(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転中心となるジャーナル部と、そのジャーナル部に対して偏心したピン部と、前記ジャーナル部と前記ピン部をつなぐ複数のクランクアーム部と、を備える鍛造クランク軸の製造方法であって、
前記鍛造クランク軸の前記複数のクランクアーム部のうちの全部または一部はカウンターウエイト部を一体で有し、
前記製造方法は、
クランク軸の形状が成形されたバリ付きの鍛造材を得る型鍛造工程と、
一対の保持型によって前記鍛造材を挟んだ状態で、前記鍛造材からバリを除去するバリ抜き工程と、を含み、
前記鍛造材は、前記鍛造クランク軸の前記ジャーナル部、前記ピン部、前記複数のクランクアーム部、および前記カウンターウエイト部のそれぞれに対応する、粗ジャーナル部、粗ピン部、複数の粗クランクアーム部、および粗カウンターウエイト部を備え、
前記複数の粗クランクアーム部の全部または一部が、前記粗ピン部近傍の2つの側部の少なくとも一方の外周から突出する第1余肉部を有し、
前記バリ抜き工程で前記保持型によって前記鍛造材を挟む際に、前記保持型により、前記第1余肉部を変形させて前記粗ジャーナル部側に張り出させる、鍛造クランク軸の製造方法。
【背景技術】
【0002】
自動車、自動二輪車、農業機械または船舶等のレシプロエンジンには、ピストンの往復運動を回転運動に変換して動力を取り出すために、クランク軸が不可欠である。クランク軸は、型鍛造または鋳造によって製造できる。特に、高強度と高剛性がクランク軸に要求される場合、型鍛造によって製造された鍛造クランク軸が多用される。
【0003】
一般に、鍛造クランク軸の原材料は、ビレットである。そのビレットでは、横断面が丸形または角形であり、断面積が全長にわたって一定である。鍛造クランク軸の製造工程は、予備成形工程、型鍛造工程およびバリ抜き工程をその順に含む。必要に応じ、バリ抜き工程の後工程として、整形工程が追加される。通常、予備成形工程は、ロール成形と曲げ打ちの各工程を含み、型鍛造工程は、荒打ちと仕上げ打ちの各工程を含む。
【0004】
図1A〜
図1Fは、従来の一般的な鍛造クランク軸の製造工程を説明するための模式図である。
図1Fに例示するクランク軸1は、4気筒エンジンに搭載され、4気筒−8枚カウンターウエイトのクランク軸である。そのクランク軸1は、5つのジャーナル部J1〜J5、4つのピン部P1〜P4、フロント部Fr、フランジ部Fl、および、8枚のクランクアーム部(以下、単に「アーム部」ともいう)A1〜A8から構成される。アーム部A1〜A8はそれぞれ、ジャーナル部J1〜J5とピン部P1〜P4をつなぐ。また、8枚の全部のアーム部A1〜A8は、カウンターウエイト部(以下、単に「ウエイト部」ともいう)W1〜W8を一体で有する。
【0005】
以下では、ジャーナル部J1〜J5、ピン部P1〜P4、アーム部A1〜A8およびウエイト部W1〜W8のそれぞれを総称するとき、その符号は、ジャーナル部で「J」、ピン部で「P」、アーム部で「A」、ウエイト部で「W」とも記す。
【0006】
図1A〜
図1Fに示す製造方法では、以下のようにして鍛造クランク軸1が製造される。先ず、
図1Aに示すような所定の長さのビレット2を加熱炉(例えば誘導加熱炉またはガス雰囲気加熱炉)によって加熱した後、ロール成形を行う。ロール成形工程では、例えば孔型ロールを用いてビレット2を圧延して絞ることにより、ビレット2の体積を長手方向に配分する。これにより、中間素材であるロール荒地3を得る(
図1B参照)。次に、曲げ打ち工程では、ロール荒地3を長手方向と垂直な方向から部分的に圧下する。これにより、ロール荒地3の体積を配分し、更なる中間素材である曲げ荒地4を得る(
図1C参照)。
【0007】
続いて、荒打ち工程では、曲げ荒地4を上下に一対の金型を用いて鍛造することにより、荒鍛造材5を得る(
図1D参照)。その荒鍛造材5は、クランク軸(最終製品)のおおよその形状を有する。さらに、仕上げ打ち工程では、荒鍛造材5を上下に一対の金型を用いて鍛造することにより、仕上げ鍛造材6を得る(
図1E参照)。その仕上げ鍛造材6は、最終製品のクランク軸と合致する形状を有する。これら荒打ちおよび仕上げ打ちのとき、余材が、互いに対向する金型の型割面の間から流出してバリとなる。このため、荒鍛造材5および仕上げ鍛造材6では、いずれも、バリBがクランク軸の形状の周囲に大きく付いている。
【0008】
バリ抜き工程では、バリ付きの仕上げ鍛造材6を一対の保持型によって挟んで保持した状態で、刃物型によってバリBを打ち抜く。これにより、仕上げ鍛造材6からバリBが除去され、バリ無し鍛造材が得られる。そのバリ無し鍛造材は、
図1Fに示す鍛造クランク軸1とほぼ同じ形状を有する。
【0009】
整形工程では、バリ無し鍛造材の要所を上下から金型で僅かに圧下し、バリ無し鍛造材を最終製品の寸法形状に矯正する。ここで、バリ無し鍛造材の要所は、例えば、ジャーナル部J、ピン部P、フロント部Fr、フランジ部Flなどといった軸部、さらにはアーム部Aおよびウエイト部Wである。こうして、鍛造クランク軸1が製造される。
【0010】
図1A〜
図1Fに示す製造工程は、
図1Fに示す4気筒−8枚カウンターウエイトのクランク軸に限らず、様々なクランク軸に適用できる。例えば、4気筒−4枚カウンターウエイトのクランク軸にも適用できる。
【0011】
4気筒−4枚カウンターウエイトのクランク軸の場合、8枚のアーム部Aのうちの一部のアーム部が、ウエイト部Wを一体で有する。例えば先頭の第1アーム部A1、最後尾の第8アーム部A8および中央の2枚のアーム部(第4アーム部A4、第5アーム部A5)がウエイト部Wを一体で有する。また、残りのアーム部、具体的には、第2、第3、第6および第7のアーム部A2、A3、A6およびA7は、ウエイト部を有さない。以下では、ウエイト部を有さないアーム部を、「ウエイト無しアーム部」ともいう。ウエイト無しアーム部の形状は、小判状(長円状)となる。
【0012】
その他に、3気筒エンジン、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジンおよび8気筒エンジン等に搭載されるクランク軸であっても、製造工程は同様である。なお、ピン部の配置角度の調整が必要な場合は、バリ抜き工程の後に、捩り工程が追加される。
【0013】
近年、特に自動車用のレシプロエンジンには、燃費の向上のために軽量化が求められている。このため、レシプロエンジンに搭載されるクランク軸にも、軽量化の要求が著しくなっている。鍛造クランク軸の軽量化を図る従来技術は、特開2012−7726号公報(特許文献1)および特開2010−230027号公報(特許文献2)に開示される。
【0014】
特許文献1および2には、ジャーナル部側の表面に穴部が成形されたアーム部が記載され、このアーム部を備えるクランク軸の製造方法も記載される。アーム部の穴部は、ジャーナル部の軸心とピン部の軸心とを結ぶ直線(以下、「アーム部中心線」ともいう)上に成形され、ピン部に向けて大きく深く窪む。このようなアーム部は、穴部の体積分が軽量化される。アーム部の軽量化は、アーム部と対をなすウエイト部の質量軽減につながり、ひいては鍛造クランク軸全体の軽量化につながる。また、穴部が成形されたアーム部は、アーム部中心線を間に挟むピン部近傍の両側部で厚みが厚く維持されていることから、剛性(ねじり剛性および曲げ剛性)も確保される。
