【文献】
KAWABATA, Shinji, et al.,Clinical Study on Modified Boron Neutron Capture Therapy for Newly Diagnosed Glioblastoma,Advances in the Biology, Imaging and Therapies for Glioblastoma,2011年,p. 325-338
【文献】
SAKURAI, Yoshinori, et al.,Experiments for Semiconductor Memory Damage due to Nuclear Radiations,Proceedings of IRPA12: 12th Congress of the International Radiation Protection Association: Strengthening Radiation Protection Worldwide - Highlights, Global Perspective and Future Trends,2010年,p.1−5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮蔽壁又は前記遮蔽扉には、前記薬剤供給管を前記照射室の室内から前記室外に引き出すための穴状の管配置部が形成されている、請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図には、XYZ座標系を設定し、各構成要素の位置関係の説明にX,Y,Zを用いるものとする。ここで、X軸は中性子線照射部8から出射される中性子線Nの出射方向であり、Z軸は床面に対して垂直方向である。また、Y軸は中性子線Nの出射方向(X軸方向)と床面に対して垂直方向(Z軸方向)のそれぞれに直交する方向である。
【0014】
中性子捕捉療法システムは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法は、ホウ素(
10B)が投与された患者(被照射体)に対する中性子線の照射によりがん治療を行う。
【0015】
図1に示されるように、中性子捕捉療法システム1は、治療用の中性子線Nを発生させて照射するための中性子線発生部2と、患者Sに中性子線Nを照射するための照射室3と、照射準備を行うための準備室4と、作業工程を管理するための管理室6を備えている。
【0016】
中性子線発生部2は、照射室3の室内に中性子線Nを発生させて患者Sへ中性子線Nを照射可能に構成されている。中性子線発生部2は、サイクロトロンといった加速器7と、荷電粒子線Pから中性子線Nを生成する中性子線照射部8と、荷電粒子線Pを中性子線照射部8へ輸送するビーム輸送路12と、を備えている。加速器7及びビーム輸送路12は、荷電粒子線生成室11の室内に配置されている。荷電粒子線生成室11は、コンクリート製の遮蔽壁Wに覆われた閉鎖空間である。
【0017】
加速器7は、陽子である荷電粒子を加速して、陽子線である荷電粒子線Pを作り出し、出射する。加速器7は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Pを生成する能力を有している。
【0018】
ビーム輸送路12は、荷電粒子線Pを中性子線照射部8に出射する。ビーム輸送路12は、一端側が加速器7に接続され、他端側が中性子線照射部8に接続されている。なお、ビーム輸送路12には、必要に応じて、ビーム調整部、電流モニタ、荷電粒子走査部といったビーム制御装置が設けられていてもよい。ビーム調整部は、荷電粒子線Pの進行方向やビーム径を制御する。電流モニタは、荷電粒子線Pの電流値(つまり、電荷、照射線量率)をリアルタイムで測定する。荷電粒子線走査部は、荷電粒子線Pを走査し、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置を制御する。
【0019】
中性子線照射部8は、中性子線Nを生成するためのターゲットTと、中性子線Nを減速するための減速材8aと、遮蔽体8bとを含んでいる。なお、減速材8a及び遮蔽体8bは、モデレータを構成する。
【0020】
ここで、中性子線照射部8において生成される中性子線Nは、速中性子線、熱外中性子線、熱中性子線及びガンマ線を含んでいる。このうちの熱中性子線が、主に、患者Sの体内の腫瘍中に取り込まれたホウ素と核反応して有効な治療効果を発揮する。なお、中性子線Nのビームに含まれる熱外中性子線の一部も、患者Sの体内で減速されて上記治療効果を発揮する熱中性子線となる。熱中性子線は、0.5eV以下のエネルギーの中性子線である。
【0021】
