特許第6439324号(P6439324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000002
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000003
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000004
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000005
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000006
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000007
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000008
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000009
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000010
  • 特許6439324-車両の制御装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439324
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20181210BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20181210BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20181210BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20181210BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20181210BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20181210BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   B60L15/20 K
   B60K6/387
   B60L11/14
   B60W10/02
   B60W10/08
   F02D29/00 G
   B60W10/00 102
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-173661(P2014-173661)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-48999(P2016-48999A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄秋
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030727(JP,A)
【文献】 特開2010−260375(JP,A)
【文献】 特開2012−076539(JP,A)
【文献】 特開2013−181554(JP,A)
【文献】 特開2011−255763(JP,A)
【文献】 特開2005−130564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60L 11/14
B60K 6/387
B60W 10/02
B60W 10/04
B60W 10/08
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの回転駆動力が伝達される第1回転軸に係合部材を介して第2回転軸が切離し可能に接続される車両の制御装置であって、
前記第1回転軸と前記第2回転軸の回転数の情報を取得する回転数取得部と、
前記第1回転軸と前記第2回転軸を接続するときに、前記第1回転軸と前記第2回転軸の回転数差が所定の目標回転数差以内になるまで、前記動力源に対して回転数制御を行う第1制御部と、
前記回転数差が前記目標回転数差以内になると、前記回転数制御を終了して前記動力源に対するトルク制御を行うとともに、前記第1回転軸と前記第2回転軸を接続する接続方向に前記係合部材を移動させる接続制御を行う第2制御部と、
前記第1回転軸と前記第2回転軸を切り離すときに、前記第1回転軸と前記第2回転軸を切り離す切離し方向に前記係合部材を移動させる切離し制御を行う第3制御部と、
