除)
以上のように構成されたパーキングブレーキ装置1を用いて、パーキングブレーキを作動させる際又はパーキングブレーキの作動を解除する際の各部の動作について説明する。
【0053】
先ず、パーキングブレーキを作動させ、車両に制動力を作用させる場合について説明する。この場合、運転者は、パーキングブレーキ装置1において、操作レバー10を作動方向に回動操作する。具体的には、運転者は、操作レバー10のグリップ部11を把持し、上方に引き上げる。これにより、操作レバー10は、回動軸25を中心として、上方(即ち、
図1中、時計回り)に向かって回動する。
【0054】
操作レバー10の作動方向への回動に伴って、操作レバー10に連結されたブレーキケーブルが引っ張られる為、ブレーキケーブルの他端側に連結されたパーキングブレーキが作動し、車両に対して制動力が付与される。
【0055】
そして、操作レバー10の作動方向の回動に伴って、ポール30は揺動し、ラチェット35の歯部36を順次乗り越える。その後、ポール30は、操作レバー10の作動方向への回動が停止された時点で、ラチェット35の歯部36との噛み合いを維持し、操作レバー10の解除方向への回動を規制する。操作レバー10の回動が規制されることにより、ブレーキケーブルの状態も維持され、パーキングブレーキの作動状態が維持される。
【0056】
続いて、作動しているパーキングブレーキを解除し、車両に作用している制動力を除去する場合について説明する。この場合、運転者は、操作レバー10を一度作動方向に回動操作しつつ、レリーズノブ16の押込み操作を行い、レリーズノブ16を操作レバー10に押し込んだ状態で解除方向(
図1中、反時計回り)に回動操作する。
【0057】
操作レバー10を作動方向に回動操作しつつ、レリーズノブ16の押込み操作を行った場合、レリーズロッド15は、スプリング17の付勢力に抗して、操作レバー10の後方側にスライド移動する。これにより、ポール30が揺動し、ポール30の係止爪31とラチェット35の歯部36との噛み合いが解除される。この状態になることで、操作レバー10は、解除方向への回動操作が可能な状態となる。
【0058】
操作レバー10の解除方向への回動に伴って、操作レバー10に連結されたブレーキケーブルが緩められる為、ブレーキケーブルの他端側に連結されたパーキングブレーキの作動が解除され、車両に対する制動力が除去される。
【0059】
(パーキングブレーキの作動及び解除に伴う張力検知部50の動作)
上述したように、操作レバー10を引き上げ、作動方向に回動操作すると、ブレーキケーブルによってコイルスプリング75に加えられる張力が増加し始める。そして、ブレーキケーブルの張力がコイルスプリング75の付勢力を超えると、ブレーキケーブルの引っ張りによって、コイルスプリング75が圧縮し、規制部材70が変位していく(
図5、
図6参照)。そして、収容部材60内部における規制部材70の位置が前方側の所定位置に移動すると、張力検知スイッチ80の検知軸81は、規制部材70における作動用ボルト74によって押圧される。これにより、張力検知スイッチ80の接点は導通状態となる為、張力検知部50は、ブレーキケーブルに生じた張力を検知し得る。
【0060】
尚、規制部材70が張力検知スイッチ80の検知軸81を押し始めるタイミングは、ボルト支持片73に対する作動用ボルト74の螺着量で調節できる。又、ブレーキケーブルの張力に対抗するコイルスプリング75の付勢力によっても、張力検知スイッチ80による検知タイミングを調整することができる。即ち、コイルスプリング75の付勢力を、コイル巻きにする線材の断面形状、大きさ、巻半径、巻数又はピッチの選択によって調整してもよいし、収容部材60のセンサ取付部62に対する張力検知スイッチ80の位置関係によっても調節できる。
【0061】
ブレーキケーブルの張力がコイルスプリング75の付勢力を大きく超え、コイルスプリングを圧縮していくと、
図6に示すように、規制部材70における各規制片72の先端は、収容部材60の前面部分に当接することになる。この規制片72の先端と収容部材60前面部分との当接により、収容部材60内部における規制部材70の前方移動は、各規制片72によって規制される。収容部材60内部における規制部材70の位置が規制されるので、収容部材60に取り付けられた張力検知スイッチ80と、規制部材70に支持された作動用ボルト74との位置関係も規制される。即ち、ブレーキケーブルの張力がコイルスプリング75の付勢力を大きく超えた場合であっても、張力検知スイッチ80の検知軸81が、規制部材70の作動用ボルト74との当接によって、必要以上に押し込まれることはなく、張力検知スイッチ80を含む張力検知部50の破損や故障を防止し得る。
