特許第6439761号(P6439761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439761
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】NOx吸蔵還元触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20181210BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20181210BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20181210BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20181210BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20181210BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20181210BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   B01J37/02 101Z
   B01J37/08ZAB
   B01J37/02 101D
   B01J37/02 301C
   B01J23/58 A
   B01D53/94 222
   F01N3/08 A
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-156923(P2016-156923)
(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-23924(P2018-23924A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】坂野 充
(72)【発明者】
【氏名】川村 将平
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−290052(JP,A)
【文献】 特開2003−117399(JP,A)
【文献】 特開2002−191989(JP,A)
【文献】 特開2002−282701(JP,A)
【文献】 特開平08−024643(JP,A)
【文献】 特開平11−322722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90,53/94
F01N 3/08−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NO吸蔵還元触媒の製造方法において、
(A)カリウム化合物粒子を含有するカリウム分散水を用いて、触媒担体粒子に前記カリウム化合物粒子を担持すること、
(B)前記カリウム化合物粒子を担持している前記触媒担体粒子を焼成すること、
を含み、
前記カリウム化合物粒子が、オテラシルカリウム、テトラニトロアクリドンカリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、及びテトラニトロフェンチアジン−9−オキシドカリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、NO吸蔵還元触媒の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)の前、前記工程(A)と前記工程(B)の間、又は前記工程(B)の後において、前記触媒担体粒子に触媒金属を担持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(A)の前において、前記触媒担体粒子に触媒金属を担持することを含み、かつ、
前記工程(A)において、前記カリウム分散水と、前記触媒金属が担持された前記触媒担体粒子とを混合してスラリーを作製して、前記触媒担体粒子に前記カリウム化合物粒子を担持することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(A)と前記工程(B)の間において、前記カリウム化合物粒子を担持している前記触媒担体粒子をハニカム基材上にコートすることを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(B)の後において、焼成された前記カリウム化合物粒子の平均粒子径が20nm〜50nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NO吸蔵還元触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リーンバーンエンジンからの排ガスを浄化する触媒として、NO吸蔵還元触媒が実用化されている。このNO吸蔵還元触媒では、燃料リーン側から燃料ストイキ〜リッチ側となるように空燃比をパルス状に制御することにより、リーン側においてNOがNO吸蔵材に吸蔵される。そして、吸蔵されたNOはストイキ〜リッチ側で放出され、貴金属の触媒作用によりHCやCOなどの還元性成分と反応して浄化される。
