(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
使用者の首に掛けられ、または使用者の衣服に装着されて吊り下げられるカードホルダが既知である(例えば、下記特許文献を参照)。
【0003】
近時、事業所内のセキュリティ対策として、入退室管理を含むセキュリティシステムの導入とともに、個人認証のためのIDカードを各人に配布することが増えている。IDカードとしては、磁気ストライプカードの他、RFID(Radio Frequency IDentification)を用いる非接触式ICカードが普及しつつある。
【0004】
一人が複数枚のセキュリティカードを所持して運用することも多い。比較的大規模な事業所等は言うまでもなく、雑居ビルであっても、当該ビルの入口、各テナントの入居先の入口、さらにはその内部の特定の室の入口等、セキュリティシステムを配した関門が複数存在しており、その各々に対応した複数枚のIDカードを所持しなければならないケースがある。また、個人認証用途以外に、電子マネーによる各種決済の際に使用されるICカード等も存在している。
【0005】
一人が複数枚のカードを持つ場合、単一のカードポケットを有する従来のカードホルダでは、必要なカードのみを速やかに取り出して提示することが必ずしも容易でない。さらに、単一のポケットに複数枚のICカードを重ねた状態で詰め入れていると、これをカードリーダ(RFIDリーダ)にかざしたときに、各ICカードとカードリーダとの通信が互いに干渉し合うことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数枚のカードを一纏めにして所持しながら運用するのに適したカードホルダを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、使用者の首に掛けられまたは使用者の衣服に装着されて吊り下げられるカードホルダであって、各々がカードを保持するためのホルダを有し、各ホルダに保持させたカードが重なる状態となるように上端部同士が接合されている複数の面板部と、前記面板部における接合された上端部の下縁とホルダとの間に介在し、幅方向に伸びる溝状または薄肉化した帯状をなすヒンジとを具備するカードホルダを構成した。
【0009】
前記ヒンジは、前記面板部における接合された上端部の下縁とホルダとの間に複数本設けられることが好ましい。
【0010】
加えて、前記面板部における接合された上端部の下縁とホルダとの間の領域の左右両側縁に、内側方に凹むような切欠が形成されていることが好ましい。さすれば、複数の面板部のうちの一つをヒンジに沿って屈曲させ当該面板部のホルダに保持させたカードを持ち上げる操作をより一層円滑に行い得る。
【0011】
前記ホルダは、例えば、前記複数の面板部の互いに向き合う内面側に設けられ、その内面側にカードを保持するものとする。
【0012】
前記ホルダが蓋付きのポケットである場合には、前記蓋における前記面板部に接合された上端部の下縁よりも下方の部位に、幅方向に伸びる溝状または薄肉化した帯状をなすヒンジが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数枚のカードを一纏めにして所持しながら運用するのに適したカードホルダを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1ないし
図6に示す本実施形態のカードホルダAは、カードKを保持するためのホルダ10、20を複数備え、各ホルダ10、20にそれぞれカードKを収容することで複数枚のカードKを一纏めにして所持できるものである。
【0016】
本実施形態のカードホルダAは、各々ホルダ10、20を有した二つの面板部1、2の上端部111、211同士を接合してなる。ホルダ10、20は、上方から(上下方向に沿って)カードKを出し入れすることができる蓋13、23付きのポケット10、20である。各ポケット10、20はそれぞれ、面板部1、2における両面板部1、2が互いに向き合う内面側に設けてある。従って、本実施形態のカードホルダAは、二つ折り状となった面板部1、2の内面側にカードKを保持するものであると言える。
図1及び
図3に示すように、各ポケット10、20に差し入れて保持させた複数枚のカードKは、正面視互いに重なり合う状態となる。
【0017】
図5に示すように、各面板部1、2は、外面側に表出する外面板11、21と、外面板11、21の内面側に接合して外面板11、21とともにポケット10、20を構成する内面板12、22と、ポケット10、20の蓋を構成するフラップ板13、23とを要素とする。外面板11、21、内面板12、22及びフラップ板13、23はそれぞれ、全体が例えばオレフィン等の軟質樹脂を素材として作製される。これら外面板11、21、内面板12、22及びフラップ板13、23は、何れも略無色で透明である。
