【実施例1】
【0012】
<意匠性サインシステム>
図1は、意匠性サインシステム101の説明図である。
意匠性サインシステム101は、意匠性サイン部1と、映像投射部としてのプロジェクタ2と、プロジェクタ2による映像投射状態を制御する制御部としてのパソコン3を備えている。
【0013】
意匠性サイン部1は、ここでは、広告や宣伝のために商店等の建物の正面の壁に配置され、通行人の目に付くようになっている。意匠性サイン部1は、当該正面の壁面に設けられてプロジェクタ2による映像が投射される範囲全体となる投射スクリーン体1aにより構成されている。この投射スクリーン体1aは、壁面に立体的に設置された意匠部10と、壁面の映像投射範囲全体における意匠部10以外の部分である映像反射部11とで構成されている。意匠部10は、文字、図形、または模様を表す形状に形成され、この例では、「DAIKAN」という文字と、「波の形」を模した当該文字の下方の傍線状の図形とを表す形状に形成されている。
【0014】
壁は、垂直に配置されているが、傾斜して配置される壁、天井の壁、あるいは床面の壁など、適宜の壁とすることができる。また、壁は、平面とすることが好ましいが、少し湾曲した曲面や球面など、適宜の形状とすることができる。
【0015】
意匠性サイン部1は、意匠部10に加えて、内部に意匠部10を包含する投射スクリーン体1aを備えている。すなわち、意匠部10と、意匠部10が部分的に設置された壁面の一部である映像反射部11とが、投射スクリーン体1aとなっており、プロジェクタ2から投射された映像を反射して視認可能に映し出す。
【0016】
尚、意匠性サイン部1は、人が利用する施設の壁面、天井面、床面、出入り口、またはこれらの近傍に配置してもよく、また、このように配置された位置の近くを通過または立ち止まる人が意匠部10で表される文字、図形、または模様を表す形状をはっきりと視認できる大きさであればよい。
【0017】
プロジェクタ2は、意匠性サイン部1の正面側で、かつ意匠性サイン部1が設けられる平面の法線上とは異なる方向から意匠性サイン部1に対して斜めに投射する位置に意匠性サイン部1と離間して設置されている。詳述すると、プロジェクタ2による映像の投射方向は、意匠性サイン部1の設けられた平面の法線方向と一致する方向を角度0°とすると、5°〜60°の範囲に構成されており、より好ましくは10°〜45°の範囲に構成されている。これにより、映像に対する人の視認性を確保するとともに、意匠部10での映像の光の反射を適切にできるようにしている。プロジェクタ2は、静止画または/および動画で構成される映像を意匠性サイン部1の投射スクリーン体1aに向けて投射し、投射スクリーン体1aに映像を映し出す。
【0018】
パソコン3は、コンピュータを用いて予め作成された意匠性サイン部1の立体的形状に合った映像(コンピュータグラフィックス)を、映像音声制御ケーブル4を介してプロジェクタ2に伝送するよう制御する。
【0019】
<意匠性サイン部>
図2(A)は、意匠性サイン部1の断面図による説明図であり、
図2(B)は、意匠性サイン部1の一部拡大断面図による説明図である。
意匠性サイン部1は、壁面の一部である映像反射部11に意匠部10が設けられて構成されている。
【0020】
映像反射部11は、投射スクリーン体1aの一部を構成している。映像反射部11は、不透明な素材で形成されている。映像反射部11は、この例では、平面状であるが、立体的形状を有していてもかまわない。映像反射部11は、シボ加工やノングレア加工による処理が施されていてもよい。これにより、外光の映り込みが小さくなり、見る人自身の姿や背景が映り込むことが少なくなる。また、蛍光灯などの光が強く反射することが少なくなり、投射された映像を鮮明に映し出すことができる。さらに、シボ加工やノングレア加工がなされた映像反射部11に入射した光は、拡散され柔らかい光となって放出されるため、高級感を出すこともできる。
【0021】
