(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波長380nmの光の透過率が30%以下である紫外線吸収剤が、波長420nmの光の透過率が10%以上であること特徴とする請求項1に記載のエネルギー線硬化型インクジェット組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、加飾用フィルムの製造方法およびそれに用いるエネルギー線硬化型インクジェット組成物に関するものである。
以下、本発明の加飾用フィルムの製造方法およびエネルギー線硬化型インクジェット組成物について説明する。
【0015】
A.エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物
まず、本発明の硬化型インクについて説明する。
本発明の硬化型インクは、重合開始剤、重合性化合物および紫外線吸収剤を有し、上記紫外線吸収剤として、波長380nmの光の透過率が30%以下である紫外線吸収剤のみを含むことを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、上記紫外線吸収剤として上記短波長紫外線吸収剤のみを含むことにより、硬化に用いる露光光の光源の種類によらず、常温で優れた延伸性を示す加飾用フィルムを容易に得ることができる。
ここで、上記紫外線吸収剤として上記短波長紫外線吸収剤のみを含むことにより上述の効果を奏する理由については以下のように推察される。
【0017】
すなわち、基材上に形成された硬化型インクの塗膜が、短波長領域に発光スペクトルを有する露光光の照射を受けた場合には、短波長領域の露光光が塗膜の表面で主に吸収され、塗膜の表面で選択的に硬化が進行する。このため、塗膜が硬化することにより形成される装飾層は、その表面に硬い層が形成されたものとなる。その結果、このような装飾層を含む加飾用フィルムを延伸した場合には、その表面の硬い層にひび割れが生じ、十分な延伸が困難となる。
これに対して、上記紫外線吸収剤として上記短波長紫外線吸収剤のみを含むことにより、上述のような低波長領域の露光光を選択的に吸収することが可能となり、表面に硬い層が形成されることを抑制できる。
【0018】
したがって、装飾層を形成するために上記塗膜に照射される露光光として、メタルハライドランプ等の短波長領域に発光スペクトルを有する光源を使用した場合であっても、表面に硬い層が形成されることを抑制でき、延伸時にひび割れ等が生じることを抑制できる。このため、常温においても優れた延伸性を有する加飾用フィルムを得ることができるのである。
また、メタルハライドランプ等の短波長領域に発光スペクトルを有する光源および紫外線LED等の主に長波長領域に発光スペクトルを有する光源のいずれの場合でも、表面に硬い層が形成されることが抑制された装飾層とすることが可能となる。つまり、露光光の光源の種類が異なる場合でも同様の延伸性を有する装飾層を形成できる。したがって、メタルハライドランプのような短波長領域に発光スペクトルを有する光源を有する設備と、紫外線LEDのような長波長領域に主に発光スペクトルを有する光源を有する設備と、が混在するような場合でも、その設備毎にインクの成分を変更することなく、同様の延伸性を有する装飾層を安定的に形成できる。
このようなことから、上記紫外線吸収剤として短波長紫外線吸収剤のみを含むことにより、常温で優れた延伸性を有する加飾用フィルムを容易に得ることができるのである。
【0019】
本発明の硬化型インクは、重合開始剤、重合性化合物および紫外線吸収剤を有するものである。
以下、本発明の硬化型インクの各成分について詳細に説明する。
【0020】
1.紫外線吸収剤
本発明における紫外線吸収剤は、波長380nmの光の透過率が30%以下である紫外線吸収剤のみを含むものである。
また、本発明における紫外線吸収剤としては、一般的に、紫外線吸収剤として用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、着色剤、重合性化合物、重合開始剤、その他の種々の用途のために添加される添加剤等の紫外線吸収用途以外の他の用途を有するものを含まないことが好ましい。
【0021】
なお、短波長紫外線吸収剤のみを含むとは、紫外線吸収剤として波長380nmの光の透過率が30%より大きく、波長380nm〜420nmの長波長領域の露光光を吸収する紫外線吸収剤(以下、単に長波長紫外線吸収剤とする場合がある。)を実質的に含まないものであることをいうものである。
ここで、長波長紫外線吸収剤を実質的に含まないとは、長波長紫外線吸収剤を、長波長領域の露光光による塗膜の硬化を阻害するような量含有しないことをいうものであり、具体的には、短波長紫外線吸収剤の紫外線吸収剤中の含有量が、95質量%以上であることをいうものであり、なかでも、99質量%以上であることが好ましく、特に、100質量%であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
【0022】
上記短波長紫外線吸収剤の波長380nmの光の透過率としては、30%以下であれば特に限定されるものではないが、なかでも、20%以下であることが好ましく、特に、10%以下であることが好ましい。上記透過率が上述の範囲内であることにより、短波長領域の露光光を効果的に吸収することが可能となり、塗膜の硬化に用いる光源の種類による影響のより少ないものとすることができるからである。
なお、光の透過率とは、短波長紫外線吸収剤を透過する各波長の光の入射時の光強度に対する出射時の光強度の割合(%)をいうものであり、濃度1%の短波長紫外線吸収剤溶液(溶剤トルエン)を調製し、幅10mm、材質ガラスのセルおよび光源としてキセノンランプを用いて、ダブルビーム測光方式により測定されるものである。より具体的には分光光度計UV−3150(島津製作所製)を用いて、リファレンスとしてトルエンを用いて測定する方法により得ることができる。
【0023】
上記短波長紫外線吸収剤の波長320nmの光の透過率としては、20%以下であることが好ましく、なかでも、10%以下であることが好ましく、特に、5%以下であることが好ましい。上記透過率が上述の範囲内であることにより、短波長領域の露光光を効果的に吸収することが可能となり、塗膜の硬化に用いる光源の種類による影響のより少ないものとすることができるからである。
