特許第6439765号(P6439765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439765
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20181210BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20181210BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   G01N27/416 331
   G01N27/41 325H
   G01N27/419 327H
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-175492(P2016-175492)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-40715(P2018-40715A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 幹泰
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−344348(JP,A)
【文献】 特開2003−083930(JP,A)
【文献】 特開2002−174616(JP,A)
【文献】 特開2000−180409(JP,A)
【文献】 特開2010−145214(JP,A)
【文献】 特開昭61−003050(JP,A)
【文献】 特開2000−206080(JP,A)
【文献】 特表平07−508100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406−27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
上記センサ素子は、ジルコニア材料からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、該固体電解質層の両主面に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、上記固体電解質層に積層された、純度が98%以上のアルミナ材料からなる絶縁層(41,42,43,44,41A,42A,43A,44A,45A)と、該絶縁層に埋設された発熱体(6)とを備え、
上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成するアルミナ材料の電気伝導率よりも電気伝導率が高いジルコニア材料からなるとともに、厚み(t)が5〜25μmであり、かつ上記発熱体から生じる誘導ノイズを吸収するためのノイズ吸収層(7)が配置されており、
該ノイズ吸収層は、上記絶縁層に積層されるとともに、その電位が独立している、ガスセンサ。
【請求項2】
前記固体電解質層と前記発熱体との間の絶縁抵抗値は、900℃において20MΩ以上である、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
上記ノイズ吸収層は、上記発熱体における発熱部(61)の外形を、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)に向けて上記ノイズ吸収層に投影したときに、上記発熱部の外形の全体を覆う位置及び大きさに形成されている、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
上記ノイズ吸収層は、上記複数の電極の外形を、上記固体電解質層と上記絶縁層との積層方向(D)に向けて上記ノイズ吸収層に投影したときに、上記複数の電極の外形の全体を覆う位置及び大きさに形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
上記ノイズ吸収層の全体が上記絶縁層の内部に埋設されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項6】
上記発熱体と上記ノイズ吸収層との間隔(D2)は、上記複数の電極のうちの上記ノイズ吸収層に最も近い電極と上記ノイズ吸収層との間隔(D1)よりも狭い、請求項1〜のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項7】
上記固体電解質層(2)の第1主面(201)には、上記複数の電極のうちのいずれかである測定電極(31)に測定ガス(G)を接触させるための測定ガス室(51)が隣接して形成されており、
該測定ガス室は、該測定ガス室へ上記測定ガスを所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40)と、上記絶縁層とによって囲まれて形成されており、
上記固体電解質層(2)の第2主面(202)には、上記絶縁層によって囲まれ、上記複数の電極の他のいずれかである基準電極(32)に基準ガス(A)を接触させるための基準ガスダクト(52)が隣接して形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項8】
上記センサ素子は、上記固体電解質層を複数備えており、
