特許第6439739号(P6439739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439739
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】燃圧センサ診断装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20181210BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20181210BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20181210BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   B60W20/50ZHV
   B60K6/445
   B60W10/30 900
   F02D45/00 345K
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-83871(P2016-83871)
(22)【出願日】2016年4月19日
(65)【公開番号】特開2017-193226(P2017-193226A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和弘
【審査官】 神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−238202(JP,A)
【文献】 特開2006−254628(JP,A)
【文献】 特開2001−107814(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/007772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00〜20/50
B60K 6/20〜 6/547
F02D 43/00〜45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力により駆動されて、エンジンの燃料噴射弁に燃料を供給する電動式の燃料供給装置と、同燃料供給装置が前記燃料噴射弁に供給する燃料の圧力である燃料供給圧を規定の上限圧以下に保持する調圧部と、前記エンジンにより駆動されて、前記燃料供給装置から吸引した燃料を加圧して圧送する機械式の高圧燃料ポンプと、を備える燃料供給システムに設けられて前記燃料供給圧を検出する燃圧センサの診断を行う燃圧センサ診断装置において、
前記エンジンは、車両を走行させるための動力源として同エンジンとモータとを備えるとともに同エンジンの回転を停止して前記モータの動力による電動走行を行うハイブリッド車両に搭載されており、
前記燃圧センサの正常時における、前記燃料供給圧が前記上限圧であるときの同燃圧センサの出力の想定範囲を正常範囲としたとき、
当該燃圧センサ診断装置は、前記ハイブリッド車両の前記電動走行中に、前記燃料供給装置を駆動するとともに、同燃料供給装置の駆動開始後に前記燃圧センサの出力が前記正常範囲内の値となっているか否かを判定し、その判定の結果に基づき同燃圧センサの異常の有無を診断する診断部を備える
ことを特徴とする燃圧センサ診断装置。
【請求項2】
前記診断部は、前記診断のための前記燃料供給装置の駆動を、前記ハイブリッド車両の走行速度が規定値以上であることを条件に行う
請求項1に記載の燃圧センサ診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記燃圧センサの異常の有無の診断を、複数回の前記判定の結果に基づいて行う
請求項1又は2に記載の燃圧センサ診断装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記燃料供給装置の駆動開始後に、規定の周期毎に前記判定を行うとともに、同判定の回数が規定回数に達する前に、前記燃圧センサの出力が前記正常範囲内の値となっていないと判定された回数である逸脱回数が規定の異常診断回数に達した場合に前記燃圧センサは異常であると診断し、前記逸脱回数が前記異常診断回数に達する前に、前記判定の回数が前記規定回数に達した場合に前記燃圧センサは正常であると診断する
請求項3に記載の燃圧センサ診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの回転を停止してのモータの動力による電動走行を行うハイブリッド車両に搭載されたエンジンの燃料供給システムに設置されて、燃料噴射弁に供給する燃料の圧力を検出する燃圧センサの診断を行う燃圧センサ診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料供給システムの診断装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同文献に記載の診断装置が適用される燃料供給システムは、エンジンの動力を受けて燃料を圧送する機械式の燃料ポンプと、同燃料ポンプが圧送した燃料を蓄えて燃料噴射弁に供給する高圧燃料配管と、を備えている。また、同燃料供給システムは、高圧燃料配管内の燃料の圧力、すなわち燃料ポンプが燃料噴射弁に供給する燃料の圧力(以下、燃料供給圧と記載する)を検出する燃圧センサを備えている。こうした燃料ポンプ、高圧燃料配管、及び燃圧センサを備える同燃料供給システムでは、燃圧センサの検出結果に基づき、燃料供給圧が目標とする値となるように、燃料ポンプの燃料圧送量をフィードバック制御している。そして、特許文献1に記載の燃圧センサ診断装置は、エンジンの燃料カット中の上記フィードバック制御の制御状態に基づいて、燃料供給システムの異常の有無を診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−185158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料供給システムにおける診断として、燃圧センサによる燃料供給圧の検出結果と実際の燃料供給圧とが整合しているか否かの診断、いわゆる同燃圧センサのラショナリティの診断を行うことがある。上記従来の診断装置では、エンジンの燃料カット中に燃料供給システムの診断を行っているが、こうした燃圧センサのラショナリティの診断も、燃料カット中に行うことが望ましいものとなっている。すなわち、エンジンの運転中は、燃料噴射毎に高圧燃料配管内の燃料圧力が下がり、燃料供給圧が絶えず変動しているため、燃圧センサの検出結果と実際の燃料供給圧との対応の確認が困難となる。これに対して、燃料カット中は、燃料噴射が停止されており、同燃料噴射に伴う燃料供給圧の変動が生じないため、燃圧センサの検出結果と実際の燃料供給圧との対応を容易且つ的確に確認することができる。