【0062】
そして、操作レバー10を下げ、解除方向に回動操作すると、ブレーキケーブルによってコイルスプリング75に加えられる張力が減少していく為、規制部材70は、コイルスプリング75の付勢力によって、収容部材60内部における後方側へ変位していく。これにより、規制部材70における作動用ボルト74は、張力検知スイッチ80の検知軸81から離間していく為、張力検知部50は、ブレーキケーブルに生じた張力が所定値未満に低下したことを検知し得る。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係るパーキングブレーキ装置1は、操作レバー10と、ベース部材20と、張力検知部50とを有しており、操作レバー10を回動軸25周りに回動させた場合にブレーキケーブルを引っ張ることにより車両の制動装置を作動させ、張力検知部50によって、前記操作レバー10の回動に伴って前記ブレーキケーブルに生じた張力を検知するように構成されている。
【0064】
当該パーキングブレーキ装置における張力検知部50は、収容部材60と、ケーブル取付軸65と、規制部材70と、コイルスプリング75と、張力検知スイッチ80とを有しており、操作レバー10の回動に伴ってブレーキケーブルに生じた張力によって、コイルスプリング75の付勢力に抗して前記収容部材60と前記規制部材70との相対的な距離を変化させて、前記張力検知スイッチ80の検知軸81を介して、ブレーキケーブルに生じた張力を検知するように構成されている(
図5、
図6参照)。
【0065】
図6に示すように、当該張力検知部50における規制部材70は、前記ブレーキケーブルに生じた張力による移動方向(張力検知部50における前方側)に向かって突出形成された規制片72を有しており、前記収容部材60と前記規制部材70との相対的な距離を、前記所定値よりも小さな規制値(即ち、張力検知スイッチ80における検知軸81の正常な変位範囲を示す値)に規制する。従って、当該パーキングブレーキ装置1によれば、ブレーキケーブルに過剰な張力が生じた場合であっても、規制部材70の規制片72と収容部材60の協働によって、張力検知スイッチ80の検知軸81を必要以上に押し込むことはなく、張力検知スイッチ80の検知軸81を当該過剰な張力から保護して、張力検知部50の故障や破損を防止し得る。又、張力検知部50をこのように構成することによって、張力検知スイッチ80の検知軸81を過剰な張力から保護する為に、ケーブル取付軸65に段付き形状や突出形状を形成する必要がなくなり、コイルスプリング75の大径化を抑制することができる。これにより、張力検知部50の小型化に対応することも可能となる。
【0066】
そして、当該パーキングブレーキ装置1によれば、前記規制部材70における前記規制片72の先端は、前記ブレーキケーブルに生じた張力によって、前記規制部材が前記収容部材の内部を移動し、前記収容部材の内壁面に当接する。これによって、ブレーキケーブルに生じた過剰な張力から、張力検知スイッチ80の検知軸81を保護することができ、より確実に、張力検知部50の故障や破損を防止し得る。
【0067】
又、
図4等に示すように、前記規制部材70における前記規制片72は、前記収容部材60の内側面に対して対向する面に、当該収容部材60の内側面に向かって突出形成された突条部72Aを有している為、規制部材70と収容部材60との接触部分を小さくすることができる。当該パーキングブレーキ装置1によれば、ブレーキケーブルに生じた張力によって規制部材70が収容部材60の内部を移動する際に、規制部材70に作用する摩擦抵抗を低減することができ、もって、張力検知部50によるブレーキケーブルの張力の発生を精度よく検知することができる。
【0068】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態においては、各規制片72には、前後方向に延びる突条部72Aを形成していたが、この態様に限定されるものではなく、種々の態様を採用し得る。規制片72から張力検知部50の外側方向へ突出していれば、点状の突起を形成してもよく、その数も単数であってもよいし、複数であってもよい。