【0015】
このように、アーム部の両側部の厚みを厚く維持しつつ、アーム部のジャーナル部側の表面に凹みを持たせれば、軽量化と剛性確保を同時に図ることができる。
【0016】
ただし、そのような独特な形状のアーム部を備える鍛造クランク軸を従来の製造方法によって製造することは、困難である。型鍛造工程において、アーム部表面に凹みを成形しようとすれば、その凹み部位の金型の型抜き勾配が逆勾配になるからである。この場合、成形された鍛造材が金型から抜けなくなる事態が生じる。
【0017】
そのような事態に対処するため、特許文献1および2に記載された製造方法では、型鍛造工程において、アーム部表面に凹みを成形することなくアーム部を小さく成形する。また、バリ抜き工程の後に、アーム部の表面にパンチを押し込み、そのパンチの痕跡によって凹みを成形する。
【0018】
なお、
図1Fに示すクランク軸では、アーム部Aおよびそれと一体のウエイト部Wの形状が、全てのアーム部Aで同じである。実際には、必要に応じ、アーム部Aごとに、アーム部Aおよびそれと一体のウエイト部Wの形状を異ならせる場合がある。この技術は、特開2007−71227号公報(特許文献3)および特開2014−40856号公報(特許文献4)に開示される。
【0019】
特許文献3には、一端にフライホイールが装着される4気筒−8枚カウンターウエイトのクランク軸が記載される。そのクランク軸では、アーム部の厚さおよび重心、並びに、ウエイト部の質量が、全部のアーム部で同じでなく、アーム部ごとに異なる。これにより、アーム部ごとに必要最小限の剛性を確保でき、必要な剛性が低いアーム部で肉厚を薄くでき、その結果、軽量化を達成できるとしている。
【0020】
特許文献4には、一端にフライホイールが装着される多気筒エンジン用のクランク軸が記載される。そのクランク軸では、アーム部の曲げ剛性およびねじり剛性がフライホイールに近いほど高い。また、アーム部の曲げ剛性およびねじり剛性がアーム部ごとに異なることが好ましいとしている。これにより、曲げ振動およびねじり振動のいずれも軽減しつつ、軽量化を図ることができるとしている。
【0021】
このようにアーム部ごとに、アーム部およびそれと一体のウエイト部の形状が異なる場合、その形状に応じ、アーム部内で剛性が必要な部位が変化する。具体的には、アーム部のピン部近傍で剛性を確保することが重要となる場合がある。あるいは、アーム部のジャーナル部近傍で剛性を確保することが重要となる場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。
【0030】
(鍛造クランク軸の製造方法)
本発明の製造方法は、鍛造クランク軸の製造方法である。その鍛造クランク軸は、回転中心となるジャーナル部と、そのジャーナル部に対して偏心したピン部と、ジャーナル部とピン部をつなぐ複数のクランクアーム部と、を備える。鍛造クランク軸の複数のクランクアーム部のうちの全部または一部は、カウンターウエイト部を一体で有する。
【0031】
本発明の製造方法は、型鍛造工程とバリ抜き工程とをこの順序で含む。型鍛造工程では、クランク軸の形状が成形されたバリ付きの鍛造材を得る。この鍛造材は、鍛造クランク軸とほぼ同様の形状を有する。この鍛造材は、鍛造クランク軸のジャーナル部、ピン部、複数のクランクアーム部、およびカウンターウエイト部のそれぞれに対応する、粗ジャーナル部、粗ピン部、複数の粗クランクアーム部、および粗カウンターウエイト部を備える。さらに、この鍛造材は、バリおよび後述する余肉部を含む。型鍛造工程に特に限定はなく、
図1Dおよび
図1Eで説明した荒打ち工程および仕上げ打ち工程を含んでもよい。
【0032】
バリ抜き工程では、一対の保持型によって鍛造材を挟んだ状態で、鍛造材からバリを除去する。複数の粗クランクアーム部の全部または一部は、粗ピン部近傍の2つの側部の少なくとも一方の外周から突出する第1余肉部を有する。すなわち、複数の粗クランクアーム部の全部または一部は、少なくとも1つの第1余肉部を有する。バリ抜き工程で保持型によって鍛造材を挟む際に、保持型により、第1余肉部を変形させて粗ジャーナル部側に張り出させる。
【0033】
複数の粗クランクアーム部の全てが第1余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を一体で有する粗クランクアーム部の全部または一部が第1余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を一体で有する粗クランクアーム部のみが第1余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を有さない粗クランクアーム部の全部または一部が第1余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を有さない粗クランクアーム部のみが第1余肉部を有してもよい。
【0034】
前記第1余肉部が、前記粗ピン部近傍の前記2つの側部のそれぞれから突出してもよい。前記粗クランクアーム部は、前記粗ピン部近傍の前記2つの側部の外周から突出する2つの第1余肉部を有してもよい。この構成によれば、ピン部近傍の両側部の剛性を確保できる。2つの第1余肉部の間には、後述する領域As(凹みを有する領域)となる部分が存在する。凹みとなる部分の表面形状は、後述するように、幅方向の中央が膨らむような凸状であってもよい。
【0035】
前記バリ抜き工程において、支持部材が前記バリの下面を支持している状態で、前記保持型により、前記第1余肉部を変形させて前記粗ジャーナル部側に張り出させてもよい。第1余肉部は保持型によって変形されるため、バリ抜き工程の初期段階では、保持型の形状と第1余肉部の形状とは一致していない。そのため、変形前の第1余肉部が存在する鍛造材を保持型の下型のみで支持すると、鍛造材の姿勢が安定しない。この問題は、第1余肉部を粗クランクアーム部の一部のみに形成する場合に特に顕著になる。支持部材を用いることによって、鍛造材の姿勢が安定した状態でバリ抜き工程を行うことができる。具体的には、鍛造材のバリが水平に沿って配置された状態でバリ抜き工程を行うことができる。さらに、支持部材を用いて、上型と下型との間の中央に鍛造材を保持してもよい。
【0036】
前記支持部材は、前記保持型の動作に伴って、前記バリの下面を支持している状態を維持しながら移動してもよい。保持型の動作に伴ってバリが下方または上方に移動する場合がある。そのような場合には、バリの移動に伴って支持部材が移動(下降または上昇)することが好ましい。
【0037】
支持部材の端部(バリの下面と当接する端部)は、バリを除去するための刃物型の先端部に対応する形状を有してもよい。例えば、支持部材の端部の輪郭は、最終製品のバリ線に対応する形状を有してもよい。複数の支持部材を用いてバリの下面を支持してもよい。例えば、3つ以上(例えば4つ以上)の支持部材を用いてもよい。4つ以上の支持部材を用いることによって、鍛造材の姿勢を特に安定させることができる。バリの下面の複数箇所を支持する場合、支持部材は、鍛造材のうち質量の偏りが大きい部分(例えばカウンターウエイト部の近傍)を支持することが好ましい。複数の支持部材の高さは、バリ抜き工程開始時の鍛造材の姿勢が安定するように、個々の支持部材ごとに異なっていてもよい。例えば、3気筒用や6気筒用のクランク軸の場合には、鍛造材のバリが同一平面上に形成されない場合がある。この場合は、個々の支持部材の高さを、求められる支持位置に応じた高さとすればよい。