【0005】
ところが、エンジンの回転を停止してのモータによる電動走行を行うハイブリッド車両の場合、以下に記載するように、エンジンにおいて燃料カットが行われる頻度が低いため、燃料カット中に診断を行うとすれば、燃圧センサのラショナリティの診断機会が限られてしまう。すなわち、燃料カット中は、一定以上のエンジン回転数を維持して復帰時のエンジンストールを防止する必要があり、燃料カット中も、エンジン回転数の維持に一定のエネルギが費やされる。このとき、モータによる電動走行に切り替えてしまえば、エンジン回転数の維持のためのエネルギ消費が不要となり、車両のエネルギ効率が高くなる。そのため、電動走行が可能なハイブリッド車両では、燃料カットの実施の頻度は低くなっており、燃圧センサの診断を燃料カット中に行うとすれば、診断の機会が限定されてしまう。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、電動走行を行うハイブリッド車両における燃圧センサの診断機会を好適に確保することのできる燃圧センサ診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する燃圧センサ診断装置は、電力により駆動されて、エンジンの燃料噴射弁に燃料を供給する電動式の燃料供給装置と、同燃料供給装置が燃料噴射弁に供給する燃料の圧力である燃料供給圧を規定の上限圧以下に保持する調圧部と、を備える燃料供給システムに設けられて、上記燃料供給圧を検出する燃圧センサの診断を行う。なお、上記エンジンは、車両を走行させるための動力源として同エンジンとモータとを備えるとともに同エンジンの回転を停止してモータの動力による電動走行を行うハイブリッド車両に搭載されている。ここで、燃圧センサの正常時における、燃料供給圧が上記上限圧であるときの同燃圧センサの出力の想定範囲を正常範囲とする。想定範囲は、例えば、燃料供給圧が上限圧であるときの正常な燃圧センサの出力の想定値から、検出精度要求などにより定められた許容誤差範囲内の値の範囲とするとよい。このとき、上記燃圧センサ診断装置は、ハイブリッド車両の電動走行中に、燃料供給装置を駆動するとともに、同燃料供給装置の駆動開始後に燃圧センサの出力が上記正常範囲内の値となっているか否かを判定し、その判定の結果に基づき同燃圧センサの異常の有無を診断する診断部を備えている。
【0008】
こうした燃圧センサ診断装置において診断部は、ハイブリッド車両の電動走行中に、電動式の燃料供給装置を駆動する。このときのエンジンの回転は停止しており、燃料噴射弁の燃料噴射による燃料消費がないため、燃料供給圧は、燃料供給装置による燃料噴射弁への燃料供給に応じて次第に上昇する。ただし、この燃料供給システムには、燃料供給圧を上限値以下に保持する調圧部が設けられており、このときの燃料供給圧は、上限圧に達するまでは上昇し、その後は上限圧に保持される。よって、上記燃料供給装置の駆動を開始してからある程度の時間が経過した後の燃料供給圧は上限圧となり、燃圧センサが正常に機能していれば、そのときの同燃圧センサの出力は、上限圧に相当する値となる筈である。
【0009】
上記燃圧センサ診断装置において診断部は、上記燃料供給装置の駆動開始後に、燃圧センサの出力が正常範囲内の値となっているか否かを判定し、その判定の結果に基づいて同燃圧センサの異常の有無を診断する。上記のように、燃圧センサが正常であれば、燃料供給装置の駆動開始後の同燃圧センサの出力はいずれ正常範囲内の値となる筈である。そのため、燃圧センサの出力が正常範囲内の値となっていれば、同燃圧センサの出力と実際の燃料供給圧とが整合していると判断することができる。よって、上記判定の結果から燃圧センサの異常の有無を診断することができる。
【0010】
上記態様によれば、エンジンの回転が停止する電動走行中にも、燃圧センサの診断が可能となる。そして、電動走行を行うハイブリッド車両において、燃料カットよりも高頻度の実施が期待できる電動走行中に診断を行えば、同診断の機会を確保し易くなる。したがって、上記燃圧センサ診断装置によれば、電動走行を行うハイブリッド車両での燃圧センサの診断機会を好適に確保することができる。
【0011】
なお、電動走行中に診断を行わない場合には、エンジンの回転停止に応じて燃料供給装置も停止する。そのため、電動走行中に、診断のために燃料供給装置が駆動されると、同燃料供給装置の駆動音が乗員に違和を感じさせる虞がある。一方、車両の走行に伴う、風切音やロードノイズなどの暗騒音は、走行速度の上昇と共に大きくなる。そこで、上記燃圧センサ診断装置における診断部が、診断のための燃料供給装置の駆動を、ハイブリッド車両の走行速度が規定値以上であることを条件に行うようにすれば、診断時の燃料供給装置の駆動音を暗騒音に紛れさせて、同駆動音による違和を感じ難くすることができる。
【0012】
上記燃圧センサ診断装置において診断部は、燃圧センサの出力が規定の正常範囲内の値となっているか否かの判定結果に基づき、燃圧センサの異常の有無を診断している。ただし、ハイブリッド車両の電力使用量が急増して燃圧センサの入力電圧が一時的に降下した場合などには、燃圧センサの出力にも一時的な乱れが生じることがある。そのため、一回きりの判定結果に基づき診断を行うと、一時的な乱れが生じたときの出力を用いた判定の結果がそのまま診断結果に反映されてしまい、誤診断を招く虞がある。これに対しては、診断部が、燃圧センサの異常の有無の診断を、複数回の判定の結果に基づいて行うようにすることで、そうした誤診断を抑えることができる。
【0013】