投射スクリーン体1aは、上述した壁の形状に沿って、平面とすることが好ましいが、少し湾曲した曲面や球面など適宜の形状とすることができる。また、投射スクリーン体1aは、映像反射部11そのものとすることができるが、壁面に重ねて設けたスクリーンとすることもできる。いずれにせよ、投射スクリーン体1aは、少なくとも人が一見して凹凸があるようには見えない程度に凹凸の無い面とすることが好ましく、ざらつきのある面であっても良いが平滑な面であることが好ましい。
【0022】
意匠部10は、無色透明な素材で形成されており、この例では、無色透明のアクリル素材が用いられている。アクリル素材の厚さの上限は、100mm以下とすることができ、50mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。このようにすることで、透明度を保つことができる。また、アクリル素材の厚さの下限は、1mm以上とすることができ、2mm以上とすることがより好ましい。これにより、強度を保つことができる。なお、アクリル素材の厚さは、透明度と強度の観点から、2〜4mmが最も好ましい。
【0023】
意匠部10は、複数のオブジェクト14により構成されている。各オブジェクト14は、映像反射部11からの突出量である高さがいずれも同じ一定の高さとなり、表面15が映像反射部11の面と平行な面となるように構成されている。
【0024】
各オブジェクト14の周面16は、映像反射部11の面およびオブジェクト11の表面15に対して垂直に構成されている。なお、各オブジェクト14の周面16は、このように直角にすることに限らず、オブジェエクト14が映像反射部11の接続部分から突出するに従って表面15と平行な断面の断面積が小さくなっていくように傾斜させた傾斜面または湾曲面とする、あるいは階段状にするなど、適宜の構成とすることができる。このとき、サイン(看板)としての意匠性と映像表示の意匠性の観点から、階段状のように表面15と平行な面が存在しない前記傾斜面、前記湾曲面、または前記垂直面が好ましく、傾斜が存在しない前記垂直面がより好ましい。
【0025】
オブジェクト14の表面15と周面16の接続部分は、断面が直角となる角部17が形成されている。なお、この角部17は、Rを設けて湾曲する角とする、あるいは表面15に対して45度等の所定の角度の平面となるよう面取りをする等、直角の角とならない形状に形成してもよい。このとき、角部17は、平面が存在しないように平面状の面取りをせずに直角または湾曲とすることが好ましく、他の方向へ光を反射しないように直角とすることがより好ましい。
【0026】
なお、意匠部10は、一部に高さや表面形状が異なるものが混在していても良い。この場合でも、所定量以上のオブジェクト11の表面15が同じ高さで同じ面上に同じ角部17および周面16の形状で構成されていることで、サインとしての意匠性と映像表示の意匠性を両立できる。所定量は、50%以上とすることができ、70%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましい。
【0027】
意匠部10は、表面側に半透明層10aを有している。半透明層10aは、意匠部10の表面15に、シボ加工、フロスト加工、あるいはノングレア加工による反射光が様々な方向へ拡散する処理が施されて形成されている。そのため、半透明層10aは、表面の微細な凹凸の層であり、かつ非常に薄い層となっている。このようにして形成された半透明層10aの表面粗さはRa3〜20ミクロンが好ましい。これにより、意匠部10の表面の半透明層10aは、表面側に受光した光の一部を拡散反射し残部を透過する。また、半透明層10aは、表面側から入射する光の透過を抑えことができるため、映像を映し出すスクリーンとして用いることができる。
【0028】
