特許第6439670号(P6439670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439670
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】車載システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20181210BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20181210BHJP
   G06F 1/26 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   B60R16/02 660Q
   H02M3/155 H
   G06F1/26 G
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-247958(P2015-247958)
(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2017-109712(P2017-109712A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】荒川 俊介
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−055926(JP,A)
【文献】 特開平10−103148(JP,A)
【文献】 特開2010−285111(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0354195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G06F 1/26
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電圧を昇圧し、昇圧した出力電圧を出力する昇圧コンバータ、及び前記バッテリから前記昇圧コンバータを介して供給される電力を回転電動機に供給するインバータを含む装置と、
前記装置を制御するマイクロコンピュータ、及びデータを記憶する記憶装置を含む電子制御装置と、
を含む車載システムであって、
前記マイクロコンピュータは、
前記出力電圧のステップ状の電圧降下パターンがイグニッションオフ後に連続するディスチャージ期間において前記電圧降下パターンの開始時点を検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した前記電圧降下パターンの開始時点から、次の前記電圧降下パターンの開始時点までの時間を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した時間から前記昇圧コンバータによるノイズが発生する期間を推定する推定手段と、
前記ディスチャージ期間のうち前記推定手段が推定した期間を除く期間に前記記憶装置とのデータ通信を行い、前記ディスチャージ期間のうち前記推定手段が推定した期間に前記記憶装置とのデータの通信を中断する通信手段と、
を有する車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノイズ発生源の動作による記憶部へのデータの書き込み処理の失敗を防止しつつ、制約時間内にデータ書き込み処理を完了させる車載システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された車載システムは、ノイズの発生源となる装置のディスチャージ動作時に、記憶部へのデータの通信を禁止し、記憶部のバッファに転送されたデータを記憶部に書き込む処理の実行を許可している。これにより、車載システムは、記憶部のバッファに転送されたデータを記憶部に書き込む処理を、ディスチャージ動作と並行して処理することができるので、記憶部へのデータの書き込みの失敗を防止しつつ、書き込みに要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−55926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された車載システムは、ノイズの発生源となる装置のディスチャージ動作時に、記憶装置へのデータの通信を禁止しているので、ディスチャージが行われている期間に応じて、記憶装置へのデータの通信に要する時間が長くなるという問題がある。
【0006】