上記のような複数回の判定結果に基づく診断の具体的な態様としては、例えば、次の態様がある。すなわち、上記診断部が、燃料供給装置の駆動開始後に、規定の周期毎に上記判定を行い、次のように正常/異常の診断を行うようにする。すなわち、上記判定の回数が規定回数に達する前に、燃圧センサの出力が正常範囲内の値となっていないと判定された回数である逸脱回数が規定の異常診断回数に達した場合、燃圧センサは異常であると診断する。また、逸脱回数が異常診断回数に達する前に、上記判定の回数が上記規定回数に達した場合、燃圧センサは正常であると診断する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】燃圧センサ診断装置の一実施形態が搭載されたハイブリッド車両の駆動システムの構成を模式的に示す図。
図2】同燃圧センサ診断装置が診断を行う燃圧センサが設けられた燃料供給システムの構成を模式的に示す図。
図3】同燃圧センサ診断装置の構成を模式的に示す図。
図4】同燃圧センサ診断装置において実行される診断処理の処理手順の一部を示すフローチャート。
図5】同診断処理の処理手順の残りの部分を示すフローチャート。
図6】同燃圧センサ診断装置による燃圧センサ診断の実施態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、燃圧センサ診断装置の一実施形態を、図1図6を参照して詳細に説明する。本実施形態の燃圧センサ診断装置が診断を行う燃圧センサは、外部電源からの高圧バッテリ充電が可能なプラグイン方式のハイブリッド車両に搭載されたエンジンの燃料系に設置されている。
【0016】
図1に示すように、ハイブリッド車両10の駆動システムは、燃料を燃焼して動力を発生するエンジン11を備える。また、同駆動システムは、給電に応じて動力を発生するとともに、外部から動力を受けて発電する、2つの発電電動機(第1発電電動機12、第2発電電動機13)を備える。エンジン11、第1発電電動機12、及び第2発電電動機13は、遊星歯車により構成された動力分割機構14を介して相互に駆動連結されている。さらに、動力分割機構14の出力側は、減速機構15を介して、ハイブリッド車両10の駆動輪16に駆動連結されている。
【0017】
第1発電電動機12及び第2発電電動機13はそれぞれ、インバータ17を介して高圧バッテリ18に電気接続されている。インバータ17は、高圧バッテリ18からの直流電流を交流電流に変換して、第1発電電動機12や第2発電電動機13に供給するとともに、第1発電電動機12や第2発電電動機13が発電した交流電流を直流電流に変換して高圧バッテリ18に供給する。なお、このハイブリッド車両10には、高圧バッテリ18を外部電源に接続するための充電用インレット18aが設けられている。
【0018】
こうしたハイブリッド車両10において、第1発電電動機12は主に、エンジン11の動力による発電を行う。また、第1発電電動機12は、エンジン11の始動時にはスタータモータとして機能する。
【0019】
一方、第2発電電動機13は主に、ハイブリッド車両10の走行のための動力を発生する走行用のモータとしての役割を担う。これに加え、第2発電電動機13は、車両減速時には、回生ブレーキによる発電を行ってもいる。こうしたハイブリッド車両10では、第2発電電動機13が、車両を走行させるための動力源としてのモータとして機能する。
【0020】
さらに、ハイブリッド車両10の駆動システムは、パワーコントロールユニット19aを備える。パワーコントロールユニット19aは、ハイブリッド車両10の運転状況や高圧バッテリ18の充電状況に応じてエンジン11、第1発電電動機12及び第2発電電動機13の各要求出力をそれぞれ算出して、エンジンコントロールユニット19b及びMGコントロールユニット19cにそれぞれ送信する。エンジンコントロールユニット19bは、受信したエンジン11の要求出力に従って、エンジン11の出力を制御する。また、MGコントロールユニット19cは、受信した第1発電電動機12及び第2発電電動機13の各要求出力に従って、インバータ17を駆動して、第1発電電動機12及び第2発電電動機13を制御する。なお、第1発電電動機12及び第2発電電動機13は、要求出力が正の値である場合には、力行運転されて動力を発生し、要求出力が負の値である場合には、回生運転されて発電を行う。
【0021】
なお、このハイブリッド車両10では、発進時や低速走行時にあって、高圧バッテリ18の充電量が規定値以上の場合、エンジン11の回転を停止し、高圧バッテリ18からの給電により第2発電電動機13が発生した動力によって走行を、すなわち電動走行を行う。このときのパワーコントロールユニット19aは、エンジン11及び第1発電電動機12の要求出力を0とするとともに、ハイブリッド車両10の全駆動力が第2発電電動機13の動力のみで賄われるように、同第2発電電動機13の要求出力を設定する。なお、パワーコントロールユニット19aは、電動走行を行っている期間、電動走行中であることを示すEVモード信号Sevをエンジンコントロールユニット19bに送信している。
【0022】
図2に、エンジン11の燃料供給システムの構成を示す。エンジン11の各気筒には、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁であるポート噴射弁20と、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁である筒内噴射弁21とが、それぞれ設けられている。同図には、エンジン11が4つの気筒を備える場合を示しており、ポート噴射弁20及び筒内噴射弁21は、それぞれ4つずつ図示されている。こうしたエンジン11には、ポート噴射弁20に燃料を供給する低圧側燃料供給システム22と、筒内噴射弁21に燃料を供給する高圧側燃料供給システム23との2系統の燃料供給システムが設けられている。
【0023】
低圧側燃料供給システム22は、電動フィードポンプ24と、プレッシャレギュレータ25と、を備える。電動フィードポンプ24は、上記高圧バッテリ18(図1)よりも出力電圧が低い低圧バッテリ24aからの給電により駆動して、燃料タンク26に蓄えられた燃料を、燃料中の不純物を濾過するフィルタ27を介して汲み上げる。そして、電動フィードポンプ24は、その汲み上げた燃料を、低圧燃料通路28を介して、各気筒のポート噴射弁20が接続された低圧側デリバリパイプ29に供給する。低圧側デリバリパイプ29には、内部に蓄えられた燃料の圧力を、すなわち電動フィードポンプ24が各ポート噴射弁20に供給する燃料の圧力(燃料供給圧)を検出するための低圧側燃圧センサ30が設けられている。この低圧側燃圧センサ30は、燃料供給圧に応じて電圧が変化する検出信号を出力しており、この検出信号の電圧(以下、出力電圧Vpfと記載する)から燃料供給圧を確認できるようになっている。
