特許第6438963号(P6438963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6438963スクリーンされたコイルを備える広帯域ロゴスキートランスデューサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438963
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】スクリーンされたコイルを備える広帯域ロゴスキートランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20181210BHJP
   H01F 38/28 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   G01R15/18 A
   H01F38/28
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-545807(P2016-545807)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-504022(P2017-504022A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014079269
(87)【国際公開番号】WO2015104189
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年7月4日
(31)【優先権主張番号】1400197.8
(32)【優先日】2014年1月7日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516203265
【氏名又は名称】パワー エレクトロニック メジャメンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ヒューソン、クリストファー、レネ
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−174769(JP,A)
【文献】 特開2006−329826(JP,A)
【文献】 特開2003−050254(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101126785(CN,A)
【文献】 特開2013−061329(JP,A)
【文献】 米国特許第06614218(US,B1)
【文献】 特開2004−061329(JP,A)
【文献】 特開2013−160638(JP,A)
【文献】 特開平06−213937(JP,A)
【文献】 特開2010−256093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
H01F 38/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流測定装置であって、
第1端部と第2端部とを有する電気的導体コイルと、第1スクリーンと、第2スクリーンとを備え、
前記第1スクリーンは、前記コイルを取り囲み、前記コイルの前記第2端部から前記コイルの前記第1端部の近くに至る電流経路を与えるように構成され、
前記第2スクリーンは、前記第1スクリーンと前記コイルとを取り囲み、電気的に接地されている
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流測定装置であって、
前記コイルはループを構成し、前記第1端部は前記第2端部の近くに位置する
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電流測定装置であって、
前記ループは開いているか開くことができ、前記第1端部と前記第2端部との間に隙間を形成する
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記導体コイルはロゴスキーコイルを備える
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電流測定装置であって、
前記ロゴスキーコイルは、クリップ−アラウンドコイルか、閉ループコイルか、プリント回路ロゴスキーコイルか、または非導電性巻型に巻かれたコイルか、のいずれかである
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記第1スクリーンの第1端部が前記コイルの前記第1端部の近くに位置し、前記第1スクリーンの第2端部が前記コイルの前記第2端部の近くに位置する
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電流測定装置であって、
前記第1スクリーンの前記第2端部は前記コイルの前記第2端部に電気的に接続される
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記第2スクリーンの第1端部が前記コイルの前記第1端部の近くに位置し、前記第2スクリーンの第2端部が前記コイルの前記第2端部の近くに位置する
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記第2スクリーンは、前記第1スクリーンおよび前記コイルから電気的に絶縁されている
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記第1スクリーン、かつ/または、前記第2スクリーンは、静電スクリーンである
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記第1スクリーン、かつ/または、前記第2スクリーンは、外部導体から前記コイルへの容量結合を低減するように構成される
