特許第6439480号(P6439480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6439480センサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439480
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】センサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20181210BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20181210BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   F16C41/00
   F16C33/76 A
   F16C19/18
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-26377(P2015-26377)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-148422(P2016-148422A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 明伸
(72)【発明者】
【氏名】高山 幸久
(72)【発明者】
【氏名】石川 寛朗
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−342860(JP,A)
【文献】 特開2009−68597(JP,A)
【文献】 特開2013−53638(JP,A)
【文献】 特開2005−249180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00
F16C 19/18
F16C 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向内端部にエンコーダを支持したハブを、その内径側に複数個の転動体を介して回転自在に支持した外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪の軸方向内端部に装着される軸受キャップと、
センサと、このセンサを保持した状態で前記軸受キャップに支持固定されたセンサホルダとを備えたセンサユニットと、
を備え、
前記軸受キャップは、前記外輪の軸方向内端部に嵌合固定される嵌合筒部と、この嵌合筒部の軸方向一部から径方向内方に伸長する状態で設けられた底板部とを備え、少なくともこの底板部が合成樹脂を射出成形する事により造られたものであり、
前記底板部のうち、使用状態で上下方向に隣り合う2箇所位置のうちの上側の位置である、軸方向に関して前記エンコーダの一部と対向する位置にホルダ支持部が、前記2箇所位置のうちの下側の位置にナット保持部が、それぞれ前記底板部の軸方向内側面から軸方向内方に突出する状態で、且つ、互いに離隔した状態で設けられており、
前記ホルダ支持部は、円周方向1箇所に不連続部を有する欠筒状に造られていると共に、この不連続部が、使用状態で下方に位置する部分に配置されており、
前記ナット保持部は、内径側にナットを保持していると共に、外周面のうち、使用状態で前記ホルダ支持部の下側面と対向する上側面が、前記不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面となっており、
前記センサホルダは、前記ホルダ支持部に挿入された、その軸方向外端部に前記センサを保持したホルダ本体部と、このホルダ本体部のうち前記ホルダ支持部内から軸方向内側に突出した部分に設けられて、その軸方向外側面を、前記ホルダ支持部の軸方向内端面と前記ナット保持部の軸方向内端面とのうちの少なくともこのナット保持部の軸方向内端面に当接させた取付フランジ部とを備えており、
前記センサホルダは、前記取付フランジ部を軸方向に挿通したボルトの雄ねじ部を前記ナットに螺合させる事に基づいて、前記軸受キャップに支持固定されている、
センサユニット付軸受キャップ。
【請求項2】
内周面に外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、外周面に内輪軌道を有し、使用時に回転するハブと、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、このハブの軸方向内端部にこのハブと同心に支持固定され、磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させたエンコーダと、前記外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪の軸方向内端部に装着された軸受キャップと、この軸受キャップに支持固定されたセンサユニットと、を備えた転がり軸受ユニットであって、
前記軸受キャップに前記センサユニットを支持固定して成るセンサユニット付軸受キャップが、請求項1に記載したセンサユニット付軸受キャップである事を特徴とする転がり軸受ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受ユニットを構成する外輪の軸方向端部開口を塞ぐと共に、センサを支持する為に使用する軸受キャップ、及び、この軸受キャップを備えた転がり軸受ユニットの改良に関する。
この発明は、転がり軸受ユニットを構成する外輪の軸方向端部開口を塞ぐ為に使用する軸受キャップにセンサユニットを支持固定して成る、センサユニット付軸受キャップ、及び、このセンサユニット付軸受キャップを備えた転がり軸受ユニットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為の車輪支持用の転がり軸受ユニットと、ABS等の制御に必要な車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置とを互いに組み合わせて成る、回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットが、従来から広く使用されている。
【0003】
