(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
径方向片側の周面に凹部と凸部とを周方向に関して交互に配置して成る中間凹凸部を有する本体部と、この本体部の軸方向片側面の周方向複数箇所にそれぞれ軸方向に突出する状態で設けられた第一歯部と、前記本体部の軸方向他側面の周方向複数箇所にそれぞれ軸方向に突出する状態で設けられた第二歯部と、前記各第一歯部のうちの少なくとも1つの第一歯部に設けられた第一係合部と、前記各第二歯部のうちの少なくとも1つの第二歯部に設けられた第二係合部とを有する中間伝達部材と、
弾性材製で円環状に構成され、前記各第一歯部と係合する事により前記中間伝達部材との間でのトルク伝達を可能とされると共に、前記第一係合部と係合する事により前記中間伝達部材に対する軸方向片側への変位を規制された第一弾性部材と、
弾性材製で円環状に構成され、前記各第二歯部と係合する事により前記中間伝達部材との間でのトルク伝達を可能とされると共に、前記第二係合部と係合する事により前記中間伝達部材に対する軸方向他側への変位を規制された第二弾性部材と、
径方向他側の周面に凹部と凸部とを周方向に関して交互に配置して成る第一凹凸部を有し、この第一凹凸部を前記第一弾性部材に対してトルク伝達を可能に係合させると共に、前記第一凹凸部を前記中間凹凸部の軸方向片端部に対して周方向隙間を介在させた状態でトルク伝達を可能に係合させた第一伝達部材と、
径方向他側の周面に凹部と凸部とを周方向に関して交互に配置して成る第二凹凸部を有し、前記第二凹凸部を前記第二弾性部材に対してトルク伝達を可能に係合させると共に、前記第二凹凸部を前記中間凹凸部の軸方向他端部に周方向隙間を介在させた状態でトルク伝達を可能に係合させた第二伝達部材と
を備えた、トルク伝達用継手。
前記第一凹凸部は、前記中間凹凸部の前記軸方向片端部に対し、前記第一凹凸部と前記第一弾性部材との係合部に介在する周方向隙間よりも大きい周方向隙間を介在させた状態で係合している
請求項1に記載したトルク伝達用継手。
前記第二凹凸部は、前記中間凹凸部の前記軸方向他端部に対し、前記第二凹凸部と前記第二弾性部材との係合部に介在する周方向隙間よりも大きい周方向隙間を介在させた状態で係合している
請求項1または2に記載したトルク伝達用継手。
前記少なくとも1つの第一歯部の径方向片側面と径方向他側面とのうちの少なくとも一方の径方向側面に、前記第一係合部として、軸方向片側に向かうに従って当該第一歯部の径方向に関する幅寸法が大きくなる方向に傾斜した第一傾斜係合面部、又は、径方向に突出する第一係合突起が設けられており、
前記少なくとも1つの第二歯部の径方向片側面と径方向他側面とのうちの少なくとも一方の径方向側面に、前記第二係合部として、軸方向他側に向かうに従って当該第二歯部の径方向に関する幅寸法が大きくなる方向に傾斜した第二傾斜係合面部、又は、径方向に突出する第二係合突起が設けられている
請求項4に記載したトルク伝達用継手。
前記第一伝達部材と前記第二伝達部材とのうちの少なくとも何れか一方の部材に、前記中間伝達部材と前記第一弾性部材及び前記第二弾性部材との結合体の軸方向側面と当接又は近接対向する位置決め用側面が設けられている
請求項1〜5のうちの何れか1項に記載したトルク伝達用継手。
前記中間伝達部材と前記第一弾性部材及び前記第二弾性部材との結合体の軸方向側面に、径方向他側に向かうに従って軸方向に関して前記結合体の中央側に向かう方向に傾斜した傾斜側面部が設けられている
請求項1〜6のうちの何れか1項に記載したトルク伝達用継手。
前記第一凹凸部と前記第二凹凸部とのうち、少なくとも何れか一方の凹凸部を構成する凸部の周方向幅寸法が、軸方向に関して前記中間伝達部材の中央側に向かうに従って小さくなっている
請求項1〜7のうちの何れか1項に記載したトルク伝達用継手。
【背景技術】
【0002】