【0024】
また、プレッシャレギュレータ25は、低圧燃料通路28内の燃料の圧力が規定のレギュレータ設定圧P1を超えたときに開弁して、同低圧燃料通路28内の燃料を燃料タンク26に戻す。これにより、プレッシャレギュレータ25は、低圧燃料通路28を通じて電動フィードポンプ24がポート噴射弁20に供給する燃料の圧力を、規定の上限圧であるレギュレータ設定圧P1以下に保持している。なお、以下では、ポート噴射弁20に対する電動フィードポンプ24の燃料供給圧を、フィード圧PFと記載する。
【0025】
一方、高圧側燃料供給システム23は、機械式の高圧燃料ポンプ31を備える。高圧燃料ポンプ31は、エンジン11の動力により駆動して、低圧燃料通路28から吸引した燃料を加圧して、各気筒の筒内噴射弁21が接続された高圧側デリバリパイプ32に圧送する。
【0026】
より詳しくは、高圧燃料ポンプ31は、プランジャ31a、加圧室31b、電磁スピル弁31c、及びチェック弁31dを備える。プランジャ31aは、エンジン11のカムシャフト11aに設けられたカム11bにより往復駆動され、その往復駆動に応じて加圧室31bの容積を変化させる。電磁スピル弁31cは、通電に応じて閉弁して、加圧室31bと低圧燃料通路28との間の燃料の流通を遮断するとともに、通電の停止に応じて開弁して、加圧室31bと低圧燃料通路28との間の燃料の流通を許容する。チェック弁31dは、加圧室31bから高圧側デリバリパイプ32への燃料吐出を許容するとともに、高圧側デリバリパイプ32から加圧室31bへの燃料の逆流を禁止する。
【0027】
こうした高圧燃料ポンプ31は、プランジャ31aが加圧室31bの容積を拡大する側に動くときに、電磁スピル弁31cを開弁した状態とすることで、低圧燃料通路28内の燃料を加圧室31bに吸引する。そして、プランジャ31aが加圧室31bの容積を縮小する側に動くときに、電磁スピル弁31cを閉弁した状態とすることで、加圧室31bに吸引された燃料を加圧して高圧側デリバリパイプ32に吐出する。なお、プランジャ31aが加圧室31bの容積を縮小する側に動く期間における、電磁スピル弁31cを閉弁している期間の割合を変化させることで、高圧燃料ポンプ31の燃料吐出量が調整されている。
【0028】
なお、高圧側デリバリパイプ32には、同高圧側デリバリパイプ32内の燃料の圧力を検出するための高圧側燃圧センサ33が設けられている。さらに、高圧側燃料供給システム23には、同高圧側デリバリパイプ32内の燃料の圧力が規定のリリーフ圧を超えたときに開弁して、同高圧側デリバリパイプ32内の燃料を燃料タンク26に戻すリリーフバルブ34が設けられている。
【0029】
ちなみに、このハイブリッド車両10では、電動走行を開始すると、電力消費を抑えるため、電動フィードポンプ24の駆動(給電)を停止している。そして、電動走行が終了してエンジン11の運転を再開するときに、電動フィードポンプ24の駆動(給電)を再開するようにしている。
【0030】
本実施形態の燃圧センサ診断装置は、上記低圧側燃料供給システム22に設けられた低圧側燃圧センサ30の診断を行うものとなっている。こうした本実施形態の燃圧センサ診断装置では、電動フィードポンプ24が、電力により駆動されて、エンジン11の燃料噴射弁であるポート噴射弁20に燃料を供給する電動式の燃料供給装置に相当する。また、プレッシャレギュレータ25が、同燃料供給装置(電動フィードポンプ24)が燃料噴射弁(ポート噴射弁20)に供給する燃料の圧力である燃料供給圧(フィード圧PF)を規定の上限圧であるレギュレータ設定圧P1以下に保持する調圧部に相当する。
【0031】
図3に、本実施形態の燃圧センサ診断装置の構成を示す。同図に示すように、燃圧センサ診断装置は、診断部35を備える。診断部35は、エンジンコントロールユニット19bに設けられており、エンジン11の自己診断を行う役割を担っている。そして、診断部35は、エンジン11の自己診断の一環として、低圧側燃圧センサ30の異常診断を行っている。
【0032】
こうした診断部35には、パワーコントロールユニット19aからEVモード信号Sevが、ハイブリッド車両10に設置された速度センサ36からハイブリッド車両10の走行速度SPDの検出信号が、低圧側燃圧センサ30から同低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfがそれぞれ入力されている。また、診断部35は、電動フィードポンプ24の給電量を制御してもいる。診断部35により給電が停止されると、電動フィードポンプ24も停止される。また、診断部35により給電量が増加されると、電動フィードポンプ24の燃料吐出量も増加される。
【0033】
(低圧側燃圧センサ30の診断)
以下、こうした診断部35が行う、低圧側燃圧センサ30の診断について説明する。
図4及び図5に、診断処理のフローチャートを示す。診断部35は、エンジンコントロールユニット19bの起動完了後、本処理を開始する。なお、パワーコントロールユニット19a、エンジンコントロールユニット19b、及びMGコントロールユニット19cは、イグニッションスイッチがオンとされたときに起動され、オフとされたときに停止される。
【0034】
本処理が開始されると、まずステップS100において、診断に使用するカウンタである逸脱回数CE及び判定回数CDの値が0に初期化される。これらカウンタの詳細は、後述する。
【0035】
続いて、ステップS101において、ハイブリッド車両10が電動走行中であるか否かが、すなわちパワーコントロールユニット19aからEVモード信号Sevが入力されているか否かが判定される。また、ステップS102において、走行速度SPDが規定の診断実施速度α以上であるか否かが判定される。なお、診断実施速度αには、車室内において、電動フィードポンプ24の駆動音よりも、風切音やロードノイズなどの車両の走行に伴う暗騒音の方が大きくなる走行速度SPDの下限値が設定されている。
【0036】
ステップS101及びステップS102のいずれかにおいて否定判定(NO)された場合、規定の周期TB分の時間が経過した後に、ステップS101に処理が戻される。一方、ステップS101及びステップS102の双方において肯定判定(YES)された場合、ステップS103に処理が進められる。
