(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外嵌谷部は、軸芯方向の先端側から基端側まで2段以上、9段以下の外嵌段部が設けられて、各々の外嵌段部の軸芯方向で最も先端側となる前記外嵌山部との境界を先端側境界点としたときに、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での先端側境界点と、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での先端側境界点とが、軸芯方向で所定の離間距離Lで離間して、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での板厚と、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での板厚との板厚差ΔTが、下記(1)式により規定される関係を満足すること
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の鋼管杭の継手構造。
6≦L/ΔT≦17 ・・・(1)
前記外嵌谷部は、軸芯方向の先端側から基端側まで3段以上、9段以下の外嵌段部が設けられて、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部と最も基端側の外嵌段部との間に設けられる外嵌段部での先端側境界点が、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での先端側境界点から、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での先端側境界点まで延ばした略直線状の仮想線分上に配置されること
を特徴とする請求項5又は6記載の鋼管杭の継手構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、鋼管杭の継手構造は、特許文献1、2に開示されるギア式の継手部や、特許文献3に開示されるネジ式の継手部、特許文献4に開示される楔式の継手部等が用いられて、複数の鋼管杭を軸芯方向に連結させた状態で、引張力と曲げ力とが継手部に作用する。鋼管杭の継手構造は、軸芯方向に係合し合うギア又はネジの段数が多い場合に、各段のギア又はネジの高さが小さくなり、各段のギア又はネジに発生する曲げ応力が小さいものとなるため、各段のギア又はネジでの引張力に対する曲げ力の負担率を設計上考慮する必要がない。
【0009】
鋼管杭の継手構造は、これに対して、特に、軸芯方向に係合し合うギア又はネジの段数が2段〜9段程度と少ない場合に、各段のギア又はネジが負担する引張力及び曲げ力が大きくなり、各段のギア又はネジの高さが大きくなることから、各段のギア又はネジでの引張力に対する曲げ力の負担率が異なって、各々の継手部の基端側より先端側の方が、引張力に対する曲げ力の負担率が高くなる。
【0010】
しかし、特許文献1に開示された鋼管杭の継手構造は、外嵌端部及び内嵌端部の基端側から先端側まで、曲げ力の負担率が異なったものとなるにもかかわらず、被係合部の板厚が軸芯方向で同一となるものである。このため、特許文献1に開示された鋼管杭の継手構造は、特に、外嵌端部及び内嵌端部の先端側の板厚に無駄な部分が多くなり、必要以上に板厚が増加してコスト上昇を招くものとなるという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2に開示された鋼管杭の継手構造は、複数の鋼管杭を軸芯方向に連結させるときの施工性を改善するために、外嵌端部及び内嵌端部の基端側から先端側に向けて、被係合凸部の板厚を軸芯方向で小さくするものであるが、曲げ力の負担率との関係で被係合凸部の板厚が設計されておらず、被係合凸部の板厚に無駄な部分が生じるおそれがあり、必要以上に板厚が増加してコスト上昇を招くものとなるという問題点があった。
【0012】
さらに、特許文献3、4に開示された鋼管杭の継手構造も、ネジ式の継手部や楔式の継手部に、所定の勾配でテーパ面が形成されるものであるが、複数の鋼管杭を軸芯方向に連結させるときにおけるねじ込みの施工性や食い込み性能を改善するためのものであり、曲げ力の負担率との関係で継手部の板厚が設計されておらず、継手部の板厚に無駄な部分が生じるおそれがあり、必要以上に板厚が増加してコスト上昇を招くものとなるという問題点があった。
【0013】
特許文献2に開示された鋼管杭の継手構造は、外嵌端部及び内嵌端部の基端側から先端側に向けて、被係合凸部の板厚を軸芯方向で小さくしてテーパ状に形成されるものであるが、軸芯方向で最も先端側の被係合凸部から最も基端側の被係合凸部までの勾配が、勾配の逆数として5.75程度となるものであり、同一の引張耐力を確保するための鋼材重量を最小とすることができず、材料コストの上昇を招くものとなるという問題点があった。
【0014】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、各々の外嵌段部での外嵌谷部の板厚を適切な大きさとして、材料コストの上昇を抑制すると同時に、板厚の設計を容易にすることのできる鋼管杭の継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明に係る鋼管杭の継手構造は、第1鋼管杭と第2鋼管杭とが軸芯方向に連結される鋼管杭の継手構造であって、互いに嵌合自在な一対の外嵌端部と内嵌端部とを備え、前記外嵌端部は、軸芯直交方向で内側に突出させて形成された外嵌山部と、軸芯方向で前記外嵌山部より基端側に形成された外嵌谷部とを有し、前記内嵌端部は、軸芯直交方向で外側に突出させて形成された内嵌山部と、軸芯方向で前記内嵌山部より基端側に形成された内嵌谷部とを有し、前記外嵌山部は、前記内嵌端部を前記外嵌端部に挿入して周方向に相対回転させることで、前記内嵌山部に係止されるものであり、前記外嵌谷部は、軸芯直交方向で所定の板厚を有するように、軸芯方向で先端側の第1外嵌段部から基端側の第4外嵌段部まで設けられて、第4外嵌段部での板厚をTとしたときに、第1外嵌段部での板厚が0.5T〜0.8Tとなるとともに、第2外嵌段部での板厚が第1外嵌段部での板厚より大きく、また、第3外嵌段部での板厚が第2外嵌段部での板厚より大きく、さらに、第4外嵌段部での板厚が第3外嵌段部での板厚より大きいものとなることを特徴とする。
【0016】
第2発明に係る鋼管杭の継手構造は、第1鋼管杭と第2鋼管杭とが軸芯方向に連結される鋼管杭の継手構造であって、互いに嵌合自在な一対の外嵌端部と内嵌端部とを備え、前記外嵌端部は、軸芯直交方向で内側に突出させて形成された外嵌山部と、軸芯方向で前記外嵌山部より基端側に形成された外嵌谷部とを有し、前記内嵌端部は、軸芯直交方向で外側に突出させて形成された内嵌山部と、軸芯方向で前記内嵌山部より基端側に形成された内嵌谷部とを有し、前記外嵌山部は、前記内嵌端部を前記外嵌端部に挿入して周方向に相対回転させることで、前記内嵌山部に係止されるものであり、前記外嵌谷部は、軸芯直交方向で所定の板厚を有するように、軸芯方向で先端側の第1外嵌段部から基端側の第3外嵌段部まで設けられて、第3外嵌段部での板厚をTとしたときに、第1外嵌段部での板厚が0.6T〜0.8Tとなるとともに、第2外嵌段部での板厚が第1外嵌段部での板厚より大きく、また、第3外嵌段部での板厚が第2外嵌段部での板厚より大きいものとなることを特徴とする。
【0017】
第3発明に係る鋼管杭の継手構造は、第1鋼管杭と第2鋼管杭とが軸芯方向に連結される鋼管杭の継手構造であって、互いに嵌合自在な一対の外嵌端部と内嵌端部とを備え、前記外嵌端部は、軸芯直交方向で内側に突出させて形成された外嵌山部と、軸芯方向で前記外嵌山部より基端側に形成された外嵌谷部とを有し、前記内嵌端部は、軸芯直交方向で外側に突出させて形成された内嵌山部と、軸芯方向で前記内嵌山部より基端側に形成された内嵌谷部とを有し、前記外嵌山部は、前記内嵌端部を前記外嵌端部に挿入して周方向に相対回転させることで、前記内嵌山部に係止されるものであり、前記外嵌谷部は、軸芯直交方向で所定の板厚を有するように、軸芯方向で先端側の第1外嵌段部から基端側の第2外嵌段部まで設けられて、第2外嵌段部での板厚をTとしたときに、第1外嵌段部での板厚が0.7T〜0.9Tとなることを特徴とする。