意匠部10は、裏面に不透明層10bを有している。意匠部10は、不透明層10bを介して映像反射部11のある壁面の一部に重ねるようにして設けられている。不透明層10bは、表面の半透明層10aを透過して裏面にまで到達した残部の光を反射する。ここでは、不透明層10aは、映像反射部11と色相、彩度、および明度の少なくとも1つが異なる色に構成されている。このため、意匠部10の不透明層10bからの反射光と意匠部10が設けられていない映像反射部11からの反射光とは、色が異なる。そのため、意匠部10の形状を明確に視認することができ、広告、宣伝のために人目を惹くことができる。
【0029】
<プロジェクションマッピング動作>
意匠部10を包含する投射スクリーン体1aの立体的形状に合った映像(コンピュータグラフィックス)は、コンピュータを用いて予め作成されパソコン3に格納されている。そして、当該映像は、パソコン3の制御によりプロジェクタ2に伝送される(
図1参照)。
プロジェクタ2に伝送された映像は、プロジェクタ2から投射スクリーン体1aに向けて投射される。
【0030】
投射スクリーン体1aに向けて投射された映像は、不透明な素材で形成された映像反射部11と意匠部10の表面に形成された半透明層10aとをスクリーンにして、投射される。
【0031】
ここで、投射される映像には、様々な趣向を凝らした演出が施されている。例えば、意匠部10から四方に光を放射しているかのように見せる演出や、意匠部10の中央部から突如噴煙を上げたように見せる演出や、意匠部10の周りをあたかも雪が降っているかのように見せる演出や、意匠部10の文字等が立体的に浮き出て色や光沢を変えたり、さらには変形しながら移動するように見せる演出や、意匠部10の文字等が貼り付けられた窓ガラスに雨粒が流れ、その窓ガラス越しに都会の夜景を見ているかのように感じさせる演出等の、意匠部10の形状に合わせたり、意匠部10の形状を利用した演出が、投射される映像には施されている。これにより、投射スクリーン体1aに映し出された映像は、意匠部10が有する形状に静的にまたは/および動的に重畳され、意匠性サイン部1に、得も言われぬ意匠性を醸し出す。そのため、意匠性サイン部1を見た人は、ストーリーを脳裏に浮かべたりして、意匠部10に強く印象付けられるようになる。以下、具体的に説明する。
【0032】
図3は、意匠部10を含む意匠性サイン部1(投射スクリーン体1a)について、プロジェクタ2以外の環境光(自然光または施設内照明など)による見え方と、プロジェクタ2による演出時の見え方を説明する説明図である。
【0033】
図3(A)は、プロジェクタ2を消灯し、環境光のみでの見え方を示すモノクロ写真図である。写真に表されるように、厚みのある立体的な意匠部10である「DAIKAN」の文字と波型意匠は、裏面の不透明層10bの色(反射光)が表面の半透明層10aにて拡散し、あたかも半透明層10aに不透明層10bの色の色が着色されているように立体的に見える。
【0034】
図3(B)〜
図3(J)は、環境光を落としてプロジェクタ2による映像投射を行い、種々の演出している状態を示している。
図3(B)は、文字の縁全体に湾曲する面取りが施された金属板に見えるような立体的な平面映像を投射した例である。この場合、意匠部10は、文字の縁にRが無く、平板をカットしたような形状であるにもかかわらず、文字の縁にRのある金属のように見える。そして、不透明層10bの色合いは表にでず、初めからその映像の色の意匠部10が存在しているかのように見える。これは、半透明層10aにてプロジェクタ2の映像の光を良好に反射しているからである。これにより、環境光とは趣の異なるサインがあるように意匠部10が人々に視認される。
【0035】
図3(C)は、映像反射部11に都会の映像を写し、意匠部10をそのまま立体的に見せるべく意匠部10の形状に沿っサインとしての色を投映するとともに、映像反射部11と意匠部10にまたがって水滴の映像を投影した例である。これにより、あたかもガラスの向こう側に都会が見え、ガラスに立体的な光るサインが設けられ、そのガラスに水滴が当たって垂れていくような演出をすることができている。
【0036】
