(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、圧電素子の損傷を抑制することが可能な圧電アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、圧電素子の損傷を抑制することが可能な圧電アクチュエータについて、調査研究を行った。その結果、本発明者らは、以下の事実を見出した。
【0006】
近年、電子機器では、小型化又は薄型化が進んでいる。それに伴って、電子機器に搭載される圧電素子においても、小型化又は薄型化が求められる。しかしながら、圧電素子の剛性は、厚さが薄くなるほど低下し、又、幅が狭くなるほど低下する。したがって、圧電素子が小型化又は薄型化された場合、圧電素子(圧電体)の剛性が低下し、駆動時にクラックが入る等して、圧電素子が損傷し易くなる。
【0007】
以下、圧電素子が損傷し易くなるという上記問題点について、
図8〜
図10を参照して、説明する。
【0008】
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、圧電素子100は、圧電体101と、外部電極102,103と、を備えている。圧電体101は、平面視で長方形状を呈する平板状の圧電体であり、厚さ方向で互いに対向する一対の主面101a,101bを有する。外部電極102は、主面101aに配置されている。外部電極103は、主面101bに配置されている。外部電極102の厚さと外部電極103の厚さとは同等である。
【0009】
図8(c)に示されるように、圧電素子100は、圧電アクチュエータ110に備えられている。すなわち、圧電アクチュエータ110は、圧電素子100と、圧電素子100を支持する支持部材111と、を備えている。圧電素子100は、主として主面101a側が樹脂113及び導電性樹脂114により支持部材111に固定されている。詳細には、圧電素子100は、主面101a側から圧電体101に作用する拘束力が、主面101b側から圧電体101に作用する拘束力より大きい状態で支持部材111に拘束されて支持されている。
【0010】
圧電素子100は、外部電極102,103を通して圧電体101に所定の電界が印加されると、
図9の(a)に示されるような駆動前の状態から、
図9に(b)に示されるような駆動時の状態へと変化する。圧電素子100は、駆動時の状態において、一対の主面101a,101bが対向する方向に対して直交する方向である駆動方向D0に伸長する。
【0011】
このとき、圧電素子100(圧電体101)の剛性が低下していると、圧電素子100は、
図10の(a)に示されるように、駆動前の状態では駆動方向D0に略平行に支持部材111に支持され、撓んでいなかったとしても、
図10の(b)に示されるように、駆動時の状態では撓んで変形する。すなわち、圧電素子100は、上述した状態で支持部材111に拘束されて支持されているため、駆動時の状態では拘束力が小さい主面101b側が湾曲外側となるように撓む。このように、圧電素子100が撓んで変形することにより、圧電素子100が損傷し易くなる。
【0012】
かかる研究結果を踏まえ、本発明者らは、圧電素子の損傷を抑制することが可能な圧電アクチュエータを見出した。
【0013】
すなわち、本発明に係る圧電アクチュエータは、圧電素子と、圧電素子を支持する支持部材と、を備える圧電アクチュエータであって、圧電素子は、略長方形状を呈し且つ互いに対向する第一及び第二主面と、第一及び第二主面の長手方向で互いに対向し且つ長手方向に直交する幅方向に延びる第一及び第二端面と、を含む圧電体と、第一主面に配置された第一外部電極と、第二主面に配置された第二外部電極と、を有し、圧電体は、長手方向に直交する断面において湾曲しており、支持部材は、圧電素子を第一及び第二端面側で支持している。
【0014】
