(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の緩衝シートは、平坦な基材からなり、格子状の格子領域と、この格子領域で仕切られた複数の可動領域を備えている。各可動領域には、複数の切り込みが形成されている。
【0011】
基材は平坦であれば、特にその材質を問わないが、切り込みの幅を容易に拡張できるように可撓性を備えることが好ましい。
なお、平坦とは、マクロ的な意味で平坦であることを意味し、例えば、基材の表面に細かい凹凸が付されていたり、表面が粗面化されていたりすることは差し支えない。
【0012】
基材は、本発明の効果を享受する利益が大きいことから、非伸縮性であることが好ましい。伸縮性の素材であれば、特に切り込みを設けることなく、任意に伸張できるからである。また、伸縮性の素材の場合、素材に加わる力により無制限に延びてしまう傾向があるが、非伸縮性の基材であれば、最短経路の長さによって伸張の程度が制限される。そのため、非伸縮性の基材の場合、伸張の程度をコントロールしやすい。
基材には、例えば、紙、合成紙、プラスチックフィルム、織布、不織布、金属薄膜等が使用できる。具体的な基材の材質、厚み、強度等は、その用途に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
格子領域全体の周縁の形状に特に限定はなく、矩形、矩形以外の多角形、円形、楕円形等とすることができる。また、格子状の具体的態様に限定はなく、緩衝シート全体を縦、横、または斜めの何れか1以上の方向で枠に囲まれた複数の領域に仕切るものであればよい。
例えば、縦と横の仕切りを組み合わせた縦横格子、斜めに交差する仕切りを組み合わせた斜め格子、斜めに交差する仕切りと縦または横の仕切りを組み合わせた三角格子が上げられる。また、不規則な形状の複数の領域に区分する仕切りの組み合わせであってもよい。
【0014】
各可動領域に形成されている切り込みは直線状でも曲線状でもよい。また、1つの切り込みは、他の切り込みの途中に合流していてもよい。
切り込みは、その幅を無視できる程度の線状の切り込みに限定されず、紡錘状、楕円状三日月状、矩形状、円などであってもよい。ただし、伸張させた際の基材破壊を防ぐ観点から、切り込みの幅は無視できる程度に小さいことが好ましく、例えば、矩形状の切り込みは好ましくない。
以下に説明する条件を満たすように格子領域と可動領域を形成できる限り、種々の切り込みのパターンが採用できる。
【0015】
各可動領域の周縁は、格子領域との間が前記複数の切り込みにより切断されていない2以上の接続部と、この2以上の接続部を互いに分断する前記複数の切り込みの一部を含んでいる。
2以上の接続部を互いに分断する切り込みの一部は、周縁に沿った切り込みであってもよいし、周縁に達する切り込みの端部であってもよい。
周縁に含まれる互いに分断された接続部の数は、2以上であるが、包装対象物を安定して保持しやすいことから、3以上であることが好ましい。また、切り込みの設けやすさ等の観点から、8以下であることが好ましく6以下であることがより好ましい。
各可動領域の周縁の形状にも特に限定はなく、円形、矩形等の多角形等を適宜選択できる。
【0016】
各可動領域には、複数の切り込みにより、可動領域の中央を第1の端部とし、接続部の各々を第2の端部とする複数の迂回路が形成されている。
本発明における迂回路とは、切り込みで切断されることなく連続する領域によって形成された第1の端部と第2の端部を持つ道である。各々の迂回路を経由して第1の端(可動領域の中央)から第2の端部(各接続部)に至る最短経路の長さ(以下、「最短距離」という場合がある。)は、該第1の端部と第2の端部間を直線で結ぶ経路(以下、「直線経路」という場合がある。)の直線距離よりも長い。なお、本発明において直線距離とは、切り込みの幅を拡張していない、当初の平坦な基材面における直線距離を意味する。
【0017】
直線経路を切断する切り込みの幅が拡張されることにより、その直線形路の両端の第1の端部と第2の端部間の距離(以下、切り込みの幅が拡張されることにより大きくなった両端部間の距離を「伸張距離」という場合がある。)が大きくなる。伸張距離が、最短距離を超えることはない。
基材の厚みを無視すれば、最短距離が伸張距離の最大値となる。その場合、第1の端部と第2の端部間の最大の伸び率(最大の伸張距離/直線距離)は、最短距離/直線距離となる。
【0018】
