(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラスチックフィルムを基材としてなるパウチを紙のスリーブに挿入し、互いに接着して構成される折りたたみ可能な容器であり、かつ、熱湯を注いで調理するインスタント食品の容器であって、
前記スリーブは2つの側面部と底部とを有しており、これら2つの側面部は底部を間に介して互いにつながっており、かつ、これら2つの側面部は、それぞれ、その両側縁に指掛け部を有しており、
前記指かけ部同士はホットメルト系接着剤によって接着されており、
スリーブの前記側面部とパウチの胴部分とは、塗り分けられたホットメルト系接着剤とエマルジョン系接着剤の両方で接着されており、
前記指掛け部はパウチから離れて位置することを特徴とする容器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を実施するための形態について
図1〜
図5を用いて詳細に説明を加える。
本発明は
図1に示す紙のスリーブと
図2に示すパウチを組み合わせて、
図3に示した如く折りたたまれた状態のものを、組み立てて立体化し湯を注ぎ入れるなどしてインスタントスープなどのインスタント食品を可食化するための、容器として使用することのできる容器である。
【0014】
スリーブとパウチを一体化させるために接着剤を用いるが、本発明においては、接着剤は
図5に示すごとくホットメルト系接着剤とエマルジョン系接着剤を併用する。ホットメルト系接着剤は熱によって溶融した状態で用いられる。そのため冷却によって速やかに接着力が発現するため初期接着力が大きいため使い勝手が良く、生産性が高い半面、熱湯などの熱が伝播した場合など、熱によって軟化する性質を持つ。
【0015】
もう一方のエマルジョン系接着剤はエマルジョン中の水分が、経時あるいは加熱によってなくなってのちエマルジョンが樹脂化して接着力が発現する。したがって初期接着力はホットメルト系接着剤に比べて弱いがいったん接着してからは、熱湯などの熱による軟化は起きない特徴を持つ。
【0016】
本発明においてはホットメルト系接着剤とエマルジョン系接着剤の両者を併用することによって、初期接着性を損なうことなく、かつパウチと紙のスリーブの高温における接着性も損なうことの無い、容器を提供することが可能となる。
【0017】
図1は本発明に係る紙のスリーブの一実施形態を容器内側になる面から見た平面展開図である。スリーブには紙を用いるが、紙の種類は特別に限定するものではなく、たとえば板紙など容器としての厚みや強度と断熱性を考慮して適宜選択すればよい。またスリーブ表面に印刷が必要な場合には、印刷適性も考慮に加えて選択することが望ましい。
【0018】
図1に示した実施形態では、スリーブ(1)は2つの側面部(2)と底部(3)とを有
しており、2つの側面部(2)は底部(3)を間に介して互いにつながっている。2つの側面部(2)は、それぞれ、その両側縁に指掛け部(4)を有している。また、底部(3)は中央に直線状の谷折り線を有しており、この谷折り線でスリーブを二つ折りすることにより、2つの側面部(2)を互いに重ね合わせることができる。互いに重ねあわされた指掛け部(4)(
図2のAとA’、BとB’)は、それぞれ、互いに接着される。二つ折りして2つの側面部(2)を互いに重ね合わせたとき、その底部(3)は容器の底に位置し、その反対側が容器の開口部となる。なお、互いに重ねあわされた2つの側面部(2)の間にはパウチが挟みこまれる。パウチの開口部も、底部とは反対側に位置する。
【0019】
スリーブの形状はたとえば、打ち抜き機を用いて行なうことができ、打ち抜いたものにこれら山折線、谷折線を設けて作成する。なお山折線、谷折線は
図1の状態で容器内側から見たときのものである。
【0020】
また側面部(2)には開口部から底部(3)の方向に伸びる4箇所の谷折線(6)が設けられており、パウチと一体化して後、調理に使用する際の一体容器の立体の組み立てにおいて、容器内側から見て谷折となって4面胴部の角の稜線となる。
【0021】
指かけ部(4)には窪み(5)を設ける。窪み(5)の形状は指をかけたり、指でつまんだりすることが容易にでき、またスープなどのインスタント食品の調理容器および食器として便利に使用できる形状であればよい。指かけ部(4)と側面部の間には指かけ部山折線(9)を設けてあり、スリーブとパウチとを一体化して後、調理、食用に使用する際の一体容器の立体の組み立てにおいて、山折となって容器の指かけ部を形成する。
