特許第6439469号(P6439469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439469
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20181210BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20181210BHJP
   F16N 7/32 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   F16C33/66 Z
   F16C19/16
   F16N7/32 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-20738(P2015-20738)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-142393(P2016-142393A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 恭平
(72)【発明者】
【氏名】勝野 美昭
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−15152(JP,A)
【文献】 特開2006−200740(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102005052677(DE,A1)
【文献】 特開平11−264420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/66
F16C 19/16
F16N 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受であって、
前記外輪は、それぞれ軸方向に同じ位置で、且つ、周方向に離間した、径方向に貫通する複数の油孔を備え、
前記複数の油孔の円周方向位相は、軸受回転中に、前記転がり軸受を軸方向から見たとき、前記複数の油孔のいずれか一つの中心線を前記転動体の中心が通過しているときに、残りの前記油孔に最も近い前記転動体は、前記油孔の中心線と交わる位置にあると共に、前記転がり軸受を軸方向から見たとき、前記油孔に最も近い前記転動体の中心を通り、前記転がり軸受の中心を通る直線に垂直な直線と、前記油孔の中心線と前記転動体との接点における接線とがなす角度をθとしたとき、θ≧45°であることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記油孔の直径が0.5〜1.0mmである請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記油孔の軌道面側開口部が、外周面側開口部に比べて開口面積が大きい請求項1または2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記外輪の外周面には、前記油孔と連通する凹状溝が周方向に沿って形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記外輪の外周面には、前記凹状溝を挟む軸方向両側に環状溝が周方向に沿って形成され、前記各環状溝には、それぞれ環状のシール部材が配置される請求項4に記載の転がり軸受。
【請求項6】
工作機械主軸用軸受であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関し、より詳細には、外輪給油型の転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械用主軸は切削効率の向上を目指して、高速化の要求が高まっている。また、該主軸には、最近、生産の高効率化のため複雑形状の被加工物を複数の工作機械を使用せず、かつ、段替えなしで加工することが可能な5軸加工機への対応ニーズも出てきている。5軸加工機では、主軸やテーブルが旋回するため、旋回半径の短縮化による省スペース化、あるいは、旋回時のイナーシャ軽減や軽量化による省電力志向等の要求から、スピンドルの軸方向長さの短縮が求められている。
【0003】
工作機械主軸用として多く採用されている潤滑方法としては、グリース潤滑、オイルエア潤滑、オイルミスト潤滑などが挙げられる。一般的に、高速回転(dmn100万以上)の領域ではオイルエア潤滑が採用される。従来のオイルエア潤滑としては、図8(a)に示す軸受100の側方に配置された給油用ノズルこま101、又は、図8(b)に示す軸受100の側方に配置された外輪間座102の径方向貫通孔102aに挿入された給油用ノズルこま101を用いて、軸受側面から軸受内部に高圧エア及び微細な油粒を供給する方式が知られている。
【0004】