各可動領域の中央部においては、複数の迂回路の第1の端部が合流している。中央部はある程度の面積を有する領域であるが、最短経路や直線形路を検討する際、便宜上、面積を無視できる点として捉えてもよい。切り込みは、中央部の内部にも形成されていてもよい。
各可動領域の中央部(各迂回路の第1の端部)の位置は、当初の基材における平面位置から、3次元の任意の方向に変化させることが可能である。その際、迂回路で連結されている各接続部の位置を変化させることなく、その可動領域の中央部の位置のみを変化させることができる。
【0019】
以下、各実施形態に基づき、本発明の緩衝シートについて詳述する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示に基づいて上下、左右、縦横、斜め等の説明を行う場合があるが、緩衝シートの切り込みパターン全体の方向に特に限定はなく、例えば、図示上の上下を左右に、左右を上下としてもよいし、図示上の位置から、45°回転させた切り込みパターンとしてもよい。
【0020】
<第1実施形態>
[第1実施形態の緩衝シート]
図1は、本発明の第1実施形態に係る緩衝シート1であり、
図2は、その一部拡大図である。緩衝シート1は、矩形状の平坦な基材1aに、格子領域F1(
図1においてドット状のハッチングを施した部分)と、格子領域F1で仕切られた6つの可動領域M1が設けられている。
格子領域F1の周縁の形状は矩形状とされ、その周縁に沿った外枠内を縦2列、横3列に仕切る、縦横の仕切りが設けられた構成とされている。
【0021】
各可動領域M1には、切り込みCが複数形成されている。各可動領域M1の周縁の形状は、各々、中央部P1を囲む九角形とされている。
可動領域M1の周縁における、点B11aと点B11bの間、点B12aと点B12bの間、点B13aと点B13bの間は、各々可動領域M1と格子領域F1との間が切り込みCにより切断されていない3つの接続部Bとされている。
【0022】
可動領域M1の周縁における、点B13bと点B11aの間には切り込みC11aが、点B11bと点B12aの間には切り込みC11bが、点B12bと点B13aの間には切り込みC11cが各々形成されている。
切り込みC11a、C11b、C11cは、各々、内側に屈曲する3つの屈曲点を有しており、互いに離間して、全体として、九角形状の可動領域M1の周縁を破線状に描くように配置されている。
すなわち、本実施形態の可動領域M1の周縁は、前記3つの接続部Bと、これら3つの接続部Bの間を分断する切り込みC11a、C11b、C11cとから構成されている。
【0023】
また、可動領域M1の周縁の内側に、切り込みC11a、C11b、C11cの各々の屈曲した先端と平行に、これらの切り込みから離間した切り込みC12a、C12b、C12cが形成されている。
切り込みC12aは、点B13aと点B13bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。切り込みC12bは、点B11aと点B11bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。切り込みC12cは、点B12aと点B12bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。
【0024】
また、切り込みC12a、C12b、C12cの内側に、これら3つの切り込みの各々と平行に、切り込みC13a〜C13fが形成されている。
切り込みC13aは、切り込みC11cから分岐して切り込みC11aに向かうように形成され、切り込みC13bは、切り込みC11aから分岐して切り込みC11cに向かうように形成されている。切り込みC13aと切り込みC13bの先端は、各々切り込みC12aを対称軸として、点B13aと点B13bと対象な位置とされている。
【0025】
切り込みC13cは、切り込みC11aから分岐して切り込みC11bに向かうように形成され、切り込みC13dは、切り込みC11bから分岐して切り込みC11aに向かうように形成されている。切り込みC13cと切り込みC13dの先端は、各々切り込みC12bを対称軸として、点B11aと点B11bと対象な位置とされている。
切り込みC13eは、切り込みC11bから分岐して切り込みC11cに向かうように形成され、切り込みC13fは、切り込みC11cから分岐して切り込みC11bに向かうように形成されている。切り込みC13eと切り込みC13fの先端側は、各々切り込みC12cを対称軸として、点B12aと点B12bと対象な位置とされている。
【0026】