前記動力源に対して、前記第1回転軸と前記第2回転軸の切離しをアシストするトルクを発生させるアシストトルク制御を行う第4制御部と、
前記車両の加速度の情報を取得する加速度取得部と、
を備え、
前記トルク制御では、前記動力源に対する指示トルクをゼロとするゼロトルク制御が行われ、前記接続制御では、前記係合部材が前記接続方向に向けて付勢され
前記切離し制御では、前記係合部材が前記切離し方向に向けて付勢され、
前記第4制御部は、前記アシストトルク制御のトルク量を前記加速度に基づいて決定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記回転数取得部は、前記動力源に備えられた第1回転センサから前記第1回転軸の回転数の情報を取得し、前記第2回転軸に備えられた第2回転センサから前記第2回転軸の回転数の情報を取得する、請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源からの回転駆動力が伝達される第1回転軸に係合部材を介して第2回転軸が切離し可能に接続される車両の制御装置に関し、特に、動力源を用いて回転数を同期させて第1回転軸と第2回転軸を接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンなどの内燃機関に加えて、電動機やモータジェネレータなどの動力源を備えるハイブリッド車両が知られている。このようなハイブリッド車両の制御装置として、2つ以上の係合要素における係合と解放とを切り替えることで3つ以上の変速段を実現すると共に、2つ以上の係合要素を同時係合状態にして変速段の切り替えを行う制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の制御装置では、現在の変速段よりも2つ以上離れた変速段へ変速する場合に、出力軸に動力を伝えない状態にする制御、及びモータジェネレータに対する回転数制御を行ってから、2つ以上離れた変速段へ直接切り替える。つまり、2つ以上の係合要素を解放してニュートラル状態にしてから、要求の変速段へ一気に切り替える制御を行う。これにより、変速開始から変速完了までの時間が効果的に短縮される。
【0004】
また、原動機に電動モータを用いる電気自動車の制御装置として、係合方向に突設した複数のクラッチ歯同士を噛み合わせることにより係合する噛み合いクラッチの係合制御を行うと共に、係合制御時に、噛み合いクラッチの係合によって動力を伝達するモータジェネレータの回転数制御を行う制御装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2の制御装置では、係合制御時にクラッチ歯の歯先に形成される面取り部同士が接触した際に、変速部材トルクがトルク制限値以上の場合は、モータジェネレータの回転数制御を解除する。これにより、係合時におけるショックを抑え、且つ、係合完了時間の短縮化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−286247号公報
【特許文献2】特開2013−160315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の制御装置では、2つ以上の係合要素を同時係合状態にして2つ以上離れた変速段の切り替えを行うときに、 2つ以上の係合要素を解放してニュートラル状態にしてから、要求の変速段へ一気に切り替える制御が行われるが、特許文献1には、1個の係合要素の係合・解放の具体的方法について何ら説明されていない。
【0008】
また、特許文献2の制御装置では、クラッチ歯先の面取り部同士が接触と同時に、かつ、変速部材トルクがトルク制限値以上の場合に回転数制御を解除しているが、接触と同時かつトルク制限値以上で回転数制御を解除していると、噛合いクラッチの係合が十分に円滑かつ迅速に行われない場合がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、動力源を用いて回転数を同期させて第1回転軸と第2回転軸を接続するときに、第1回転軸と第2回転軸との接続を円滑かつ迅速に行うことのできる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両の制御装置は、動力源からの回転駆動力が伝達される第1回転軸に係合部材を介して第2回転軸が切離し可能に接続される車両の制御装置であって、第1回転軸と第2回転軸の回転数の情報を取得する回転数取得部と、第1回転軸と第2回転軸を接続するときに、第1回転軸と第2回転軸の回転数差が所定の目標回転数差以内になるまで、動力源に対して回転数制御を行う第1制御部と、回転数差が目標回転数差以内になると、回転数制御を終了して動力源に対するトルク制御を行うとともに、第1回転軸と第2回転軸を接続する接続方向に係合部材を移動させる接続制御を行う第2制御部と、を備え、トルク制御では、動力源に対する指示トルクをゼロとするゼロトルク制御が行われ、接続制御では、係合部材が接続方向に向けて付勢されている。