【0038】
支持部材は、上記の所定の動作をするように移動・保持される。支持部材を移動・保持する機構に特に限定はなく、公知の機構を用いてもよい。例えば、油圧シリンダ、モータ、および弾性体(バネ等)などの少なくとも1つを用いて支持部材を移動・保持してもよい。支持部材は、ブランクホルダに用いられる公知の機構で移動・保持してもよい。
【0039】
前記バリ抜き工程での前記第1余肉部の変形を、押し潰し加工または折り曲げ加工によって行ってもよい。
【0040】
前記複数の粗クランクアーム部の全部または一部が、前記粗ジャーナル部近傍の2つの側部の少なくとも一方の外周から突出する第2余肉部を有してもよい。この場合、前記バリ抜き工程で前記保持型によって前記鍛造材を挟む際に、前記保持型により、前記第2余肉部を変形させて前記粗ピン部側に張り出させる。複数の粗クランクアーム部の全てが第2余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を有する粗クランクアーム部の全部または一部が第2余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を有する粗クランクアーム部のみが第2余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を有さない粗クランクアーム部の全部または一部が第2余肉部を有してもよい。また、粗カウンターウエイト部を有さない粗クランクアーム部のみが第2余肉部を有してもよい。
【0041】
前記第2余肉部が、前記粗ジャーナル部近傍の前記2つの側部のそれぞれから突出してもよい。前記粗クランクアーム部が、前記粗ジャーナル部近傍の前記2つの側部の外周から突出する2つの第2余肉部を有してもよい。この構成によれば、ジャーナル部近傍の両側部の剛性を確保できる。2つの第2余肉部の間には、後述する領域At(凹みを有する領域)となる部分が存在する。凹みとなる部分の表面形状は、後述するように、幅方向の中央が膨らむような凸状であってもよい。
【0042】
前記第2余肉部を有する前記粗クランクアーム部が、前記粗カウンターウエイト部を有する前記粗クランクアーム部であってもよい。
【0043】
前記第2余肉部を有する前記粗クランクアーム部が、前記粗カウンターウエイト部を有さない前記粗クランクアーム部であってもよい。
【0044】
前記バリ抜き工程での前記第2余肉部の変形を、押し潰し加工または折り曲げ加工によって行ってもよい。
【0045】
1つの観点では、本発明は、鍛造クランク軸の製造方法の一例を提供する。この一例の製造方法は、回転中心となるジャーナル部と、そのジャーナル部に対して偏心したピン部と、前記ジャーナル部と前記ピン部をつなぐクランクアーム部と、を備える鍛造クランク軸の製造方法である。前記鍛造クランク軸は、前記クランクアーム部のうちの全部または一部にカウンターウエイト部を一体で有する。この一例の製造方法は、クランクアーム部(粗クランクアーム部)のピン部(粗ピン部)近傍の両側部それぞれの外周に当該外周から突出する第1余肉部を有するクランク軸の形状が成形されたバリ付きの鍛造材を得る型鍛造工程と、一対の保持型によって前記鍛造材を挟み込んだ状態で、前記鍛造材からバリを除去するバリ抜き工程と、を含む。この一例では、前記バリ抜き工程で前記保持型によって前記鍛造材を挟み込む際に、前記第1余肉部を前記保持型によって変形させ、前記クランクアーム部(粗クランクアーム部)の前記ピン部(粗ピン部)近傍の両側部の厚みを増加させる。
【0046】
上記の説明では、鍛造材が第1余肉部を必ず含む場合について説明した。しかし、鍛造材が第1余肉部を含まず第2余肉部のみを含む場合でも、本発明の製造方法を適用できる。この場合、上述したように、バリ抜き工程において保持型によって鍛造材を挟む際に、保持型によって第2余肉部を変形させて粗ピン部側に張り出させる。
【0047】
以下に、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法について、図面を参照しながら説明する。以下の説明では、
図1A〜
図1Fに関して説明した事項については、重複する説明を省略する場合がある。
【0048】
1.クランク軸の形状
本実施形態が対象とする鍛造クランク軸は、回転中心となるジャーナル部と、そのジャーナル部に対して偏心したピン部と、ジャーナル部とピン部をつなぐアーム部と、を備える。アーム部のうちの全部または一部は、ウエイト部を一体で有する。
【0049】
1つの観点では、本実施形態で製造される鍛造クランク軸の一例は、エンジンの気筒数に対応する数のユニット(「スロー」とも称される)を含む。1つのユニットは、1つのピン部と、ピン部を挟むように配置された2つのアーム部とを含む。1つのユニットの両端には、2つのジャーナル部が配置される。隣接する2つのユニットは、ジャーナル部によって接続されている。V型6気筒の場合は、2つのピン部の間にアーム部が1つある構造を1つの小ユニットとし、この小ユニットを挟むように2つのアーム部が配置されて大ユニットとなる。さらに、この大ユニットを挟むようにジャーナル部が配置される。
【0050】
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、例えば、4気筒−8枚カウンターウエイトのクランク軸および4気筒−4枚カウンターウエイトのクランク軸に適用できる。その他に、3気筒エンジン、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジンおよび8気筒エンジン等に搭載されるクランク軸にも適用できる。
【0051】
より具体的には、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、
図2A〜
図2Dに示す第1構成例の鍛造クランク軸、
図4A〜
図4Dに示す第2構成例の鍛造クランク軸、および、
図6Aおよび
図6Bに示す第3構成例の鍛造クランク軸に適用できる。
【0052】
第1〜第3構成例の鍛造クランク軸では、いずれも、ウエイト部の有無に依拠することなく、全部のアーム部のジャーナル部側の表面に凹みが設けられる。なお、後述するように、一部のアーム部のジャーナル部側の表面に、凹みを設けてもよい。第2構成例では、さらに、ウエイト部を一体で有するアーム部のピン部側の表面に凹みが設けられる。第3構成例は、ウエイト無しアーム部を有する。その第3構成例では、上述のジャーナル部側の表面に凹みに加え、ウエイト無しアーム部のピン部側の表面に凹みが設けられる。
【0053】
本実施形態のクランク軸の製造方法は、アーム部に凹みを設けるため、バリ付きの鍛造材を得る型鍛造工程と、その鍛造材からバリを除去するバリ抜き工程とを含む。また、鍛造材の粗アーム部は、第1余肉部を有し、バリ抜き工程では、その第1余肉部を変形させて粗ジャーナル部側に張り出させる。以下に、鍛造クランク軸(最終製品)および鍛造材におけるアーム部の形状をそれぞれ説明する。