【0018】
外面板11、21及び内面板12、22は、正面視略方形状の外形をなす。外面板11、21の上下寸法は、内面板12、22の上下寸法よりもやや大きい。内面板12、22の下縁及び左右両側縁はそれぞれ、外面板11、21の下縁及び左右両側縁に溶着(特に、熱溶着)等により接合する。これにより、上方が開放し下方及び側方が閉じたポケット10、20が形成される。内面板12、22の上縁よりも上方に迫り出した各外面板11、21の上端部111、211は、相手方の面板部2、1の外面板21、11の上端部211、111に接合するための接合代となる。
【0019】
図2、
図4及び
図5に示すように、内面板12、22の上縁の中央部位には、下方に凹むような切欠121、221を形成している。切欠121、221は、ポケット10、20に対してカードKを出し入れする際にカードKに手指を掛けられるようにするためのものである。並びに、内面板12、22の上縁の左右両側部位にも、下方に凹む切欠122、222を形成してある。左右両側の切欠122、222は、ポケット10、20の上縁を撓みやすくしてカードKの出し入れを円滑化するためのもので、中央の切欠121、221と比較して小さい。
【0020】
図6に示すように、外面板11、21における、ポケット10、20の上辺、底辺及び左右の側辺の近傍の部位117、217は、内面板12、22から離反する方向即ち外面方向に屈折させている。これにより、ポケット10、20を構成する外面板11、21と内面板12、22との間に若干の距離を確保している。つまり、ポケット10、20にマチ117、217を設けている。
【0021】
一方の面板部1の外面板1の上端部111と他方の面板部2の外面板2の上端部211とは、溶着等により接合する。内面同士を密接させるように重ねて接合した両外面板11、21の上端部111、211は、面板部1、2の他の部位と比較して剛性が高まる。接合した上端部111、211の幅方向に伸びる下縁113、213は、一方の面板部1を他方の面板部2に対し相対的に変位させる、換言すれば何れかの面板部1、2の下縁を持ち上げるように水平軸回りに面板部1、2を回動させる操作を行う際のヒンジとなり得る。また、一方の面板部1の上端部111の下縁113近傍の部位は、他方の面板部2から離反する方向即ち外面方向に屈折している。これにより、一方の面板部1と他方の面板部2との間に若干の距離を確保している。
【0022】
図1、
図3及び
図5に示すように、面板部1、2の上端部111、211には、これを貫通する複数の孔112、212を穿ってある。長孔112、212や丸孔112、212は、当該カードホルダAを使用者の首に掛けるために使用される紐(ストラップ)4や、当該カードホルダAを使用者の衣服に装着するための安全ピンやクリップ等の装着具(図示せず)を取り付ける目的で利用できる。
図1に示す例では、上端部111、211の中央部位に位置し幅方向に拡張した長孔112、212にフック3を係合させ、そのフック3に紐4を係留させるようにして、フック3を介して紐4をカードホルダAに取り付けている。
【0023】
図6に示すように、面板部1の上端部111における孔112の周縁部位は、外面(正面)方向に向けて僅かながら突出する突条118となっている。これに加え、面板部1の上端部111の外周に沿って、孔112を取り巻くように突条119を設けている。
【0024】
各面板部1、2の外面板11、21が透明であることから、
図1に示すように、一方のポケット10に収容したカードKをカードホルダAの正面側(面板部1の外面側)から視認できるとともに、
図3に示すように、他方のポケット20に収容したカードKをカードホルダAの背面側(面板部2の外面側)から視認できる。
【0025】
図1、
図5及び
図6に示すように、一方の面板部1における上端部111とポケット10との間の部位には、幅方向に伸びる細い溝状のヒンジ114、115を形成している。面板部1におけるヒンジ114、115の所在する箇所は、他の部位と比較して板厚が薄くなり、その分剛性が低下する。このため、ヒンジ114、115に沿って面板部1を屈曲させることが容易となる。両面板部1、2のポケット10、20にそれぞれカードKを収容している場合において、一方のポケット10に収容したカードKのみ、または他方のポケット20に収容したカードKのみをカードリーダにかざしたいときには、一方の面板部1をヒンジ114、115に沿って屈曲させ、ポケット10及びこれに収容したカードKを持ち上げるように回動させればよい。さすれば、
図2に示すように、一方のポケット10に収容したカードKを他方のポケット20に収容したカードKから離反させることができ、対象のカードKに記録されている情報をカードリーダに適正に読み出させることが可能となる。他方のポケット20に収容したカードKのみを提示したいときにも、一方のポケット10及びこれに収容したカードKを持ち上げるように回動させる操作を行えばよい。ポケット10、20の一部をなす内面板12、22が透明であることから、