【0011】
この構成により、第1回転軸と第2回転軸を接続するときには、第1回転軸と第2回転軸の回転数差が所定の目標回転数差以内になるまで回転制御が行われる。回転数差が目標回転数差以内になると、回転数制御からトルク制御に切り替えられるとともに、第1回転軸と第2回転軸を接続する方向(接続方向)に係合部材を移動させる制御(接続制御)が行われる。このとき、指示トルクをゼロとするトルク制御(ゼロトルク制御)が行われるので、回転数差が目標回転数差以内で維持される。また、係合部材が接続方向に向けて付勢されているので、第1回転軸と第2回転軸が同期したらすぐに接続方向に移動できるように待機した状態(待機状態)となる。したがって、第1回転軸と第2回転軸が同期すると、待機状態の係合部材がすぐに接続方向に移動する。これにより、第1回転軸と第2回転軸との接続を円滑かつ迅速に行うことができる。
【0012】
また、本発明の車両の制御装置では、第1回転軸と第2回転軸を切り離すときに、第1回転軸と第2回転軸を切り離す切離し方向に係合部材を移動させる切離し制御を行う第3制御部と、動力源に対して、第1回転軸と第2回転軸の切離しをアシストするトルクを発生させるアシストトルク制御を行う第4制御部と、を備え、切離し制御では、係合部材が切離し方向に向けて付勢されてもよい。
【0013】
この構成により、第1回転軸と第2回転軸を切り離すときには、第1回転軸と第2回転軸を切り離す方向(切離し方向)に係合部材を移動させる制御(切離し制御)が行われるとともに、第1回転軸と第2回転軸の切離しをアシストするトルクを発生させるトルク制御(アシストトルク制御)が行われる。このとき、係合部材が切離し方向に向けて付勢されているので、第1回転軸と第2回転軸の切離しが可能なレベルまで係合部材の係合力が低下したらすぐに切離し方向に移動できるように待機した状態(待機状態)となる。したがって、例えば、アシストトルクによって、第1回転軸と第2回転軸の切離しが可能なレベルまで係合部材の係合力が低下すると、待機状態の係合部材がすぐに切離し方向に移動する。これにより、車両が急加速や急減速している場合であっても、第1回転軸と第2回転軸との切離しを円滑かつ迅速に行うことができる。
【0014】
また、本発明の車両の制御装置では、車両の加速度の情報を取得する加速度取得部を備え、第4制御部は、アシストトルク制御のトルク量を加速度に基づいて決定してもよい。
【0015】
この構成により、車両の加速度に基づいて、アシストトルク制御の適切なトルク量を求めることができる。適切なトルク量でアシストトルク制御を行うことにより、車両が急加速や急減速している場合に、第1回転軸と第2回転軸との切離しを円滑かつ迅速に行うことができる。
【0016】
また、本発明の車両の制御装置では、回転数取得部は、動力源に備えられた第1回転センサから第1回転軸の回転数の情報を取得し、第2回転軸に備えられた第2回転センサから第2回転軸の回転数の情報を取得してもよい。
【0017】
この構成により、動力源に備えられた第1回転センサから第1回転軸の回転数を取得し、第2回転軸に備えられた第2回転センサから第2回転軸の回転数を取得することができる。このようにして得られた第1回転軸と第2回転軸の回転数に基づいて、第1回転軸と第2回転軸の回転数差が所定の目標回転数差以内になるまで回転制御を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、動力源を用いて回転数を同期させて第1回転軸と第2回転軸を接続するときに、第1回転軸と第2回転軸との接続を円滑かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における車両の制御装置の構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態における回転軸の係合構造を示す説明図である。
図3】本発明の実施の形態における回転軸の接続動作の説明図である。
図4】本発明の実施の形態における回転軸の切離し動作(電気モータが駆動力を発生している場合)の説明図である。
図5】本発明の実施の形態における回転軸の切離し動作(車両の急加速中に電気モータが連れ回りしている場合)の説明図である。
図6】本発明の実施の形態における回転軸の切離し動作(車両の急減速中に電気モータが連れ回りしている場合)の説明図である。