【0054】
図2A〜
図2Dは、本発明の第1構成例のクランク軸におけるバリ抜き後のアーム部を示す模式図である。
図2Aは斜視図、
図2Bはジャーナル部側表面を示す図、
図2Cは側面を示す図である。
図2Dは、
図2Bの線IID−IIDにおける断面図である。
図2A〜
図2Dには、クランク軸のアーム部(ウエイト部を含む)の1つを抽出して示す。なお、
図2Cは、
図2Bの破線矢印で示す方向から見た図である。
【0055】
第1構成例のアーム部Aは、
図2A〜
図2Dに示すように、ジャーナル部J側の表面のうち、ピン部P近傍の両側部(2つの側部)AaおよびAbの内側の領域Asに凹みを有する。また、ピン部P近傍の両側部AaおよびAbがジャーナル部J側に張り出し、それらの両側部AaおよびAbの厚みは、凹みの厚みと比べ、厚肉である。ここで、側部とは、アーム部Aの幅方向(ピン部の偏心方向と垂直な方向)の側面およびその周辺部分を意味し、換言すると、アーム部Aの幅方向の端部を意味する。領域Asは、アーム部Aの表面のうち、ピン部Pとは反対側の表面に位置する。
【0056】
このような第1構成例のアーム部Aでは、ピン部P近傍の両側部AaおよびAbの厚みが、凹みを有さないアーム部のように厚く維持される。また、そのアーム部Aには、結果的にジャーナル部J側の表面に凹みが設けられる。このため、第1構成例の鍛造クランク軸は、アーム部Aの凹みによって軽量化を図ることができる。加えて、アーム部Aの両側部AaおよびAbの厚み維持によって剛性の確保を図ることができる。換言すると、アーム部Aのピン部P近傍の両側部AaおよびAbの厚みが、凹みの厚みと比べ、厚肉であることにより、剛性の確保を図ることができる。
【0057】
両側部AaおよびAbの内側領域Asの断面形状(凹みの底面形状)は、
図2Dに示すように、幅方向の中央が膨らむような凸状であることが好ましい。換言すると、内側領域Asの厚みは、幅方向の中央から遠ざかるに従って漸次減少することが好ましい。凹みの底面形状は幅方向の中央が膨らむような凸状であるため、曲げ剛性をより向上できる。幅方向の中央およびその周辺の断面形状を、例えば、円弧状、半楕円状または放物線状とすれば、上述の断面形状を実現できる。
【0058】
図3A〜
図3Cは、本発明の第1構成例のクランク軸におけるバリ抜き工程前(バリ付き鍛造材)の粗アーム部を示す模式図である。
図3Aは粗ジャーナル部側表面を示す図、
図3Bは側面を示す図である。
図3Cは、
図3Aの線IIIC−IIICにおける断面図である。
図3A〜
図3Cでは、クランク軸の粗アーム部(粗ウエイト部W’を含む)の1つを抽出して示す。なお、
図3Bは、
図3Aの破線矢印で示す方向から見た図である。
【0059】
バリ抜き工程前の粗アーム部A’は、
図3A〜
図3Cに示すように、粗ジャーナル部J’側の表面のうち、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’の内側領域As’に、バリ抜き後の凹みの底面形状と合致する表面形状を有する。その表面形状は粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’の領域まで滑らかに広がる。これにより、両側部Aa’およびAb’の厚みは、バリ抜き後の厚みよりも薄い。
【0060】
さらに、粗アーム部A’は、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’のそれぞれの外周に第1余肉部AaaおよびAbaを有する。第1余肉部AaaおよびAbaはそれぞれ、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’の外周から突出する。この第1余肉部AaaおよびAbaは、板状であり、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’の外周に沿って設けられる。第1余肉部AaaおよびAbaの厚みは、その根元の両側部Aa’およびAb’の厚みと比べ、同程度であるかまたは薄い。
【0061】
図4A〜
図4Dは、本発明の第2構成例のクランク軸におけるバリ抜き後のアーム部を示す模式図である。
図4Aは斜視図、
図4Bはピン部側表面を示す図、
図4Cは側面を示す図である。
図4Dは、
図4Bの線IVD−IVDにおける断面図である。
図4A〜
図4Dには、クランク軸のアーム部(ウエイト部を含む)の1つを抽出して示す。なお、
図4Cは、
図4Bの破線矢印で示す方向から見た図である。
【0062】
第2構成例のアーム部Aでは、上記の第1構成例と同様に、ピン部P近傍の両側部の厚みが厚くされるとともに、ジャーナル部J側の表面に凹みを有する。加えて、第2構成例のウエイト部を一体で有するアーム部Aは、
図4A〜
図4Dに示すように、ピン部P側の表面のうち、ジャーナル部J近傍の両側部(2つの側部)AcおよびAdの内側の領域Atに、凹みを有する。また、ジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdがピン部P側に張り出し、それらの両側部AcおよびAdの厚みは、凹みの厚みと比べ、厚肉である。領域Atは、アーム部Aの表面のうち、ジャーナル部Jとは反対側の表面に位置する。
【0063】
このような第2構成例のアーム部Aは、ピン部P近傍の両側部AaおよびAbの厚みが厚くされるとともに、ジャーナル部J側の表面に凹みが設けられる。ウエイト部を一体で有するアーム部Aは、さらに、ジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdの厚みが、凹みを有さないアーム部のように、厚く維持される。また、ウエイト部を一体で有するアーム部Aには、結果的にピン部P側の表面に凹みが設けられる。
【0064】
このため、第2構成例による鍛造クランク軸は、アーム部Aのジャーナル部J側およびピン部P側の凹みによって軽量化をさらに図ることができる。加えて、ピン部P近傍の両側部AaおよびAb並びにジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdの厚みが維持されることにより、剛性の確保を図ることができる。換言すると、ピン部P近傍の両側部AaおよびAb並びにジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdの厚みが、凹みの厚みと比べ、厚肉であることにより、剛性の確保を図ることができる。
【0065】
ウエイト部を一体で有するアーム部Aでは、両側部AcおよびAdの内側領域Atの断面形状(凹みの底面形状)が、
図4Dに示すように、幅方向の中央が膨らむような凸状であることが好ましい。換言すると、内側領域Atの厚みは、幅方向の中央から遠ざかるに従って漸次減少することが好ましい。凹みの底面形状は幅方向の中央が膨らむような凸状であるため、曲げ剛性をより向上できる。幅方向の中央およびその周辺の断面形状を、例えば、円弧状、半楕円状または放物線状とすれば、上述の断面形状を実現できる。
【0066】
図5A〜
図5Cは、本発明の第2構成例のクランク軸におけるバリ抜き工程前(バリ付き鍛造材)の粗アーム部を示す模式図である。