【0024】
上記短波長紫外線吸収剤の波長420nmの光の透過率としては、10%以上であることが好ましく、なかでも、40%以上であることが好ましく、特に、60%以上であることが好ましい。上記透過率が上述の範囲内であることにより、塗膜の内部も十分に硬化させることができるからである。
【0025】
上記短波長紫外線吸収剤の具体例としては、BASF社製のチヌビン120(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、チヌビン234(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール)、チヌビン326(2−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール)、チヌビン329(2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、チヌビン384−2(ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシおよびC7−9側鎖及び直鎖アルキルエステルの混合物)、チヌビン400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10−C16主としてC12−C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物)、チヌビン479(2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン)、チヌビン928(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)等を挙げることができ、なかでも、チヌビン384−2、チヌビン400、チヌビン479等であることが好ましく、特に、チヌビン400であることが好ましい。上記短波長紫外線吸収剤であることにより、短波長領域の露光光を選択的に吸収でき、長波長領域の露光光が塗膜に吸収されることを妨げないからである。また、装飾層の硬化に用いる光源の種類による影響のより少ないものとすることができるからである。
【0026】
上記紫外線吸収剤の含有量としては、延伸性に優れた装飾層を形成可能なものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硬化型インク中に、0.1質量%〜3質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.1質量%〜2質量%の範囲内であることが好ましく、特に、0.5質量%〜2質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、延伸性により優れた装飾層を形成可能なものとすることができ、また、含有量が多いと硬化性が低下するからである。
【0027】
2.重合開始剤
本発明に用いられる重合開始剤は、露光光の照射を受けた際に、上記重合性化合物を重合可能なものである。
【0028】
上記重合開始剤としては、露光光の照射を受けた際に、上記重合性化合物を重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、硬化型インクに一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、アシルホスフィンオキサイド系開始剤、α−アミノアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミノカルボニル系開始剤、ケトン系開始剤等を用いることができる。
本発明においては、なかでも、アシルホスフィンオキサイド系開始剤、α−アミノアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤を好ましく用いることができ、特に、アシルホスフィンオキサイド系開始剤 チオキサントン系開始剤を好ましく用いることができる。
【0029】
上記アシルホスフィンオキサイド系開始剤としては、例えば、4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。また、市販品としては、チバ社製のDAROCURE TPOなどが挙げられる。
【0030】
α−アミノアルキルフェノン系開始剤としては、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。また、市販品としては、チバ社製のIRGACURE 369、IRGACURE 907などが挙げられる。
【0031】
チオキサントン系開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン,2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。また、市販品としては、日本化薬社製のKAYACURE DETX−S、ダブルボンドケミカル社製のChivacure ITXなどが挙げられる。
【0032】
アミノカルボニル系開始剤としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、並びにイソアミルp−(ジメチルアミノ)ベンゾエート等が挙げられる。
ケトン系開始剤としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、及び/又は2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0033】
上記重合開始剤の含有量としては、所望の延伸性を有する装飾層を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硬化型インク中に5質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、特に7質量%〜12質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、感度に優れ、また、他の成分を十分に含むことができ、硬化性に優れたものとすることができるからである。