【0018】
第4発明に係る鋼管杭の継手構造は、第1鋼管杭と第2鋼管杭とが軸芯方向に連結される鋼管杭の継手構造であって、互いに嵌合自在な一対の外嵌端部と内嵌端部とを備え、前記外嵌端部は、軸芯直交方向で内側に突出させて形成された外嵌山部と、軸芯方向で前記外嵌山部より基端側に形成された外嵌谷部とを有し、前記内嵌端部は、軸芯直交方向で外側に突出させて形成された内嵌山部と、軸芯方向で前記内嵌山部より基端側に形成された内嵌谷部とを有し、前記外嵌山部は、前記内嵌端部を前記外嵌端部に挿入して周方向に相対回転させることで、前記内嵌山部に係止されるものであり、前記外嵌谷部は、軸芯直交方向で所定の板厚を有するように、軸芯方向の先端側から基端側まで5段以上、9段以下の外嵌段部が設けられて、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での板厚をTとしたときに、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での板厚が0.35T〜0.7Tとなるとともに、軸芯方向に隣り合う外嵌段部で、基端側の外嵌段部での板厚が先端側の外嵌段部での板厚より大きいものとなることを特徴とする。
【0019】
第5発明に係る鋼管杭の継手構造は、第1鋼管杭と第2鋼管杭とが軸芯方向に連結される鋼管杭の継手構造であって、互いに嵌合自在な一対の外嵌端部と内嵌端部とを備え、前記外嵌端部は、軸芯直交方向で内側に突出させて形成された外嵌山部と、軸芯方向で前記外嵌山部より基端側に形成された外嵌谷部とを有し、前記内嵌端部は、軸芯直交方向で外側に突出させて形成された内嵌山部と、軸芯方向で前記内嵌山部より基端側に形成された内嵌谷部とを有し、前記外嵌山部は、前記内嵌端部を前記外嵌端部に挿入して周方向に相対回転させることで、前記内嵌山部に係止されるものであり、前記外嵌谷部は、軸芯直交方向で所定の板厚を有するように、軸芯方向の先端側から基端側まで2段以上、9段以下の外嵌段部が設けられて、各々の外嵌段部の軸芯方向で最も先端側となる前記外嵌山部との境界を先端側境界点としたときに、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での先端側境界点と、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での先端側境界点とが、軸芯方向で所定の離間距離Lで離間して、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での板厚と、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での板厚との板厚差ΔTが、下記(1)式により規定される関係を満足することを特徴とする。
【0020】
第6発明に係る鋼管杭の継手構造は、第1発明〜第4発明の何れかにおいて、前記外嵌谷部は、軸芯方向の先端側から基端側まで2段以上、9段以下の外嵌段部が設けられて、各々の外嵌段部の軸芯方向で最も先端側となる前記外嵌山部との境界を先端側境界点としたときに、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での先端側境界点と、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での先端側境界点とが、軸芯方向で所定の離間距離Lで離間して、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での板厚と、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での板厚との板厚差ΔTが、下記(1)式により規定される関係を満足することを特徴とする。
【0021】
[数1]
6≦L/ΔT≦17 ・・・(1)
【0022】
第7発明に係る鋼管杭の継手構造は、第5発明又は第6発明において、前記外嵌谷部は、軸芯方向の先端側から基端側まで3段以上、9段以下の外嵌段部が設けられて、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部と最も基端側の外嵌段部との間に設けられる外嵌段部での先端側境界点が、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での先端側境界点から、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での先端側境界点まで延ばした略直線状の仮想線分上に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
第1発明〜第4発明によれば、従来の鋼管杭の継手構造と比較して、少ない重量、体積の鋼材等の使用量で最大の曲げ耐力を得ることができるものとなることで、必要以上に板厚を増加させないものとなり、継手構造の重量、体積を低減させて連結作業の効率を向上させるとともに、継手構造の材料コストの上昇を抑制することが可能となる。また、第1発明〜第4発明によれば、第1外嵌段部の板厚を所定の範囲に設定するのみで、鋼材等の重量、体積と曲げ耐力とが適切なものとなるため、継手構造の設計精度を向上させるとともに、板厚の設計を容易にすることが可能となる。
【0024】
第5発明、第6発明によれば、軸芯方向で最も基端側の外嵌段部での板厚と、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部での板厚との板厚差ΔTが、上記(1)式により規定される関係を満足することで、同一の引張耐力を確保するための鋼材重量を最小とすることができるため、材料コストの上昇を抑制しながら、十分な引張耐力を確保した継手構造を提供することが可能となる。
【0025】
特に、第7発明によれば、3段以上、9段以下の外嵌段部が設けられる場合において、軸芯方向で最も先端側の外嵌段部と最も基端側の外嵌段部との間に設けられる外嵌段部での先端側境界点が、略直線状に延ばした仮想線分上に配置されるものとすることで、3段以上の外嵌段部が設けられる場合の板厚の設計が容易になるため、十分な引張耐力を確保した継手構造を低廉な製作コストで提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、地滑り杭、支持杭又は摩擦杭等に利用されるものであり、
図1に示すように、断面が略円形状等の第1鋼管杭1と第2鋼管杭2とを軸芯方向Yに連結するものとして用いられる。
【0029】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、互いに嵌合自在な一対の外嵌端部3と内嵌端部5とを備えるものである。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1鋼管杭1の端部に外嵌端部3が溶接等で取り付けられるとともに、第2鋼管杭2の端部に内嵌端部5が溶接等で取り付けられて、外嵌端部3と内嵌端部5とを軸芯方向Yで互いに対向させるものとなる。
【0030】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態において、外嵌溝部32が外嵌端部3に形成されるとともに、内嵌溝部52が内嵌端部5に形成されて、また、外嵌山部31及び内嵌山部51が周方向Wで略同一円周上に形成されたギア式継手に適用される。
【0031】
外嵌端部3は、軸芯直交方向Xで内側に向けて突出させて形成された複数の外嵌山部31と、周方向Wで外嵌山部31に隣り合って形成された複数の外嵌溝部32と、軸芯方向Yで外嵌山部31より基端側Bに形成された外嵌谷部33とを有する。外嵌端部3は、外嵌山部31と外嵌谷部33とが、軸芯方向Yで交互に隣り合って形成される。
【0032】