上記固体電解質層同士の間には、測定ガス(G)が導入される測定ガス室(51)が形成されており、
該測定ガス室は、該測定ガス室へ上記測定ガスを所定の拡散速度で導入するための多孔質の金属酸化物からなる拡散抵抗層(40B)と、上記絶縁層とによって囲まれて形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極が設けられた固体電解質層と発熱体とを有するセンサ素子を備えるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃度、NOx(窒素酸化物)濃度、内燃機関の空燃比等を測定するガスセンサは、複数の電極が設けられた固体電解質層と、固体電解質層を加熱するための発熱体とを備える。固体電解質層及び複数の電極は、通電によって発熱する発熱体からの熱伝達により加熱され、発熱体の加熱を受けて、目標とする活性化温度になるように制御される。発熱体は、アルミナ等の絶縁物からなる絶縁層に埋設されており、発熱体による熱は、絶縁層を介して固体電解質層及び複数の電極に伝達される。
【0003】
また、例えば、特許文献1のガスセンサにおいては、センサ素子と加熱用ヒータとの間に設けられた導電性のシールドによって、加熱用ヒータからのリーク電流がセンサ素子に流れることを遮蔽することが開示されている。この導電性のシールドは、金属板又は導電性皮膜によって形成されており、アルミナ等の絶縁層に積層して設けられている。また、導電性のシールドは、グラウンド電位等のリーク電流を打ち消すような電位に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−180409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスセンサにおいては、一対の電極と一対の電極に挟まれた固体電解質層の一部とによるセルの温度が目標温度になるように制御され、発熱体への通電状態が、例えばオン・オフの状態として変化する。そして、発熱体への通電状態が変化するごとに、発熱体から誘導ノイズが発生し、この誘導ノイズが、セルによってガス濃度を検出する際のセンサ出力に影響を及ぼす。
【0006】
特許文献1の導電性のシールドは、加熱用ヒータからのリーク電流を、導電性のシールドを介してグラウンド電位等に流すために用いられる。そのため、この導電性のシールドは、発熱体の通電状態が変化する際に生じる誘導ノイズがセンサ出力に与える影響を緩和するものではない。また、特許文献1においては、導電性のシールドをグラウンド電位等に接続するための構造が必要になり、ガスセンサの構造が複雑になる。
【0007】
特に、近年のガスセンサのセンサ素子においては、素子を活性させるための時間の短縮、消費電力を低減させるための熱マスの低減等が要求され、より小型化される傾向にある。そのため、センサ素子において、導電性のシールドをグラウンド電位等に接続するための配線構造、端子等を追加するためのスペースを確保することは困難である。
【0008】
さらに、特許文献1においては、導電性のシールドは、金属板、又は金、白金等の導電性皮膜によって構成される。そのため、金属板又は導電性皮膜の線膨張係数と絶縁層の線膨張係数との差が大きいことにより、両者の界面応力が大きくなる。そのため、金属板又は導電性皮膜と絶縁層との間に剥がれ等の懸念が生じ、ガスセンサの信頼性を悪化させるおそれがある。
【0009】
特許文献1の出願時においては、異種材料の接合技術のレベルが低かった。そして、センサ素子におけるセンサ部の基体とヒータの基体とを、例えば高温絶縁性の低いジルコニア等によって形成することが行われていた。また、センサ部の基体をジルコニアによって形成するとともに、ヒータの基体を、センサ部の基体との熱膨張の差を小さくするために、アルミナにジルコニアを含有させて形成することが行われていた。そのために、高温環境下での各基体の絶縁抵抗が低く、ヒータからのリーク電流がノイズとしてガス濃度の検出に作用することが問題となっていた。
【0010】
近年においては、異種材料の接合技術のレベルが向上し、ヒータの基体に純度の高いアルミナ材料を用いることによって、高温環境下においても、ヒータからのリーク電流によるセンサ検出誤差が無視できる程度の絶縁性を確保できるようになった。これにより、特許文献1の出願時における課題であるヒータからのリーク電流は、アルミナ材料の改良によって解決されている。
【0011】
また、近年、排ガス規制強化等によって、これまで以上に精密に、排ガス等における特定ガス成分のガス濃度を検出するニーズが高まっている。本願発明者は、このニーズに対応するガスセンサの開発を進めた結果、従来は問題とされていなかった、ヒータからのリーク電流に比べて遥かに小さな、ヒータからの誘導電流が、誘導ノイズとしてガス濃度の検出に影響を与えることを見出した。この誘導ノイズがガス濃度の検出に影響を与えるといった課題は、従来のガスセンサにおいては全くなかったものであり、本願発明者の鋭意研究の結果、見出されたものである。
【0012】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、構造が複雑になることが防止されるとともに信頼性が維持され、ガス濃度の検出精度が向上するガスセンサを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、ガス濃度を検出するためのセンサ素子(1)を備えるガスセンサ(100)であって、