図18〜19は、特許文献1に記載されて従来から知られている電動式パワーステアリング装置の1例を示している。
後端部にステアリングホイール1を取り付けられたステアリングシャフト2の前端部は、ハウジング3内に回転自在に支持されており、ステアリングシャフト2により回転駆動される部分にウォームホイール4が固定されている。ウォームホイール4と噛合するウォーム歯5をウォーム軸6の軸方向中間部に設け、電動モータ7により回転駆動されるウォーム8の軸方向両端部は、深溝型玉軸受等の1対の転がり軸受9a、9bにより、ハウジング3内に回転自在に支持されている。更に、ウォーム軸6の先端部で転がり軸受9aよりも突出した部分に押圧駒10を外嵌している。押圧駒10とハウジング3との間に、コイルばね11等の弾性部材を設けている。そして、コイルばね11により、押圧駒10を介して、ウォーム軸6に設けたウォーム歯5を、ウォームホイール4に向け押圧している。この構成により、ウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを抑え、歯打ち音の発生を抑えている。
【0003】
上述の従来構造の場合、ウォーム歯5とウォームホイール4との噛合部で歯打ち音が発生する事を抑えられるが、電動モータ7の出力軸12の先端部とウォーム軸6の基端部との結合部分で発生する異音については改善の余地がある。この点に就いて、以下に説明する。
【0004】
図19に示す構造の場合、電動モータ7の出力軸12の先端部とウォーム軸6の基端部とをトルクの伝達を可能に結合する為に、ウォーム軸6の基端部にスプライン孔13を、ウォーム軸6の基端面に開口する状態で形成している。一方、出力軸12の先端部に、スプライン軸部14を形成している。そして、スプライン軸部14とスプライン孔13とをスプライン係合させる事で、出力軸12とウォーム軸6とをトルクの伝達を可能に結合している。
【0005】
スプライン軸部14とスプライン孔13とが、周方向隙間をゼロにした状態で(バックラッシュなしで)スプライン係合していれば、出力軸12の先端部とウォーム軸6の基端部との結合部(スプライン係合部)で、異音が発生する事はない。しかし、実際の場合には、スプライン係合部にはバックラッシュが存在している。特に、
図19に示す構造により、ウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを抑える構造では、ウォーム軸6を揺動変位させる必要上、スプライン係合部のバックラッシュを完全になくす事はできず、改善の余地がある。
【0006】
特許文献2には、電動モータの出力軸とウォーム軸とを、金属製で円柱状の動力伝達部材を介して結合する事により、ウォーム軸の揺動変位を円滑に行わせる事ができる構造が記載されている。特許文献2に記載された構造においても、ウォーム軸を揺動変位させる為、動力伝達部材の両端部に設けられたスプライン軸部(雄スプライン)と、ウォーム軸及び電動モータの出力軸のそれぞれの端部に設けられたスプライン孔(雌スプライン)とのスプライン係合部には、それぞれバックラッシュが存在している。この為、回転軸の回転方向を反転させる際の異音について改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の様な事情に鑑み、本発明の一態様によれば駆動軸の回転方向を反転させる際に、異音の発生を抑える事ができるトルク伝達用継手の構造を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るトルク伝達用継手は、中間伝達部材と、第一弾性部材と、第二弾性部材と、第一伝達部材と、第二伝達部材とを備える。