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記電流測定装置は、巻型を備え、
前記コイルが前記巻型の周囲に位置する
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記電流測定装置は、電気的積分器を備える
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電流測定装置であって、
前記積分器の第1入力端子が、前記導体コイルの前記第1端部に電気的に接続される
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の電流測定装置であって、
前記積分器の第2入力端子が、前記第1スクリーンの前記第1端部に電気的に接続される
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか一項に記載の電流測定装置であって、
前記積分器は出力電圧を与えるように配置され、
前記出力電圧は実質的に、前記導体コイルの前記第1端部と、前記第1スクリーンの前記第1端部との間の、電位差の時間積分に比例する
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項17】
電気導体を流れる電流を測定する方法であって、
請求項1から16のいずれか一項に記載の電流測定装置を用いる
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロゴスキーコイルを用いた電流測定装置に関する。特に、高周波電圧やコイルに近接した導体上の過渡電圧に起因する電流測定障害を防ぐため、コイルの周囲に、単数または複数の静電スクリーンまたはシールドを取り付けることに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願では、スクリーンという用語が使われ、これはシールドという用語と同義であると理解される。更に、トランスデューサは、測定装置の意味で使われる。
【0003】
ロゴスキートランスデューサをパワー電子機器における電流測定装置として使えるようにするためには、ロゴスキーコイルは薄い(すなわち、断面の直径が小さい)ことが好ましい。これにより、幾何学的に狭いところに挿入することができ、更に非常に高速に変化する電流を測定する目的でロゴスキーデバイスを広帯域化することができる。しかしこれはコイルのデザインに制約を課すことになる。本発明の目的は、必要なスクリーニングを実現すると同時に、電流測定のための広い帯域を与える、ロゴスキーコイルのデザインを提供することにある。
【0004】
ロゴスキートランスデューサの基本動作は既知である。ロゴスキートランスデューサのデザインと動作の詳細は、例えば以下に見出すことができる。「Wide bandwidth Rogowski current transducers−Part1: The Rogowski Coil」European Power Electronics Journal Vol3 No1 March 1993 pp51−59 by W F Ray & RM Davisおよび「Wide bandwidth Rogowski current transducers−Part 2:The Integrator」European Power Electronics Journal Vol 3 No 2 June 1993 pp 116−122, by W F Ray。
【0005】
一般にロゴスキートランスデューサと呼ばれるものは、ロゴスキーコイルと積分器とを備える。ロゴスキーコイルは、構造(ここでは巻型と呼ぶ)に巻き付けられた、実質的に均一な巻数密度N(turns/m)を持つコイルのことである。巻型は、断面積A(m)の非磁性体(典型的にはプラスティック)を備える。コイルは、実質的に閉ループを形成するように構成される。コイルは複数の巻数を持つ。電気導体中の電流値I(Amps)を測定する目的で、コイル内に電圧E(V)を誘起するため、ロゴスキーコイルは導体を取り囲んで置かれる。コイル内に誘起される電圧は、測定電流の変化率dI/dtに比例し、以下の式に従う。
【数1】
ここで、H=μ・NAはコイルの感度(Vs/Amp)で、μは巻型材料の透磁率である(通常は4π・10−9Henry/m)。
【0006】
通常コイルの1つの端部は、コイルの中心軸に沿ってコイル内部を通る導線によって、もう1つの端部に戻る。この導線の端部と、前記コイルのもう1つの端部とは、コイルの2つの端子を構成し、積分器に接続される。積分器からの出力電圧Voutは、以下の式で与えられる。
【数2】
ここでTは積分器の時定数で、Eはコイルの終端電圧である。
【0007】
一般に終端電圧Eは、実質的に誘起電圧Eに等しい。従ってトランスデューサの総出力電圧Voutは測定電流に比例し、以下の関係に従うことが即座に導かれる。
【数3】
【0008】
コイル巻線はコイルの往路を構成し、中央に位置する導線は帰路を構成する。コイルの帰路は、コイル面内に正味の磁気ループが存在しないようにするため、往路の幾何学的中心を通る。さもなければ、コイルループの外側にある導体中の電流が、本来測定すべき電流に影響してしまう。
【0009】
帰路補償は、正しいロゴスキーコイルの設計における基本的要請であり、以下に記載されている。「Machinable Rogowski Coil、Design and Calibration」IEEE Transactions on Instrumentation & Measurement、Vol45 No2 April 1996 pp511−515、by J D Rambos。この目的を達成するための他の構成としては、2つの巻線を持つものもある。この場合、片方の巻線は他方の巻線の内部にあり、片方はコイルの往路を与え、他方は帰路を与える。