図7】本発明の実施の形態における回転軸の切離し動作(電気モータが回生している場合)の説明図である。
図8】他の実施の形態における車両の制御装置の構成を示す説明図である。
図9】更に他の実施の形態における車両の制御装置の構成を示す説明図である。
図10】また更に他の実施の形態における車両の制御装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の車両の制御装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、ハイブリッド車両等に用いられる制御装置の場合を例示する。ハイブリッド車両は、内燃機関(エンジンなど)のほかに動力源(電気モータ)を備えており、その一方または双方を車輪の駆動力源として用いる車両である。
【0021】
本実施の形態の車両の制御装置の構成を、図面を参照して説明する。図1に示すように、、電気モータ1からの回転駆動力が出力されるモータ軸2には、モータ歯車3が設けられており、第1回転軸4には、モータ歯車3に噛合する第1歯車5が設けられている。電気モータ1からモータ軸2に出力された回転駆動力は、モータ歯車3と第1歯車5を介して第1回転軸4に伝達される。電気モータ1には、第1回転軸4の回転数N1を計測するための第1回転センサ6が内蔵されている。
【0022】
第1回転軸4には、スリーブ7などの係合部材を介して、第2回転軸8が切離し可能に接続されている。第1回転軸4と第2回転軸8が係合すると、第1回転軸4から第2回転軸8へ回転駆動力が伝達される。第2回転軸8の回転駆動力は、デファレンシャルギア装置9を介して、左右の車輪10に分配して伝達される。第2回転軸8には、第2回転軸8の回転数N2を計測するための第2回転センサ11が内蔵されている。
【0023】
ここで、図2を参照して、第1回転軸4と第2回転軸8の係合構造について説明する。第1回転軸4と第2回転軸8の外周面には、スプライン又はドグ歯が設けられており、スリーブ7の内周面は、それらのスプライン又はドグ歯にスライドして係合するように構成されている。
【0024】
図2に示すように、スリーブ7には、スリーブ7を保持するスリーブ保持シャフト12が設けられており、スリーブ保持シャフト12には、スリーブ保持シャフト12を介してスリーブ7をスライド移動させるためのアクチュエータ13が設けられている。この場合、スリーブ7は、第1回転軸4および第2回転軸8の軸方向にスライド移動するように構成されている。このアクチュエータ13は、スリーブ7を移動方向に向けて付勢した状態(待機状態)とする機能を備えている。このようなアクチュエータ13として、例えば、バネ式アクチュエータ、ソレノイド式アクチュエータ、リニア式アクチュエータなどが用いられる。
【0025】
また、図2に示すように、スリーブ7には、スリーブ位置を検出するストロークセンサ14が設けられている。ストロークセンサ14で検出したスリーブ位置から、第1回転軸4と第2回転軸8の係合状態を把握することができる。ストロークセンサ14としては、公知の種々のセンサを利用することができる。例えば、磁石15を用いてスリーブ位置を検出するストロークセンサ14が利用される。
【0026】
図1に戻って、車両の制御装置16の構成の説明を続ける。図1に示すように、制御装置16は、回転数取得部17と、加速度取得部18と、回転数制御部19と、トルク制御部20と、スリーブ制御部21を備えている。
【0027】
回転数取得部17は、第1回転センサ6と第2回転センサ11から、第1回転軸4と第2回転軸8の回転数の情報を取得する機能を備えている。ここで、回転数の情報とは、回転数を求めるために用いられる情報をいう。例えば、第1回転センサ6は、モータ軸2の回転数を検出する。回転数取得部17は、第1回転センサ6からモータ軸2の回転数を取得すると、モータ歯車3と第1歯車5のギア比に基づいて、モータ軸2の回転数から第1回転軸4の回転数を求めることができる。この場合、モータ軸2の回転数が、第1回転軸4の回転数の情報に相当する。一方、回転数取得部17は、第2回転センサ11から第2回転軸8の回転数(第2回転軸8の回転数そのもの)を取得する。この場合、第2回転軸8の回転数が、第2回転軸8の回転数の情報に相当する。
【0028】
加速度取得部18は、車両に備えられた加速度センサ(図示せず)などから、車両の加速度の情報を取得する機能を備えている。また、加速度取得部18は、車両に備えられた車速センサ(図示せず)から車両の速度の情報を取得し、速度の時間変化から加速度を算出してもよい。
【0029】