図3(D)は、映像反射部11と意匠部10にまたがってチーターの絵を表示した例である。チーターの体表に濃淡の明瞭な柄があることもあり、意匠部10が存在しないかのような映像を見せることができる。これは、意匠部10の半透明層10a(不透明層10bを含む)によって映像反射部11と同程度に光を覇者していることによって実現している。
【0037】
図3(E)〜
図3(J)は、プロジェクタ2の投映の無い状態のサインとしての視認状態(
図3(A)参照)から映像を始めて、プロジェクタ2による投映のある明るいサインに変化していく映像を示す例である。
【0038】
図3(E)のとき、意匠部10の中央近辺に映像が投射され、その周囲には映像が投射されていない。このとき、当該周囲にはプロジェクタ2からの光を全く照射しない映像としても良いが、例えば50%以下(好ましくは30%以下)の白色光など、環境光と同様の光を投射する構成としてもよい。このようにして、環境光で見えるようなサインの中央に光が当たって映像が現れるような演出となる。
【0039】
プロジェクタ2により投射する映像は、
図3(F)に示すように、意匠部10の半分以上にまで広がり、さらに
図3(G)に示すように意匠部10全体とその近傍にまで広がっている。このとき、先に投射を始めた意匠部10の中心付近は、意匠部10がオブジェクトグループ単位(この例では、DAIKANの文字と、可能の波線の2つのオブジェクトグループ)で単一色(この例では、DAIKANオブジェクトグループは白色、波線オブジェクトグループは水色)かつ同明度の光が照射されている。従って、光の演出が中心から側方へ移動し、中心からサインが現れるように演出される。
【0040】
プロジェクタ2により投射する映像は、
図3(H)に示すように、さらに光の演出が側方へ移動し、意匠部10がサインとして照射される部分が広がり、
図3(I)のように投射されている部分の殆どが意匠部10のサイン部分となる状態を経て、
図3(J)に示すように意匠部10のみにオブジェクトグループ単位の単一色の光が投射されたサイン状態となる。
【0041】
このサイン状態となった意匠部10は、単に平面のサインの映像をスクリーンに投影するのとは異なり、意匠部10の厚み分だけ手前に浮きあがるように視認され、立体的なサインとして視認される。
【0042】
以上の構成と動作により、意匠部10は、投射スクリーン体1aの投射面側に部分的に設けられて文字、図形、または模様を表す形状に形成され、そして、表面側に受光した光の一部を拡散反射し残部を透過する半透明層10aを有している。このため、意匠部10は、所定の外形形状を有するスクリーンとして機能する。これにより、プロジェクタ2(映像投射部)から映像が投射されない時でも、意匠部10が意匠性サイン部1として広告、宣伝機能を発揮し、さらに映像が投射されると、意匠部10に投射スクリーン体1aを加えた意匠性サイン部1が広告、宣伝機能を発揮する。そのため、映像による豊富なデザイン表現ができ、また、演出効果の高い印象に残る広告、宣伝を行うことができる。
【0043】
半透明層10aは、透光体の表面にフロスト加工、シボ加工、またはノングレア加工が施されて形成された層である。このため、映り込みが生じにくい。また、半透明層10aから反射する光は柔らかく、高級感を醸し出すことができる。
【0044】
意匠部10の裏面側には表面側の半透明層10aを透過した残部の光を反射する不透明層10bが形成されている。そして、その不透明層10bは、投射スクリーン体1aを構成する映像反射部11と色相、彩度、および明度の少なくとも1つが異なる色に構成されている。このため、意匠部10を、映像反射部11から目立たせることができ、広告、宣伝効果を高めることができる。
【0045】
投射スクリーン体1aおよび意匠部10は、人が利用する施設の壁面、天井面、床面、出入り口、またはこれらの近傍に配置されると、当該配置された位置の近くを通過または立ち止まる人が意匠部10で表される文字、図形、または模様を表す形状をはっきりと視認できる大きさである。そのため、人目に付きやすい。また、映画のスクリーンに映し出される一場面を彷彿させ、単なる広告用看板にはない高いエンターテインメント性を人に感じさせる。