中間伝達部材は、径方向片側の周面に凹部と凸部とを周方向に関して交互に配置して成る中間凹凸部を有する本体部と、この本体部の軸方向片側面の周方向複数箇所にそれぞれ軸方向に突出する状態で設けられた第一歯部と、前記本体部の軸方向他側面の周方向複数箇所にそれぞれ軸方向に突出する状態で設けられた第二歯部と、前記各第一歯部のうちの少なくとも1つの第一歯部に設けられた第一係合部と、前記各第二歯部のうちの少なくとも1つの第二歯部に設けられた第二係合部とを有する。
前記第一弾性部材は、弾性材製で円環状に構成され、前記各第一歯部と係合する事により前記中間伝達部材との間でのトルク伝達を可能とされると共に、前記第一係合部と係合する事により前記中間伝達部材に対する軸方向片側への変位を規制されている。
前記第二弾性部材は、弾性材製で円環状に構成され、前記各第二歯部と係合する事により前記中間伝達部材との間でのトルク伝達を可能とされると共に、前記第二係合部と係合する事により前記中間伝達部材に対する軸方向他側への変位を規制されている。
前記第一伝達部材は、径方向他側の周面に凹部と凸部とを周方向に関して交互に配置して成る第一凹凸部を有し、この第一凹凸部を前記第一弾性部材に対してトルク伝達を可能に係合させると共に、前記第一凹凸部を前記中間凹凸部の軸方向片端部に対して周方向隙間を介在させた状態でトルク伝達を可能に係合(前記第一凹凸部を構成する凸部の周方向側面と前記中間凹凸部を構成する凸部の周方向側面とを対向)させている。
前記第二伝達部材は、径方向他側の周面に凹部と凸部とを周方向に関して交互に配置して成る第二凹凸部を有し、この第二凹凸部を前記第二弾性部材に対してトルク伝達を可能に係合させると共に、前記第二凹凸部を前記中間凹凸部の軸方向他端部に対して周方向隙間を介在させた状態でトルク伝達を可能に係合(前記第二凹凸部を構成する凸部の周方向側面と前記中間凹凸部を構成する凸部の周方向側面とを対向)させている。
【0010】
上記構成において、前記第一凹凸部は、前記中間凹凸部の前記軸方向片端部に対し、前記第一凹凸部と前記第一弾性部材との係合部に介在する(前記第一凹凸部を構成する凸部の周方向側面と前記第一弾性部材の表面との間に存在する)周方向隙間(ゼロの場合を含む)よりも大きい周方向隙間を介在させた状態で係合してもよい。
【0011】
上記構成において、前記第二凹凸部は、前記中間凹凸部の前記軸方向他端部に対し、前記第二凹凸部と前記第二弾性部材との係合部に介在する(前記第二凹凸部を構成する凸部の周方向側面と前記第二弾性部材の表面との間に存在する)周方向隙間(ゼロの場合を含む)よりも大きい周方向隙間を介在させた状態で係合してもよい。
【0012】
上記構成において、前記少なくとも1つの第一歯部の径方向側面に、前記第一係合部が設けられたり、前記少なくとも1つの第二歯部の径方向側面に、前記第二係合部が設けられてもよい。
【0013】
上記構成において、前記少なくとも1つの第一歯部の径方向片側面と径方向他側面とのうちの少なくとも一方の径方向側面に、前記第一係合部として、軸方向片側に向かうに従って当該第一歯部の径方向に関する幅寸法が大きくなる方向に傾斜した第一傾斜係合面部、又は、径方向に突出する第一係合突起が設けられたり、前記少なくとも1つの第二歯部の径方向片側面と径方向他側面とのうちの少なくとも一方の径方向側面に、前記第二係合部として、軸方向他側に向かうに従って当該第二歯部の径方向に関する幅寸法が大きくなる方向に傾斜した第二傾斜係合面部、又は、径方向に突出する第二係合突起が設けられてもよい。
【0014】
上記構成において、前記第一伝達部材と前記第二伝達部材とのうちの少なくとも何れか一方の部材に、前記中間伝達部材と前記第一弾性部材及び前記第二弾性部材との結合体の軸方向側面と当接又は近接対向する位置決め用側面が設けられてもよい。
【0015】
上記構成において、前記中間伝達部材と前記第一弾性部材及び前記第二弾性部材との結合体の軸方向側面に、径方向他側に向かうに従って軸方向に関して前記結合体の中央側に向かう方向に傾斜した傾斜側面部が設けられてもよい。