【0003】
NO吸蔵還元触媒は、コージェライト等のハニカム基材の上に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒金属を含む触媒層を形成し、該触媒層にアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素等の元素を含むNO吸蔵材を担持したものが一般的に知られている。また、NO吸蔵材としては、NO吸蔵性能が高いという観点からカリウム化合物やバリウム化合物が一般的に用いられる。
【0004】
特許文献1は、NO吸蔵還元触媒において、NO吸蔵材として水に難溶性である酒石酸水素塩(酒石酸水素カリウム)を用い、NO吸蔵材を高比表面積の触媒担体粒子のみに担持することで溶出を防止し、かつ、高温耐久時に低比表面積の触媒担体粒子への移動を抑制することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−191989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような従来のNO還元触媒では、リーンバーンエンジンによる高温状態を経ると、高温耐久後にNO吸蔵還元触媒が劣化し、NO浄化率が低下してしまう。そのため、本発明では、高温耐久後のNO浄化性能低下を抑制できるNO吸蔵還元触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、以下のようである。
(1)NO吸蔵還元触媒の製造方法において、
(A)カリウム化合物粒子を含有するカリウム分散水を用いて、触媒担体粒子に前記カリウム化合物粒子を担持すること、
(B)前記カリウム化合物粒子を担持している前記触媒担体粒子を焼成すること、
を含み、
前記カリウム化合物粒子が、オテラシルカリウム、テトラニトロアクリドンカリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、及びテトラニトロフェンチアジン−9−オキシドカリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、NO吸蔵還元触媒の製造方法。
(2)前記工程(A)の前、前記工程(A)と前記工程(B)の間、又は前記工程(B)の後において、前記触媒担体粒子に触媒金属を担持することを含む、上記(1)に記載の方法。
(3)前記工程(A)の前において、前記触媒担体粒子に触媒金属を担持することを含み、かつ、
前記工程(A)において、前記カリウム分散水と、前記触媒金属が担持された前記触媒担体粒子とを混合してスラリーを作製して、前記触媒担体粒子に前記カリウム化合物粒子を担持することを含む、上記(2)に記載の方法。
(4)前記工程(A)と前記工程(B)の間において、前記カリウム化合物粒子を担持している前記触媒担体粒子をハニカム基材上にコートすることを含む、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の方法。
(5)前記工程(B)の後において、焼成された前記カリウム化合物粒子の平均粒子径が20nm〜50nmである、上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温耐久後のNO浄化性能の低下を抑制できるNO吸蔵還元触媒の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例及び比較例1〜2のNO吸蔵還元触媒の製造方法の概念図である。
図2】未使用状態の実施例及び比較例1〜2のNO吸蔵還元触媒におけるNO浄化率を示す。
図3】高温耐久試験後の実施例及び比較例1〜2のNO吸蔵還元触媒におけるNO浄化率を示す。
図4】(a)実施例、(b)比較例1及び(c)比較例2における未使用状態と高温耐久試験後のカリウム原子のEPMAによる分布データを示す。
図5】(a)実施例、(b)比較例1及び(c)比較例2における未使用状態と高温耐久試験後のカリウム原子のライン分析結果を示す。
図6】実施例及び比較例1〜2における未使用状態と高温耐久試験後のハニカム基材中のカリウム原子の量を示す。
図7】高温耐久後の実施例及び比較例1〜2のNO吸蔵還元触媒におけるカリウム含有NO吸蔵材粒子の粒径を示す。
図8】(a)実施例、(b)比較例1及び(c)比較例2における高温耐久試験後のNO吸蔵材のTEM観察結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態におけるNO吸蔵還元触媒の製造方法について説明する。
【0011】