図10は、この様な回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットの従来構造の1例として、特許文献1に記載されたものを示している。この回転速度検出装置付の転がり軸受ユニット1は、使用時に懸架装置に支持固定された状態で回転しない外輪2の内径側に、使用時に図示しない車輪を支持した状態でこの車輪と共に回転するハブ3を、複数個の転動体4、4を介して、回転自在に支持している。前記外輪2の外周面には、前記懸架装置を構成する図示しないナックルに結合固定する為の固定側フランジ5が設けられている。又、前記ハブ3の外周面の軸方向外端寄り(軸方向に関して「外」とは、車両への組み付け状態で車体の幅方向外側を言い、図1、2、5、7、9、10の左側。反対に、車体の幅方向中央側となる、図1、2、5、7、9、10の右側を、軸方向に関して「内」と言う。本明細書及び特許請求の範囲の全体で同じ。)部分には、車輪を支持固定する為の回転側フランジ6が設けられている。
【0004】
又、前記外輪2の内周面と前記ハブ3の外周面との間で前記各転動体4、4を設置した空間の軸方向外端開口は、シールリング7により塞いでいる。これに対し、前記外輪2の軸方向内端部には、有底円筒状の軸受キャップ8を装着して、この外輪2の軸方向内端開口を塞いでいる。この軸受キャップ8は、合成樹脂製で、全体を有底円筒状に構成されたキャップ本体9と、このキャップ本体9にモールド固定された金属板製の金属環10から構成されており、円筒状の嵌合筒部11と、この嵌合筒部11の軸方向内端部から径方向内方に向けて伸長した底板部12とを備えている。そして、前記嵌合筒部11の先半部(軸方向外半部)を構成する前記金属環10を、前記外輪2の軸方向内端部外周面に締り嵌めで外嵌固定する事により、この外輪2の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪2の軸方向内端部に装着されている。
【0005】
前記ハブ3の軸方向内端部には、回転速度検出装置を構成する、円環状のエンコーダ13を、このハブ3と同心に支持固定している。このエンコーダ13の被検出面(軸方向内側面)には、S極とN極とが円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されている。又、前記軸受キャップ8を構成する前記底板部12には、回転速度検出装置を構成する合成樹脂製のセンサホルダ14を支持固定している。この為に、前記底板部12のうちで、軸方向に関して前記エンコーダ13の被検出面の一部と対向する部分に、軸方向に貫通するホルダ挿入孔15を形成すると共に、このホルダ挿入孔15に隣接した部分に、ボルト挿通孔16を形成している。又、前記底板部12の軸方向外側面のうちで、このボルト挿通孔16の開口周縁部に、ナット17を熱かしめ固定している。そして、前記センサホルダ14を構成する、その先端部にホール素子等の磁気検出素子及び波形成形回路を組み込んだICから成るセンサを包埋した、棒状(円柱状又は四角柱状等)のホルダ本体部18を、前記ホルダ挿入孔15内に挿入している。更に、このホルダ本体部18の基端部に設けられた取付フランジ部19及び前記ボルト挿通孔16を挿通したボルト20を、前記ナット17に螺合している。これにより、前記センサホルダ14を前記軸受キャップ8に支持固定している。
【0006】
以上の様な回転速度検出装置付の転がり軸受ユニット1の使用時には、前記外輪2の外周面に固設した固定側フランジ5を懸架装置に対して、図示しないボルトにより結合固定すると共に、前記ハブ3の外周面に固設した回転側フランジ6に車輪を、この回転側フランジ6に設けたスタッドボルトにより固定する事で、懸架装置に対して車輪を回転自在に支持する。この状態で車輪が回転すると、前記ホルダ本体部18の先端部に保持されたセンサの近傍を、前記エンコーダ13の被検出面に配置されたS極とN極とが交互に通過する。この結果、このセンサの検出部内を流れる磁束の密度が変化し、その出力信号を変化させる。この様にしてセンサの出力信号が変化する周波数は、前記車輪の回転数に比例する。従って、この出力信号を図示しない制御器に送れば、ABSやTCSを適切に制御できる。
【0007】
但し、上述した様な従来構造の第1例の場合には、次の様な問題を生じる可能性がある。即ち、前記軸受キャップ8を構成する底板部12を軸方向に貫通したホルダ挿入孔15に、前記ホルダ本体部18を挿入する構成を採用している為、このホルダ挿通孔15を通じて、前記軸受キャップ8の内部(底板部12の軸方向外側)の空間に、泥水等の異物が侵入する可能性がある。又、前記ホルダ挿入孔15だけでなく、前記ボルト挿通孔16に就いても、前記底板部12を軸方向に貫通している為、前記センサホルダ14を前記軸受キャップ8に支持固定する以前の状態で、前記両孔15、16を通じて、この軸受キャップ8の内部の空間に異物が侵入する可能性がある。
【0008】
上述の様な事情に鑑みて、例えば特許文献2には、図11〜12に示す様な、軸受キャップ8aの構造が開示されている。この従来構造の第2例の軸受キャップ8aは、合成樹脂製で、全体を有底円筒状に構成されたキャップ本体9aと、このキャップ本体9aにモールド固定された金属板製の金属環10a及びナット17aとから構成されており、円筒状の嵌合筒部11aと、この嵌合筒部11aの軸方向内端部から径方向内方に向けて伸長した底板部12aとを備えている。そして、このうちの底板部12aに、センサホルダ14aを構成するホルダ本体部18aの先端部を挿入する為の、軸方向内側面側のみが開口した有底のホルダ挿入孔15aを設けている。又、このホルダ挿入孔15aの周囲に、前記底板部12aの軸方向内側面から軸方向内方に向けて突出する状態で、前記ホルダ本体部18aの中間部外周面をがたつきなく支持する為の、筒状のホルダ支持部21を設けている。そして、このホルダ支持部21及び前記ホルダ挿入孔15aにより、前記ホルダ本体部18aを介して(このホルダ本体部18aの先端部に包埋した)センサの位置決めを図っている。又、前記底板部12aのうちで、前記ホルダ挿入孔15aに隣接する部分に、前記ナット17aをインサート成形により保持している。
【0009】
以上の様な構成を有する従来構造の第2例の場合には、前記ホルダ挿入孔15aを、前記底板部12aを軸方向に貫通しない有底孔としている為、このホルダ挿入孔15aを通じて、泥水等の異物が前記軸受キャップ8aの内部に侵入する事を防止できる。更に、前記ナット17aを設けた部分に関しても、前記底板部12aを軸方向に貫通しない構造としている為、異物の進入を防止できる。
【0010】
ところが、上述した従来構造の第2例の場合には、前記ホルダ挿入孔15a又は前記ホルダ支持部21内に侵入した異物を、効率良く排出する事が困難である。