本発明に係る圧電アクチュエータでは、圧電素子は、第一及び第二端面側で支持部材により支持されている。圧電アクチュエータは、圧電体が第一及び第二主面の長手方向に変位することで、駆動される。圧電体は、長手方向に直交する断面において湾曲している。このため、圧電素子では、湾曲していない従来の圧電素子よりも断面係数が大きく、駆動時の曲げに対する強度が向上する。したがって、圧電素子が撓み変形することを抑え、圧電素子の損傷を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る圧電アクチュエータは、圧電素子と、圧電素子を支持する支持部材と、を備える圧電アクチュエータであって、圧電素子は、略長方形状を呈し且つ互いに対向する第一及び第二主面と、第一及び第二主面の長手方向で互いに対向し且つ長手方向に直交する幅方向に延びる第一及び第二端面と、を含む圧電体と、第一主面に配置された第一外部電極と、第二主面に配置された第二外部電極と、を有し、圧電体は、第一及び第二主面の少なくともいずれか一方に、長手方向に延びる突条部が設けられており、支持部材は、圧電素子を第一及び第二端面側で支持している。
【0016】
本発明に係る圧電アクチュエータでは、圧電素子は、第一及び第二端面側で支持部材により支持されている。圧電アクチュエータは、圧電体が長手方向に変位することで、駆動される。圧電体は、第一及び第二主面の少なくともいずれか一方に、長手方向に延びる突条部が設けられている。このため、圧電素子では、突条部が設けられていない従来の圧電素子よりも断面係数が大きく、駆動時の曲げに対する強度が向上する。したがって、圧電素子が撓み変形することを抑え、圧電素子の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧電素子の損傷を抑制することが可能な圧電アクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
[第一実施形態]
図1〜
図3を参照して、第一実施形態に係る圧電アクチュエータの構成を説明する。第一実施形態は、HDD用のサスペンション10が圧電アクチュエータを含んでいる例である。
図1は、第一実施形態に係るサスペンションを示す概略平面図である。
図2は、
図1に示されたII−II線に沿った断面構成を説明するための図である。
図3(a)は
図1に示された圧電素子の斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)のIIIb−IIIb線に沿った断面図であり、
図3(c)は
図1に示された圧電素子の固定構造を説明するための図である。
【0021】
図1に示されたデュアル・アクチュエータ方式のサスペンション10は、ロードビーム11と、マイクロアクチュエータ部12と、ベースプレート13と、ヒンジ部材14と、を備えている。
【0022】
ロードビーム11は、ばね性を有する金属板からなる。ロードビーム11の厚さは、たとえば100μm程度である。ロードビーム11の先端部には、フレキシャ15が取付けられている。フレキシャ15は、ロードビーム11よりもさらに薄い金属製の薄板ばねからなる。フレキシャ15の前端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ16が配置されている。
【0023】
ベースプレート13の基部20に、円形のボス孔21が形成されている。ベースプレート13の基部20と前端部22との間には、後述する圧電素子40Aを収容可能な大きさの一対の開口部23が形成されている。一対の開口部23の間に、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の長手方向)に延びる帯状の連結部24が設けられている。連結部24は、ベースプレート13の幅方向(サスペンション10の長手方向と交差する方向)への所定範囲の撓みが許容されるように構成されている。
【0024】
ベースプレート13の基部20は、図示しないボイスコイルモータによって駆動されるアクチュエータアームの先端部に固定されている。これにより、ベースプレート13は、ボイスコイルモータによって旋回駆動される。ベースプレート13は、ステンレス鋼などの金属板からなる。ベースプレート13の厚さは、たとえば200μm程度である。本実施形態の場合、ベースプレート13とヒンジ部材14とによって、アクチュエータベース25が構成されている。
【0025】
