(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6439068
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】移動体撮像装置、及び、移動体撮像方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/225 20060101AFI20181210BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20181210BHJP
G03B 15/00 20060101ALI20181210BHJP
G03B 17/56 20060101ALI20181210BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20181210BHJP
G03B 17/17 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
H04N5/225 900
G02B26/08 E
G03B15/00 P
G03B17/56 A
H04N5/225 400
H04N5/232 290
G03B17/17
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-63544(P2018-63544)
(22)【出願日】2018年3月29日
【審査請求日】2018年7月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松家 大介
(72)【発明者】
【氏名】三村 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】日野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】藤村 高之
【審査官】
▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−280079(JP,A)
【文献】
特開2002−374433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G02B 26/08
G03B 15/00
G03B 17/17
G03B 17/56
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を撮像する撮像機と、
該撮像機を内部に固定した第一筐体と、
前記撮像機の光軸上に配置された第一反射鏡と、
該第一反射鏡を内蔵する第二筺体と、
該第二筺体に設置され、前記第一反射鏡を回転させることで、前記撮像機の光軸を偏向する第一偏向機と、
第一筺体に対し前記第二筺体を前記撮像機の光軸周りに回転させる第一回転機と、を具備し、
前記第一偏向機と前記第一回転機の回転軸が同一であることを特徴とする移動体撮像装置。
【請求項2】
移動体を撮像する撮像機と、
該撮像機を内部に固定した第一筐体と、
前記撮像機の光軸上に配置された第一反射鏡および第二反射鏡と、
該第一反射鏡および第二反射鏡を内蔵する第二筺体と、
該第二筺体に設置され、前記第一反射鏡を回転させることで、前記撮像機の光軸を偏向する第一偏向機と、
第一筺体に対し前記第二筺体を前記撮像機の光軸周りに回転させる第一回転機と、を具備し、
前記第一偏向機と前記第一回転機の回転軸が平行であることを特徴とする移動体撮像装置。
【請求項3】
前記第二筺体に設置され、前記第二反射鏡を回転させることで、前記撮像機の光軸を偏向する第二偏向機を具備することを特徴とする、請求項2に記載の移動体撮像装置。
【請求項4】
前記第二筺体に設置され、前記第二偏向機を前記第二偏向機の回転軸周りに回転させる第二回転機を具備することを特徴とする、請求項3に記載の移動体撮像装置。
【請求項5】
前記第一偏向機を、前記第一偏向機の回転軸と平行に移動する移動機構を持つことを特徴とする、請求項4記載の移動体撮像装置。
【請求項6】
前記反射鏡は、前記移動体の撮像時に静止していることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の移動体撮像装置。
【請求項7】