【0016】
上記構成において、前記第一凹凸部と前記第二凹凸部とのうち、少なくとも何れか一方の凹凸部を構成する凸部の周方向幅寸法が、軸方向に関して前記中間伝達部材の中央側に向かうに従って小さくなっていてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係る電動式パワーステアリング装置は、回転軸と、ウォームホイールと、ウォームと、電動モータとを備える。
前記回転軸は、ハウジングに対し回転自在に支持される。
前記ウォームホイールは、前記回転軸に対し、この回転軸と同軸に支持されて、この回転軸と共に回転する。
前記ウォームは、ウォーム軸と、このウォーム軸の外周面に設けられたウォーム歯とを有し、このウォーム歯を前記ウォームホイールに噛合させた状態で、前記ハウジングに対し回転自在に支持される。
前記電動モータは、例えば前記ハウジングに支持された状態で、前記ウォームを回転駆動する為のものである。
駆動軸となる前記電動モータの出力軸と、被駆動軸となる前記ウォーム軸とが、トルク伝達用継手により、トルク伝達を可能に接続されている。
前記トルク伝達用継手は上記のトルク伝達用継手であり、前記第一伝達部材が前記電動モータの出力軸の先端部に固定又は一体成形されていると共に、前記第二伝達部材が前記ウォーム軸の基端部に固定又は一体成形されている。
【0018】
上記構成において、前記ウォーム軸の先端部と前記ハウジングとの間に、前記ウォームを前記ウォームホイールに向けて弾性的に押圧する予圧付与機構を設けてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上述の構成を有するトルク伝達用継手及び電動式パワーステアリング装置によれば、軸方向端部に第一伝達部材を固定又は一体成形された駆動軸と、軸方向端部に第二伝達軸を固定又は一体成形された被駆動軸とのうち、駆動軸の回転方向を反転させる際に、異音の発生を抑える事ができる。
即ち、上記構成では、第一凹凸部が中間凹凸部の軸方向片端部に対し、周方向隙間を介在させた状態でトルク伝達を可能に係合していると共に、第二凹凸部が中間凹凸部の軸方向他端部に対し、周方向隙間を介在させた状態でトルク伝達を可能に係合している。この為、駆動軸から被駆動軸にトルクが伝達される際に、その初期の段階では、第一凹凸部と第一弾性部材との係合部に於いて、第一弾性部材が弾性変形した後に、第一凹凸部を構成する凸部の周方向側面と中間凹凸部を構成する凸部の周方向側面とが当接する構成とすることができる。又、同様に、第二凹凸部と第二弾性部材との係合部に於いて、第二弾性部材が弾性変形した後に、第二凹凸部を構成する凸部の周方向側面と中間凹凸部を構成する凸部の周方向側面とが当接する構成とすることができる。従って、これらの当接の勢いは、第一弾性部材及び第二弾性部材の弾性変形に伴って弱められている為、当接に伴う異音の発生を抑える事ができる。この結果、駆動軸の回転方向を反転させる際にも、第一凹凸部及び第二凹凸部と中間凹凸部との係合部で、異音の発生を抑える事ができる。
又、本発明の場合、第一弾性部材は、中間伝達部材の第一係合部と係合する事により、この中間伝達部材に対する軸方向片側への変位を規制されている為、使用中に、これら第一弾性部材と中間伝達部材とが分離する事を防止できる。又、第二弾性部材は、中間伝達部材の第二係合部と係合する事により、この中間伝達部材に対する軸方向他側への変位を規制されている為、使用中に、これら第二弾性部材と中間伝達部材とが分離する事を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態の1例]
本発明の実施の形態の1例に就いて、
図1〜17により説明する。
本例の電動式パワーステアリング装置は、