外嵌端部3は、外嵌山部31と外嵌溝部32とが周方向Wで交互に形成されて、複数の外嵌山部31が、軸芯方向Y及び周方向Wで略一列に配置されるとともに、複数の外嵌溝部32が、軸芯方向Y及び周方向Wで略一列に配置される。また、外嵌端部3は、第1鋼管杭1の端部に溶接等で取り付けられる部位として、外嵌余長部38を有するものとなる。
【0033】
外嵌山部31は、
図2に示すように、周方向Wに隣り合う外嵌溝部32、及び、軸芯方向Yに隣り合う外嵌谷部33よりも、第1鋼管杭1の軸芯方向Yの中心軸に向けて、略矩形状等に突出させて形成される。このとき、外嵌山部31は、
図3に示すように、軸芯方向Yの基端側Bに隣り合う外嵌谷部33から、軸芯直交方向Xで所定の高さhを有するように形成される。
【0034】
外嵌谷部33は、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、複数の外嵌段部4が設けられるものであり、各々の外嵌段部4において、軸芯直交方向Xで所定の板厚tを有するように形成される。外嵌谷部33は、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4が、軸芯直交方向Xで所定の板厚Dを有する外嵌余長部38に、軸芯方向Yで隣り合って形成される。
【0035】
外嵌谷部33は、例えば、外嵌段部4が軸芯方向Yで4段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aから基端側Bまで、順番に第1外嵌段部41、第2外嵌段部42、第3外嵌段部43及び第4外嵌段部44を有するものとなる。外嵌谷部33は、後述するように、外嵌段部4が軸芯方向Yで2段〜9段に亘って設けられるものとなる。
【0036】
内嵌端部5は、
図1に示すように、軸芯直交方向Xで外側に向けて突出させて形成された複数の内嵌山部51と、周方向Wで内嵌山部51に隣り合って形成された複数の内嵌溝部52と、軸芯方向Yで内嵌山部51より基端側Bに形成された内嵌谷部53とを有する。内嵌端部5は、内嵌山部51と内嵌谷部53とが、軸芯方向Yで交互に隣り合って形成される。
【0037】
内嵌端部5は、内嵌山部51と内嵌溝部52とが周方向Wで交互に形成されて、複数の内嵌山部51が、軸芯方向Y及び周方向Wで略一列に配置されるとともに、複数の内嵌溝部52が、軸芯方向Y及び周方向Wで略一列に配置される。また、内嵌端部5は、第2鋼管杭2の端部に溶接等で取り付けられる部位として、内嵌余長部58を有するものとなる。
【0038】
内嵌山部51は、
図4に示すように、周方向Wに隣り合う内嵌溝部52、及び、軸芯方向Yに隣り合う内嵌谷部53よりも、第2鋼管杭2の軸芯方向Yの中心軸と反対側に向けて、略矩形状等に突出させて形成される。このとき、内嵌山部51は、
図5に示すように、軸芯方向Yの基端側Bに隣り合う内嵌谷部53から、軸芯直交方向Xで所定の高さhを有するように形成される。
【0039】
内嵌谷部53は、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、複数の内嵌段部6が設けられるものであり、各々の内嵌段部6において、軸芯直交方向Xで所定の板厚tを有するように形成される。内嵌谷部53は、軸芯方向Yで最も基端側Bの内嵌段部6が、軸芯直交方向Xで所定の板厚Dを有する内嵌余長部58に、軸芯方向Yで隣り合って形成される。なお、内嵌余長部58の板厚Dは、外嵌余長部38の板厚Dと必ずしも同一のものとされなくてもよい。
【0040】
内嵌谷部53は、例えば、内嵌段部6が軸芯方向Yで4段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aから基端側Bまで、順番に第1内嵌段部61、第2内嵌段部62、第3内嵌段部63及び第4内嵌段部64を有するものとなる。内嵌谷部53は、内嵌段部6が軸芯方向Yで2段〜9段に亘って設けられるものとなる。
【0041】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図1に示すように、外嵌端部3と内嵌端部5とを互いに嵌合させて、第1鋼管杭1と第2鋼管杭2とが軸芯方向Yに連結されるものとなる。
【0042】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、最初に、
図6に示すように、第2鋼管杭2に取り付けられた内嵌端部5を、第1鋼管杭1に取り付けられた外嵌端部3に挿入する。このとき、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、内嵌山部51の軸芯直交方向Xの高さを、外嵌溝部32の軸芯直交方向Xの深さ以下とすることで、内嵌山部51が外嵌溝部32を通過するものとなる。
【0043】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、次に、
図7に示すように、外嵌端部3に内嵌端部5を挿入した状態で、第1鋼管杭1と第2鋼管杭2とを軸芯周りの周方向Wに相対回転させる。このとき、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、内嵌谷部53の軸芯直交方向Xの深さを、外嵌山部31の軸芯直交方向Xの高さ以上とすることで、外嵌山部31が内嵌谷部53に嵌め込まれるものとなる。
【0044】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、内嵌山部51の軸芯方向Yの長さを、外嵌谷部33の軸芯方向Yの長さ以下とするとともに、外嵌山部31の軸芯方向Yの長さを、内嵌谷部53の軸芯方向Yの長さ以下とする。このとき、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、内嵌端部5を外嵌端部3に挿入して、外嵌端部3及び内嵌端部5を周方向Wに相対回転させることで、外嵌山部31が内嵌山部51に軸芯方向Yで係止されるものとなる。
【0045】
次に、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0046】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図8、
図9に示すように、第2実施形態において、外嵌溝部32及び内嵌溝部52が形成されることなく、外嵌山部31及び内嵌山部51が、周方向Wで連続的又は断続的に、略螺旋状に形成されたネジ式継手に適用される。
【0047】
外嵌端部3は、軸芯直交方向Xで内側に向けて突出させて形成された外嵌山部31と、軸芯方向Yで外嵌山部31より基端側Bに形成された外嵌谷部33とを有し、外嵌山部31と外嵌谷部33とが軸芯方向Yで交互に隣り合って略螺旋状に形成される。外嵌谷部33は、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、複数の外嵌段部4が設けられる。
【0048】
外嵌谷部33は、軸芯方向Yに対する縦断面視において、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bに、周方向Wで略螺旋状に1周するまでの範囲で第1外嵌段部41が形成されるとともに、第1外嵌段部41から連続して略螺旋状に1周するまでの範囲で第2外嵌段部42が形成されて、また、第2外嵌段部42から連続して略螺旋状に1周するまでの範囲で第3外嵌段部43が形成されて、第3外嵌段部43から連続して略螺旋状に1周するまでの範囲で第4外嵌段部44が形成される。
【0049】
内嵌端部5は、軸芯直交方向Xで外側に向けて突出させて形成された内嵌山部51と、軸芯方向Yで内嵌山部51より基端側Bに形成された内嵌谷部53とを有し、内嵌山部51と内嵌谷部53とが軸芯方向Yで交互に隣り合って略螺旋状に形成される。内嵌谷部53は、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、複数の内嵌段部6が設けられる。
【0050】