【0037】
ステップS103に処理が進められると、そのステップS103において、電動走行の開始と共に停止された電動フィードポンプ24の駆動が開始される。このときの電動フィードポンプ24の駆動は、同電動フィードポンプ24の給電量を上限まで高めた状態で行われる。すなわち、このときの電動フィードポンプ24は、最大の燃料吐出量で駆動される。
【0038】
そして、続くステップS104において、電動フィードポンプ24の駆動開始から規定の待機時間TAが経過するのを待って、ステップS110に処理が進められる(以下、図5参照)。なお、待機時間TAには、電動フィードポンプ24の駆動を開始する前のフィード圧PFが、電動走行中における同フィード圧PFの想定変化範囲の下限にある場合にも、同フィード圧PFを確実にレギュレータ設定圧P1まで昇圧可能な電動フィードポンプ24の駆動時間が設定されている。
【0039】
ステップS110に処理が進められると、そのステップS110において、現時点の低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfが読み込まれ、続くステップS111において、その読み込まれた出力電圧Vpfが正常範囲内の値であるか否かが判定される。正常範囲は、低圧側燃圧センサ30の正常時における、フィード圧PFがレギュレータ設定圧P1であるときの出力電圧Vpfの想定範囲として設定されている。具体的には、フィード圧PFがレギュレータ設定圧P1であるときの出力電圧Vpfの想定値Vtから規定の許容誤差β以内の値の範囲、すなわち「Vt−β」以上、「Vt+β」以下の範囲に設定されている。また、許容誤差βの値は、低圧側燃圧センサ30の検出精度の要求に応じて定められている。
【0040】
ここで、低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfが正常範囲内の値であれば(YES)、そのままステップS113に処理が進められる。一方、出力電圧Vpfが正常範囲内の値でなければ(NO)、ステップS112において、逸脱回数CEの値がカウントアップされた後、ステップS113に処理が進められる。なお、逸脱回数CEは、今回の診断において、出力電圧Vpfが正常範囲内の値になっていないと判定された回数をカウントするためのカウンタとなっている。
【0041】
ステップS113に処理が進められると、そのステップS113において、逸脱回数CEが規定の異常診断回数γ以上であるか否かが判定される。ここで、逸脱回数CEが異常診断回数γ未満であれば(NO)、ステップS114において判定回数CDの値がカウントアップされた後、ステップS115に処理が進められる。なお、判定回数CDは、今回の診断において、ステップS111での判定が行われた回数をカウントするためのカウンタとなっている。そして、続くステップS115において、判定回数CDが規定の診断終了回数ε以上であるか否かが判定され、判定回数CDが診断終了回数ε未満であれば(NO)、上記周期TB分の時間が経過した後に、ステップS110に処理が戻される。すなわち、ステップS110からステップS115までの処理は、ループとなっており、ステップS113又はステップS115での肯定判定によりループを抜けるまで、規定の周期TB毎に繰り返し実行される。
【0042】
判定回数CDが診断終了回数εに達するまでに、逸脱回数CEが異常診断回数γに達した場合(S113:YES)、ステップS120に処理が進められる。そして、そのステップS120において、低圧側燃圧センサ30が異常であると診断された後、ステップS122において電動フィードポンプ24の駆動を停止した上で、今回の診断処理を終了する。このときの診断部35は、エンジンコントロールユニット19bのメモリに、低圧側燃圧センサ30が異常と診断された旨の履歴を記憶する。そして、その後はエンジンコントロールユニット19bにより、異常が発生した低圧側燃圧センサ30の検出結果を用いずにエンジン11を制御すべく、フェールセーフ処理が行われる。
【0043】
一方、逸脱回数CEが異常診断回数γに達する前に、判定回数CDが診断終了回数εに達した場合(S115:YES)、ステップS121に処理が進められる。そして、そのステップS121において、低圧側燃圧センサ30が正常であるとの診断された後、ステップS122において電動フィードポンプ24の駆動を停止した上で、今回の診断処理を終了する。このときの診断部35は、エンジンコントロールユニット19bのメモリに、低圧側燃圧センサ30が正常と診断された旨の履歴を記憶する。
【0044】
なお、診断部35は、ステップS103において電動フィードポンプ24の駆動を開始してから、本処理を終了するまでの期間に、電動走行が終了となってエンジン11の運転が再開されたり、走行速度SPDが診断実施速度αを下回ったりした場合、電動フィードポンプ24の駆動を停止した上で、本処理を始めからやり直す。
【0045】
こうした本診断処理での低圧側燃圧センサ30の診断は、エンジンコントロールユニット19bの起動毎に、すなわち、イグニッションスイッチがオンとされてからオフとされるまでのハイブリッド車両10のトリップ毎に1回ずつ行われる。これに対して、同診断を1トリップに複数回行う場合には、診断を行う回数、本診断処理を実行すればよい。
【0046】
(作用)
続いて、以上のように構成された本実施形態の燃圧センサ診断装置の作用を説明する。
図6に、本実施形態の燃圧センサ診断装置による低圧側燃圧センサ30の診断態様を示す。なお、同図には、低圧側燃圧センサ30が正常である場合の出力電圧Vpf、及び逸脱回数CEの推移が実線で示されている。また、同図には、低圧側燃圧センサ30が異常である場合の出力電圧Vpf、及び逸脱回数CEの推移が二点鎖線で併せ示されている。
【0047】
時刻t0において、診断実施速度α以上の走行速度SPDでのハイブリッド車両10の電動走行が開始されると、その時刻t1に、電動走行の開始と共に停止された電動フィードポンプ24の駆動が開始される。このときのエンジン11は停止しており、ポート噴射弁20の燃料噴射により低圧側デリバリパイプ29内の燃料が消費されることがないため、電動フィードポンプ24の駆動に応じてフィード圧PFが次第に上昇するようになる。フィード圧PFの上昇は、プレッシャレギュレータ25のレギュレータ設定圧P1に達するまで続き、以後はレギュレータ設定圧P1に保持される。