【0010】
測定誤差の更なる原因は、ロゴスキーコイルに近い外部導体上における電圧の存在である。この電圧が比較的高い周波数で変化すると、外部導体とコイルとの間の容量結合に起因して、コイル内部に変位電流が流入して合流し、電圧Voutの測定誤差を引き起こす。一般にこの誤差を低減あるいは排除するために、コイルの周囲にスクリーンを配備する。これは以下に記載されている。「The effect of electrostatic screening of Rogowski coils for wide−bandwidth current measurement in power electronic applications」、IEEE Power Electronic Specialists Conference Aachen、 Germany、June 2004 pp1143−48、by C R Hewson and W F Ray。
【0011】
スクリーンは、コイルを取り囲んで短絡ターンを構成すべきではない。なぜなら、より高周波では、測定電流によってスクリーン内に電圧と電流が誘起され、これにより高周波帯域幅が著しく縮小するからである。従ってスクリーンには、何らかの隙間あるいは絶縁があることが望ましい。更に、効率的であるためには、スクリーンは比較的低いインピーダンスを持つべきである。さもなければスクリーン内に電圧が発生し、これがコイルと容量結合するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
コイルにスクリーンを配備することの欠点は、これによりコイルのキャパシタンスが増加する点にある。これは、コイルを小型の電気部品として使えるようにする目的でコイル全体の断面の直径を制限する場合、とりわけあてはまる。全体の直径が与えられた上でスクリーンに余裕を与えるためには、コイルの直径を縮小する必要があり(スクリーンされていないコイルと比べて)、これにより、コイルとスクリーンとの間のキャパシタンスに加えて、コイルと内側帰路導線との間のキャパシタンスが増加する。
【0013】
キャパシタンスが増加すると、コイルの帯域幅が減少する。これは、コイルの巻数密度を減らして、コイルインダクタンスを減らすことにより補償することができる。しかしながらこれはコイルの感度Hを低下させ、従ってロゴスキーコイル全体の信号対雑音比が低下する。
【0014】
代替的な方策は、中心帰路導体をなくし、スクリーンを帰路導体として使うことにより、コイルキャパシタンスの源の一つを除去することである。これは以下に記載されている。「On the high−frequency response of a Rogowski coil」Journal of Nuclear Energy Part C、1963、Vol.5、pp285 to 289、by J Cooper。これには、特にコイルの断面直径が小さいとき、コイルの製造がより容易になるという利点もある。
【0015】
スクリーンを帰路導体として使うことには、いくつかの欠点がある。最初の欠点は、どうやってスクリーンをコイルおよび積分器につなぐか、ということに関係する。スクリーンは信号電流を伝達するので、積分器の入力側につなぐ必要がある。一般にこの入力側は、外部過渡電圧との容量結合に起因して発生する変位電流を地中に流すため、接地されている。しかし実際には積分器の接地面はいくらかのインピーダンスを持っているだろうから、やはり外部過渡電圧が原因となって、いくらかの干渉が発生する。
【0016】
更なる欠点は、低いインピーダンスを持つ完全なスクリーンを作ることは、実際には難しいということである。例えば、スクリーンは螺旋状に巻かれた銅ストリップであってよいが、短絡ターン効果を防ぐために、ターンの間に隙間を置く必要がある。この隙間により、コイルを通っていくらかの干渉電流が流れる。更にスクリーンは螺旋状の巻線に起因するインダクタンスを持つが、これは高周波において特に大きな影響を与える。
【0017】
本発明者は、スクリーンを2つの目的、すなわち信号の帰路導体の目的と、干渉電流の接地路の目的で使うとき、欠点が存在することを認識した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明は独立請求項に述べられる。選択的な特徴は従属請求項に述べられる。
【0019】
本発明者は、上記の欠点は、2つの分離したスクリーンを使うことにより対処できることを確認した。すなわち、干渉電流を地中にバイパスするための外側スクリーンと、コイル帰路として機能する内側スクリーンである。これはコイルの複雑さとコストを増加させる反面、いくつかの利点を持つ。すなわち二重のスクリーニングにより干渉が減少するだけでなく、2つのスクリーンの両方を積分器の入力側に接続する必要はない。
【0020】
一見、2つのスクリーンはコイルキャパシタンスを著しく増加させるように思われるかもしれないが、これは事実ではないことが分かった。2つのスクリーンの間のキャパシタンスは、ロゴスキートランスデューサの動作に影響しない。単一のスクリーンしか使わない場合に比べて(全体の径が与えられたとき)内側スクリーンの直径が小さくなるのは事実かもしれないが、その違いは比較的小さくすることができる。いずれにしてもこれは、より低いインダクタンスを持つより直径の小さいコイルを使うことにより補償することができ、その結果広い帯域幅を確保することができる。
【0021】
ある態様では、電流測定装置であって、第1端部と第2端部とを有する電気導体コイルと、第1スクリーンと、第2スクリーンとを備える電流測定装置が与えられる。
【0022】
ある実施形態では、前記コイルはループを形成し、前記第1端部は前記第2端部の近くに位置する。ある実施形態では、前記ループは開いているか開くことができ、前記第1端部と前記第2端部との間に隙間を形成する。ある実施形態では、前記導体コイルはロゴスキーコイルを備える。ある実施形態では、前記ロゴスキーコイルは、クリップ−アラウンドコイルか、閉ループコイルか、プリント回路ロゴスキーコイルか、または非導電性巻型に巻かれたコイルか、のいずれかである。