【0022】
スープなどのインスタント食品の調理容器および食器として使用する際には、指かけ部(4)を用いて容器を持ったり指でつまんで持つことができる。この指かけ部(4)によって、調理のために熱湯を注いだ際にも手に直接熱が伝わることがなく、容器を手で持つことが可能になる。
【0023】
図2は本発明に係るパウチの外観の一実施形態の平面模式図である。パウチ(10)はプラスチックフィルムを基材として、ガスバリア層などと積層し、最外層にシーラント層を設けるなどして、袋状に加工したものである。パウチを構成する基材のプラスチックフィルムは、特に種類を限定をするものではないが、パウチとして機械的強度や価格などを考慮して適宜選択でき、たとえばポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを好ましく使用することができる。
【0024】
フィルムのほか、たとえば最外層のシーラント層はポリプロピレンやポリエチレンの樹脂層であって、フィルムを用いて貼り合わせ、積層してもよく、あるいは押出し機によって積層することもできる。
【0025】
食品を内容物とする場合には、多くの場合ガスバリア性が求められる。その場合にはパウチにガスバリア層を積層して設けることができる。ガスバリア層にはたとえばアルミニウム箔などの金属箔を貼り合わせて積層することができる。
【0026】
また、金属箔を用いることが不都合な場合には金属箔を用いる代わりに、ガスバリアフィルムを用いることができる。ガスバリアフィルムは、基材フィルムとガスバリア層からなる。ガスバリア層は蒸着法によって無機化合物層を基材フィルム上に設けても良く、さらにコーティング法による無機化合物層を重ねて設けても良い。
【0027】
パウチはシーラント層同士を対向させて重ね、加圧、加熱して熱溶着して袋状に加工する。このとき底部はパウチ底部(11)として畳み込まれた形状に加工するが、パウチと
同様の積層体からなる底テープを用いてパウチ底部(11)を形成することができる。パウチは底テープを六角形状とすることにより、容器を組み立てて立体としたときにパウチの開口部の面積を大きくすることができ、またパウチの底部をスリーブの形状に追随して略6角形状にすることが可能である。
【0028】
図3は本発明に係る紙のスリーブとパウチを組み合わせて折りたたまれた状態を示す一実施形態の平面模式図である。2つ折りにしたスリーブの間にパウチが挟みこまれて一体化した状態の平面模式図である。スリーブとパウチは接着剤によって一体化している。
【0029】
この段階でスープ等のインスタント食品は内容物としてパウチの中に収められ密封されている。パウチもスリーブもこの状態では平たく折りたたまれているため、嵩張らず製造、流通、在庫、販売など各場面において、省スペースや取り扱いの点で都合が良い。
【0030】
内容物(12)の充填後パウチ口部はたとえばヒートシールによって密封され、必要に応じて開封のための切れ込みや切り取り予定線(13)を設けることができる。
【0031】
図4は本発明に係る紙のスリーブとパウチを組み合わせた容器の一実施形態の、使用時に立体とする際の動きを示す組み立て模式図である。
図3に示した切り取り予定線(13)を用いて、パウチの口部は切り取られ開口部が作られる。
【0032】
容器は、湯を注ぎ入れて調理、可食化するために立体に組み立てられる。側面部組み立て矢印(20)および側面部組み立て矢印(21)の方向に指かけ部(4)を両側から押して、指かけ部山折線(9)を容器内側から見て山折すると同時に、側面部の4箇所の谷折線(6)が容器内側から見て谷折されて四角柱の胴部を形成する。このときスリーブとパウチは接着剤を用いて一体化しているために内側のパウチもスリーブの立体化に追随して立体化し容器として使用することが可能になる。
【0033】
スリーブの底部(3)は指かけ部山折線(9)を両側から押して、四角柱の胴部を形成する。同時に谷折されていた部分が開いて底部が広がるが、さらに底部組み立て矢印(22)方向に底部(3)を押し込むことによって、スリーブの底部(3)はアーチ型を形成してパウチを支える。これによってパウチの底部がスリーブの底部(3)によって安定して支えられる構造となる。この結果湯を注ぎ入れたりして、その加重が底部にかかっても底が支えられて容器の形状を保つことができる。
【0034】
図5は本発明に係る一実施形態の紙のスリーブに用いる接着剤の塗布部分を示す平面模式図である。本発明によれば、パウチと紙のスリーブ(1)との接着にホットメルト系接着剤とエマルジョン系接着剤の両方を併用して一体化させるのであるが、