【実施例2】
【0046】
<実施例2の意匠性サインシステム>
図4は、実施例2の意匠性サインシステム102の説明図である。
実施例2の意匠性サインシステム102は、意匠性サイン部としての意匠性発光装置1Xと、映像投射部としてのプロジェクタ2と、意匠性発光装置1Xによる発光状態と、プロジェクタ2による映像投射状態とを制御する制御部としてのパソコン3を備えている。
【0047】
意匠性発光装置1Xは、広告や宣伝のために、商店等がその建物の正面に設置し、通行人の目に付くようにしたLED看板等である。意匠性発光装置1Xは、内蔵されたLED光源からの光を拡散する立体的な光拡散意匠部20(実施例1における「意匠部10」に相当する)を備えている。この例では、正面視において、光拡散意匠部20は、「DAIKAN」という文字と、「波の形」を模した当該文字の下方の傍線状の図形とを表す形状に形成されている。なお、光拡散意匠部20の表面と筐体21の表面が平行に構成されている点等の両者の関係は、実施例1におけるオブジェクト14の表面15と映像反射部11との関係と同じとすることができる。また、光拡散意匠部20の周面や角の形状は、実施例1のオブジェクト14の周面16や角部17の形状と同じとすることができる。
【0048】
意匠性発光装置1Xは、発光制御ケーブル5によりパソコン3に接続されており、意匠性発光装置1Xに内蔵されたLED光源のオンオフ及び調光の制御がパソコン3により行われる。
【0049】
パソコン3には、映像音声制御ケーブル4を介してプロジェクタ2にも接続されている。
パソコン3は、コンピュータを用いて予め作成された光拡散意匠部20を含む意匠性発光装置1Xの立体的形状に合った映像(コンピュータグラフィックス)を、映像音声制御ケーブル4を介してプロジェクタ2に伝送するよう制御する。
【0050】
プロジェクタ2は、意匠性発光装置1Xの正面側に離間して設置され、意匠性発光装置1Xをスクリーンとして、光拡散意匠部20を含む意匠性発光装置1Xの立体的形状に合った映像(コンピュータグラフィックス)を投影する。すなわち、意匠性発光装置1Xは、投射スクリーン体1bとなっており、プロジェクタ2から投射された映像を反射して視認可能に映し出す。
【0051】
<意匠性発光装置>
図5は、実施例2の意匠性サイン部1(意匠性発光装置1X)の正面図による説明図である。
【0052】
図6(A)は、
図5における意匠性サイン部1(意匠性発光装置1X)のA−A断面図による説明図で、
図6(B)は、意匠性サイン部1(意匠性発光装置1X)の一部拡大断面図による説明図である。
【0053】
意匠性発光装置1Xは、正面視において、文字等を表す形状に形成されている光拡散意匠部20と、光拡散意匠部20の形状に沿った開口を有する筐体21(実施例1の映像反射部11に相応する)を備えている。
【0054】
そして、意匠性発光装置1Xは、光拡散意匠部20の裏面側にLED導光板22が設けられ、さらに、LED導光板22の一つの端面にLEDモジュール23が設けられ、これらは筐体21により支持されている。
【0055】
筐体21は、不透明な素材で形成されており、この例では、アルミ素材が用いられている。筐体21は、この例では、平板状であるが、立体的形状を有していてもかまわない。筐体21の表面はシボ加工による処理をしてもよい。これにより、入射する光の反射を減らすことができる。また、シボ加工された表面に入射した光は拡散され柔らかい光となって放出されるため、高級感を出すことができる。
【0056】
光拡散意匠部20(透光体)は、透明な素材で形成されており、この例では、アクリル素材が用いられている。アクリル素材の厚さは、透明度の点では10mm以下が好ましく、強度の点では1mm以上が好ましく、2〜4mmが実用的で好ましい。
【0057】