ヒンジ部材14は、基部30と、ブリッジ部31と、中間部32と、一対のヒンジ部33と、先端部34と、を有している。基部30は、ベースプレート13の基部20に重ねて固定されている。ブリッジ部31は、帯状を呈し、ベースプレート13の連結部24と対応した位置に形成されている。中間部32は、ベースプレート13の前端部22と対応した位置に形成されている。各ヒンジ部33は、板厚方向に弾性変形可能な可撓性を有している。先端部34は、ロードビーム11に固定されている。ヒンジ部材14は、ばね性を有する金属板からなる。ヒンジ部材14の厚さは、たとえば50μm程度である。
【0026】
マイクロアクチュエータ部12には、一対の圧電素子40Aが配置されている。各圧電素子40Aは、いわゆる積層型圧電素子である。各圧電素子40Aは、
図2及び
図3にも示されるように、圧電体41と、第一外部電極42と、第二外部電極43と、を備えている。
【0027】
圧電体41は、平面視で長方形状を呈する板状の圧電体である。圧電体41は、圧電体41の厚さ方向で互いに対向する第一及び第二主面41a,41bと、第一及び第二主面41a,41bの長手方向(以下、単に「長手方向」という)で互いに対向し且つ長手方向に直交する幅方向(以下、単に「幅方向」という)に延びる一対の第一及び第二端面41c,41dと、長手方向に延び且つ幅方向で互いに対向する一対の第一及び第二側面41e,41fと、を有している。
【0028】
圧電体41は、長手方向に直交する断面において、第二主面41b側が凸となるように湾曲し、アーチ状をなしている。圧電体41は、長手方向の全ての位置において、長手方向に直交する断面における形状が略同等である。圧電体41は、圧電体41を幅方向に二等分する仮想的な面である中央面(以下、単に「中央面」という)に対して面対称をなしている。圧電体41の外形寸法は、たとえば、長さ(第一及び第二端面41c,41d間の距離)1.0mm、幅(第一及び第二側面11e,11f間の距離)0.3mm、厚さ(第一及び第二主面41a,41b間の距離)0.05mmである。長手方向に直交する断面における圧電体41の湾曲の曲率半径は、たとえば、0.1mm〜0.2mm程度である。
【0029】
圧電体41は、圧電セラミックからなる。圧電セラミックとしては、PZT[Pb(Zr,Ti)O
3]、PT[PbTiO
3]、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O
3]、又はチタン酸バリウム[BaTiO
3]などが挙げられる。圧電体41は、たとえば、PZTなどの圧電セラミック材料で構成されている。
【0030】
第一外部電極42は、第一主面41aに沿って第一主面41aに配置されている。第一外部電極42は、第一主面41aの全部を覆うように配置されている。第一外部電極42の厚さは、たとえば200〜500nm程度に設定される。
【0031】
第二外部電極43は、第二主面41bに沿って第二主面41bに配置されている。第二外部電極43は、第二主面41bの全部を覆うように配置されている。第二外部電極43の厚さは、第一外部電極42の厚さと同じに設定される。すなわち、第二外部電極43の厚さは、たとえば200〜500nm程度に設定される。
【0032】
本実施形態では、第一及び第二外部電極42,43は、Cr/Ni−Cu/Au積層構造(圧電体41側から順にCr層、Ni−Cu合金層、Au層が積層された構造)とされている。すなわち、第一及び第二外部電極42,43は、同じ積層構造を有している。第一及び第二外部電極42,43は、スパッタリング法により形成されている。第一及び第二外部電極42,43は、スパッタリング法以外の方法(たとえば、焼き付け法、電解めっき法、又は蒸着法など)により形成されていてもよい。第一及び第二外部電極42,43は、単層の同じ金属層(Cr層、Ni−Cu合金層、Au層、又はNi層など)として形成されていてもよい。
【0033】
各圧電素子40Aは、長手方向が、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の軸線方向)に沿うようにして、対応する開口部23に収容されている。すなわち、各圧電素子40Aは、対応する開口部23に配置されている。
【0034】