この方式では、ノズルこま101等の給油用部品が別に必要であり、スピンドルの部品点数が多くなるため、スピンドル全体のコストアップや管理の手間が増えることにつながる。また、ノズルこま101を使用するため外輪間座の形状やハウジングの構造が複雑になり、スピンドルの設計・加工の手間が増える。さらに、軸受の軸方向側面側にノズルこま101を設置するため、ある程度の間座長さが必要になり、スピンドルの軸方向長さが長くなる。これによって、工作機械自体の大きさが大きくなったり、軸方向長さが増えた分スピンドル重量が重くなり、スピンドルの危険速度(危険速度とは、スピンドルが有する固有振動数から算出した回転速度であり、この危険速度域でスピンドルを回転させると、振動大となってしまう。)が低くなったりする。また、高速回転化に伴い発生するエアカーテン(エアカーテンとは、空気と高速回転する内輪外径表面との摩擦によって発生する円周方向の高速空気流の壁のことである)によって、給油用ノズルからの油粒の供給が阻害され、その結果、軸受内部へ確実に潤滑油が供給されず焼付きに至ることがある。さらに、高圧エアによってエアカーテンを越えて油粒を玉に供給するため、玉に高圧エアがぶつかる際に風切音が発生するという課題もある。このように従来のオイルエア潤滑は、その構造上、様々な問題を抱えている。
【0005】
また、他のオイルエア潤滑方式としては、図9に示すように、外輪111の外周面の周方向に油溝112を形成し、かつ、その油溝112と同じ軸方向位置に、径方向に向いた油孔113が形成された外輪給油型軸受110を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような外輪給油型軸受では、軸受が高速回転で使用される場合でも、油粒の供給がエアカーテンによって阻害されることがない。そのため、高速回転でも安定したスピンドルの使用が可能となる。
【0006】
図10は、ノズルこま101を用いたオイルエア潤滑と外輪給油仕様のオイルエア潤滑それぞれの場合における主軸の概略図を示す。図10の上半分が外輪給油仕様のオイルエア潤滑のスピンドル120、下半分がノズルこま101を用いたオイルエア潤滑のスピンドル120Aである。なお、図10中、符号121は、回転軸であり、符号122は、回転軸121に嵌合するモータのロータである。このように、ノズルこま101を用いたオイルエア潤滑の場合には、軸受100の側面から潤滑油を供給するために一定以上の軸方向長さの間座が必要になる。それに対して、外輪給油仕様の場合は、給油用の間座が必要ないため、ノズルこまの削減や間座の構造を簡単にすることができ、間座123の軸方向長さをノズルコマを用いる仕様に比べて、短くすることができる。これにより、外輪給油仕様では、主軸・給油用の部品の設計・加工や部品の管理が簡単になり、工作機械の設計・製造・管理において全体的なコストダウンが可能となる。加えて、軸方向長さを短くできることで、工作機械サイズの小型化やスピンドル危険速度の向上にもつながる。
【0007】
また、特許文献1に記載の外輪給油型軸受110を用いた軸受装置では、ハウジングに形成された潤滑油導入孔と、外輪111の油孔113との円周方向位置を異ならせて、油溝112を経由させるようにして、油孔113の出口でのエア流速を下げて、高速回転時の騒音値の低減を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−79711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、外輪給油仕様のオイルエア潤滑において、軸受回転中に、転動体が油孔の上を通過する際に、振動及び騒音が発生する。この振動は、転動体が油孔をふさいだ場合、エアの流れが一瞬さえぎられ、また、転動体が通過後、流れが再開するという現象が周期的に繰り返されることで生じる空気振動であり、回転数によっては耳障りな騒音となる。該振動は、転動体が一度に油孔の上を通過する個数が多いほど大きくなる傾向があり、振動が大きくなると、スピンドルの加工精度低下につながる。また、騒音も大きくなり好ましくない。特に回転数が10000min−1以上の場合、数千Hzの高周波騒音となる。さらに、転動体によって複数個の油孔が同時にふさがれた場合、潤滑油の供給量が著しく少なくなり、また、転動体が通過後、潤滑油の供給量が急激に増加するという状態が繰り返されると、軸受温度の変動が大きくなり、焼付きや精密な加工ができない原因となる。
【0010】
また、特許文献1に記載の軸受装置では、ハウジングに形成された潤滑油導入孔と、外輪111の油孔113との円周方向位置を異ならせて、騒音値の低減を図っているが、上記課題について解決するものではなく、高速回転時に、複数の油孔を転動体が同時にふさいだ場合には、振動や騒音など懸念がある。
【0011】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高速回転においても振動及び騒音を抑制することができる転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受であって、
前記外輪は、それぞれ軸方向に同じ位置で、且つ、周方向に離間した、径方向に貫通する複数の油孔を備え、