また、重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系開始剤およびチオキサントン系開始剤の両者を組み合わせて用いる場合には、アシルホスフィンオキサイド系開始剤の含有量としては、5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、6質量%〜12室量%の範囲内であることが好ましく、7質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。また、チオキサントン系開始剤の含有量としては、0.1質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.5質量%〜4質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜3質量%の範囲内であることが好ましい。アシルホスフィンオキサイド系開始剤の含有量をチオキサントン系開始剤より多くすることにより、硬化型インクの発色性に優れたものとすることができるからである。
【0034】
3.重合性化合物
本発明における重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を1以上有するものである。
このような重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合が1つである単官能モノマー、エチレン性不飽和二重結合が2以上である多官能モノマーおよび多官能オリゴマー等を用いることができる。また、本発明においては、これらを組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリルカルビトール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカブロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、バラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシボリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを挙げることができる。
【0036】
また、多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオベンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオベンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールブロバントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0037】
また、上記多官能オリゴマーとしては、例えば、特開2010−70754号公報等に記載のウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等のエチレン性不飽和二重結合を2つ有する2官能オリゴマーを用いることができる。
【0038】
上記単官能モノマー含有量としては、装飾層を所望の物性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、硬化型インク中に50質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、60質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、特に70質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。
上記多官能モノマーおよびオリゴマーの合計の含有量としては、装飾層を所望の物性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、硬化型インク中に0.1質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、1質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、特に1質量%〜4質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、延伸性を保ちつつ硬化性および強靭性に優れたものとすることができるからである。
【0039】
4.その他の成分
本発明の硬化型インクは、重合開始剤、重合性化合物、紫外線吸収剤を含むものであるが、通常、着色剤を含むものである。また、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、香料、可塑剤などの公知の一般的な添加剤を、任意成分として配合してもよい。
【0040】
本発明に用いられる着色剤としては、硬化型インクに一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、顔料等を用いることができる。
【0041】
上記顔料としては、有機顔料および無機顔料を用いることができる。
【0042】
具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、カーボンブラック等が挙げられる。
【0043】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214;C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57、97、112、122、123、149、168、177、180、184、192、202、206、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254;C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、 71;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36、58;C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0044】
上記無機顔料の具体例としては、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸バリウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、合成マイカ、アルミナ、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、無機固溶体顔料等を挙げることができる。