上記センサ素子は、ジルコニア材料からなる1つ又は複数の固体電解質層(2,2A,2B)と、該固体電解質層の両主面に設けられた複数の電極(31,32,33,34)と、上記固体電解質層に積層された、純度が98%以上のアルミナ材料からなる絶縁層(41,42,43,44,41A,42A,43A,44A,45A)と、該絶縁層に埋設された発熱体(6)とを備え、
上記絶縁層における、上記固体電解質層と上記発熱体との間に位置する部分には、上記絶縁層を構成するアルミナ材料の電気伝導率よりも電気伝導率が高いジルコニア材料からなるとともに、厚み(t)が5〜25μmであり、かつ上記発熱体から生じる誘導ノイズを吸収するためのノイズ吸収層(7)が配置されており、
該ノイズ吸収層は、上記絶縁層に積層されるとともに、その電位が独立している、ガスセンサにある。
【発明の効果】
【0014】
上記ガスセンサにおいては、絶縁層における、固体電解質層と発熱体との間に位置する部分には、発熱体から生じる誘導ノイズを吸収することが可能なノイズ吸収層が配置されている。このノイズ吸収層を構成する金属酸化物としてのジルコニア材料の電気伝導率(導電率ともいう。)は、絶縁層を構成する金属酸化物としてのアルミナ材料の電気伝導率よりも高い。このノイズ吸収層により、次の効果が得られる。
【0015】
発熱体への通電状態が変化するときには、発熱体の周囲に生じる磁界が変化し、誘導ノイズを生じさせる。このとき、発熱体と固体電解質層との間に配置されたノイズ吸収層によって磁界が遮られ、ノイズ吸収層によって磁束が吸収される。これにより、発熱体から生じる誘導ノイズがノイズ吸収層によって吸収され、誘導ノイズが、固体電解質層及び複数の電極によってガス濃度を検出する際のセンサ出力に影響を及ぼすことが抑制される。この結果、ガスセンサによるガス濃度の検出精度が向上する。
【0016】
ノイズ吸収層は、発熱体から生じる誘導ノイズを吸収するためのものであり、発熱体の周囲に生じる磁束がノイズ吸収層に衝突する際に、この磁束を渦電流によって消滅させるものである。渦電流は、電流が流れやすいほど発生しやすく、ノイズ吸収層の電気伝導率が絶縁層の電気伝導率よりも高いことによって、ノイズ吸収層に渦電流を効果的に発生させることができる。
【0017】
また、ノイズ吸収層は、絶縁層に積層されるとともに、その電位が独立しており、グラウンド電位等のガスセンサの周辺の電位には接続されていない。そのため、ノイズ吸収層をガスセンサの外部におけるグラウンド電位等に接続するための配線の必要がなく、ガスセンサの構造が複雑になることが防止される。ノイズ吸収層の電位が独立する状態とは、ノイズ吸収層に導体等の導電性の物質が接触せず、ノイズ吸収層とその外部との間に電流が流れないことを意味する。
【0018】
また、ノイズ吸収層は、ジルコニア材料から構成されており、絶縁層を構成するアルミナ材料と同様に、金属酸化物から構成されている。これにより、ノイズ吸収層の線膨張係数と絶縁層の線膨張係数とが近く、ノイズ吸収層と絶縁層との接合の密着度を高く維持することができる。センサ素子にノイズ吸収層が設けられていても、ノイズ吸収層と絶縁層と間に界面応力が作用することが抑制される。その結果、ノイズ吸収層と絶縁層との間に剥がれ等の懸念がなくなり、ガスセンサの信頼性の低下が抑制される。
【0019】
また、ノイズ吸収層をジルコニア材料から構成することにより、ノイズ吸収層と、絶縁層を構成するアルミナ材料との接合の密着度をより高めることができる。ノイズ吸収層をジルコニア材料から構成することにより、センサ素子の焼結時及び使用時における耐酸化性を良好に維持することができる。ノイズ吸収層をジルコニア材料以外の材料によって構成する場合には、耐酸化性を考慮した貴金属等を使用する必要が生じ、製造管理及び製造コストの点において不利になる。
【0020】
さらに、絶縁層は、純度が98%以上のアルミナ材料から構成されている。このような高純度のアルミナ材料を使用できることにより、発熱体からのリーク電流を考慮する必要性を低減することができる。そして、発熱体からの誘導ノイズを吸収するためのノイズ吸収層をセンサ素子に設けるといった、全く新しい構成を見出すことができた。なお、絶縁層の純度が98%未満である場合には、発熱体からのリーク電流を考慮する必要が生じ、本センサ素子の構造を採用する必要性が薄れる。
【0021】
それ故、上記ガスセンサによれば、構造が複雑になることが防止されるとともに信頼性が維持され、ガス濃度の検出精度が向上する。
【0022】
なお、本発明の一態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1にかかる、センサ素子における、複数の電極の形成部位の断面を示す説明図。
図2】実施形態1にかかる、センサ素子の各構成要素を、センサ素子を分解した状態で示す斜視図。
図3】実施形態1にかかる、センサ素子を備えるガスセンサの断面を示す説明図。
図4】実施形態1にかかる、他のセンサ素子における、複数の電極の形成部位の断面を示す説明図。
図5】実施形態1にかかる、他のセンサ素子における、複数の電極の形成部位の断面を示す説明図。
図6】実施形態2にかかる、センサ素子における、複数の電極の形成部位の断面を示す説明図。
