特許第6439684号(P6439684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6439684-ポリアミド樹脂組成物、及び成形体 図000024
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439684
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物、及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20181210BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20181210BHJP
   C08G 69/26 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08L83/04
   !C08G69/26
【請求項の数】11
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2015-513721(P2015-513721)
(86)(22)【出願日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】JP2014060970
(87)【国際公開番号】WO2014175169
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年1月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-90328(P2013-90328)
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-183426(P2013-183426)
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
(72)【発明者】
【氏名】菊地 まゆみ
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−504439(JP,A)
【文献】 特表2008−523219(JP,A)
【文献】 特表2008−530312(JP,A)
【文献】 特表2009−509030(JP,A)
【文献】 特開平05−086295(JP,A)
【文献】 特開2001−113650(JP,A)
【文献】 特開2003−251775(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145497(WO,A1)
【文献】 特表2003−533553(JP,A)
【文献】 特開2003−292795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L77/00−77/12
C08L83/00−83/16
C08G69/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド(A)及び自由体積調整剤(B)を含有し、陽電子消滅法により求められる自由体積が0.0545nm以下である、ポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド(A)が、下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の少なくとも一方を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミド(A1)であり、
自由体積調整剤(B)が、シロキサン結合で主鎖が構成されたポリシルセスキオキサン(B1)であり、
ポリシルセスキオキサン(B1)の含有量が、ポリアミド(A)100質量部に対して0.005〜0.500質量部である、ポリアミド樹脂組成物
【化1】
[上記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。また、上記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。]
【請求項2】
ポリシルセスキオキサン(B1)が、下記一般式(b)で表される化合物である、請求項に記載のポリアミド樹脂組成物。
(RSiO1.5 (b)
〔上記一般式(b)中、nは2m+4(mは1以上の整数)で表される整数であり、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、イミド基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜24のアリールアルキル基、炭素数2〜10のポリアルキレンオキシ基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、又はシロキサン類であり、これらの基の水素原子が置換されていてもよい。〕
【請求項3】
ポリシルセスキオキサン(B1)の含有量が、ポリアミド(A)100質量部に対して、0.005〜0.050質量部である、請求項又はに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造又はラダー構造を有する化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造を有する化合物である、請求項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造を有する化合物であって、当該ケージ構造を形成する結合の1つ以上が開裂して、ケイ素原子及び/又は酸素原子に更に置換基のついたポリシルセスキオキサンである、請求項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造を有する化合物であって、当該ケージ構造を形成するケイ素原子及び酸素原子の1つ以上が失われ、ケイ素原子及び/又は酸素原子に更に置換基がついたポリシルセスキオキサンである、請求項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂組成物の陽電子消滅法により求められる自由体積が0.0535nm以下である、請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
更にポリアミド(A)以外の樹脂を含む、請求項のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【請求項11】
請求項10に記載の成形体を、さらに延伸及び/又は熱成形してなる、2次成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素を含まないガスバリア性樹脂としては、ナイロン6やポリメタキシリレンアジパミド(以下、「N−MXD6」ともいう)等のポリアミド樹脂や、エチレンビニル共重合体が知られている。
これらの中でも、N−MXD6は、高い機械的物性を有し、酸素バリア性、特に高湿度環境下での酸素バリア性に優れているため、ボイルやレトルト処理といった加熱殺菌処理後の酸素バリア性が要求される食品包装用材料として好適である。
食品包装用材料としては、ポリエチレンテレフタレートとメタキシリレンアジパミドとを用いた、多層ボトル、ブレンドボトル、延伸フィルムが使用されている。また、ポリエチレンテレフタレートとメタキシリレンアジパミドとからなる樹脂フィルムに、ポリオレフィン等のベースフィルムを積層した積層フィルムや、ナイロン6等をさらに混合して成形した混合樹脂フィルムも使用されている。
【0003】
食品包装用材料には、昨今のガラスからプラスチック材への変換において、プラスチック材に対する酸素、二酸化炭素、水蒸気等の更なるバリア性の向上を要求されている。また、食品包装用材料には、その用途によっては透明性や成形性に優れることが要求されることがある。
【0004】
一方で、従来、ナイロン6、N−MXD6等を含む樹脂組成物や樹脂成形体には、様々な改良がなされている。例えば、特許文献1には、N−MXD6に対し、ナイロン6等の結晶化速度の速い特定の他のポリアミドを混合したポリアミド樹脂組成物より得られるフィルム及びシートについて開示されている。特許文献1には、当該フィルム及びシートは、柔軟性があり、高湿度雰囲気下においても優れた透明性を保つことができる旨の記載がある。
しかしながら、特許文献1記載のフィルム及びシートは、他のポリアミドを混合した樹脂組成物により成形されているため、N−MXD6単独のフィルム等と比較し、ガスバリア性が低下するという問題を有する。
【0005】
また、非特許文献1には、ナイロン6中に、分子サイズの粘土鉱物が分散し、且つナイロン6と粘土鉱物とがイオン結合している複合材料、いわゆる「ナイロン6−粘土ハイブリッド」について開示されている。非特許文献1には、当該ナイロン6−粘土ハイブリッドは、球晶の成長が粘土の層により妨げられて球晶の大きさが可視光の波長以下に制御されるため、可視光の透過率が通常のポリアミドより増大すると記載されている。
なお、同じ結晶性ポリアミドであるN−MXD6においても同様な効果が期待できるが、その効果発現のためには粘土鉱物を1%添加する必要がある。
しかしながら、粘土鉱物を1%以上添加したN−MXD6からなる複合材料より成形されたフィルム、シート等は、衝撃強度が低下する等の機械的物性の低下を招くと共に、色調が悪化する。
【0006】
無機物として、タルク、マイカ等をN−MXD6にブレンドした複合材料からなるフィルムについても、ボイル・レトルト用途に用いた場合、加熱後の白化改善効果は期待できる。しかしながら、このような複合材料は、結晶化速度が無添加のN−MXD6と比べて2倍以上加速されるため、延伸フィルムや、シートから成形される深絞りカップ等の成形材料として用いる場合、結晶化速度が速すぎ、結晶化により、フィルムやシートの延伸ができなくなり、破断や伸びムラ等が発生し、成形性が極端に低下するという問題がある。
【0007】
特許文献2には、ポリアミドMXD6に、エチレンビスステアリルアミド等の特定の脂肪酸と特定のジアミン又は特定のジオールから得られるジアミド化合物又はジエステル化合物を特定量添加し混合した、ポリアミド樹脂組成物から得たフィルム、シート及び中空容器が開示されている。当該フィルム等は、非晶で無延伸又は非晶で低倍率の延伸状態であっても、高湿度雰囲気下での保存中や、水、特に沸水との接触の際の白化が少なく、透明性を維持できるとされている。しかしながら、特許文献2では、これらシート等の酸素等のバリア性については検討がされていない。
【0008】
また、特許文献3には、アルキル置換芳香族アルデヒド、及び関連するアセタールから得られるビス(ジベンジリデン)ソルビトールアセタールからなるポリプロピレン用有機系結晶核剤について記載されている。
当該ポリプロピレン用有機系結晶核剤は、非特許文献2で示されているように、当該結晶核剤がポリプロピレン中に相溶し、ナノメートルレベルのネットワーク構造を構築し、このネットワークを核としてナノメートルオーダーのポリプロピレンの球晶が成長することが知られている。ナノレベルの結晶サイズであるため、透明性に優れ、ポリプロピレンの透明性を改善するために広く使われている。
しかしながら、これらのビス(ジベンジリデン)ソルビトールアセタールをポリアミドに添加した場合、ポリアミド等の重縮合樹脂組成物への透明性改善効果があることや低湿度下でのバリア性改善効果があるものの、高湿度下環境においては、バリア性が極端に悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−198329号公報
【特許文献2】特開2000−248176号公報
【特許文献3】特開平3−169882号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「新素材」誌1996年12月号17頁
【非特許文献2】Macromolecules Vol.36,No.14.2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、ナイロンやM−MXD6を含む樹脂組成物を成形してなる成形体は、ガスバリア性に対して改良の余地があり、例えば、二酸化炭素や酸素等に対する成形体のガスバリア性を向上させることが望まれている。また、透明性や成形性に関しても改良の余地があり、例えば、成形体のガスバリア性を良好にしつつも透明性や成形性が良好なポリアミド樹脂組成物が望まれている。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、本発明の第1の課題は、二酸化炭素や酸素等に対するガスバリア性、特に二酸化炭素に対するガスバリア性に優れた成形体の形成材料となり得る、ポリアミド樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することである。
また、本発明の第2の課題は、延伸フィルムや深絞りカップ等への成形性を低下させず、透明性が良好で、酸素や水蒸気等のガスバリア性(特に高湿度環境下でのガスバリア性)に優れた成形体となり得るポリアミド樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いて成形してなる成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、陽電子消滅法により求められるポリアミド樹脂組成物の自由体積の値を所定値以下に調整することで、第1の課題を解決し得ることを見出し、以下の本発明の第1の実施態様を完成させた。
また、本発明者らは、特定のジアミン単位と特定のジカルボン酸単位を含むポリアミドに対し、シロキサン結合で主鎖が構成されたポリシルセスキオキサンを所定量添加したポリアミド樹脂組成物が、上記第2の課題を解決し得ることを見出し、以下の本発明の第2の実施態様を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、第1の実施態様として、以下の[1]〜[11]を提供する。
〔1〕ポリアミド(A)及び自由体積調整剤(B)を含有し、陽電子消滅法により求められる自由体積が0.0545nm3以下である、ポリアミド樹脂組成物。
〔2〕ポリアミド(A)が、下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の少なくとも一方を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミド(A1)である、上記〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
【化1】
[上記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。また、上記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。]
〔3〕自由体積調整剤(B)が、シロキサン結合で主鎖が構成されたポリシルセスキオキサン(B1)である、上記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔4〕ポリシルセスキオキサン(B1)が、下記一般式(b)で表される化合物である、上記〔3〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
(RSiO1.5n (b)
〔上記一般式(b)中、nは2m+4(mは1以上の整数)で表される整数であり、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、イミド基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜24のアリールアルキル基、炭素数2〜10のポリアルキレンオキシ基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、又はシロキサン類であり、これらの基の水素原子が置換されていてもよい。〕
〔5〕ポリシルセスキオキサン(B1)の含有量が、ポリアミド(A)100質量部に対して、0.005質量部以上である、上記〔3〕又は〔4〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔6〕ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造を有する化合物である、上記〔3〕〜〔5〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
