特許第6439610号(P6439610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439610
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 13/04 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   F16H13/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-133524(P2015-133524)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2017-15192(P2017-15192A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真
(72)【発明者】
【氏名】山本 建
(72)【発明者】
【氏名】牛嶋 研史
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−057259(JP,U)
【文献】 実開昭48−071273(JP,U)
【文献】 実開昭63−023130(JP,U)
【文献】 特開2015−012703(JP,A)
【文献】 特表2008−519950(JP,A)
【文献】 特開昭55−86949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の駆動力により回転する駆動軸に一体に固定された第一ローラと、
前記第一ローラの外周面から駆動力が伝達される外周面を有し、前記駆動力が伝達されることによって回転する第二ローラと、
前記第二ローラの外周面の、前記駆動力が伝達される領域を被覆するゴムと、
を備え、
前記ゴムの外周面と、前記第一ローラの外周面および前記第二ローラの外周面のうち前記ゴムと接触する部位において、幅方向の一端部側の領域を第一領域、前記第一領域の幅方向において隣接する領域を第二領域としたときに、
前記第一ローラまたは前記第二ローラの一方の外周面の前記第一領域の外径を前記第二領域の外径よりも小径に形成し、
前記ゴムの外周面の前記第一領域に凹状の溝を設けたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置において、
前記第一ローラ、前記第二ローラ、前記ゴムの外周面において、幅方向の両端部側の領域を第一領域とし、前記第一領域に挟まれる領域を第二領域としたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の動力伝達装置において、
前記ゴムの外周面の前記第一領域の外径と前記第二領域の外径を同径に形成したことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の動力伝達装置において、
第一ローラの外周面の前記第一領域の外径を前記第二領域の外径よりも小径に形成したことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3に記載の動力伝達装置において、
第二ローラの外周面の前記第一領域の外径を前記第二領域の外径よりも小径に形成したことを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この文献には、ベルトとドライブホイールの間で動力の伝達を行うフリクションホイールの表面に排水溝が設けられたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2004/079229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術のように、フリクションホイールの表面に排水溝を設けただけでは、フリクションホイール表面の水が排出されない問題があった。
本発明は、上記問題に着目されたもので、その目的とするところは、ローラ(フリクションホイール)表面の排水性を高めることができる動力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
駆動源の駆動力により回転する駆動軸に一体に固定された第一ローラ、第一ローラから駆動力が伝達されて回転する第二ローラ、第二ローラの外周面を被覆するゴムの外周面において、幅方向の一端部側の領域を第一領域、第一領域の幅方向において隣接する領域を第二領域としたときに、第一ローラまたは第二ローラの一方の外周面の第一領域の外径を第二領域の外径よりも小径に形成し、ゴムの外周面の第一領域の外径と第二領域の外径を同径に形成し、ゴムの外周面の第一領域に凹状の溝を設けた。
【発明の効果】
【0006】
よって本発明では、ローラ表面の排水性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の動力伝達装置の斜視図である。
図2】実施例1のエンジンローラ、モータジェネレータローラ、アイドラローラの模式図である。
図3】実施例2のエンジンローラ、モータジェネレータローラ、アイドラローラの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
[全体構成]
図1は、実施例1の動力伝達装置の斜視図である。