図7】実施形態2にかかる、センサ素子を備えるガスセンサの断面を示す説明図。
図8】確認試験にかかる、比較品について、発熱体への印加電圧及びセンサ出力電流の変化を示すグラフ。
図9】確認試験にかかる、試験品について、発熱体への印加電圧及びセンサ出力電流の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述したガスセンサにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
本形態のガスセンサ100は、ガス濃度を検出するためのセンサ素子1を備える。センサ素子1は、図1に示すように、ジルコニア材料からなる1つの固体電解質層2と、固体電解質層2の両主面201,202に設けられた一対の電極31,32と、固体電解質層2に積層された、純度が98%以上のアルミナ材料からなる絶縁層41,42,43,44と、絶縁層43,44に埋設された発熱体6とを備える。絶縁層42,43における、固体電解質層2と発熱体6との間に位置する部分には、発熱体6から生じる誘導ノイズを吸収するためのノイズ吸収層7が配置されている。ノイズ吸収層7は、絶縁層42,43を構成するアルミナ材料の電気伝導率よりも電気伝導率が高いジルコニア材料からなる。ノイズ吸収層7は、絶縁層42,43に積層されるとともに、その電位が独立している。
【0025】
以下、本形態のガスセンサ100について詳説する。
ガスセンサ100は、車両の排気管に配置され、排気管を流れる排ガスを測定ガスGとするとともに大気を基準ガスAとし、測定ガスG中の酸素、NOx(窒素酸化物)等の濃度、内燃機関の空燃比(A/F)等を検出するために用いられる。本形態のガスセンサ100は、固体電解質層2を構成する金属酸化物のシートと、絶縁層41,42,43,44を構成する金属酸化物のシートとを積層し、焼結して形成されたものである。
【0026】
図3に示すように、ガスセンサ100は、センサ素子1、ハウジング70、絶縁碍子71,72、接点端子73、リード線74、カバー75、ブッシュ76、二重のカバー77A,77B等を備える。
センサ素子1は絶縁碍子71に保持されており、絶縁碍子71はハウジング70に保持されている。ガスセンサ100は、ハウジング70によって排気管に取り付けられ、センサ素子1は、排気管内に配置される。また、ハウジング70には、センサ素子1の先端部を覆う二重のカバー77A,77Bが取り付けられている。カバー77A,77Bには、センサ素子1のガス検知部10へ測定ガスGを流入させるための貫通穴771が形成されている。センサ素子1は、長尺形状に形成されており、被検出ガスGを検出するためのガス検知部10は、センサ素子1における長尺方向Lの先端側の端部に設けられている。
【0027】
一対の電極31,32は固体電解質層2の先端部に設けられており、ガス検知部10は、センサ素子1における、一対の電極31,32が位置する先端部に形成されている。また、ガス検知部10は、アルミナ(酸化アルミニウム)等の多孔質の保護層12によって覆われている。
【0028】
絶縁碍子71の基端側には、接点端子73を保持する別の絶縁碍子72が配置されている。後述する、各電極31,32のリード部311,321及び発熱層6のリード部62は、センサ素子1の基端部に引き出され、接点端子73に接続されている。接点端子73に接続されたリード線74は、ハウジング70の基端側に取り付けられたカバー75内において、ブッシュ76によって保持されている。カバー75には、ガスセンサ1内へ基準ガスAを流入させるための貫通穴751が形成されている。
【0029】
固体電解質層2は、金属酸化物としてのジルコニア材料の焼結体として板状に形成されている。固体電解質層2を構成するジルコニア材料は、イットリア部分安定化ジルコニア等のジルコニア(酸化ジルコニウム)の材料からなる。ジルコニア材料は、ジルコニアを主成分とする種々の材料によって構成することができる。ジルコニア材料には、希土類金属元素もしくはアルカリ土類金属元素によってジルコニアの一部を置換させた安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを用いることができる。
なお、固体電解質層2は、その活性化温度において、酸化物イオン(酸素イオン)の伝導性を有するものである。
【0030】
図1に示すように、一対の電極31,32は、固体電解質層2の第1主面201に設けられて測定ガスGに晒される測定電極31と、固体電解質層2の第2主面202に設けられて基準ガスAに晒される基準電極32とからなる。測定電極31と基準電極32とは固体電解質層2を介して互いに対向する位置に設けられている。測定電極31及び基準電極32と、これらの間に配置された固体電解質層2の一部とによって、ガス濃度を検出するための検出セル11が形成されている。
【0031】
本形態のガスセンサ100は、酸素センサ又はA/Fセンサとして用いられる。そして、ガスセンサ100においては、測定電極31に接触する測定ガスGの酸素濃度と基準電極32に接触する基準ガスAの酸素濃度との差によって、測定電極31と基準電極32との間に流れる電流が測定され、測定ガスGの酸素濃度が求められる。
【0032】