本発明の実施の形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、ノイズの発生源となる装置のディスチャージ動作時に、記憶装置とのデータの通信を可能とし、記憶装置へのデータ通信に要する時間を短縮する車載システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る車載システムは、バッテリの電圧を昇圧し、昇圧した出力電圧を出力する昇圧コンバータ、及び前記バッテリから前記昇圧コンバータを介して供給される電力を回転電動機に供給するインバータを含む装置と、前記装置を制御するマイクロコンピュータ、及びデータを記憶する記憶装置を含む電子制御装置と、を含む車載システムであって、
前記マイクロコンピュータは、前記出力電圧のステップ状の電圧降下パターンがイグニッションオフ後に連続するディスチャージ期間において前記電圧降下パターンの開始時点を検知する検知手段と、前記検知手段が検知した前記電圧降下パターンの開始時点から、次の前記電圧降下パターンの開始時点までの時間を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した時間から前記昇圧コンバータによるノイズが発生する期間を推定する推定手段と、前記ディスチャージ期間のうち前記推定手段が推定した期間を除く期間に前記記憶装置とのデータ通信を行い、前記ディスチャージ期間のうち前記推定手段が推定した期間に前記記憶装置とのデータの通信を中断する通信手段と、を有する。
【0008】
本実施形態によれば、前記ディスチャージ期間のうち前記推定手段が推定したノイズ発生期間に前記記憶装置とのデータ通信が中断されるので、ノイズが発生しても、ノイズの発生源となる装置のディスチャージ動作時に記憶装置とのデータ通信が可能となる。また、前記ディスチャージ期間のうち前記推定手段が推定した期間を除く期間に前記記憶装置とのデータ通信が行われるので、データ通信が前記ディスチャージ期間後に行われる場合に比べて、記憶装置へのデータ通信に要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施の形態によれば、ノイズの発生源となる装置のディスチャージ動作時に、記憶装置とのデータの通信を可能とし、記憶装置へのデータ通信に要する時間を短縮する車載システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る車載システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る車載システムによる終了制御と車両のIG−OFFからMREL−OFF(電源供給停止)までの時間制約との関係を示す図である。
図3】一実施形態に係る待ち時間の短縮について説明するための図である。
図4】一実施形態に係る昇圧コンバータの電圧(VH)の変化と通信許可状態との関係の例を示す図である。
図5】一実施形態に係る車載システムの機能構成図である。
図6】一実施形態に係るノイズ発生タイミングの推定手順のイメージを示す図である。
図7】一実施形態に係る車載システムの通信処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
<システム構成>
図1は、一実施形態に係る車載システムの一例を示すブロック図である。
【0013】
車載システム1は、電動機を駆動源の一つとして有する車両に搭載されるシステムである。なお、車載システム1を搭載する車両は、エンジンを併せて搭載したハイブリッド車であってもよいし、電動機のみを駆動源とする電気自動車であってもよい。
【0014】
車載システム1は、MG−ECU10、補機バッテリ20、MREL(電源リレー)25、HVバッテリ30、モータジェネレータ(以下、MGと呼ぶ)40、IPM(Intelligent Power Module)50等を含む。
【0015】
補機バッテリ20は、低電圧(約12V〜14V)の蓄電装置である。例えば、鉛蓄電池等を用いることができるが、これらに限られず、任意の二次電池を用いてよいし、キャパシタ等を用いてもよい。補機バッテリ20は、後述するMG−ECU10等の車両の各種ECUやヘッドランプ、ワイパー等の電装品に電力を供給する。
【0016】
MREL25は、補機バッテリ20からMG−ECU10等への電力供給を行う電源ラインに設けられた電源リレーである。MREL25は、図示しない電源ECUからの指令により接続又は遮断される。例えば、MREL25は、イグニッションオフ(以下、IG−OFFと呼ぶ)後、所定時間経過した後に遮断される。
【0017】
なお、イグニッションオフは、イグニッションスイッチをオフにすることを意味し、イグニッションスイッチは、車両を走行可能な状態に起動(イグニッションオン)したり、走行可能な状態を終了(停止)させたり(イグニッションオフ)するスイッチである。よって、イグニッションオフ(IG−OFF)は、車両がハイブリッド車である場合におけるエンジンの停止を意味するものではなく、例えば、車両の統合制御ECU(不図示)を停止して、車両の走行可能な状態を終了させること等を含む。
