特許第6439588号(P6439588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439588
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/06 20160101AFI20181210BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H02P21/06
   B60L9/18 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-108717(P2015-108717)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-226116(P2016-226116A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正浩
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−244571(JP,A)
【文献】 特開2000−228892(JP,A)
【文献】 特開2015−066965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/06
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱め界磁制御を行うモータ制御装置であって、
トルク‐回転数マップに基づきd軸電流を決定する手段を備え、
前記マップをバッテリの開放端電圧及び内部抵抗に基づいて複数備え
前記開放端電圧が低く、前記内部抵抗が高いような状況に対しては前記マップを多く用意し、前記開放端電圧が高く、前記内部抵抗が低いような状況に対しては、前記マップを少なく用意する
モータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪倒立型移動体が開発、実用化されている。例えば、特許文献1には、倒立型移動体において、バッテリの出力電圧低下を抑制し、倒立制御の継続性を向上させるために、バッテリの残量、温度及び劣化度の少なくとも1つに基づいて、モータの回転数及び出力トルクを制限することが記載されている。
【0003】
このような倒立型移動体では、小さなバッテリから最大限の出力を取り出すことが望ましい。そのためには、搭乗者の操作から必要とされるモータ性能と、現状の倒立型移動体の状態から出力可能なモータ性能とを確実に見積もることが、非常に重要となる。つまり、バッテリの温度、残量及び劣化度により倒立型移動体が出力できるモータ性能は大きく変化するが、搭乗者がこれを上回るようなモータ性能を必要とする操作をしてしまうと、出力不足により倒立型移動体が転倒するリスクが大きくなる。
【0004】
また、一般に、モータが回転すると、モータの回転数と磁束との積に比例した逆起電力が発生する。このために、モータを駆動させるインバータへの入力電圧と逆起電力とが等しくなる回転数以上にモータを高速で回転させることができない。
そこで、トルクに変換される方向の電流(q軸電流)と磁束を変化させる方向の電流(d軸電流)との関係によって制御されるベクトル制御で駆動する3相交流モータでは、モータの磁束を弱める側にd軸電流(弱め界磁電流)を流すことで、モータの逆起電力を小さく抑え、モータがさらに高速で回転できるようにする弱め界磁制御を採用している。
【0005】
例えば、特許文献2には、モータの回転数とトルクとd軸電流との関係を規定したTNマップのようなテーブルを参照して、d軸電流を制御することが記載されている。
倒立型移動体においても、このような弱め界磁制御を採用して、モータがさらに高速で回転できるようにすることを検討している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−066965号公報
【特許文献2】特開平07−107772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、二輪倒立型移動体では、搭乗者の転倒を防ぐために、現在の状態で出力可能なモータ性能(回転数、トルク)の範囲を確実に知ることが不可欠である。
一方で、バッテリはその残量や出力する電流値によって出力電圧が変動するため、逆起電力と釣り合う回転数がその都度変動し、期待通りの弱め界磁制御の効果を得ることが困難である。例えば、上述のテーブルを使用する方法では、その都度成り行きで回転数を上げることはできるが、どの回転数までならば弱め界磁が可能であるのかを適切に認識することができず、最大限の出力を取り出せないことがあった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、弱め界磁の範囲を適切に認識して、小さなバッテリから最大限の出力を取り出すことができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るモータ制御装置は、弱め界磁制御を行うモータ制御装置であって、トルク‐回転数マップに基づきd軸電流を決定する手段を備え、当該マップをバッテリの開放端電圧及び内部抵抗に基づいて複数備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、弱め界磁の範囲を適切に認識して、小さなバッテリから最大限の出力を取り出すモータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る二輪倒立型移動体1の概略システム構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る開放端電圧VBの特性を示す図である。