本発明の実施形態におけるNO吸蔵還元触媒の製造方法は、(A)カリウム化合物粒子を含有するカリウム分散水を用いて、触媒担体粒子に前記カリウム化合物粒子を担持すること、(B)前記カリウム化合物粒子を担持している前記触媒担体粒子を焼成すること、を含み、前記カリウム化合物粒子が、オテラシルカリウム、テトラニトロアクリドンカリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、及びテトラニトロフェンチアジン−9−オキシドカリウムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0012】
従来のNO吸蔵還元触媒は、リーンバーンエンジン等による高温状態(例えば800℃)を経ることで劣化してしまい、NO浄化率が大きく低下してしまうという問題があった。そこで、発明者らはNO吸蔵材に着目したところ、触媒層における炭酸カリウム等のカリウム含有NO吸蔵材が高温耐久によってハニカム基材中に移動してしまい、高温耐久後の触媒層におけるカリウム含有NO吸蔵材の量が、高温耐久前と比較して減少しているという新たな知見を得た。ハニカム基材中のNO吸蔵材は、NO吸蔵には寄与しないため、高温耐久後に触媒層中のカリウム含有NO吸蔵材が減少したことで、NO吸蔵性能が低下し、NO浄化率が低下していると発明者らは考えた。
そこで、発明者らは鋭意検討の結果、高温耐久によって触媒層からハニカム基材へのNO吸蔵材の移動量が少ないNO吸蔵還元触媒とすることで、高温耐久後のNO吸蔵性能を維持し、NO浄化率の低下を抑制できることを見出した。
【0013】
本発明の実施形態の製造方法によって製造された触媒が、高温耐久後にNO浄化率の低下を抑制できるメカニズムは以下のようであると推定される。
【0014】
特許文献1のようにNO吸蔵材の原料として酒石酸水素カリウム(水に対する溶解度:600mg/100ml−HO)を用いる場合、酒石酸水素カリウムは難溶性ではあるが、スラリーを作製する際に一部水に溶けてカリウムイオンとなる。そのため、該スラリーを焼成してカリウムイオンが炭酸カリウムになる際、生成された炭酸カリウムの粒子も小さくなる(図1(b))。その場合、ナノ粒子の特性として、粒子が小さくなると融点が低下するという性質があるため、炭酸カリウムの融点が通常の融点(891℃)よりも低下することが予想される。それによって、炭酸カリウムが高温状態(例えば800℃)で溶融しやすくなり、溶融した炭酸カリウムが触媒層からハニカム基材に移動してしまう。
【0015】
また、従来のような吸水担持法でも同様に、スラリーを作製する際にカリウムが水に溶解し、カリウムイオンとなるため、その後の焼成によって生成された炭酸カリウム粒子も小さくなる(図1(c))。そして、上述したように、融点の低下が予想され、高温状態で炭酸カリウムが溶融して、触媒層からハニカム基材に移動してしまう。
【0016】
これに対して、本発明の実施形態におけるNO吸蔵還元触媒の製造方法は、NO吸蔵材の原料として、オテラシルカリウム、テトラニトロアクリドンカリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、及びテトラニトロフェンチアジン−9−オキシドカリウムからなる群から選択される少なくとも1種であるカリウム化合物粒子を用いる。これらのカリウム化合物粒子は水に不溶性であるため、スラリーを作製する際に、カリウムイオンが殆ど生成されない。つまり、焼成によって生成された炭酸カリウムの粒子を、従来の方法よりも大きくすることができる(図1(a))。その場合、融点の低下が殆ど起こらないため、高温状態(例えば800℃)を経ても、炭酸カリウムが溶融せず、炭酸カリウムが触媒層からハニカム基材へ移動することを抑制できる。したがって、高温耐久後でも触媒層に炭酸カリウムを保持する、すなわち、高温耐久前後でのNO吸蔵材の移動量を少なくすることで、高温耐久後のNO浄化率の低下を抑制できると推定される。
【0017】
本発明の実施形態におけるカリウム化合物粒子は、NO吸蔵材の原料であり、焼成されて炭酸カリウム等のカリウム含有NO吸蔵材粒子となる。本発明の実施形態におけるカリウム化合物粒子が水に不溶性であることで、上述したように、高温耐久によるカリウム含有NO吸蔵材粒子のハニカム基材への移動を抑制し、高温耐久後において触媒層中のカリウム含有NO吸蔵材粒子を多く残すことができる。
【0018】
本発明の実施形態におけるカリウム化合物粒子とは、オテラシルカリウム、テトラニトロアクリドンカリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム(水に対する溶解度:0.18mg/100ml−HO)、テトラニトロフェンチアジン−9−オキシドカリウム、及びそれらの任意の組み合わせのカリウム化合物粒子であり、水不溶性である。カリウム化合物粒子が水不溶性であることで、カリウムイオンになることを抑制し、粒径の小さなカリウム含有NO吸蔵材粒子の生成を抑制できる。
【0019】