【0018】
HVバッテリ30は、MG40に電力を供給する蓄電装置である。例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等を用いることができるが、これらに限られず、任意の二次電池を用いてよい。また、キャパシタ等を用いてもよい。
【0019】
MG40は、車両の駆動源の1つとしての回転電動機であり、発電機でもある。例えば、MG40は、HVバッテリ30から供給された電力により車両を駆動し、車両の減速時には、回生動作により発電機として機能して、発電された電力をHVバッテリ30に充電してよい。又、車両がハイブリッド車の場合、MG40は、エンジン(不図示)により駆動され、発電を行ってよい。なお、発電された電力は、車両に設けられた他の回転電動機に供給されたり、HVバッテリ30に充電されたりしてよい。MG40は、後述するIPM50に含まれるインバータ52を介して供給される三相交流電力により駆動される。
【0020】
IPM(装置)50は、HVバッテリ30から供給された電力を用いてMG40を駆動するための駆動装置であり、昇圧コンバータ51、インバータ52を含む。
【0021】
昇圧コンバータ51は、HVバッテリ30の電圧を所定の電圧(MG40の駆動電圧)に昇圧する。昇圧コンバータ51は、入力コンデンサ53、リアクトル54、トランジスタSW11、SW12等を含み、後述するMG−ECU10(マイコン11)によりトランジスタSW11、SW12のスイッチング制御が行われることにより昇圧動作が実現される。なお、昇圧コンバータ51は、例えば、MG40が発電を行う場合には、インバータ52を介して供給される発電電力を降圧し、HVバッテリ30に供給する。降圧の場合も、昇圧の場合と同様、MG−ECU10(マイコン11)によるトランジスタSW11、SW12のスイッチング制御が行われることにより降圧動作が実現される。なお、昇圧コンバータ51は、トランジスタSW11、SW12の駆動回路(不図示)を含み、MG−ECU10(マイコン11)によるスイッチング制御は、該駆動回路を介して行われる。
【0022】
インバータ52は、昇圧コンバータ51を介してHVバッテリ30から供給された直流電力を三相交流電力に変換して、MG40に供給する電力変換装置である。インバータ52は、U相用のトランジスタSW1(上アーム)、SW2(下アーム)と、V相用のトランジスタSW3(上アーム)、SW4(下アーム)と、W相用のトランジスタSW5(上アーム)、SW6(下アーム)とを含む。インバータ52は、後述するMG−ECU10(マイコン11)によりトランジスタSW1〜SW6のスイッチング制御が行われることにより直流電力を三相交流電力に変換して、MG40に供給することができる。なお、インバータ52は、トランジスタSW1〜SW6の駆動回路(不図示)を含み、MG−ECU10(マイコン11)によるスイッチング制御は、該駆動回路を介して行われる。
【0023】
また、インバータ52は、平滑コンデンサ56、放電抵抗55等を含む。
【0024】
平滑コンデンサ56は、インバータ52に入力される電流を平滑化し、ノイズの放射やサージ電圧を抑制するために設けられる。
【0025】
放電抵抗55は、IG−OFF時等において、平滑コンデンサ56に残留した電荷を放電させるために設けられる。なお、放電させるときのみ通電可能なように、スイッチ(例えば、トランジスタ)等を設けてもよい。
【0026】
MG−ECU(電子制御装置)10は、MG40の駆動制御を行う制御ユニットであり、マイコン11、不揮発性メモリ12等を含む。MG−ECU10は、補機バッテリ20からの電力供給により動作する。
【0027】
マイコン11は、制御プログラムを格納するROM、ROMから所定の制御プログラムをロードして演算処理を行うCPU、演算結果等を格納する読み書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、A/D(Analog/Digital)変換回路、入出力インターフェイス等を含む。マイコン11は、各制御プログラムをCPU上で実行することにより、後述する昇圧コンバータ51の制御、MG40の制御、平滑コンデンサ56等のディスチャージ制御、及び制御学習値、異常情報等の不揮発性メモリ12への書き込み制御等の各種処理を実行する。
【0028】