【0045】
上記顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、硬化型インク中においてメジアン径(D50)が5nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、30nm〜150nmの範囲内であることがより好ましい。メジアン径が上記の上限値以下であれば、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができ、得られる印刷物を高品質のものとすることができるからである。メジアン径が上記の下限値以下の場合には耐光性が低下する場合があるからである。
なお、上記顔料の平均分散粒子径は、硬化型インクをエチルジグリコールアセテートで約50倍に希釈した測定試料を用意し、動的散乱光法により測定して得ることができる。具体的には、測定温度25℃にてレーザー回折・散乱式粒度分析計 マイクロトラック粒度分析計UPA150(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0046】
上記着色剤の含有量としては、所望の画像を形成可能であれば特に限定されるものではなく、適宜調整されるものである。具体的には、着色剤の種類によっても異なるが、硬化型インク中に0.5質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、特に、1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、着色剤の分散安定性と着色力のバランスに優れたものとすることができるからである。
【0047】
上記着色剤として顔料が用いられる場合、上記顔料は、通常、顔料誘導体や顔料分散剤と共に用いられる。顔料の分散性に優れたものとすることができるからである。
このような顔料誘導体としては、例えば、ジアルキルアミノアルキルスルホン酸アミド基を有する顔料誘導体や、ジアルキルアミノアルキル基を有する顔料誘導体などが挙げられる。
上記顔料分散剤としては、例えば、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも、分散安定性の点から、カチオン性基またはアニオン性基を含む高分子化合物が好ましい。市場で入手可能な顔料分散剤としては、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、エフカアディティブズ社製のEFKAなどが挙げられる。顔料誘導体及び顔料分散剤の含有量はそれぞれ、硬化型インク中に、0.05質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0048】
上記レベリング剤としては、表面張力調整を目的に硬化型インクに一般的に用いられるものを使用することができる。
このようなレベリング剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物が挙げられる。シリコーン系化合物であることにより、硬化型インクの表面張力などの液物性の微調整が容易だからである。また、上記シリコーン系化合物の中でも、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有するシリコーン系化合物が好ましい。密着性に優れた装飾層の形成が可能であり、また、装飾層の延伸性の調整が容易だからである。
【0049】
このようなエチレン性不飽和二重結合を有するシリコーン系化合物としては、例えば、特開2010−70754号公報に記載されるビックケミー社製のBYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570;デグサ社製のTEGO−Rad2100、TEGO−Rad2200N、TEGO−Rad2250、TEGO−Rad2300、TEGO−Rad2500、TEGO−Rad2600、TEGO−Rad2700;共栄社化学社製のグラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、B−1484、ポリフローATF−2、KL−600、UCR−L72、UCR−L93などが挙げられる。
また、上記レベリング剤の含有量としては、所望の粘度とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硬化型インク中に0.02質量%〜2.5質量%の範囲内とすることができる。
【0050】
5.硬化型インク
本発明の硬化型インクの粘度としては、インクジェット装置を用いて吐出できるものであれば特に限定されるものではないが、9mPa・s〜15mPa・sの範囲内であることが好ましく、なかでも10mPa・s〜14mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、10.5mPa・s〜13mPa・sの範囲内であることが好ましい。上記粘度が上述の範囲内であることにより、本発明における硬化型インクを吐出性に優れたものとすることができるからである。
なお、上記粘度は、40℃での粘度を示すものである。また、粘度は、落球式粘度計(アントンパール社製AMVn)にて測定を行うことにより得ることができる。このときの温度は40℃、密度は1.05g/cm
2に設定することができる。
【0051】
本発明の硬化型インクの延伸性としては、所望の加飾を行うことができるものであれば特に限定されるものではないが、150%以上であることが好ましく、なかでも200%以上であることが好ましく、特に、250%以上であることが好ましい。上述の延伸性を有することにより、3次元立体成型物の加飾を高精度に行うことが可能となるからである。
なお、延伸性に優れるほど3次元立体成型物の加飾が容易になることから特に上限を設けないが、通常、装飾層の強度等の観点から、350%以下である。
なお、上記硬化型インクの延伸性とは、上記硬化型インクを用いて形成された塗膜を硬化させた装飾層の常温での延伸性をいうものである。