本発明に関して、水不溶性とは、例えば、標準状態において、水に対する溶解度が100mg/100ml−HO以下であることをいう。「100mg/100ml−HO」とは、水100mlに化合物100mgが溶解することを意味する。本発明の実施形態で用いるカリウム化合物粒子の水に対する溶解度が100mg/100ml−HO以下であることで、酒石酸カリウム(水に対する溶解度:600mg/100ml−HO)よりも、カリウム化合物粒子が水に溶けにくく、カリウムイオンの状態になることを抑制できる。それによって、焼成後に生成される炭酸カリウムの粒子径を、酒石酸カリウムを用いる時よりも大きくできる。また、カリウム化合物粒子の水に対する溶解度は、50mg/100ml−HO以下であることが好ましく、10mg/100ml−HO以下であることがより好ましい。これは、水に対する溶解度が小さいほうが、イオンの状態で分散されることを抑制できるからである。
【0020】
[工程(A)]
本発明の実施形態における工程(A)では、カリウム化合物粒子を含有するカリウム分散水を用いて、触媒担体粒子にNO吸蔵材の原料としてカリウム化合物粒子を担持する。
【0021】
本発明の実施形態におけるカリウム分散水には、本発明の実施形態におけるカリウム化合物粒子が含有されている。本発明の実施形態におけるカリウム化合物粒子のほかに、NO浄化用触媒の技術分野において、一般にNO吸蔵材として知られる化合物の元素がカリウム分散水に含有していてもよい。例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)などのアルカリ金属、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)などのアルカリ土類金属、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)などの希土類元素、及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0022】
本発明の実施形態では、カリウム含有NO吸蔵材を得るために用いられるカリウム化合物のうち、オテラシルカリウム等のカリウム化合物粒子の割合は、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、90mol%以上が更に好ましく、95mol%以上が更に好ましい。オテラシルカリウム等のカリウム化合物粒子の割合が高いほうが、高温耐久によってハニカム基材へ移動する可能性があるNO吸蔵材の割合を少なくでき、高温耐久後のNO吸蔵性能の低下をより抑制できるためである。
【0023】
本発明の実施形態における触媒担体粒子としては、特に限定されないが、NO浄化用触媒の技術分野において、一般に触媒担体粒子として知られる任意の金属酸化物を使用することができる。例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、シリカ−アルミナ(SiO−Al)、セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)、セリア−ジルコニア(CeO−ZrO)、チタニア(TiO)、及びそれらの組み合わせ等を挙げることができる。酸素吸放出能(OSC能)の観点から、例えば、触媒担体粒子は、セリア(CeO)又はセリア−ジルコニア(CeO−ZrO)を含むことが好ましく、Al−ZrO−TiO複合酸化物であることが更に好ましい。
【0024】
触媒担体粒子は、追加の金属元素をさらに含むこともできる。例えば、触媒担体粒子は、アルカリ土類金属及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素をさらに含むことができる。具体的には、バリウム(Ba)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)及びそれらの組み合わせ等を挙げることができる。このような追加の金属元素を含むことで、例えば、触媒担体粒子の耐熱性を顕著に向上させることができる。
【0025】
カリウム化合物粒子以外のNO吸蔵材の粒子を触媒担体粒子に担持させる方法としては、特に限定はされないが、NO浄化用触媒の技術分野において、一般にNO吸蔵材粒子を触媒担体粒子に担持させる方法を用いることができる。例えば、NOx吸蔵材を構成する金属の酢酸塩又は硝酸塩等を含有する水溶液に触媒担体粒子を含浸させて担持する含浸法や、該水溶液にアンモニア水等の塩基性物質を加えて共沈させ、得られた沈殿物を熱処理する共沈法や、該水溶液にアルコール等の還元剤を添加し、必要に応じて加熱を行いながら、水溶液中に含まれる各金属元素のイオンを同時に還元する方法等が挙げられる。中でも、触媒担体粒子の表面にカリウム化合物粒子を分散させやすいという観点から、該水溶液と、触媒担体粒子とを混合してスラリーを作製して、触媒担体粒子にカリウム化合物粒子を担持させることが好ましい。
【0026】