回転数制御部19は、電気モータ1に対して、出力される回転数の制御(回転数制御)を行う機能を備えている。例えば、回転数制御部19が、電気モータ1に対して目標回転数の指示を送ると、電気モータ1は、指示された目標回転数でモータ軸2を回転させるように動作する。本実施の形態では、電気モータ1に回転センサ(第1回転センサ6)が内蔵されているので、回転数制御を高精度で行うことができる。
【0030】
トルク制御部20は、電気モータ1に対して、出力されるトルクの制御(トルク制御)を行う機能を備えている。例えば、トルク制御部20が、電気モータ1に対して目標トルクの指示を送ると、電気モータ1は、指示された目標トルクでモータ軸2を回転させるように動作する。
【0031】
スリーブ制御部21は、アクチュエータ13に対して、スリーブ7のスライド移動の制御(スリーブ制御)を行う機能を備えている。例えば、スリーブ制御部21が、アクチュエータ13に対して目標スリーブ位置の指示を送ると、アクチュエータ13は、指示された目標スリーブ位置までスリーブ7をスライド移動させるように動作する。
【0032】
第1回転軸4と第2回転軸8を接続する場合には、第1回転軸4と第2回転軸8の回転数差が所定の目標回転数差以内になるまで、回転数制御部19が、電気モータ1に対して回転数制御を行う。回転数差が目標回転数差以内になると、回転数制御部19が回転数制御を終了して、トルク制御部20が電気モータ1に対してトルク制御を行う。さらに、スリーブ制御部21が、アクチュエータ13に対して、第1回転軸4と第2回転軸8を接続する方向(接続方向)にスリーブ7を移動させる制御(接続制御)を行う。このとき、トルク制御部20は、電気モータ1に対する指示トルクをゼロとする制御(ゼロトルク制御)を行い、スリーブ制御部21は、スリーブ7を接続方向に向けて付勢した状態で待機させる制御を行う。この場合、回転数制御部19が、本発明の第1制御部に相当し、トルク制御部20とスリーブ制御部21が、本発明の第2制御部に相当する。
【0033】
第1回転軸4と第2回転軸8を切り離す場合には、スリーブ制御部21が、アクチュエータ13に対して、第1回転軸4と第2回転軸8を切り離す方向(切離し方向)にスリーブ7を移動させる制御(切離し制御)を行う。このとき、スリーブ制御部21は、スリーブ7を切離し方向に向けて付勢した状態で待機させる制御を行う。さらに、トルク制御部20は、電気モータ1に対して、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しをアシストするトルクを発生させる制御(アシストトルク制御)を行う。トルク制御部20は、アシストトルク制御のトルク量を加速度に基づいて決定する。この場合、スリーブ制御部21が、本発明の第3制御部に相当し、トルク制御部20が、本発明の第4制御部に相当する。
【0034】
以上のように構成された車両の制御装置16について、図面を参照してその動作を説明する。
【0035】
図3は、第1回転軸4と第2回転軸8の接続動作の説明図である。図3に示すように、第1回転軸4と第2回転軸8を接続する場合には、まず、電気モータ1を回転数制御して、第1回転軸4の回転数N1が第2回転軸8と予め定められた目標回転数差Δr以内になるように、第1回転軸4の回転数N1を調整する。時間t1になり、第1回転軸4の回転数N1が目標回転数差Δr以内になったら、電気モータ1の制御を回転数制御からトルク制御に切替える判断を行う。その際、指示トルクはゼロ、または、ほぼゼロとする。指示トルクをゼロとするか、若干のトルクを出力するかは、第2回転軸8の変化割合によって決定する。時間t2において、電気モータ1をトルク制御に切替えると同時に、アクチュエータ13でスリーブ7を接続方向(例えば、第1回転軸4から第2回転軸8に向けて係合させる方向)に押し始める。スリーブ7と第2回転軸8のスプライン又はドグ歯が接触したら、その先端形状によって回転が同期し、スリーブ7が第2回転軸8に係合する(時間t3)。なお、同期のためにシンクロナイザーリングを設けた構成にすれば、係合時にスプライン又はドグ歯が弾かれるのを軽減することができる。
【0036】
図4は、電気モータ1が駆動力を発生している場合における第1回転軸4と第2回転軸8の切離し動作の説明図である。図4に示すように、時間t1において、電気モータ1の通電を切って、電気モータ1の駆動トルクをゼロにすると同時に、アクチュエータ13でスリーブ7に切離し方向(例えば、第2回転軸8から第1回転軸4に向けて引き抜く方向)の力を作用させる。そして、スリーブ7を引き抜く力がスリーブ7の歯面(スリーブ7と第2回転軸8のスプライン又はドグ歯との間の摩擦力)に作用する力を上回った場合に、すぐにスリーブ7の切離しが行われるように待機した状態(待機状態)にしておく。電気モータ1の駆動力が時間の経過につれて低下し、一定時間が経過すると(時間t3になると)、スリーブ7の歯面に加わるトルクが反転して負荷側軸に連れ回される。このトルクが反転するタイミング(時間t3)、または、その少し前(時間t2)に、アクチュエータ13による切離し力が、スリーブ7の歯面に作用する力を上回ると、スリーブ7が抜けて、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しが完了する。