【0023】
ある実施形態では、前記第1スクリーンは、前記コイルの前記第2端部から前記コイルの前記第1端部の近くに至る電流経路を与えるように構成される。ある実施形態では、前記第1スクリーンの第1端部が前記コイルの第1端部の近くに位置し、前記第1スクリーンの第2端部が前記コイルの前記第2端部の近くに位置する。ある実施形態では、前記第1スクリーンの前記第2端部は前記コイルの前記第2端部に電気的に接続される。ある実施形態では、前記第1スクリーンの前記第2端部と前記コイルの前記第2端部との接続を除いては、前記第1スクリーンは前記コイルから電気的に絶縁されている。ある実施形態では、前記第1スクリーンの前記第1端部は、電気的に接地されている。ある実施形態では、前記第1スクリーンは、螺旋状ストリップを備える。
【0024】
ある実施形態では、前記第2スクリーンの第1端部が前記コイルの前記第1端部の近くに位置し、前記第2スクリーンの第2端部が前記コイルの前記第2端部の近くに位置する。ある実施形態では、前記第2スクリーンは電気的に接地されている。ある実施形態では、前記第2スクリーンは、前記第1スクリーンおよび前記コイルから電気的に絶縁されている。ある実施形態では、前記第2スクリーンは編組を備える。
【0025】
ある実施形態では、前記第1スクリーン、かつ/または、前記第2スクリーンは、電気的導体である。ある実施形態では、前記第1スクリーン、かつ/または、前記第2スクリーンは、静電スクリーンである。ある実施形態では、前記第1スクリーン、かつ/または、前記第2スクリーンは、シールドである。ある実施形態では、前記第1スクリーン、かつ/または、前記第2スクリーンは、外部導体から前記コイルへの容量結合を低減するように構成される。
【0026】
ある実施形態では、前記第1スクリーンは、前記コイルを取り囲む。ある実施形態では、前記第2スクリーンは、前記第1スクリーンと前記コイルとを取り囲む。ある実施形態では、内側絶縁体が、前記コイルと前記第1スクリーンとの間に位置する。ある実施形態では、中間絶縁体が、前記第1スクリーンと前記第2スクリーンとの間に位置する。ある実施形態では、外側絶縁体が、前記第2スクリーンを取り囲む。
【0027】
ある実施形態では、前記電流測定装置は、巻型を備え、前記コイルが前記巻型の周囲に位置する。ある実施形態では、前記巻型は、前記コイルの前記第1端部から前記コイルの前記第2端部に延びている。ある実施形態では、前記巻型の第1端部が前記コイルの第1端部の近くに位置し、前記巻型の第2端部が前記コイルの第2端部の近くに位置する。ある実施形態では、前記巻型は実質的に非磁性体である。ある実施形態では、前記巻型は実質的に非伝導体である。ある実施形態では、前記巻型は、その長さ方向に沿って一様な断面を有する。ある実施形態では、前記巻型は、円形の断面を有する巻型外部表面を備える。ある実施形態では、前記巻型は、その長さ方向に沿った中心軸を定義する。ある実施形態では、前記第1スクリーンと、前記第2スクリーンと、前記内側絶縁体と、前記中間絶縁体と、および前記外側絶縁体のいずれか若しくはすべては、同心であり、かつ/または、環状の断面を有する。ある実施形態では、前記巻型(その中心軸を含む)はループを形成する。ある実施形態では、前記ループは開閉可能であり、これにより、測定電流が流れる電気導体が、前記ループを貫いて延びることができる。
【0028】
ある実施形態では、前記電流測定装置は、電気的積分器を備える。ある実施形態では、前記積分器は、演算増幅器積分器である。ある実施形態では、前記積分器の第1入力端子が、前記導体コイルの前記第1端部に電気的に接続される。ある実施形態では、前記積分器の第2入力端子が、前記第1スクリーンに電気的に接続される。ある実施形態では、前記第1スクリーンの部分であって、前記積分器の前記第2入力端子に最も近い部分は、前記コイルの前記第1端部の近くに位置する。ある実施形態では、前記第1スクリーンの前記部分は、前記第1スクリーンの前記第1端部である。ある実施形態では、前記積分器の前記第2入力端子は、前記第1スクリーンの前記第1端部に電気的に接続される。ある実施形態では、前記積分器の前記第2入力端子は、地面と電気的に接続される。ある実施形態では、前記積分器は、出力電圧を与えるように構成され、前記出力電圧は実質的に、前記積分器の前記第1入力端子と、前記積分器の前記第2入力端子との間の、電位差の時間積分に比例する。
【0029】
ある態様では、上記の態様、かつ/または、実施例のいずれかによる電流測定装置を用いて、電気導体を流れる電流を測定する方法が与えられる。
【0030】
ある態様では、実質的に本明細書に記載された、または添付図面に示された、装置、システム、機器、または方法が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
これから、特定の例と実施形態について、以下の図面を参照して述べる。
図1】ロゴスキーコイルと電気的積分器とを備えるロゴスキートランスデューサを概略的に示す。
図2】これもロゴスキーコイルと電気的積分器とを備えるロゴスキートランスデューサを概略的に示し、隣接した金属プレート(交流電源を持ち、コイルと静電結合する)を更に示す。
図3】周囲を導体スクリーンで囲まれ、中央帰路導体を備えたロゴスキーコイルを示す。
図4】スクリーンされたロゴスキーコイルの等価回路と、その積分器への接続を示す。
図5】スクリーンされたロゴスキーコイルの等価回路と、その積分器への接続の代替型を示す。
図6】巻き貝型スクリーンを示す。
図7】螺旋型スクリーンを示す。
図8】編組スクリーンを示す。
図9】周囲を2つの導体スクリーンで囲まれ、中心帰路導体を備えないロゴスキーコイルを示す。