このような延伸性の測定方法としては、上記延伸性を測定可能なものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、基材として、大きさ50mm×100mm、厚さ約1mmの塩化ビニルシートMACTAC JT5829R((株)マティーニ社製)を用い、この基材上にバーコーター#6にて硬化型インクを塗布後、UV露光装置(GS YUASA社製 B125D−C10−SM−J)にて300mJ/cm
2(λ=365nm)露光して塗膜を硬化させることにより得られた基材および厚さ7mmの装飾層からなる試験片を作製し、これを25℃環境下にて試験片の長手方向の両端を引張り試験機AGS−1kNX(島津製作所社製)に取り付け、引張り速度10mm/分で引張り、装飾層の割れが生じない最大伸びを測定し、伸び率(延伸後の長さ/延伸前の長さ)×100(%)を計算する方法を用いることができる。
また、このような延伸性については、上記重合性化合物等の各成分の種類や含有量等により調整することができる。
【0052】
本発明の硬化型インクの調製方法としては、上記各成分を均一に分散または溶解させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、硬化型インクに一般的に用いられる方法を使用することができる。
具体的には、まず、着色剤と、重合性化合物の一部と、必要により分散剤とを混合し、この混合物を分散機により分散させ、次いで、混合物に残りの成分を添加し、攪拌機を用いて均一になるまで混合する方法を挙げることができる。
なお、分散機としては、例えば、ディスパ;ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル;サンドミルなどの高速回転ミル;撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミルなどを使用することができる。また、撹拌機としては、例えば、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパ、ホモジナイザーなどが挙げられる。また、ラインミキサーなどの混合機を用いても良い。
【0053】
本発明の硬化型インクの用途としては、インクジェット法を用いた装飾層の形成に用いることができ、なかでも、基材および基材上に形成された装飾層を有し、被加飾部材表面に積層される加飾用フィルムに用いられることが好ましく、特に、三次元成型用であること、つまり、表面が三次元立体形状である被加飾部材の表面に沿って積層される加飾用フィルムに用いられることが好ましい。本発明においては、なかでも特に、常温での三次元成型用であること、すなわち、常温で延伸することにより被加飾部材を加飾する加飾用フィルムに用いられることが好ましい。常温での延伸性に優れた加飾用フィルムを得ることができるとの本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
また、本発明においては、波長380nm未満の波長領域および波長380nm〜420nmの範囲内の波長領域に発光スペクトルを有する露光光による硬化用であることが好ましい。本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
なお、本発明における加飾とは、加飾用フィルムを積層することにより、被加飾部材表面の装飾効果を高めるものであり、具体的には、被加飾部材の表面に、模様、マーク、文字類を形成するものの他に光沢、艶消しを付与するものも含むものである。
また、装飾層は、このような加飾のために基材上に形成されるものであり、模様、マーク、文字類を形成するものの他に光沢、艶消しを付与する層である。
【0054】
B.加飾用フィルムの製造方法
次に、本発明の加飾用フィルムの製造方法について説明する。
本発明の加飾用フィルムの製造方法は、重合開始剤、重合性化合物および紫外線吸収剤を有するエネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物をインクジェット法により基材上に塗布し塗膜を形成する塗布工程と、上記塗膜に対して、波長380nm未満の波長領域および波長380nm〜420nmの範囲内の波長領域に発光スペクトルを有する露光光を照射することにより上記塗膜を硬化させて装飾層とする照射工程と、を有し、上記紫外線吸収剤として、波長380nmの光の透過率が30%以下である紫外線吸収剤のみを含むことを特徴とするものである。
【0055】
このような本発明の加飾用フィルムの製造方法を図を参照して説明する。
図1は、本発明の加飾用フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
図1に示すように、本発明の加飾用フィルムの製造方法は、重合開始剤、重合性化合物および紫外線吸収剤を有するエネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物2´をインクジェット法により基材1上に塗布することにより(
図1(a))塗膜2を形成し(
図1(b))、次いで、上記塗膜2に対して、波長380nm未満の波長領域および波長380nm〜420nmの範囲内の波長領域に発光スペクトルを有する露光光を照射することにより(
図1(c))上記塗膜2を硬化させて装飾層3とし、上記基材1および上記基材1上に形成された装飾層3を有する加飾用フィルム10を得るものである(
図1(d))。
また、上記紫外線吸収剤として、波長380nmの光の透過率が30%以下である紫外線吸収剤のみを含むものである。
なお、
図1(a)〜(b)が上記塗布工程であり、
図1(c)〜(d)が上記照射工程である。
【0056】
本発明によれば、上記紫外線吸収剤として上記短波長紫外線吸収剤のみを含むことにより、常温で優れた延伸性を示す加飾用フィルムを容易に得ることができる。
【0057】
本発明の加飾用フィルムの製造方法は、上記塗布工程および照射工程を有するものである。
以下、本発明の加飾用フィルムの製造方法の各工程について説明する。
【0058】
1.塗布工程
本発明における塗布工程は、硬化型インクをインクジェット法により基材上に塗布し塗膜を形成する工程である。
なお、上記硬化型インクとしては、上記「A.エネルギー線硬化型インクジェット組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0059】