前記撮像機で撮像した画像データに対し、回転処理を施す画像処理部を具備することを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の移動体撮像装置。
【請求項8】
前記偏向機は、前記回転機に比べ、応答速度が高く、可動範囲が狭いことを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の移動体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を追尾して撮像する、移動体撮像装置、及び、移動体撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象領域を移動する自動車や飛行体等の移動体を撮像する装置が知られている。移動中の移動体を追尾して撮影するには、移動体をカメラの撮像範囲に捕捉するように、カメラの光軸を制御する必要がある。カメラの光軸を移動体に向ける方法として、回転可能な複数の可動ミラーを各々異なる回転軸のモータで駆動することで、カメラの光軸を移動体に追尾させる方法が知られている。
【0003】
この技術は、例えば、特許文献1に開示されており、同文献の要約書には、「光不透過性の筐体B1に光透過性のウィンドウW1を設け、筐体B1内に撮像装置C1と、方位角回転反射ミラーM1と、傾斜角回転反射ミラーM2と、ミラーM1,M2を回転させるモータm1,m2とを配置した。対象視界からの光束Iは、ウィンドウW1を通過した後、ミラーM1により正反射され、更にミラーM2に当たって反射され、それにより対象像は正位像に戻り、その対象の正位像が撮像装置C1に入射する。」と記載されている。
【0004】
また、撮像カメラの光軸の一方向への偏向に反射鏡を用い、それと直行する方向への偏向に操作機構部を用いる従来技術もあり、特許文献2の要約書には、「撮像カメラ10の集光レンズ10aの焦点面に反射鏡10bを撮像素子10cに対応して走査自在に形成し、この撮像カメラ10を走査機構部11を介して走査自在に配設することにより、撮像カメラ10を直線的に走査した状態で、反射鏡10bを撮像素子10cのフレーム周期T毎に撮像カメラ10の走査方向と逆方向に三角走査するようにして、集光レンズ10aに取込まれた光波を反射鏡10bで1フレーム毎に撮像素子10cに導いて静止視野像を取得するように構成し、所期の目的を達成したものである。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−136234号公報
【特許文献2】特開平10−210246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の撮像装置は、撮像装置の光軸の可動範囲が、ミラーの狭い可動範囲によって制限されるものであるため、その監視範囲も必然的に限定されてしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献2の撮像装置は、同文献の
図1や
図8などから明らかなように、集光レンズと反射鏡を内蔵した結果、重量が重くなった撮像カメラ全体を走査機構部で走査する構成であるため、反射鏡の回転により撮像素子の光軸を移動させる方向に関しては、実用可能な撮像範囲が限定されるという特許文献1と同様の問題があるのに加え、走査機構部の走査により撮像素子の光軸を移動させる方向に関しては、大重量の撮像カメラ全体を走査させなければならないという構造上、応答速度が良くないという問題もあった。
【0008】
本発明は、これらの問題を踏まえてなされたものであり、反射鏡の回転により撮像素子の光軸を移動させる方向に関して実用可能な撮像範囲を拡張でき、かつ、撮像カメラ全体を走査することにより発生する応答遅延を回避できる移動体撮像装置、および、移動体撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の移動体撮像装置は、移動体を撮像する撮像機と、該撮像機を内部に固定した第一筐体と、前記撮像機の光軸上に配置された第一反射鏡と、該第一反射鏡を内蔵する第二筺体と、該第二筺体に設置され、前記第一反射鏡を回転させることで、前記撮像機の光軸を偏向する第一偏向機と、第一筺体に対し前記第二筺体を前記撮像機の光軸周りに回転させる第一回転機と、を具備し、前記第一偏向機と前記第一回転機の回転軸が同一であるものとした。
【0010】