ターゲットTは、荷電粒子線Pの照射を受けて中性子線Nを発生させるものである。ターゲットTは、例えば、ベリリウム(Be)により形成され、直径160mmの円板状をなしている。
【0022】
減速材8aは、ターゲットTから出射される中性子線Nを減速させるものである。減速材8aにより減速されて所定のエネルギーに低減された中性子線Nは治療用中性子線とも呼ばれる。減速材8aは、例えば異なる複数の材料から成る積層構造とされている。減速材8aの材料は、荷電粒子線Pのエネルギー等の諸条件によって適宜選択される。
【0023】
例えば、加速器7からの出力が30MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材8aの材料は、鉛、鉄、アルミニウム、又はフッ化カルシウムとすることができる。また、加速器7からの出力が11MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材8aの材料は、重水(D2O)又はフッ化鉛とすることができる。また、加速器7からの出力が2.8MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてリチウムターゲットを用いる場合には、減速材8aの材料は、フルエンタール(商品名;アルミニウム、フッ化アルミ、フッ化リチウムの混合物)とすることができる。また、加速器7からの出力が50MeVの陽子線であり、ターゲットTとしてタングステンターゲットを用いる場合には、減速材8aの材料は、鉄又はフルエンタールとすることができる。
【0024】
遮蔽体8bは、中性子線N及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等の放射線が外部へ放出されないよう遮蔽するものであり、荷電粒子線生成室11と照射室3とを隔てる遮蔽壁W1に少なくともその一部が埋め込まれている。
【0025】
中性子捕捉療法システム1において、照射室3と準備室4とは連絡室14を介して繋がっている。
【0026】
照射室3は、中性子線Nを患者Sに照射するために、患者Sが室内に配置される部屋である。照射室3は、ビーム輸送路12が延びた方向の延長線上に配置されている。照射室3の大きさは、一例として幅3.5m×奥行5m×高さ3mである。照射室3は、遮蔽壁W2に囲まれた遮蔽空間3aと、患者Sが出入りする出入口3bと、出入口3bを開放及び閉鎖する遮蔽扉D1とにより構成されている。
【0027】
遮蔽壁W2は、遮蔽空間3aを形成する。この遮蔽空間3aでは、照射室3の室外から室内へ放射線が侵入すること、及び、室内から室外へ放射線が放出されることが抑制されている。すなわち、遮蔽壁W2は、照射室3の室内から室外への中性子線Nの放射を遮断する。この遮蔽壁W2は、荷電粒子線生成室11を画成する遮蔽壁Wと一体に形成されている。また、遮蔽壁W2は、厚さが2m以上のコンクリート製の壁である。荷電粒子線生成室11と照射室3の間には、荷電粒子線生成室11と照射室3とを隔てる遮蔽壁W1が設けられている。この遮蔽壁W1は、遮蔽壁Wの一部をなしている。
【0028】
遮蔽壁W2の一部には、出入口3bが設けられている。そして、この出入口3bには、遮蔽扉D1が配置されている。遮蔽扉D1は、遮蔽空間3aにおける放射線が連絡室14に放射されることを抑制するためのものである。遮蔽扉D1は、鉛等の放射線遮蔽部材からなる。遮蔽扉D1は、照射室3の室内に設けられたレール上をモータ等により駆動力を与えられて移動する。遮蔽扉D1が重量物であるため、遮蔽扉D1を駆動するための機構には、高トルクモータや減速器等が用いられる。
【0029】
なお、遮蔽扉D1は、照射室3への作業者の出入りを報知する機能を有していてもよい。例えば、照射室3の室内に治療台15が配置された状態で、遮蔽扉D1を閉めることにより照射室3からの作業者の退避を確認するものであってもよい。
【0030】
準備室4は、患者Sに中性子線Nを照射するために必要な準備作業を実施するための部屋である。準備作業には、例えば、治療台15への患者Sの拘束や、コリメータと患者Sとの位置合わせなどがある。準備室4は、Y軸方向に沿って照射室3から離間するように配置されている。準備室4と照射室3との間には、準備室4と照射室3とを隔てる遮蔽壁W3が設けられている。遮蔽壁W3の厚さは、例えば3.2mである。すなわち、準備室4と照射室3とは、Y軸方向に沿って3.2mだけ離間している。
【0031】
なお、準備室4は、照射室3のように遮蔽壁Wに囲まれた遮蔽空間であってもよいし、遮蔽壁Wに囲まれていない非遮蔽空間であってもよい。
【0032】