また、切り込みC13a〜C13fの内側に、切り込みC12a〜C12cと平行に切り込みC14a〜C14cが形成されている。
切り込みC14aは、点B13aと点B13bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。切り込みC14bは、点B11aと点B11bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。切り込みC14cは、点B12aと点B12bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。
【0027】
また、切り込みC14a〜C14cの内側に、切り込みC15a〜C15cが形成されている。切り込みC15a〜C15cは、各々、内側に屈曲する2つの屈曲点を有しており、互いに離間して、中央部P1を3方向から囲むように配置されている。
切り込みC15aの第1の先端と切り込みC15bの第2の先端は、切り込みC14aを対称軸として、切り込みC13aと切り込みC13bの各々の先端と対象な位置とされている。
【0028】
切り込みC15bの第1の先端と切り込みC15cの第2の先端とは、切り込みC14bを対称軸として、切り込みC13cと切り込みC13dの各々の先端と対象な位置とされている。
切り込みC15cの第1の先端と切り込みC15aの第2の先端とは、切り込みC14cを対称軸として、切り込みC13eと切り込みC13fの各々の先端と対象な位置とされている。
【0029】
また、切り込みC15a〜C15cの内側に、切り込みC14a〜C14cと平行に切り込みC16a〜C16cが形成されている。
切り込みC16aは、点B13aと点B13bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。切り込みC16bは、点B11aと点B11bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。切り込みC16cは、点B12aと点B12bの間の接続部Bと中央部P1との直線形路を遮るように形成されている。
【0030】
さらに、切り込みC16a〜C16cの内側に、切り込みC17a〜C17cが形成されている。切り込みC17a〜C17cは、各々、内側に屈曲する1つの屈曲点を有しており、互いに離間して、中央部P1を3方向から囲むように配置されている。
切り込みC17aの第1の先端と切り込みC17bの第2の先端は、切り込みC16aを対称軸として、切り込みC15aの第1の先端と切り込みC15bの第2の先端の各々と対象な位置とされている。
【0031】
切り込みC17bの第1の先端と切り込みC17cの第2の先端は、切り込みC16bを対称軸として、切り込みC15bの第1の先端と切り込みC15cの第2の先端の各々と対象な位置とされている。
切り込みC17cの第1の先端と切り込みC17aの第2の先端は、切り込みC16cを対称軸として、切り込みC15cの第1の先端と切り込みC15aの第2の先端の各々と対象な位置とされている。
【0032】
中央部P1と各接続部Bとの間は、これらの切り込みCによって形成された迂回路Rにより連結されている。
中央部P1を第1の端部とし、点B11aと点B11bとの間の接続部Bを第2の端部とする迂回路Rとしては、迂回路R11aと迂回路R11bの2つが形成されている。
迂回路R11aを経由する最短経路S11aは、中央部P1から、切り込みC17b、C16b、C15b、C14b、C13c、C12b、C11aの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B11aに至っている。
迂回路R11bを経由する最短経路S11bは、中央部P1から、切り込みC17c、C16b、C15c、C14b、C13d、C12b、C11bの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B11bに至っている。
【0033】
中央部P1を第1の端部とし、点B12aと点B12bとの間の接続部Bを第2の端部とする迂回路Rとしては、迂回路R12aと迂回路R12bの2つが形成されている。
迂回路R12aを経由する最短経路S12aは、中央部P1から、切り込みC17c、C16c、C15c、C14c、C13e、C12c、C11bの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B12aに至っている。