図10】螺旋形内側スクリーンと編組外側スクリーンを示す、図9のロゴスキーコイルの別の概観である。
図11図9のスクリーンされたロゴスキーコイルの等価回路と、その積分器への接続を示す。
図12】多層PCBに取り付けられたロゴスキーコイルと内側帰路導体を示す。
図13図12のロゴスキーコイルと関連する静電スクリーンの平面図。
図14図13のロゴスキーコイルとスクリーンの断面図で、PCB層を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、ロゴスキーコイルと電気的積分器とを備えるロゴスキートランスデューサを概略的に示す。コイル11は、プラスティック製の巻型に巻き付けられている。巻型は、円形の断面を持つドーナツ状であり、環状トーラスを形成する。巻型のドーナツ状ループには切れ目があり、これにより開閉可能なループを形成する。コイル11が巻型に巻き付けられるとき、これは「クリップ−アラウンド」コイルと呼ばれる。巻型のループは開くことができ、これによりループは、自身を貫く導体を包囲する、または、取り囲むことができる。これに続けてループは閉じ、内部の導体が動作する。コイル巻線は、固定端13と自由端14とを有する。固定端13と自由端14は、巻型の切れ目のそれぞれの側面に位置する。コイルは、巻型の周りに、切れ目の一方の側から他方の側まで延びている。切れ目を横断して、隙間が残っている。固定端13は積分器12に接続される。自由端14は、巻型の中心軸に沿った穴の中(円形断面の中央)にある導線15を用いて、自由端13に戻される。これにより、前述の帰路補償が与えられる。
【0033】
ロゴスキートランスデューサの振る舞いは、前述の式(1)から(3)で表される。図1に示す電流波形は、方形波である。これはロゴスキーコイルの基本的動作を表すのに便利である。しかし実際にはこの波形は任意の形であり得るし、かつ/または、不連続パルスを含み得ることは、当業者に理解できるだろう。
【0034】
ロゴスキートランスデューサの干渉に対する感受率は図2に示される。図2図1と同様、電流が流れる導体を取り囲むロゴスキーコイルで、地面に対するの高周波交流電圧Vにさらされる金属プレートがその近傍にあるものを示す。ロゴスキーコイルは、適切なダンピング抵抗Rで終端処理され、出力電圧Voutを与えるために、接地された積分器に接続されている。コイル巻線21の端部は、通常は積分器の接地側に接続される。そして帰路導体22の端部は、積分器の入力側に接続される。ただしこれらの接続は、反対にすることもある。金属プレートとコイルとの間の容量結合Cに起因して、干渉電流Iが、コイルを貫いて接地端または積分器入力まで流れる。
【0035】
電圧Vが正弦波で、容量結合Cが均一に分布する場合、単層で稠密に詰まったコイルにおけるエラー電流I(測定電流に重畳される)は、以下で与えられる。
【数4】
ここで、fは周波数、Nはコイルの総巻数である。高周波高電圧の場合、比較的小さい電流を測定しようとするときのエラー電流は顕著なものとなり得る。例えば、f=3MHz、C=10pF、N=1000、およびV=300Vの場合、相当するエラー電流はI=28Aとなる。
【0036】
dV/dtが大きい不連続な過渡電圧があった場合、エラー電流は、測定電流波形の瞬間的な擾乱として観測される。
【0037】
典型的な積分回路を図2に示す。好適な積分回路は当業者に既知であり、アナログ型でも、インバータ型でも、非インバータ型でも、あるいはデジタル型でもよいだろう。図2に示されるインバータ型アナログ積分器は、積分器の低周波利得を制限するための付加的部品を備えていてもよい(例えば、積分器のキャパシタを横断して接続される抵抗など)。簡単のため、これらの部品は図示していない。終端抵抗Rはコイルと実質的に同じ特性インピーダンスを持つべきだが、これも当業者には既知であろう。
【0038】
既に述べたように、電圧干渉の効果は、コイルにスクリーンを適用することにより低減できる。スクリーンの例は図3に示される。好ましくは、スクリーンはコイルを完全に取り囲み、外部導体からのいかなる結合キャパシタンスもコイル上ではなくスクリーン上で終端されるべきである。便宜上ロゴスキーコイルは、粗に巻かれた(すなわち、巻ピッチが導線直径より大きい)ものとして示すが、これに代えて各ターンが隣のターンに接する稠密なものであってもよい。
【0039】
図4は、ロゴスキーコイルとスクリーンの積分器への接続の典型例を示す。好ましくは、スクリーンはコイルの固定端で地面に接続される。すると干渉電流Iはスクリーンを通って地中に流れ、積分器に影響しない。図1に示されるように、測定電流に起因してコイルに誘起される電圧は、コイルの固定端において、コイル端部と内側帰路導体との間に観測される。
【0040】
しかしながら、実際には積分器の入力側と出力側との間にはいくらかの接地面抵抗Rが存在する。従ってコイル信号と擾乱電流Iとに共通するモードの経路が存在し、これが出力における干渉の原因となる(スクリーン効果によって低減はされるが)。
【0041】
図5はロゴスキーコイルの積分器への接続の改良型を示す。この場合、スクリーンの接続は積分器の接地された出力端子においてなされ、Rに起因する干渉は回避される。
【0042】
導入部で述べたように、スクリーンを適用することに伴う欠点は、コイルの分布キャパシタンスが増加することである。図3を参照して、導線直径dwireとスクリーン直径dが一定だとする。スクリーンを使わない場合は、ロゴスキーコイルの厚さを増すことなく、コイルターン直径をdに等しくすることができる。コイルと内側帰路導線との間のキャパシタンスCは、比d/dwireに依存する。すなわち、この比が大きくなればなるほど、キャパシタンスは小さくなる。
【0043】
次にスクリーンを導入することによる効果を考える。より大きな値をCに与えた場合、コイルターン直径dを小さくする必要がある。更に、コイルとスクリーンとの間には、比d/dに依存する付加的なキャパシタンスCが存在する。一般にCは、Cより実質的に大きい。