また、ガスセンサ100をNOxセンサとして用いる場合には、固体電解質層2の第1主面201には、酸素濃度を所定の濃度以下に調整するためのポンプ電極と、NOx濃度を測定するための測定電極とが設けられる。この場合、ガスセンサ100においては、測定ガスGのNOx濃度によって、測定電極と基準電極との間に流れる電流が測定され、測定ガスGのNOx濃度が求められる。
【0033】
図2に示すように、測定電極31及び基準電極32は、白金と、固体電解質層2と同種の金属酸化物からなる固体電解質とを含有している。測定電極31及び基準電極32には、測定電極31及び基準電極32をガスセンサ100の外部の制御装置に接続するためのリード部311,321がそれぞれ繋がっている。各リード部311,321は、各電極31,32からセンサ素子1の基端部まで引き出されている。
【0034】
図1図2に示すように、固体電解質層2の第1主面201には、第1絶縁層41及び多孔質の拡散抵抗層40が順次積層されている。固体電解質層2の第1主面201には、第1絶縁層41及び拡散抵抗層40によって囲まれ、測定ガスGが導入される測定ガス室51が隣接して形成されている。拡散抵抗層40は、測定ガスGを所定の拡散速度で測定ガス室51に導入するためのものである。
【0035】
固体電解質層2の第2主面202には、第2絶縁層42が積層されている。固体電解質層2の第2主面202には、第2絶縁層42によって囲まれ、基準ガスAが導入される基準ガスダクト52が隣接して形成されている。基準ガスダクト52には、センサ素子1の基端部から大気が導入される。
【0036】
発熱体6は、第2絶縁層42に積層された第3絶縁層43と、第3絶縁層43に積層された第4絶縁層44との間に埋設されている。発熱体6は、通電によって発熱する発熱部61と、発熱部61の両端に繋がり、ガスセンサ100の外部の制御装置によって発熱部61に通電するための一対のリード部62とを有している。発熱部61は、固体電解質層2に各電極31,32が配置された部位を、センサ素子1の積層方向Dに向けて絶縁層42,43へ投影した部位に配置されている。
【0037】
発熱部61は、リード部62に比べて比抵抗が大きくなるよう形成されている。例えば、発熱部61の断面積をリード部62の断面積よりも小さくすることにより、発熱部61の比抵抗をリード部62の比抵抗よりも大きくすることができる。
【0038】
ここで、センサ素子1の積層方向Dとは、固体電解質層2と複数の絶縁層41,42,43,44とが積層された方向のことをいう。また、発熱部61の単位長さ当たりの電気抵抗値は、リード部62の単位長さ当たりの電気抵抗値よりも大きい。そして、一対のリード部62に通電を行うときには、発熱部61が発熱し、検出セル11を加熱することができる。
【0039】
なお、第2絶縁層42と第3絶縁層43と第4絶縁層44とは、センサ素子1を焼結する際に一体化される。そして、発熱体6及びノイズ吸収層7は、一体化された絶縁層42,43,44の内部に埋設される。
【0040】
ノイズ吸収層7は、金属酸化物としてのジルコニア材料の焼結体として板状に形成されている。ノイズ吸収層7を構成するジルコニア材料は、固体電解質層2を構成するジルコニア材料と同種のジルコニア材料であるイットリア部分安定化ジルコニア等のジルコニアの材料からなる。ジルコニア材料は、ジルコニアを主成分とする種々の材料によって構成することができる。ジルコニア材料には、希土類金属元素もしくはアルカリ土類金属元素によってジルコニアの一部を置換させた安定化ジルコニアもしくは部分安定化ジルコニアを用いることができる。
【0041】
また、複数の絶縁層41,42,43,44は、純度が98%以上であるアルミナによって構成されている。複数の絶縁層41,42,43,44は、アルミナを主成分とする種々の材料によって構成することができる。
本形態の絶縁層41,42,43,44によれば、固体電解質層2と発熱体6との間の絶縁抵抗値が、900℃において20MΩ以上に保たれる。固体電解質層2と発熱体6との間の絶縁抵抗値は、具体的には、絶縁層42,43自体の抵抗値と、絶縁層42と固体電解質層2との境界の抵抗値と、絶縁層43と発熱体6との境界の抵抗値とを合わせた値となる。
【0042】
ジルコニアの電気伝導率は、300℃で約1×10-4[Ω-1・m-1]、700℃で約5[Ω-1・m-1]であり、アルミナの電気伝導率は、300℃で約1×10-12[Ω-1・m-1]、700℃で約1×10-6[Ω-1・m-1]である。電気伝導率(導電率)は、電気伝導のしやすさを 示す物性値であり、電気抵抗率の逆数として表される。ジルコニアの電気伝導率は、アルミナの電気伝導率よりも高い。
また、ジルコニアの線膨張係数(線膨張率)は、9〜11×10-6[K-1]であり、アルミナの線膨張係数(線膨張率)は、7〜9×10-6[K-1]である。
【0043】
図2に示すように、ノイズ吸収層7は、発熱体6における発熱部61の外形を、センサ素子1の積層方向Dに向けてノイズ吸収層7に投影したときに、発熱部61の外形の全体を覆う位置及び大きさに形成されている。ノイズ吸収層7の幅方向Wの寸法W1は、発熱部61の幅方向Wの寸法W2よりも大きく、ノイズ吸収層7の長手方向Lの寸法L1は、発熱部61の長手方向Lの寸法L2よりも大きい。また、ノイズ吸収層7の幅方向Wの寸法W1は、一対の電極31,32の幅方向Wの寸法よりも大きく、ノイズ吸収層7の長手方向Lの寸法L1は、一対の電極31,32の長手方向Lの寸法よりも大きい。