内嵌谷部53は、軸芯方向Yに対する縦断面視において、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bに、周方向Wで略螺旋状に1周するまでの範囲で第1内嵌段部61が形成されるとともに、第1内嵌段部61から連続して略螺旋状に1周するまでの範囲で第2内嵌段部62が形成されて、また、第2内嵌段部62から連続して略螺旋状に1周するまでの範囲で第3内嵌段部63が形成されて、第3内嵌段部63から連続して略螺旋状に1周するまでの範囲で第4内嵌段部64が形成される。
【0051】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、内嵌端部5を外嵌端部3に挿入して、第1鋼管杭1と第2鋼管杭2とを軸芯周りの周方向Wで略螺旋状に相対回転させることで、外嵌山部31が内嵌谷部53を略螺旋状に移動して、外嵌山部31が内嵌山部51に軸芯方向Yで係止されるものとなる。このとき、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、外嵌山部31が旋回しながら移動することで、外嵌山部31が内嵌谷部53に嵌め込まれて、第1鋼管杭1と第2鋼管杭2とが軸芯方向Yに連結されるものとなる。
【0052】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、
図10、
図11に示すように、外嵌山部31と内嵌山部51とが互いに係止した状態で、第1鋼管杭1と第2鋼管杭2とを軸芯方向Yで互いに離間させる方向に引張力Pが作用する。外嵌山部31には、
図11に示すように、内嵌山部51から引張力Pが加わるため、軸芯直交方向Xの外側に向けて拡がる方向の変形の原因となる曲げ力Mを外嵌谷部33が負担して、外嵌谷部33が所定の引張力Pに対する曲げ負担率を有するものとなる。
【0053】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、内嵌山部51から外嵌山部31に加わる曲げ力Mが、各々の外嵌段部4で同程度であるが、各々の外嵌段部4で内嵌山部51からの引張力Pが累加するため、軸芯方向Yの先端側Aより基端側Bの外嵌段部4の方が、外嵌谷部33が負担する引張力Pが大きくなり、略同一の曲げ力Mに対して、引張力Pの大きさが相対的に大きくなる。このとき、各々の外嵌段部4では、軸芯方向Yの基端側Bより先端側Aの方が、外嵌谷部33の曲げ負担率が大きくなり、軸芯方向Yで最も先端側Aの第1外嵌段部41で外嵌谷部33の曲げ負担率が最大になる。
【0054】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、外嵌段部4が軸芯方向Yで4段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第4外嵌段部44まで、順番に第1外嵌段部41、第2外嵌段部42、第3外嵌段部43及び第4外嵌段部44が設けられる。
【0055】
各々の外嵌段部4は、各々の外嵌谷部33における軸芯直交方向Xの板厚として、第1外嵌段部41が軸芯直交方向Xで板厚t1、第2外嵌段部42が軸芯直交方向Xで板厚t2、第3外嵌段部43が軸芯直交方向Xで板厚t3、第4外嵌段部44が軸芯直交方向Xで板厚t4を有するものとなる。各々の外嵌段部4は、第4外嵌段部44の板厚t4を、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で第1外嵌段部41の板厚t1が0.5T〜0.8Tとなり、第1外嵌段部41の板厚t1が第4外嵌段部44の板厚t4の半分から8割の大きさとなる。
【0056】
各々の外嵌段部4は、第2外嵌段部42の板厚t2が、0.6T〜0.9Tの大きさの範囲で、第1外嵌段部41の板厚t1より大きく、また、第3外嵌段部43の板厚t3が、0.8T〜0.95Tの大きさの範囲で、第2外嵌段部42の板厚t2より大きく、さらに、第4外嵌段部44の板厚t4が、第3外嵌段部43の板厚t3より大きいものとなる。
【0057】
従来の鋼管杭の継手構造9は、
図12(a)に示すように、山部98が所定の高さh9を有して、さらに、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、谷部99の板厚t9が略同一に設定されて、軸芯方向Yでストレート形状に形成される。また、従来の鋼管杭の継手構造9は、
図12(b)に示すように、軸芯方向Yで最も基端側Bの第4段部94を板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの第1段部91の板厚t1を0.25T、第2段部92の板厚t2を0.5T、第3段部93の板厚t3を0.75Tとして、第1段部91の板厚t1を基準に曲げ耐力を設計すると、第4段部94の板厚t4を非常に厚くしたテーパ形状に形成される。
【0058】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図10に示すように、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で、第1外嵌段部41の板厚t1を0.5T〜0.8Tとすることで、第1外嵌段部41の板厚t1を厚くして、また、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第4外嵌段部44まで、軸芯方向Yで略テーパ状に形成されるものとなる。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、略同一重量、体積の鋼材等の材料を用いた従来のストレート形状の継手構造9と比較して、
図13、
図14に示すように、特に、第1外嵌段部41で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0059】
ここで、
図13、
図14では、従来のストレート形状の継手構造9のように、軸芯方向Yで最も先端側Aの第1段部91の板厚t1と、軸芯方向Yで最も基端側Bの第4段部94の板厚Tとを同一としたときの横軸の値を1として、このときの曲げ耐力が基準値となって縦軸の値が1となる。
図13、
図14では、略同一重量、体積になるように内嵌余長部58の板厚Dを一定の値とした範囲で、第1外嵌段部41の板厚t1、第2外嵌段部42の板厚t2及び第3外嵌段部43の板厚t3を第4外嵌段部44の板厚t4(=T)で除した板厚比を横軸とするとともに、第1外嵌段部41、第2外嵌段部42及び第3外嵌段部43での基準値に対する曲げ耐力比を縦軸とする。なお、
図13は、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/8としたときの曲げ耐力比と板厚比との関係を示しており、また、
図14は、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/3としたときの曲げ耐力比と板厚比との関係を示している。
【0060】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1外嵌段部41の板厚t1を0.5T〜0.8Tとすることで、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が高くなる。特に、
図13に示すように、h=D/8の場合においては、第1外嵌段部41の板厚t1を0.55T〜0.7Tとしたときに、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が1.2倍〜1.3倍程度と非常に高いものとなる。また、
図14に示すように、h=D/3の場合においては、第1外嵌段部41の板厚t1を0.7T〜0.75Tとしたときに、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が1.2倍前後と非常に高いものとなる。
【0061】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図13に示すように、h=D/8の場合において、第2外嵌段部42の板厚t2を0.65T〜0.8Tとしたときに、第2外嵌段部42の曲げ耐力比が1.1倍〜1.2倍程度と非常に高いものとなり、