【0048】
なお、上述のように待機時間TAは、確実にフィード圧PFをレギュレータ設定圧P1に昇圧可能な電動フィードポンプ24の駆動時間に設定されている。そのため、時刻t1から待機時間TAが経過した時刻t2以降には、低圧側燃圧センサ30の検出結果に依らずとも、フィード圧PFがレギュレータ設定圧P1であることが明らかな状態となる。
【0049】
なお、本実施形態では、このときの電動フィードポンプ24を最大の燃料吐出量で駆動している。そしてこれにより、レギュレータ設定圧P1へのフィード圧PFの速やかな上昇を可能として、待機時間TAの短縮を、ひいては診断時間の短縮を図るようにしている。
【0050】
本実施形態では、診断部35は、そうした時刻t2以降、上記周期TB毎に、低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfを読み込むとともに、その出力電圧Vpfの値が正常範囲内にあるか否かを判定することを繰り返す。そして、診断部35は、判定が行われる毎に、判定回数CDの値をカウントアップするとともに、同判定において出力電圧Vpfの値が正常範囲内にないと判定される毎に、逸脱回数CEの値をカウントアップする。
【0051】
上記のように、このときのフィード圧PFはレギュレータ設定圧P1となっており、低圧側燃圧センサ30が正常に動作していれば、このときの出力電圧Vpfは、レギュレータ設定圧P1に相当する値(想定値Vt)となる筈である。そして、上記正常範囲は、そうした想定値Vtから許容誤差β以内の値の範囲とされている。よって、低圧側燃圧センサ30が正常であれば、このときの出力電圧Vpfは正常範囲内の値となっている筈で、逸脱回数CEの値はカウントアップされず、判定回数CDの値のみがカウントアップされていく。
【0052】
ただし、ハイブリッド車両10での電力使用量の急増により低圧側燃圧センサ30の入力電圧が一時的に降下した場合などには、低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfにも一時的な乱れが生じることがある。そのため、低圧側燃圧センサ30が正常であっても、このときの出力電圧Vpfが一時的に正常範囲を逸脱した値となることもある。同図に実線で示す正常時の例では、時刻t2において、出力電圧Vpfが一時的に正常範囲を逸脱しており、その結果、逸脱回数CEの値がカウントアップされている。
【0053】
ただし、そうした出力電圧Vpfの乱れは、そう度々に生じるものではない。そして、上述の異常診断回数γは、低圧側燃圧センサ30が正常に動作しているときの、診断終了までの期間、すなわち判定回数CDが診断終了回数εに達するまでの期間における逸脱回数CEの想定最大値よりも大きい値に設定されている。そのため、低圧側燃圧センサ30が正常の場合、逸脱回数CEの値が異常診断回数γに達する前に、判定回数CDの値が診断終了回数εに達するようになる。同図に実線で示す正常時の例では、時刻t4に、判定回数CDの値が診断終了回数εに達して、低圧側燃圧センサ30が正常であると診断されている。
【0054】
一方、低圧側燃圧センサ30に異常が発生している場合、判定回数CDの値が診断終了回数εに達する前に、逸脱回数CEの値が異常診断回数γに達するようになる。同図に二点鎖線で示す異常時の例では、時刻t3に、逸脱回数CEの値が異常診断回数γに達して、低圧側燃圧センサ30は異常であると診断されている。
【0055】
このように、燃料噴射が停止した状態で、電動フィードポンプ24を駆動すれば、すなわち、燃料消費が行われない状態で、低圧側燃料供給システム22への燃料供給を行えば、フィード圧PFが確実にレギュレータ設定圧P1となる状況を作ることができる。そして、そうした状況において、低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfが正常範囲内の値、すなわちレギュレータ設定圧P1相当の値となっているか否かを確認することで、同低圧側燃圧センサ30によるフィード圧PFの検出値が実際の値から乖離した値となる異常の有無の診断を、いわゆるラショナリティ診断を行うことが可能となる。
【0056】
なお、上述したように、ハイブリッド車両10の電力消費量の急増などのため、低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfに一時的な乱れが生じることがある。そうした乱れにより、低圧側燃圧センサ30が正常であっても、上記ステップS110で読み込まれて、ステップS111での判定に使用される出力電圧Vpfの値が正常範囲を逸脱した値となることがある。そのため、診断中に、上記判定を一回きりしか行わなければ、一時的な乱れが生じたときの出力電圧Vpfがそのまま診断結果に反映されてしまい、誤診断を招く虞がある。これに対して、本実施形態において診断部35は、低圧側燃圧センサ30の異常の有無の診断を、複数回の判定の結果に基づいて行うようにしているため、上述したような出力電圧Vpfの一時的な乱れによる誤診断は生じにくくなっている。
【0057】
また、上述のように、本実施形態での低圧側燃圧センサ30の診断は、ハイブリッド車両10の電動走行中に、電動フィードポンプ24を駆動して行っている。電動走行中は、エンジン音がなく、また診断中以外は、電動フィードポンプ24は停止しているため、診断のため、電動フィードポンプ24を駆動すると、その駆動音により乗員が違和を感じる虞がある。これに対して、本実施形態では、走行速度SPDが診断実施速度α以上であり、電動フィードポンプ24の駆動音よりも、風切音やロードノイズなどの車両の走行に伴う暗騒音の方が大きくなっていることを条件に、診断のための電動フィードポンプ24の駆動を行うようにしている。そのため、診断に伴う電動フィードポンプ24の駆動音が目立ち難くなり、乗員も違和を感じにくくなる。
【0058】
ちなみに、エンジン11の運転中は、ポート噴射弁20による燃料噴射の都度、フィード圧PFが低下する。そのため、同様の診断をエンジン11の運転中に行うとすれば、上記のような判定を行う期間のフィード圧PFがレギュレータ設定圧P1に安定して保持されず、診断精度が悪化する。
【0059】