この構成により、発熱体6から生じる誘導ノイズがノイズ吸収層7を回り込んで一対の電極31,32に到達しにくくすることができ、ノイズ吸収層7による誘導ノイズの吸収効果を高めることができる。
【0044】
なお、ノイズ吸収層7は、図4に示すように、発熱体6における発熱部61の外形を、センサ素子1の積層方向Dに向けてノイズ吸収層7に投影したときに、発熱部61の外形の全体よりも小さく形成されていてもよい。この構成は、発熱体6から生じる誘導ノイズが一対の電極31,32によるガス濃度の検出に及ぼす影響が許容できる場合に採用することができる。また、この場合においては、ノイズ吸収層7の外形は、センサ素子1の積層方向Dに向けて投影したときに、一対の電極31,32の外形よりも大きい。
【0045】
ノイズ吸収層7の厚みtは、導電性の確保と製造上の制約との兼ね合いより、5〜25μmとすることができる。ジルコニアの粒子の直径は1μm程度であり、ノイズ吸収層7の厚みtが5μm未満である場合には、ノイズ吸収層7の全体に亘って導電性を確保することが難しくなるおそれがある。また、ノイズ吸収層7を印刷(ペーストの塗布)によって形成する場合、ノイズ吸収層7を5μm未満の厚みtに形成することは困難と考えられる。一方、ノイズ吸収層7の厚みtが25μm超過まで厚くなると、センサ素子1の焼結時に、ノイズ吸収層7の周辺に割れ等が生じることが懸念される。
【0046】
図1に示すように、ノイズ吸収層7は、絶縁層42,43の内部として、基準ガスダクト52が形成された第2絶縁層42と、第3絶縁層43との間に埋設されている。ノイズ吸収層7の全体が絶縁層42,43の内部に埋設されていることにより、センサ素子1が被水する場合における耐熱衝撃性を高く維持することができる。ノイズ吸収層7の一部が絶縁層42,43の表面に露出する場合において、ノイズ吸収層7と絶縁層42,43の界面が被水したとき、この界面には、ノイズ吸収層7と絶縁層42,43との線膨張係数の差により、熱応力が作用するおそれがある。そのため、ノイズ吸収層7の全体が絶縁層42,43の内部に埋設されていることにより、耐熱衝撃性を高めることができる。
【0047】
なお、本形態の固体電解質層2の一部はセンサ素子1の表面に露出している。ノイズ吸収層7は、固体電解質層2と発熱体6と間に配置されており、発熱体6により近く、より高温に加熱されることになる。従って、より高温になるノイズ吸収層7は耐熱衝撃性のために絶縁層42,43の内部に埋設する。一方、ノイズ吸収層7よりは高温になりにくい固体電解質層2については、その一部がセンサ素子1の表面に露出していても、熱衝撃がそれほど大きくはならない。
【0048】
ノイズ吸収層7の一部(端面)は、図5に示すように、絶縁層42,43の外部であってセンサ素子1の表面に露出していてもよい。この場合、ノイズ吸収層7は、センサ素子1の幅方向Wの全体に設けられる。この場合には、ガスセンサ100において、センサ素子1が被水しにくい構造を採用することにより、ノイズ吸収層7の一部と絶縁層42,43との間の熱衝撃を、許容できるようにすることができる。また、この場合には、ノイズ吸収層7の両主面701が絶縁層42,43にのみ接触し、ノイズ吸収層7の端面702は、多孔質の保護層12に接触することになる。
【0049】
また、絶縁層41,42,43,44がアルミナ材料によって構成されていることにより、センサ素子1における絶縁性を確保するとともに、ノイズ吸収層7との接合密着力を維持することができる。
【0050】
図1に示すように、ノイズ吸収層7の両主面701及び全ての端面702は、絶縁層42,43にのみ接触している。ノイズ吸収層7には、グラウンド電位等に接続される導体等の導電性の物質が設けられておらず、センサ素子1における周囲の部分から電位が独立している。このノイズ吸収層7の状態は、ノイズ吸収層7に接触する固体の物質は絶縁層42,43のみであり、ノイズ吸収層7に導体等の導電性の物質が接触していないことを意味する。また、このノイズ吸収層7の状態は、ノイズ吸収層7とその外部との間に電流が流れないことを意味する。ノイズ吸収層7の全体が絶縁層42,43の内部に埋設されることにより、ノイズ吸収層7をグラウンド電位等に接地しない状態の形成が容易になる。
【0051】
第2絶縁層42と第3絶縁層43とに挟まれたノイズ吸収層7は、センサ素子1の積層方向Dにおいて発熱体6の近くに位置している。具体的には、発熱体6とノイズ吸収層7との間隔D2は、複数の電極のうちのノイズ吸収層7に最も近い電極である基準電極32とノイズ吸収層7との間隔D1よりも狭い。発熱体6とノイズ吸収層7との間隔D2は、発熱体6の表面とノイズ吸収層7の表面との間の最小間隔として表され、基準電極32とノイズ吸収層7との間隔D1は、基準電極32の表面とノイズ吸収層7の表面との間の最小間隔として表される。
この構成により、ノイズ吸収層7が発熱体6によって加熱されやすくなり、ノイズ吸収層7の温度の上昇によってその抵抗値が低下し、ノイズ吸収層7による誘導ノイズの吸収効果を高めることができる。
【0052】