マイコン11は、昇圧コンバータ51の昇圧動作を制御する。具体的には、HVバッテリ30からの供給電圧を所定の電圧(MG40の駆動電圧)に昇圧するため、昇圧コンバータ51の出力側の電圧を測定する電圧センサ(不図示)からの信号に基づくフィードバック制御を行う。マイコン11は、トランジスタSW11、SW12のデューティ比等を演算し、昇圧コンバータ51(駆動回路)にPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力する。
【0029】
また、マイコン11は、車両の統合制御ECU(不図示)が運転者によるアクセル操作量、HVバッテリ30の状態、車両状態等に基づき算出したトルク指令を受信し、該トルク指令に沿ったトルクが出力されるように、インバータ52を介してMG40の制御を行う。
【0030】
また、マイコン11は、インバータ52の入力側に設けられる平滑コンデンサ56、昇圧コンバータ51の入力コンデンサ53の残留電荷を放電させる制御(以下、ディスチャージ制御と呼ぶ)を行う。車両のIG−ON中における平滑コンデンサ56、入力コンデンサ53は、高電圧であるため、車両の衝突時においては、早期に残留電荷を放電させることにより、IPM50内の回路が正常に機能しなくなった場合等においても残留電荷による問題の発生を防止することができる。
【0031】
マイコン11は、平滑コンデンサ56に蓄えられた電荷が放電されるように、昇圧コンバータ51を駆動してディスチャージ制御を行う。このとき、マイコン11は、MG40の各相(U相、V相、W相)のコイルを用いて、MG40にトルクを発生させることなく、強制的に放電させるようにインバータ52を制御する。
【0032】
また、マイコン11は、IG−OFF時において、MREL25が遮断される(以下、MREL−OFFと呼ぶ)までの間に、制御学習値や異常情報等の情報を不揮発性メモリ12に書き込む(記憶させる)制御を行う(書き込み制御)。なお、制御学習値とは、上述した昇圧コンバータ51、MG40(インバータ52)等の制御に関する値であって、次回のIG−ON中における制御に利用するために保持する値を意味する。例えば、フィードバック制御等に用いるセンサ(昇圧コンバータ51の出力側の電圧を測定する電圧センサ等)やMG40のロータ等のアクチュエータの原点情報(次回のIG−ON時における初期位置情報)が含まれてよい。また、異常情報とは、発生した異常に関する情報である。例えば、発生した異常のダイアグノーシスコードや異常が発生した時点の車両状態(各種制御情報)を記憶したFFD(Freeze Frame Data;フリーズフレームデータ)等が含まれてよい。制御学習値は、IG−ON中における制御状態に従って更新される必要があるため、IG−OFFからMREL−OFFまでの間に書き込まれる(記憶される)。また、記憶容量の制約等により、逐次保存では限られた数しか保存ができない可能性があるため、異常情報は、IG−OFFからMREL−OFFまでの間に、異常情報の優先順位(例えば、車両への影響度合い)等に応じて書き込まれる(記憶される)。
【0033】
不揮発性メモリ12は、電力供給の有無に関わらず記憶された情報を保持することが可能な記憶装置であり、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)を用いてよい。また、MRAM(Magnetoresistive Randam Access Memory;磁気抵抗メモリ)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory;強誘電体メモリ)等を用いてもよい。不揮発性メモリ
12は、上述したマイコン11により制御学習値や異常情報等が記憶される。
【0034】
ここで、IG−OFFからMREL−OFFまでの時間は予め規定されている。よって、図2に示すように、マイコン11は、この制約時間の中で、上述したディスチャージ制御と書き込み制御とを含む終了制御を完了させる必要がある。そのため、ディスチャージ制御と書き込み制御は、並列処理されることが好ましい。なお、IG−OFFからMREL−OFFまでの時間は、車両の運転者がイグニッションスイッチ(不図示)をオフにする操作を行なって、車両の電源が切れるまでの時間に相当する。よって、IG−OFF後、すぐに運転者が車両から離れることができない等により運転者が違和感を抱かないようにIG−OFFからMREL−OFFまでの時間は所定の時間に設定される。
【0035】
しかしながら、ディスチャージ制御は、昇圧コンバータ51に含まれるトランジスタSW11、SW12のスイッチング動作を伴うため、ノイズを発生させる。そのため、該ノイズの影響により書き込み制御における不揮発性メモリ12へのアクセス中に記憶させるためのデータが変化してしまう(データ化け)可能性がある。よって、単純にディスチャージ制御と書き込み制御とを並列に処理した場合、不揮発性メモリ12に書き込まれる制御学習値や異常情報等のデータが意図せず変化してしまう可能性がある。