一方、エンジン11の燃料カット中も、電動走行中と同様に、燃料噴射が停止する。しかしながら、同様の診断を燃料カット中に行うとすると、次のような問題が生じる。
まず、上記のような電動走行を行うハイブリッド車両10では、エンジン11において燃料カットが行われる頻度が低く、診断の機会が限られるという問題がある。燃料カット中に、エンジン11の回転数が低下し過ぎると、燃料カット復帰時の燃料噴射の再開に際して燃焼を成立できずにエンジンストールが発生してしまうため、燃料カット中も、一定以上のエンジン回転数を維持する必要がある。その結果、燃料カット中は、エンジン回転数の維持に、第2発電電動機13の動力の一部が使われることになり、エンジン11の回転を停止して電動走行に切り換えた方が、ハイブリッド車両10のエネルギ効率が高くなる。そのため、電動走行が可能なハイブリッド車両10では、燃料カットの実施の頻度は低くなっており、低圧側燃圧センサ30の診断を燃料カット中に行うとすれば、同診断の機会が限定されてしまう。そのため、電動走行を行うハイブリッド車両10では、燃料カット中に診断を行うよりも、電動走行中に診断を行う方が、診断の機会の確保が容易となる。
【0060】
もっとも、燃料カット中に診断を行うようにした場合にも、診断が完了するまで電動走行の実施を制限すれば、診断機会の確保は可能である。しかしながら、そうした場合には、診断の完了まで、よりエネルギ効率の良い電動走行が、よりエネルギ効率の悪い燃料カットに置き換えられてしまうため、ハイブリッド車両10のエネルギ効率の悪化を招いてしまう。
【0061】
また、燃料カット中の診断の実施には、次の問題もある。燃料カット中には、エンジン11の排気通路を流れる排気が新気に置き換わるため、排気の酸素過剰/不足率に応じた信号を出力する、空燃比センサや酸素センサのラショナリティ診断の好機となる。すなわち、燃料カット中の空燃比/酸素センサの出力が、新気に相当する値となっているか否かにより、同センサの異常の有無を診断することができる。
【0062】
一方、上記のような低圧側燃圧センサ30の診断において、燃料噴射を停止した状態のまま、フィード圧PFがレギュレータ設定圧P1に保持されると、ポート噴射弁20から燃料が漏れ出ることがある。そうした場合、その漏れ出た燃料が吸気に混じるため、排気通路内が完全な新気とはならなくなってしまう。そのため、低圧側燃圧センサ30の診断と空燃比/酸素センサの診断とは、同時に行えず、燃料カット中に低圧側燃圧センサ30の診断を行うとすれば、ただでさえ頻度の低い燃料カットの機会を、双方の診断で分け合わなければならなくなる。これに対して、電動走行中であれば、そうした空燃比/酸素センサの診断と競合することはなく、その点でも、低圧側燃圧センサ30の診断機会の確保が容易である。
【0063】
さらに、燃料カット中の診断の実施には、次の問題もある。燃料カット中も、エンジン11は回転しており、高圧燃料ポンプ31のプランジャ31aの往復駆動は続けられる。そのため、電磁スピル弁31cへの通電を停止して、高圧燃料ポンプ31の燃料吐出を停止したとしても、高圧燃料ポンプ31の加圧室31bと低圧燃料通路28との間での燃料の吸い込み、吸い戻しは続くことになる。そして、そうした高圧燃料ポンプ31による燃料の吸い込み、吸い戻しによって、フィード圧PFに脈動が生じてしまう。そのため、燃料カット中に低圧側燃圧センサ30の診断を行うとすれば、そうした高圧燃料ポンプ31の動作に伴うフィード圧PFの脈動の影響で、診断精度が悪化する虞がある。これに対して、電動走行中は、エンジン11の回転が停止しており、高圧燃料ポンプ31のプランジャ31aの往復駆動も止まる。そのため、電動走行中であれば、そうしたプランジャ31aの往復駆動に伴うフィード圧PFの脈動のない状態で診断を行うことができ、燃料カット中に診断を行う場合よりも、正確な診断が可能となる。
【0064】
一方、ハイブリッド車両10がソーク状態にあるとき、すなわちイグニッションスイッチがオフとされているときにも、燃料噴射が停止した状態となっている。ただし、ハイブリッド車両10が走行からソーク状態に移るときには、低圧側燃料供給システム22の環境温度が急変し、低圧側燃料供給システム22内の燃料の温度にも急激な変化が生じることがある。そのため、本実施形態と同様の低圧側燃圧センサ30の診断を、ハイブリッド車両10がソーク状態にあるときに行うとすると、温度変化に伴う燃料の熱膨張/収縮の影響のため、診断を正確に行えないことがある。
【0065】
例えば、厳寒時に屋外を走行後、ハイブリッド車両10を屋内に駐車した場合、外気温よりも駐車場所の室温が高ければ、駐車後、低圧側燃料供給システム22内の燃料の熱膨張によって、フィード圧PFが上昇するようになる。このときのフィード圧PFの上昇は、電動フィードポンプ24の燃料供給に応じた同フィード圧PFの上昇よりも急激となることがあり、プレッシャレギュレータ25によるフィード圧PFの降圧がその上昇に追い付かず、フィード圧PFがレギュレータ設定圧P1を超えて上昇することがある。こうした状態で診断が行われると、低圧側燃圧センサ30が正常に動作していても、診断中の出力電圧Vpfが正常範囲の上限よりも高い値となって、異常と誤診断されてしまう虞がある。
【0066】
これとは逆に、外気温よりも駐車場所の室温が低い場合には、駐車後、低圧側燃料供給システム22内の燃料に熱収縮が生じ、フィード圧PFが低下するようになる。こうした状態で診断が行われると、待機時間TA分の電動フィードポンプ24の駆動では、フィード圧PFをレギュレータ設定圧P1まで昇圧できないことがあり、やはり診断を正確に行えなくなる虞がある。
【0067】
これに対して、電動走行中には、低圧側燃料供給システム22の環境温度の急激な変化は生じにくい。そのため、ハイブリッド車両10がソーク状態にあるときよりも、電動走行中の方が、より正確な診断が可能となる。
【0068】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、ハイブリッド車両10の電動走行中に、走行速度SPDが診断実施速度α以上であることを条件に、電動フィードポンプ24を駆動して低圧側燃圧センサ30の診断を行うようにしていたが、同診断を、走行速度SPDの高低に関わらず行うようにしてもよい。そうした場合にも、駆動音の小さい電動フィードポンプ24を採用している場合には、診断中の電動フィードポンプ24の駆動音による乗員の違和感が問題となることはない。