〔7〕ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造を有する化合物であって、当該ケージ構造を形成する結合の1つ以上が開裂して、ケイ素原子及び/又は酸素原子に更に置換基のついたポリシルセスキオキサンである、上記〔6〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔8〕ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造を有する化合物であって、当該ケージ構造を形成するケイ素原子及び酸素原子の1つ以上が失われ、ケイ素原子及び/又は酸素原子に更に置換基がついたポリシルセスキオキサンである、上記〔6〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔9〕前記ポリアミド樹脂組成物の陽電子消滅法により求められる自由体積が0.0535nm3以下である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
〔10〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる、成形体。
〔11〕上記〔10〕に記載の成形体を、さらに延伸及び/又は熱成形してなる、2次成形体。
【0014】
また、本発明は、第2の実施態様として、以下の[12]〜[17]を提供する。
〔12〕下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の少なくとも一方を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミド(A2)100質量部に対して、シロキサン結合で主鎖が構成されたポリシルセスキオキサン(B1)を0.005〜1.200質量部添加した、ポリアミド樹脂組成物。
【化2】
[上記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。上記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。]
〔13〕ポリシルセスキオキサン(B1)が、ケージ構造又はラダー構造の立体構造を有する化合物である、上記〔12〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔14〕ポリシルセスキオキサン(B1)が、下記一般式(b)で表される化合物である、〔12〕又は〔13〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
(RSiO1.5n (b)
〔上記一般式(b)中、nは2m+4(mは1以上の整数)で表される整数であり、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、イミド基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜24のアリールアルキル基、炭素数2〜10のポリアルキレンオキシ基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、又はシロキサン類であり、これらの基の水素原子が置換されていてもよい。〕
〔15〕更にポリアミド(A2)以外の樹脂を含む、〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
〔16〕上記〔12〕〜〔15〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる、成形体。
〔17〕上記〔16〕に記載の成形体を、さらに延伸及び/又は熱成形してなる、2次成形体。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明の第1の実施態様のポリアミド樹脂組成物は、二酸化炭素や酸素等に対するガスバリア性、特に二酸化炭素に対するガスバリア性に優れた成形体の形成材料となり得る。
また、本発明の第2の実施態様のポリアミド樹脂組成物は、延伸フィルムや深絞りカップ等への成形性を低下させず、透明性が良好で、酸素、二酸化炭素、水蒸気等のガスバリア性(特に、高湿度環境下でのガスバリア性)に優れた成形体の形成材料となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例及び比較例で調製したポリアミド樹脂組成物の自由体積と、当該樹脂組成物を成形してなる無延伸フィルムの二酸化炭素透過率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明について、実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
以下、まず、本発明の第1の実施態様のポリアミド樹脂組成物を、ポリアミド樹脂組成物(1)として説明する。
【0018】
〔ポリアミド樹脂組成物(1)〕
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)は、ポリアミド(A)及び自由体積調整剤(B)を含有するものであり、陽電子消滅法により求められる自由体積が0.0545nm3以下である。
高分子の自由体積を求める手法として、陽電子消滅法が知られている(高分子 42巻12月号(1993)参照)。
一般に、高分子に陽電子(e+)を入射させると、陽電子は電子(e-)と結合してポジトロニウム(Ps)を生成する。
陽電子消滅法とは、このポジトロニウム(Ps)の3/4を占めるオルソポジトロニウム(o−Ps、半径0.1nm、以下、「o−Ps」ともいう)が、高分子の空孔に入り込んだ際のo−Psの寿命(τ3)を測定することで、高分子の自由体積を求める手法である。
o−Psの寿命(τ3)は、高分子中に存在する空孔の壁と衝突したときに、o−Psの陽電子(e+)と空孔の壁の中の電子(e-)が重なる確率で決まり、高分子の空孔が大きいほど、o−Psの寿命(τ3)が長くなる。
空孔を無限高さの球状井戸型ポテンシャルと考え、空孔の壁面に厚さΔRの電子層があると仮定して、この電子層とo−Psの波動関数との重なりを計算することによって得られる陽電子(e+)消滅の速度を求めるモデルが、実際に実験を行った場合のデータと良く合う。そのため、高分子の空孔径Rが0.16〜0.8nm程度までであれば、o−Psの寿命τ3と空孔径Rとの間で下記式(1)の関係が成り立つ。
【0019】
【数1】
(上記式(1)において、τ3は測定したオルソポジトロニウム(o−Ps)の寿命、Rは高分子の空孔径、ΔRは空孔の壁面の厚さを示す。)
【0020】
すなわち、陽電子消滅法により、オルソポジトロニウム(o−Ps)の寿命(τ3)を求めることにより、上記式(1)より高分子の空孔径Rが求められる。さらに、空孔体積(自由体積)=4/3πR3であるため、求めた高分子の空孔径Rの値から、高分子の自由体積を算出することができる。
【0021】
ここで二酸化炭素のファンデルワールス半径の0.23nm(A.Bondi J. Phys. Chem. 68,441,1964参照)から、二酸化炭素の分子体積を4/3πR3に代入して求めると、0,0509nm3となる。
発明者らは鋭意検討の結果、ポリアミド樹脂組成物の陽電子消滅法により求められる自由体積(以下、「ポリアミド樹脂組成物の自由体積」ともいう)を、自由体積調整剤(B)を添加して、所定値以下に低下させることで、当該樹脂組成物を用いた成形体の二酸化炭素に対するガスバリア性が極めて良好となる傾向にあることを見出した。
なお、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積の値は、二酸化炭素の分子体積(0,0509nm3)以下とする必要はなく、当該二酸化炭素の分子体積よりもやや大きい値に調整することで、当該樹脂組成物を用いた成形体の二酸化炭素に対するガスバリア性を向上させ得る。
【0022】
つまり、本発明者らは、自由体積調整剤(B)の種類や添加量を適宜調製し、得られるポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積を0.0545nm3以下となるようにすることで、当該樹脂組成物(1)を成形してなる成形体の酸素や二酸化炭素等に対するガスバリア性を向上させ得ることを見出した。
図1は、実施例及び比較例で調製したポリアミド樹脂組成物(1)の陽電子消滅法により求められる自由体積と、当該樹脂組成物を成形してなる無延伸フィルムの二酸化炭素透過率との関係を示したグラフである。
図1のグラフによれば、無延伸フィルムの二酸化炭素透過率は、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積が0.0545nm3以下となると、無延伸フィルムの二酸化炭素透過率が小さい値となり、二酸化炭素に対するガスバリア性が向上していることがわかる。
【0023】
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積は0.0545nm3以下であるが、成形体のガスバリア性の向上の観点から、好ましくは0.0540nm3以下、より好ましくは0.0535nm3以下、更に好ましくは0.0533nm3以下である。
図1のグラフからも、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積が、上記の値以下となることで、無延伸フィルムの二酸化炭素透過率が小さい値となり、当該無延伸フィルムのガスバリア性が向上していることがわかる。
【0024】
また、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積の下限値は、特に制限はない。
例えば、後述のポリアミド(A1)を用いたポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積は、通常0.0509nm3以上である。
【0025】
なお、上記のポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積の値は、ポリアミド樹脂組成物(1)を成形してなる無延伸フィルムを試験サンプルとし、高時間分解能陽電子寿命測定装置等を用いた陽電子消滅法により、オルソポジトロニウム(o−Ps)の寿命τ3を測定し、前記式(1)より求めた空孔径Rから算出した値であり、具体的には実施例に記載の方法により得られた値である。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)は、ポリアミド(A)及び自由体積調整剤(B)を含有するが、これらに加えて、さらにポリアミド(A)以外のその他の樹脂やその他の添加剤を含有してもよい。
【0027】
ポリアミド樹脂組成物(1)で使用されるポリアミド(A)は、以下の通りである。
<ポリアミド(A)>
ポリアミド樹脂組成物(1)で用いるポリアミド(A)としては、アミノ酸、ω−アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸をモノマーとして重合された公知のポリアミドを用いることができる。
アミノ酸モノマーの具体例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などが例示でき、ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどが例示できる。
【0028】
ジアミンのモノマーとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチルヘキサン、5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環式ジアミン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
ジカルボン酸のモノマーとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等の脂環族ジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及びそれらのエステル化物等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
これらのモノマーより得るポリアミド樹脂の具体例として、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)及びこれらの共重合アミドなどがある。これらのポリアミド樹脂は単独でも2種類以上を混合しても用いることが出来る。
【0031】
ポリアミド樹脂組成物(1)中のポリアミド(A)の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、また、好ましくは99.995質量%以下である。
【0032】
<ポリアミド(A1)>
ポリアミド樹脂組成物(1)に使用されるポリアミド(A)としては中でも、下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II−1)で表される芳香族ジカルボン酸単位及び下記一般式(II−2)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位の少なくとも一方を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミド(A1)が好ましい。
当該ポリアミド(A1)を用いることで、成形体のガスバリア性を向上させることができる。また、当該ポリアミド(A1)を含むポリアミド樹脂組成物(1)は、結晶化温度が高いため、PETボトル、延伸フィルム、深絞り容器等の2次成形体の成形性に優れる。
【0033】
【化3】
[上記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。上記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。]
【0034】
ポリアミド(A1)における、ジアミン単位の含有量は、PETボトル、延伸フィルム及び深絞り容器等の二次成形体の成形性の向上、得られる成形体のガスバリア性の向上の観点から、ポリアミド(A1)の全構成単位に対して、好ましくは20〜65モル%、より好ましくは25〜60モル%、更に好ましくは30〜55モル%である。
また、ポリアミド(A1)における、ジカルボン酸単位の含有量は、上記と同様の観点から、ポリアミド(A1)の全構成単位に対して、好ましくは20〜65モル%、より好ましくは25〜60モル%、更に好ましくは30〜55モル%である。
【0035】
ポリアミド樹脂組成物(1)で用いるポリアミド(A1)には、ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外にも、後述するω−アミノカルボン酸単位、3級水素含有カルボン酸単位等のその他の単位を含有してもよい。また、ポリアミド(A1)は、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体のガスバリア性をより向上させる観点から、3級水素含有カルボン酸単位を含有することが好ましい。
ポリアミド(A1)における、ジアミン単位及びジカルボン酸単位の合計量は、ポリアミド(A1)の全構成単位に対して、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%である。
【0036】
[ジアミン単位]
ポリアミド(A1)中のジアミン単位としては、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体のガスバリア性及び透明性や色調の向上の観点、並びに、ポリアミド(A1)を含むポリアミド樹脂組成物(1)の成形性を向上させる観点から、前記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むことが好ましい。
前記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位の含有量は、ポリアミド(A1)の全ジアミン単位に対して、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0037】
前記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を構成する芳香族ジアミンとしては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミンが挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体のガスバリア性を向上させる観点から、メタキシリレンジアミンが好ましい。