図2に示しているように、他方のポケット20に収容したカードKをカードホルダAの正面側(面板部2の内面側)から視認できる。並びに、一方のポケット10に収容したカードKについても、これをカードホルダAの正面側(面板部11の内面側)から視認できる。
【0026】
図4、
図5及び
図6に示すように、他方の面板部2における上端部211とポケット20との間の部位には、一方の面板部1と同様に、幅方向に伸びる細い溝状のヒンジ214、215を形成してある。面板部2におけるヒンジ214、215の所在する箇所は、他の部位と比較して板厚が薄くなって剛性が低下する。これにより、ヒンジ214、215に沿って他方の面板部2を屈曲させることが容易となり、
図4に示しているように他方のポケット20及びこれに収容したカードKを持ち上げるように回動させる操作を簡便に行い得る。
【0027】
加えて、
図1、
図3及び
図5に示すように、各面板部1、2における接合された上端部111、211とポケット10、20との間の領域、より具体的には上端部111、211の下縁113、213と最上位のヒンジ114、214とで挟まれた領域の左右両側縁に、内側方に凹むような切欠116、216を形成している。予めこのような切欠116、216を設けておくことで、面板部1、2における上端部111、211とポケット10、20との間の領域の剛性が低下し、面板部1、2がより曲がりやすくなる。さらには、面板部1、2の側縁に亀裂が生ずることを抑制できる。
【0028】
ポケット10、20の蓋となるフラップ板13、23は、上下寸法が小さく幅方向に伸長した帯状体132、232から蓋片131、231が下方に垂下した形状をなす。蓋13、23の上端部にあたる帯状体132、232は、面板部1、2の内面側に当該蓋13、23を取り付けるための接合代となる。本実施形態では、フラップ板13、23の帯状体132、232を、面板部1、2の上端部111、211とポケット10、20との間の領域、より具体的には外面板11、21の内面におけるヒンジ114とヒンジ115とで挟まれた領域に、溶着等により接合する。フラップ板13、23の帯状体132、232を面板部1、2の外面板11、21に接合した状態で、蓋片131、231がポケット10、20を構成する内面板12、22の上端部位に覆い被さる。
【0029】
図2、
図4、
図5及び
図6に示すように、帯状体132、232の下縁よりも下方にある蓋片131、231の上端部位には、幅方向に伸びる細い溝状のヒンジ133、134、233、234を形成している。フラップ板13、23におけるヒンジ133、134、233、234の所在する箇所は、他の部位と比較して板厚が薄くなり、その分剛性が低下する。このため、ヒンジ133、134、233、234に沿ってフラップ板13、23の蓋片131、231を屈曲させることが容易となる。
図6に示しているように、ポケット10、20にカードKを収容すると、そのカードKの厚みにより内面板12、22が内方に膨らむと同時に、蓋片131、231もまたカードKの厚みに応じて変形する。フラップ板13、23におけるヒンジ133、233とヒンジ134、234との間の領域は、蓋13、23のマチとなる。
【0030】
本実施形態では、使用者の首に掛けられまたは使用者の衣服に装着されて吊り下げられるカードホルダAであって、各々がカードKを保持するためのホルダ10、20を有し、各ホルダ10、20に保持させたカードKが重なる状態となるように上端部111、211同士が接合されている複数の面板部1、2と、前記面板部1、2における接合された上端部111、211の下縁113、213とホルダ10、20との間に介在し、幅方向に伸びる複数本のヒンジ113、114、115、213、214、215とを具備するカードホルダAを構成した。
【0031】
本実施形態によれば、複数枚のカードKを一纏めにして所持しながら運用するのに適したカードホルダAが実現される。即ち、一方の面板部1のホルダ10に収容したカードKのみを速やかに提示することができ、他方の面板部2のホルダ20に収容したカードKのみを速やかに提示することもできる。並びに、一方の面板部1のホルダ10に収容したカードKのみをカードリーダにかざし、または他方の面板部2のホルダ20に収容したカードKのみをカードリーダにかざすことも容易となる。
【0032】