図14に示すように、h=D/3の場合において、第2外嵌段部42の板厚t2を0.75T〜0.85Tとしたときに、第2外嵌段部42の曲げ耐力比が1.1倍前後と非常に高いものとなる。
【0062】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図13に示すように、h=D/8の場合において、第3外嵌段部43の板厚t3を0.85T〜0.9Tとしたときに、第3外嵌段部43の曲げ耐力比が1.1倍に接近して非常に高いものとなり、
図14に示すように、h=D/3の場合において、第3外嵌段部43の板厚t3を0.9Tとしたときに、第3外嵌段部43の曲げ耐力比が1.1倍に接近して非常に高いものとなる。
【0063】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図10に示すように、外嵌谷部33と同様に内嵌谷部53においても、各々の内嵌谷部53における軸芯直交方向Xの板厚として、第4内嵌段部64の板厚t4を、軸芯方向Yで最も基端側Bの内嵌段部6の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの内嵌段部6で第1内嵌段部61の板厚t1が0.5T〜0.8Tとなり、軸芯方向Yに隣り合う内嵌段部6において、第2外嵌段部42〜第4外嵌段部44と同様に、軸芯方向Yで基端側Bの内嵌段部6の板厚を、先端側Aの内嵌段部6の板厚より大きいものとして、特に、第1内嵌段部61で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。なお、厳密には、外嵌段部4と内嵌段部6とで、鋼管杭の軸芯方向Yの中心軸からの半径が異なるため、外嵌山部31と内嵌山部51とが軸芯方向Yで互いに係止される面積を等しいものとすると、内嵌段部6の方が僅かに板厚を大きくしたものとなる。
【0064】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、
図15に示すように、外嵌段部4が軸芯方向Yで3段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第3外嵌段部43まで、順番に第1外嵌段部41、第2外嵌段部42及び第3外嵌段部43が設けられる。
【0065】
各々の外嵌段部4は、各々の外嵌谷部33における軸芯直交方向Xの板厚として、第3外嵌段部43の板厚t3を、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で第1外嵌段部41の板厚t1が0.6T〜0.8Tとなる。各々の外嵌段部4は、第2外嵌段部42の板厚t2が、0.75T〜0.95Tの大きさの範囲で、第1外嵌段部41の板厚t1より大きく、また、第3外嵌段部43の板厚t3が、第2外嵌段部42の板厚t2より大きいものとなる。
【0066】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で、第1外嵌段部41の板厚t1を0.6T〜0.8Tとすることで、第1外嵌段部41の板厚t1を厚くして、また、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第3外嵌段部43まで、軸芯方向Yで略テーパ状に形成されるものとなる。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、略同一重量、体積の鋼材等の材料を用いた従来のストレート形状の継手構造9と比較して、
図16に示すように、特に、第1外嵌段部41で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0067】
ここで、
図16では、第1外嵌段部41の板厚t1及び第2外嵌段部42の板厚t2を第3外嵌段部43の板厚t3(=T)で除した板厚比を横軸とするとともに、第1外嵌段部41及び第2外嵌段部42での曲げ耐力比を縦軸とする。なお、
図16は、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/8としたときの曲げ耐力比と板厚比との関係を示している。
【0068】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1外嵌段部41の板厚t1を0.6T〜0.8Tとすることで、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が高くなり、特に、第1外嵌段部41の板厚t1を0.65T〜0.75Tとしたときに、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が1.2倍前後と非常に高いものとなる。また、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第2外嵌段部42の板厚t2を0.8T〜0.9Tとしたときに、第2外嵌段部42の曲げ耐力比が1.1倍に接近して非常に高いものとなる。なお、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が最大となるときの板厚比(t/T)は、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/3〜D/8の範囲で変動させると、
図21に示すように、0.79〜0.68程度の範囲で変動するものとなる。
【0069】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図15に示すように、外嵌谷部33と同様に内嵌谷部53においても、各々の内嵌谷部53における軸芯直交方向Xの板厚として、第3内嵌段部63の板厚t3を、軸芯方向Yで最も基端側Bの内嵌段部6の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの内嵌段部6で第1内嵌段部61の板厚t1が0.6T〜0.8Tとなり、軸芯方向Yに隣り合う内嵌段部6において、第2外嵌段部42、第3外嵌段部43と同様に、軸芯方向Yで基端側Bの内嵌段部6の板厚を、先端側Aの内嵌段部6の板厚より大きいものとして、特に、第1内嵌段部61で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0070】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、
図17に示すように、外嵌段部4が軸芯方向Yで2段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41及び基端側Bの第2外嵌段部42が設けられる。
【0071】
各々の外嵌段部4は、各々の外嵌谷部33における軸芯直交方向Xの板厚として、第2外嵌段部42の板厚t2を、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で第1外嵌段部41の板厚t1が0.7T〜0.9Tとなる。このとき、各々の外嵌段部4は、第2外嵌段部42の板厚t2が、第1外嵌段部41の板厚t1より大きいものとなる。
【0072】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で、第1外嵌段部41の板厚t1を0.7T〜0.9Tとすることで、第1外嵌段部41の板厚t1を厚くして、また、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第2外嵌段部42まで、軸芯方向Yで略テーパ状に形成されるものとなる。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、略同一重量、体積の鋼材等の材料を用いた従来のストレート形状の継手構造9と比較して、
図18に示すように、第1外嵌段部41で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0073】
ここで、