光拡散意匠部20は、表面に、半透明層20aを有している。半透明層20aは、光拡散意匠部20の表面に、シボ加工あるいはフロスト加工による処理が施されて形成されている。そのため、半透明層20aは、表面の微細な凹凸の層であり、非常に薄い層となっている。このようにして形成された半透明層20aの表面粗さはRa3〜20ミクロンが好ましい。これにより、光拡散意匠部20の表面の半透明層20aは、入射する光を拡散し柔らかい光に変えて放出することができ、高級感を出すことができる。また、半透明層20aは、入射する光の透過を抑えことができるため、映像等を映し出すスクリーンとして用いることができる。
光拡散意匠部20は、裏面に、着色してもよく、または、色を位置に対して連続的に変化させるグラデーションを施してもよい。
【0058】
LED導光板22は、光拡散意匠部20の裏面側に設けられている。
LED導光板22は、導光板本体22aと、導光板本体22aの表面に貼り付けられた拡散シート22bと、導光板本体22aの裏面に貼り付けられた反射シート22cを有している。
【0059】
導光板本体22aは、透明なアクリル素材で形成されている。導光板本体22aは、厚さが2〜8mmが好ましく、5mmがより好ましい。導光板本体22aは、裏面にレーザ加工によるドットやV溝が形成されている。
【0060】
導光板本体22aの裏面に貼り付けられた反射シート22cは、この例では、厚さが1mmである。
導光板本体22aの表面に貼り付けられた拡散シート22bは、この例では、厚さが2mmの乳半板で、入射する光を拡散し表面を均一に発光させる。
【0061】
LED導光板22は、拡散シート22bを光拡散意匠部20の裏面に対向するように配置されている。そして、LED導光板22は、少なくとも光拡散意匠部20の裏面のすべてを被覆している。
【0062】
LEDモジュール23は、LED導光板22の一つの端面、この例では、上端面に設けられている。LEDモジュール23は、LED導光板22の左右上下のどの端面に設けてもよく、また、複数設けるようにしてもよい。
【0063】
LEDモジュール23は、複数のLED光源23aが、LED導光板22の上端面に沿って長尺状で、LED導光板22の上端面に対向する面が開口した、断面がU字状またはコ字状のリフレクタ23b内に設けられている。複数のLED光源23aは、LED導光板22の上端面に沿ってほぼ等間隔で一列に配列され、発光面がLED導光板22の上端面に対向する向きに配置されている。
【0064】
LEDモジュール23には、制御端子付きのACアダプタ(図示せず)が接続されており、DC電力の供給が可能となっている。また、ACアダプタ(図示せず)の制御端子には、発光制御ケーブル5が接続され、パソコン3によるLED光源23aのオンオフ及び調光の制御が可能となっている。
【0065】
<発光動作>
LED光源23aは、パソコン3の制御により発光する。
LED光源23aが発した光は、LED導光板22の上端面から導光板本体22a内に入射する(
図6(B)参照)。
【0066】
導光板本体22a内に入射した光は、表面反射や、ドットやV溝による散乱を繰り返しながら導光板本体22a内に広がっていく。
導光板本体22a内に広がった光は、拡散シート22bにより拡散され、均一な面発光となる。
【0067】
均一な面発光となった光は、拡散シート22bと対向する光拡散意匠部20の裏面から入射し、光拡散意匠部20の表面に向けて進行する。
光拡散意匠部20の表面に到達した均一な面発光の光は、半透明層20aにより拡散され柔らかい光となって光拡散意匠部20から放出される。
【0068】
<プロジェクションマッピング動作>
LED光源23aからの発光は、パソコン3の制御により停止される。
コンピュータを用いて予め作成されパソコン3に格納されている光拡散意匠部20を含む意匠性発光装置1X(投射スクリーン体1b)の立体的形状に合った映像(コンピュータグラフィックス)は、パソコン3の制御によりプロジェクタ2に伝送される(
図4参照)。
【0069】