迂回路R12bを経由する最短経路S12bは、中央部P1から、切り込みC17a、C16c、C15a、C14c、C13f、C12c、C11cの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B12bに至っている。
【0034】
中央部P1を第1の端部とし、点B13aと点B13bとの間の接続部Bを第2の端部とする迂回路Rとしては、迂回路R13aと迂回路R13bの2つが形成されている。
迂回路R13aを経由する最短経路S13aは、中央部P1から、切り込みC17a、C16a、C15a、C14a、C13a、C12a、C11cの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B13aに至っている。
迂回路R13bを経由する最短経路S13bは、中央部P1から、切り込みC17b、C16a、C15b、C14a、C13b、C12a、C11aの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B13bに至っている。
【0035】
これらの迂回路R11a〜R13bを経由して、中央部P1から各々の第2の端部に至る最短経路の長さは、中央部P1(第1の端部)と各々の第2の端部間の直線距離よりも長くされている。中央部P1と各々の第2の端部との間の距離は、その間の切り込みの幅を広げることにより伸張させることができる。そのため、各可動領域M1における中央部P1を、当初の基材1aの位置から離れて3次元方向に移動させることができる。
【0036】
[第1実施形態の使用態様1]
図3は、第1実施形態の緩衝シート1を用いた収納容器10の斜視図である。収納容器10は、本発明の収納容器の1つの実施形態である。
収納容器10は、6つの矩形状の基板で直方体状の空洞を囲む容器であり、その1つの基板が、第1実施形態の緩衝シート1で構成されている。
緩衝シート1の各可動領域M1は、押圧により切り込みCが開き、中央部P1が迂回路Rによって、格子領域F1から吊り下げられた状態となる。これにより、中央部P1を底面とする凹部が形成される。
【0037】
果実等の包装対象物11を各可動領域M1に載せると、包装対象物11の重さによって包装対象物11の形状に追従した凹部が形成される。また、横揺れなどが生じた場合は、迂回路Rが追従してバネのように伸縮し、揺れを吸収する。そのため、包装対象物11を、移動させることなく定位置に保持することが可能であると共に、揺れにより包装対象物11に過大な応力がかかることも防止できる。
さらに、複数の包装対象物11を各可動領域M1の位置に載せれば、各々の位置に凹部が形成される。そのため、複数の包装対象物11の間を確実に離間させておくことができ、包装対象物11同士が輸送中に衝突することなどを防止できる。
したがって、本実施形態の収納容器10によれば、果実等の包装対象物11の保護に優れる。
また、緩衝シート1は、1枚の基材から構成されているので、保管や廃棄時等の取り扱いが容易である。
【0038】
包装対象物を収納容器10の緩衝シート1の各可動領域M1に載せて収納した後は、その上側から、適宜の蓋材をかぶせてもよい。
収納容器10に用いる緩衝シート1を構成する基材は、包装対象物等の使用目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、包装対象物に対する負荷を少しでも減らすことを重視する場合には、柔軟性とクッション性のある基材を選択することができる。また、包装対象物が重量物である場合は、充分な強度を持たせることを優先して基材を選択することができる。
【0039】
[第1実施形態の使用態様2]
図4は、第1実施形態の緩衝シート1を用いた緩衝部材20の斜視図である。
緩衝部材20は、各可動領域M1の切り込みCを、上からの引き上げまたは下からの押圧により開き、中央部P1を迂回路Rによって、格子領域F1から押し上げた状態として使用する。これにより、中央部P1を頂部とする凸部が形成される。
緩衝部材20は凸部を形成してもその周縁の形状と大きさが変わらないので、総ての可動領域M1を凸部にした状態で、凸部を上として段ボール等の底などに配置して使用できる。
【0040】
可動領域M1を、包装対象物を囲む位置に配置した場合は、凸部を包装対象物の移動を防止する障壁として機能させることができる。また、横揺れなどが生じた場合は、迂回路Rが追従してバネのように伸縮し、揺れを吸収する。そのため、包装対象物を、移動させることなく定位置に保持することが可能であると共に、揺れにより包装対象物に過大な応力がかかることも防止できる。