即ち、従来構造の第2例の場合には、前記ホルダ支持部21の内周面の断面形状(輪郭形状)を、前記ホルダ本体部18aの外周面形状に合致した円形状ではなく、前記ホルダ支持部21の内側にこのホルダ本体部18aを挿入した際に、このホルダ本体部18aの周囲の円周方向4箇所に断面略半円形状の隙間22、22が形成される形状(花弁形状)としている。これにより、これら各隙間22、22を利用して、前記ホルダ挿入孔15a又は前記ホルダ支持部21の内側に侵入した異物を外部に排出する様にしている。但し、前記各隙間22、22は何れも、軸方向内方のみが開口した軸方向に長い形状を有している為、これら各隙間22、22を通じて異物を完全に排出する事は困難であり、水分だけが排出されて内部に泥が堆積する可能性がある。又、内部に堆積した泥や内部に残留した水分の氷結によって、前記ホルダ本体部18aの先端部を損傷したり、前記ホルダ挿入孔15aの底部を損傷したりする可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−142424号公報
【特許文献2】国際公開第2014/044261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ホルダ支持部内に侵入した異物を効果的に排出する事ができる、センサユニット付軸受キャップの構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のセンサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニットのうち、センサユニット付軸受キャップは、軸受キャップと、センサユニットとを備える。
このうちの軸受キャップは、軸方向内端部にエンコーダを支持したハブを、その内径側に複数個の転動体を介して回転自在に支持した外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪の軸方向内端部に装着される。
又、前記センサユニットは、センサと、このセンサを保持した状態で前記軸受キャップに支持固定されたセンサホルダとを備える。
又、前記軸受キャップは、全体を有底円筒状に構成されており、前記外輪の軸方向内端部に嵌合固定される嵌合筒部と、この嵌合筒部の軸方向一部(例えば軸方向内端部)から径方向内方に伸長する状態で設けられた底板部とを備え、少なくともこの底板部が合成樹脂を射出成形する事により造られている。
又、前記底板部のうち、使用状態で上下方向に隣り合う2箇所位置のうちの上側の位置である、軸方向に関して前記エンコーダの一部と対向する位置にホルダ支持部が、前記2箇所位置のうちの下側の位置にナット保持部が、それぞれ前記底板部の軸方向内側面から軸方向内方に突出する状態で、且つ、互いに離隔した状態で設けられている。
又、前記ホルダ支持部は、円周方向1箇所に不連続部を有する欠筒状(例えば、欠円筒状)に造られていると共に、この不連続部が、使用状態で下方{例えば、下端部の幅方向(車両への組み付け状態での前後方向に相当)中央部}に位置する部分に配置されている。
又、前記ナット保持部は、内径側にナットを保持していると共に、外周面のうち、使用状態で前記ホルダ支持部の下側面と対向する上側面が、前記不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面(例えば、円筒面)となっている。
又、前記センサホルダは、前記ホルダ支持部に挿入された、その軸方向外端部に前記センサを保持したホルダ本体部と、このホルダ本体部のうち前記ホルダ支持部内から軸方向内側に突出した部分に設けられて、その軸方向外側面を、前記ホルダ支持部の軸方向内端面と前記ナット保持部の軸方向内端面とのうちの少なくともこのナット保持部の軸方向内端面に当接させた取付フランジ部とを備える。
又、前記センサホルダは、前記取付フランジ部を軸方向に挿通(貫通)したボルトの雄ねじ部を前記ナットに螺合させる事に基づいて、前記軸受キャップに支持固定されている。
【0014】
本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、前記ナット保持部の軸方向内端面を、前記ホルダ支持部の軸方向内端面よりも軸方向内側に配置すると共に、これらホルダ支持部の軸方向内端面とナット保持部の軸方向内端面とのうちの、このナット保持部の軸方向内端面にのみ、前記取付フランジ部の軸方向外側面を当接させる事ができる。
又、本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、前記取付フランジ部の軸方向外側面と前記ホルダ支持部の軸方向内端面との間に存在する隙間の厚さ寸法を、前記ホルダ支持部の内周面と前記ホルダ本体部の外周面との間に存在する隙間の厚さ寸法よりも小さくする事ができる。
又、本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、前記底板部のうち、軸方向に関して前記ホルダ支持部の内径側部分と整合する部分に、この底板部の軸方向内側面側にのみ開口して、前記ホルダ支持部の内径側部分と連通する、有底のセンサ挿入孔を設け、このセンサ挿入孔に前記ホルダ本体部の軸方向外端部を挿入する事ができる。
【0015】
又、本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、使用状態で、前記不連続部を前記ホルダ支持部の下端部の幅方向中央部に配置すると共に、前記ナット保持部の上側面を円筒面とする。且つ、軸方向に対して直交する仮想平面内に於いて、幅方向に関して片側(又は他側)に存在する前記不連続部の端部及び前記ナット保持部の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をαとし、幅方向に関して互いに反対側に存在する前記不連続部の端部及び前記ナット保持部の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をβとした場合に、これらα、βを、「50゜≦α≦60゜、且つ、0゜<β≦10゜」の範囲(好ましくは、「53゜≦α≦57゜、且つ、3゜<β≦7゜」の範囲)に規制する事ができる。
【0016】
一方、本発明の転がり軸受ユニットは、例えば自動車の車輪(従動輪)を回転自在に支持する為のもので、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、エンコーダと、軸受キャップと、センサユニットとを備える。
このうちの外輪は、内周面に単列又は複列の外輪軌道を有する。
又、前記ハブは、外周面に単列又は複列の内輪軌道を有し、使用時に回転する。
又、前記各転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に、転動自在に設けられている。これら各転動体としては、玉、円すいころ、円筒ころ、球面ころ、ニードル等を使用する事ができる。