各圧電素子40Aは、第一端面41c側において、ヒンジ部材14の中間部32に支持されるように、中間部32に樹脂50によって固定されている。詳細には、圧電体41の第一端面41cと、圧電体41の第一及び第二側面41e,41fの第一端面41c側の一部分と、圧電素子40A(第一外部電極42)における第一主面41a側且つ第一端面41c側の一部分と、がそれぞれ樹脂50を介して中間部32に固定されている。また、第一端面41c側において、第二外部電極43上には導電性樹脂51が形成されている。第二外部電極43は、導電性樹脂51により図示しない電気配線に接続されている。導電性樹脂51は、導電性材料(たとえば金属粒子など)を含有する樹脂である。
【0035】
各圧電素子40Aは、第二端面41d側において、ヒンジ部材14の基部30に支持されるように、基部30に導電性樹脂51によって固定されている。詳細には、圧電体41の第二端面41dと、圧電体41の第一及び第二側面41e,41fの第二端面41d側の一部分と、圧電素子40A(第一外部電極42)における第一主面41a側且つ第二端面41d側の一部分と、がそれぞれ導電性樹脂51を介して基部30に固定されている。第一外部電極42は、導電性樹脂51により図示しない電気配線に接続されている。
【0036】
圧電素子40Aは、上述したように、ヒンジ部材14の中間部32及び基部30により拘束されて支持されている。中間部32及び基部30は、圧電素子40Aを拘束して支持する支持部材として機能する。すなわち、圧電素子40Aは、第一主面41a側から圧電体41に作用する拘束力が、第二主面41b側から圧電体41に作用する拘束力より大きい状態で、支持部材(中間部32及び基部30)に拘束されて支持されている。本実施形態においては、サスペンション10が、圧電素子40Aと、支持部材(中間部32及び基部30)と、を備える圧電アクチュエータを含むこととなる。
【0037】
次に、上述した圧電素子40Aの製造方法について説明する。
【0038】
まず、圧電セラミック粉のペーストを得て、ペーストから所定厚さのグリーンシートを作成する(シート工法)。グリーンシートに電極を印刷してもよい。また、グリーンシートを重ね合わせて積層体としてもよい。次に、グリーンシート又はその積層体を積層方向にプレス処理し、圧電体グリーンを得る。
【0039】
プレス処理は、目的の形状にあわせて行われる。すなわち、本実施形態では、圧電体グリーンが湾曲し、長手方向に直交する断面において、圧電体グリーンにおける第二主面41bに対応する面側が凸となるようにプレス処理する。プレス処理は、たとえば、100MPa程度で行われるのが好ましい。続いて、得られた圧電体グリーンに脱バインダ処理を施した後、焼成し、圧電体基板を得る。なお、焼成後の圧電体基板の各主面に対し、研磨処理等の表面処理を行ってもよい。
【0040】
次に、圧電体基板の各主面上に電極膜を形成する。各電極膜は、印刷法、スパッタリング法又は蒸着法などにより形成される。以上の工程により、圧電体基板及び電極膜を備える圧電素子基板が得られる。圧電体基板は、個片化された状態の複数の圧電体41が繋がった状態であり、各電極膜は、個片化された状態の複数の第一及び第二外部電極42,43が繋がった状態であり、圧電素子基板は、個片化された状態の複数の圧電素子40Aが繋がった状態である。
【0041】
次に、圧電素子基板に分極処理を行う。分極処理では、たとえば、100℃の温度下で、電界強度2kV/mmの電圧を5分間程度印加する。続いて、分極処理後の圧電素子基板を製品形状に切断する。これにより、個片化された圧電体41及び第一及び第二外部電極42,43を備える圧電素子40Aが得られる。
【0042】
次に、
図4を参照して、サスペンション10(圧電アクチュエータ)の動作について説明する。
図4は、第一実施形態に係るサスペンションの動作を説明するための図である。
【0043】
図4の(a)に示された圧電素子40Aでは、第一及び第二外部電極42,43に電圧が印加されておらず、第一及び第二外部電極42,43を通して圧電体41に電界が印加されていない。第一及び第二外部電極42,43に電圧が印加され、第一及び第二外部電極42,43を通して圧電体41に所定の電界が印加されることにより圧電素子40Aが駆動されると、圧電素子40Aは、
図4の(b)に示されるように、駆動方向D1に伸長する。ここでは、駆動方向D1は長手方向である。すなわち、圧電素子40Aの長手方向での変位が圧電アクチュエータの駆動に利用されている。
【0044】