メタキシリレンジアミン由来の単位の含有量は、上記観点から、ポリアミド(A1)中の全ジアミン単位に対して、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0038】
前記式(I)で表される芳香族ジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン;ハンツマン社製のジェファーミンやエラスタミン(いずれも商品名)に代表されるエーテル結合を有するポリエーテル系ジアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
[ジカルボン酸単位]
ポリアミド(A1)中のジカルボン酸単位としては、得られるポリアミド(A1)の結晶性及びポリアミド(A1)を含むポリアミド樹脂組成物の成形性の向上の観点から、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の少なくとも一方を合計で50モル%以上含むことが好ましい。
なお、ポリアミド(A1)においては、ジカルボン酸単位として、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位のみを50モル%以上含むものであってもよく、前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位のみを50モル%以上含むものであってもよく、当該直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位とを併用し合計で50モル%以上含むものであってもよい。
【0040】
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の合計含有量は、ポリアミド(A1)中の全ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0041】
前記一般式(II−1)又は(II−2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、1,3−ベンゼン二酢酸、1,4−ベンゼン二酢酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位)
本発明で用いるポリアミド(A1)は、ポリアミド(A1)に適度なガラス転移温度や結晶性を付与することに加え、ポリアミド(A1)を含むポリアミド樹脂組成物に対して包装材料や包装容器として必要な柔軟性を付与する目的の場合、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を含むことが好ましい。
前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表すが、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
【0043】
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を構成する直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、用途に応じて適宜決定され、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
これらの中でも、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位としては、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体に優れたガスバリア性を付与することに加え、当該成形体に加熱殺菌に耐え得る耐熱性を付与する観点から、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる単位の合計含有量は、ポリアミド(A1)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0045】
さらに、本発明で用いるポリアミド(A1)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位として、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体のガスバリア性の向上の観点、並びに、ポリアミド(A1)のガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点から、アジピン酸単位を含むことが好ましい。
アジピン酸単位の含有量は、ポリアミド(A1)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0046】
本発明で用いるポリアミド(A1)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位として、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体に適度なガスバリア性を付与するとともに、ポリアミド(A1)を含むポリアミド樹脂組成物に成形加工適性を付与する観点から、セバシン酸単位を含むことが好ましい。
セバシン酸単位の含有量は、ポリアミド(A1)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0047】
また、低吸水性、耐候性、耐熱性を要求される用途に用いられる場合、ポリアミド(A1)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位として、1,12−ドデカンジカルボン酸単位を含有することが好ましい。
1,12−ドデカンジカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド(A1)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0048】
(芳香族ジカルボン酸単位)
本発明で用いるポリアミド(A1)は、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体に更なるガスバリア性を付与することに加え、ポリアミド(A1)を含むポリアミド樹脂組成物の包装材料や包装容器等への成形加工性の向上を目的の場合、前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を含むことが好ましい。
前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。
アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセン基等が挙げられる。
【0049】
前記一般式(II−2)で表される単位を構成する芳香族ジカルボン酸としては、用途に応じて適宜決定され、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
芳香族ジカルボン酸単位としては、ポリアミド(A1)を用いて得られる成形体に更なるガスバリア性を付与することに加え、ポリアミド(A1)を含むポリアミド樹脂組成物の包装材料や包装容器等への成形加工性の向上の観点から、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含むことがより好ましい。
【0051】
イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる単位の合計含有量は、ポリアミド(A1)中の全芳香族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0052】
本発明のポリアミド(A1)のジカルボン酸単位において、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を併用して使用することも可能である。直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジアミン単位とを併用する場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の含有量比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、用途に応じて適宜決定される。
つまり、ポリアミド(A1)のガラス転移温度を上げて、ポリアミド(A1)の結晶性を低下させることを目的とする場合、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位との含有量比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、好ましくは0/100〜60/40、より好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。
また、ポリアミド(A1)のガラス転移温度を下げて、ポリアミド(A1)に柔軟性を付与することを目的とする場合、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位との含有量比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、好ましくは40/60〜100/0、より好ましくは60/40〜100/0、更に好ましくは70/30〜100/0である。
【0053】
[その他の単位]
本発明で用いるポリアミド(A1)は、上記のジアミン単位及びジカルボン酸単位以外のその他の単位を含有してもよい。
その他の単位としては、3級水素含有カルボン酸単位、ω−アミノカルボン酸単位等が挙げられる。
【0054】
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物(1)に含有される自由体積調整剤(B)について説明する。
<自由体積調整剤(B)>
ポリアミド樹脂組成物(1)で用いる自由体積調整剤(B)は、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積の値を、所定値以下に低下させ得る機能を有する添加剤を意味する。
対象となる添加剤が、本発明でいう自由体積調整剤(B)に該当するかの判断は、任意のポリアミドのみの自由体積の値(Vo)に対する、当該ポリアミド100質量部と対象となる添加剤0.100質量部とを配合してなる樹脂組成物の自由体積の値(V)の比率(V/Vo)により判断される。本発明では、当該V/Voの値が0.990以下となれば、この対象となる添加剤は、本発明でいう「自由体積調整剤(B)」に該当するものとする。
【0055】
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)において、自由体積調整剤(B)の含有量は、使用する自由体積調整剤の種類に応じて適宜変更し得るが、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積の値を低下させ、成形体のガスバリア性の向上させる観点から、ポリアミド(A)100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.010質量部以上、より好ましくは0.100質量部以上、更に好ましくは0.250質量部以上、より更に好ましくは0.400質量部以上であり、また、得られるポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体の透明性を良好とする観点から、好ましくは2.000質量部以下、より好ましくは1.500質量部以下、更に好ましくは1.200質量部以下、より更に好ましくは0.800質量部以下である。
【0056】
本発明において、自由体積調整剤(B)としては、上記定義を満たす添加剤であれば、特に制限はされないが、シロキサン結合で主鎖が構成されたポリシルセスキオキサンであることが好ましい。ポリシルセスキオキサンは、ポリアミド樹脂組成物の自由体積の値を低下させる効果が大きい。そのため、ポリシルセスキオキサンを含むポリアミド樹脂組成物(1)を成形してなる成形体は、酸素や二酸化炭素等に対するガスバリア性、特に二酸化炭素に対するガスバリア性に優れる。
また、ポリシルセスキオキサンは、少ない添加量でポリアミド樹脂組成物の自由体積の値を低下させることができ、加えて、成形体の透明性を向上させることもできる。なお、ポリアミド樹脂組成物(1)に使用されるポリシルセスキオキサンの詳細は、後述するポリシルセスキオキサン(B1)である。
【0057】
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)において、ポリシルセスキオキサンの含有量は、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積の値を低下させ、成形体のガスバリア性の向上させる観点から、ポリアミド(A)100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.010質量部以上、より好ましくは0.100質量部以上、更に好ましくは0.250質量部以上、より更に好ましくは0.400質量部以上である。
一方、得られるポリアミド樹脂組成物(1)を成形してなる成形体の透明性を良好とする観点から、ポリシルセスキオキサンの含有量は、ポリアミド(A)100質量部に対して、好ましくは2.000質量部以下、より好ましくは1.500質量部以下、更に好ましくは1.200質量部以下、より更に好ましくは0.800質量部以下である。
【0058】
以上のような構成により、本発明のポリアミド樹脂組成物(1)は、二酸化炭素や酸素等に対するガスバリア性、特に二酸化炭素に対するガスバリア性に優れた成形体の形成材料となり得る。
【0059】
次に、本発明の第2の実施態様のポリアミド樹脂組成物を、ポリアミド樹脂組成物(2)として説明する。
〔ポリアミド樹脂組成物(2)〕
本発明のポリアミド樹脂組成物(2)は、ポリアミド(A2)と、シロキサン結合で主鎖が構成されたポリシルセスキオキサン(B1)を含有する。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物(2)は、さらにその他の添加剤やポリアミド(A2)以外のその他の樹脂を含有してもよい。
【0060】
(ポリアミド(A2))
<ポリアミド(A2)>
本発明のポリアミド樹脂組成物(2)に含有されるポリアミド(A2)は、下記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II−1)で表される芳香族ジカルボン酸単位及び下記一般式(II−2)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位の少なくとも一方を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミドである。
【0061】
【化4】
[上記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。上記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。]
【0062】
上記ポリアミド(A2)における、ジアミン単位の含有量は、延伸フィルムや深絞りカップ等への成形性の向上、得られる成形体のガスバリア性の向上、及びポリマー性状の観点から、ポリアミド(A2)の全構成単位に対して、好ましくは20〜60モル%、より好ましくは25〜55モル%、更に好ましくは30〜50モル%である。
また、ポリアミド(A2)における、ジカルボン酸単位の含有量は、上記と同様の観点から、ポリアミド(A2)の全構成単位に対して、好ましくは20〜60モル%、より好ましくは25〜55モル%、更に好ましくは30〜50モル%である。
【0063】
ジアミン単位とジカルボン酸単位との含有量のモル比〔ジアミン単位/ジカルボン酸単位〕は、重合反応の観点から、通常49.5/50.5〜50.5/49.5であるが、ポリアミドの重合度を上がり易くし、ポリアミドの熱劣化を抑制する観点から、好ましくは49.7/50.3〜50.3/49.7、より好ましくは49.8/50.2〜50.2/49.8、更に好ましくは49.5/50.5〜50.5/49.5である。
当該含有量のモル比が上記範囲内であれば、ポリアミドの重合度が上がり易く、重合度を上げるための時間を短縮でき、ポリアミドの熱劣化を抑制することができる。
【0064】