遮蔽壁W3には、準備室4から照射室3まで連通する連絡室14が設けられている。連絡室14は、患者Sを拘束した治療台15を準備室4と照射室3との間で移動させるための部屋である。連絡室14の大きさは、一例として幅1.5m×奥行3.2m×高さ2.0mである。準備室4と連絡室14との間には、扉D2が配置されている。
【0033】
中性子捕捉療法システム1は、管理室6を備えている。管理室6は、中性子捕捉療法システム1を用いて実施される全体工程を管理するための部屋である。管理室6には管理者が入室し、管理室6の室内に配置された監視機器及び中性子線発生部2を操作するための制御装置を用いて全体工程を管理する。例えば、管理室6に入室した管理者は、準備室4における準備作業の様子を管理室6の室内から目視により確認する。また、管理者は、制御装置を操作して、例えば、管理者は、制御装置を操作して、中性子線Nの照射の開始と停止とを制御する。
【0034】
図2に示されるように、中性子捕捉療法システム1は、輸液バッグ16に保持されている薬剤を患者Sに供給する薬剤供給ポンプ(薬剤供給装置)17と、薬剤供給ポンプ17から患者Sまで薬剤を導く薬剤供給管18とを備えている。これら薬剤供給ポンプ17と薬剤供給管18とを備えることにより、照射室3内に配置された患者Sに対して、中性子線Nの照射中に薬剤を供給することが可能になる。
【0035】
例えば、一人の患者Sに対して1回の治療を行う場合には、500mLの薬剤を投与する。この薬剤の量において、中性子線Nの照射前に80%(400mL)を投与し、照射中に20%(100mL)を投与する。また、薬剤は、薬剤供給ポンプ17から患者Sに対して、照射の2時間前から投与が開始され、照射の終了と共に投与が停止される。従って、この薬剤供給ポンプ17は、単位時間当たりの供給量を制御する機能を有し、制御機能は、薬剤供給ポンプ17に内蔵され、半導体部品であるマイクロコンピュータ等の制御部17aにより実現されている。また、薬剤供給ポンプ17は、供給量の制御機能のほか、種々の異常状態を検知して警報を発する機能を有していてもよい。
【0036】
薬剤供給管18は、2.0mm〜4.0mmの外径を有するチューブである。薬剤供給管18の一端は、薬剤供給ポンプ17に接続され、他端には翼状針や留置針といった注射針が接続されている。そして、注射針を介して患者Sに薬剤が供給される。ここで、薬剤供給ポンプ17は、準備室4に配置され、患者Sは照射室3に配置されている。換言すると、薬剤供給ポンプ17は、照射室3の室外に配置されている。従って、薬剤供給ポンプ17と患者Sとを接続する薬剤供給管18は、準備室4から照射室3まで連絡室14を介して延在している。
【0037】
図3に示されるように、中性子捕捉療法システム1は、照射室3の床19及び連絡室14の床21に形成された迷路状の管配置溝(管配置部)22を有している。管配置溝22は、遮蔽扉D1を閉鎖した状態(
図3の想像線で示す遮蔽扉D1a)において、薬剤供給管18が遮蔽扉D1に潰されて薬剤の流路が閉塞されないように照射室3から連絡室14へ引き出すものである。
【0038】
管配置溝22は、上方が開口した断面矩形状の溝形状を有している。管配置溝22は、薬剤供給管18の外径と略同等、或いは僅かに小さい溝幅を有している。このような溝幅によれば、薬剤の流路を閉塞することなく、薬剤供給管18を溝側面で挟み込んで保持することができる。また、管配置溝22は、薬剤供給管18の外径と略同等或いは薬剤供給管18の外径よりも大きい溝深さを有している。このような溝深さによれば、管配置溝22から薬剤供給管18が突出することがないので、遮蔽扉D1を閉鎖状態にしたときに薬剤供給管18が潰されて薬剤の流路が閉塞されることを抑制できる。
【0039】
また、管配置溝22は、平面視してクランク状の平面形状をなし、第1の部分22aと、第2の部分22bと、第3の部分22cと、を有している。第1の部分22aは、遮蔽扉D1を閉鎖状態にしたときに、遮蔽扉D1に覆われない床領域19aから遮蔽扉D1の端面に覆われる床領域19bまで遮蔽扉D1の厚さ方向、すなわちY軸方向(第1の方向)に延在している。第2の部分22bは、第1の部分22aに連続し、遮蔽扉D1の厚さ方向と直交する方向、すなわちX軸方向(第2の方向)に延在している。すなわち、第1の部分22aに対して第2の部分22bは、管配置溝22の延在方向が折れ曲がるように接続されている。第3の部分22cは、第2の部分22bに連続し、遮蔽扉D1を閉鎖状態にしたときに、床領域19bから遮蔽扉D1に覆われない連絡室14の床21まで遮蔽扉D1の厚さ方向に延在している。すなわち、第2の部分22bに対して第3の部分22cは、管配置溝22の延在方向が折れ曲がるように接続されている。
【0040】