【0037】
図5は、車両の急加速中に電気モータ1が連れ回りをしている場合における第1回転軸4と第2回転軸8の切離し動作の説明図である。図5に示すように、車両が急加速中の場合には、時間t1において、アクチュエータ13でスリーブ7に切離し方向(例えば、第2回転軸8から第1回転軸4に向けて引き抜く方向)の力を作用させる。そして、スリーブ7を引き抜く力がスリーブ7の歯面(スリーブ7と第2回転軸8のスプライン又はドグ歯との間の摩擦力)に作用する力を上回った場合に、すぐにスリーブ7の切離しが行われるように待機した状態(待機状態)にしておく。ここで、電気モータ軸側慣性と車両加速度から決まる歯面に作用する力と、切離し力が等しくなる車両加速度を閾値とする。車両加速度が閾値以上の場合、電気モータ1で駆動トルク(アシストトルク)を発生させて、スリーブ7の歯面に作用する力を低減させる。時間t2において、アクチュエータ13による切離し力が、スリーブ7の歯面に作用する力を上回ると、スリーブ7が抜けて、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しが完了する。
【0038】
図6は、車両の急減速中に電気モータ1が連れ回りをしている場合における第1回転軸4と第2回転軸8の切離し動作の説明図である。図6に示すように、車両が急減速中の場合には、時間t1において、アクチュエータ13でスリーブ7に切離し方向(例えば、第2回転軸8から第1回転軸4に向けて引き抜く方向)の力を作用させる。そして、スリーブ7を引き抜く力がスリーブ7の歯面(スリーブ7と第2回転軸8のスプライン又はドグ歯との間の摩擦力)に作用する力を上回った場合に、すぐにスリーブ7の切離しが行われるように待機した状態(待機状態)にしておく。ここでも、電気モータ軸側慣性と車両加速度から決まる歯面に作用する力と、切離し力が等しくなる車両加速度を閾値とする。車両加速度が閾値以上の場合、電気モータ1で制動トルク(アシストトルク)を少し発生させて、スリーブ7の歯面に作用する力を低減させる。時間t2において、アクチュエータ13による切離し力が、スリーブ7の歯面に作用する力を上回ると、スリーブ7が抜けて、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しが完了する。
【0039】
なお、車両が一定速度で走行中の場合には、アクチュエータ13でスリーブ7に切離し方向に力を作用させる。この場合、歯面に作用する力がほぼゼロのため、アクチュエータ13による切離し力が、スリーブ7の歯面に作用する力を上回り、スリーブ7が抜けて、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しが行われる。
【0040】
図7は、電気モータ1が回生している場合における第1回転軸4と第2回転軸8の切離し動作の説明図である。図7に示すように、時間t1において、電気モータ1の通電を切って、電気モータ1の回生トルクをゼロにすると同時に、アクチュエータ13でスリーブ7に切離し方向(例えば、第2回転軸8から第1回転軸4に向けて引き抜く方向)の力を作用させる。そして、スリーブ7を引き抜く力がスリーブ7の歯面(スリーブ7と第2回転軸8のスプライン又はドグ歯との間の摩擦力)に作用する力を上回った場合に、すぐにスリーブ7の切離しが行われるように待機した状態(待機状態)にしておく。電気モータ1の制動力が時間の経過につれて低下するが、時間が経過しても歯面に加わるトルクは反転せず、負荷側軸に連れ回されるようになる。時間t2になると、アクチュエータ13による切離し力が、スリーブ7の歯面に作用する力を上回ると、スリーブ7が抜けて、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しが完了する。
【0041】
このような本実施の形態の車両の制御装置16によれば、第1回転軸4と第2回転軸8の軸回転数が同一(または、ほぼ同一)条件の下で、電気モータ1によってゼロトルク制御を行うため、スリーブ7を円滑かつ迅速に係合させることができる。また係合断時には、アクチュエータ13によって引抜き推力を予め加えるとともに電気モータ1によってゼロトルク制御を行うことにより、スリーブ7の切離しも迅速に行うことができる。
【0042】