又、前記エンコーダは、前記ハブの軸方向内端部に、このハブと同心に支持固定され、磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させたものである。
又、前記軸受キャップは、前記外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪の軸方向内端部に装着されている。
又、前記センサユニットは、前記軸受キャップに支持固定されている。
特に、本発明の転がり軸受ユニットの場合には、前記軸受キャップに前記センサユニットを支持固定して成るセンサユニット付軸受キャップとして、請求項1に記載したセンサユニット付軸受キャップを使用している。
【発明の効果】
【0017】
上述の様に構成する本発明のセンサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニットによれば、軸受キャップを構成する底板部に設けられたホルダ支持部内に侵入した異物を効果的に排出する事ができる。
即ち、本発明の場合には、前記ホルダ支持部の円周方向1箇所に不連続部が存在し、この不連続部が、下方に位置する部分に配置されている。この為、このホルダ支持部の軸方向内端面とセンサホルダを構成する取付フランジ部の軸方向外側面との間部分を通じて、外部から前記ホルダ支持部内に泥水等の異物が侵入した場合でも、この異物を重力の作用を利用して、前記不連続部を通じて効果的に排出する事ができる。
更に、本発明の場合には、前記ホルダ支持部の下側面にナット保持部の上側面が対向していると共に、このナット保持部の上側面が、前記不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面となっている。これにより、前記ホルダ支持部の下側面(及び前記不連続部を介して露出した、前記センサホルダを構成するホルダ本体部の下側面)と前記ナット保持部の上側面との間部分は、上下方向に関する幅寸法が、幅方向に関して、中央部分(前記不連続部に対応する部分)で小さくなった形状になっている。この為、使用時に(例えば、自動車の走行により)、当該間部分で幅方向(前後方向)の気流が発生した場合には、この気流は、前記ナット保持部の上側面に沿った、上に凸の円弧状の流れとなり、増速しながら、当該間部分の幅方向中央部分に流入する。そして、この様に増速した気流の流入に伴って、この幅方向中央部分が陰圧となる。この結果、前記上に凸の円弧状の流れの効果(前記不連続部の内側を気流が通過する効果)、及び、ベンチュリー効果(陰圧に基づく流体の引き込み効果)により、当該間部分の幅方向中央部分で、前記不連続部を通じての異物の排出効果が高められる。
【0018】
又、本発明の場合には、前記ホルダ支持部の不連続部に、前記ナット保持部の上側面が対向している。この為、このナット保持部により、前記不連続部を、路面から跳ね上がった泥水から保護する事ができる。従って、この泥水が、前記不連続部を通じて、前記ホルダ支持部内に侵入する事を、有効に防止できる。
【0019】
又、本発明の場合には、ナット保持部の上側面が、ホルダ支持部の不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面となっている。この為、前記ベンチュリー効果を生じさせるべく、前記ナット保持部の上側面を、前記ホルダ本体部の外周面のうち前記不連続部を通じて外部に露出した部分に近づける場合でも、(前記ナット保持部の上側面が幅方向に対して平行な平坦面となっている場合に比べて、)前記ナット保持部の上側面と前記ホルダ支持部の円周方向両端部との対向間隔を確保し易い。従って、前記軸受キャップの底板部を射出成形する際に使用する射出成形用金型のうち、前記ナット保持部の上側面と前記ホルダ支持部の円周方向両端部との間に位置する部分の肉厚を確保し易い。この結果、この肉厚が小さい場合に生じる不都合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットの断面図。
図2】同じくセンサユニット付軸受キャップを取り出して示す断面図。
図3】同じく軸受キャップを取り出して図2の右方から見た図。
図4図3の一部を拡大して示す図。
図5】本発明に関する参考例の第1例を示す図2と同様の図。
図6】同じく図3に相当する図。
図7】本発明に関する参考例の第2例を示す図2と同様の図。
図8】同じく図3に相当する図。
図9】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2に相当する図。
図10】従来構造の第1例の回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットを示す断面図。
図11】従来構造の第2例に関する軸受キャップを取り出して示す端面図。
図12】同じく図11のA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜4により説明する。本例の特徴は、外輪2の軸方向内端開口を塞ぐ為の軸受キャップ33と、センサホルダ46にセンサ47を保持して成るセンサユニット45とを組み合わせて成る、センサユニット付軸受キャップの構造を工夫した点にある。その他の部分の構成及び作用効果に就いては、前述した従来構造の場合と基本的には同じであるので、以下、本例の特徴部分及び先に説明しなかった部分を中心に説明する。
【0022】
本例の回転速度検出装置付の転がり軸受ユニット1aは、従動輪である車輪をナックル等の懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出するもので、静止輪である外輪2の内径側に、回転輪であるハブ3を、複数個の転動体4、4を介して、回転自在に支持している。
【0023】
前記外輪2は、外周面に懸架装置を構成する図示しないナックルに結合固定する為の固定側フランジ5を、内周面に複列の外輪軌道23a、23bを、それぞれ有している。又、前記ハブ3は、ハブ本体24と内輪25とを、かしめ部26により結合固定して成るもので、外周面に複列の内輪軌道27a、27bを有し、前記外輪2の内径側に、この外輪2と同心に支持されている。又、前記ハブ本体24の軸方向外端部で、前記外輪2の軸方向外端開口よりも軸方向外方に突出した部分には、車輪を支持する為の回転側フランジ6を設けている。そして、前記各外輪軌道23a、23bと、前記各内輪軌道27a、27bとの間に、それぞれ複数個ずつ前記各転動体4、4を設けている。尚、図示の例では、これら各転動体4、4として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、円すいころを使用する場合もある。