【0044】
コイルの帯域幅fは概ね以下で与えられる。
【数5】
【0045】
従って、その場にあるスクリーンと同じ帯域幅を保つためには、コイルインダクタンスLを低減する必要がある。しかしこれはコイルの感度Hを低下させ、従ってトランスデューサの信号対雑音比を低下させるという欠点を持つ。
【0046】
内側帰路導線をなくし、代わりにスクリーンを帰路導線として使うことにより、キャパシタンスを低減することができる。この場合、このスクリーンは、図5のように積分器の接地された出力端子に接続されるのではなく、積分器の入力側に接続される。
【0047】
実際には、理想的なスクリーンを実現することはできない。コイルの動作の障害となるため、スクリーンは、コイルを取り囲んで短絡回路を構成してはならない。ここでは現実的なスクリーンの構成として、3つの可能性について述べる。
【0048】
(1)巻き貝型スクリーン。図6に示すように、巻き貝型スクリーンはコイルの周りに巻き付けられるが、重なり部分(overlap)を持ち、この重なり部分の内部に絶縁体がある。これにより短絡回路の問題が解決される反面、スクリーンを歪めて曲げない限り、コイルを丸く曲げてループ状にすることができない。
【0049】
(2)螺旋型スクリーン。図7に示すように、螺旋型スクリーンは、コイルの周りに螺旋状に巻き付けられた銅ストリップを備える。これによりコイルの曲げの問題が解決される反面、2つの欠点を持つ。1つは、スクリーンが銅ストリップの両側に沿って隙間を持つ点であり、これは下部のコイルとの間にいくらかの容量結合が存在することを意味する(低減はされるが)。もう1つは、螺旋状のターンに起因して、スクリーンがいくらかのインダクタンスを持つ点であり、これにより高周波では、地面への低インピーダンスの経路を与えることができない。
【0050】
(3)編組スクリーン。図8に編組スクリーンを示す。編組は一般的に、通信用同軸ケーブルで遮蔽のために使われる。しかしながら、このような用途で使われる編組は、ロゴスキーコイルのスクリーニングには適さない。なぜならこのような編組は絶縁されておらず、ロゴスキーコイルを取り囲んで短絡路を形成するからである。ロゴスキーコイルのスクリーニングで使えるためには、編組のすべてのより糸が互いに絶縁されて、スクリーンの片方または両方の端部においてのみ互いに接続されている必要がある。
【0051】
スクリーンのためのもう1つの可能性は、螺旋型スクリーンで使われるような螺旋状の巻線において、銅ストリップの代わりに扁平な編組(これは絶縁されている必要はない)を使うことである。
【0052】
上記の欠点を解決するために、ある実施形態では、2つのスクリーンが使われる。ロゴスキーコイルの帰路を与えるために、内側スクリーンが配備される。また外部導体からコイルへの容量結合を除去または低減するために、外側スクリーンが配備される。
【0053】
本実施形態によるロゴスキーコイルの断面を図9に示す。本実施形態は前述の実施形態と類似するが、相違点はその細部から明らかである。本実施形態は図4と類似した等価回路を持つが、スクリーンが1つ追加されており、中心帰路導体がない。
【0054】
巻型は、前述の実施形態ではドーナツ状だが、本実施形態では中身が完全に詰まっている。また前述のような断面の中心を貫く帰路がない。巻型の断面は円盤状である。いくつかの層が巻型を取り囲み、それぞれは巻型の断面において同心である。従って各層それ自体は、ドーナツ状の外表面を有するチューブであり、巻型の形状に従う。
【0055】
巻型に最も近い層から始めて、断面において巻型から半径方向外側に進むと、層は、コイル巻線、内側絶縁体、内側スクリーン、中間絶縁体、外側スクリーン、および外側絶縁体である。従って絶縁体は、コイル巻線と、内側スクリーンと、外側スクリーンとを分離している。各層は、その内側の層を取り囲み、その外側の層に取り囲まれている。隣接する層同士は互いに接触している。各層は、巻型の全長にわたって、断面において連続的に配備されている。
【0056】
巻型は非磁性体であり、本実施例ではPTFEである。巻型はループ内で屈曲可能である。
【0057】
図9に示すように、コイル巻線は、比較的低いインダクタンスを持つよう、粗な間隔を開けて巻かれる。コイル巻線は、実質的に一定の巻数密度を持つ。
【0058】
コイルと内側スクリーンとの間の誘電体(すなわち内側絶縁体)は、低い誘電率を持つ。これにより、コイルと内側スクリーンとの間のキャパシタンスが最小化される。内側絶縁体は、PTEFのプラスティック製チューブである。これはコイルにぴったりと合う。中間絶縁体と外側絶縁体とは、それぞれヒートシュリンクにより形成された層である。
【0059】
内側スクリーンは、図7および前述の説明のような、螺旋型スクリーンである。銅ストリップは、誘電体に(すなわち内側絶縁体に)接着剤で接着される。
【0060】
内側スクリーンと外側スクリーンとの間のキャパシタンスは、トランスデューサの振る舞いにほとんど影響しない。従って、外側スクリーンの直径を、内側スクリーンの直径よりも著しく大きくする必要はない。内側スクリーンが比較的大きい直径を持つことには、ロゴスキーコイルのキャパシタンスを低減するという利点がある。
【0061】
外側スクリーンは、図8および前述の説明のような、編組スクリーンである。編組は、誘電体(すなわち中間絶縁体)の周囲にスリーブとして挿入することができ、誘電体に比較的ぴったりと合うように軸方向に延伸することができる。編組は、外側絶縁体に取り囲まれている。
【0062】
ある実施形態では、編組スクリーンは、絶縁された編組(エナメルのような)を備える。ある実施形態では、中間絶縁体が存在せず、内側スクリーンと外側スクリーンとは隣接層である。
【0063】