また、本発明の他の移動体撮像装置は、移動体を撮像する撮像機と、該撮像機を内部に固定した第一筐体と、前記撮像機の光軸上に配置された第一反射鏡および第二反射鏡と、該第一反射鏡および第二反射鏡を内蔵する第二筺体と、該第二筺体に設置され、前記第一反射鏡を回転させることで、前記撮像機の光軸を偏向する第一偏向機と、第一筺体に対し前記第二筺体を前記撮像機の光軸周りに回転させる第一回転機と、を具備し、前記第一偏向機と前記第一回転機の回転軸が平行であるものとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反射鏡の回転により撮像素子の光軸を移動させる方向に関して実用可能な撮像範囲を拡張でき、かつ、撮像カメラ全体を走査することにより発生する応答遅延を回避することができる。すなわち、本発明によれば、広い監視領域を移動する、高速移動体であっても適切な追尾撮像が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1の移動体撮像装置の構造を示す図である。
【
図2】実施例1の移動体撮像装置と移動体のブロック図である。
【
図3】実施例1の偏向機と回転機の動作フローを表す図である。
【
図4】実施例1の画像処理器での処理を説明する図である。
【
図5】実施例2の移動体撮像装置の構造を示す図である。
【
図6】実施例3の移動体撮像装置の構造を示す図である。
【
図7】実施例4の移動体撮像装置の構造を示す図である。
【
図8】実施例5の移動体撮像装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の各実施例を説明する。なお、以下においては、便宜上、複数の実施例に分割して本発明に係る構成を説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【実施例1】
【0014】
平面上を移動する自動車や人などの移動体を追尾して撮像する、本発明の実施例1の移動体撮像装置1を、
図1から
図4を用いて説明する。
<本実施例の移動体撮像装置の構成>
図1は、本実施例の移動体撮像装置1の機能ブロック図である。ここに示すように、移動体撮像装置1は、反射鏡4と偏向機5からなる偏向部3と、この偏向部3を回転させる回転機6と、ズームレンズ7aと撮像部7bからなる撮像機7と、これらを制御する制御装置2を備えている。なお、偏向機5の動力源にはガルバノモータを用いており、角度検出手段を持つ。回転機6の動力源には、回転角度か回転数を観測できるステッピングモータ等を用いている。また、撮像部7bは、CCDイメージセンサ等の撮像素子を備えている。
【0015】
また、制御装置2は、偏向機5を制御して反射鏡4の偏向角度を調整する偏向機制御部2aと、回転機6を制御して偏向部3の偏向角度を調整する回転機制御部2bと、撮像機7を制御する撮像機制御部2cと、撮像機7で撮像した画像データ8を画像処理する画像処理部2dを備えている。なお、制御装置2内の各部の機能は、制御装置2が備える、ハードディスク等の補助記憶装置に記録されたプログラムを、半導体メモリ等の主記憶装置にロードし、これをCPU等の演算装置が実行することで実現されるものであるが、以下では、このような周知動作を適宜省略しながら説明する。
【0016】
図2は、走行中の自動車(移動体10)を追尾して撮像する移動体撮像装置1の概略図である。ここに示すように、移動体撮像装置1の筐体9a内には、移動体撮像装置1の構成要素のなかで相対的に重量の重いズームレンズ7aを備えた撮像機7が固定されている。また、筐体9aの上部には可動範囲が360°の回転機6が設置されており、ここに載置された偏向部3の偏向角度を調整する。なお、偏向部3は撮像機7より軽量であるものとする。さらに、偏向部3の筐体9bの上部には偏向機5が設置されており、相対的に重量の軽い反射鏡4の偏向角度を調整する。
【0017】
図2に示すように、本実施例の移動体撮像装置1では、偏向機5と回転機6の両回転軸が、破線矢印で示す撮像機7の光軸と同軸となるように配置されており、制御装置2が偏向機5と回転機6の偏向角度を適切に制御することで、撮像機7の光軸を常に移動体10の方向に向け、移動体10を追尾撮像することができる。
【0018】