【0024】
前記外輪2及び前記ハブ3を構成するハブ本体24は、S53C等の中炭素鋼製であり、少なくとも前記各軌道23a、23b、27aの表面に、高周波焼き入れ等の硬化処理が施されている。一方、前記ハブ3を構成する内輪25及び前記各転動体4、4は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼製であり、例えば、ずぶ焼き入れによる硬化処理が施されている。
【0025】
前記ハブ3を構成する内輪25の軸方向内端部には、回転速度検出装置を構成する、円環状のエンコーダ13aが、前記ハブ3と同心に支持固定されている。このエンコーダ13aは、支持環28と、エンコーダ本体29とから構成されている。このうちの支持環28は、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼板やSPCC等の圧延鋼板に、プレス加工を施す事により、断面L字形で全体を円環状に形成されており、支持円筒部30と、この支持円筒部30の軸方向内端部から径方向外方に折れ曲がる状態で設けられた支持円輪部31とを備える。そして、このうちの支持円筒部30の軸方向外端部が、前記内輪25の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌固定されている。又、前記エンコーダ本体29は、フェライト粉末等の磁性体を混入したゴム磁石又はプラスチック磁石等の永久磁石により全体を円輪状に造られたもので、前記支持円輪部31の軸方向内側面に添着固定されている。このエンコーダ本体29の軸方向内側面である被検出面32には、S極とN極とが円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されている。この様な被検出面32は、前記ハブ3と同心に、且つ、前記ハブ本体24の軸方向内端部に形成されたかしめ部26の軸方向内端面よりも軸方向内方に配置されている。
【0026】
又、前記外輪2の内周面と前記ハブ3の外周面との間で前記各転動体4、4を設置した空間の軸方向外端開口は、シールリング7により塞いでいる。これに対し、前記外輪2の軸方向内端部には、有底円筒状の軸受キャップ33を装着して、この外輪2の軸方向内端開口を塞いでいる。又、この軸受キャップ33には、使用状態で、回転速度検出装置を構成する、センサユニット45が支持固定されている。このセンサユニット45は、合成樹脂製のセンサホルダ46と、センサ47とを含んで構成されている。このうちのセンサホルダ46は、円柱状(棒状)のホルダ本体部48と、このホルダ本体部48の基端(軸方向内端、図1〜2の右端)寄り部分に設けられた取付フランジ部49とを備えている。又、前記センサ47は、ホールIC、ホール素子、MR素子、GMR素子等の磁気検知素子及び波形成形回路を組み込んだICから成るもので、前記ホルダ本体部48の先端部(軸方向外端部)にモールド固定(包埋)されている。
【0027】
前記軸受キャップ33は、合成樹脂製で有底円筒状に構成されたキャップ本体34と、このキャップ本体34にそれぞれモールド固定された金属環35及びナット37と、Oリング36とから構成されており、略円筒状の嵌合筒部38と、この嵌合筒部38の軸方向内端部から径方向内方に向けて伸長した(この嵌合筒部38の軸方向内端開口を塞ぐ状態で設けられた)略円板状の底板部39とを備えている。
【0028】
前記キャップ本体34は、例えばポリアミド66樹脂に、グラスファイバーを適宜加えた繊維強化ポリアミド樹脂材料を、射出成形する事により造られている。又、必要に応じて、ポリアミド樹脂に、非晶性芳香族ポリアミド樹脂(変性ポリアミド6T/6I)、低吸水脂肪族ポリアミド樹脂(ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド612樹脂)を適宜加える事で、より耐水性を向上させても良い。又、本例の場合、前記金属環35及び前記ナット37は、前記キャップ本体34の射出成形時にモールド固定する事により、このキャップ本体34に固定されている。
【0029】
前記軸受キャップ33を構成する嵌合筒部38は、先半部(軸方向外半部、図1〜2の左半部)に設けられた小径筒部40と、基半部(軸方向内半部、図1〜2の右半部)に設けられた大径筒部41とを、段差面42により連続させた、段付き円筒状に構成されている。又、本例の場合、前記小径筒部40の外径側部分を、前記金属環35により構成している。この金属環35は、ステンレス鋼板や圧延鋼板等から造られており、断面L字形で、円筒部43と、この円筒部43の軸方向内端部から径方向外方に折れ曲がった外向フランジ部44とを備えている。このうちの円筒部43は、軸方向内端部を除いた大部分が前記小径筒部40の外周面に露出しているのに対し、前記外向フランジ部44は、全体が前記大径筒部41の内部に埋め込まれている。又、前記段差面42の内径側部分を、前記Oリング36用の係止溝とし、この係止溝にこのOリング36を係止している。
【0030】
又、前記底板部39は、全体を略円板状に構成されている。この底板部39のうち、使用状態で、上半部の幅方向(車両への組み付け状態での前後方向、図1〜2の表裏方向、図3〜4の左右方向)中央部に於ける、上下方向に隣り合う2箇所位置に、ホルダ支持部50及びナット保持部51が設けられている。より具体的には、この2箇所位置のうちの上側の位置である、軸方向に関して前記エンコーダ13aの被検出面32の一部と対向する位置に前記ホルダ支持部50が、前記2箇所位置のうちの下側の位置に前記ナット保持部51が、それぞれ前記底板部39の軸方向内側面から軸方向内方に突出する状態で、且つ、互いに離隔した状態で設けられている。
【0031】
前記ホルダ支持部50は、円周方向1箇所に不連続部52を有する欠円筒状(断面略C字形状)に造られていると共に、この不連続部52が、使用状態で下端(下部の幅方向中央部)に位置する部分に配置されている。この様なホルダ支持部50の内径側部分は、軸方向に関しては内端部のみが開口すると共に、径方向に関しては前記不連続部52に対応する部分のみが開口した、円柱状の有底孔となっている。この様なホルダ支持部50は、前記センサホルダ46を構成するホルダ本体部48の先端部及び中間部をがたつきなく内嵌する為のもので、このホルダ本体部48の先端部及び中間部の外径寸法よりも僅かに大きい内径寸法を有する。
【0032】