本工程において、硬化型インクを基材上に塗布し塗膜を形成する方法としてインクジェット法を用いるものである。
上記インクジェット法としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれのインクジェット法であっても良いが、なかでも、凝集物が発生し難く、吐出安定性に優れる点から、ピエゾ方式のインクジェット法であることが好ましい。
なお、ピエゾ方式のインクジェットヘッド(記録ヘッド)は、圧力発生素子として圧電振動子を用い、圧電振動子の変形により圧力室内を加圧・減圧してインク滴を吐出させるものである。
【0060】
本工程における基材は、上記塗膜を支持し、上記塗膜を硬化してなる装飾層とともに被加飾部材表面に積層されるものである。
このような基材を構成する材料としては、熱可塑性樹脂を挙げることができる。加熱することで、上記装飾層と共に容易に延伸することができるからである。被加飾部材が三次元立体成型物である場合であっても、被加飾部材表面に容易に積層できるからである。
上記熱可塑性樹脂としては、所望の延伸性を示すものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」という)、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができ、なかでもポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂であることが好ましく、特に、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂は1種類または2種類以上を混合して用いることができる。
【0061】
上記基材は、単層であっても良く、2層以上が積層した積層体であっても良い。
【0062】
上記基材の厚みは、所望の延伸性を有するものであれば特に限定されるものではなく、本発明の製造方法により製造される加飾用フィルムの種類や用途に応じて異なるものであるが、通常、100μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、なかでも250μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、特に、300μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、本工程や上記照射工程の実施時等に変形等がなく、取り扱い性に優れたものとすることができ、さらに、被加飾部材への積層や延伸性に優れたものとすることができるからである。
【0063】
上記基材の引っ張り弾性率としては、所望の延伸性を有するものであれば特に限定されるものではないが、1000MPa〜4000MPa(初期モジュラス)の範囲内であることが好ましく、なかでも、2000MPa〜3000MPaの範囲内であることが好ましい。
上記引っ張り弾性率が上述の範囲内であることにより、上記基材に高い剛性を付与できるため、真空成形時における形状の歪を抑制することができるからである。
なお、上記引っ張り弾性率は、JIS K7127に準拠し、試験片としてタイプBを用い、引張速度50m/分の条件で測定した、常温における引張り弾性率である。
【0064】
上記基材は、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記基材上に形成される層との密着性に優れたものとすることができるからである。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材を構成する材料の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また、上記基材上には、プライマー層を形成するなどの処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていても良い。
【0065】
本工程において形成される塗膜の厚みとしては、所望の延伸性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、1μm〜20μmの範囲内とすることができ、なかでも1μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、特に、3μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、常温での延伸性に優れたものとすることができるからである。
【0066】
本工程において形成される塗膜の形成箇所としては、上記基材上であれば特に限定されるものではないが、通常、上記基材の一方の表面の全面に形成されるものである。
【0067】
2.照射工程
本発明における照射工程は、上記塗膜に対して、露光光を照射することにより上記塗膜を硬化させて装飾層とする工程である。
【0068】
本工程において照射される露光光としては、波長380nm未満の波長領域および波長380nm〜420nmの範囲内の波長領域の両領域に発光スペクトルを有するものである。
このような露光光の発光スペクトルとしては、短波長領域および長波長領域の両領域に発光スペクトルを有するものであれば特に限定されるものではないが、波長300nm〜380nmの波長領域の全発光スペクトル強度(短波長領域発光スペクトル強度)と波長380nm〜420nmの範囲内の波長領域の全発光スペクトル強度(長波長領域発光スペクトル強度)との比である発光スペクトル強度比(短波長領域発光スペクトル強度/長波長領域発光スペクトル強度)としては、1〜5の範囲内であることが好ましく、なかでも、1〜4の範囲内であることが好ましく、特に、1〜3の範囲内であることが好ましい。上記発光スペクトル強度比が上述の範囲内であることにより、常温においても優れた延伸性を示す加飾用フィルムを得ることができるからである。
なお、上記全発光スペクトル強度は、露光光の発光スペクトルを測定し、上記波長領域内の放射輝度を積分したものをいうものである。具体的には、分光放射照度計を用い測定する方法が挙げられ、より具体的には、スペクトロラディオメータUSR−45V(ウシオ電機社製)を用いて得ることができる。
【0069】