ポリアミド樹脂組成物(2)で用いるポリアミド(A2)には、ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外のその他の単位を含有してもよい。その他の単位としては、3級水素含有カルボン酸単位、ω−アミノカルボン酸単位等が挙げられる。
また、ポリアミド(A2)は、延伸フィルムや深絞りカップ等の成形体のガスバリア性をより向上させる観点から、3級水素含有カルボン酸単位を含有することが好ましい。
【0065】
ポリアミド(A2)における、ジアミン単位及びジカルボン酸単位の合計量は、ポリアミド(A2)の全構成単位に対して、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%である。
【0066】
[ジアミン単位]
ポリアミド樹脂組成物(2)で用いるポリアミド(A2)中のジアミン単位は、ポリアミド(A2)に優れたガスバリア性を付与することに加え、透明性や色調の向上、良好な成形性を付与する観点から、前記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含む。
前記一般式(I)で表される芳香族ジアミン単位の含有量は、ポリアミド(A2)の全ジアミン単位に対して、70モル%以上含み、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0067】
前記一般式(I)で表される単位を構成する芳香族ジアミンとしては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミンが挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、優れたガスバリア性を発現させると共に、汎用的な熱可塑性樹脂と混合した際の成形性を良好とする観点から、メタキシリレンジアミンが好ましい。
メタキシリレンジアミン由来の単位の含有量は、上記観点から、ポリアミド(A2)中の全ジアミン単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0068】
前記式(I)で表される芳香族ジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、ハンツマン社製のジェファーミンやエラスタミン(いずれも商品名)に代表されるエーテル結合を有するポリエーテル系ジアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
[ジカルボン酸単位]
ポリアミド樹脂組成物(2)で用いるポリアミド(A2)中のジカルボン酸単位は、重合時の反応性、並びに、得られるポリアミド(A2)の結晶性及び成形性の向上の観点から、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の少なくとも一方を合計で50モル%以上含む。
なお、本発明で用いるポリアミド(A2)においては、ジカルボン酸単位として、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位のみを50モル%以上含むものであってもよく、前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位のみを50モル%以上含むものであってもよく、当該直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位とを併用し合計で50モル%以上含むものであってもよい。
【0070】
上記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び上記芳香族ジカルボン酸単位の合計含有量は、ポリアミド(A2)中の全カルボン酸単位に対して、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0071】
前記一般式(II−1)又は(II−2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、1,3−ベンゼン二酢酸、1,4−ベンゼン二酢酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
ポリアミド樹脂組成物(2)のポリアミド(A2)のジカルボン酸単位において、前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と前記芳香族ジカルボン酸単位との含有量比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、用途に応じて適宜決定される。
つまり、ポリアミド(A2)のガラス転移温度を上げて、ポリアミド(A2)の結晶性を低下させることを目的とする場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位との含有量比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、好ましくは0/100〜60/40、より好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。
また、ポリアミド(A2)のガラス転移温度を下げて、ポリアミド(A2)に柔軟性を付与することを目的とする場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位との含有量比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、好ましくは40/60〜100/0、より好ましくは60/40〜100/0、更に好ましくは70/30〜100/0である。
【0073】
(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位)
ポリアミド樹脂組成物(2)で用いるポリアミド(A2)は、ポリアミド(A2)に適度なガラス転移温度や結晶性を付与することに加え、包装材料や包装容器として必要な柔軟性を付与する目的の場合、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を含むことが好ましい。
前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表すが、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
【0074】
前記一般式(II−1)で表される単位を構成する直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、用途に応じて適宜決定され、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
直鎖脂肪族ジカルボン酸単位としては、ポリアミド(A2)に優れたガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の加熱殺菌後の耐熱性を保持する観点から、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる単位の合計含有量は、ポリアミド(A2)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0076】
さらに、ポリアミド樹脂組成物(2)で用いるポリアミド(A2)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位として、ポリアミド(A2)のガスバリア性及び適切なガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点から、アジピン酸単位を含むことが好ましい。
アジピン酸単位の含有量は、ポリアミド(A2)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0077】
ポリアミド樹脂組成物(2)で用いるポリアミド(A2)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位として、ポリアミド(A2)に適度なガスバリア性及び成形加工適性を付与する観点から、セバシン酸単位を含むことが好ましい。
セバシン酸単位の含有量は、ポリアミド(A2)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0078】
また、低吸水性、耐候性、耐熱性を要求される用途に用いられる場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位として、1,12−ドデカンジカルボン酸単位を含有することが好ましい。
1,12−ドデカンジカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド(A2)中の全直鎖脂肪族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0079】
(芳香族ジカルボン酸単位)
ポリアミド樹脂組成物(2)で用いるポリアミド(A2)は、ポリアミド(A2)に更なるガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の成形加工性の向上を目的の場合、前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を含むことが好ましい。
前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。
アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセン基等が挙げられる。
【0080】
前記一般式(II−2)で表される単位を構成する芳香族ジカルボン酸としては、用途に応じて適宜決定され、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
芳香族ジカルボン酸単位としては、ポリアミド(A2)に更なるガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の成形加工性の向上の観点から、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる単位の合計含有量は、ポリアミド(A2)中の全芳香族ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0082】
また、さらに、芳香族ジカルボン酸単位として、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含むことが好ましい。
イソフタル酸単位とテレフタル酸単位との含有量比(イソフタル酸単位/テレフタル酸単位)は、適度なガラス転移温度や結晶性を下げる観点から、好ましくは0/100〜100/0、より好ましくは0/100〜60/40、更に好ましくは0/100〜40/60、より更に好ましくは0/100〜30/70である。
【0083】
本発明のポリアミド樹脂組成物(2)に含有されるポリシルセスキオキサン(B1)は、シロキサン結合で主鎖が構成されたポリシルセスキオキサン(B1)である。
本発明のポリアミド樹脂組成物(2)中に、ポリシルセスキオキサン(B1)が0.5〜10nm程度の大きさで分散し、特に、ポリアミド(A2)の自由体積部分をポリシルセスキオキサン(B1)が占めることで、ガスバリア性が改善されると推測される。
【0084】
本発明のポリアミド樹脂組成物(2)において、ポリアミド(A2)100質量部に対して、ポリシルセスキオキサン(B1)を0.005〜1.200質量部添加する。
当該添加量が0.005質量部未満であると、得られるポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体のガスバリア性が劣る。一方、当該添加量が1.200質量部を超えると、得られるポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体の透明性が悪化する。
上記観点から、ポリシルセスキオキサン(B1)の添加量は、ポリアミド(A2)100質量部に対して、好ましくは0.007〜1.100質量部、より好ましくは0.008〜1.050質量部、更に好ましくは0.010〜0.500質量部である。
【0085】
以上の構成により、本発明のポリアミド樹脂組成物(2)は、延伸フィルムや深絞りカップ等への成形性を低下させず、透明性が良好で、酸素、二酸化炭素、水蒸気等のガスバリア性(特に、高湿度環境下でのガスバリア性)に優れた成形体の形成材料となり得る。
【0086】
[ポリシルセスキオキサン(B1)]
次に、以上のポリアミド樹脂組成物(1)及び(2)において、使用されるポリシルセスキオキサン(B1)についてさらに詳述する。
ポリシルセスキオキサン(B1)は、下記一般式(b)で表される化合物である。
(RSiO1.5n (b)
上記式(b)中、Rは、1価の基であり、互いに同じものでも、異なるものでもよい。nは2m+4(mは1以上の整数)で表される整数であり、好ましくは6〜30の偶数、より好ましくは6〜18の偶数、更に好ましくは6〜12の偶数である。
つまり、ポリシルセスキオキサンは、シロキサン結合で主鎖が構成される含ケイ素ポリマーであるポリシロキサンのうち、基本構成単位がT単位(シルセスキオキサン中のケイ素は、3個の酸素と結合し、酸素は2個のケイ素と結合している)であるものをいう。
【0087】
上記式(b)中のRで示される1価の基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、イミド基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜24のアリールアルキル基、炭素数2〜10のポリアルキレンオキシ基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、シラン等のシロキサン類等が挙げられる。
【0088】
これらの1価の基は、当該基中の水素原子が置換基により置換されてもよい。
そのような置換基としては、ヒドロキシ、ハロゲン原子、アミン、イミン、アンモニウム、シアノ、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、エポキシ、グリシジル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、カルボキシル、イミド、チオカルボニル、スルファート、スルホナート、スルホン酸、スルフィド、スルホキシド、ホスフィン、ホスホニウム、ホスファート、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホン、アシル、酸無水物、アジド、アゾ、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、カルボキシラート、カルボン酸、ウレタン、尿素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シリル、シロキシル、シラン等が挙げられる。
また、1価の基中には、酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のヘテロ原子が存在していてもよい。
【0089】
上記式(b)中のRで示される1価の基の中でも、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜24のアリール基が好ましい。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい
炭素数6〜24のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0090】
ポリシルセスキオキサンの分子中のケイ素−酸素骨格は複数の環構造を含んでおり、それぞれのケイ素原子は1個の有機基と3個の酸素原子と結合して、完全に縮合した多環構造を成している。
ポリシルセスキオキサン(B1)は、ランダム構造、ラダー構造、ケージ(かご)構造等の構造を有する化合物が挙げられるが、ポリアミド樹脂組成物の自由体積の値を効果的に低下させ、二酸化炭素等に対するガスバリア性の向上の観点から、ケージ(かご)構造又はラダー構造を有する化合物であることが好ましく、ケージ(かご)構造を有する化合物であることがより好ましい。
以下、ポリシルセスキオキサン(B1)が有する構造として好適なケージ(かご)構造を有するポリシルセスキオキサン、及びラダー構造を有するポリシルセスキオキサンについて説明する。
【0091】
〔ケージ(かご)構造を有するポリシルセスキオキサン〕
