【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の第1の発明は、静止部材に固定される固定輪と、
前記固定輪と相対回転可能に配設され、回転部材に固定される回転輪と、
前記固定輪と回転輪の夫々の相対向する周面に設けられた軌道と、
前記相対向する軌道間に転動自在に組み込まれる転動体と、
前記固定輪と回転輪の軸方向端部の開放領域に備えられて軸受内部空間を密封する密封装置とを少なくとも含み、
前記密封装置は、前記固定輪の軸方向端部の開放領域に配設されるスリンガと、前記回転輪の軸方向端部の開放領域に配設されるシール部材とで構成され、
前記スリンガは、円環状に形成され、固定輪の周面に固定される環状筒部と、前記環状筒部から径方向に突出して一体に形成される円板部とで構成され、
前記シール部材は、前記スリンガよりも軸受内部空間寄りに配設され、周縁を前記回転輪に固定した円板状に形成するとともに、前記回転輪に固定された前記周縁と径方向で反対に位置し、前記固定輪に摺接する環状の第一リップと、円板状の中途位置から傾斜状に突出して前記スリンガに摺接する環状の第二リップとを少なくとも一体に備えており、
前記第二リップは、前記スリンガと摺接するリップ先端部分の肉厚を、他のリップ部分の肉厚と比して厚く形成し、かつ前記リップ先端部分の厚さ方向の一端部は厚さ方向に突出した突出部を環状に形成し、
前記突出部は、厚さ方向で先端側に向かうほど幅狭状に形成されて前記スリンガと線で摺接する摺接部を構成し、
前記スリンガは、前記円板部を軸方向でシール部材方向に向けて傾斜状に形成するとともに、前記円板部の先端を、軸方向で前記シール部材の摺接部上方を覆うように
軸受内部方向に折り曲げて
前記環状筒部と略平行な環状のフランジ部を一体に形成していることを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0009】
本発明によれば、第二リップは、スリンガと摺接するリップ先端部分の肉厚を、他のリップ部分の肉厚と比して厚く形成し、かつ前記リップ先端部分の厚さ方向の一端部は厚さ方向に突出した突出部を環状に形成した構成を採用したため、リップ先端部分は高速回転時の遠心力影響を受け易い。従って、回転時に作用する遠心力により、第二リップは、スリンガとの摺接面から離れる方向に変形するため、摺接面における接触力を減少させることができる。これにより、高速回転時のシール摺動によるトルク増加、摺接するスリンガの倒れから受ける不安定なシール摺接状態も抑制される。
前記突出部は、厚さ方向で先端側に向かうほど幅狭状に形成されてスリンガと線で摺接する摺接部を構成したため、非回転時から極小の接触幅で接触し、使用回転領域においても、スリンガとの摺接幅変化を抑制し、一定幅の安定した摺接を実現させている。
また、スリンガの円板部を軸方向でシール部材方向に向けて傾斜状に形成するとともに、円板部の先端を、軸方向で前記シール部材の摺接部上方を覆うように折り曲げて環状のフランジ部を一体に形成したことで、スリンガの形状変形を抑制してスリンガの倒れ精度を確保することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記第二リップにおけるリップ先端の突出部と厚さ方向で反対側の他端部は段差状に形成されて前記スリンガのフランジ部内周面との間でラビリンス隙間を形成していることを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0011】
本発明によれば、前記リップ先端の他端部とスリンガのフランジ部内周面との間にラビリンス隙間を有しているため、密封領域が増え、スリンガと接する突出部による密封領域よりも以前にて、外部からの異物の侵入を防ぐことができる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、前記第二リップにおけるリップ先端の突出部と厚さ方向で反対側の他端部は段差状に形成されて前記スリンガのフランジ部内周面に摺接することを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0013】
本発明によれば、前記リップ先端の他端部がスリンガのフランジ部内周面に摺接しているため、密封領域が増え、スリンガと接する突出部による密封領域よりも以前にて、外部からの異物の侵入を防ぐことができる。
【0014】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記シール部材は、軸方向において、前記スリンガのフランジ部の外周面上を覆うように突出する環状の庇部が形成されていることを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0015】
本発明によれば、前記庇部の内周面とスリンガのフランジ部外周面との間に、さらにラビリンス隙間が形成されるため、密封領域がさらに増え、リップ先端の他端部とスリンガのフランジ部内周面との間に形成された密封領域以前にて、外部からの異物の侵入を防ぐことができる。
【0016】
第5の発明は、静止部材に固定される固定輪と、
前記固定輪と相対回転可能に配設され、回転部材に固定される回転輪と、
前記固定輪と回転輪の夫々の相対向する周面に設けられた軌道と、
前記相対向する軌道間に転動自在に組み込まれる転動体と、
前記固定輪と回転輪の軸方向端部の開放領域に備えられて軸受内部空間を密封する密封装置とを少なくとも含み、
前記密封装置は、前記固定輪の軸方向端部の開放領域に配設されるスリンガと、前記回転輪の軸方向端部の開放領域に配設されるシール部材とで構成され、
前記スリンガは、円環状に形成され、固定輪の周面に固定される環状筒部と、前記環状筒部から径方向に突出して一体に形成される円板部とで構成され、
前記シール部材は、前記スリンガよりも軸受内部空間寄りに配設され、周縁を前記回転輪に固定した円板状に形成するとともに、前記回転輪に固定された前記周縁と径方向で反対に位置し、前記固定輪に摺接する環状の第一リップと、円板状の中途位置から傾斜状に突出して前記スリンガに摺接する環状の第二リップとを少なくとも一体に備えており、
前記第二リップは、前記スリンガと摺接するリップ先端部分の肉厚を、他のリップ部分の肉厚と比して厚く形成し、かつ前記リップ先端部分の厚さ方向の一端部は厚さ方向に突出した突出部を環状に形成し、
前記突出部は、厚さ方向で先端側に向かうほど幅狭状に形成されて前記スリンガと線で摺接する摺接部を構成し、
前記スリンガは、前記円板部の先端を、軸方向で前記シール部材の摺接部上方を覆うように
軸受内部方向に折り曲げて
前記環状筒部と略平行な環状のフランジ部を一体に形成しており、
前記スリンガの円板部は、軸方向に窪む環状の凹部が、円板部の径方向において複数形成されることにより、複数の段付き形状に形成されていることを特徴とする転がり軸受としたことである。
【0017】
本発明によれば、スリンガの形状変形を抑制してスリンガの倒れ精度を確保することができる。