前記複数の油孔の円周方向位相は、軸受回転中に、前記転がり軸受を軸方向から見たとき、前記複数の油孔のいずれか一つの中心線を前記転動体の中心が通過しているときに、残りの前記油孔に最も近い前記転動体は、前記油孔の中心線と交わる位置にあると共に、前記転がり軸受を軸方向から見たとき、前記油孔に最も近い前記転動体の中心を通り、前記転がり軸受の中心を通る直線に垂直な直線と、前記油孔の中心線と前記転動体との接点における接線とがなす角度をθとしたとき、θ≧45°であることを特徴とする転がり軸受。
(2) 前記油孔の直径が0.5〜1.0mmである(1)に記載の転がり軸受。
(3) 前記油孔の軌道面側開口部が、外周面側開口部に比べて開口面積が大きい(1)または(2)に記載の転がり軸受。
(4) 前記外輪の外周面には、前記油孔と連通する凹状溝が周方向に沿って形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
(5) 前記外輪の外周面には、前記凹状溝を挟む軸方向両側に環状溝が周方向に沿って形成され、前記各環状溝には、それぞれ環状のシール部材が配置される(4)に記載の転がり軸受。
(6) 工作機械主軸用軸受であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の転がり軸受。
【発明の効果】
【0013】
本発明の軸受装置によれば、外輪は、それぞれ軸方向に同じ位置で、且つ、周方向に離間した、径方向に貫通する複数の油孔を備え、複数の油孔の円周方向位相は、軸受回転中に、転がり軸受を軸方向から見たとき、複数の油孔のいずれか一つの中心線を転動体の中心が通過しているときに、残りの油孔に最も近い転動体は、油孔の中心線と交わる位置にあると共に、前記転がり軸受を軸方向から見たとき、前記油孔に最も近い前記転動体の中心を通り、前記転がり軸受の中心を通る直線に垂直な直線と、前記油孔の中心線と前記転動体との接点における接線とがなす角度をθとしたとき、θ≧45°としている。これにより、複数の油孔が同時に転動体によってふさがれるのを防止するとともに、油孔に最も近い転動体に衝突してはね返った潤滑油や空気流は、軸受空間内で円周方向に拡散するので、新たな潤滑エアの浸入を妨げずに、空気振動を生じさせにくく、高速回転においても振動及び騒音を抑制することができる。また、円周方向に拡散した油は、隣接する転動体に付着するので、潤滑性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る転がり軸受を示す、図2のI−I線に沿った断面図である。
図2図1のII線に沿った断面図である。
図3】(a)は、図2のIII部の転動体と外輪との位相関係を示す拡大図であり、(b)は、図2のIII´部の転動体と外輪との位相関係を示す拡大図である。
図4】(a)は、図3に示すθが45°の状態での、油及び潤滑エアの進行方向と転動体表面との関係を示す模式図であり、(b)は、図3に示すθが30°の状態での、油及び潤滑エアの進行方向と転動体表面との関係を示す模式図である。
図5】(a)〜(c)は、それぞれ第1〜第3変形例の転がり軸受の断面図である。
図6】(a)〜(d)は、それぞれ油孔の形状を変更した第4〜第7変形例の転がり軸受の断面図である。
図7】油孔の形状を変更した第8変形例の転がり軸受の断面図である。
図8】(a)及び(b)は、ノズルこまを用いた従来のオイルエア潤滑を示す断面図である。
図9】外輪給油仕様のオイルエア潤滑の転がり軸受の断面図である。
図10】上半分が外輪給油仕様のオイルエア潤滑のスピンドル、及び下半分がノズルこまを用いたオイルエア潤滑のスピンドルの各断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る転がり軸受について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、図10の上半分に示した工作機械用主軸装置に適用可能な本実施形態のアンギュラ玉軸受10は、外周面に内輪軌道面11aを有する内輪11と、内周面に外輪軌道面12aを有する外輪12と、保持器14に保持され、所定の接触角αをもって内輪軌道面11aと外輪軌道面12aとの間に転動自在に配置された複数の玉(転動体)13と、を備える。外輪12の軸方向一方側の内周面には、カウンターボア12bが設けられている。
【0017】
また、外輪12は、それぞれ軸方向に同じ位置で、且つ、周方向に離間した、径方向に貫通する複数(本実施形態では2つ)の油孔15(15a、15b)を備える。また、外輪12の外周面には、油孔15と連通する凹状溝16が周方向に沿って形成される。これにより、アンギュラ玉軸受10では、図示しないハウジングの給油路から供給された油粒及び潤滑エアが、外輪12の凹状溝16及び油孔15を介して、直接、玉13に供給され、オイルエア潤滑が行われる。
本実施形態では、油孔15の直径は、0.5〜1.0mmに設定されている。
【0018】