ここで、偏向機5は、相対的に軽い反射鏡4を小さな偏向角度単位で素早く回転させるものであり、限定された可動範囲内で(例えば±20°)、移動体10を素早く追尾できるように、素早い位置決め性能(例えば1[m秒]程度)を備えている。このように、偏向機5は、反射鏡4の偏向角度を細やかに、かつ、素早く調整するものであるため、偏向機5を微動機構と称したり、偏向機5による偏向角度の制御を微動制御と称したりすることもある。
【0019】
一方、回転機6は、相対的に重い偏向部3を大きな偏向角度単位で相対的にゆっくりと回転させるものであり、例えば、360°を数秒間で回転する性能を備えている。上述したように、偏向機5の可動範囲は制限されているため、偏向機5単体では、偏向部3内部の反射鏡4を任意の方向に向けることはできないが、360°回転する回転機6を併用することで、反射鏡4を任意の方向に向け、撮像機7の光軸を任意の方向に向けることが可能となる。このように、回転機6は、偏向部3の偏向角度を粗く、かつ、相対的にゆっくりと調整できるものであるため、回転機6を粗動機構と称したり、回転機6による偏向角度の制御を粗動制御と称したりすることもある。
【0020】
撮像機7は、例えば、露光時間が数[m秒]、撮像周期が30[fps]の性能を有しており、画像データ8の撮像に要する露光時間中は偏向機5と回転機6の双方を静止させることで、画像データ8のブレを抑制することができる。
<本実施例の移動体撮像装置による移動体の追尾撮像方法>
図3は、本実施例の移動体撮像装置1が移動体10を追尾して撮像する撮像方法の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、監視対象の移動体10が単数であることを前提に説明を進めるが、以下で説明する追尾撮像方法に、監視対象の移動体10を順次切り替える制御を組み合わせれば、複数の監視対象を追尾撮像することもできる。
【0021】
図3に示すように、制御装置2が移動体10の追尾撮像制御を開始すると、まず、画像処理部2dは、撮像機7が直近に撮像した画像データ8中に、追尾対象の移動体10が写っているかを判断する(S1)。
【0022】
S1で画像データ8内の移動体10が写っていないと判断した場合には、回転機制御部2bは、回転機6を所定方向に所定量だけ(例えば、右方向に10°だけ)回転させた後(S2:粗動制御)、S1に戻る。この結果、画像データ8に移動体10が写るまで、S1とS2の処理が繰り返され、移動体10を撮像できる位置で、回転機6の回転が停止する。本実施例の移動体撮像装置1では、重量の重い撮像機7は筐体9aの内部に固定されており、回転機6は相対的に軽い偏向部3だけを回転させれば良いので、回転機6は、必要であれば数秒という短時間で、周囲360°に亘り移動体10の有無を確認することができる。なお、周囲360°を確認しても移動体10を検出できない場合は、
図3の処理を停止しても良いし、移動体10が撮像可能範囲に入るまで、回転機6を低速で回転継続させても良い。
【0023】
一方、S1で画像データ8内に移動体10が写っていると判断した場合には、偏向機制御部2aは、偏向機5の偏向角度が所定範囲(例えば±10°)内であるかを判断する(S3)。このS3の処理は、偏向機5の現在の偏向角度が可動範囲(例えば±20°)に対し余裕があるかを確認するためのものである。
【0024】
S3で偏向機5の偏向角度が所定範囲内ではないと判断した場合、すなわち、偏向機5の現在の偏向角度が可動範囲の限度に近く、更なる回転の余地が小さいと判断できる場合は、回転機制御部2bは、偏向機5の偏向角度の中立位置(0°)近傍で移動体10を撮像できるような方向に、回転機6を介して偏向部3を回転させた後(S2)、S1の処理に戻る。これにより、偏向機5の偏向角度0°近傍で移動体10を撮像する状態となるため、応答速度の速い偏向機5によって移動体10を高速追尾できる左右の範囲をリセットすることができる。
【0025】
一方、S3で偏向機5の偏向角度が所定範囲内であると判断した場合、すなわち、偏向機5の現在の偏向角度が可動範囲の中間部に収まっており、左右への回転の余地が大きいと判断できる場合(例えば±10°の範囲に収まる場合)は、偏向機制御部2aは、移動体10が画像データ8の中央に写る方向に偏向機5を介して反射鏡4を回転させた後(S4:微動制御)、所定の露光時間、反射鏡4を停止させ、撮像機制御部2cは撮像機7を制御し、移動体10が中央に写った状態の画像データ8を撮像する(S5)。その後、画像処理部2dでは、撮像した画像データ8に対し所望の処理を施す(S6)。