カリウム化合物粒子の触媒担体粒子への担持量は、触媒担体粒子を基準として、焼成した後のカリウムの担持量がカリウム金属換算で、5wt%以上、10wt%以上又は20wt%以上となるように担持することが好ましく、80wt%以下、60wt%以下又は40wt%以下となるように担持することが好ましい。これは、カリウムの量が多すぎると塩基性が高くなり、後述する触媒金属(例えば、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属)の活性が低下するからである。また、カリウムの量が少なすぎると、焼成後のNO吸蔵材の量が少なく、NO吸蔵性能が低下する可能性があるからである。
【0027】
カリウム化合物粒子及び他のNO吸蔵材原料の触媒担体粒子への担持量は、触媒担体粒子を基準として、焼成した後のNO吸蔵材の担持量が、NO吸蔵材を構成する金属元素換算で、5wt%以上、10wt%以上又は20wt%以上となるように担持することが好ましく、80wt%以下、60wt%以下又は40wt%以下となるように担持することが好ましい。これは、カリウム及び他のNO吸蔵材原料の量が多すぎると、後述する触媒金属の活性が低下する可能性があるからである。また、カリウム及び他のNO吸蔵材原料の量が少なすぎると、焼成後のNO吸蔵材の量が少なく、NO吸蔵性能が低下する可能性があるからである。
【0028】
[工程(B)]
本発明の実施形態における工程(B)では、カリウム化合物粒子を担持している触媒担体粒子を焼成することで、カリウム化合物粒子や他のNO吸蔵材の原料を、炭酸カリウム等のNO吸蔵材にする。
【0029】
工程(B)において、焼成温度と焼成時間は、不純物や任意選択の保護剤等を分解除去し、かつ、触媒金属を触媒担体上に担持するのに十分な温度及び時間で焼成すれば、特に限定はされない。例えば、大気雰囲気中において、焼成温度は、300℃以上、350℃以上又は400℃以上であることが好ましく、800℃以下、700℃以下又は600℃以下であることが好ましい。また、焼成時間は、30分間以上、1時間以上又は2時間以上であることが好ましく、10時間以下、8時間以下又は6時間以下であることが好ましい。
【0030】
工程(B)において、カリウム化合物粒子を担持している触媒担体粒子を焼成する前に乾燥をしてもよい。乾燥は、減圧下又は常圧下において、80℃以上250℃以下の温度で1時間以上24時間以下にわたって実施することができる。また、乾燥はマイクロ波等を使用して行ってもよい。
【0031】
[その他の工程]
本発明の実施形態におけるNO吸蔵還元触媒の製造方法は、工程(A)の前、工程(A)と工程(B)の間、又は工程(B)の後において、触媒担体粒子に触媒金属を担持することを含んでもよい。
【0032】
本発明の実施形態おける触媒金属の材料は、特に限定されないが、NO浄化用触媒の技術分野において、一般に触媒金属として知られる材料を使用することができる。例えば、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属を挙げることができる。これらの金属触媒を触媒担体粒子に担持させることで、NOの吸蔵能及び浄化性能だけでなく、COやHCの酸化活性についても顕著に改善することができる。
【0033】
触媒金属の担持量は、NOの酸化還元反応を促進できるという観点から、触媒担体粒子を基準として、焼成した後の触媒金属の担持量が触媒金属換算で、一般に、0.01wt%以上、0.1wt%以上又は0.5wt%以上であればよい。また、10wt%以下、5wt%以下又は3wt%以下であればよい。
【0034】
触媒金属の担持方法は、特に限定されないが、NO浄化用触媒の技術分野において、一般に触媒金属を触媒担体粒子に担持させる方法を用いることができる。例えば、触媒金属を構成する金属の酢酸塩又は硝酸塩等を含有する水溶液に触媒担体粒子を含浸させて担持する含浸法や、該水溶液にアンモニア水等の塩基性物質を加えて共沈させ、得られた沈殿物を熱処理する共沈法や、該水溶液にアルコール等の還元剤を添加し、必要に応じて加熱を行いながら、水溶液中に含まれる各金属元素のイオンを同時に還元する方法や、還元析出法等が挙げられる。中でも、触媒担体粒子の表面に触媒金属を分散させやすいという観点から、触媒金属を構成する金属の酢酸塩又は硝酸塩等を含有する水溶液に触媒担体粒子を含浸させて担持する含浸法が好ましい。
【0035】
触媒金属を触媒担体粒子に担持するタイミングは、特に限定されず、工程(A)の前、工程(A)と工程(B)の間又は工程(B)の後に行うことができる。中でも、カリウム化合物によるNO吸蔵性能を維持するという観点から、カリウム化合物粒子を触媒担体粒子に担持する前に、触媒金属を触媒担体粒子に担持することが好ましい。
【0036】
カリウム化合物粒子等のNO吸蔵材原料及び/又は触媒金属を担持している触媒担体粒子を、ハニカム基材上にコートすることができる。例えば、カリウム化合物粒子等のNO吸蔵材の原料や、触媒金属を担持している触媒担体粒子に、所定のバインダ等を加えてスラリー化し、これをハニカム基材上に塗布することができる。
【0037】