油孔15の軌道面側開口部は、少なくとも一部、好ましくは、開口部全体が軸方向において玉13とオーバーラップするように形成されればよく、より好ましくは、少なくとも一部が外輪軌道面12a内に形成されればよい。
【0019】
また、油孔15は、高速回転時の信頼性を向上(潤滑油をムラ無く均一に軌道面全体に行き渡らせる)するため複数設けることが必要とされる一方、軸受回転中に、複数の油孔15a、15bを玉13が同時に通過する(即ち、後述する油孔15の中心線L1,L2と玉13の中心Aの円周方向位相が一致する)場合、前述したように、振動や騒音が大きくなってしまうため、複数の油孔15a、15bを玉13が同時に通過しないように設計される。
【0020】
このため、本実施形態では、複数の油孔15a,15bの円周方向位相は、図2及び図3に示すように設計される。図3(a)及び(b)は、半径rの玉13、外輪軌道面12aおよび油孔15a,15bの軸方向投影図を示す。また、図3中、玉13と外輪軌道面12aとの接点を点O(X座標、Y座標の原点)、玉13の中心を点A、また、油孔15bの中心線L2と玉13の表面を表す円Cとの交点(即ち、油孔15bの中心線L2と玉13との接点)を点Bとする。実際には、点O、点A、点Bは同一の径方向断面上に存在しないが、図3は、外輪軌道面12a、玉13、油孔15bを径方向断面に平行な面に投影したものであるため、上記3点(O、A、B)が同一面上に存在している。また、点Aを通り、アンギュラ玉軸受10の中心Pを通る直線Lに垂直な直線LAと、点Bにおける玉13の接線LBとが成す角度をθとする。
【0021】
ここで、軸受回転中に、いずれか一つ油孔15aの中心線L1をいずれかの玉13の中心Aが通過しているときに、他方の油孔15bに最も近い玉13は、油孔15bの中心線L2と交わる位置にあると共に、アンギュラ玉軸受10を軸方向から見たとき、油孔15bに最も近い玉13の中心Aを通り、アンギュラ玉軸受10の中心Pを通る直線Lに垂直な直線LAと、油孔15bの中心線L2と玉13との接点Bにおける接線LBとがなす角度をθとしたとき、θ≧45°であるように設計される。
【0022】
つまり、潤滑時に油孔15から軸受内部へ侵入したエアは、玉13に衝突後、進行方向が変化する。この玉13との衝突後、エアの方向によっては、衝突後のエアにより潤滑が妨げられる可能性がある。図4は、潤滑エアと転動体表面との関係の模式図を示す。図4中、直角三角形の斜辺が、図3(b)中の点Bを通る接線LBを表し、図4中のθ1、θ2は、図3(b)中のθに対応する。また、図4中、矢印はエアの流れを表している。
【0023】
図4(a)に示すように、θ1=45°のとき、油孔15を通って、軸受内部に進入してきた潤滑エアは、玉13に衝突した際に進入方向に対して、進行方向が90°変化する。これに対して、θが45°未満、例えば、図4(b)に示すように、θ2=30°のとき、潤滑エアは、玉13に衝突した際に進入方向に対して、進行方向が120°変化する。このように、θが小さくなるほど、潤滑エアが玉13に衝突した後の進行方向変化が大きくなってしまう。これにより、衝突後のエアが、新たな潤滑エアの軸受内部への進入を妨げる現象が発生し、油孔15が玉13によってふさがれるのと同じような状態となる。
【0024】
したがって、衝突後のエアによる潤滑エアの進入阻害を防止するためには、図3(b)中のθが45°以上であることが望ましい。したがって、上記の振動、騒音、および軸受温度変動大の発生を防止するためには、いずれか1個の玉13と、外輪12に設けられた油孔15のうちいずれか一つの油孔15aとの周方向位相が一致しているとき(図3(a)の状態)に、他の全ての油孔15bと玉13との位置関係が、図3(b)に示すθ≧45°を満たしている必要がある。さらには、θが45°を超えると玉13に衝突してはね返った油や空気流は、外輪軌道面12aにぶつからず円周方向空間に拡散するので、空気振動を生じさせにくくなる。そして、隣接する玉13に油が付着するので、潤滑性の点でも好ましい。
【0025】
また、θが大きくなるほど、玉への油粒の衝突角度が小さくなる(接線に対して、平行に近づく)ので、油粒がはね返らず、油の粘性(ぬれ性)により、玉表面に付着しやすくなるので、潤滑性向上の点で望ましい。かつ、エアによる空気流のはね返りも少なくなり、スムーズに玉表面に沿って流れるので、空気振動が生じにくくなり、騒音も軽減可能となる。一つの油孔が図3(a)になった瞬間、遮断された空気は他の径方向給油孔に流れるので、上記効果がより拡大される。
【0026】