ガスセンサ100の温度制御は、検出セル11の温度と、検出セル11のインピーダンスとの関係を用いて行われる。検出セル11の温度と、検出セル11のインピーダンスとの関係は、関係マップとして制御装置に記憶されている。制御装置には、検出セル11のインピーダンスを測定する回路が形成されている。発熱体6への印加電力は、PWM制御(パルス幅変調制御)等を利用したPID制御等によって、検出セル11のインピーダンスが目標とする値になるよう調整される。PWM制御を行う際には、発熱体6への通電のオン・オフが繰り返し行われる。そして、この発熱体6への通電のオン・オフに伴って、発熱体6から誘導ノイズが生じる。
【0053】
本形態のガスセンサ100においては、第2絶縁層42と第3絶縁層43との間に、発熱体6から生じる誘導ノイズを吸収するためのノイズ吸収層7が埋設されていることにより、次の効果が得られる。
発熱体6への通電のオン・オフの切替によって発熱体6の通電状態が変化するときには、発熱体6の周囲に生じる磁界が変化し、誘導ノイズを生じさせる。このとき、発熱体6と固体電解質層2との間に配置されたノイズ吸収層7は電磁シールド層として機能し、ノイズ吸収層7によって磁界が遮られる。そして、ノイズ吸収層7における、磁束が衝突する部分には渦電流が発生し、この渦電流の発生によって磁束が吸収される。これにより、発熱体6から生じる誘導ノイズがノイズ吸収層7によって吸収され、誘導ノイズが、固体電解質層2及び一対の電極31,32によってガス濃度を検出する際のセンサ出力に影響を及ぼすことが抑制される。この結果、ガスセンサ100によるガス濃度の検出精度が向上する。
【0054】
渦電流は、電流が流れやすいほど発生しやすい。ノイズ吸収層7の電気伝導率が絶縁層41,42,43,44の電気伝導率よりも高いことによって、ノイズ吸収層7に渦電流を効果的に発生させることができる。絶縁層42,43の間にノイズ吸収層7が配置されていない場合には、渦電流を発生させることができず、誘導ノイズを吸収することができない。
【0055】
また、ノイズ吸収層7は、第2絶縁層42及び第3絶縁層43にのみ接触し、ノイズ吸収層7の外部と電位が独立しており、ノイズ吸収層7の外部との間で電流が流れない状態にある。言い換えれば、ノイズ吸収層7は、グラウンド電位等のガスセンサ100の周辺の電位には接続されておらず、グラウンド電位等から切り離されている。ノイズ吸収層7は、発熱体6から生じる誘導ノイズを吸収するためのものであり、発熱体6から生じるリーク電流を処理する場合等とは異なり、グラウンド電位等に接続する必要がない。そのため、ノイズ吸収層7をガスセンサ100の外部におけるグラウンド電位等に接続するための配線の必要がなく、ガスセンサ100の構造が複雑になることが防止される。
【0056】
また、ノイズ吸収層7は、複数の絶縁層42,43,44と同様に、金属酸化物の焼結体によって構成されている。これにより、ノイズ吸収層7の線膨張係数とノイズ吸収層7に隣接する第2、第3絶縁層42,43の線膨張係数とが近く、ノイズ吸収層7と第2、第3絶縁層42,43との接合の密着度を高く維持することができる。センサ素子1にノイズ吸収層7が設けられていても、ノイズ吸収層7と絶縁層42,43と間に界面応力が作用することが抑制される。その結果、ノイズ吸収層7と絶縁層42,43との間に剥がれ等の懸念がなくなり、センサ素子1の信頼性の低下が抑制される。
【0057】
仮に、ノイズ吸収層7が金属板等から構成される場合には、金属板の線膨張係数と金属酸化物の線膨張係数との差が大きくなる。この場合には、ガスセンサ100の使用時にガスセンサ100が加熱・冷却される際に、ノイズ吸収層7の周辺に割れ等が生じるおそれがある。
【0058】
また、ノイズ吸収層7をジルコニア材料から構成することにより、ノイズ吸収層7と、絶縁層42,43を構成するアルミナ材料との接合密着力を高めることができる。ノイズ吸収層7をジルコニア材料から構成することにより、センサ素子1の焼結時及び使用時における耐酸化性を良好に維持することができる。ノイズ吸収層7をジルコニア材料以外の材料によって構成する場合には、耐酸化性を考慮した貴金属等を使用する必要が生じ、製造管理及び製造コストの点において不利になる。
【0059】
さらに、絶縁層41,42,43,44は、純度が98%以上のアルミナ材料から構成されており、この絶縁層41,42,43,44により、固体電解質層2と発熱体6との間の絶縁抵抗値が、900℃において20MΩ以上に保たれる。このような高純度のアルミナ材料を使用することにより、発熱体6からのリーク電流を考慮する必要性を低減することができる。そして、発熱体6からの誘導ノイズを吸収するためのノイズ吸収層7をセンサ素子1に設けるといった、全く新しい構成を見出すことができた。また、高純度のアルミナ材料を使用することにより、固体電解質層2と発熱体6との間の絶縁抵抗値を、900℃において20MΩ以上に保つことができる。
【0060】
それ故、本形態のガスセンサ100によれば、構造が複雑になることが防止されるとともに耐熱性が維持され、ガス濃度の検出精度が向上する。
【0061】
(実施形態2)
本形態においては、図6に示すように、電極33,34が設けられた2枚の固体電解質層2A,2Bを用いたセンサ素子1を備えるガスセンサ100について示す。
本形態のセンサ素子1においては、2枚の固体電解質層2A,2Bの間に、測定ガスGが導入される測定ガス室51が形成されている。第1固体電解質層2Aの主面には、測定ガス室51内の測定ガスGの酸素濃度を調整するための一対のポンプ電極33が、第1固体電解質層2Aを介して互いに対向する位置に設けられている。一方のポンプ電極33は、測定ガス室51内に配置されており、他方のポンプ電極33は、測定ガスGが透過可能な多孔質体からなるガス導入層40A内に埋設されている。