すなわち、本実施の形態では、第1回転軸4と第2回転軸8を接続するときには、第1回転軸4と第2回転軸8の回転数差が所定の目標回転数差以内になるまで回転制御が行われる。回転数差が目標回転数差以内になると、回転数制御からトルク制御に切り替えられるとともに、第1回転軸4と第2回転軸8を接続する方向(接続方向)にスリーブ7を移動させる制御(接続制御)が行われる。このとき、指示トルクをゼロとするトルク制御(ゼロトルク制御)が行われるので、回転数差が目標回転数差以内で維持される。また、スリーブ7が接続方向に向けて付勢されているので、第1回転軸4と第2回転軸8が同期したらすぐに接続方向に移動できるように待機した状態(待機状態)となる。したがって、第1回転軸4と第2回転軸8が同期すると、待機状態のスリーブ7がすぐに接続方向に移動する。これにより、第1回転軸4と第2回転軸8との接続を円滑かつ迅速に行うことができる。
【0043】
また、本実施の形態では、第1回転軸4と第2回転軸8を切り離すときには、第1回転軸4と第2回転軸8を切り離す方向(切離し方向)にスリーブ7を移動させる制御(切離し制御)が行われるとともに、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しをアシストするトルクを発生させるトルク制御(アシストトルク制御)が行われる。このとき、スリーブ7が切離し方向に向けて付勢されているので、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しが可能なレベルまでスリーブ7の係合力が低下したらすぐに切離し方向に移動できるように待機した状態(待機状態)となる。したがって、例えば、アシストトルクによって、第1回転軸4と第2回転軸8の切離しが可能なレベルまでスリーブ7の係合力が低下すると、待機状態のスリーブ7がすぐに切離し方向に移動する。これにより、車両が急加速や急減速している場合であっても、第1回転軸4と第2回転軸8との切離しを円滑かつ迅速に行うことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、車両の加速度に基づいて、アシストトルク制御の適切なトルク量を求めることができる。適切なトルク量でアシストトルク制御を行うことにより、車両が急加速や急減速している場合に、第1回転軸4と第2回転軸8との切離しを円滑かつ迅速に行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、電気モータ1に備えられた第1回転センサ6から第1回転軸4の回転数を取得し、第2回転軸8に備えられた第2回転センサ11から第2回転軸8の回転数を取得することができる。このようにして得られた第1回転軸4と第2回転軸8の回転数に基づいて、第1回転軸4と第2回転軸8の回転数差が所定の目標回転数差以内になるまで回転制御を適切に行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0047】
例えば、以上の説明では、第2回転センサ11が第2回転軸8に設けられた例について説明したが、図8に示すように、第2回転センサ11は、車輪軸に設けられる車輪速センサであってもよい。この場合、回転数取得部17は、第2回転センサ11から車輪軸の回転数を取得し、車輪軸の回転数から第2回転軸8の回転数を演算により算出する。
【0048】
また、以上の説明では、回転軸の係合構造がデファレンシャルギア装置9より前側(入力側)に設けられた例について説明したが、図9に示すように、回転軸の係合構造は、デファレンシャルギア装置9より後側(出力側)に設けられてもよい。また、図10に示すように、回転軸の係合構造は、デファレンシャルギア装置9の内部に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかる車両の制御装置は、動力源を用いて回転数を同期させて第1回転軸と第2回転軸を接続するときに、第1回転軸と第2回転軸との接続を円滑かつ迅速に行うことができるという効果を有し、ハイブリッド車両の制御装置等として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 電気モータ
2 モータ軸
3 モータ歯車
4 第1回転軸
5 第1歯車
6 第1回転センサ
7 スリーブ
8 第2回転軸
9 デファレンシャルギア装置
10 車輪
11 第2回転センサ
12 スリーブ保持シャフト
13 アクチュエータ
14 ストロークセンサ
15 磁石
16 制御装置
17 回転数取得部
18 加速度取得部
19 回転数制御部
20 トルク制御部
21 スリーブ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10