圧電素子40Aは、上述したように、第一主面41a側から圧電体41に作用する拘束力が、第二主面41b側から圧電体41に作用する拘束力より大きい状態で、支持部材(中間部32及び基部30)に拘束されて支持されている。このため、圧電素子40Aは、支持部材に拘束されて支持されている状態では、圧電体41における第一主面41a側の領域は、同じく圧電体41における第二主面41b側の領域よりも変位が阻害され易い。したがって、圧電素子40Aは、第二主面41b側が湾曲外側となるように撓もうとする。しかしながら、上述したように、圧電素子40Aは、長手方向に直交する断面において湾曲している。このため、圧電素子40Aの剛性(曲げ剛性)が高まり、
図4の(b)に示されるように、第二主面41b側が湾曲外側となる撓みが抑制されることとなる。
【0045】
以上のことから、第一実施形態においては、圧電素子40Aの撓み変形が抑制されるので、圧電素子40Aの撓み変形に伴う圧電素子の損傷を抑制することができる。
【0046】
以上説明したように、第一実施形態では、サスペンション10は、圧電素子40Aと、支持部材と、を備えている。圧電素子40Aは、略長方形状を呈し且つ互いに対向する第一及び第二主面41a,41bと、長手方向で互いに対向し且つ幅方向に延びる第一及び第二端面41c,41dと、を含む圧電体41と、第一主面41aに配置された第一外部電極42と、第二主面41bに配置された第二外部電極43と、を有している。圧電体41は、長手方向に直交する断面において湾曲している。支持部材は、圧電素子40Aを第一及び第二端面41c,41d側で支持している。
【0047】
圧電素子40Aは、第一及び第二端面41c,41d側で支持部材により支持されている。サスペンション10は、圧電体41が長手方向に変位することで、駆動される。圧電体41は、長手方向に直交する断面において湾曲している。このため、圧電素子40Aは、湾曲していない従来の圧電素子100よりも断面係数が大きく、駆動時の曲げに対する強度が向上する。したがって、圧電素子40Aが撓み変形することを抑え、圧電素子40Aの損傷を抑制することができる。
【0048】
上述のように、圧電素子の変位は、小型化又は薄型化されるほど向上するものの、圧電素子の剛性は、小型化又は薄型化されるほど低下する。圧電素子40Aは、圧電体41が湾曲していない従来の圧電素子100と略同等のサイズである。圧電素子40Aは、圧電体41の幅方向の長さを長くしたり、圧電体41の厚さを厚くしたりすることなく、剛性を向上させているので、従来の圧電素子100と同等の変位を維持することができる。更に、圧電素子40Aは、撓み変形することが抑えられるので、その変位を適切に支持部材に伝達することができる。
【0049】
圧電素子40Aでは、圧電体41が、中央面に対して面対称をなしている。このため、圧電素子40Aは、中央面よりも第一側面41e側の部分と、中央面よりも第二側面41f側の部分とで、変位の程度に差異が生じ難い。したがって、圧電素子40Aは、その変位をより適切に支持部材に伝達することができる。
【0050】
圧電素子40Aでは、圧電体41が長手方向に直交する断面において湾曲しているので、第一及び第二主面41a,41bの識別性を高めることができる。従来の圧電素子では、裏表を識別するために、たとえば識別マークを設ける必要があった。第一実施形態の圧電素子40Aによれば、このような識別マークを省略することができる。
【0051】
圧電素子40Aが撓み変形した場合、圧電素子40Aが支持部材から剥離し易くなる。第一実施形態では、圧電素子40Aの撓み変形が抑制されるので、このような剥離の発生を抑制することができる。
【0052】
圧電素子40Aは、たとえば厚さ0.2mm以下としてもよい。圧電素子40Aは、厚さが薄くなればなるほど剛性が低下し、撓み易くなる。第一実施形態によれば、圧電素子40Aの厚さが0.2mm以下の場合でも、圧電素子40Aの撓み変形を抑制することができる。
【0053】
続いて、
図5を参照して、第一実施形態の変形例に係る圧電素子について説明する。
図5(a)は第一実施形態の変形例に係る圧電素子の斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)のVb−Vb線に沿った断面図である。
【0054】