図10はロゴスキーコイルの分割図で、コイル巻線と、内側スクリーン(螺旋)と、外側スクリーン(編組)とを示す。図1に示すように、コイルは全長にわたって、測定電流を取り囲むループを形成する。
【0064】
図11は、コイルと積分器との接続を示す。コイルは等価回路によって表される。この等価回路では、H・dI/dtが、測定電流により誘起される電圧を表す。コイル巻線の一端(一般には図1に示す固定端)が積分器の入力111に接続され、他端(自由端)が内側スクリーンに(内側スクリーンの端のところで)接続される。内側スクリーンは帰路を構成する。巻線とスクリーンとは同心であるため、コイル面内には実質的な磁気ループが存在せず、従って外部電流からの干渉はない。スクリーンの固定端は、積分器の共通入力112に接続される。
【0065】
図示される通り、外側スクリーンは固定端のところで、積分器の出力端子113(これは外部的に接地されているべきである)に接続される。
【0066】
図示される通り、コイルは分布キャパシタンスCを持つ。コイルの帯域幅は概ね以下で与えられる。
【数6】
ここで、Lはコイルのインダクタンスである。図示される通り、内側スクリーンと外側スクリーンとの間にも分布キャパシタンスが存在するが、これは実質的にはコイルの帯域幅には影響しない。式(6)は式(5)と比較されるべきで、これにより二重にスクリーンされたコイルの更なる利点が分る。
【0067】
図5図6の単一スクリーン回路では、コイルインダクタンスLが、CとCの両方の分布キャパシタンスに対して影響する。これにより、共鳴の主モードが2つ発生し得て、これらのモードを両方とも十分減衰するために好適なダンピング抵抗Rの値を見出すことは困難となる。図11のコイルでは、共鳴の主モードは1つのみであり、適切なRの値は概ね√(L/C)である。
【0068】
図11の二重にスクリーンされたコイルはまた、単一スクリーンのコイルより良好なスクリーニングを与える。外側スクリーンに侵入するいかなる干渉電流も内側スクリーンに集められ、非常に大きな電流となって積分器を通り地中に流れる。実際には螺旋状に巻かれた内側スクリーンはいくらかのインピーダンスを持つため、変位電流の一部がコイルの自由端とコイル巻線を通って積分器の入力側に流れる。しかしながら、干渉電流のうちこの経路をたどるものの割合は非常に小さい。従って、二重にスクリーンされたコイルは、単一スクリーンのコイルに比べ、干渉に対しより強い保護を与える。
【0069】
更なる実施形態を図12から図14に示す。本実施形態はロゴスキーコイルの代替型を備え、これはプリント回路コイルとして知られる。プリント回路コイルは、ループが常に閉じており(一般に固定コイルと呼ばれる)、その断面は長方形である。このタイプのコイルは、例えば以下に記載されている。日本公開特許公報 特開2001−102230「ロゴスキーコイル」出願:1999年9月29日 公開:2001年4月13日 岡田 章、井上 悟。これは参照文献として本明細書に組み入れられる。
【0070】
図12は、典型的なプリント回路ロゴスキーコイルを示す。このタイプのコイルでは一般に、巻型としてプリント回路基板が使われる。図示される通り、各コイルターンは、基板表面上のプリント回路ストリップと、めっきした貫通孔(ストリップ同士をつないでコイルターンを形成する)と、を備える。図1に概略的に示すようにコイルは積分器に接続され、電流測定の原理は式(1)から(3)で定義したものと同じである。プリント回路ロゴスキーコイルのその他の構成を用いてもよい。
【0071】
図12では4層のPCBが使われている。すなわち図示される通り、PCBは、第1面31、第2面32、第3面33、および第4面34を持つ。既知のフォトレジストプロセスを使って、導体ストリップが外側表面(第1面31と第4面34)に堆積またはエッチングされる。これらのストリップはめっきした貫通孔39によってつながれ、基板の周囲を第1方向に進む螺旋状のコイル(長方形断面の)を形成する。
【0072】
コイルと逆方向に進む帰路導体37が、内側表面(第2面32と第3面33)に堆積される。コイルと帰路導体37とは接続され、先に説明したように、ロゴスキーコイル外部の導体の影響を最小化するための「往復」経路を与える。図1に示すように、コイル端部36と38とは積分器の入力側に接続される。
【0073】
図13図14とは、図12に示したPCBロゴスキーコイルに代わる代替的な実施形態を表す。この代替的な実施形態と図12の実施形態との違いは、帰路導体37が不要で、2つのスクリーンが追加されている点である。図14に示すように、これらのスクリーンは、PCB内部の層の上に堆積した、複数の薄い銅の層を備える。
【0074】
図13は、プリント回路コイル131と、内側スクリーン132の片面と、外側スクリーン133の片面とを示す。これらは、実際には図14に示すように一つの要素が他の要素の内部にあるのだが、ここでは明確化のためにそれぞれを並列して示す。内側スクリーン外側スクリーンとも、その両面同士は、以下の点を除いて同じである。すなわち、片方の面では、その銅層内に、スクリーンがコイルの周りで短絡ターンを構成することを防ぐための円形の隙間が存在する点だけが異なる。本実施形態におけるコイルは図12に示したものと同じもので、図11に示すように、その一方の端134が積分器の第1入力111に接続される。コイルは時計回りに進み、めっきした貫通孔135で終わる。図14に示すように、めっきした貫通孔135は、コイル端部を内側スクリーンに接続する。
【0075】
内側スクリーン132は、コイルの帰路を形成し、時計と反対方向に出力端子136まで進む。図11に示すように、出力端子136は積分器の第2入力112に接続される。内側スクリーン132の両面には、始点135と終点136とを帰路に与えるための、隙間138があるのが見て取れるだろう。
【0076】