実施例1の動力伝達装置は、クランクシャフト1、エンジンローラ2、モータジェネレータシャフト3、モータジェネレータローラ4およびアイドラローラ5を有する。以下、クランクシャフト1の前後方向にx軸を設定し、エンジン本体側からエンジンローラ2側に向かう向きをx軸正方向として説明する。
【0009】
クランクシャフト1は、エンジンの駆動力により回転する。クランクシャフト1のx軸正方向側端(軸方向一端)は、エンジンのシリンダブロックのx軸正方向側に装着されたフロントカバー6からx軸正方向側へ突出している。エンジンローラ2は、クランクシャフト1のx軸正方向側端に固定されている。
【0010】
モータジェネレータシャフト3は、シリンダブロックに取り付けられたモータジェネレータ7の駆動軸である。モータジェネレータシャフト3は、クランクシャフト1と平行に配置されている。モータジェネレータ7は、エンジン始動時にクランクシャフト1をクランキングするスタータ機能と、エンジン運転中にクランクシャフト1の駆動力によって発電するオルタネータ機能を有する。
【0011】
モータジェネレータローラ4は、フロントカバー6よりもx軸正方向側の位置でモータジェネレータシャフト3のx軸正方向側端(軸方向一端)に固定されている。モータジェネレータローラ4は、エンジンローラ2と離間して配置されている。
【0012】
アイドラローラ5は、エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4の外周面の間であって、エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4の外周面とそれぞれ接触するように支持されている。
【0013】
[ローラの構成]
図2はエンジンローラ2、モータジェネレータローラ4、アイドラローラ5の模式図である。
【0014】
エンジンローラ2、モータジェネレータローラ4、アイドラローラ5は鉄系金属により形成されている。エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4の外周面はx軸とほぼ平行に形成されている。アイドラローラ5の外周面はクラウニング加工されており、x軸方向の中央部の外径が他の部分の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0015】
アイドラローラ5の外周面にはゴム8によって被覆されている。ゴム8の外周面はx軸とほぼ平行に幅方向に平坦に形成されている。ゴム8の内周面は、アイドラローラ5の外周面に沿った形状となっている。ゴム8の外周面のx軸方向の両端部に凹状の溝8aが全周にわたって形成されている。
【0016】
エンジンローラ2、モータジェネレータローラ4、アイドラローラ5、ゴム8のx軸方向(幅方向)の両端部を第一領域とする。両端の第一領域に挟まれた部分を第二領域とする。アイドラローラ5の外周面は、第一領域の外径が第二領域の外径よりも小径に形成されている。ゴム8の外周面は、第一領域の外径が第二領域の外径とほぼ同径に形成されている。溝8aはゴム8の第一領域に形成されている。
【0017】
[作用]
駆動ローラと従動ローラの間に水が入り込むと、駆動側のローラが水の上で滑り、従動側のローラへのトルク伝達が行えなくなる。一旦、駆動ローラと従動ローラの間に水が入り込むと、水は両ローラの間に留まり排出されにくい。ローラの表面に溝を設けることで水が排出されやすくはなるが、水が溝に落ち込まなければ水は排出されず、両ローラの接触面の水は留まったままであった。
【0018】
そこで実施例1では、両ローラのx軸方向(幅方向)の両端部側の領域(第一領域)における接触荷重を、第一領域と幅方向において隣接する領域(第二領域)における接触荷重よりも小さくなるようにした。具体的には、アイドラローラ5の外周面を第一領域の外径が第二領域の外径よりも小径になるように形成し、アイドラローラ5の外周面をゴム8により被覆した。さらにゴム8の外周面の外周面の第一領域に溝8aを形成した。
【0019】
これにより、両ローラの間に入り込んだ水は、接触荷重が大きい第一領域から接触荷重が小さい第二領域に移動する。第二領域に移動した水は、溝8aに落ち込み、溝8aから水が排出される。
また、ゴム8の外周面をx軸とほぼ平行に形成した。これにより、ゴム8の外周面の加工が容易となる。
【0020】
また、アイドラローラ5の外周面をクラウニング加工し、エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4の外周面を幅方向に平坦に加工するようにした。これにより、第一領域の接触荷重を第二領域の接触荷重よりも大きくしつつ、エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4の外周面の加工を容易にすることができる。
【0021】
[効果]
(1) エンジン(駆動源)の駆動力により回転するクランクシャフト1(駆動軸)に一体に固定されたエンジンローラ2(第一ローラ)と、エンジンローラ2の外周面から駆動力が伝達される外周面を有し、駆動力が伝達されることによって回転するアイドラローラ5(第二ローラ)と、アイドラローラ5の外周面の駆動力が伝達される領域を被覆するゴム8と、を備え、ゴム8の外周面と、エンジンローラ2およびアイドラローラ5の外周面のうちゴムと接触する部位において、幅方向の一端部側の領域を第一領域、第一領域の幅方向において隣接する領域を第二領域としたときに、エンジンローラ2またはアイドラローラ5の一方の外周面の第一領域の外径を第二領域の外径よりも小径に形成し、ゴム8の外周面の第一領域に凹状の溝8aを設けた。