又、前記ナット保持部51は、円筒状に造られたもので、内径側に前記ナット37が、インサート成形によりモールド固定されている。このナット37は、軸方向外端部に底部を設けた有底円筒状の袋ナットであり、内周面に雌ねじ部53が形成されていると共に、外周面の軸方向1乃至複数箇所(図示の例では1箇所)に係合凹溝54が形成されている。そして、この係合凹溝54内に前記ナット保持部51を構成する合成樹脂の一部を進入させている。又、このナット保持部51の軸方向内端面と前記ナット37の軸方向内端面とは、前記ホルダ支持部50の軸方向内端面と同一仮想平面上に位置している。又、本例の場合、前記底板部39の軸方向内側面のうち、幅方向に関して前記ナット保持部51の片側(図3〜4の左側)に隣接する部分には、略半長円形の凸部59が設けられており、この凸部59の軸方向内側面の略中央部に、前記キャップ本体34を射出成形する際の合成樹脂の注入口(ゲート)である、円形状の凹部が形成されている。
【0033】
尚、本例の場合、前記ナット37を、軸方向に貫通しない構造(袋ナット)としている為、インサート成形時に、このナット37を、雄ねじ部と螺合させずに済み、インサート成形の作業性を向上できる。一方、ナットを、軸方向に貫通した構造とした場合には、このナットの内側に合成樹脂が入り込まない様に、雄ねじ部と螺合した状態で、インサート成形を行う。又、前記ナット37の固定方法は、インサート成形に限らず、例えば圧入等、従来から知られた各種方法を採用できる。
【0034】
又、本例の場合、前記ホルダ支持部50の外周面(前記不連続部52に対応する下端部を除く。)と、前記ナット保持部51の外周面とは、それぞれが円筒面であると共に、それぞれの中心軸が、互いに同一の鉛直線上に位置している。この為、上下方向に関して互いに対向する、前記ホルダ支持部50の外周面(前記不連続部52に対応する下端部を除く。)のうちの下側面と、前記ナット保持部51の外周面のうちの上側面とは、それぞれ上下方向に関して相手側に向けて凸となる円筒面になっている。特に、前記ナット保持部51の上側面は、前記不連続部52と対向する部分が最も上方に位置する、上に凸の円筒面となっている。又、本例の場合、前記ホルダ支持部50の外周面と、前記ナット保持部51の外周面とは、幅方向に重畳しておらず、これら両周面を幅方向から見た場合に、これら両周面同士の間に上下方向に関する微小な隙間が形成された状態となっている。
【0035】
又、本例の場合、軸方向に対して直交する仮想平面(図3の紙面)内に於いて、幅方向に関して片側(又は他側)に存在する前記不連続部52の端部及び前記ナット保持部51の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をαとし、幅方向に関して互いに反対側に存在する前記不連続部52の端部及び前記ナット保持部51の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をβとした場合に、α=55゜、β=5゜となっている。尚、本発明を実施する場合には、後述する様な不連続部52を通じての異物の排出効果を高める観点より、前記α、βの値は、本例の値を中心とする所定の範囲、即ち、「50゜≦α≦60゜、且つ、0゜<β≦10゜」の範囲に規制する事が好ましい。更には、「53゜≦α≦57゜、且つ、3゜≦β≦7゜」の範囲に規制する事がより好ましい。これらα、βの範囲に関しては、更に後述する。
【0036】
上述の様な構成を有する本例の軸受キャップ33は、前記嵌合筒部38のうちの小径筒部40(円筒部43)を前記外輪2の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する事により、この外輪2の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪2の軸方向内端部に装着される。又、この状態で、前記段差面42を、この外輪2の軸方向内端面に突き当てる事により、この外輪2に対する前記軸受キャップ33の軸方向に関する位置決めが図られる。これと共に、前記Oリング36を、この外輪2の軸方向内端面と、このOリング36を係止した前記係止溝の底面との間で弾性的に圧縮する事により、これら両面同士の間部分がシールされる。そして、前記底板部39のうちで、前記ホルダ支持部50を設けた部分の軸方向外側面が、前記エンコーダ13aの被検出面32に対し近接対向する。
【0037】
又、本例の場合には、前記軸受キャップ33に対し、前記センサホルダ46を、次の様にして支持固定する。即ち、このセンサホルダ46を構成する棒状のホルダ本体部48を、ホルダ支持部50の内側にがたつきなく挿入(内嵌)する。これと共に、前記ホルダ本体部48の基端寄り部分に設けられた取付フランジ部49の軸方向外側面を、前記ホルダ支持部50の軸方向内端面と、前記ナット保持部51及び前記ナット37の軸方向内端面とに、それぞれ当接させる。そして、この状態で、前記取付フランジ部49に設けた通孔55を挿通したボルト56の先端部に設けた雄ねじ部を、前記ナット37の雌ねじ部53に螺合させ、更に締め付ける。これにより、前記エンコーダ13aの被検出面32に対し、前記ホルダ本体部48の先端部に保持されたセンサ47を、前記底板部39を介して軸方向に近接対向させる。尚、本例の場合には、この底板部39の軸方向外側面のうち、軸方向に関して前記エンコーダ13aの被検出面32と対向する部分に、全周に亙る環状凹部57を形成している。そして、この被検出面32を、この環状凹部57の内側に挿入すると共に、この環状凹部57の底部に近接対向させている。そして、この様な構成を採用する事により、この環状凹部57の軸方向深さの分、軸方向に関する前記エンコーダ13aの被検出面32と前記センサ47との対向距離を短くする事で、このセンサ47の出力強度を高められる様にしている。
【0038】
上述の様な構成を有する本例の回転速度検出装置付きの転がり軸受ユニット1aの場合にも、前述した従来構造の場合と同様に、従動輪である車輪を懸架装置に対して回転自在に支持できると共に、この車輪の回転速度を検出する事ができる。この為、ABSやTCSを適切に制御できる。
【0039】
特に、本例の場合には、前記軸受キャップ33を構成する底板部39に設けられたホルダ支持部50内に侵入した泥水等の異物を効果的に排出する事ができる。