図18〜19に示した従来構造と同様、後端部にステアリングホイール1を取り付けられたステアリングシャフト2の前端部を、ハウジング3内に回転自在に支持しており、ステアリングシャフト2により回転駆動される部分にウォームホイール4を固定している。又、ウォームホイール4と噛合するウォーム歯5をウォーム軸6aの軸方向中間部外周面に設け、電動モータ7により回転駆動されるウォーム8の軸方向両端部を、1対の転がり軸受(図示の例では玉軸受)9a、9bにより、ハウジング3内に回転自在に支持している。更に、ウォーム軸6aの先端部に外嵌した転がり軸受9aと、ハウジング3との間に、コイルばね、板ばね等の弾性体を含んで構成される予圧付与機構15を設けている。予圧付与機構15はウォーム軸6aに設けたウォーム歯5を、ウォームホイール4に向け、弾性体の弾力に基づいて押圧している。この構成により、ウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを抑え、歯打ち音の発生を抑えている。
【0022】
本例の場合、軸方向に関して互いに直列に配置された、駆動軸となる電動モータ7の出力軸12aの先端部と、被駆動軸となるウォーム軸6aの基端部とを、トルク伝達用継手16を介してトルクの伝達を可能に結合している。
【0023】
トルク伝達用継手16は、第一伝達部材17と、第二伝達部材18と、中間伝達部材19と、第一弾性部材20と、第二弾性部材21とを備える。
尚、本明細書に於いて、トルク伝達用継手16に関して、軸方向「片側」とは、例えば
図2〜6、8、11に於ける右側を言い、軸方向「他側」とは、例えば
図2〜6、8、11に於ける左側を言う。
【0024】
第一伝達部材17は出力軸12aの先端部に設けられる。例えば
図12に示す様に、第一伝達部材17は、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂や、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金等の金属により、射出成形、鋳造、鍛造、焼結、切削等の方法によって、全体を円環状に造られる。第一伝達部材17は出力軸12aの先端部に、締り嵌め、スプライン嵌合、かしめ等により、相対回転及び軸方向の相対変位を阻止した状態で外嵌固定されている。但し、本発明を実施する場合、第一伝達部材17は、出力軸12aの先端部に一体に形成する事もできる。
【0025】
第一伝達部材17の外周面のうち、軸方向片端部を除く、軸方向他端部乃至中間部には、凹部23と凸部24とを周方向に関して交互に配置して成る、第一凹凸部22が設けられている。又、第一伝達部材17の外周面のうち、軸方向片端部には、円輪状の第一鍔部25が全周に亙って設けられている。そして、第一凹凸部22を構成する凹部23の軸方向片側開口は、第一鍔部25の軸方向他側面である位置決め用側面30aによって塞がれている。
【0026】
本例の場合、第一凹凸部22を構成する凸部24の周方向両側面は、互いに平行な平面になっている。即ち、この第一凹凸部22を構成する凸部24の周方向に関する幅寸法W
Aは、径方向に関して変化しておらず、又、
図14の(a)に示す様に、軸方向に関しても変化していない。
【0027】
第二伝達部材18はウォーム軸6aの基端部設けられる。例えば
図13に示す様に、第二伝達部材18は、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂や、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金等の金属により、射出成形、鋳造、鍛造、焼結、切削等の方法によって、全体を円環状に造られる。第二伝達部材18はウォーム軸6aの基端部に、締り嵌め、スプライン嵌合、かしめ等により、相対回転及び軸方向の相対変位を阻止した状態で外嵌固定されている。但し、本発明を実施する場合、第二伝達部材18は、ウォーム軸6aの基端部に一体に形成する事もできる。