図18では、第1外嵌段部41の板厚t1を第2外嵌段部42の板厚t2(=T)で除した板厚比を横軸とするとともに、第1外嵌段部41での曲げ耐力比を縦軸とする。なお、
図18は、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/8としたときの曲げ耐力比と板厚比との関係を示している。
【0074】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1外嵌段部41の板厚t1を0.7T〜0.9Tとすることで、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が高くなり、特に、第1外嵌段部41の板厚t1を0.75T〜0.85Tとしたときに、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が1.1倍前後と非常に高いものとなる。なお、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が最大となるときの板厚比(t/T)は、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/3〜D/8の範囲で変動させると、
図21に示すように、0.89〜0.8程度の範囲で変動するものとなる。
【0075】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図17に示すように、外嵌谷部33と同様に内嵌谷部53においても、各々の内嵌谷部53における軸芯直交方向Xの板厚として、第2内嵌段部62の板厚t2を、軸芯方向Yで最も基端側Bの内嵌段部6の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの内嵌段部6で第1内嵌段部61の板厚t1が0.7T〜0.9Tとなり、軸芯方向Yに隣り合う内嵌段部6において、第2外嵌段部42と同様に、軸芯方向Yで基端側Bの内嵌段部6の板厚を、先端側Aの内嵌段部6の板厚より大きいものとして、第1内嵌段部61で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0076】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、5段以上、9段以下の外嵌段部4が設けられてもよい。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図19に示すように、外嵌段部4が軸芯方向Yで6段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第6外嵌段部46まで、順番に第1外嵌段部41、第2外嵌段部42、第3外嵌段部43、第4外嵌段部44、第5外嵌段部45及び第6外嵌段部46が設けられる。
【0077】
各々の外嵌段部4は、各々の外嵌谷部33における軸芯直交方向Xの板厚として、第5外嵌段部45が軸芯直交方向Xで板厚t5、第6外嵌段部46が軸芯直交方向Xで板厚t6を有するものとなる。各々の外嵌段部4は、第6外嵌段部46の板厚t6を、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で第1外嵌段部41の板厚t1が0.35T〜0.7Tとなり、軸芯方向Yに隣り合う外嵌段部4において、軸芯方向Yで基端側Bの外嵌段部4の板厚が、先端側Aの外嵌段部4の板厚より大きいものとなる。
【0078】
各々の外嵌段部4は、第2外嵌段部42の板厚t2が、0.45T〜0.75Tの大きさの範囲で、第1外嵌段部41の板厚t1より大きく、また、第3外嵌段部43の板厚t3が、0.55T〜0.8Tの大きさの範囲で、第2外嵌段部42の板厚t2より大きいものとなる。さらに、各々の外嵌段部4は、第4外嵌段部44の板厚t4が、0.7T〜0.9Tの大きさの範囲で、第3外嵌段部43の板厚t3より大きく、また、第5外嵌段部45の板厚t5が、0.8T〜0.95Tの大きさの範囲で、第4外嵌段部44の板厚t2より大きく、第6外嵌段部46の板厚t6が、第5外嵌段部45の板厚t5より大きいものとなる。
【0079】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4で、第1外嵌段部41の板厚t1を0.35T〜0.7Tとすることで、第1外嵌段部41の板厚t1を厚くして、また、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第6外嵌段部46まで、軸芯方向Yで略テーパ状に形成されるものとなる。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、略同一重量、体積の鋼材等の材料を用いた従来のストレート形状の継手構造9と比較して、
図20、
図21に示すように、特に、第1外嵌段部41で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0080】
ここで、
図20では、第1外嵌段部41の板厚t1、第2外嵌段部42の板厚t2、第3外嵌段部43の板厚t3、第4外嵌段部44の板厚t4、及び、第5外嵌段部45の板厚t5を、第6外嵌段部46の板厚t6(=T)で除した板厚比を横軸とするとともに、第1外嵌段部41、第2外嵌段部42、第3外嵌段部43、第4外嵌段部44、及び、第5外嵌段部45での曲げ耐力比を縦軸とする。
【0081】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、外嵌段部4が軸芯方向Yで6段に亘って設けられる場合で、特に、第1外嵌段部41の板厚t1を0.4T〜0.65Tとしたときに、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が1.2倍以上と非常に高いものとなり、第2外嵌段部42の板厚t2を0.55T〜0.65Tとしたときに、第2外嵌段部42の曲げ耐力比が1.2倍以上となり、第3外嵌段部43の板厚t3を0.65T〜0.75Tとしたときに、第3外嵌段部43の曲げ耐力比が1.2倍に接近するとともに、第4外嵌段部44の板厚t4を0.75T〜0.85Tとしたときに、第4外嵌段部44の曲げ耐力比が1.1倍前後となり、第5外嵌段部45の板厚t5を0.9Tとしたときに、第5外嵌段部45の曲げ耐力比が1.1倍に接近して非常に高いものとなる。
【0082】
また、
図21では、外嵌段部4が軸芯方向Yで2段〜9段に亘って設けられる場合に、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/8、又は、h=D/3として、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が最大となるときの第1外嵌段部41の板厚比(t/T)と、外嵌段部4の段数との関係を示している。
【0083】
図21では、外嵌段部4の段数を横軸とするとともに、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4の板厚Tで、第1外嵌段部41の板厚t1を除した板厚比を縦軸とする。このとき、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が最大となるときの第1外嵌段部41の板厚比(t/T)は、外嵌段部4が4段の場合が
図13、
図14に対応するとともに、外嵌段部4が3段の場合が
図16に対応して、外嵌段部4が2段の場合が
図18に対応する。
【0084】
なお、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、5段以上、9段以下の外嵌段部4が設けられる場合において、内嵌余長部58の板厚Dと外嵌山部31の高さhとの関係をh=D/3〜D/8の範囲で変動させると、第1外嵌段部41の曲げ耐力比が最大となるときの第1外嵌段部41の板厚比(t/T)が、
図21に示すように、0.64〜0.36程度の範囲で変動するものとなる。