【0069】
・上記実施形態では、診断中に、電動フィードポンプ24を、給電量を最大として駆動していたが、このときの給電量を最大よりも小さい給電量としてもよい。そうした場合、電動フィードポンプ24の駆動音が小さくなるため、駆動音による違和感を抑えるための走行速度SPDによる、診断中の電動フィードポンプ24の駆動制限を緩和したり、撤廃したりすることが可能となり、そうした場合には、診断機会が更に増える。
【0070】
・上記実施形態では、電動フィードポンプ24の給電量を、待機時間TAの経過の前後で同じとしていた。待機時間TAの経過前までは、レギュレータ設定圧P1にフィード圧PFの早期昇圧のため、電動フィードポンプ24の燃料の吐出流量を、許容可能な範囲で多くすることが求められるが、待機時間TAの経過後は、フィード圧PFをレギュレータ設定圧P1に保持できればよいため、あまり多くの吐出流量は必要ない。そのため、また、待機時間TAの経過後の電動フィードポンプ24の給電量を、同待機時間TAの経過前よりも少なくするようにしてもよい。さらに、電動フィードポンプ24を停止しても、フィード圧PFをレギュレータ設定圧P1に保持できるのであれば、待機時間TAの経過した時点で電動フィードポンプ24の駆動を停止するようにしてもよい。
【0071】
・上記実施形態では、診断の途中で電動走行が終了すると、それまでの出力電圧Vpfが正常範囲内の値であるか否かの判定(以下、出力判定と記載する)の結果を破棄して診断を始めからやり直すようにしていた。こうした場合、継続時間が短い電動走行が続くと、診断を何度もやり直しすることになる。これに対しては、診断途中で電動走行が終了しても、その時点の判定回数CD及び逸脱回数CEの値を保持して、次回の電動走行時に引き継ぐようにするとよい。
【0072】
・上記実施形態では、逸脱回数CEが異常診断回数γに達する前に判定回数CDが診断終了回数εに達した場合に正常と診断し、判定回数CDが診断終了回数εに達する前に逸脱回数CEが異常診断回数γに達した場合に異常と診断するようにしていた。こうした診断の態様を適宜変更してもよい。例えば、回数の上限を固定せずに出力判定を行い、判定回数CDに対する逸脱回数CEの割合が規定値未満であるか否かにより、正常/異常の診断を行うようにすることが考えられる。こうした場合にも、複数回の出力判定の結果に基づいて診断が行われるため、一時的な出力電圧Vpfの乱れによる誤診断を抑えることができる。
【0073】
・上記実施形態では、出力電圧Vpfの現在値(瞬時値)を用いて出力判定を行うようにしていたが、一定の期間における出力電圧Vpfの平均値やなまし値を用いて出力判定を行うようにしてもよい。こうした場合、出力判定の回数が少なくても、一時的な出力電圧Vpfの乱れによる誤診断を抑えることが可能である。
【0074】
・上記実施形態では、複数回の出力判定の結果に基づき、正常/異常の診断を行うようにしていたが、同診断を、1回の出力判定の結果に基づき行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、図5の診断処理のフローチャートのステップS112において、低圧側燃圧センサ30の出力電圧Vpfを用いて出力判定を行っていたが、出力電圧Vpfの代わりに低圧側燃圧センサ30の圧力検出値を用いて、出力判定を行うようにしてもよい。ここでの圧力検出値とは、正常時の低圧側燃圧センサ30の出力特性に応じて、出力電圧Vpfを、同出力電圧Vpfに相当する圧力に換算した値であり、出力電圧Vpfと実質同様の値である。こうした場合にも、低圧側燃圧センサ30が正常であれば、出力判定時の低圧側燃圧センサ30の圧力検出値は、レギュレータ設定圧P1となる筈である。そのため、レギュレータ設定圧P1から誤差分以内の値の範囲を正常範囲に設定すれば、低圧側燃圧センサ30の出力として同低圧側燃圧センサ30の圧力検出値を用いて出力判定を行うことが可能である。
【0075】
・高圧燃料ポンプ31として電動式の燃料ポンプが採用されている場合には、エンジン11の回転が停止するハイブリッド車両10の電動走行中にも、高圧燃料ポンプ31を駆動することが可能となる。こうした場合、上記実施形態において診断部35が実施するものと同様の診断処理を、高圧側燃圧センサ33の診断にも適用することが可能である。この場合には、電動走行中の、エンジン11の回転が停止し、筒内噴射弁21の燃料噴射が停止した状態において、電動フィードポンプ24及び電動式の高圧燃料ポンプ31の双方を駆動して、高圧側燃圧センサ33の診断を行うことになる。このとき、電動フィードポンプ24及び電動式の高圧燃料ポンプ31の双方を駆動すると、高圧側デリバリパイプ32内の燃料圧力は、リリーフバルブ34のリリーフ圧に達するまで昇圧され、それ以降は、同リリーフ圧に保持される。よって、このときの高圧側燃圧センサ33の出力(出力電圧、又は圧力検出値)がリリーフ圧時の値から許容誤差以内の範囲の値となっているか否かを判定し、その判定の結果に基づくことで高圧側燃圧センサ33の異常の有無を診断することができる。こうした場合、電動フィードポンプ24、及び電動式の高圧燃料ポンプの双方により、電動式の燃料供給装置が構成される。また、こうした場合には、リリーフバルブ34が、筒内噴射弁21に供給される燃料の圧力(高圧側デリバリパイプ32内の燃料圧力)を、規定の上限圧であるリリーフ圧以下に保持する調圧部に相当する構成となる。
【0076】
・上記実施形態の燃圧センサ診断装置における診断部35による低圧側燃圧センサ30の診断処理は、高圧側燃料供給システム23が設けられておらず、低圧側燃料供給システム22のみを備えるエンジンの燃料供給システムに設けられた燃圧センサの診断にも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…ハイブリッド車両、11…エンジン、12…第1発電電動機、13…第2発電電動機(モータ)、20…ポート噴射弁(燃料噴射弁)、22…低圧側燃料供給システム(燃料供給システム)、24…電動フィードポンプ(電動式の燃料供給装置)、30…低圧側燃圧センサ(燃圧センサ)、35…診断部、36…速度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6