【0036】
そのため、例えば、特許文献1に開示された技術では、マイコン11は、不揮発性メモリ12への書き込み制御シーケンスのうち、ノイズの影響を受けない処理をディスチャージ期間に行い、ディスチャージ期間の後、不揮発性メモリ12とのデータの通信を実行している。
【0037】
(待ち時間の短縮について)
図3は、一実施形態に係る待ち時間の短縮について説明するための図である。
【0038】
図3の時間t1において、ユーザがIG−SWをオフにすると、マイコン11は、昇圧コンバータ51を駆動し、昇圧コンバータ51の電圧VHを低下させるディスチャージ制御を行う。これに伴い、昇圧コンバータの電圧が安定する時間t3までの期間(ディスチャージ期間)、前述したディスチャージ制御により、昇圧コンバータ51からノイズが発生する。
【0039】
従来の技術では、このディスチャージ期間の後、例えば、図3の時間t3以降に、マイコン11から不揮発性メモリ12へのデータの通信を開始する。また、図3の時間t7にデータの通信が完了すると、図3の時間t8に、電源ECU等により、MREL25の保持要求がオフに制御され、MREL25が遮断される。これにより、車両は、例えば、図3の時間t9に、再びイグニッションをオンさせる処理(再IG−ON処理)を実行することができるようになる。図3の例では、例えば、図3の時間t2にユーザ操作により再びIG−SWがオンされると、時間t9までの間、再IG−ON処理の待ち時間が発生する。
【0040】
一方、本実施形態では、図3の時間t1に、ユーザによりIG−SWがオフされると、IG−SWのオフに応じて、マイコン11は、例えば、時間t1に不揮発性メモリ12へのデータの通信を開始する。このとき、マイコン11は、後述する通信処理により、不揮発性メモリ12への通信データを保証して、データの通信を行う。
【0041】
これにより、例えば、図3の時刻t4にデータの通信が完了すると、図3の時間t5に、電源ECU等により、MREL25の保持要求がオフに制御され、MREL25が遮断される。これにより、車両は、例えば、図3の時間t6に、再びイグニッションをオンさせる処理(再IG−ON処理)を実行することができるようになる。
【0042】
従って、図3の例では、従来の技術において、時間t2から時間t9まで要していた待ち時間が、本実施形態では、時間t2からt6までの待ち時間に短縮される。
【0043】
(通信処理の概要)
図4は、一実施形態に係る昇圧コンバータの電圧(VH)の変化と通信許可状態との関係の例を示す図である。この図は、図3に示したディスチャージ期間における昇圧コンバータの電圧の変化と、マイコン11の不揮発性メモリ12へのデータ通信(以下、EEPROM通信と呼ぶ)の状態との関係を示している。
【0044】
図3のディスチャージ期間において、マイコン11は、前述したディスチャージ制御により、昇圧コンバータ51の電圧(以下、VHと呼ぶ)を低下させる。例えば、図4において、マイコン11は、時間t3から、周期T1で周期的に昇圧コンバータ51のトランジスタをスイッチングさせて、段階的にVHの電圧を低下させる。この周期T1は、例えば、マイコン11で動作するプログラムによって制御される制御指令値によって決定される。
【0045】
図4において、時間t3にトランジスタがスイッチングされると、VHの電圧が安定する時間t4までの期間T2において、IPM50の昇圧コンバータ51から、他の期間より大きいノイズが発生する。従って、図3のディスチャージ期間に、マイコン11が不揮発性メモリ12にデータを通信するEEPROM通信を行うと、図4の期間T2に通信されるデータ「D」、「E」は、ノイズの影響により、データが変化する(データ化けする)可能性が高くなる。同様に、図4の時刻t7において、マイコン11の制御により、トランジスタのスイッチングが行われると、時間t7から時間t8までの間に通信されるデータ「H」は、ノイズの影響により、データが変化する可能性が高くなる。
【0046】
そこで、本実施形態に係るマイコン11は、例えば、図4において、昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチングによりデータが変化する可能性が低い「A」、「B」、「C」の期間のEEPROM通信を許可し、データが変化する可能性が高い「D」、「E」の期間のEEPROM通信を許可しない。同様に、図4において、マイコン11は、昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチングによりデータが変化する可能性が低い「F」、「G」、「I」、「J」の期間のEEPROM通信を許可し、データが変化する可能性が高い「H」の期間のEEPROM通信を許可しない。
【0047】