図5Aは粗ピン部側表面を示す図、
図5Bは側面を示す図である。
図5Cは、
図5Aの線VC−VCにおける断面図である。
図5A〜
図5Cでは、クランク軸の粗アーム部(粗ウエイト部を含む)の1つを抽出して示す。なお、
図5Bは、
図5Aの破線矢印で示す方向から見た図である。
【0067】
第2構成例では、バリ抜き工程前の粗アーム部A’が、上記の第1構成例と同様に、粗ジャーナル部J’側の表面のうち、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’の内側領域As’に、バリ抜き後の凹みの底面形状と合致する表面形状を持つ。また、その粗アーム部A’は、上記の第1構成例と同様に、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’のそれぞれの外周から突出する第1余肉部AaaおよびAbaを有する。
【0068】
加えて、ウエイト部を一体で有する粗アーム部A’は、粗ピン部P’側の表面のうち、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の内側領域At’に、バリ抜き後の凹みの底面形状と合致する表面形状を持つ。その表面形状は粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の領域まで滑らかに広がる。これにより、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の厚みは、バリ抜き後の厚みよりも薄い。
【0069】
また、ウエイト部を一体で有する粗アーム部A’は、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’のそれぞれの外周に第2余肉部AcaおよびAdaを有する。その第2余肉部AcaおよびAdaはそれぞれ、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の外周から突出する。
図5A〜
図5Cに示す第2余肉部AcaおよびAdaは、板状であり、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の外周に沿って設けられる。第2余肉部AcaおよびAdaの厚みは、その根元の両側部Ac’およびAd’の厚みと比べ、同程度であるかまたは薄い。
【0070】
図6Aおよび
図6Bは、本発明の第3構成例のクランク軸におけるバリ抜き後のアーム部を示す模式図である。
図6Aはピン部側表面を示す図である。
図6Bは、
図6Aの線VIB−VIBにおける断面図である。第3構成例のクランク軸は、複数のアーム部を有し、そのうちの一部のアーム部がウエイト部を一体で有する。
図6Aおよび
図6Bには、ウエイト部を有さないアーム部、すなわち、ウエイト無しアーム部の1つを抽出して示す。
【0071】
第3構成例のアーム部Aでは、図示を省略するが、ウエイト部の有無に依拠することなく、上記の第1構成例と同様に、ピン部P近傍の両側部の厚みが厚くされるとともに、ジャーナル部J側の表面に凹みを有する。加えて、第3構成例のウエイト無しアーム部Aは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、ピン部P側の表面のうち、ジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdの内側の領域Atに、凹みを有する。また、ジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdがピン部P側に張り出し、それらの両側部AcおよびAdの厚みは、凹みの厚みと比べ、厚肉である。
【0072】
このような第3構成例のアーム部Aでは、ピン部P近傍の両側部AaおよびAbの厚みが厚く維持されるとともに、ジャーナル部J側の表面に凹みが設けられる。ウエイト無しアーム部Aでは、さらに、ジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdの厚みが、凹みを有さないアーム部のように厚く維持される。また、ウエイト無しアーム部Aには、結果的にピン部P側の表面に凹みが設けられる。
【0073】
このため、第3構成例による鍛造クランク軸は、アーム部Aのジャーナル部J側およびピン部P側の凹みによって軽量化をさらに図ることができる。加えて、ピン部P近傍の両側部AaおよびAb並びにジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdの厚みが維持されることにより、剛性の確保を図ることができる。換言すると、ピン部P近傍の両側部AaおよびAb並びにジャーナル部J近傍の両側部AcおよびAdの厚みが、凹みの厚みと比べ、厚肉であることにより、剛性の確保を図ることができる。
【0074】
ウエイト無しアーム部Aでは、両側部AcおよびAdの内側領域Atの形状(凹みの底面形状)が、
図6Bに示すように、幅方向の中央が膨らむような凸状であることが好ましい。換言すると、内側領域Atの厚みは、幅方向の中央から遠ざかるに従って漸次減少することが好ましい。凹みの底面形状は幅方向の中央が膨らむような凸状であるため、曲げ剛性をより向上できる。幅方向の中央およびその周辺の断面形状を、例えば、円弧状、半楕円状または放物線状とすれば、上述の断面形状を実現できる。
【0075】
図7Aおよび
図7Bは、本発明の第3構成例のクランク軸におけるバリ抜き工程前(バリ付き鍛造材)の粗アーム部を示す模式図である。
図7Aは粗ピン部側表面を示す図である。
図7Bは、
図7Aの線VIIB−VIIBにおける断面図である。
図7Aおよび
図7Bでは、ウエイト無し粗アーム部の1つを抽出して示す。
【0076】
バリ抜き工程前の粗アーム部A’は、図示を省略するが、粗ウエイト部の有無に依拠することなく、上記の第1構成例と同様に、粗ジャーナル部J’側の表面のうち、粗ピン部P’近傍の両側部の内側領域に、バリ抜き後の凹みの底面形状と合致する表面形状を持つ。また、粗アーム部A’は、上記の第1構成例と同様に、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’のそれぞれの外周から突出する第1余肉部AaaおよびAbaを有する。
【0077】
バリ抜き工程前のウエイト無し粗アーム部A’は、
図7Aおよび
図7Bに示すように、粗ピン部P’側の表面のうち、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の内側領域At’に、バリ抜き後の凹みの底面形状と合致する表面形状を持つ。その表面形状は粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の領域まで滑らかに広がる。これにより、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の厚みは、バリ抜き後の厚みよりも薄い。
【0078】