即ち、本例の場合には、前記ホルダ支持部50の円周方向1箇所に不連続部52が存在し、この不連続部52が、このホルダ支持部50の下端部に配置されている。この為、このホルダ支持部50の軸方向内端面と前記センサホルダ46を構成する取付フランジ部49の軸方向外側面との間部分を通じて、外部から前記ホルダ支持部50内に泥水等の異物が侵入した場合でも、この異物を重力の作用を利用して、前記不連続部52を通じて外部に効果的に排出する事ができる。又、本例の場合には、前記ホルダ支持部50の下側面に前記ナット保持部51の上側面が対向していると共に、このナット保持部51の上側面が、前記不連続部52と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている。この為、この不連続部52を通じて排出された泥水等の異物が、前記ナット保持部51の上側面に落下した場合には、この異物は、重力の作用により、この上側面に沿って円周方向に移動し易くなっており、別な言い方をすれば、落下した位置に留まりにくくなっている。
【0040】
又、本例の場合には、上述の様に、前記ホルダ支持部50の下側面に前記ナット保持部51の上側面が対向していると共に、このナット保持部51の上側面が、前記不連続部52と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている。これにより、前記ホルダ支持部50の下側面(及び前記センサホルダ46を構成するホルダ本体部48の外周面のうちで前記不連続部52を通じて外部に露出した部分)と前記ナット保持部51の上側面との間部分は、上下方向に関する幅寸法が、幅方向に関して、中央部分(前記不連続部52に対応する部分)で小さくなった形状になっている。この為、使用時に(例えば、自動車の走行により)、前記間部分で幅方向(前後方向)の気流が発生した場合には、この気流は、前記ナット保持部51の上側面に沿った、上に凸の円弧状の流れとなり、増速しながら、前記間部分の幅方向中央部分に流入する。そして、この様に増速した気流の流入に伴って、この幅方向中央部分が陰圧となる。この結果、前記上に凸の円弧状の流れの効果(前記不連続部52の内側を気流が通過する効果)、及び、ベンチュリー効果(陰圧に基づく流体の引き込み効果)により、前記間部分の幅方向中央部分で、前記不連続部52を通じての異物の排出効果が高められる。
【0041】
尚、本例の場合には、前記不連続部52部分でベンチュリー効果を発生させる為に、この不連続部52部分(特に、幅方向に関する、この不連続部52の中央部分)の気流速度を高める必要がある事から、前記ホルダ支持部50と前記ナット保持部51との間には、幅方向から見た場合に、上下方向に関する小さな隙間が形成された状態となっている必要がある。この為、前記傾斜角度β(図3)は0゜(幅方向から見た場合に、前記ホルダ支持部50と前記ナット保持部51とが接している様に見える角度)よりも大きくする必要がある。一方、前記傾斜角度βが10゜を超えると、前記ホルダ本体部48の外周面のうちで前記不連続部52を通じて外部に露出した部分が当該隙間に近づいてきて、ベンチュリー効果の発生に障害となってくるので、0゜<β≦10゜とする必要がある。更に、幅方向から見た場合に、前記ホルダ支持部50と前記ナット保持部51との間に、上下方向に関する小さな隙間が形成された状態となり、且つ、前記ホルダ本体部48の外周面のうちで前記不連続部52を通じて外部に露出した部分と当該隙間との距離を確保してベンチュリー効果を効率良く発生させる為には、3゜≦β≦7゜である事が好ましい。
一方、前記傾斜角度α(図3)は、前記ホルダ本体部48と前記ホルダ支持部50とでそれぞれ気流をどの程度絞るかの比率に関係し、この傾斜角度αが大きい程、前記ホルダ支持部50側から前記不連続部52に流入する気流が強くなる。この不連続部52では、若干上に凸形状となった気流が、前記ホルダ本体部48の外周面のうちで前記不連続部52を通じて外部に露出した部分に当たる事なく流れる事が好ましい。これに対し、前記傾斜角度αが60゜を超えると、気流が、前記ホルダ本体部48の外周面のうちで前記不連続部52を通じて外部に露出した部分に当たり始める。又、前記傾斜角度αが50゜未満だと、前記不連続部52の気流が上に凸形状に流れなくなるので、50゜≦α≦60゜とする必要がある。更に、53゜≦α≦57゜の範囲にすると、上に凸形状の気流が安定して得られる為、好ましい。
【0042】
尚、図5〜6に示す本発明に関する参考例の第1例や、図7〜8に示す本発明に関する参考例の第2例の様に、ナット保持部51x(51y)の上側面が幅方向に対して平行な平坦面58となっている構造の場合には、(本例の様に、前記ナット保持部51の上側面が、前記不連続部52と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている構造と異なり、)ホルダ本体部48の外周面のうち、ホルダ支持部50の不連続部52を通じて外部に露出した部分に対し、前記ナット保持部51x(51y)の上側面を十分に近づける事が難しい。この為、これら参考例の第1〜2例の場合には、前記ホルダ本体部48の外周面のうちで前記不連続部52を通じて外部に露出した部分と前記ナット保持部51x(51y)の上側面との間部分の上下方向に関する幅寸法が大きくなり、幅方向の気流が発生した場合に、この間部分で気流の速度が低下し易い。従って、幅方向の気流に乗って、この間部分に水が侵入した場合に、この水がこの間部分に溜まると言った不都合が生じ易い。これに対して、本例の場合には、前記ホルダ本体部48の外周面のうち、前記ホルダ支持部50の不連続部52を通じて外部に露出した部分に対し、前記ナット保持部51の上側面を十分に近づける事ができる為、この様な不都合が生じる事を回避できる。
【0043】
又、本例の場合には、前記ホルダ支持部50の不連続部52に、前記ナット保持部51の上側面が対向している。この為、このナット保持部51により、前記不連続部52を、路面から跳ね上がった泥水から保護する事ができる。従って、この泥水が、前記不連続部52を通じて、前記ホルダ支持部50内に侵入する事を、有効に防止できる。
【0044】
又、本例の場合には、前記ナット保持部51の上側面が、前記ホルダ支持部50の不連続部52と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている。この為、前記ベンチュリー効果を生じさせるべく、前記ナット保持部51の上側面を、前記不連続部52を通じて外部に露出した前記ホルダ本体部48の下側面に近づける場合でも、(図5〜6に示した本発明に関する参考例の第1例や、図7〜8に示した本発明に関する参考例の第2例の様に、ナット保持部51x、51yの上側面が幅方向に対して平行な平坦面58となっている場合に比べて、)前記ナット保持部51の上側面と前記ホルダ支持部50の円周方向両端部との対向間隔を確保し易い。従って、前記軸受キャップ33の底板部39を射出成形する際に使用する射出成形用金型のうち、前記ナット保持部51の上側面と前記ホルダ支持部50の円周方向両端部との間に位置する部分の肉厚を確保し易い。この結果、この肉厚を小さくした場合に生じる不都合を回避できる。尚、この様な不都合としては、例えば、前記射出成形用金型の製造や管理が難しくなる事や、当該肉厚が小さくなった部分が射出成形時の圧力で変形する事に基づいて、或いは、当該肉厚が小さくなった部分の熱容量が小さい為に、その周辺部分で樹脂の凝固が遅くなる事に基づいて、完成後の前記底板部39にひけや変形が生じたり、射出成形サイクルが長くなったりする事が挙げられる。