これにより、マイコン11は、ノイズ発生源となる昇圧コンバータ51のディスチャージ動作時に、不揮発性メモリ12とのデータの通信を可能とし、不揮発性メモリ12へのデータの通信に要する時間を短縮することができるようになる。
【0048】
続いて、具体的な構成と、処理内容について説明する。
【0049】
<機能構成>
図5は、一実施形態に係る車載システムの機能構成図である。車載システム1は、図1の昇圧コンバータ51、及びインバータ52を含むIPM(装置)50と、マイコン11、及び不揮発性メモリ12を含むMG−ECU(電子制御装置)10とを有する。
【0050】
マイコン(マイクロコンピュータ)11は、IPM50を制御する情報処理装置である。マイコン11は、所定のプログラムを実行することにより、例えば、図5に示す制御部111、電圧降下検知部112、タイミング取得部113、発生期間推定部114、通信部115、記憶部116等の機能を実現する。
【0051】
制御部111は、ノイズの発生源となる昇圧コンバータ51を含む装置(IPM50)を制御する手段である。例えば、制御部111は、IPM50に含まれる昇圧コンバータ51、及びインバータ52に対して、前述したディスチャージ制御を行う。
【0052】
電圧降下検知部(検知手段)112は、昇圧コンバータ51の電圧降下パターンがイグニッションオフ後に連続するディスチャージ期間において、電圧降下パターンの開始時点を検知する手段である。例えば、電圧降下検知部112は、マイコン11に内蔵されたA/Dコンバータ等を用いて、昇圧コンバータ51の電圧VHを測定し、図4の時間t3に示されているような、昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチングによる電圧降下の開始を検知する。
【0053】
図6は、一実施形態に係るノイズ発生タイミングの推定手順のイメージを示す図である。図6の例では、時間t1に、例えば、ユーザ操作によりIG−SWがオフされると、時間t2、t3、t6、及びt9に昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチングによるステップ状の電圧降下パターンが連続して発生する。電圧降下検知部112は、例えば、このトランジスタのスイッチングによるステップ状の電圧降下パターンの開始時点であるt2、t3、t6、及びt9等を検知する。
【0054】
図5に戻り、マイコン11の機能構成の説明を続ける。
【0055】
タイミング取得部(取得手段)113は、電圧降下検知部112が検知した、昇圧コンバータ51の出力電圧における電圧降下パターンの開始時点から、次の電圧降下パターンの開始時点までの時間(例えば、カウンタ値)を取得する。
【0056】
例えば、タイミング取得部113は、図6の時間t2において、昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチングによる電圧降下が検知されると、次にスイッチングによる電圧降下が検知される時間t3までの時間を取得する。タイミング取得部113は、例えば、図6の時間t2にノイズ発生タイミング推定カウンタ(以下、カウンタと呼ぶ)の計数を開始し、時間t3までのカウント値を取得して、記憶部116に記憶する。
【0057】
発生期間推定部(推定手段)114は、タイミング取得部113が取得した時間から、昇圧コンバータ51によるノイズが発生する期間(例えば、カウンタ値)を推定する手段である。
【0058】
例えば、発生期間推定部114は、電圧降下検知部112が、昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチングによる2回目以降の電圧降下パターンの開始時点を検知すると、カウンタのカウント値を初期化し、カウンタのカウントアップを再開する。また、発生期間推定部114は、タイミング取得部113が取得し、記憶したカウント値に基づいて、昇圧コンバータ51によるノイズが発生する期間(例えば、図6の時間t5からt7、及び時間t8からt10等)を推定する。
【0059】
例えば、タイミング取得部113が、図6の時間t2からt3までの間にカウントし、記憶部116に記憶したカウント値を「cnt」とする。発生期間推定部114は、例えば、カウンタの値が第1の所定の値(例えば、「cnt×90%」)となった時点を、図6の時間t5、t8とする。なお、「cnt×90%」の90%はあくまで一例である。この値は、例えば、実験や計算等により、予め定められているものとする。
【0060】
同様に、発生期間推定部114は、例えば、カウンタの値が第2の所定の値(例えば、「cnt×10%」)となった時点を、図6の時間t4、t7、t10とする。なお、「cnt×10%」の10%はあくまで一例である。この値は、例えば、実験や計算等により、予め定められているものとする。