プロジェクタ2に伝送された映像(コンピュータグラフィックス)は、プロジェクタ2から意匠性発光装置1Xに向けて投影される。
【0070】
意匠性発光装置1Xに向けて投影された映像(コンピュータグラフィックス)は、不透明な素材で形成された筐体21と表面に半透明層20aを有する光拡散意匠部20とで表面が被覆された意匠性発光装置1Xの表面がスクリーンとなって、意匠性発光装置1Xに投射される。
【0071】
図7は、光拡散意匠部20を含む意匠性発光装置1X(投射スクリーン体1b)について、LED光源23aの発光による見え方と
、プロジェクタ2による演出時の見え方を説明する説明図である。
【0072】
図7(A)は、プロジェクタ2から投射範囲全面に白色光を投射した場合のモノクロ写真を示している。写真に表されているように、光拡散意匠部20の表面が筐体21の表面より手前側に突出していることがわかるが、光拡散意匠部20が筐体21と同じ色であるために目立たない状態となる。
【0073】
図7(B)は、プロジェクタ2から光拡散意匠部20と筐体21の両方にまたがる映像を投射した場合の見え方を示している。図示するように、光拡散意匠部20の存在はわかるもののそれほど目立たず、映像による演出とすることができる。
【0074】
図7(C)は、プロジェクタ2から光拡散意匠部20と筐体21のそれぞれに異なる映像若しくは光を投射した場合の見え方を示している。図示するように、光拡散意匠部20が光るサインのように明瞭に視認され、かつ、筐体21に光拡散意匠部20と異なる映像(画像)が投射されている。図示の例では、模様のある壁に光拡散意匠部20が発光サインとして設けられ、かつ、その中央にスポットライトがあたって光拡散意匠部20の周囲の壁の柄が見えているような演出となる。
【0075】
図7(D)は、プロジェクタ2からの投射をせずに消灯し、LED光源23a(
図6参照)を発光させて光拡散意匠部20を発光サインとして視認させる状態を示している。外部からプロジェクタ2で光(若しくは映像)を投射して発光させる場合よりも、光拡散意匠部20を直接発光させて遠くからでも明瞭に視認できるように明るく発光させることができる。
【0076】
以上の構成と動作により、光拡散意匠部20は、表面側に半透明層20aを有している。このため、LED光源23aが発した光は、半透明層20aを透過して光拡散意匠部20から放出される。このようにして半透明層20aを透過して放出される光は、単に明るいだけではなく、高級感が醸し出されている。また、LED光源23aが発した光は、半透明層20aを透過する際に拡散され、柔らかい光となって放出される。
【0077】
光拡散意匠部20の表面側の半透明層20aは、光をすべて透過するわけではなく、映像を映し出すスクリーンに適した指向性と反射率を有している。このため、光拡散意匠部20の半透明層20aは、プロジェクションマッピングに際して、スクリーンとしての機能を発揮できる。また、半透明層20aは、光拡散意匠部20の表面に形成された非常に薄い層である。そのため、スクリーンとして使用した場合に、奥行き方向に映像のボケが発生しにくい。
【0078】
半透明層20aは、光拡散意匠部20の表面にシボ加工、フロスト加工、あるいはノングレア加工による処理が施されて形成されている。そのため、半透明層20aは、微細な凹凸の層となっており、しかも、凹凸の角が丸まって形成されている。これにより、LED光源23aが発した光の半透明層20aでの拡散は全方位的に均一になりやすく、光拡散意匠部20から放出される光に刺々しさが無くなる。
【0079】
また、このような半透明層20aをプロジェクションマッピングのスクリーンとして使用した場合には、半透明層20aは特異な指向性と反射率を局所的に示すことがないため、光拡散意匠部20の表面に映し出される映像は、表面全体で均質なものとなる。さらに、半透明層20aの透過率を調整することで、光拡散意匠部20の空間内に映像が透けて見えるようにすることもでき、神秘的で幻想的な雰囲気を醸し出すこともできる。