カリウム化合物粒子等のNO吸蔵材原料や、触媒金属を担持している触媒担体粒子をハニカム基材にコートするタイミングは、特に限定されない。例えば、工程(A)の前、すなわち、カリウム化合物粒子等のNO吸蔵材原料を触媒担体粒子に担持する前に、触媒担体粒子をハニカム基材上にコートしてもよいし、工程(A)と工程(B)の間でカリウム化合物粒子を担持している触媒担体粒子をハニカム基材上にコートしてもよい。中でも、工程(A)と記工程(B)の間でカリウム化合物粒子を担持している触媒担体粒子をハニカム基材上にコートすることが好ましい。ハニカム基材上にコートする前に、触媒担体粒子へのカリウム化合物粒子の分散担持状態を調整しやすいからである。
【0038】
ハニカム基材は、コージェライト、SiCなどのセラミックスからできていて、ハニカム形状である。ハニカム形状は、ストレートフロー構造またはウォールフロー構造であることができる。
【0039】
本発明の実施形態の製造方法によって製造されたNO吸蔵還元触媒において、触媒層中のカリウム含有NO吸蔵材粒子の粒子径は、融点の低下が起こりにくいという観点から、平均粒径が20nm以上、25nm以上又は30nm以上であることが好ましい。また、比表面積を大きくして、NO吸蔵性能を向上できるという観点から、平均粒径が50nm以下、45nm以下又は40nm以下であることが好ましい。
【0040】
本発明の実施形態における粒径とは、粒子の直径をいい、粒子が球でない場合には、粒子の最大直径をいう。
【0041】
カリウム含有NO吸蔵材粒子の平均粒子径は、例えば、走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)により測定することができる。その場合、カリウム含有NO吸蔵材が担持された粉末を、エタノール等の溶媒に分散させた後に、銅グリッドに滴下して乾燥させた粉末を用いて、カリウム含有NO吸蔵材粒子の粒子径を測定してもよい。STEMによる画像から無作為に複数の粒子を選択し、それらの粒子径を測定し、平均粒子径を算出することが好ましい。測定する粒子の数(n)は、n=5以上が好ましく、n=10以上が更に好ましい。
【実施例】
【0042】
<実施例>
1.触媒粉末の合成(触媒金属の担持)
500mLビーカーに蒸留水50mLを入れ、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(Pt濃度8.5wt%)を17g加えて溶解させた。続いて、Al−ZrO−TiO複合酸化物担体粒子(AZT担体、堺化学工業株式会社)を231.5g加えて加熱し、蒸発乾固させた。それを120℃で一晩乾燥させてから粉砕した。粉砕させた粉末をるつぼに移し、750℃で2時間焼成し、Pt濃度が0.63wt%で担持されたPt/AZT粒子を得た。
【0043】
2.スラリーの調製
バインダであるディスパル14/7を9.9g、5%HEC(ヒドロキシルエチルセルロース)を4.8g用意し、蒸留水161gに溶解させた。その後、そこに触媒粉末である上記Pt/AZT粒子を159.8g、カリウム化合物粒子としてオテラシルカリウムを28.2g加えて、ボールミルで粉砕してスラリーを調製した。
【0044】
3.ハニカム基材へのコート
モノリステストピース(φ30mm×50mm、4ミル 400四角セル)に上記スラリーをウォッシュコート(コート量6.3±0.31g)し、乾燥後、500℃で1時間焼成して触媒テストピースを得た。
【0045】
<比較例1>
1.触媒粉末の合成(触媒金属の担持)
実施例と同様にPt/AZT粒子を得た。
【0046】
2.スラリーの調製
実施例の2.スラリーの調製におけるオテラシルカリウムに代わって、カリウム化合物粒子として、酒石酸水素カリウム(水に対する溶解度:600mg/100ml−HO)を29.2g用いたこと以外は、実施例と同様にスラリーを調製した。
【0047】
3.ハニカム基材へのコート
比較例1のスラリーを用いて、実施例と同様の方法で触媒テストピースを得た。
【0048】
<比較例2>
1.K−Ti複合体前駆体水溶液の作製
多座配位子を有するクエン酸1.5molをイオン交換水に溶解し、75℃に加熱した。この溶液に、チタンイソプロポキシド0.3molを加え、溶解後に室温まで冷却して、チタンクエン酸錯体水溶液(0.57mol/L)を調製した。得られたチタンクエン酸錯体水溶液6.15mlに、30%過酸化水素水溶液を0.6ml加えた。さらに、酢酸カリウム水溶液(4.26mol/L)を1.64mL加えて撹拌し、K−Ti複合体前駆体水溶液を調製した。このとき、該水溶液中のTiとKのモル比(Ti/K)は0.5であり、KとTiが微細な状態で複合化していると考えられる。
【0049】
2.スラリーの調製
バインダである硝酸アルミニウム・9水和物を39.7g、キャタパルD(硝酸系酸性バインダー、ビスタケミカル(株)製)を4.5g用意し、蒸留水183gに溶解させた。その後、触媒粉末である上記Pt/AZT粒子を159.8g加えて、ボールミルで粉砕してスラリーを調製した。
【0050】
3.NO吸蔵材の担持とハニカム基材へのコート