図3】実施の形態に係る内部抵抗Rbの特性を示す図である。
図4】実施の形態に係るTNマップの一例である。
図5】実施の形態に係るTNマップの別の例である。
図6】実施の形態に係るモータ制御装置10の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施の形態に係るモータ制御装置について説明する。
まず、本実施の形態に係るモータ制御装置10の構成について、モータ制御装置10が組み込まれた二輪倒立型移動体1のシステム構成に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る二輪倒立型移動体1の概略システム構成を示すブロック図である。倒立型移動体1の全体的な構成や動作については、例えば、特許文献1、特開2015−066964号公報などを参照されたい。
倒立型移動体1は、モータ制御装置10、バッテリ20、インバータ30、モータ40、回転計50などを備えている。
【0013】
モータ制御装置10は、バッテリ20から出力されるバッテリ20の残量、温度及び劣化度に関する情報、回転計50から出力されるモータ40の回転数、出力トルクに関する情報、倒立型移動体1の搭乗者の動作を検出するジャイロセンサ(図示せず)から出力される角速度信号に関する情報などに基づいて、倒立型移動体1の倒立状態を維持するようにモータ40を制御するための指令値、つまり、q軸電流値、d軸電流値をインバータ30に出力する。このために、モータ制御装置10は、入力部11、記憶部12、制御部13などを有している。入力部11は、例えば、上記したバッテリ20の残量、温度及び劣化度に関する情報などを入力する。記憶部12は、後述するバッテリ開放端電圧特性テーブル、バッテリ内部抵抗特性テーブル、複数のTNマップなどを記憶する。制御部13は、モータ制御装置10の動作全体を制御する。
【0014】
バッテリ20は、モータ40を駆動するための電流をインバータ30に供給する。また、バッテリ20は、バッテリ20の残量、温度及び劣化度を示す信号を生成するセンサなど(図示せず)を有しており、この信号をモータ制御装置10に出力する。
インバータ30は、バッテリ20から供給される電流から、上記指令値に基づいた駆動電流を生成してモータ40に供給する。
【0015】
モータ40は、入力した駆動電流により倒立型移動体1の左右の車輪を回転させる。
回転計50は、モータ40の回転数、出力トルクなどを計測して、その情報をモータ制御装置10に出力する。
そして、本実施の形態に係るモータ制御装置10は、バッテリ20の残量、温度及び劣化度から、バッテリの開放端電圧及び内部抵抗を算出し、開放端電圧及び内部抵抗毎に用意したTNマップを参照して、d軸電流を決定する。
【0016】
なお、モータ制御装置10が実現する各構成要素は、例えば、コンピュータであるモータ制御装置10が備える制御部13の制御によって、プログラムを実行させることによって実現できる。より具体的には、モータ制御装置10は、例えば、記憶部12に格納されたプログラムを主記憶装置(図示せず)にロードし、制御部13の制御によってプログラムを実行して実現する。また、各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現しても良い。
【0017】
上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0018】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0019】
続いて、本実施の形態に係るモータ制御装置10の動作について説明する。
特許文献1にも記載されているように、バッテリの供給電圧Vinと供給電流Iとの関係は、バッテリの開放端電圧Vb、内部抵抗Rbを用いて、式(1)のように表すことができる。

Vin = Vb − RB × I ・・・式(1)
【0020】
バッテリは、一般的に、バッテリの残量が少なくなるほど、開放端電圧Vbが低くなり、バッテリの残量が多くなるほど、開放端電圧Vbが高くなる。
図2は、本実施の形態に係る開放端電圧VBの特性を示す図である。横軸はバッテリの残容量比率(RSOC、Relative State of Charge)を示し、縦軸は開放端電圧Vbを示す。バッテリ開放端電圧特性テーブルは、記憶部12に記憶されている。
【0021】
また、バッテリは、一般的に、バッテリ残量が少なくなるほど、また、バッテリの温度が低くなるほど、内部抵抗Rbが大きくなり、バッテリの残量が多くなるほど、また、バッテリの温度が高くなるほど、内部抵抗Rbが小さくなる。
図3は、本実施の形態に係る内部抵抗Rbの特性を示す図である。横軸はバッテリの残容量比率を示し、縦軸は内部抵抗Rbを示す。バッテリ内部抵抗特性テーブルも、記憶部12に記憶されている。
【0022】
そこで、本実施の形態に係るモータ制御装置10は、バッテリの残量、温度及び劣化度を検出し、記憶部12に記憶したバッテリ開放端電圧特性テーブル、バッテリ内部抵抗特性テーブルを参照して、開放端電圧Vb、内部抵抗Rbを算出する。
【0023】
また、TNマップにおいて、出力可能領域、すなわち、通常界磁領域と弱め界磁領域とを合わせた領域は、開放端電圧Vb、内部抵抗Rbによって大きく変化する。