上記露光光の光源としては、具体的には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等が挙げられ、なかでも本工程においては、メタルハライドランプ((株)GSユアサ社製 MALシリーズ等)を用いることが好ましい。上記光源であることにより、上記短紫外線吸収剤を用いることによる効果をより効果的に発揮できるからである。また、従来一般的な露光設備の光源として用いられ、低コスト化を図ることができるからである。
【0070】
本工程において塗膜に照射される露光光の全エネルギー量としては、所望の延伸性を有する装飾層を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、50mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2の範囲内とすることができ、なかでも50mJ/cm
2〜500mJ/cm
2の範囲内であることが好ましく、特に、50mJ/cm
2〜300mJ/cm
2の範囲内であることが好ましい。上記全エネルギー量が上述の範囲内であることにより、表面が十分に硬化しブロッキングが少なく、かつ、延伸性に優れた装飾層とすることができるからである。
【0071】
本工程により形成される装飾層の厚みおよび形成箇所としては、上記塗膜の厚みおよび形成箇所と同様とすることができる。
【0072】
3.加飾用フィルムの製造方法
本発明の加飾用フィルムの製造方法は、上記塗布工程および照射工程を有するものであるが、必要に応じて他の工程を有するものであっても良い。
このような他の工程としては、上記基材および装飾層の間に形成されるプライマー層、上記装飾層上に形成される保護層、上記基材の装飾層が形成される側とは反対側の表面上に形成される粘着剤層、粘着剤層に形成される剥離層等の他の層を形成する工程や、上記塗膜に溶媒が含まれる場合に溶媒を乾燥する乾燥工程、上記装飾層を加熱する焼成工程等を挙げることができる。
なお、このような各工程等については、加飾用フィルムの製造に一般的に用いられるものとすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0075】
1.硬化型インクの調製
重合開始剤、重合性化合物、紫外線吸収剤、着色剤および添加剤を、下記表1に記載した組成に従い、調製した(実施例1〜6、比較例1〜2)。
なお、表1中の各成分の数値は、各成分の重量部を示すものである。
【0076】
また、重合性化合物として、イソボロニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、脂肪族ウレタンアクリレート(サートマー社製CN996)を用いた。
重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(重合開始剤1)、2―(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(重合開始剤2)を用いた。
重合禁止剤として、フェノチアジンを用いた。
着色剤として、ブラックベース(エボニックデグサ社製NEROX5600 12重量部、ビックケミー社製BYK−UV9150 6.9重量部、共栄社化学社製ZA−IBXA 81.1重量部、D/P=0.08,P=12%)を用いた。
レベリング剤として、シリコンポリエーテルアクリレート(デグサ社製TEGO−Rad2300)を用いた。
光増感剤として2,4−ジエチルチオキサントンを用いた。
なお、D/Pは分散剤有効成分重量/顔料重量を示すものであり、P=12%は、顔料の固形分中の含有量を示すものである。
【0077】
また、紫外線吸収剤として、TINUVIN326(380nm透過率0%、420nm透過率30%)、TINUVIN384-2(380nm透過率0%、420nm透過率100%)、TINUVIN400(380nm透過率0%、420nm透過率100%)、TINUVIN479(380nm透過率0%、420nm透過率60%)、TINUVIN900(380nm透過率0%、420nm透過率100%)、TINUVIN928(380nm透過率0%、420nm透過率100%)、TINUVIN120(380nm透過率100%、420nm透過率100%)を用いた。
なお、紫外線吸収剤の透過率はそれぞれ、1%紫外線吸収剤のトルエン溶液についての380nmおよび420nmでの透過率を示すものである。
【0078】
2.評価方法
実施例および比較例で調製した硬化型インクについて、延伸性および硬化性について評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0079】
(1)延伸性
大きさ50mm×100mm、厚さ約1mmの塩化ビニルシートMACTAC JT5829R((株)マティーニ社製)を用い、この基材上にバーコーター#6にて硬化型インクを塗布後、UV露光装置として、UV−LEDまたはメタルハライドを用いて1回露光することにより、基材上に厚さ7mmの装飾層が形成されてなる試験片を作製した。
なお、UV−LEDおよびメタルハライドを光源とするUV露光装置の1回あたりの露光量(320nm〜390nmでの全エネルギー量)は、それぞれ100mJ/cm
2および115mJ/cm
2とし、またメタルハライドの発光スペクトル強度比((短波長領域発光スペクトル強度)/(長波長領域発光スペクトル強度))を2とした。
その後、25℃環境下にて試験片の長手方向の両端を引張り試験機AGS−1kNX(島津製作所社製)に取り付け、引張り速度10mm/分で引張り、装飾層の割れが生じない最大伸びを測定し、伸び率(延伸後の長さ/延伸前の長さ)×100(%)を計算した。結果を表1に示す。
【0080】
(2)硬化性
塩ビシート(MACTAC JT5829R (株)マティーニ製)へバーコーター#6にて硬化型インクを塗布後、塗布面表面をめん棒でこすり、硬化型インクの塗膜のタックがなくなるまでの露光回数を測定した。なお、UV露光装置および1回あたりの露光条件は、上記「(1)延伸性」の評価に用いたものと同様とした。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
(3)まとめ
表1より、実施例では、露光装置に依らず、延伸性が良好(延伸性200%以上可)な装飾層を形成することができることが確認できた。
また、硬化性の評価より、紫外線吸収剤の有無や種類に差異が無いことから、硬化性は紫外線吸収剤の影響を受けないことを確認できた。