ケージ(かご)構造を有する化合物として、例えば、上記式(b)中のnが8の場合の化合物として、下記式(b−I−1A)で表されるポリシルセスキオキサンや、nが12の場合の下記式(b−I−1B)で表されるポリシルセスキオキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、ケージ(かご)構造を有するポリシルセスキオキサンについて、以下の上記式(b)中のnが8及び12の場合の化合物を一例として説明しているが、nが8及び12以外の場合のケージ(かご)構造を有する化合物についても、同種の立体構造を取ることができ、好適な立体構造及び官能基の種類についても同じである。
【0092】
【化5】
〔上記式(b−I−1A)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、上記式(b)中のRと同じである。また、R1〜R8は、互いに結合して環を形成してもよい。〕
【0093】
【化6】
〔上記式(b−I−1B)中、R1〜R12は、それぞれ独立に、上記式(b)中のRと同じである。また、R1〜R12は、互いに結合して環を形成してもよい。〕
【0094】
また、ポリシルセスキオキサン(B1)としては、ポリアミド樹脂組成物の自由体積の値を効果的に低下させ、成形体の二酸化炭素に対するガスバリア性を向上させるためには、ケージ(かご)構造を有するポリシルセスキオキサンのケージ(かご)構造を形成する結合の1つ以上が開裂して、ケイ素原子及び/又は酸素原子に更に置換基の付いたポリシルセスキオキサンが好ましい。
そのようなポリシルセスキオキサンとしては、上記式(b)中のnが8の場合、式(b−I−1A)で表されるポリシルセスキオキサンのケージ(かご)構造を形成する結合の1つ以上が開裂した、下記式(b−I−2A)又は(b−I−3A)で表されるポリシルセスキオキサンが挙げられる。
なお、ケージ(かご)構造を形成する結合の1つ以上が開裂したポリシルセスキオキサンについて、以下の記載にて、上記式(b)中のnが8の場合を例に説明するが、上記式(b)中のnが12の場合はもとより、nが8及び12以外の場合についても、同種の立体構造を取ることができ、好適な立体構造及び官能基の種類についても同じである。
【0095】
【化7】
〔上記式(b−I−2A)又は(b−I−3A)中、R1〜R8、Ra〜Rdは、上記式(b)中のRと同じである。〕
【0096】
さらに上記式(b)中のnが8の場合、上記式(b−I−2A)又は(b−I−3A)で表されるポリシルセスキオキサンの中でも、下記式(b−I−4A)又は(b−I−5A)で表されるポリシルセスキオキサンが好ましい。
【0097】
【化8】
〔上記式(b−I−4A)又は(b−I−5A)中、R1〜R8は、上記式(b)中のRと同じである。〕
【0098】
また、ポリシルセスキオキサン(B1)としては、ポリアミド樹脂組成物の自由体積の値を効果的に低下させ、成形体の二酸化炭素に対するガスバリア性を向上させるためには、ケージ(かご)構造を有するポリシルセスキオキサンのケージ(かご)構造を形成するケイ素原子及び/又は酸素原子の1つ以上が失われ、ケイ素原子及び/又は酸素原子に更に置換基の付いたポリシルセスキオキサンが好ましい。
そのようなポリシルセスキオキサンとしては、上記式(b)中のnが8の場合、式(b−I−1A)で表されるポリシルセスキオキサンのケージ(かご)構造を形成するケイ素原子及び酸素原子の1つ以上が失われ、ケイ素及び酸素原子に更に置換基の付いた、下記式(b−I−6A)で表されるポリシルセスキオキサンが挙げられる。
なお、ケージ(かご)構造を形成するケイ素原子及び酸素原子の1つ以上が失われ、ケイ素及び酸素原子に更に置換基の付いたポリシルセスキオキサンについて、以下の記載にて、上記式(b)中のnが8の場合を例に説明するが、上記式(b)中のnが12の場合はもとより、nが8及び12以外の場合についても、同種の立体構造を取ることができ、好適な立体構造及び官能基の種類についても同じである。
【0099】
【化9】
〔上記式(b−I−6A)中、R1、R3〜R8、Ra〜Rcは、それぞれ独立に、上記式(b)中のRと同じである。〕
【0100】
また、上記式(b)中のnが8の場合、上記式(b−I−6A)で表されるポリシルセスキオキサンの中でも、下記式(b−I−7A)で表されるポリシルセスキオキサンが好ましい。
【0101】
【化10】
〔上記式(b−I−7A)中、R1、R3〜R8は、それぞれ独立に、上記式(b)中のRと同じである。〕
【0102】
上記式(b−I−1A)〜(b−I−7A)及び式(b−I−1B)中のR1〜R12及びRa〜Rdは、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜40のアリール基であることが好ましく、少なくとも一つが炭素数6〜40のアリール基であることがより好ましく、全て炭素数6〜40のアリール基であることが更に好ましい。
なお、当該アリール基中の水素原子が、上述の置換基により置換されてもよい。
上記アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
上記アリール基としては、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
そのため、上記式(b−I−1A)〜(b−I−7A)及び式(b−I−1B)中のR1〜R12及びRa〜Rdは、全てフェニル基であることが更に好ましい。
【0103】
ケージ(かご)構造を有するポリシルセスキオキサンの分子量(式量)は、好ましくは300〜10000、より好ましくは500〜7000、更に好ましくは700〜5000、より更に好ましくは800〜3000である。
【0104】
〔ラダー構造を有するポリシルセスキオキサン〕
ラダー構造を有するポリシルセスキオキサンとしては、下記式(b−II)で表される構成単位を有するポリシルセスキオキサンが好ましい。
【0105】
【化11】
【0106】
上記式(b−II)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、上記式(b)中のRと同じであるが、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜40のアリール基であることが好ましく、少なくとも一つが炭素数6〜40のアリール基であることがより好ましく、全て炭素数6〜40のアリール基であることが更に好ましい。
なお、当該アリール基中の水素原子が、上述の置換基により置換されてもよい。
上記アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
上記アリール基としては、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。そのため、上記R1及びR2は、全てフェニル基であることが更に好ましい。
【0107】
なお、上記式(b−II)で表される構成単位を有するポリシルセスキオキサンの末端を−Si−OR’と表す場合、R’としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子、メチル基、又はエチル基がより好ましい。
【0108】
上記式(b−II)で表される構成単位を有するポリシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300〜10000、より好ましくは400〜5000、更に好ましくは450〜2500である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値である。
【0109】
以上のポリシルセスキオキサン(B1)は、ポリアミドとの相溶性を高める観点から、他のポリマーと共重合又はグラフト重合していてもよい。
また、ポリシルセスキオキサン(B1)は、押出時に脱水や脱アルコール反応による影響がない限り、ヒドロキシル基やアルコキシ基等の反応性末端基が残存していてもよい。
【0110】
ポリシルセスキオキサン(B1)の市販品としては、小西化学工業(株)製のSRシリーズ、東亜合成(株)製のSQシリーズ、荒川化学工業(株)製のコンポセランSQシリーズ、ハイブリッドケミカル社のPOSS(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0111】
なお、ポリシルセスキオキサン(B1)は、トリアルコキシシランを加水分解し、溶液からゾル、ゾルからゲルへ変化させて製造するのが一般的ではあるが、これら製造方法に限定されない。
【0112】
[ポリアミド(A2)及び(A1)におけるその他の単位]
(3級水素含有カルボン酸単位)
上記ポリアミド(A1)、(A2)それぞれにおいて好ましく含有される3級水素含有カルボン酸単位は、ポリアミド(A1)、(A2)の重合の観点、及び延伸フィルムや深絞りカップ等の成形体のガスバリア性をより向上させる観点から、アミノ基及びカルボキシル基を少なくとも1つずつ有する単位、もしくはカルボキシル基を2つ以上有する単位であることが好ましく、具体例には、下記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される単位であることが好ましい。
【0113】
【化12】
【0114】
[上記一般式(III)〜(V)中、R、R1及びR2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、イミド基等の置換基を表す。また、A1〜A3は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。ただし、前記一般式(IV)においてA1及びA2が共に単結合である場合を除く。]
【0115】
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜15(好ましくは1〜6)の直鎖、分岐又は環状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜10(好ましくは2〜6)の直鎖、分岐又は環状アルケニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜10(好ましくは2〜6)のアルキニル基が挙げられ、例えば、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
アリール基としては、核炭素数6〜18(好ましくは6〜10)のアリール基又は炭素数6〜16(好ましくは炭素数6〜10)の炭素原子を有するアリール基等が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
複素環基としては、5員環又は6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる、1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する一価の基が挙げられ、例えば1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)の直鎖、分岐又は環状アルコキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜12(好ましくは6〜8)のアリールオキシ基が挙げられ、例えば、フェノキシ基が挙げられる。
アシル基としては、ホルミル基、炭素数2〜10(好ましくは2〜6)のアルキルカルボニル基、又は炭素数7〜12(好ましくは7〜9)のアリールカルボニル基が挙げられ、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
アミノ基としては、アミノ基、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルキルアミノ基、炭素数6〜12(好ましくは6〜8)のアニリノ基、又は炭素数1〜12(好ましくは2〜6)の複素環アミノ基が挙げられ、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルキルチオ基が挙げられ、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数6〜12(好ましくは6〜8)のアリールチオ基が挙げられ、例えば、フェニルチオ基が挙げられる。
複素環チオ基としては、炭素数2〜10(好ましくは1〜6)の複素環チオ基が挙げられ、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ基が挙げられる。
イミド基としては、炭素数2〜10(好ましくは4〜8)のイミド基が好ましく、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
【0116】
なお、上記の置換基の中で水素原子を有するものは、水素原子が更に上記の基で置換されていてもよく、例えば、水酸基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、アルキルで置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等であってもよい。
なお、上記の置換基中の水素原子が更に置換されている場合、上述した炭素数には、更に置換した基の炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と見なし、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは見なさない。以降の炭素数に記載についても、特に断りが無い限り、同様に解するものとする。
【0117】
当該2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐もしくは環状のアルキレン基(炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基)、アラルキレン基(炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基、例えばベンジリデン基)、アリーレン基(炭素数6〜30、好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基、例えば、フェニレン基)等が挙げられる。
これらの連結基は、さらに置換基を有していてもよく、当該置換基としては、R、R1及びR2で表される置換基として上記に例示した基が挙げられる。
【0118】
上記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましいが、これらの中でも、原料の入手性、及び延伸フィルムや深絞りカップ等の成形体のガスバリア性をより向上させる観点から、α炭素(カルボキシル基に隣接する炭素原子)に3級水素を有するカルボン酸単位を含むことがより好ましく、前記一般式(III)で表される単位を含むことがより好ましい。
【0119】
前記一般式(III)中のRは、上述の通りであるが、置換又は無置換のアルキル基、もしくは置換又は無置換のアリール基が好ましく、置換又は無置換の炭素数1〜6のアルキル基、もしくは置換又は無置換の炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、置換又は無置換の炭素数1〜4のアルキル基、もしくは置換又は無置換のフェニル基が更に好ましい。
【0120】
好適なRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、メチル基、エチル基、2−メチルプロピル基、又はベンジル基がより好ましい。
【0121】
上記一般式(III)で表される単位を構成し得る化合物としては、アラニン、2−アミノ酪酸、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、tert−ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、2−フェニルグリシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン等のα−アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
上記一般式(IV)で表される単位を構成し得る化合物としては、3−アミノ酪酸等のβ−アミノ酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、前記一般式(V)で表される単位を構成し得る化合物としては、メチルマロン酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、上記一般式(III)、(IV)、又は(V)で表される単位を構成し得る化合物は、D体、L体、ラセミ体のいずれであってもよく、アロ体であってもよい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