図4は、本実施の形態に係るTNマップの一例である。開放端電圧が高く、内部抵抗が低い場合、例えば、バッテリが満充電に近い、温度が高い、劣化していない場合におけるTNマップである。横軸は回転数rpmを、縦軸はトルクNmを示す。このTNマップはモータの回転数とトルクとd軸電流との関係を規定している。TNマップも記憶部12に記憶されている。
【0024】
図5は、本実施の形態に係るTNマップの別の例である。開放端電圧が低く、内部抵抗が高い場合、例えば、バッテリが空っぽに近い、温度が低い、劣化している場合におけるTNマップである。
このように、内部抵抗値を考慮することで、モータの出力変化によるインバータ電圧の変動を内包したマップ又はテーブルを作成することができる。
【0025】
そこで、本実施の形態に係るモータ制御装置10は、バッテリ開放端電圧及びバッテリ内部抵抗毎にTNマップを用意して、弱め界磁の範囲を適切に認識し、小さなバッテリから最大限の出力を取り出すことができるように、d軸電流値を決定する。
なお、TNマップを開放端電圧の何V毎、又は、内部抵抗の何mΩ毎に用意するかは、二輪倒立型移動体1の動作などに応じて適切に判断すればよい。例えば、モータ出力の低下が懸念されるバッテリの残量少、温度低のような状況、すなわち、開放端電圧が低く、内部抵抗が高いような状況に対してはTNマップを多く用意し、そうではない、開放端電圧が高く、内部抵抗が低いような通常の状況に対しては、TNマップを少なく用意しても良い。
また、TNマップは、バッテリの残量毎、温度毎又は劣化度毎に用意しても良い。
【0026】
図6は、本実施の形態に係るモータ制御装置10の動作手順を示すフローチャートである。前述したように、モータ制御装置10の動作は主に制御部13が制御する。
まず、二輪倒立型移動体1のジャイロセンサ(図示せず)からの情報などに基づいて、トルク、回転数に関する指令値を生成する(ステップS10)。
また、モータの回転数及び出力トルク、バッテリの残量、温度及び劣化度を検出する(ステップS20)。検出したモータの回転数及び出力トルクの現在値は、上記指令値との差分を取って、例えば、動作の急激な変更を抑制するのに用いる。
なお、ステップS10及びステップS20の動作の順番は逆でも良い。
【0027】
次に、図2、3に示したようなバッテリ開放端電圧特性テーブル、バッテリ内部抵抗特性テーブルを参照して、ステップS20で検出したバッテリの残量、温度及び劣化度からバッテリ開放端電圧、バッテリ内部抵抗を算出する(ステップS30)。バッテリの残量、温度及び劣化度は、急激に変動しないパラメータであり、これらのテーブルを頻繁に参照する必要はない。
次に、ステップS30で算出した開放端電圧、内部抵抗に対応するTNマップを選択する(ステップS40)。
【0028】
次に、ステップS10で生成した指令値のトルク、回転数が、ステップS40で選択したTNマップの出力可能範囲内にあるか判断する(ステップS50)。出力可能範囲は、通常界磁領域と弱め界磁領域とを合わせた領域であり、例えば、図4では通常界磁領域はd軸電流が0Aの領域であり、弱め界磁領域は、d軸電流が5A〜15Aの領域である。
そして、トルク、回転数が出力可能範囲内のとき(ステップS50のYes)は、ステップS10で生成した指令値のトルク、回転数が、ステップS40で選択したTNマップの弱め界磁領域内であるか判断する(ステップS70)。
【0029】
トルク、回転数が弱め界磁領域内のとき(ステップS70のYes)は、当該トルク、回転数を含む領域に該当するd軸電流値を求める(ステップS80)。
そして、モータ制御装置10は、ステップS10で生成した指令値のトルク、回転数、及び、ステップS80で算出したd軸電流値により、モータの制御を開始する(ステップS90)。
【0030】
なお、ステップS10で生成した指令値のトルク、回転数が、ステップS40で選択したTNマップの出力可能範囲内にないとき(ステップS50のNo)は、出力可能範囲内に入るように指令値のトルク、回転数を制限(変更)して(ステップS60)、ステップS70に進む。
また、ステップS10で生成した指令値のトルク、回転数が、ステップS40で選択したTNマップの弱め界磁領域内にないとき(ステップS70のNo)は、モータ制御装置10は、当該トルク、回転数により、モータの制御を開始する(ステップS90)。すなわち、弱め界磁制御は行わず、d軸電流値も0Aである。
【0031】
以上、説明したように、本実施の形態に係るモータ制御装置10は、弱め界磁制御を行うモータ制御装置であって、トルク‐回転数マップに基づきd軸電流を決定する手段13を備え、当該マップをバッテリの開放端電圧及び内部抵抗に基づいて複数備えるものである。
【0032】
このような構成により、弱め界磁の範囲を適切に認識して、小さなバッテリから最大限の出力を取り出すことができる。そして、バッテリからの電流の引き過ぎを抑制することができ、バッテリの出力電圧が低下することを抑制することができる。
また、モータの指令値や現在値から検出する現在の状況と、出力可能範囲とを認識することで、適切な危険回避動作、例えば、警告動作や倒立ゲインを上げて車両のピッチ角を起す動作などを採ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 二輪倒立型移動体
10 モータ制御装置
11 入力部
12 記憶部
13 制御部
20 バッテリ
30 インバータ
40 モータ
50 回転計
図1
図2
図3
図4
図5
図6