内側スクリーンの2つの面同士は、別のめっきした貫通孔137を用いて、互いに接続される。貫通孔137のいくつかは内側スクリーン132の中心近くにあり、半径がほぼ一定の内側円形配置を構成する。それ以外の貫通穴137は半径方向に中心から遠く離れたところ(内側スクリーン132の外周近く)にあり、半径がほぼ一定の外側円形配置を構成する。これらの貫通孔137は互いに密に隣接し、図示される通り、完全なスクリーン効果を発揮できるよう、コイルの周りに隙間なく配列される。簡単のため図13ではこれらの孔のうちの限られた数だけを描いているが、実際には全周にわたって連続し、内側と外側の円形配置を形成している。
【0077】
本実施形態における内側スクリーン132はコイルと同心であり、その半径のサイズはコイルとほぼ同じである。内側スクリーン132がコイルの周りで短絡ターンを構成することを防ぐために、円形の隙間140aが含まれる。図14に示すように、これはスクリーンの片面にのみあればよい。
【0078】
図13はまた、外側スクリーン133の片面を示す。外側スクリーンの2つの面同士は、更なるめっきした貫通孔139を用いて、互いに接続される。貫通孔139は貫通孔137と同様のやり方で配置されるが、貫通孔139の内側円形配置は、貫通孔137の内側円形配置に比べて、半径的により中心に近いところにある。そして貫通孔139の外側円形配置は、貫通孔137の外側円形配置に比べて、半径的により中心から遠いところにある。内側スクリーン132と同様、貫通孔139は互いに密に隣接し、図示される通り、完全なスクリーン効果を発揮できるよう、内側スクリーンの周りに隙間なく配列される。貫通孔137と同様、簡単のため図13ではこれらの孔のうちの限られた数だけを描いている。
【0079】
本実施例における外側スクリーン133もコイルと同心である。そして内側スクリーン132に比べて、半径的によりコイルの近くまで、そして半径的によりコイルから遠くまで延びていている。内側スクリーン132と同様、外側スクリーン133がコイルの周りで短絡ターンを構成することを防ぐために、円形の隙間140bが含まれる。図14に示すように、これはスクリーンの片面にのみあればよい。
【0080】
外側スクリーン133と、内側スクリーン132あるいはコイルとの間には、めっきした貫通孔による接続はない。図11に示すように、外側スクリーンは、積分器の接地された出力113に接続される。
【0081】
図14は、5つの層141、142、143、144および145を含むプリント回路基板を表す部品の断面を示す。前に説明した通り、プリント回路コイルは、層143の上に堆積したストリップと、これらのストリップをつないでコイルターンを形成するめっきした貫通孔とを備える。図14では、図示の都合上めっきした貫通孔のうちの限られた数だけを描いており、部品の厳密な断面図を表すことは意図していない。図14は正確な縮尺では描かれておらず、実際のプリント回路コイルの直径は、通常、基板の厚さよりはるかに大きいことは理解できるだろう。
【0082】
内側スクリーン147は層142と144との上に堆積し、外側スクリーン148は層141と145との上に堆積する。各スクリーンのためのめっきした貫通孔は、4つ(2つは中心から離れており、2つは中心に近いところにある)だけが示され、スクリーンの両面同士を接続している。これは、多層部品を描くにあたり、すべてのめっきした貫通孔を表すことによる複雑さを避けるためである。しかしながら図14は、上で述べた円形の隙間140aと140bとを明示している。
【0083】
保護を目的として、基板は絶縁体149で覆われていてもよい。図示される通り、測定電流Iが流れる導体は、基板中央にある円形の開口部内に置かれる。この導体は、追加的な円筒形のシールド(導体面上の高電圧に起因する干渉への外的耐性を、コイルに与えるため、接地されている)で囲まれていてもよい。簡単のため、この追加的なシールドは図示していない。
【0084】
更なる実施形態では、内側スクリーンは、図13に示すようなプリント回路コイルで置き換えられる。しかしこれは、内側のコイルとは反対方向に巻かれ、そのプリント回路ストリップは隣接するストリップ間の隙間が僅かしかない。
【0085】
特定の実施形態に関する上記の説明はあくまでも例示に過ぎず、本開示の範囲を限定することを意図していないことは理解できるだろう。上記の実施形態に関しては、本開示の範囲内にあることを意図した多くの改良を思い付くことができるだろう。そのうちのいくつかをこの後述べる。
【0086】
ある実施形態では、コイル抵抗を最小化するために、2つの巻線を並列に接続した、バイファイラ巻コイルが使われる。
【0087】
ある実施形態では、コイルと内側スクリーンとの間の誘電体(すわなち内側絶縁体)のために、前述の物質に代えてヒートシュリンクが使われる。ヒートシュリンク物質は、コイルの周囲にスリーブとして挿入され、熱い空気を当てることにより収縮し、ぴったりと合う。ある実施形態では、中間絶縁体、かつ/または、外側絶縁体は、この物質により、ここで述べたように形成される。ある実施形態では、絶縁体は、別の物質により、かつ/または、別のやり方で形成される。ある実施形態では、中間絶縁体、かつ/または、外側絶縁体は、PTFEで形成される。
【0088】
ある実施形態では、内側および外側スクリーンは、前述のものとは異なるタイプのスクリーンである。これらは互いに同じタイプであってもよいし、異なるタイプであってもよい。内側または外側スクリーンに、螺旋型、編組型、または巻き貝型を用いてもよい。
【0089】
ある実施形態では、単純なインバータ型積分器回路に代えて、非インバータ型積分器回路またはデジタル型積分器回路が用いられる。
【0090】
ある実施形態では、前述の一つまたは複数の部品は、別の適切な材料でできている。
【0091】
ある実施形態では、巻型は磁性体である。ある実施形態では、巻型はPTFE以外のプラスティック製である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14