これらの中でも、原料の入手性、及び延伸フィルムや深絞りカップ等の成形体のガスバリア性をより向上させる観点から、α炭素に3級水素を有するα−アミノ酸が好ましく、供給しやすさ、安価な価格、重合しやすさ、ポリマーの黄色度(YI)の低さといった観点から、アラニンがより好ましい。
【0124】
また、3級水素含有カルボン酸単位を構成し得る化合物の純度は、重合速度の遅延等の重合に及ぼす影響やポリマーの黄色度等の品質面への影響の観点から、好ましくは95%以上、より好ましくは98.5%以上、更に好ましくは99%以上である。
また、3級水素含有カルボン酸単位を構成し得る化合物中に不純物として含まれる硫酸イオン及びアンモニウムイオンのそれぞれの含有量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
【0125】
ポリアミド(A1)、(A2)それぞれにおける、3級水素含有カルボン酸単位の含有量は、延伸フィルムや深絞りカップ等の成形体のガスバリア性をより向上させる観点から、ポリアミド(A1)、(A2)それぞれの全構成単位に対して、好ましくは0.1〜30モル%、より好ましくは1〜20モル%、更に好ましくは2〜10モル%である。
【0126】
(ω−アミノカルボン酸単位)
本発明で用いるポリアミド(A1)、(A2)それぞれは、柔軟性等を向上させる観点から、下記一般式(A)で表されるω−アミノカルボン酸単位を更に含有してもよい。
【0127】
【化13】
【0128】
上記一般式(A)中、pは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは5〜12である。
【0129】
前記一般式(A)で表されるω−アミノカルボン酸単位を構成し得る化合物としては、炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸、炭素数5〜19のラクタム等が挙げられる。
炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸としては、6−アミノヘキサン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
炭素数5〜19のラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等を挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
ポリアミド(A1)、(A2)それぞれにおける、ω−アミノカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド(A1)、(A2)それぞれの全構成単位に対して、好ましくは0.1〜30モル%、より好ましくは1〜20モル%、更に好ましくは2〜10モル%である。
なお、前記のジアミン単位、ジカルボン酸単位、3級水素含有カルボン酸単位、及びω−アミノカルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。
【0131】
また、ω−アミノカルボン酸単位は、6−アミノヘキサン酸単位及び/又は12−アミノドデカン酸単位を含むことが好ましい。
6−アミノヘキサン酸単位及び12−アミノドデカン酸単位の合計含有量は、全ω−アミノカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0132】
[ポリアミド(A1)、(A2)の重合度(相対粘度)]
ポリアミドの相対粘度は、ポリアミドの重合度の指標となる。
ポリアミド(A1)、(A2)それぞれの相対粘度としては、成形品の外観や成形加工性の観点から、好ましくは1.5〜4.2、より好ましくは1.7〜4.0、更に好ましくは1.9〜3.8である。
なお、ここでいうポリアミドの相対粘度は、ポリアミド0.2gを、96質量%硫酸20mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0
【0133】
[ポリアミド(A1)、(A2)の末端アミノ基濃度]
ポリアミド(A1)、(A2)それぞれの末端アミノ基濃度は、得られるポリアミド樹脂組成物から延伸フィルム、深絞りカップ、PETボトル等の2次成形体へ成形する際の成形性を良好とし、得られる成形体のガスバリア性を向上させる観点から、好ましくは5〜150μeq/g、より好ましくは10〜100μeq/g、更に好ましくは15〜80μeq/gである。
なお、ポリアミド(A1)、(A2)の末端アミノ基濃度は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0134】
[ポリアミド(A1)、(A2)のガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)]
ポリアミド(A1)、(A2)それぞれのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは60〜140℃、より好ましくは70〜120℃、更に好ましくは80〜100℃である。
ポリアミド(A1)、(A2)それぞれの融点(Tm)は、好ましくは190〜270℃、より好ましくは210〜255℃、更に好ましくは220〜240℃である。
なお、ポリアミドのガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0135】
[ポリアミド(A1)、(A2)の製造方法]
本発明で用いるポリアミド(A1)、(A2)それぞれは、ジアミン単位を構成しうるジアミン成分、及び前記ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分とともに、必要により、3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる3級水素含有カルボン酸成分、ω−アミノカルボン酸単位を構成しうるω−アミノカルボン酸成分等のその他の単位を構成する成分とを重縮合させることで製造することができる。また、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。
また、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。
また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド(A)を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
ジアミン成分とジカルボン酸成分との配合量のモル比〔ジアミン成分/ジカルボン酸成分〕は、重合反応の観点から、通常49.5/50.5〜50.5/49.5であるが、ポリアミドの重合度を上がり易くし、ポリアミドの熱劣化を抑制する観点から、好ましくは49.7/50.3〜50.3/49.7、より好ましくは49.8/50.2〜50.2/49.8である。
当該モル比が上記範囲内であれば、ポリアミドの重合度が上がり易く、重合度を上げるための時間を短縮でき、ポリアミドの熱劣化を抑制することができる。
【0136】
ポリアミド(A1)、(A2)の重縮合方法としては、反応押出法、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの重縮合方法の中でも、常圧滴下法、加圧滴下法が好ましい。
反応温度はポリアミド(A1)、(A2)の融点以上であればよいが、出来る限り低い方が、ポリアミド(A1)、(A2)の黄色化やゲル化を抑制でき、安定した性状のポリアミド(A1)、(A2)が得られる。
具体的な反応温度としては、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜270℃である。
以下、本発明のポリアミド(A1)、(A2)の重縮合方法として好適な常圧滴下法、及び加圧滴下法について説明する。
【0137】
(常圧滴下法)
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、その他の成分と、次亜リン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムとを仕込み加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミドの融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行うことが好ましい。
常圧滴下法は、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う加圧塩法と比較すると、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、また、原料成分の気化の程度が低く、凝縮を必要としないため、反応速度の低下が少なく、工程時間を短縮できるため好ましい。
【0138】
(加圧滴下法)
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、その他の成分と、次亜リン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムとを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内圧力を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら、混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミドの融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行うことが好ましい。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミドの融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続することが好ましい。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド(A1)、(A2)を回収することができる。
【0139】
加圧滴下法は、加圧塩法と同様に、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、その他の成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。
加圧滴下法は、その他の成分の蒸散を防ぎ、更にその他の成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド(A1)、(A2)が得られるため好ましい。
さらに、加圧滴下法は、加圧塩法に比べて、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、常圧滴下法と同様に反応時間を短くできることから、ゲル化等を抑制し、黄色度が低いポリアミド(A1)、(A2)を得ることができる。
【0140】
(重合度を高める工程)
上記重縮合方法で製造されたポリアミド(A1)、(A2)は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。
固相重合で用いられる加熱装置としては、公知の装置を用いることができ、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好ましい。
これらの中でも、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進行させることが出来るとの観点から、回転ドラム式の加熱装置が好ましい。
【0141】
(リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物)
本発明のポリアミド(A1)、(A2)の重縮合においては、アミド化反応を促進する観点から、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの中でも、アミド化反応を促進する効果が高く、且つ着色防止効果にも優れるとの観点から、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が好ましく、次亜リン酸ナトリウムがより好ましい。
【0142】
リン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド(A1)、(A2)中それぞれのリン原子濃度換算で、好ましくは0.1〜1000ppm、より好ましくは1〜600ppmであり、更に好ましくは5〜400ppmである。
0.1ppm以上であれば、重合中にポリアミド(A1)、(A2)が着色しにくく透明性が高くなる。1000ppm以下であれば、ポリアミド(A1)、(A2)がゲル化しにくく、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入も低減でき、成形品の外観が良好となる。
【0143】
また、ポリアミド(A1)、(A2)それぞれの重縮合系内には、アミド化の反応速度を調整し、ポリアミドのゲル化を抑制する観点から、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属アルコキシドが好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
アルカリ金属酢酸塩としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられる。
アルカリ炭酸金属塩としては、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド等が挙げられる。
【0144】
アルカリ金属化合物とリン原子含有化合物との含有比率(モル比)〔アルカリ金属化合物/リン原子含有化合物〕は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、好ましくは0.05/1.0〜1.5/1.0、より好ましくは0.1/1.0〜1.2/1.0、更に好ましくは0.2/1.0〜1.1/1.0である。
【0145】
<その他の添加剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)、(2)それぞれは、要求される用途や性能に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、自由体積調整剤(B)及びポリシルセスキオキサン(B1)以外のその他の添加剤を含有することができる。
その他の添加剤としては、滑剤、結晶化核剤、白化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良材等の添加剤を含有してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物中のその他の添加剤の含有量は、添加剤の種類に応じて適宜設定されるが、ポリアミド(A)、(A2)それぞれ100質量部に対して、好ましくは0〜8質量部、より好ましくは0〜4質量部、更に好ましくは0〜1質量部である。
【0146】
<その他の樹脂>
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)、(2)それぞれは、ポリアミド(A)、(A2)以外のその他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂を配合することができ、具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル、樹脂組成物(2)においては上記ポリアミド(A2)以外の構造を有するポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び植物由来樹脂等が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物中のその他の樹脂の含有量は、ポリアミド(A)、(A2)それぞれ100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部、より好ましくは0〜10質量部、更に好ましくは0〜5質量部、より更に好ましくは0〜2質量部である。
【0147】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