また、小さい可動領域M1を多数形成した場合は、各々凸部を形成した状態において、各可動領域M1の迂回路Rは、中央部P1を支えるバネとして機能する。そのため、段ボール等に収納した包装対象物を、多数の凸部によって優れたクッション性で支えることもできる。包装対象物に対する圧力分散性は、可動領域M1の数を増やすほど向上する。
緩衝部材20を構成する緩衝シート1は、1枚の基材から構成されているので、保管や廃棄時等の取り扱いが容易である。
【0041】
<第2実施形態>
[第2実施形態の緩衝シート]
図5は、本発明の第2実施形態に係る緩衝シート2であり、
図6は、その一部拡大図である。緩衝シート2は、矩形状の平坦な基材2aに、格子領域F2(
図5においてドット状のハッチングを施した部分)と、格子領域F2で仕切られた6つの可動領域M2が設けられている。
格子領域F1の周縁の形状は矩形状とされ、その周縁に沿った外枠内を縦2列、横3列に仕切る、縦横の仕切りが設けられた構成とされている。
【0042】
各可動領域M2には、切り込みCが複数形成されている。各可動領域M2の周縁の形状は、各々、中央部P2を囲む円形とされている。
可動領域M2の周縁における、点B21と点B22の間、点B22と点B23の間、点B23と点B24の間、点B24と点B25の間、点B25と点B21の間は、各々可動領域M2と格子領域F2との間が切り込みCにより切断されていない5つの接続部Bとされている。
【0043】
本実施形態では、可動領域M2において、その周縁における、点B21〜B25の各々に達する渦巻き状の切り込みC21〜C25が形成されている。
すなわち、本実施形態の可動領域M2の周縁は、前記5つの接続部Bと、これら5つの接続部Bの間を分断する切り込みC21〜C25の端部とから構成されている。
【0044】
中央部P2と各接続部Bとの間は、これらの切り込みCによって形成された迂回路Rにより連結されている。
中央部P2を第1の端部とし、点B21と点B22との間の接続部Bを第2の端部とする迂回路R21は、切り込みC25と切り込みC21とに挟まれた経路である。中央部P2から迂回路R21を経由して接続部Bに至る最短経路S21は、切り込みC21に沿う経路と切り込みC21に対する点B21を通る接線を含む経路である。
【0045】
中央部P2を第1の端部とし、点B22と点B23との間の接続部Bを第2の端部とする迂回路R22は、切り込みC21と切り込みC22とに挟まれた経路である。中央部P2から迂回路R22を経由して接続部Bに至る最短経路S22は、切り込みC22に沿う経路と切り込みC22に対する点B22を通る接線を含む経路である。
【0046】
中央部P2を第1の端部とし、点B23と点B24との間の接続部Bを第2の端部とする迂回路R23は、切り込みC22と切り込みC23とに挟まれた経路である。中央部P2から迂回路R23を経由して接続部Bに至る最短経路S23は、切り込みC23に沿う経路と切り込みC23に対する点B23を通る接線を含む経路である。
【0047】
中央部P2を第1の端部とし、点B24と点B25との間の接続部Bを第2の端部とする迂回路R24は、切り込みC23と切り込みC24とに挟まれた経路である。中央部P2から迂回路R24を経由して接続部Bに至る最短経路S24は、切り込みC24に沿う経路と切り込みC24に対する点B24を通る接線を含む経路である。
【0048】
中央部P2を第1の端部とし、点B25と点B21との間の接続部Bを第2の端部とする迂回路R25は、切り込みC24と切り込みC25とに挟まれた経路である。中央部P2から迂回路R25を経由して接続部Bに至る最短経路S25は、切り込みC25に沿う経路と切り込みC25に対する点B25を通る接線を含む経路である。
【0049】
これらの迂回路R21〜R25を経由して、中央部P2から各々の第2の端部に至る最短経路の長さは、中央部P2(第2の端部)と各々の第2の端部間の直線距離よりも長くされている。中央部P2と各々の第2の端部との間の距離は、その間の切り込みの幅を広げることにより伸張させることができる。そのため、各可動領域M2における中央部P2を、当初の基材2aの位置から離れて3次元方向に移動させることができる。
【0050】
[第2実施形態の使用態様1]
図7は、第2実施形態の緩衝シート2を用いた収納容器30の斜視図である。収納容器30は、本発明の収納容器の1つの実施形態である。
収納容器30は、6つの矩形状の基板で直方体状の空洞を囲む容器であり、その1つの基板が、第2実施形態の緩衝シート2で構成されている。