【0045】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図9により説明する。本例の場合には、軸受キャップ33aを構成するキャップ本体34aを射出成形により造る上で、このキャップ本体34aを構成する、ホルダ支持部50aの軸方向内端面と、ナット保持部51aの軸方向内端面とを、同一仮想平面上に位置させる事が困難である事に鑑み、このナット保持部51a及びナット37の軸方向内端面を、前記ホルダ支持部50aの軸方向内端面よりも、寸法δだけ、軸方向内側に配置する構成を採用している。そして、前記軸受キャップ33aにセンサホルダ46を支持固定した状態で、このセンサホルダ46を構成する取付フランジ部49の軸方向外側面を、前記ナット保持部51a及び前記ナット37の軸方向内端面にのみ当接させると共に、前記取付フランジ部49の軸方向外側面と、前記ホルダ支持部50aの軸方向内端面との間に、前記寸法δに見合った厚さ寸法を有する隙間を介在させている。更に、本例の場合には、この隙間の厚さ寸法を、前記ホルダ支持部50aの内周面と前記センサホルダ46を構成するホルダ本体部48の外周面との間に存在する隙間の径方向厚さ寸法よりも小さくしている。これにより、本例の場合には、前記取付フランジ部49の軸方向外側面と前記ホルダ支持部50aの軸方向内端面との間の隙間内に泥水が侵入した場合にも、この泥水を重力の作用と毛細管現象とにより、前記ホルダ支持部50a内に向かわせる事なく、この隙間内で下方に移動させ、最終的には、前記実施の形態の第1例の場合と同様の効果(上に凸の円弧状の流れの効果、及び、ベンチュリー効果)により、外部に排出する様にしている。
【0046】
又、本例の場合には、前記軸受キャップ33aを構成する底板部39aのうち、軸方向に関して前記ホルダ支持部50aの内径側部分と整合する部分に、この底板部39aの軸方向内側面側にのみ開口して、前記ホルダ支持部50aの内径側部分と連通する、有底のセンサ挿入孔60を設けている。そして、このセンサ挿入孔60に前記ホルダ本体部48の先端部をがたつきなく挿入(内嵌)する事により、上述の様に取付フランジ部49の軸方向外側面とホルダ支持部50aの軸方向内端面との間に隙間が介在していても、前記ホルダ本体部48(センサ47)を確実に支持できる様にしている。
【0047】
即ち、前記ホルダ支持部50aは、下端部に不連続部52を有している為、その分だけ(このホルダ支持部50aの内周面と前記ホルダ本体部48の外周面との径差が大きい場合と同じ様に)、このホルダ本体部48は、前記ホルダ支持部50aの内側で動き易い状態となっている。この為、前記軸受キャップ33aに対して前記センサホルダ46をボルト56により支持固定した状態で、車両の振動が発生すると、前記ホルダ本体部48は、片持ち梁の先端部の様に、前記ホルダ支持部50aの内側で、前記ボルト56の中心軸を中心として回転揺動運動を起こし易くなる。特に、本例の様に、前記取付フランジ部49の軸方向内側面が前記ホルダ支持部50aの軸方向内端面から浮き上がっている構造の場合には、前記ホルダ本体部48が当該回転揺動運動を更に起こし易くなる。そこで、本例の場合には、前記不連続部52を有しないセンサ挿入孔60を設け、このセンサ挿入孔60に前記ホルダ本体部48の先端部をがたつきなく挿入する事により、上述の様なホルダ本体部48の回転揺動運動を起こしにくくしている。
【0048】
又、本例の場合には、前記底板部39aの軸方向外側面に環状凹部57(図1〜2参照)を設けていない。その代わりに、上述の様にセンサ挿入孔60にホルダ本体部48の先端部を挿入する事により、このホルダ本体部48の先端部に保持したセンサ47と、エンコーダ13aの被検出面32(図1〜2参照)との対向距離を短くしている。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述した実施の形態の各例では、軸受キャップを、合成樹脂製のキャップ本体と、金属製の金属環等、合成樹脂以外の材料から造られた部材を組み合わせた構造を例に挙げて説明したが、本発明を実施する場合、軸受キャップは、その全体が合成樹脂から造られていても良い。又、前記実施の形態の各例では、本発明の転がり軸受ユニットを、車輪支持用の転がり軸受ユニットに適用した場合に就いて説明したが、本発明の転がり軸受ユニットは、この様な用途に限定されず、例えば工作機械等、種々の用途に適用する事ができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a 転がり軸受ユニット
2 外輪
3 ハブ
4 転動体
5 固定側フランジ
6 回転側フランジ
7 シールリング
8、8a 軸受キャップ
9、9a キャップ本
10、10a 金属環
11、11a 嵌合筒部
12、12a 底板部
13、13a エンコーダ
14、14a センサホルダ
15、15a ホルダ挿入孔
16 ボルト挿通孔
17、17a ナット
18、18a ホルダ本体部
19、19a 取付フランジ部
20 ボルト
21 ホルダ支持部
22 隙間
23a、23b 外輪軌道
24 ハブ本体
25 内輪
26 かしめ部
27a、27b 内輪軌道
28 支持環
29 エンコーダ本体
30 支持円筒部
31 支持円輪部
32 被検出面
33、33a 軸受キャップ
34 キャップ本体
35 金属環
36 Oリング
37 ナット
38 嵌合筒部
39 底板部
40 小径筒部
41 大径筒部
42 段差面
43 円筒部
44 外向フランジ部
45 センサユニット
46 センサホルダ
47 センサ
48 ホルダ本体部
49 取付フランジ部
50、50a ホルダ支持部
51、51a、51x、51y ナット保持部
52 不連続部
53 雌ねじ部
54 係合凹溝
55 通孔
56 ボルト
57 環状凹部
58 平坦面
59 凸部
60 センサ挿入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12