ポリアミド樹脂組成物(1)、(2)それぞれは、上述のポリアミド(A2)もしくはポリアミド(A)及びポリシルセスキオキサン(B1)もしくは自由体積調整剤(B)を添加し、また、必要に応じて上述のその他の樹脂やその他の添加剤をさらに添加し、混合し、押出機等で溶融混練することにより製造することができる。
混合方法は、従来公知の方法を用いることができるが、コスト面及び熱履歴による樹脂の劣化を防止する観点から、乾式混合(ドライブレンド)が好ましい。
具体的な混合方法としては、例えば、上述の各成分をタンブラーに添加し、タンブラーを回転させることで混合する方法が挙げられる。
【0148】
なお、乾式混合後のポリアミドと添加剤との分級を防止する観点から、粘性のある液体を展着剤としてポリアミドに付着させた後、ポリシルセスキオキサン(B1)もしくは自由体積調整剤(B)等のその他の成分を添加し、混合してもよい。
展着剤としては、界面活性剤等が挙げられるが、これに限定されることなく公知のものを使用することができる。
また、事前に、ポリアミド又はその他の樹脂と、ポリシルセスキオキサン(B1)もしくは自由体積調整剤(B)やその他の添加剤とを押出機にて溶融混練したのちペレタイズして作成したマスターバッチを用いてもよい。
【0149】
<ポリアミド樹脂組成物の物性>
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)、(2)それぞれのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは60〜140℃、より好ましくは70〜120℃、更に好ましくは80〜100℃である。
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)、(2)それぞれの融点(Tm)は、好ましくは190〜270℃、より好ましくは210〜255℃、更に好ましくは220〜240℃である。
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)、(2)それぞれのDSC測定による昇温時の発熱ピーク温度(結晶化温度、Tch)は、2次成形体の成形性が良好な樹脂組成物とする観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上である。
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)、(2)それぞれのDSC測定による冷却時の発熱ピーク温度(結晶化温度、Tcc)は、好ましくは190℃以下である。
なお、ポリアミド樹脂組成物のTg、Tm、Tch、Tccの値は、当該ポリアミド樹脂組成物を成形してなる無延伸フィルムを試験サンプルとして用い、実施例に記載の方法により得られた値である。
【0150】
〔成形体〕
本発明の成形体は、上述の本発明のポリアミド樹脂組成物(1)又は(2)を成形してなるものである。
本発明の成形体としては、シート、フィルム等の包装材料、及びボトル、トレイ、カップ、チューブ、平袋やスタンディングパウチ等の各種パウチ等の包装容器等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物(1)又は(2)からなる成形体は、包装材料や包装容器等を構成する少なくとも一部の構成部材として使用することもできる。例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるフィルム状又はシート状の成形体を、ボトル、トレイ、カップ、チューブ、平袋やスタンディングパウチ等の各種パウチ等の包装容器を構成する少なくとも一部の構成部材(例えば、持ち手部材、容器本体部材、外表面部材、内表面部材等)として使用することができる。
本発明の成形体の厚みは、特に制限はないが、好ましくは1μm以上である。
【0151】
なお、本発明の成形体には、既に成形された、本発明のポリアミド樹脂組成物から成形されてなる成形体(1次成形体)を、さらに延伸及び/又は熱成形してなる2次成形体も含まれる。
そのような2次成形体としては、例えば、無延伸フィルム(1次成形体)を延伸及び/又は熱成形してなる延伸フィルム、プリフォーム(1次成形体)を延伸及び/又は熱成形してなるボトル形状の包装容器等が挙げられ、具体的には、PETボトル、延伸フィルム、及び深絞り容器等が挙げられる。
【0152】
本発明の成形体の製造方法については、特に限定されず、任意の方法を利用することができる。例えば、フィルム状又はシート状の包装材料、もしくはチューブ状の包装材料の成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させたポリアミド樹脂組成物を、付属した押出機から押し出して製造することができる。
また、トレイやカップ等の容器は射出成形機から金型中に溶融したポリアミド樹脂組成物を射出して製造する方法や、シート状の包装材料を真空成形や圧空成形等の成形法によって成形して得ることができる。包装材料や包装容器は上述の製造方法によらず、様々な方法を経て製造することが可能である。
【0153】
なお、上述の方法で得たシート、フィルム、プリフォーム等の成形体(1次成形体)を、さらに延伸及び/又は熱成形して、延伸フィルムやボトル形状の包装容器等の2次成形体に加工することもできる。
延伸フィルムは、例えば、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させたポリアミド樹脂組成物を付属した押出機から押し出して製造された無延伸フィルム(1次成形体)を、延伸装置を用いて、加熱しながら延伸することにより製造することができる。
また、ボトル形状の包装容器については、射出成形機から金型中に溶融したポリアミド樹脂組成物を射出してプリフォーム(1次成形体)を、延伸温度まで加熱してブロー延伸することにより製造することができる。
【0154】
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)から成形された成形体(以下、成形体(1)ともいう)は、酸素、二酸化炭素等に対するガスバリア性に優れ、特に二酸化炭素に対するガスバリア性に優れる。そのため、該成形体は、炭酸飲料、ビール等を保存するPETボトル等の食品包装容器として好適である。
【0155】
本発明の成形体(1)である、厚さ100μmの無延伸フィルムの23℃、0%RH(相対湿度)の雰囲気下で2週間保存後の二酸化炭素透過率は、好ましくは2.40(ml/atm・day・m2)以下、より好ましくは2.25(ml/atm・day・m2)以下、更に好ましくは1.40(ml/atm・day・m2)以下、より更に好ましくは0.95(ml/atm・day・m2)以下である。
【0156】
本発明の成形体(1)である、厚さ100μmの無延伸フィルムの23℃、60%RH(相対湿度)の雰囲気下で2週間保存後の酸素透過率は、好ましくは0.80(ml/atm・day・m2)以下、より好ましくは0.70(ml/atm・day・m2)以下、更に好ましくは0.67(ml/atm・day・m2)以下、より更に好ましくは0.65(ml/atm・day・m2)以下である。
【0157】
本発明の成形体(1)である、厚さ100μmの無延伸フィルムの23℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気下で2週間保存後の酸素透過率は、好ましくは1.84(ml/atm・day・m2)以下、より好ましくは1.80(ml/atm・day・m2)以下、更に好ましくは1.76(ml/atm・day・m2)以下、より更に好ましくは1.74(ml/atm・day・m2)以下である。
【0158】
本発明のポリアミド樹脂組成物(1)から成形された2次成形体である、無延伸フィルム(1次成形体)をさらに延伸及び/又は熱成形してなる厚さ15μmの延伸フィルムの23℃、60%RH(相対湿度)の雰囲気下で2週間保存後の酸素透過率は、好ましくは0.40(ml/atm・day・m2)以下、より好ましくは0.37(ml/atm・day・m2)以下、更に好ましくは0.33(ml/atm・day・m2)以下、より更に好ましくは0.31(ml/atm・day・m2)以下である。
【0159】
また、本発明の成形体(1)である、厚さ50μmの無延伸フィルムのヘイズは、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.0以下である。
【0160】
本発明のポリアミド樹脂組成物(2)から成形された成形体(以下、成形体(2)ともいう)は、酸素、二酸化炭素、水蒸気等のガスバリア性に優れ、透明性にも優れる。
本発明の成形体(2)である、厚さ100μmの無延伸フィルムの23℃、60%RH(相対湿度)の雰囲気下で2週間保存後の酸素透過率は、好ましくは0.80(ml/atm・day・m2)以下、より好ましくは0.70(ml/atm・day・m2)以下、更に好ましくは0.67(ml/atm・day・m2)以下である。
【0161】
本発明の成形体(2)である、厚さ100μmの無延伸フィルムの23℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気下で2週間保存後の酸素透過率は、好ましくは1.84(ml/atm・day・m2)以下、より好ましくは1.80(ml/atm・day・m2)以下、更に好ましくは1.76(ml/atm・day・m2)以下である。
【0162】
本発明の成形体(2)である、厚さ100μmの無延伸フィルムの40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気下で24時間保存後の水蒸気透過率は、好ましくは35(ml/day・m2)以下、より好ましくは33(ml/day・m2)以下、更に好ましくは32(ml/day・m2)以下である。
【0163】
本発明の成形体(2)である、厚さ50μmの無延伸フィルムのヘイズは、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.1以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0164】
本発明のポリアミド樹脂組成物(2)から成形された2次成形体である、無延伸フィルム(1次成形体)をさらに延伸及び/又は熱成形してなる厚さ15μmの延伸フィルムの23℃、60%RH(相対湿度)の雰囲気下で2週間保存後の酸素透過率は、好ましくは0.40(ml/atm・day・m2)以下、より好ましくは0.37(ml/atm・day・m2)以下、更に好ましくは0.33(ml/atm・day・m2)以下である。
【実施例】
【0165】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、ポリメタキシリレンアジパミドを「N−MXD6」ともいい、また共重合体を構成する単位に関して、必要に応じて、以下の略称を用いた。
・「MXDA」:メタキシリレンジアミン由来の単位
・「AA」:アジピン酸由来の単位
・「IPA」:イソフタル酸由来の単位
・「L−Ala」:L−アラニン由来の単位
【0166】
また、以下の製造例、実施例、及び比較例において、各物性は、下記に示す方法により測定した。
(1)ポリアミドの相対粘度
ポリアミド0.2gを精秤し、96質量%硫酸20mlに20〜30℃で撹拌溶解し、完全に溶解し溶液を調製した後、調製した当該溶液5mlを、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下速度(t)を測定した。また、同様にして、96質量%硫酸の落下速度(t0)も測定した。測定したt及びt0から、下記式(a)により、ポリアミドの相対粘度を算出した。
式(a):ポリアミドの相対粘度=t/t0
【0167】
(2)ポリアミドの末端アミノ基濃度
ポリアミド0.5gを精秤し、フェノール/エタノール=4/1(体積比)の混合溶液30mlに20〜30℃で撹拌溶解させ、完全に溶解し溶液を調製した後、撹拌しながら、メタノール5mlで容器内壁を洗い流した後、0.01mol/L塩酸水溶液を用いて中和滴定して、末端アミノ基濃度〔NH2〕(単位:μ当量/g)を算出した。
【0168】
(3)ポリアミド及びポリアミド樹脂組成物のTg、Tm、Tch、Tcc
示差走査熱量計(島津製作所(株)製、製品名「DSC−60」)を用いて、昇温速度10℃/分で窒素気流下にて10℃〜260℃まで昇温した後、ドライアイスで急冷し、再度、昇温速度10℃/分で窒素気流下にて10℃〜260℃まで昇温後、5分間保存し、更に−5℃/分で120℃まで降温させて、DSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ポリアミドのガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を測定した。
また、ポリアミド樹脂組成物については、当該樹脂組成物からなる厚さ100μmの無延伸フィルムを用いて、Tg、Tmに加え、昇温時の発熱ピーク温度(結晶化温度)(Tch)及び冷却時の発熱ピーク温度(結晶化温度)(Tcc)も測定した。
【0169】
(4)ポリアミド樹脂組成物の陽電子消滅法により求められる自由体積
100μmの無延伸フィルムを10枚重ねて固定したものを試験サンプルとし、日本原子力研究開発機構の高崎量子応用研究所の高時間分解能陽電子寿命測定装置を用いて、25℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で、オルソポジトロニウム(o−Ps)の寿命τ3を測定した。そして、測定したτ3の値を基に、前記式(1)から、ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物の空孔半径Rを求め、ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物の陽電子消滅法により求められる自由体積(=4/3πR3)を算出した。
なお、本試験で用いた無延伸フィルムは、DSCの昇温結晶化発熱量が20〜40J/gの範囲にあるフィルムであり、当該範囲であれば、フィルムの結晶化度がほぼ同じであることの目安となる。
【0170】
(5)無延伸フィルムの二酸化炭素透過率(CO2TR)
ガス透過率測定装置(東洋精機製作所製、製品名「ガス透過率測定装置」)を用いて、JIS−K7126−1:2006差圧法(ガス圧力:100KPa)に準じて、ポリアミド樹脂組成物からなる厚さ100μmの無延伸フィルムの二酸化炭素透過率(CO2TR)を測定した。
なお、測定に際し、上記の無延伸フィルムを23℃、0%RH(相対湿度)の雰囲気下にて保存し、保存しながら当該無延伸フィルムの二酸化炭素透過率を継続して測定し、2週間保存後の測定値を、当該雰囲気下での無延伸フィルムの二酸化炭素透過率とした。
【0171】
(6)無延伸フィルム及び延伸フィルムの酸素透過率(OTR)
酸素透過率測定装置(MOCON社製、製品名「OX−TRAN 2/21SH」)を用いて、ASTM D3985に準じて、ポリアミド樹脂組成物からなる厚さ100μmの無延伸フィルム及び厚さ15μmの延伸フィルムの酸素透過率(OTR)を測定した。
なお、測定に際し、無延伸フィルムについては、23℃、60%RH(相対湿度)の雰囲気下にて、及び23℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気下にて、それぞれ保存し、保存しながらそれぞれの無延伸フィルムの酸素透過率を継続して測定し、2週間保存後の測定値を、各雰囲気下での無延伸フィルムの酸素透過率とした。
また、延伸フィルムについては、23℃、60%RH(相対湿度)の雰囲気下にて保存し、保存しながら当該延伸フィルムの酸素透過率を継続して測定し、2週間保存後の測定値を、当該雰囲気下での延伸フィルムの酸素透過率とした。
【0172】
(7)無延伸フィルムのヘイズ(Haze)
曇値測定装置(日本電色工業社製、製品名「COH−300A」)を用いて、JIS−K−7105に準じて、ポリアミド樹脂組成物からなる厚さ50μmの無延伸フィルムを、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で1週間保存後、当該無延伸フィルムのヘイズを算出した。
【0173】
(8)無延伸フィルムの水蒸気透過率(WVTR)
水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、製品名「PERMA−TRAN」)を用いて、40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気下で継続して測定し、24時間後の測定値を、当該環境下でのポリアミド樹脂組成物からなる厚さ100μmの無延伸フィルムの水蒸気透過率(WVTR)とした。