緩衝シート2の各可動領域M2は、押圧により切り込みCが開き、中央部P2が迂回路Rによって、格子領域F2から吊り下げられた状態となる。これにより、中央部P2を底面とする凹部が形成される。
【0051】
果実等の包装対象物31を各可動領域M2に載せると、包装対象物31の重さによって包装対象物31の形状に追従した凹部が形成される。また、横揺れなどが生じた場合は、迂回路Rが追従してバネのように伸縮し、揺れを吸収する。そのため、包装対象物31を、移動させることなく定位置に保持することが可能であると共に、揺れにより包装対象物31に過大な応力がかかることも防止できる。
さらに、複数の包装対象物31を各可動領域M2の位置に載せれば、各々の位置に凹部が形成される。そのため、複数の包装対象物31の間を確実に離間させておくことができ、包装対象物31同士が輸送中に衝突することなどを防止できる。
したがって、本実施形態の収納容器30によれば、果実等の包装対象物31の保護に優れる。
また、緩衝シート2は、1枚の基材から構成されているので、保管や廃棄時等の取り扱いが容易である。
【0052】
包装対象物を収納容器30の緩衝シート2の各可動領域M2に載せて収納した後は、その上側から、適宜の蓋材をかぶせてもよい。
収納容器30に用いる緩衝シート2を構成する基材は、収納容器10に用いる緩衝シート1を構成する基材と同様に適宜選択することができる。
【0053】
[第2実施形態の使用態様2]
図8は、第2実施形態の緩衝シート2を用いた緩衝部材40の斜視図である。
緩衝部材40は、各可動領域M2の切り込みCを、上からの引き上げまたは下からの押圧により開き、中央部P2を迂回路Rによって、格子領域F2から押し上げた状態として使用する。これにより、中央部P2を頂部とする凸部が形成される。
緩衝部材4は凸部を形成してもその周縁の形状と大きさが変わらないので、総ての可動領域M2を凸部にした状態で、凸部を上として段ボール等の底などに配置して使用できる。
【0054】
可動領域M2を、包装対象物を囲む位置に配置した場合は、凸部を包装対象物の移動を防止する障壁として機能させることができる。また、横揺れなどが生じた場合は、迂回路Rが追従してバネのように伸縮し、揺れを吸収する。そのため、包装対象物を、移動させることなく定位置に保持することが可能であると共に、揺れにより包装対象物に過大な応力がかかることも防止できる。
また、小さい可動領域M2を多数形成した場合は、各々凸部を形成した状態において、各可動領域M2の迂回路Rは、中央部P2を支えるバネとして機能する。そのため、段ボール等に収納した包装対象物を、多数の凸部によって優れたクッション性で支えることもできる。包装対象物に対する圧力分散性は、可動領域M2の数を増やすほど向上する。
緩衝部材40を構成する緩衝シート2は、1枚の基材から構成されているので、保管や廃棄時等の取り扱いが容易である。
【0055】
<第3実施形態>
[第3実施形態の緩衝シート]
図9は、本発明の第3実施形態に係る緩衝シート3である。緩衝シート3は、矩形状の平坦な基材3aに、格子領域F3(
図9においてドット状のハッチングを施した部分)と、格子領域F3で仕切られた2つの可動領域M3が設けられている。
格子領域F3の周縁の形状は矩形状とされ、その周縁に沿った外枠内を縦2列に仕切る、横の仕切りが設けられた構成とされている。
【0056】
各可動領域M3には、切り込みCが複数形成されている。各可動領域M2の周縁の形状は、各々、中央部P3を囲む矩形とされている。
可動領域M3の周縁における、点B31aと点B31bの間、点B32aと点B32bの間は、各々可動領域M3と格子領域F3との間が切り込みCにより切断されていない2つの接続部Bとされている。
【0057】
可動領域M3の周縁における、点B31aと点B32bの間には、縦方向の切り込みC30aと、その上端側に接続された横方向の短い切り込みC31aと、その下端側に接続された横方向の短い切り込みC32dとが形成されている。
また、可動領域M3の周縁における、点B32aと点B31bの間には、縦方向の切り込みC30bと、その下端側に接続された横方向の短い切り込みC32aと、その上端側に接続された横方向の短い切り込みC31dとが形成されている。
すなわち、本実施形態の可動領域M3の周縁は、前記2つの接続部Bと、これら3つの接続部Bの間を分断する切り込みC30a、C31a、C32d、及び切り込みC30b、C32a、C31dとから構成されている。
【0058】
切り込みC30aには、横方向の短い切り込みC31aの下側に、切り込みC31aと平行に同じ長さで、切り込みC31b、C31cが順次形成されている。また、短い切り込みC32dの上側に、切り込みC32dと平行に同じ長さで、切り込みC32e、C32fが順次形成されている。