また、ウエイト無し粗アーム部A’は、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’のそれぞれの外周に第2余肉部AcaおよびAdaを有する。第2余肉部AcaおよびAdaはそれぞれ、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の外周から突出する。この第2余肉部AcaおよびAdaは、板状であり、粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’の外周に沿って設けられる。第2余肉部AcaおよびAdaの厚みは、その根元の両側部Ac’およびAd’の厚みと比べ、同程度であるかまたは薄い。
【0079】
2.鍛造クランク軸の製造方法
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、型鍛造工程と、バリ抜き工程とを含む。型鍛造工程の前工程として、例えば、予備成形工程を設けることができる。また、バリ抜き工程の後工程として、例えば、整形工程を設けることができる。なお、ピン部の配置角度の調整が必要な場合は、バリ抜き工程の後に、捩り工程が追加される。これらの工程は、いずれも、熱間で一連に行われる。本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法のうち、本発明の特徴部分を除く部分には、従来の製造方法を適用してもよい。例えば、本発明の特徴部分を除く部分には、
図1A〜
図1Fで説明した工程のうちの少なくとも1つの工程、またはそれを本発明に適合するように修正した工程を適用してもよい。
【0080】
予備成形工程は、例えば、ロール成形工程と曲げ打ち工程とで構成できる。ロール成形工程および曲げ打ち工程では、ビレット(原材料)の体積を配分し、曲げ荒地を成形する。
【0081】
型鍛造工程では、前記
図3A〜
図3Cに示すようなバリ付きの鍛造材を得る。そのバリ付きの鍛造材には、クランク軸の形状が成形され、具体的には、バリ付きの鍛造材は、粗ジャーナル部J’、粗ピン部P’および粗アーム部A’等を有する。また、バリ付きの鍛造材は、粗アーム部A’の粗ピン部P’近傍の側部Aa’およびAb’の外周から突出する第1余肉部AaaおよびAbaを有する。すなわち、型鍛造工程では、余肉部(第1余肉部、第2余肉部、または、第1余肉部および第2余肉部)を形成できる金型を用いて型鍛造を行う。
【0082】
このようなバリ付きの鍛造材を得る型鍛造工程は、例えば、荒打ち工程と仕上げ打ち工程とで構成できる。
【0083】
型鍛造工程の型抜き勾配は、逆勾配にならない。具体的には、粗アーム部の粗ジャーナル部J’側表面に設けられる凹みの底面(内側領域As’)に対応する部位、並びに、第1余肉部AaaおよびAbaに対応する部位のいずれでも、型抜き勾配は逆勾配にならない。換言すれば、上記形状を有する鍛造材は、型抜き勾配が逆勾配にならない金型を用いて形成できる。このため、荒打ちと仕上げ打ちのいずれの型鍛造も、支障なく行え、前記
図3A〜
図3Cに示すようなバリ付きの鍛造材を得ることができる。また、前記
図5A〜
図5Cに示すバリ付きの鍛造材、または、
図7Aおよび
図7Bに示すバリ付きの鍛造材においても、粗アーム部の粗ピン部P’側表面に設けられる凹みの底面(内側領域At’)に対応する部位、並びに、第2余肉部AcaおよびAdaに対応する部位のいずれでも逆勾配にならない。換言すれば、上記形状を有する鍛造材は、型抜き勾配が逆勾配にならない金型を用いて形成できる。このため、荒打ちと仕上げ打ちのいずれの型鍛造も、支障なく行える。
【0084】
バリ抜き工程では、バリ付きの鍛造材を一対の保持型によって挟んだ状態で、その鍛造材からバリを除去する。これにより、バリ無しの鍛造材を得ることができる。バリ抜き工程で保持型によって鍛造材を挟む際に、保持型により、第1余肉部を変形させて粗ジャーナル部側に張り出させる。これにより、粗アーム部の粗ピン部近傍の側部の厚みを増加させる。この第1余肉部の変形は、例えば、押し潰し加工または折り曲げ加工によって行うことができる。バリ抜き工程の詳細は、後述する。
【0085】
バリ抜き工程で得られたバリ無しの鍛造材は、整形工程で、最終製品の寸法形状に矯正してもよい。ピン部の配置角度の調整が必要な場合は、捩り工程でピン部の配置角度を調整する。
【0086】
3.バリ抜き工程の処理フロー例
図8A〜
図8Dは、本発明のクランク軸の製造方法によるバリ抜き工程の処理フロー例を示す断面図である。
図8Aは鍛造材の配置時の状態を示す。
図8Bは鍛造材の保持時の状態を示す。
図8Cは刃物型の当接時の状態を示す。
図8Dは刃物型の下降終了時の状態を示す。
図8A〜
図8Dは、前記
図3Aの線IIIC−IIICの位置に相当する位置の断面図である。
【0087】
図8A〜
図8Dには、鍛造材30と、上下で一対の保持型10と、刃物型20とを示す。バリ付きの鍛造材30の形状は、前記
図3A〜
図3Cに示す鍛造材30の形状と同様である。
図8Aでは、1つの粗ピン部P’とその粗ピン部P’に接続する粗アーム部A’を抽出して示す。
【0088】
保持型10は、上型11と下型12とからなる。上型11および下型12は、離間および近接するように移動可能である。上型11と下型12の間に鍛造材30を配置した状態で、上型11と下型12とを近接させることにより、鍛造材30を上型11と下型12の間に挟んで保持する。
【0089】
上型11および下型12には、鍛造材30を挟んで保持するとともに突出する余肉部を変形させるため、それぞれ型彫刻部が彫り込まれている。それらの型彫刻部には、クランク軸の最終製品形状が反映されている。刃物型20は、最終製品の輪郭形状に沿ってバリBを除去するための形状を有する。すなわち、刃物型20の先端部の輪郭は、最終製品のバリ線に対応している。
【0090】
このような保持型10および刃物型20を用いる処理フロー例では、先ず、上型11および下型12を離間させるとともに、刃物型20を上方に退避させる。この状態で、
図8Aに示すように、バリ付きの鍛造材30を上型11と下型12の間に配置する。
【0091】
続いて、上型11と下型12とが近接するように移動させる。より具体的には、上型11を下降させる。これにより、
図8Bに示すように、上型11および下型12を鍛造材30と当接させ、上型11と下型12とで鍛造材30を挟んで保持する。
【0092】
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法では、一対の保持型10で鍛造材30を挟む際に、保持型10により、鍛造材30の第1余肉部AaaおよびAbaを圧下して変形させる。例えば、保持型10によって第1余肉部AaaおよびAbaを押し潰す、または、保持型10に沿って第1余肉部AaaおよびAbaを粗ジャーナル部側に折り曲げる。これらにより、第1余肉部を保持型10の型彫刻部に沿う形状とし、粗ジャーナル部側に張り出させる。その結果、粗アーム部Aの粗ピン部P近傍の両側部Aa’およびAb’の厚みが増加する。このため、得られるクランク軸は、アーム部Aのピン部P近傍の両側部AaおよびAbで厚みが厚くなる。
図8Bの鍛造材30の各部の形状は、最終製品である鍛造クランク軸の各部の形状に実質的に対応する。そのため、
図8Bでは、鍛造材30の符号を、最終製品である鍛造クランク軸の各部の符号と同じとしている(
図9Bにおいても同様である)。
【0093】