【0028】
第二伝達部材18の外周面のうち、軸方向他端部を除く、軸方向片端部乃至中間部には、凹部27と凸部28とを周方向に関して交互に配置して成る、第二凹凸部26が設けられている。又、第二伝達部材18の外周面のうち、軸方向他端部には、円輪状の第二鍔部29が全周に亙って設けられている。そして、第二凹凸部26を構成する凹部27の軸方向他側開口は、第二鍔部29の軸方向片側面である位置決め用側面30bによって塞がれている。
【0029】
本例の場合、第二凹凸部26を構成する凸部28の周方向両側面は、互いに平行な平面になっている。即ち、この第二凹凸部26を構成する凸部28の周方向に関する幅寸法W
Bは、径方向に関して変化しておらず、又、
図14の(a)に示す様に、軸方向に関しても変化していない。
【0030】
尚、本例の場合、第一伝達部材17と第二伝達部材18とは、互いに同形・同大に造られている。この為、本例の場合には、第一伝達部材17と第二伝達部材18とで、部品を共用できる。
【0031】
中間伝達部材19は、例えば
図15に示す様に、第一弾性部材20及び第二弾性部材21を構成する弾性材よりも弾性変形しにくい(剛性が高い)材料であって、その様な条件を満たす、布でゴムを強化したベルト材料や、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂(PPS、PEEK、ポリアミド等)や、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金等の金属により、射出成形、鋳造、鍛造、焼結、切削等の方法によって、全体を円環状に造られている。
【0032】
中間伝達部材19は、円筒状の本体部31を有すると共に、この本体部31の内周面に凹部33と凸部34とを周方向に関して交互に配置して成る中間凹凸部32を有する。
【0033】
本体部31の軸方向片側面のうち、各凸部34、34の周方向中央部に対応する部分のそれぞれの径方向内端部乃至中間部には、軸方向から見た形状が略扇形の第一歯部35が、軸方向に突出する状態で設けられている。各第一歯部35、35の先端面(軸方向片側面)のそれぞれの径方向外端部乃至中間部は、径方向外側に向かうに従って軸方向に関して中間伝達部材19の中央側(軸方向他側)に向かう方向に傾斜した傾斜側面部36になっている。又、各第一歯部35、35のそれぞれの径方向外側面の周方向中間部は、軸方向片側に向かうに従って径方向外側に向かう方向(各第一歯部35、35の径方向に関する幅寸法が大きくなる方向)に傾斜した第一傾斜係合面部37になっている。又、各第一歯部35、35のそれぞれの径方向外側面の周方向両端部には、周方向両側に向かうに従って径方向内側に向かう方向に傾斜した1対の面取り部38、38が設けられている。又、各第一歯部35、35の径方向中間部における周方向側面(扇形の径方向に延びる側面)は、凹部33の内面を構成する周方向側面と平行である。又、各第一歯部35、35のうち、周方向に関して1つ置きに配置された複数の第一歯部35、35のそれぞれの径方向内側面の軸方向片半部に、径方向内方に突出する第一係合突起39が設けられている。各第一係合突起39、39の軸方向他側面は、中間伝達部材19の中心軸に対して直交する平面になっている。
【0034】