また、切り込みC30bには、横方向の短い切り込みC32aの上側に、切り込みC32aと平行に同じ長さで、切り込みC32b、C32cが順次形成されている。また、短い切り込みC31dの下側に、切り込みC31dと平行に同じ長さで、切り込みC31e、C31fが順次形成されている。
【0059】
また、切り込みC31aと切り込みC31bの間から、切り込みC31dと切り込みC31eの間に架けて、切り込みC33aが形成されている。切り込みC31bと切り込みC31cの間から、切り込みC31eと切り込みC31fの間に架けて、切り込みC33bが形成されている。
切り込みC33a、C33bは、点B31aと点B31bの間の接続部Bよりも長いが、切り込みC30a、C30bには接していない。
【0060】
また、切り込みC32aと切り込みC32bの間から、切り込みC32dと切り込みC32eの間に架けて、切り込みC34aが形成されている。切り込みC32bと切り込みC32cの間から、切り込みC32eと切り込みC32fの間に架けて、切り込みC34bが形成されている。
切り込みC34a、C34bは、点B32aと点B32bの間の接続部Bよりも長いが、切り込みC30a、C30bには接していない。
【0061】
中央部P3と各接続部Bとの間は、これらの切り込みCによって形成された迂回路Rにより連結されている。
中央部P3を第1の端部とし、点B31aと点B31bとの間の接続部Bを第2の端部とする迂回路Rとしては、迂回路R31aと迂回路R31bの2つが形成されている。
【0062】
迂回路R31aを経由する最短経路S31aは、中央部P3から、切り込みC33bの左側、C31b、C33aの左側、C31aの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B31aに至っている。
迂回路R31bを経由する最短経路S31bは、中央部P3から、切り込みC33bの右側、C31e、C33aの右側、C31dの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B31bに至っている。
【0063】
中央部P3を第1の端部とし、点B32aと点B32bとの間の接続部Bを第2の端部とする迂回路Rとしては、迂回路R32aと迂回路R32bの2つが形成されている。
迂回路R32aを経由する最短経路S32aは、中央部P3から、切り込みC34bの右側、C32b、C34aの右側、C32aの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B32aに至っている。
迂回路R32bを経由する最短経路S32bは、中央部P3から、切り込みC34bの左側、C32e、C34aの左側、C32dの各々の先端を縫うようにして、接続部Bの点B32bに至っている。
【0064】
これらの迂回路R31a〜R32bを経由して、中央部P1から各々の第2の端部に至る最短経路の長さは、中央部P3(第1の端部)と第2の端部間の直線距離よりも長くされている。中央部P3と各々の第2の端部との間の距離は、その間の切り込みの幅を広げることにより伸張させることができる。そのため、各可動領域M3における中央部P3を、当初の基材3aの位置から離れて3次元方向に移動させることができる。
【0065】
[第3実施形態の使用態様]
第3実施形態に係る緩衝シート3は、第1実施形態の緩衝シート1、第2実施形態の緩衝シート2と同様に、収納容器を構成する基板の一部として使用できる。
また、第1実施形態の緩衝シート1、第2実施形態の緩衝シート2と同様に、緩衝部材として、段ボール等の底に配置して使用できる。
【0066】
<その他の態様>
本発明の緩衝シートにおける格子領域の外周の形状、可動領域の外周の形状は適宜変更できる。また、格子領域で仕切られた複数の可動領域中に設けられる可動領域格子領域で仕切られた部分に形成される可動領域の数も複数であればよく、適宜増減できる。また、可動領域に設けられる切り込みのパターンも適宜変更できる。
また、一つの緩衝シートに設けられる可動領域は、互いに同一でなくともよく、例えば、第1実施形態の可動領域M1と第2実施形態の可動領域M2が混在するような態様であってもよい。
また、本発明の収納容器は、直方体状の空洞を囲む態様に限定されない。例えば円柱状の空洞を囲む態様であってもよい。その場合、一方の底面を画する円形の基板を、本発明の緩衝シートで構成すればよい。