引き続き、保持型10で鍛造材30を保持した状態で、刃物型20を圧下方向に移動させる。より具体的には、刃物型20を下降させる。これに伴い、
図8Cに示すように、刃物型20が鍛造材30のバリBと当接し、
図8Dに示すように、バリBが切断されて鍛造材30から除去される。その結果、バリ無しの鍛造材30aが得られる。
【0094】
刃物型20の下降終了後、刃物型20を上昇させて退避させるとともに、保持型10の上型11と下型12とを離間させる。そして、バリ無しの鍛造材30aを取り出す。
【0095】
ここで、バリ付き鍛造材30は、
図8Aに示すように、粗アーム部A’の粗ジャーナル部側の表面のうち、粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’の内側領域As’に、バリ抜き後の凹みの底面形状と合致する表面形状を有する。その内側領域As’の表面形状は、バリ抜き工程の過程で維持される。一方で、保持型10で鍛造材30を挟む際に、粗アーム部A’の粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’で厚みが厚くなる。その結果、アーム部Aのジャーナル部J側の表面に凹みが設けられる。
【0096】
このような本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法によれば、アーム部Aのピン部P近傍の側部AaおよびAbの厚みを厚くしつつ、アーム部Aのジャーナル部J側の表面に凹みを設けることが可能となる。このため、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、軽量化と剛性確保を同時に図った鍛造クランク軸を製造できる。
【0097】
また、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、保持型によって第1余肉部AaaおよびAbaを変形させることにより、粗アーム部の粗ピン部近傍の側部Aa’およびAb’の厚みを増加させる。その結果、アーム部Aのジャーナル部J側の表面に凹みが設けられる。このため、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、既存の設備や金型を利用して簡便に行える。
【0098】
加えて、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、バリ抜き工程で保持型10によって鍛造材30を挟む際に、第1余肉部を保持型によって変形させ、粗アーム部の粗ピン部近傍の側部の厚みを増加させる。このため、従来の製造工程を変更する必要がない。
【0099】
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、前記
図4A〜
図4Dに示すような第2構成例の鍛造クランク軸を対象とすることもできる。この場合、バリ付きの鍛造材では、粗ウエイト部を一体で有する粗アーム部が、前記
図5A〜
図5Cに示すような第2余肉部AcaおよびAdaを有することが好ましい。その第2余肉部AcaおよびAdaは、粗ウエイト部を一体で有する粗アーム部A’の粗ジャーナル部J’近傍の側部Ac’およびAd’の外周から突出する。
【0100】
加えて、バリ抜き工程では、保持型によって鍛造材を挟む際に、保持型により、第1余肉部AaaおよびAbaを変形させるのみならず、粗ウエイト部を一体で有する粗アーム部A’の第2余肉部AcaおよびAdaも変形させて粗ピン部側に張り出させることが好ましい。これにより、粗ウエイト部を一体で有する粗アーム部A’の粗ジャーナル部J’近傍の側部Ac’およびAd’でも厚みを増加させる。第2余肉部の変形は、例えば、押し潰し加工または折り曲げ加工によって行うことができる。その結果、前記
図4A〜
図4Dに示すような、剛性を確保しつつ、より軽量化を図ったクランク軸を得ることができる。
【0101】
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、前記
図6Aおよび
図6Bに示すような第3構成例の鍛造クランク軸を対象とすることもできる。その鍛造クランク軸は、アーム部Aのうちの一部にウエイト部を一体で有し、すなわち、残りのアーム部Aがウエイト部を有することなく、ウエイト無しアーム部である。
【0102】
この場合、バリ付きの鍛造材では、ウエイト無し粗アーム部が、前記
図7Aおよび
図7Bに示すような第2余肉部AcaおよびAdaを有することが好ましい。その第2余肉部AcaおよびAdaは、ウエイト無し粗アーム部A’の粗ジャーナル部J’近傍の側部Ac’およびAd’の外周から突出する。
【0103】
加えて、バリ抜き工程では、保持型によって鍛造材を挟む際に、保持型により、第1余肉部AaaおよびAbaを変形させるのみならず、ウエイト無し粗アーム部の第2余肉部AcaおよびAdaも変形させて粗ピン部側に張り出させることが好ましい。これにより、ウエイト無し粗アーム部A’の粗ジャーナル部J’近傍の両側部Ac’およびAd’でも厚みを増加させる。第2余肉部の変形は、例えば、押し潰し加工または折り曲げ加工によって行うことができる。その結果、前記
図6Aおよび
図6Bに示すような、剛性を確保しつつ、より軽量化を図ったクランク軸を得ることができる。
【0104】
本実施形態のバリ抜き工程において、保持型とともに、上述した支持部材を用いてもよい。保持型とともに支持部材を用いるバリ抜き工程の一例について、
図9A〜
図9Dを用いて説明する。
図9A、
図9B、
図9C、および
図9Dはそれぞれ、
図8A、
図8B、
図8C、および
図8Dに対応している。
図8A〜
図8Dで説明した事項については、重複する説明を省略する場合がある。
【0105】
以下では、
図3A〜
図3Cに示した第1構成例の鍛造材30に対してバリ抜き工程を行う一例について説明する。しかし、他の鍛造材(例えば第2構成例および第3構成例の鍛造材)についても、同様に、支持部材を用いてバリ抜き工程を行うことができる。
【0106】
この実施形態では、バリBの下面を支持する複数(例えば4つ)の支持部材40を用いる。なお、以下の図では、鍛造材の一部のみを図示しているため、図示される支持部材40は2つのみとなっている。支持部材40は、上下に移動可能である。
【0107】
先ず、
図9Aに示すように、バリ付きの鍛造材30と金型とを配置する。具体的には、離間している上型11と下型12との間に鍛造材30を配置する。このとき、刃物型20は上方に退避させておく。鍛造材30のバリBの下面は、支持部材40によって安定に支持されている。支持部材40は、バリBが水平になるように鍛造材30を支持する。
図9Aの状態では、鍛造材30と保持型10とは接触していない。
【0108】
続いて、上型11と下型12とを近接させる。より具体的には、上型11を下降させる。これにより、
図9Bに示すように、上型11および下型12を鍛造材30と当接させ、上型11と下型12とで鍛造材30を挟んで保持する。
【0109】
上述したように、本実施形態の製造方法では、一対の保持型10で鍛造材30を挟む際に、保持型10により、鍛造材30の第1余肉部AaaおよびAbaを圧下して変形させる。具体的には、第1余肉部を保持型10の型彫刻部に沿う形状とし、粗ジャーナル部側に張り出させる。その結果、粗アーム部A’の粗ピン部P’近傍の両側部Aa’およびAb’の厚みが増加する。