モノリステストピース(φ30mm×50mm、4ミル 400四角セル)に比較例2の上記スラリーをウォッシュコート(コート量6.3±0.31g)し、250℃で焼成後、上記K‐Ti複合体前駆体水溶液(0.15mol/L)に吸水担持した。それを乾燥後、500℃で1時間焼成して、触媒テストピースを得た。
【0051】
<高温耐久試験>
実施例及び比較例1〜2の触媒テストピースにおいて、高温耐久試験の前及び後の触媒テストピースのNO浄化性能を評価するために、以下の表1に示す条件で、リーン/リッチサイクルを5時間行うことで、高温耐久試験を実施した。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例及び比較例1〜2の高温耐久試験前及び高温耐久試験後の触媒テストピースを固定床流通式反応器に充填し、温度250℃、300℃、350℃、400℃、450℃において、以下の表2に示す条件で、リーンガス及びリッチガスを交互に流通させた(ガス流量15L/分)。リーン/リッチサイクルの間の入り口側NO濃度及び出口側NO濃度からNO浄化率を算出した。その結果を図2及び3に示す。
【0054】
図2の高温耐久試験前で示されるように、実施例のNO吸蔵還元触媒では、250〜450℃の範囲におけるNO浄化率は、比較例1〜2よりも低い。一方、図3の高温耐久試験後で示されるように、実施例のNO吸蔵還元触媒では、250〜450℃の範囲におけるNO浄化率は、比較例1〜2よりも高い。このことから、実施例のNO吸蔵還元触媒は、高温耐久によるNO浄化率の低下を最も抑制できていることがわかる。
【0055】
【表2】
【0056】
<カリウムの分布分析>
実施例及び比較例1〜2の触媒テストピースから1cm角の部位を切り出し、エポキシ樹脂に埋め、表面をアルコールで研磨した分析試料について、電子線マイクロアナライザ(EPMA:MACHS2000、株式会社 島津製作所)により、NO吸蔵還元触媒中におけるカリウムの分布状態を分析した。その結果を図4に示す。
【0057】
高温耐久試験による触媒層からハニカム基材へのカリウムの移動量を測定するために、ライン分析を実施した。EPMAによって得られた実施例及び比較例1〜2のNO吸蔵還元触媒におけるカリウム原子の分布状態(図4)において、図4(c)のように、ハニカム基材の位置を含むようにラインを引き、そのライン上のカリウム原子の濃度を測定した。その結果を図5に示す。
【0058】
図5(b)及び(c)で示される比較例1及び2では、高温耐久試験前より高温耐久試験後の方が、ハニカム基材でのカリウム濃度が増加していることが観察された。一方、図5(a)で示される実施例では、高温耐久試験前と高温耐久試験後におけるハニカム基材でのカリウム濃度の違いがほとんど観察されず、ハニカム基材へのカリウムの移動が抑制されていることがわかる。
【0059】
図5に示すようなライン分析を5箇所(n=5)で実施し、ハニカム基材に相当する部分の濃度の面積から、高温耐久試験前後でのハニカム基材におけるカリウムの量を測定した。そして、高温耐久試験前後でのカリウムの量の差から、カリウムのハニカム基材への移動量を算出した。その結果を表3及び図6に示す。
【0060】
表3で示されるように、実施例はカリウムの触媒層からハニカム基材への移動量が比較例1〜2より少ない。ハニカム基材へ移動したカリウムは、NO吸蔵には寄与しないため、図3において、高温耐久試験後の比較例1〜2は、NO浄化率が実施例よりも大きく低下している。実施例ではカリウムの触媒層からハニカム基材への移動量を抑制できているため、NO浄化率の低下を比較例1及び2より抑制できると考えられる。
【0061】
【表3】
【0062】
<NO吸蔵材粒子の粒子径>
触媒テストピースから触媒層の粉末をかきとり、得られた粉末をエタノールに分散させた後、Cuグリッドに滴下して乾燥させた。乾燥後の粉末を、収差補正走査透過型電子顕微鏡(Cs−Corrected STEM:HD−2700、株式会社日立製作所、加速電圧200kV)により観察した。実施例及び比較例1〜2のNO吸蔵還元触媒において、無作為に選択した15個のカリウム含有NO吸蔵材粒子(n=15)の平均粒径を図7に示す。
【0063】
図6及び7で示されるように、実施例は、比較例1〜2に比較して、平均粒径が大きい。平均粒径が大きいことで、炭酸カリウム等のカリウム含有NO吸蔵材粒子の融点の低下を抑制できるため、高温時に炭酸カリウムが溶融せず、カリウムのハニカム基材への移動を抑制できたと考えられる。その結果、高温耐久後も触媒層にカリウムを保持できるため、高温耐久後のNO浄化率の低下を抑制できたと考えられる。
【0064】
なお、上記において、実施例及び比較例1〜2における高温耐久試験後のカリウム含有NO吸蔵材粒子を上記走査透過型電子顕微鏡で観察し、これによって得られたSTEM像を図8に示している。
【符号の説明】
【0065】
1 カリウム化合物粒子
2 カリウムイオン
3 粒子径の大きなカリウム含有NO吸蔵材粒子
4 粒子径の小さなカリウム含有NO吸蔵材粒子
5 触媒担体粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8