【0026】
図4は、画像処理部2dによる画像処理の一例である。反射鏡4の偏向角度を中立位置から回転させることで、画像データ8の中央に移動体10が写るようにすると、
図4のように、撮像した画像データ8の移動体10は傾いた状態となる。そこで、画像処理部2dは、実際の水平方向を基準とした点線で示す領域を抽出し、これを処理後画像データ8aとして、外部に出力する。これを受けた外部機器は、移動体10が自動車であればナンバープレートの読み取り、移動体10が人物であれば顔認識など、処理後画像データ8aに対する更なる画像処理を実行することができる。
【0027】
図3のS6の処理が完了すると、移動体10の追尾撮像を終了するかを判断する。終了する場合は、
図3の処理を完了し、終了しない場合は、S1に戻り、終了が指令されるまで、
図3の処理を繰り返す。
【0028】
以上で説明したように、本実施例の移動体撮像装置1では、固定側の筐体9aの内部に撮像機7を設置するとともに、可動範囲の狭い反射鏡4の微動機構(偏向機5)と、可動範囲の広い反射鏡4の粗動機構(回転機6)を、撮像機7の光軸と同軸に設けた。このように構成することで、本実施例の移動体撮像装置1では、従来構造に比べ、反射鏡4の可動範囲を拡張できることに加え、反射鏡4を任意の方向に向ける際に、移動体撮像装置1の構成要素の中で相対的に重い撮像機7を回転させる必要がないため、微動機構による微動制御、粗動機構による粗動制御の双方の応答速度と正確さを向上させることができる。
【実施例2】
【0029】
次に、
図5を用いて、実施例1の変形例である実施例2の移動体撮像装置1を説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0030】
実施例1では、
図2のように、偏向機5と回転機6の回転軸が撮像機7の光軸と一致するように、偏向機5と回転機6を配置したが、本実施例では、
図5のように、回転機6の回転軸が撮像機7の光軸と一致するように、かつ、偏向機5と回転機6の回転軸が平行になるように、偏向機5と回転機6を配置した。また、偏向部3内に、偏向機5によって回転駆動される反射鏡4aと、固定された反射鏡4bと、を設けた。
【0031】
このように、回転する反射鏡4aと、固定された反射鏡4bと、を介して、移動体10を撮像する構成とすることで、偏向機5と回転機6の回転軸が同軸でなくとも、移動体10を追尾撮像することができる。
【0032】
以上で説明した本実施例の移動体撮像装置1は、実施例1と同様の効果が得られることに加え、実施例1の反射鏡4の役割を、反射鏡4aと反射鏡4bに分担させるものであるため、偏向機5の回転負荷である反射鏡4bを軽量化でき、偏向機5の駆動による移動体10の追尾性能を更に高めることができる。また、偏向機5の設置位置の制限が緩和されるため、偏向部3の設計自由度を更に高めることができる。
【実施例3】
【0033】
次に、
図6を用いて、本発明の実施例3の移動体撮像装置1を説明する。なお、上述の実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0034】
実施例1および実施例2の移動体撮像装置1は、平面上を移動する自動車や人などの移動体10を追尾して撮像する撮像装置であったが、本実施例の移動体撮像装置1は、三次元空間上を自由に飛行するドローンなどの移動体10を追尾して撮像する撮像装置である。
【0035】
このため、本実施例の移動体撮像装置1では、偏向部3に、回転機6の回転軸に平行な回転軸を持つ偏向機5aと、回転機6の回転軸に垂直な回転軸を持つ偏向機5bを設置し、各々の偏向機によって、反射鏡4a、4bの偏向角度を、別個に調整できるようにした。
【0036】
本実施例の構成をとる場合も、移動体撮像装置1は、反射鏡4a、4bを任意の方向に向ける際に、移動体撮像装置1の構成要素の中で最も重い撮像機7を回転させる必要がないため、移動体撮像装置の回転側に撮像機を設けた従来構造に比べ、微動制御、粗動制御の双方の応答速度と正確さを向上させることができる。
【実施例4】
【0037】
次に、
図7を用いて、実施例3の変形例である実施例4の移動体撮像装置1を説明する。なお、上述の実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0038】