よって、エンジンローラ2とアイドラローラ5の第一領域における接触荷重を、第二領域における接触荷重よりも小さくすることができる。第二領域の水は第一領域に移動し、ローラの幅方向端部である第一領域の溝8aから水が排出される。
【0022】
(2) エンジンローラ2、アイドラローラ5、ゴム8の外周面において、幅方向の両端部側の領域を第一領域とし、第一領域に挟まれる領域を第二領域とした。
よって、第二領域の水は両端部の第一領域に移動することができるため、水の排出性を高めることができる。
【0023】
(3) ゴム8の外周面の第一領域の外径と第二領域の外径を同径に形成した。
よって、ゴム8の加工を容易にすることができる。
【0024】
(4) アイドラローラ5の外周面の第一領域の外径を第二領域の外径よりも小径に形成した。
よって、エンジンローラ2の外周面を幅方向に平坦に加工することができる。第一領域の接触荷重を第二領域の接触荷重よりも大きくしつつ、エンジンローラ2の外周面の加工を容易にすることができる。
【0025】
〔実施例2〕
実施例2では、実施例1ではアイドラローラ5の外周面はクラウニング加工したが、エンジンローラ2、モータジェネレータローラ4の外周面をクラウニング加工してもよい。
【0026】
図3はエンジンローラ2、モータジェネレータローラ4、アイドラローラ5の模式図である。
エンジンローラ2、モータジェネレータローラ4、アイドラローラ5は鉄系金属により形成されている。エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4の外周面はクラウニング加工されており、x軸方向の中央部の外径が他の部分の外径よりも大きくなるように形成されている。アイドラローラ5の外周面はx軸とほぼ平行に形成されている。
【0027】
アイドラローラ5の外周面にはゴム8によって被覆されている。ゴム8の外周面はx軸とほぼ平行に幅方向に平坦に形成されている。ゴム8の内周面は、アイドラローラ5の外周面に沿った形状となっている。ゴム8の外周面のx軸方向の両端部に凹状の溝8aが全周にわたって形成されている。
【0028】
エンジンローラ2、モータジェネレータローラ4、アイドラローラ5、ゴム8のx軸方向(幅方向)の両端部を第一領域とする。両端の第一領域に挟まれた部分を第二領域とする。エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4の外周面は、第一領域の外径が第二領域の外径よりも小径に形成されている。ゴム8の外周面は、第一領域の外径が第二領域の外径とほぼ同径に形成されている。溝8aはゴム8の第一領域に形成されている。
【0029】
(5) エンジンローラ2の外周面の第一領域の外径を第二領域の外径よりも小径に形成した。
よって、アイドラローラ5の外周面を幅方向に平坦に加工することができる。第一領域の接触荷重を第二領域の接触荷重よりも大きくしつつ、アイドラローラ5の外周面の加工を容易にすることができる。
【0030】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を、図面に基づく実施例により説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0031】
実施例1および実施例2では、ローラの幅方向両端部に第一領域を設定し、第一領域に挟まれた領域を第二領域としていた。これをローラの幅方向一端部に第一領域を設定し、第一領域と隣接する領域(ローラの幅方向他端部)を第二領域としてもよい。
【0032】
実施例1および実施例2では、エンジンとモータジェネレータとの間のトルク伝達を行う動力伝達装置について説明したが、エンジンとオイルポンプなどその他補機とのトルク伝達を行う動力伝達装置に適用してもよい。また駆動源はエンジンに限らずモータであってもよい。つまり、ローラ間の接触荷重が大きい領域(第二領域)と小さい領域(第一領域)とが隣接し、かつ接触荷重が大きい領域(第二領域)がローラの幅方向端部に位置していればよい。
【0033】
実施例1および実施例2では、アイドラローラ5の外周面全体がゴム8によって被覆されているが、外周面の幅方向の一部がゴム8によって被覆されていればよい。つまり、エンジンローラ2およびモータジェネレータローラ4と接触する範囲にゴム8が被覆されていればよい。また第一領域および第二領域は、エンジンローラ2、モータジェネレータローラ4およびアイドラローラ5の外周面の幅方向の全領域ではなく、エンジンローラ2、モータジェネレータローラ4およびアイドラローラ5の外周面のうち、ゴム8と接触する領域であればよい。
【0034】
実施例1および実施例2では、ゴム8の外周面を幅方向に平坦に形成したが、ゴム8の外周面の形状は、ローラ間の接触荷重が第一領域よりも第二領域の方が大きくなる関係を崩さない形状であればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 クランクシャフト(駆動軸)
2 エンジンローラ(第一ローラ)
5 アイドラローラ(第二ローラ)
8 ゴム
8a 溝
図1
図2
図3