この中性子捕捉療法システム1は、患者Sに対して中性子線照射部8から中性子線Nを照射する。このとき、患者Sは照射室3に配置されると共に、薬剤供給ポンプ17から薬剤の供給を受けている。そして、薬剤供給ポンプ17は、制御部17aを有しているため、患者Sに対して所望量の薬剤を供給することが可能である。さらに、薬剤供給ポンプ17は、遮蔽壁W2に囲まれた照射室3の室外に配置されている。ここで、マイクロコンピュータ等の半導体部品に対して放射線が照射されると、トータルドーズ効果、はじき出し損傷効果、シングルイベント効果といった現象が生じるおそれがあり、制御部17aの誤作動を生じさせる原因となり得る。これに対して、薬剤供給ポンプ17は、遮蔽壁W2に囲まれた照射室3の室外に配置されているために薬剤供給ポンプ17に照射される放射線の線量は、照射室3の室内に配置したときよりも低減される。従って、放射線の照射による制御部17aの誤動作の発生を抑制することが可能になり、照射中において所望量の薬剤を確実に供給して、治療効率を向上させることができる。
【0041】
さらに、中性子捕捉療法システム1では、他の放射線治療システムと比較して照射室3内が放射化しやすい。しかし、中性子捕捉療法システム1では、放射化しやすい照射室3の室外に薬剤供給ポンプ17を配置することにより薬剤供給ポンプ17に照射される放射線の線量が、照射室3の室内に配置したときよりも低減される。従って、中性子捕捉療法システム1は、照射中において所望量の薬剤を確実に供給して、治療効率を向上させることができる。
【0042】
また、出入口3bを塞いだ状態の遮蔽扉D1と遮蔽壁W2との間には、薬剤供給管18を照射室3の室内から室外に引き出すための管配置溝22が形成されている。このような管配置溝22によれば、溝の開口部から薬剤供給管18を容易に配置することができる。また、遮蔽扉D1を開放したときに、管配置溝22に配置された薬剤供給管18を視認することができる。
【0043】
また、迷路状の管配置溝22は、Y軸方向に延在する第1の部分22aと、X軸方向に延在し、第1の部分22aに接続された第2の部分22bと、を有する。このような管配置溝22によれば、管配置溝22における第1の部分22aと第2の部分22bとの間の接続部において、管配置溝22の延在方向が異なる。そうすると、第1の部分22aを通過した中性子線Nが管配置溝22に侵入した場合に、第1の部分22aと第2の部分22bとの接続部において、壁に衝突して大幅に減衰することになる。従って、照射室3の室内から室外への中性子線Nの放射を抑制することができる。
【0044】
また、準備室4には、中性子線Nの照射中であっても人が立ち入ることが可能である。このため、薬剤供給ポンプ17を準備室4に配置することにより、中性子線Nの照射中において薬剤供給ポンプ17の状態を監視し、薬剤供給ポンプ17の操作を行うことができる。従って、中性子線Nの照射中において薬剤供給ポンプ17から供給される薬剤の供給量を最適な状態に維持することができるため、治療効率を一層高めることが可能になる。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る中性子捕捉療法システム1Aについて説明する。
図4に示されるように、中性子捕捉療法システム1Aは、管配置溝(管配置部)23が照射室3の側壁24及び連絡室14の側壁26に形成されている点で、中性子捕捉療法システム1と相違する。その他の構成は中性子捕捉療法システム1と同様であるため、以下、管配置溝23について詳細に説明する。
【0046】
管配置溝23は、第1実施形態に係る管配置溝22と同様の溝幅及び溝深さを有している。管配置溝23は、平面視してクランク状の形状をなし、照射室3側の第1の部分23aと、第2の部分23bと、連絡室14側の第3の部分23cと、を有している。第1の部分23aは、照射室3の側壁24における領域24aから領域24bまで遮蔽扉D1の厚さ方向、すなわちY軸方向(第1の方向)に沿って延在している。ここで領域24aは、遮蔽扉D1を閉鎖状態(
図4の二点鎖線で図示される遮蔽扉D1a)にしたときに、照射室3の側壁24において遮蔽扉D1に覆われない領域である。また、領域24bは、遮蔽扉D1を閉鎖状態にしたときに、遮蔽扉D1の端面に覆われる領域である。第2の部分23bは、第1の部分23aに連続し、遮蔽扉D1の厚さ方向と直交する方向、すなわち床19に対して交差するZ軸方向(第2の方向)に沿って延在している。第3の部分23cは、第2の部分23bに連続し、領域24bから連絡室14の側壁26まで遮蔽扉D1の厚さ方向に沿って延在している。ここで、連絡室14の側壁26は、遮蔽扉D1を閉鎖状態にしたときに遮蔽扉D1に覆われない領域である。
【0047】
このように照射室3の側壁24及び連絡室14の側壁26に形成された管配置溝23によれば、照射室3の床19及び連絡室14の床21に凹凸を生じさせることがないので、患者Sを安全に移動させることができる。