図5に示されるように、第一実施形態の変形例に係る圧電素子40Bは、圧電体41の湾曲の形状の点で圧電素子40Aと相違し、その他の点で一致している。圧電素子40Bでは、圧電体41は、長手方向に直交する断面において、波型に湾曲している。圧電体41は、幅方向の中央において第二主面41b側が凹となり、幅方向の両端部において第二主面41b側が凸となるように湾曲している。圧電体41は、長手方向の全ての位置において、長手方向に直交する断面における形状が略同等である。圧電体41は、中央面に対して面対称をなしている。長手方向に直交する断面における圧電体41の湾曲の曲率半径は、たとえば、圧電体41の幅方向の長さの1/4程度である。
【0055】
このように圧電素子40Bにおいても、圧電体41は、長手方向に直交する断面において湾曲している。このため、圧電素子40Bは、湾曲していない従来の圧電素子100よりも断面係数が大きく、駆動時の曲げに対する強度が向上する。したがって、圧電素子40Bが撓み変形することを抑え、圧電素子40Bの損傷を抑制することができる。
【0056】
[第二実施形態]
図6を参照して、第二実施形態に係る圧電アクチュエータの構成を説明する。
図6(a)は第二実施形態に係る圧電素子の斜視図であり、(b)は
図6(a)のVIb−VIb線に沿った断面図であり、(c)は
図6(a)に示された圧電素子の固定構造について説明するための図である。
【0057】
図6に示されるように、第二実施形態に係る圧電アクチュエータは、圧電素子40Cにおける圧電体41の形状の点で第一実施形態に係る圧電アクチュエータと相違し、その他の点で一致している。圧電体41は、第二主面41bに、長手方向に延びる一対の突条部44a,44bが設けられている。
【0058】
突条部44aは、第二主面41bにおいて、第一側面41eに沿って長手方向に延びている。突条部44bは、第二主面41bにおいて、第二側面41fに沿って長手方向に延びている。一対の突条部44a,44bは、長手方向に直交する断面における形状が矩形状である。圧電体41は、中央面に対して面対称をなしている。一対の突条部44a,44bは、たとえば、幅(幅方向の長さ)が圧電体41の幅(幅方向の長さ)の1/7であり、高さ(厚さ方向の長さ)が圧電体41の高さ(厚さ方向の長さ)の1/3である。一対の突条部44a,44bは、第一端面41cから第二端面41dまで延びている。一対の突条部44a,44bは、長手方向の全ての位置において、長手方向に直交する断面における形状が略同等である。すなわち、圧電体41は、長手方向の全ての位置において、長手方向に直交する断面における形状が略同等である。
【0059】
圧電素子40Cの製造方法は、グリーンシート又はその積層体を作成する工程において、一対の突条部44a,44bに対応する部分に小さなグリーンシートを積層させる点で、圧電素子40Aの製造方法と相違し、その他の点で一致している。
【0060】
以上説明したように、第二実施形態では、圧電素子40Cの圧電体41は、第二主面41bに、長手方向に延びる一対の突条部44a,44bが設けられている。このため、圧電素子40Cは、突条部が設けられていない従来の圧電素子100よりも断面係数が大きく、駆動時の曲げに対する強度が向上する。したがって、圧電素子40Cが撓み変形することを抑え、圧電素子40Cの損傷を抑制することができる。
【0061】
圧電素子40Cは、一対の突条部44a,44bが圧電体41の一部分にしか設けられていないため、従来の圧電素子100と体積が略同等である。したがって、圧電素子40Cにおいても、従来の圧電素子100よりも剛性を向上させながら、従来の圧電素子100と同等の変位を維持することができる。
【0062】
圧電素子40Cでは、圧電体41は第二主面41bに一対の突条部44a,44bが設けられているので、第一及び第二主面41a,41bの識別性を高めることができる。したがって、第二実施形態の圧電素子40Cによれば、第一及び第二主面41a,41bを識別するための識別マークを省略することができる。
【0063】
続いて、
図7を参照して、第二実施形態の変形例に係る圧電素子について説明する。
図7(a)は第二実施形態の変形例に係る圧電素子の斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)のVIIb−VIIb線に沿った断面図である。