【0062】
第2固体電解質層2Bの主面には、測定ガス室51内の測定ガスGの酸素濃度を検出するための一対の検出電極34が、第2固体電解質層2Bを介して互いに対向する位置に設けられている。一方の検出電極34は、測定ガス室51内に配置されており、他方の検出電極34は、絶縁層43A内に埋設されている。一対の検出電極34と、これらの間に配置された第2固体電解質層2Bの一部とによって、ガス濃度を検出するための検出セル11が形成されている。
【0063】
同図に示すように、本形態の絶縁層は、第1固体電解質層2Aに積層された第1絶縁層41A、第1固体電解質層2Aと第2固体電解質層2Bとの間に挟まれた第2絶縁層42A、第2固体電解質層2Bに積層された第3絶縁層43A、第3絶縁層43に順次積層された第4絶縁層44A及び第5絶縁層45Aからなる。第2絶縁層42Aの一部には、測定ガスGを所定の拡散速度で測定ガス室51に導入するための拡散抵抗層40Bが形成されている。ノイズ吸収層7は、第3絶縁層43Aと第4絶縁層44Aとの間に埋設されている。発熱体6は、第4絶縁層44Aと第5絶縁層45Aとの間に埋設されている。
【0064】
ノイズ吸収層7は、発熱体6の発熱部61の外形を、センサ素子1の積層方向Dに向けてノイズ吸収層7に投影したときに、発熱部61の外形の全体を覆う位置及び大きさに形成されている。より具体的には、ノイズ吸収層7の幅方向Wの寸法及び長手方向の寸法は、発熱部61の幅方向Wの寸法及び長手方向の寸法よりも大きい。また、ノイズ吸収層7の幅方向Wの寸法及び長手方向Lの寸法は、一対のポンプ電極33及び一対の検出電極34の幅方向Wの寸法及び長手方向Lの寸法よりも大きい。
【0065】
第3絶縁層43Aと第4絶縁層44Aとに挟まれたノイズ吸収層7は、発熱体6の近くに位置している。具体的には、発熱体6とノイズ吸収層7との間隔D2は、ノイズ吸収層7に最も近い電極である検出電極34とノイズ吸収層7との間隔D1よりも狭い。
【0066】
図7に示すように、本形態のガスセンサ100は、実施形態1のガスセンサ100と同様に、センサ素子1、ハウジング70、絶縁碍子71,72、接点端子73、リード線74、カバー75、ブッシュ76、二重のカバー77A,77B等を備える。本形態のガスセンサ100においては、接点端子73を保持する絶縁碍子72は、センサ素子1を保持する絶縁碍子71から離れた位置に配置されている。また、センサ素子1に基準ガスダクト52が形成されないため、カバー75には貫通孔751が形成されていない。
【0067】
本形態のガスセンサ100においても、ノイズ吸収層7の他の構成は、上記実施形態1の場合と同様である。また、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素等は、実施形態1の場合と同様である。本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
(確認試験)
本確認試験においては、ノイズ吸収層7が設けられたセンサ素子1を備えるガスセンサ100(試験品)が、発熱体6から生じる誘導ノイズを吸収する効果を有するかを確認した。また、比較のために、ノイズ吸収層7が設けられていないセンサ素子を備えるガスセンサ(比較品)についても同様に確認した。本確認試験においては、試験品及び比較品のガスセンサを大気雰囲気中に配置し、発熱体に通電を行ってセンサ素子を活性温度である750℃に加熱・保持した後、発熱体への通電を停止し、この通電停止時のセンサ出力電流を検出した。
【0069】
図8は、比較品について、発熱体への印加電圧Vの変化を上段に示し、センサ出力電流Iの変化を下段に示す。同図に示すように、発熱体への印加電圧VがON状態(通電状態)からOFF状態(通電停止状態)に変化するときには、センサ出力電流Iに、1μA程度の電流変化の山が生じた。この電流変化の山は、発熱体から生じる誘導ノイズが、センサ出力電流Iに重畳していることを示している。
【0070】
図9は、試験品について、発熱体6への印加電圧Vの変化を上段に示し、センサ出力電流Iの変化を下段に示す。同図に示すように、発熱体6への印加電圧VがON状態からOFF状態に変化するときであっても、センサ出力電流Iに大きな変化は見られなかった。この結果より、センサ素子1にノイズ吸収層7が設けられた試験品のガスセンサ100によれば、誘導ノイズがセンサ出力電流Iに与える影響を抑制できることが分かった。
本確認試験により、センサ素子1に設けられたノイズ吸収層7が、発熱体6から生じる誘導ノイズを吸収する効果を有することが確認でき、試験品のガスセンサ100によれば、ガス濃度の検出精度が向上することが確認できた。
【0071】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ガスセンサ
2,2A,2B 固体電解質層
31,32,33,34 電極
41,42,43,44,41A,42A,43A,44A,45A 絶縁層
6 発熱体
7 ノイズ吸収層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9