【0174】
製造例1(ポリアミドNo.1の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽、ポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、及びストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸13000g(88.95mol)、次亜リン酸ナトリウム11.29g(0.11mol)、酢酸ナトリウム5.85g(0.07mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、反応容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。
170℃に到達後、反応容器内の溶融した原料に対し、滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン12040g(88.42mol)の滴下を開始し、反応容器内の圧力を0.4MPaGに保ち、生成する縮合水を系外へ除きながら、反応容器内を連続的に260℃まで昇温した。
メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応容器内を80kPaGに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応容器内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。
次にこのペレットを、ステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5min-1で回転させた。そして、十分に窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温(23℃)から150℃まで昇温した。反応系内温度が150℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、さらに反応系内の温度を110分間で190℃まで昇温した。反応系内の温度が180℃に達した時点から、同温度にて180分間、固相重合反応を継続した。
反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて反応系内の温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出すことにより、MXDA/AA共重合体(MXDA:AA=49.8:50.2(mol%))である「ポリアミドNo.1」を得た。
【0175】
製造例2(ポリアミドNo.2の製造)
原料として、アジピン酸12120g(82.94mol)、イソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)880g(5.29mol)、次亜リン酸ナトリウム11.25g(0.11mol)、酢酸ナトリウム5.83g(0.07mol)、及びメタキシリレンジアミン11940g(87.7mol)を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、MXDA/AA/IPA共重合体(MXDA:AA:IPA=49.8:47.2:3.0(mol%))である「ポリアミドNo.2」を得た。
【0176】
製造例3(ポリアミドNo.3の製造)
製造例1で用いたものと同じ内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸13000g(88.95mol)、L−アラニン689g(7.74mol)、次亜リン酸ナトリウム22.35g(0.21mol)、酢酸ナトリウム13.84g(0.17mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、反応容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。
170℃に到達後、反応容器内の溶融した原料に対し、滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン12110g(88.94mol)の滴下を開始し、反応容器内の圧力を0.4MPaGに保ち、生成する縮合水を系外へ除きながら、反応容器内を連続的に240℃まで昇温した。
メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応容器内を80kPaGに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応容器内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。
次にこのペレットを、ステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5min-1で回転させた。そして、十分に窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温(23℃)から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、さらに反応系内の温度を110分間で180℃まで昇温した。反応系内の温度が180℃に達した時点から、同温度にて180分間、固相重合反応を継続した。
反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて反応系内の温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出すことにより、MXDA/AA/L−Ala共重合体(MXDA:AA:L−Ala=47.9:47.9:4.2(mol%))である「ポリアミドNo.3」を得た。
【0177】
以上のようにして合成したポリアミドNo.1〜3について、上述の方法に基づいて、ポリアミドの相対粘度、末端基濃度、ガラス転移温度(Tg)、及び融点(Tm)を測定した。その結果を表1に示す。
【0178】
【表1】
【0179】
[ポリアミド樹脂組成物(1)]
以下、ポリアミド樹脂組成物(1)について、以下の実施例1A〜9A、比較例1A〜6Aを用いてさらに詳細に説明する。
実施例1A〜9A、比較例1A〜6A
表2に示す種類のポリアミド(A)100質量部に対し、表2に示す種類及び添加量の自由体積調整剤(B)を添加し、ドライブレンドして、ポリアミド樹脂混合物(1)を調製した。なお、比較例1Aでは、自由体積調整剤(B)に該当する成分は配合していない。
そして、調製したポリアミド樹脂混合物を、直径25mmの2軸フルフライトスクリュー、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた単軸フィルム製造装置に投入し、265℃で押出して、厚さ100μm及び厚さ50μmのポリアミド樹脂組成物からなる無延伸フィルムをそれぞれ作製した。
また、上記と同様にして、厚さ235〜245μmのポリアミド樹脂組成物からなる無延伸フィルムを作製し、この無延伸フィルムを、二軸延伸装置(テンター法、東洋精機製作所(株)製)により、延伸温度130℃でMD方向に4倍、TD方向に4倍に延伸し、210℃で30秒間、熱固定して、2次成形体である厚さ15μmの延伸フィルムを作製した。
【0180】
表2に記載の実施例及び比較例で使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
<ポリアミド(A1)>
・「No.1」:製造例1で合成したポリアミドNo.1。
・「No.2」:製造例2で合成したポリアミドNo.2。
・「No.3」:製造例3で合成したポリアミドNo.3。
【0181】
<自由体積調整剤(B)又は添加剤>
・「B−1」:ドデカフェニルPOSS(登録商標)(製品名、ハイブリッドケミカル社製、下記式(b1)で表される化合物、分子量(式量):1550.26)
・「B−2」:トリシラノフェニルPOSS(登録商標)(製品名、ハイブリッドケミカル社製、下記式(b2)で表される化合物、分子量(式量):931.34)
・「タルク」:DG−5000(製品名、松村産業(株)製、粉状タルク)
・「ソルビトール」:Millad NX8000(製品名、Milliken製、ビス(N−プロピルベンジリデン)ソルビトール)
【0182】
【化14】
【0183】
【化15】
【0184】
以上の実施例及び比較例で作製した無延伸フィルム及び延伸フィルムを用いて、上述の方法に基づき、ポリアミド樹脂組成物のTg、Tch、Tm、Tcc、ポリアミド樹脂組成物の自由体積、無延伸フィルムの二酸化炭素透過率及び酸素透過率、延伸フィルム(2次成形体)の酸素透過率、並びに、無延伸フィルムのヘイズをそれぞれ測定した。これらの測定結果を表2に示す。
【0185】
【表2】
【0186】
表2の比較例1A、5A、6Aの結果より、「ポリアミドNo.1〜3」のポリアミド(A1)のみの自由体積の値(Vo)は、いずれも0.0554nm3であった。実施例2A、6A、比較例3A、4Aにおいて、ポリアミド(A)100質量部に対し、各種添加剤0.100質量部を配合してなる樹脂組成物の自由体積の値(V)及びV/Voの比は、表2のようになった。当該V/Voの値が0.990以下であった樹脂組成物に使用した「B−1(ドデカフェニルPOSS)」、「B−2(トリシラノフェニルPOSS)」は、本発明でいう「自由体積調整剤(B)」に該当する。
一方、比較例3A、4Aで使用した「タルク」、「ソルビトール」は、上記V/Voの値から、「自由体積調整剤(B)」には該当しない添加剤である。
【0187】
表2より、実施例1A〜9Aのポリアミド樹脂組成物(1)は、自由体積が0.0545nm3以下に調整されている。そのため、当該樹脂組成物(1)を成形してなる無延伸フィルムは、比較例1A〜6Aで作製した無延伸フィルムに比べ、二酸化炭素透過率、酸素透過率が低く、優れたガスバリア性を有することが分かる。また、延伸フィルムについても、酸素透過率が低い結果が得られた。
なお、比較例3Aでは、無延伸フィルムの昇温時の発熱ピーク温度(結晶化温度、Tch)が下がり、結晶化速度が加速したために、延伸フィルムを作成することができなかった。また、比較例4のソルビトールをポリアミドに添加した樹脂組成物からなる成形体は、高湿度下の環境(23℃、90%RH)においては、酸素に対するガスバリア性が極端に悪化した。
【0188】
図1は、実施例及び比較例で調製したポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積と、当該樹脂組成物(1)を成形してなる無延伸フィルムの二酸化炭素透過率との関係を示したグラフである。当該グラフから、ポリアミド樹脂組成物(1)の自由体積が0.0545nm3以下であると、無延伸フィルムの二酸化炭素透過率が減少しており、二酸化炭素に対するガスバリア性が向上していることが分かる。また、二酸化炭素透過率を減少させ、二酸化炭素に対するガスバリア性の向上効果は、ポリアミド樹脂組成物の自由体積が0.0535nm3以下になると、更に顕著に発現されていることが分かる。
【0189】
[ポリアミド樹脂組成物(2)]
次に、ポリアミド樹脂組成物(2)について、以下の実施例1B〜12B、比較例1B〜4B、参考例1Bを用いてさらに詳細に説明する。
実施例1B〜12B、比較例1B、参考例1B
直径25mmの2軸フルフライトスクリュー、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた単軸フィルム製造装置を用いて、無延伸フィルムを作製した。
まず、表3に示す種類のポリアミド100質量部に対して、表3に示す種類及び添加量のポリシルセスキオキサン(B)を添加してドライブレンドしたものを、上記装置に投入し、265℃で押出して、厚さ100μm及び厚さ50μmの無延伸フィルムをそれぞれ作製した。
また、上記と同様にして、厚さ235〜245μmの無延伸フィルムを作製し、この無延伸フィルムを、二軸延伸装置(テンター法、東洋精機製作所(株)製)により、延伸温度130℃でMD方向に4倍、TD方向に4倍に延伸し、210℃で30秒間、熱固定して、2次成形体である厚さ15μmの延伸フィルムを得た。
なお、実施例1B〜12B、及び比較例1B、参考例1Bにおいては、ポリシルセスキオキサン(B)として、上記化合物B−1、B−2、及び以下の化合物B−3を用いた。
【0190】
B3:SR−23(製品名、小西化学工業(株)製、下記式(b3)で表される化合物、重量平均分子量:500〜1500)
【化16】
nは正の整数を表す
【0191】
比較例2B
ポリシルセスキオキサン(B)を添加しなったこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ100μm及び厚さ50μmの無延伸フィルム、並びに、2次成形体である厚さ15μmの延伸フィルムをそれぞれ作製した。
【0192】
比較例3B
ポリシルセスキオキサン(B)の代わりに、粉状タルク(松村産業(株)製、製品名「DG−5000」)を0.100質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ100μm及び厚さ50μmの無延伸フィルムをそれぞれ作製した。なお、2次成形体である延伸フィルムの作製を試みたが、延伸できず、作製することができなかった。
【0193】
比較例4B
ポリシルセスキオキサン(B)の代わりに、ビス(N−プロピルベンジリデン)ソルビトール(Milliken製、製品名「Millad NX8000」)を0.100質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ100μm及び厚さ50μmの無延伸フィルム、並びに、2次成形体である厚さ15μmの延伸フィルムをそれぞれ作製した。
【0194】
以上の実施例,比較例,及び参考例で作製した無延伸フィルム及び延伸フィルムを用いて、上述の方法に基づき、無延伸フィルム(ポリアミド樹脂組成物(2))のTg、Tch、Tm、Tcc、厚さ100μmの無延伸フィルムの酸素透過率及び水蒸気透過率、厚さ50μmの無延伸フィルムのヘイズ、並びに、厚さ15μmの延伸フィルムの酸素透過率をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。
【0195】
【表3】
【0196】
実施例1B〜12Bで作製した無延伸フィルムは、ポリシルセスキオキサン(B1)を添加せずに作製した比較例2Bのフィルムと比べて、酸素透過及び水蒸気透過の抑制効果に優れ、ヘイズも良好であった。また、2次成形体である延伸フィルムにおいても、酸素透過の抑制効果に優れた結果となった。
なお、成分(B)の添加量が少ない樹脂組成物から成形した比較例1Bのフィルムでは、酸素透過及び水蒸気透過の添加効果が発現されなかった。
また、ポリシルセスキオキサン(B1)の添加量の多い樹脂組成物から成形した参考例1Bのフィルムは、ヘイズが悪化した。
さらに、成分(B1)の代わりにタルクを添加した樹脂組成物を用いた比較例3Bでは、無延伸フィルムの昇温時の発熱ピーク温度(結晶化温度、Tch)が下がり、結晶化速度が加速したために、延伸フィルムを作成することができなかった。
加えて、成分(B1)の代わりにベンジリデンソルビトール系の結晶化核剤を添加した樹脂組成物から成形した比較例4Bのフィルムは、23℃、90%RH(相対湿度)の環境下での酸素透過率の値及び水蒸気透過率の値も高い。そのため、高湿度下での酸素透過及び水蒸気透過の抑制効果が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明の第1の実施態様に係るポリアミド樹脂組成物(1)は、二酸化炭素や酸素等に対するガスバリア性(特に、二酸化炭素に対するガスバリア性)に優れた成形体の形成材料となり得る。
そのため、本発明のポリアミド樹脂組成物(1)を成形してなる成形体は、特に二酸化炭素のガスバリア性が優れているため、炭酸飲料、ビール等を保存するPETボトル等の食品包装用材料として好適である。
本発明の第2の実施態様に係るポリアミド樹脂組成物(2)は、結晶化温度が高いため、延伸フィルムや深絞りカップ等への成形性を低下させず、透明性が良好で、酸素や水蒸気等のガスバリア性(特に高湿度環境下でのガスバリア性)に優れた成形体の形成材料となり得る。
そのため、本発明のポリアミド樹脂組成物(2)を成形してなる成形体は、酸素や水蒸気等のバリア性、特に高湿度環境下でのガスバリア性に優れているため、ボイルやレトルト処理といった加熱殺菌処理後のガスバリア性が要求される食品包装用材料として好適である。
図1