【0064】
図7に示されるように、第二実施形態の変形例に係る圧電素子40Dは、圧電体41の第二主面41bに一対の突条部44a,44bの代わりに、突条部44cが設けられている点で圧電素子40Cと相違し、その他の点で一致している。
【0065】
突条部44cは、第二主面41bにおいて、幅方向の中央部分に設けられ、長手方向に延びている。突条部44cは、長手方向に直交する断面における形状が矩形状である。圧電体41は、中央面に対して面対称をなしている。突条部44cは、たとえば、幅(幅方向の長さ)が圧電体41の幅(幅方向の長さ)の1/5であり、高さ(厚さ方向の長さ)が圧電体41の高さ(厚さ方向の長さ)の1/3である。突条部44cは、第一端面41cから第二端面41dまで延びている。突条部44cは、長手方向の全ての位置において、長手方向に直交する断面における形状が略同等である。すなわち、圧電体41は、長手方向の全ての位置において、長手方向に直交する断面における形状が略同等である。
【0066】
このように圧電素子40Dにおいても、圧電体41は、第二主面41bに、長手方向に延びる突条部44cが設けられている。このため、圧電素子40Dは、突条部が設けられていない従来の圧電素子100よりも断面係数が大きく、駆動時の曲げに対する強度が向上する。したがって、圧電素子40Dが撓み変形することを抑え、圧電素子40Dの損傷を抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0068】
圧電素子40Aでは、圧電体41は長手方向に直交する断面において、第二主面41b側が凸となるように湾曲しているが、圧電体41は長手方向に直交する断面において湾曲していればよく、たとえば、第一主面41a側が凸となるように湾曲していてもよい。また、圧電素子40Bでは、圧電体41は幅方向の中央において第二主面41b側が凹となり、幅方向の両端部において第二主面41b側が凸となるように湾曲しているが、幅方向の中央において第一主面41a側が凹となり、幅方向の両端部において第一主面41a側が凸となるように湾曲していてもよい。
【0069】
圧電素子40Cでは、圧電体41は第二主面41bに一対の突条部44a,44bが設けられているが、圧電体41は第一及び第二主面41a,41bの少なくともいずれか一方に、長手方向に延びる突条部が設けられていればよく、突条部の数、突条部の長手方向に直交する断面における形状、及び突条部の配置等は限定されない。したがって、たとえば、第一主面41aに一対の突条部44a,44bが設けられていてもよい。また、第一及び第二主面41a,41bの両方に一対の突条部44a,44bが設けられていてもよい。
【0070】
同様に、圧電素子40Dでは、第一主面41aに突条部44cが設けられていてもよい。また、第一及び第二主面41a,41bの両方に突条部44cが設けられていてもよい。
【0071】
圧電素子40A〜40Dでは、圧電体41は、長手方向の全ての位置において、長手方向に直交する断面における形状が略同等であるが、長手方向の位置により、長手方向に直交する断面における形状が異なっていてもよい。圧電体41は、長手方向の中央部分において、最も撓み変形し易くなる。したがって、たとえば、圧電素子40A,40Bでは、圧電体41は、長手方向の中央部分において湾曲し、第一及び第二端面41c,41d側の両端部分において湾曲しない形状としてもよい。また、圧電素子40Cでは、圧電体41は、長手方向の中央部分において一対の突条部44a,44bが設けられ、第一及び第二端面41c,41d側の両端部分において一対の突条部44a,44bが設けられない形状としてもよい。また、圧電素子40Dでは、圧電体41は、長手方向の中央部分において突条部44cが設けられ、第一及び第二端面41c,41d側の両端部分において突条部44cが設けられていない形状としてもよい。
【0072】
圧電素子40A〜40Dでは、ヒンジ部材14の中間部32及び基部30が支持部材として機能しているが、これに加えて、たとえばベースプレート13の前端部22、基部20、及び連結部24が支持部材として機能してもよい。
【0073】
本発明は、HDD用のサスペンション10のマイクロアクチュエータ部12以外の圧電アクチュエータに用いることができる。