【0048】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る中性子捕捉療法システム1Bについて説明する。
図5に示されるように、中性子捕捉療法システム1Bは、連絡室14が配置されることなく照射室3に準備室4が隣接されている点と、管配置穴(管配置部)27が照射室3と準備室4とを隔てる遮蔽壁W4に設けられた貫通穴である点と、が中性子捕捉療法システム1と相違する。その他の構成は中性子捕捉療法システム1と同様であるため、以下、管配置穴27について詳細に説明する。
【0049】
管配置穴27は、薬剤供給管18の外径と同等又は僅かに大きい穴径を有している。このような穴径によれば、照射室3の室内から室外へ薬剤供給管18を挿通させる作業を容易に実施することができる。
【0050】
管配置穴27は、平面視してクランク状の形状をなし、第1の部分27aと、第2の部分27bと、第3の部分27cと、を有している。第1の部分23aは、遮蔽扉D1の厚さ方向、すなわちY軸方向(第1の方向)に延在している。第2の部分23bは、第1の部分23aに連続し、遮蔽扉D1の厚さ方向と直交する方向、すなわちX軸方向(第2の方向)に延在している。なお、第2の方向は、床19と交差する方向(すなわちZ軸方向)であってもよい。第3の部分27cは、第2の部分27bに連続し、遮蔽扉D1の厚さ方向に延在している。
【0051】
このように遮蔽壁W4に形成された管配置穴27によれば、照射室3の床19及び準備室4の床に凹凸を生じさせることがないので、患者Sを安全に移動させることができる。また、管配置穴27は、遮蔽壁W4の任意の場所に設けることができるため、管配置穴27の配置における自由度を高めることができる。
【0052】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る中性子捕捉療法システム1Cについて説明する。
図6に示されるように、中性子捕捉療法システム1Cは、照射室3の上方に遮蔽壁W6に囲まれた遮蔽室28を有する点と、管配置穴(管配置部)29が照射室3と遮蔽室28とを隔てる遮蔽壁W6に設けられた貫通穴である点で、中性子捕捉療法システム1と相違する。その他の構成は中性子捕捉療法システム1と同様であるため、以下、管配置溝23について詳細に説明する。
【0053】
管配置穴29は、薬剤供給管18の外径と同等又は僅かに大きい穴径を有している。このような穴径によれば、照射室3の室内から室外へ薬剤供給管18を挿通させる作業を容易に実施することができる。
【0054】
管配置穴29は、側面視してクランク状の形状をなし、第1の部分29aと、第2の部分29bと、第3の部分29cと、を有している。第1の部分29aは、床19と直交する方向、すなわちZ軸方向(第1の方向)に沿って延在している。第2の部分29bは、第1の部分29aに連続すると共に床19と平行な方向、すなわちX軸方向(第2の方向)に沿って延在している。なお、第2の方向は、Y軸方向であってもよい。第3の部分29cは、第2の部分29bに連続し、床19と直交する方向に沿って延在している。
【0055】
このように側壁に形成された管配置穴29によれば、照射室3の床19に凹凸を生じさせることがないので、患者Sを安全に移動させることができる。
【0056】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
【0057】
管配置溝22は、クランク状に限定されることはなく、第1の部分と第1の部分の延在方向とは異なる方向に延在する第2の部分を有していればよい。例えば、
図7の(a)〜(d)に示されるように、平面視してS字状の管配置溝22A、V字状の管配置溝22B、円弧状の管配置溝22C、鋸刃状の管配置溝22Dであってもよい。
【0058】
また、第1の方向及び第2の方向は、互いに延在方向が異なっていればよく、第1の方向が遮蔽扉D1の厚さ方向に限定されることはないし、第2の方向が遮蔽扉D1の厚さ方向と直交する方向に限定されることはない。例えば、
図7(b)に示されるように、第1の方向が遮蔽扉D1の厚さ方向に対して傾いた方向であってもよく、第2の方向が第1の方向に対して交差すると共に遮蔽扉D1の厚さ方向に対して傾いた方向であってもよい。
【0059】
また、管配置溝22の断面形状は、矩形状に限定されることはなく、
図8の(a)、(b)に示されるように、断面V字状の管配置溝22E、断面U字状の管配置溝22Fであってもよい。また、管配置穴27の断面形状は、矩形状に限定されることはなく、
図8の(c)に示されるように、断面円形の管配置穴27Aであってもよい。