また、θが90°を超えると、一つの油孔15aが図3(a)の状態になった瞬間、他の油孔15bの周方向位相には、玉13ではなく、保持器14の柱部が位置することになり、玉13に直接油粒が供給できなくなる。この状態では、エアにより保持器14が押され、保持器14が径方向に移動する。このような現象が、複数の油孔15のいずれか一つといずれか一つの玉13とが、図3(a)の状態になった瞬間に発生するため、軸受使用中に、保持器14の径方向移動が様々な方向に繰り返し発生し保持器14が異常振動し、保持器音などの不具合が生じやすい。したがって、θ≦90°であることが好ましい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のアンギュラ玉軸受10によれば、外輪12は、それぞれ軸方向に同じ位置で、且つ、周方向に離間した、径方向に貫通する複数の油孔15を備え、複数の油孔15の円周方向位相は、軸受回転中に、アンギュラ玉軸受10を軸方向から見たとき、いずれか一つの油孔15aの中心線L1を玉13の中心Aが通過しているときに、残りの油孔15bに最も近い玉13は、油孔15bの中心線L2と交わる位置にあると共に、アンギュラ玉軸受10を軸方向から見たとき、油孔15bに最も近い玉13の中心Aを通り、アンギュラ玉軸受10の径方向に垂直な直線LAと、油孔15bの中心線L2と玉13との接点Bにおける転動体表面を表す円Cの接線LBとがなす角度をθとしたとき、θ≧45°としている。これにより、複数の油孔15が同時に玉13によってふさがれるのを防止するとともに、油孔15に最も近い玉13に衝突してはね返った油や空気流は、軸受空間内で円周方向に拡散するので、新たな潤滑エアの浸入を妨げずに、空気振動を生じさせにくく、高速回転においても振動及び騒音を抑制することができる。また、円周方向に拡散した油は、隣接する玉13に付着するので、潤滑性を向上することができる。
【0028】
また、油孔15の直径は、0.5〜1.0mmに設定されているので、該油孔15を通じて玉13に直接潤滑油を供給できる供給エア圧を容易に確保することができる。
【0029】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0030】
(第1変形例)
例えば、図5(a)に示す第1変形例のアンギュラ玉軸受10aのように、外輪12は、凹状溝を有しない構成であってもよい。
【0031】
(第2変形例)
また、図5(b)に示す第2変形例のアンギュラ玉軸受10bのように、外輪12の油孔15及び凹状溝16は、接触角の延長線Qに対して、反カウンターボア側の外輪軌道面12aに形成されてもよい。
【0032】
(第3変形例)
また、図5(c)に示す第3変形例のアンギュラ玉軸受10cのように、外輪12の外周面には、凹状溝16を挟む軸方向両側に環状溝12cが周方向に沿って形成され、各環状溝12cには、使用中の油漏れを防止するため、それぞれ環状のシール部材17が配置されてもよい。
【0033】
(第4〜第7変形例)
さらに、図6(a)〜(d)に示す第4〜第7変形例のアンギュラ玉軸受10d〜10gのように、油孔15の軌道面側開口部は、外周面側開口部に比べて開口面積を大きくしてもよい。即ち、外輪給油型の転がり軸受では、該油孔15を通じて玉13に直接潤滑油を供給するので、軌道面側開口部付近で供給エア圧を下げても、潤滑油を玉13に供給することができる。このため、軌道面側開口部のエア圧を低下させて、高圧エアが玉13にぶつかることを抑制し、軸受回転中の騒音を低減することができる。
【0034】
即ち、油孔15の軌道面側開口部は、軌道面側の部分15cを、図6(a)に示す半球状に、図6(b)に示す円すい状、図6(c)に示す大径円筒状に形成することで、開口面積を大きくしてもよい。或いは、図6(d)に示すように、油孔15の軌道面側開口部は、径方向全体に亘って内径側に向かって円すい状に拡径することで、開口面積を大きくしてもよい。
【0035】
(第8変形例)
また、図7に示す第8変形例のアンギュラ玉軸受10hのように、油孔15は、軌道面側の部分15cにおいて、玉13に向かって屈曲していてもよい。これにより、玉13の球面の中心寄りの部分に潤滑油を供給することができる。
【0036】
また、本実施形態では、外輪12が2つの油孔15a,15bを有する場合について説明したが、3つ以上の油孔15を有するものであってもよく、その場合、いずれか1つの玉13と、いずれか一つの油孔15との周方向位相が一致しているときに、残りの各油孔15に最も近い各玉13が、上述した角度θ≧45°を満たす構成であればよい。
【0037】
また、本実施形態では、転がり軸受として、アンギュラ玉軸受10を例に説明したが、他の任意の形式の転がり軸受にも適用することができる。
【0038】
更に、本発明の転がり軸受は、工作機械用主軸装置に適用されるものに限定されるものでなく、一般産業機械用転がり軸受や、モータ用転がり軸受などの高速回転する装置の転がり軸受としても適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 アンギュラ玉軸受(転がり軸受)
11 内輪
11a 内輪軌道面
12 外輪
12a 外輪軌道面
12b カウンターボア
13 玉(転動体)
14 保持器
15、15a,15b 油孔
16 凹状溝
LA 転がり軸受を軸方向から見たとき、油孔に最も近い転動体の中心を通り、転がり軸受の中心を通る直線に垂直な直線
LB 転がり軸受を軸方向から見たとき、油孔の中心線と転動体との接点における接線
θ LAとLBとがなす角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10