図5は併用した際のそれぞれの接着剤を塗布する塗り分けの、一実施形態を示したものである。また
図6は本発明に係る一実施形態の紙のスリーブに用いる接着剤の塗布部分の他の実施形態を示す平面模式図である。
【0035】
ホットメルト系接着剤として特に限定をするものではないが、たとえばエチレンビニルアルコール系(EVA系)接着剤、ゴム系ホットメルト接着剤などの中から、接着強度のほか、溶融温度や粘度を考慮して適宜選択することができる。
【0036】
エマルジョン系接着剤として特に限定をするものではないが、プラスチックフィルムと紙の接着強度などを考慮して、たとえばアクリル−酢酸ビニル共重合系接着剤を選択することができる。
【0037】
指かけ部(4)は、指かけ部(4)同士が接着される部分であり、熱湯が注ぎ入れられ
て熱くなるパウチとは直接接触する部分ではないために、ホットメルト系接着剤(7)を使用することが可能である。
【0038】
胴部分(14)はスリーブとパウチが接触する部分であるために、エマルジョン系接着剤(8)を使用する。エマルジョン系接着剤を使用することによって、熱湯による熱が接着剤部分に伝播した場合でも、接着剤が耐熱性を持ち熱で軟化することがないために、容器が分解するなどの恐れがない。
【0039】
スリーブとパウチを接着剤を用いて一体化して容器とする際にはホットメルト系接着剤のほうが初期接着強度が強いため使い勝手が良く生産性が優れるため胴部分(14)において、一部ホットメルト系接着剤を用いる領域を設けることで、生産性を損なうことなく、容器の耐熱性を確保することができる。
【0040】
ホットメルト系接着剤とエマルジョン系接着剤の両方を併用して塗り分けるパターンは、
図5に示したパターンのほか、たとえば
図6に示したパターンなど任意のパターンを選ぶことができる。
【実施例】
【0041】
以下本発明をさらに具体的に説明するために実施例に基づいて説明を加えるが本発明にはこれに限定されるものではない。以下にその材料構成、製造手順、評価方法、評価結果を詳述する。
【0042】
スリーブには坪量310gの紙(コートボール紙)を用いた。
図1に示す形状のスリーブを打ち抜きで作成し折線を設けた。
【0043】
パウチは下記の材料構成でこの順に積層して積層体を作成し製袋加工を行った。
・基材フィルム:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製:厚さ12μm、外面コロナ処理なし)
・バリア層:アルミニウム箔(厚さ9ミクロンm)
・シーラント層:低密度直鎖状ポリエチレン(厚さ60μm)
を積層、袋加工して、六角形状の底テープ付きのパウチとした。
【0044】
作成したスリーブに、ホットメルト系接着剤としてヘンケルジャパン製EVA樹脂からなるホットメルト系接着剤ZM808を、エマルジョン系接着剤として日栄化工製アクリル-酢酸ビニル共重合体系接着剤AV−650Y−6を用いて、
図5に示すパターンで塗り分け塗布してスリーブとパウチとを接着して容器を作成した。
【0045】
接着直後の状態で接着強度を確認したところ、ZM808と紙との接着では紙の層間での破壊が確認され、十分な強度であることが確認できた。
【0046】
接着から2日経過後に、AV−650Y−6との接着を確認したころ、紙の層間での破壊が確認され、十分な強度であることが確認できた。この状態においてパウチに熱湯(100℃)を注ぎ入れZM808、AV−650Y−6それぞれとの接着強度を確認したところ、ZM808ではパウチ表面のポリエチレンテレフタレートフィルムとZM808との間で容易に剥離することが確認された一方、AV−650Y−6では熱湯をパウチに入れる前と同様、紙の層間で破壊され十分な強度であることが確認できた。
【0047】
すなわち、ホットメルト系接着剤ZM808によって、熱湯の熱の直接の影響を受けない指かけ部およびスリーブとパウチの接着直後の接着強度が確保され、容器に湯を入れる場面では、エマルジョン系接着剤AV−650Y−6によって接着強度が確保できる結果
を得ることができた。
【0048】
このように、本発明によればスープなどのインスタント食品用の、パウチと紙のスリーブを組み合わせた容器において、嵩張ることなく、また内容物が高温の場合でも手で持つことの出来る断熱性を有しており、パウチと紙のスリーブの高温における接着性も損なうことのない容器を提供することが可能であることを検証することができた。