【0085】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図19に示すように、外嵌谷部33と同様に内嵌谷部53においても、各々の内嵌谷部53における軸芯直交方向Xの板厚として、第6内嵌段部66の板厚t6を、軸芯方向Yで最も基端側Bの内嵌段部6の板厚Tとしたときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの内嵌段部6で第1内嵌段部61の板厚t1が0.35T〜0.7Tとなり、軸芯方向Yに隣り合う内嵌段部6において、第2外嵌段部42〜第6外嵌段部46と同様に、軸芯方向Yで基端側Bの内嵌段部6の板厚を、先端側Aの内嵌段部6の板厚より大きいものとして、特に、第1内嵌段部61で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0086】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、特に、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、2段以上、9段以下の少ない段数の外嵌段部4が設けられる場合において、略同一重量、体積の鋼材等の材料を用いた従来のストレート形状の継手構造9と比較して、各々の外嵌段部4で曲げ耐力を増大させることができるものとなる。
【0087】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図10に示すように、例えば、外嵌段部4が軸芯方向Yで4段に亘って設けられるときをモデルとして、FEM解析結果の各々の外嵌段部4で外嵌谷部33の軸芯直交方向Xのひずみ分布が、
図22に示される。このFEM解析は、幾何学的非線形性を考慮した大変形を前提として、鋼管杭の一端を固定するとともに、鋼管杭の他端に強制変位を与えるものであり、外嵌端部3及び内嵌端部5の材料特性として、ヤング率、ポアソン比が鋼管杭と同一に設定されたものである。
【0088】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図22に示すように、外嵌端部3の外周面34又は内嵌端部5の内周面54のひずみが最小値となる直線勾配の応力分布を示して、外嵌端部3の外周面34又は内嵌端部5の内周面54から軸芯直交方向Xに最も離間した位置のひずみが最大値となるように、各々の外嵌段部4又は内嵌段部6で、外嵌谷部33又は内嵌谷部53が曲げ応力を負担するものとなる。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4の板厚Tとの関係で、外嵌段部4の板厚tが上述した所定の範囲に設定されることで、
図22に示すように、各々の外嵌段部4において、外嵌端部3の外周面34の最大ひずみが0.002前後に統一されたものとなり、各々の外嵌段部4で外嵌谷部33が曲げ負担率に見合った板厚tとなっていることがわかる。
【0089】
このとき、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、各々の外嵌段部4において、曲げ耐力と曲げ負担率とが均衡したものとなることから、従来のストレート形状の継手構造9や、従来の第4段部94の板厚t4を非常に厚くしたテーパ形状の継手構造9と比較して、少ない重量、体積の鋼材等の使用量で、最大の曲げ耐力を得ることができるものとなる。
【0090】
これにより、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、外嵌端部3や内嵌端部5の板厚に無駄な部分を生じさせることなく、鋼材等の重量、体積と曲げ耐力とが適切なものとなるように設定されるため、必要以上に板厚を増加させないものとなり、継手構造7の重量、体積を低減させて鋼管杭の連結作業の効率を向上させるとともに、継手構造7の材料コストの上昇を抑制することが可能となる。また、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1外嵌段部41の板厚t1を上述した所定の範囲に設定するのみで、鋼材等の重量、体積と曲げ耐力とが適切なものとなることから、継手構造7の設計精度を向上させるとともに、板厚の設計を容易にすることが可能となる。
【0091】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図23、
図24に示すように、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、2段以上、9段以下の外嵌段部4が設けられて、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4から、最も基端側Bの外嵌段部4まで、軸芯方向Yで略テーパ状に形成されるものとなる。
【0092】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図23に示すように、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、外嵌段部4が軸芯方向Yで4段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第4外嵌段部44まで、所定の勾配θで略テーパ状に形成される。
【0093】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図24に示すように、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、外嵌段部4が軸芯方向Yで2段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで先端側Aの第1外嵌段部41から基端側Bの第2外嵌段部42まで、所定の勾配θで略テーパ状に形成される。
【0094】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図23、
図24に示すように、2段以上、9段以下に亘って設けられた各々の外嵌段部4において、軸芯方向Yで最も先端側Aとなる外嵌山部31との境界を、各々の外嵌段部4での先端側境界点4aとする。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4での先端側境界点4aと、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4での先端側境界点4aとが、軸芯方向Yで所定の離間距離Lで離間する。
【0095】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4での板厚Tと、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4での板厚t1とが、所定の板厚差ΔTとなる。本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4と、最も基端側Bの外嵌段部4との離間距離Lを、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4と、最も先端側Aの外嵌段部4との板厚差ΔTで除した値が、外嵌段部4の勾配θの逆数(=L/ΔT)となる。
【0096】
ここで、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、例えば、軸芯方向Yで4段に亘って外嵌段部4が設けられて、第1外嵌段部41の板厚t1を0.5T〜0.8Tとしたときに、板厚差ΔTが0.2T〜0.5Tとなる。また、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで3段に亘って外嵌段部4が設けられて、第1外嵌段部41の板厚t1を0.6T〜0.8Tとしたときに、板厚差ΔTが0.2T〜0.4Tとなる。
【0097】