【0061】
上記の例では、タイミング取得部113は、例えば、カウンタの値が「0」から「cnt×10%」までの期間と、カウンタの値が「cnt×90%」から「cnt」までの期間を、昇圧コンバータ51によるノイズが発生する期間として推定(又は決定)する。
【0062】
通信部(通信手段)115は、データを記憶する不揮発性メモリ(記憶装置)12とEEPROM通信を行う。本実施形態に係る通信部115は、図3に示すディスチャージ期間のうち、発生期間推定部114が推定したノイズが発生する期間を除く期間に、不揮発性メモリ12とのEEPROM通信を行う。また、通信部115は、発生期間推定部114が推定したノイズが発生する期間にEEPROM通信を中断する。
【0063】
例えば、図6の例では、通信部115は、時間t4からEEPROM通信を開始し、カウンタの値が「cnt×90%」となる時間t5に、EEPROM通信を中断する。また、通信部115は、時間t6にカウンタが初期化されて、カウンタの値が「cnt×10%」となる時間t7までEEPROM通信の中断を継続し、時間t7を過ぎるとEEPROM通信を再開する。同様に、通信部115は、図6の時間t8からt10まで、EEPROM通信を中断する。
【0064】
記憶部116は、例えば、タイミング取得部113が取得したカウント値等を記憶する手段である。記憶部116は、例えば、マイコン11のRAM、及びマイコン11で動作するプログラム等によって実現される。
【0065】
<処理の流れ>
初めに、図6を用いて、本実施形態に係る通信処理の流れを説明する。
【0066】
図6の時間t1において、例えば、ユーザの操作により、IG−SWがオフされると、例えば、以下の4つステップで通信処理が行われる。
【0067】
(STEP1)
図6の時間t2において、マイコン11の電圧降下検知部112が、昇圧コンバータ51の出力電圧におけるステップ状の電圧降下パターンの開始時点(1回目)を検知する。この電圧降下パターンの開始時点(1回目)の検知に応じて、タイミング取得部113は、カウンタを初期化し、カウンタのカウントアップを開始させる。なお、カウンタの初期化は、予め行われていても良い。
【0068】
(STEP2)
図6の時間t3において、マイコン11の電圧降下検知部112が、昇圧コンバータ51の出力電圧におけるステップ状の電圧降下パターンの開始時点(2回目)を検知する。この電圧降下パターンの開始時点(2回目)の検知に応じて、タイミング取得部113は、電圧降下パターンの開始時点(2回目)におけるカウンタのカウント値(cnt)を記憶部116に記憶する。
【0069】
また、マイコン11の発生期間推定部114は、カウンタを初期化して、カウンタのカウントアップを再開させる。
【0070】
さらに、発生期間推定部114は、タイミング取得部113が記憶部116に記憶したカウント値「cnt」から、時間t5、t8におけるカウンタの値(例えば、「cnt×90%」)を計算する。同様に、発生期間推定部114は、タイミング取得部113が記憶部116に記憶したカウント値「cnt」から、時間t4、t7、t10におけるカウンタの値(例えば、「cnt×10%」)を計算する。
【0071】
(STEP3)
図6の時間t4において、カウンタの値が、例えば、「cnt×10%」になると、通信部115は、EEPROM通信を開始する。
【0072】
また、図6の時間t5において、カウンタの値が、例えば、「cnt×90%」になると、通信部115は、EEPROM通信を中断する。
【0073】
(STEP4)
時間t6において、マイコン11の電圧降下検知部112が、昇圧コンバータ51の出力電圧におけるステップ状の電圧降下パターンの開始時点(3回目)を検知する。この電圧降下パターンの開始時点(3回目)の検知に応じて、発生期間推定部114は、カウンタを初期化して、カウンタのカウントアップを再開させる。
【0074】
以後の処理は、基本的にSTEP3とSTEP4の繰り返しである。
【0075】
例えば、図6の時刻t7において、カウンタの値が、例えば、「cnt×10%」になると、通信部115はEEPROM通信を開始し、カウンタの値が、例えば、「cnt×90%」になると、通信部115はEEPROM通信を中断する。
【0076】
なお、マイコン11の制御部111が、昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチングを制御する制御指令値を変更した場合、昇圧コンバータ51のトランジスタのスイッチング周期が変わるので、マイコン11は、上記の処理をSTEP1から再度実行する。
【0077】