面板部1、2における接合された上端部111、211の下縁113、213よりも下方の部位にヒンジ114、115、214、215を設けているため、そのようなヒンジ114、115、214、215を設けない(上端部111、211の下縁113、213のみがヒンジとなる)場合と比較して、カードKを保持した一対の面板部1、2が下方に向かうにつれ互いに離反する外方に(側面視ハの字を描くように)大きく拡がってしまうことが抑えられる。ひいては、使用者が当該カードホルダAを身に付けているときに面板部1、2がばたつくことを抑制できる。
【0033】
加えて、前記面板部1、2における接合された上端部111、211の下縁113、213とホルダ10、20との間の領域の左右両側縁に、内側方に凹むような切欠116、216を形成していることから、面板部1、2における当該部位がより変形しやすくなる。従って、使用者が何れかの面板部1、2の下縁を持ち上げるように面板部1、2を回動させる操作を行う際、その面板部1、2の左側方及び右側方がともに上方に持ち上がるようになる。つまり、面板部1、2の左側方または右側方のみが持ち上がって面板部1、2が捻れるようなことが起こりにくくなる。面板部1、2の左側縁または右側縁に応力が集中して面板部1、2に亀裂を発生させるおそれも低減する。
【0034】
前記ホルダ10、20が、前記複数の面板部1、2の互いに向き合う内面側に設けられ、その内面側にカードKを保持するものであるため、カードKを好適に保護できるとともに、収容したカードKがカードホルダAから不意に脱落することを予防できる。
【0035】
前記面板部1、2に、前記ホルダ10、20に保持させたカードKが外面側から透けて見えるような透明な部分が設けられているため、ホルダ10、20に収容したカードKを簡便に提示して他者に視認させることができる。
【0036】
前記ホルダ10、20が蓋13、23付きのポケット10、20であり、前記蓋13、23における前記面板部1、2に接合された上端部132、232のよりも下方の部位に、幅方向に伸びる溝状をなす複数本のヒンジ133、134、233、234が設けられており、蓋13、23をポケット10、20に収容したカードKの厚みに追従するように変形させることができる。このため、蓋13、23が面板部1、2を外面側に向けて徒に圧迫せず、一対の面板部1、2が互いに離反する外方に大きく拡がってしまうことが抑えられる。
【0037】
本実施形態のカードホルダAの面板部1、2は、必ずしも頑強ではない軟質樹脂製の薄板を用いて作製することが可能であり、低コストである。
【0038】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、
図7に示すように、各面板部1、2の上端部111、211の下縁113、213とホルダ10、20との間に、上記実施形態のヒンジ114、115、214、215と比較して上下巾の太い、薄肉化した帯状をなして幅方向に伸びるヒンジ114x、214xを設けるようにしてもよい。面板部1、2におけるヒンジ114x、214xの所在する箇所は、他の部位と比較して板厚が薄くなり、その分剛性が低下するため、当該ヒンジ114x、214xに沿って面板部1、2を屈曲させることが容易となる。
【0039】
また、蓋13、23における上端部132、232の下縁より下方の部位において、上記実施形態のヒンジ133、134、233、234と比較して上下巾の太い、薄肉化した帯状をなして幅方向に伸びるヒンジ133x、233xを設けるようにしてもよい。蓋13、23におけるヒンジ133x、233xの所在する箇所は、他の部位と比較して板厚が薄くなり、その分剛性が低下するため、当該ヒンジ133x、233xに沿って蓋13、23を屈曲させることが容易となる。
【0040】
各面板部1、2の上端部111、211の下縁113、213とホルダ10、20との間に設けるヒンジ114、114x、115、214、214x、215の本数は、一本でもよいし、三本以上でもよい。蓋13、23における上端部132、232の下縁より下方の部位に設けるヒンジ133、133x、134、233、233x、234の本数もまた、一本でもよいし、三本以上でもよい。
【0041】
カードホルダAを構成する外面板11、21、内面板12、22及び蓋13、23は、その全てが透明であるとは限られない。それらのうち少なくとも一つまたは全てが不透明であることもあり得る。あるいは、外面板11、21の一部、内面板12、22の一部または蓋13、23の一部が不透明である態様も考えられる。
【0042】
上記実施形態では、ホルダ10、20を有する面板部1、2が二つ存在していたが、三つ以上の面板部を接合してカードホルダを構成することを妨げない。
【0043】
カードKを保持するホルダ10、20の態様も、上記実施形態におけるものには限定されない。面板部1、2のホルダが、面板部1、2の左方または右方から幅方向に沿ってカードKを出し入れできるようなポケット等であっても構わない。
【0044】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。