また、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで2段に亘って外嵌段部4が設けられて、第1外嵌段部41の板厚t1を0.7T〜0.9Tとしたときに、板厚差ΔTが0.1T〜0.3Tとなる。また、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで5段以上、9段以下に亘って外嵌段部4が設けられて、第1外嵌段部41の板厚t1を0.35T〜0.7Tとしたときに、板厚差ΔTが0.3T〜0.65Tとなる。
【0098】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図11に示すように、外嵌山部31と内嵌山部51とが互いに係止した状態で、第1鋼管杭1と第2鋼管杭2とを軸芯方向Yで互いに離間させる方向に引張力Pが作用する。そして、
図25においては、外嵌端部3及び内嵌端部5について、強度、外径及び板厚を適宜変更した場合に、単位鋼材重量に対する引張耐力の値が最大となるときの外嵌段部4の勾配θの逆数(=L/ΔT)を縦軸、外嵌段部4の段数を横軸としてプロットした結果が示される。
【0099】
外嵌端部3及び内嵌端部5の強度は、SKK400(JIS A 5525)、SKK490(JIS A 5525)及びSM570(JIS G 3106)の各々を検討する。また、外嵌端部3の外径は、400mm〜1600mmの範囲で検討して、さらに、外嵌端部3の板厚は、6mm〜30mmの範囲で検討する。
【0100】
このとき、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図25(a)に示すように、外嵌段部4の段数を2段以上、70段以下とした範囲において、外嵌端部3及び内嵌端部5の強度、外径及び板厚を適宜変更した場合に、外嵌段部4の勾配θの逆数(=L/ΔT)を6以上、17以下の範囲とすることで、単位鋼材重量に対する引張耐力の値が最大となる。
【0101】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4での板厚Tと、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4での板厚t1との板厚差ΔTが、軸芯方向Yの離間距離Lとの関係で、下記(1)式により規定される関係を満足する。
【0102】
[数2]
6≦L/ΔT≦17 ・・・(1)
【0103】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図25(b)に示すように、特に、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4での板厚Tと、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4での板厚t1との板厚差ΔTが、軸芯方向Yの離間距離Lとの関係で、下記(2)式により規定される関係を満足することが望ましい。
【0104】
[数3]
6.7≦L/ΔT≦16 ・・・(2)
【0105】
なお、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4での板厚Tとの関係で、第1外嵌段部41の板厚t1が0.35T〜0.9Tの範囲に収まらない場合であっても、上記(1)式又は(2)式により規定される関係を満足するように、外嵌段部4の勾配θの逆数(=L/ΔT)を設定することができる。
【0106】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図25(a)に示す二点鎖線の範囲において、外嵌段部4の勾配θの逆数(=L/ΔT)と段数との関係が、表1のように示される。
【0108】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図25(a)に示す二点鎖線の範囲で、外嵌段部4の段数をXとすると、外嵌段部4の勾配θの逆数(=L/ΔT)が、下記(3)式〜(6)式により規定される関係を満足する。
【0109】
[数4]
6≦L/ΔT≦10 (X=2の場合) ・・・(3)
【0110】
[数5]
(2X+98)/17≦L/ΔT≦2X+6 (2<X≦5の場合) ・・・(4)
【0111】
[数6]
(2X+98)/17≦L/ΔT≦16 (5<X<70の場合) ・・・(5)
【0112】
[数7]
14≦L/ΔT≦16 (X=70の場合) ・・・(6)
【0113】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、
図23に示すように、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、外嵌段部4が軸芯方向Yで4段に亘って設けられるときに、軸芯方向Yで最も先端側Aの第1外嵌段部41での先端側境界点4aから、軸芯方向Yで最も基端側Bの第4外嵌段部44での先端側境界点4aまで、略直線状に延ばした仮想線分Sが、所定の勾配θで略テーパ状に形成される。
【0114】
このとき、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1外嵌段部41と第4外嵌段部44との間に設けられる第2外嵌段部42及び第3外嵌段部43での先端側境界点4aが、所定の勾配θで略テーパ状に形成された仮想線分S上に配置されるものとなる。なお、第2外嵌段部42及び第3外嵌段部43は、製作精度10%程度の範囲で、厳密に直線状とした仮想線分Sよりも、軸芯直交方向Xの位置が多少ずれてもよい。このとき、各々の先端側境界点4aが配置される仮想線分Sは、厳密な直線状に延びるものに限らず、軸芯直交方向Xに多少屈曲して延びるものとなる。
【0115】
このように、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yの先端側Aから基端側Bまで、3段以上、9段以下の外嵌段部4が設けられる場合、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4と最も基端側Bの外嵌段部4との間に設けられる外嵌段部4での先端側境界点4aが、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4での先端側境界点4aから、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4での先端側境界点4aまで延ばした略直線状の仮想線分S上に配置されるものとなる。
【0116】
本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、軸芯方向Yで最も基端側Bの外嵌段部4での板厚Tと、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4での板厚t1との板厚差ΔTが、上記(1)式により規定される関係を満足することで、同一の引張耐力を確保するための鋼材重量を最小とすることができるため、材料コストの上昇を抑制しながら、十分な引張耐力を確保した継手構造7を提供することが可能となる。
【0117】
また、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、特に、3段以上、9段以下の外嵌段部4が設けられる場合において、軸芯方向Yで最も先端側Aの外嵌段部4と最も基端側Bの外嵌段部4との間に設けられる外嵌段部4での先端側境界点4aが、略直線状に延ばした仮想線分S上に配置されるものとすることで、3段以上の外嵌段部4が設けられる場合の板厚の設計が容易になるため、十分な引張耐力を確保した継手構造7を低廉な製作コストで提供することが可能となる。
【0118】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0119】
例えば、本発明を適用した鋼管杭の継手構造7は、第1鋼管杭1及び第2鋼管杭2の端部を切削することで、第1鋼管杭1又は第2鋼管杭2の端部そのものに外嵌端部3又は内嵌端部5が設けられてもよく、また、第1鋼管杭1に内嵌端部5が設けられるとともに、第2鋼管杭2に外嵌端部3が設けられるものとされてもよい。