図7は、一実施形態に係る情報処理装置の通信処理の例を示すフローチャートである。
【0078】
例えば、図6の時間t1において、ユーザ操作等により、IG−SWがオフされると、マイコン11は、図7の処理を開始する。
【0079】
ステップS701において、マイコン11のタイミング取得部113は、カウンタのカウント値を初期化する。
【0080】
ステップS702において、マイコン11の電圧降下検知部112は、例えば、図6の時間t2における昇圧コンバータ51の出力電圧におけるステップ状の電圧降下パターンの開始時点(1回目)を検知する。
【0081】
ステップS703において、マイコン11のタイミング取得部113は、ステップS704でステップ状の電圧降下パターンの開始時点(2回目)が検知されるまで、カウンタをカウントアップさせる。
【0082】
ステップS704において、マイコン11の電圧降下検知部112が、例えば、図6の時間t3における電圧降下パターンの開始時点(2回目)を検知すると、マイコン11は処理をステップS705に移行させる。
【0083】
ステップS705に移行すると、タイミング取得部113は、カウンタのカウント値を記憶部116に記憶する。
【0084】
ステップS706において、マイコン11の発生期間推定部114は、カウンタのカウント値を初期化し、タイミング取得部113が記憶部116に記憶したカウント値「cnt」を用いて、ノイズが発生する期間を推定(又は決定)する。例えば、発生期間推定部114は、前述した「cnt×10%」、「cnt×90%」の値を計算する。
【0085】
ステップS707において、カウンタのカウントアップが行われると、ステップS708において、マイコン11は、制御部111がトランジスタのスイッチング周期を決定する制御指令値を変更したか否かを判断する。制御指令値が、前回の値と異なる場合、マイコン11は、処理をステップS701に戻す。一方、制御指令値が、前回の値と同じ場合、マイコン11は、処理をステップS709に移行させる。
【0086】
ステップS709に移行すると、マイコン11の通信部115は、EEPROM通信が許可されているか否かを判断する。例えば、図6の例では、カウンタの値が「cnt×10%」となる時間t4から、カウンタの値が「cnt×90%」となる時間t5までの間、通信が許可されている。従って、通信部115は、現在のカウンタの値が、例えば、「cnt×10%」以上、「cnt×90%」未満の場合、EEPROM通信が許可されていると判断する。一方、通信部115は、現在のカウンタの値が、例えば、「cnt×10%」未満の場合、及び「cnt×90%」以上の場合、EEPROM通信が許可されていないと判断する。
【0087】
EEPROM通信が許可されていると判断された場合、通信部115は、ステップS710において、EEPROM通信を実行する。一方、EEPROM通信が許可されていないと判断された場合、通信部115は、ステップS711において、EEPROM通信を中断する。
【0088】
ステップS712において、マイコン11の電圧降下検知部112が、ステップ状の電圧降下パターンの開始時点を検知したか否かを判断する。所定のパターンの電圧降下が検知された場合、マイコン11は、処理をステップS706に移行させる。一方、所定のパターンの電圧降下が検知されない場合、マイコン11は、処理をステップS707に移行させる。
【0089】
上記の処理により、車載システム1は、ディスチャージ期間のうち、発生期間推定部114が推定したノイズが発生する期間を除く期間にEEPROM通信を実行する。また、車載システム1は、ディスチャージ期間のうち、発生期間推定部114が推定したノイズが発生する期間にEEPROM通信を中断する。従って、本実施形態に係る車載システム1によれば、ディスチャージ期間にEEPROM通信を実行した場合でも、ノイズによるEEPROM通信の失敗が低減される。
【0090】
これにより、本実施形態に係る車載システム1は、ノイズの発生源となるIPM50のディスチャージ動作時に、不揮発性メモリ12とのデータの通信を可能とし、不揮発性メモリ12へのデータ通信に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 車載システム
10 MG−ECU(電子制御装置)
11 マイコン(マイクロコンピュータ)
12 不揮発性メモリ(記憶装置)
30 HVバッテリ(バッテリ)
40 MG(回転電動機)
50 IPM(装置)
51 昇圧コンバータ
52 インバータ
112 電圧降下検知部(検知手段)
113 タイミング取得部(取得手段)
114 発生期間推定部(推定手段)
115 通信部(通信手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7