【0110】
上型11を下降させて鍛造材30を保持する場合、上型11が先ず鍛造材30と接触し、鍛造材30の下降に伴って下型12と鍛造材30とが接触する。さらに、上型11が下降するのに伴って、鍛造材30が変形される。この場合、保持型10の動作(上型11の下降)に伴ってバリBが下降する。そのため、支持部材40は、バリBの下降に伴って、バリBの下面を支持している状態を維持しながら下降する。換言すれば、支持部材40は、保持型10の動作に伴って位置が変動するバリBに追従して移動する。
【0111】
鍛造材30の第1余肉部AaaおよびAbaは保持型10によって変形される。そのため、バリ抜き工程の初期の段階では第1余肉部AaaおよびAbaの形状と保持型10の形状とは一致しない。従って、
図9Aの段階で支持部材40を用いずに鍛造材30を下型12のみで支えた場合、鍛造材30の姿勢が安定しない場合がある。鍛造材30の姿勢が安定しない場合、その後の保持型10による保持および成形、並びに、刃物型20によるバリ抜き工程が安定して行えない。そのため、バリ抜き工程の際に支持部材40を用いることは、安定した加工を行うために特に好ましい。
【0112】
次に、保持型10によって鍛造材30を保持した状態で刃物型20を下降させる。その結果、先ず、
図9Cに示すように刃物型20が鍛造材30のバリBと当接する。その後、
図9Dに示すようにバリBが切断されて鍛造材30から除去される。このようにして、バリ無しの鍛造材30aが得られる。
【0113】
バリBの下降とともに支持部材40も下降する。なお、保持型10による鍛造材30の変形が完了した後は、鍛造材30の位置および姿勢が安定する。そのため、保持型10による鍛造材30の変形が完了した後であってバリ抜き工程を開始する前に、支持部材40だけを下降させてもよい。
【0114】
図9Dに示される下降した支持部材40は、刃物型20が上方に戻った後、所定の工程までは下降したままの状態にあってもよい。例えば、バリ抜き工程後の鍛造材30aが上型11と下型12との間から搬出されるまでは、支持部材40を下降した位置で停止させておいてもよい。下降した位置で支持部材40を停止させる機構に限定はなく、公知の機構を適用してもよい。
【0115】
刃物型20の下降終了後、刃物型20を上昇させて退避させるとともに、保持型10の上型11と下型12とを離間させる。そして、バリ無しの鍛造材30aを取り出す。
【0116】
図9A〜
図9Dでは、支持部材40を用いて第1構成例の鍛造材30のバリ抜き工程を行う一例について説明した。他の鍛造材30についても、同様に行うことができる。第2構成例の鍛造材30について支持部材40を用いてバリ抜き工程を行う場合について、支持部材40の配置の一例を
図10に示す。
図10は、
図9Aの工程に対応する。
【0117】
第2構成例の鍛造材30のバリ抜き工程を行う場合、先ず、
図10に示すように、バリ付きの鍛造材30を支持部材40で支持する。鍛造材30のバリBの下面は、複数の支持部材40によって支持される。その後は、
図9B〜
図9Dで説明した工程と同様に、バリ抜き工程が行われる。このようにして、支持部材40を用いて、第2構成例の鍛造材30のバリ抜き工程が行われる。第3構成例の鍛造材30のバリ抜き工程も、同様に行うことができる。
【0118】
第1〜第3構成例のクランク軸は、ウエイト部の有無に依拠することなく、複数のアーム部の全部が、ピン部近傍のジャーナル部側の表面に凹みを有する。本実施形態のクランク軸の製造方法では、複数のアーム部の一部が、ピン部近傍のジャーナル部側の表面に凹みを有してもよい。換言すると、鍛造材の複数の粗アーム部の全部または一部が第1余肉部を有すればよい。第1余肉部を設ける粗アーム部は、例えば、アーム部に要求される曲げ剛性やねじり剛性、剛性が必要な部位に基づいて、適宜決定できる。
【0119】
前述の通り、ウエイト部を一体で有するアーム部(以下、「ウエイト付きアーム部」ともいう)は、ジャーナル部近傍のピン部側の表面に凹みを有することが好ましい。複数のウエイト付きアーム部を備えるクランク軸において、ウエイト付きアーム部のジャーナル部近傍のピン部側の表面に凹みを設ける場合、ウエイト付きアーム部の全部が、ピン部側の表面に凹みを有してもよい。あるいは、ウエイト付きアーム部の一部が、ピン部側の表面に凹みを有してもよい。換言すると、鍛造材では、複数のウエイト付き粗アーム部の全部または一部が第2余肉部を有してもよい。第2余肉部を設ける粗アーム部は、例えば、アーム部に要求される曲げ剛性やねじり剛性、剛性が必要な部位に基づいて、適宜決定できる。
【0120】
前述の通り、ウエイト無しアーム部は、ジャーナル部近傍のピン部側の表面に凹みを有することが好ましい。複数のウエイト無しアーム部を備えるクランク軸において、ウエイト無しアーム部のジャーナル部近傍のピン部側の表面に凹みを設ける場合、複数のウエイト無しアーム部の全部が、ピン部側の表面に凹みを有してもよい。あるいは、複数のウエイト無しアーム部の一部が、ピン部側の表面に凹みを有してもよい。換言すると、鍛造材の複数のウエイト無し粗アーム部の全部または一部が第2余肉部を有してもよい。第2余肉部を設ける粗アーム部は、例えば、アーム部に要求される曲げ剛性やねじり剛性、剛性が必要な部位に基づいて、適宜決定できる。
【0121】
前述の第1〜第3構成例のように、粗アーム部は、第1余肉部を粗ピン部近傍の両方の側部(両側部)に有してもよく、あるいは、第1余肉部を粗ピン部近傍の一方の側部に有してもよい。粗アーム部が第1余肉部を粗ピン部近傍の一方の側部に有する場合であっても、その第1余肉部を粗ジャーナル部側に張り出させることにより、バリ抜き工程後のアーム部の一方の側部で厚みを増加できる。このため、軽量化しつつ、剛性を確保できる。第1余肉部を設ける粗ピン部近傍の側部は、例えば、アーム部に要求される曲げ剛性やねじり剛性、剛性が必要な部位に基づいて、適宜決定できる。
【0122】
前述の第2構成例のように、ウエイト付き粗アーム部は、第2余肉部を粗ジャーナル部近傍の両方の側部に有してもよく、あるいは、第2余肉部を粗ジャーナル部近傍の一方の側部に有してもよい。粗アーム部が第2余肉部を粗ジャーナル部近傍の一方の側部に有する場合であっても、その第2余肉部を粗ピン部側に張り出させることにより、バリ抜き工程後のアーム部の一方の側部で厚みを増加できる。第2余肉部を設ける粗ジャーナル部近傍の側部は、例えば、アーム部に要求される曲げ剛性やねじり剛性、剛性が必要な部位に基づいて、適宜決定できる。
【0123】
前述の第3構成例のように、ウエイト無し粗アーム部は、第2余肉部を粗ジャーナル部近傍の両方の側部に有してもよく、あるいは、第2余肉部を粗ジャーナル部近傍の一方の側部に有してもよい。粗アーム部が第2余肉部を粗ジャーナル部近傍の一方の側部に有する場合であっても、その第2余肉部を粗ピン部側に張り出させることにより、バリ抜き工程後のアーム部の一方の側部で厚みを増加できる。このため、軽量化しつつ、剛性を確保できる。第2余肉部を設ける粗ジャーナル部近傍の側部は、例えば、アーム部に要求される曲げ剛性やねじり剛性、剛性が必要な部位に基づいて、適宜決定できる。