実施例3では、
図6のように、撮像機7の光軸と平行な回転軸に関しては微動機構(偏向機5a)と粗動機構(回転機6)を設け、撮像機7の光軸と垂直な回転軸に関しては微動機構(偏向機5b)のみを設けた。
【0039】
実施例1で説明したように、微動機構(偏向機5b)は可動範囲が限定されたものであるため、移動体10の上下方向の移動を、微動機構(偏向機5b)のみで追尾する実施例3の構成では、移動体10が高高度(或いは地面に近い低高度)に移動した場合には、移動体10を追尾撮像できない場合もある。
【0040】
そこで、本実施例では、反射鏡4bの可動範囲を拡張できるように、撮像機7の光軸と垂直な回転軸に関しても、可動範囲の狭い微動機構(偏向機5b)と可動範囲の広い粗動機構(回転機6b)を設けた。これらの協働により、撮像機7の光軸の仰角方向または俯角方向への可動範囲を大幅に拡張でき、移動体10の上下方向への追尾可能範囲を拡張することができる。なお、本実施例の構成を採る場合、移動体10に近い反射鏡4aの縦方向長さを実施例3より長くするとともに、偏向部3の開口部の縦方向長さも実施例3より長
くする必要がある。これは、反射鏡4bの回転範囲の拡張に伴い、反射鏡4aに向かう撮像機7の光軸の可動範囲が拡張するため、これに対応させ反射鏡4aの縦方向の長さを長くする必要があるからである。
【0041】
本実施例のように、微動機構と粗動機構を二組設けた場合、実施例1の
図3に例示した制御を交互に実行すれば、水平方向と垂直方向の夫々について、移動体10を追尾撮像することができる。
【0042】
以上で説明した本実施例の構成によれば、実施例3と同様の効果に加え、移動体10の上下方向の移動をより広く追尾撮像できるという効果を得ることができる。
【実施例5】
【0043】
次に、
図8を用いて、実施例4の変形例である実施例5の移動体撮像装置1を説明する。なお、上述の実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0044】
実施例4では、反射鏡4bの回転に伴い撮像機7の光軸が仰角方向または俯角方向に大きく変化しても、反射鏡4aに投影されるように、反射鏡4aの縦方向長さを長くする必要があった。しかしながら、偏向機5aの回転負荷でもある反射鏡4aの大型化(重量化)は、偏向機5aの応答速度の劣化を招くという問題がある。
【0045】
そこで、本実施例では、反射鏡4aの大きさを維持したまま、反射鏡4bの可動範囲の拡張に対応できるようにした。すなわち、反射鏡4bの偏向角度と連動して偏向機5aを上下させる偏向機移動機構11を追加することで、比較的小さな反射鏡4aを用いた場合であっても、反射鏡4a上の適切な位置に撮像機7の光軸が投影されるようにした。
【0046】
図8は、移動体10が点線の位置から実線の位置に上昇した際に、反射鏡4bが垂直に近づく方向に回転するとともに、偏向機移動機構11によって偏向機5aが上方に移動した状態を示している。
【0047】
以上で説明した本実施例の構成によれば、実施例4の構成と同様の効果を得ることができるのに加え、移動体10の左右方向の移動に対する追尾性能を実施例4の構成よりも高めることができる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 移動体撮像装置、
2 制御装置、
2a 偏向機制御部、
2b 回転機制御部、
2c 撮像機制御部、
2d 画像処理部、
3 偏向部、
4、4a、4b 反射鏡、
5、5a、5b 偏向機、
6、6a、6b 回転機、
7 撮像機、
7a ズームレンズ、
7b 撮像部、
8 画像データ、
8a 処理後画像データ、
9a、9b 筐体、
10 移動体、
11 偏向機移動機構
【要約】
【課題】高速移動体の追尾が可能で、かつ広い監視範囲を持つ移動体監視装置を提供する。
【解決手段】本発明の移動体撮像装置は、移動体を撮像する撮像機と、該撮像機を内部に固定した第一筐体と、前記撮像機の光軸上に配置された第一反射鏡および第二反射鏡と、該第一反射鏡および第二反射鏡を内蔵する第二筺体と、該第二筺体に設置され、前記第一反射鏡を回転させることで、前記撮像機の光軸を偏向する第一偏向機と、第一筺体に対し前記第二筺体を前記撮像機の光軸周りに回転させる第一回転機と、を具備し、前記第一偏向機と前記第一回転機の回転軸が平行であるものとした。
【選択図】
図2