又、本体部31の軸方向他側面のうち、各凸部34、34の周方向中央部に対応する部分のそれぞれの径方向内端部乃至中間部には、軸方向から見た形状が略扇形の第二歯部40が、軸方向に突出する状態で設けられている。各第二歯部40、40の先端面(軸方向他側面)のそれぞれの径方向外端部乃至中間部は、径方向外側に向かうに従って軸方向に関して中間伝達部材19の中央側(軸方向片側)に向かう方向に傾斜した傾斜側面部41になっている。又、各第二歯部40、40のそれぞれの径方向外側面の周方向中間部は、軸方向他側に向かうに従って径方向外側に向かう方向(各第二歯部40、40の径方向に関する幅寸法が大きくなる方向)に傾斜した第二傾斜係合面部42になっている。又、各第二歯部40、40のそれぞれの径方向外側面の周方向両端部には、周方向両側に向かうに従って径方向内側に向かう方向に傾斜した1対の面取り部43、43が設けられている。又、各第二歯部40、40の径方向中間部における周方向側面(扇形の径方向に延びる側面)は、凹部33の内面を構成する周方向側面と平行である。又、各第二歯部40、40のうち、周方向に関して1つ置きに配置された複数の第二歯部40、40のそれぞれの径方向内側面の軸方向他半部に、径方向内方に突出する第二係合突起44が設けられている。これら各第二係合突起44、44の軸方向片側面は、中間伝達部材19の中心軸に対して直交する平面になっている。
【0035】
又、本例の場合、各第一係合突起39、39と各第二係合突起44、44との周方向に関する配置の位相は、互いに半ピッチずれている。
尚、本発明を実施する場合、第一係合突起39(第二係合突起44)の個数は、本例の個数よりも少なくする事もできるし、本例の個数よりも多くする(例えば、第一歯部35(第二歯部40)と同数}とする事もできる。又、各第一係合突起39、39と各第二係合突起44、44との周方向に関する配置の位相を互いに一致させる事もできる。
【0036】
尚、本例の場合、中間伝達部材19の軸方向両半部は、互いに同形・同大に造られている。但し、上述した様に、各第一係合突起39、39と各第二係合突起44、44との周方向に関する配置の位相が互いに半ピッチずれている。
【0037】
第一弾性部材20は、例えば
図16に示す様に、中間伝達部材19よりも剛性が低い、ゴム(NBR、HNBR等)、エラストマー(ポリウレタン、シリコン等)等の弾性材により、全体を円輪状に造られたもので、中間伝達部材19の軸方向片端部に組み付けられている。
【0038】
第一弾性部材20のうち、周方向に関して中間凹凸部32を構成する凹部33と同位相となる複数箇所には、第一弾性部材20の内周縁に開口する第一弾性スリット45がそれぞれ設けられている。又、第一弾性部材20のうち、周方向に隣り合う第一弾性スリット45、45同士の間の周方向中央部には、第一透孔46がそれぞれ設けられている。各第一透孔46、46はそれぞれ、軸方向から見た形状が扇形であり、第一歯部35を挿入した状態で、この第一歯部35を周方向及び径方向のがたつきなく係合させる事が可能である。特に、各第一透孔46、46の内面を構成する外径側側面はそれぞれ、第一歯部35の第一傾斜係合面部37と面接触可能な、第一被傾斜係合面部47になっている。又、各第一透孔46、46の内面を構成する周方向側面(扇形の径方向に延びる側面)は、隣り合う第一弾性スリット45、45の内面を構成する周方向側面と平行である。又、第一弾性部材20のうち、径方向に関して第一弾性部材20の内周面と各第一透孔46、46との間に挟まれた部分のそれぞれは、軸方向片半部が切り欠かれた第一係合梁48となっている。又、第一弾性部材20の軸方向片側面の径方向外端部乃至中間部は、径方向外側に向かうに従って軸方向他側(軸方向に関して中間伝達部材19の軸方向中央側)に向かう方向に傾斜した傾斜側面部49になっている。
【0039】
第一弾性部材20は、例えば
図8に示す様に、中間伝達部材19の軸方向片端部に組み付けられた状態で、中間伝達部材19の軸方向片側面を覆うと共に、各第一透孔46、46の内側に、各第一歯部35、35を1つずつ挿入して周方向及び径方向のがたつきなく係合させている。そして、各第一歯部35、35の周方向両側面と各第一透孔46、46の内面との係合に基づいて、中間伝達部材19と第一弾性部材20との間でのトルク伝達を可能としている。又、この状態で、各第一歯部35、35の第一傾斜係合面部37に、各第一透孔46、46の第一被傾斜係合面部47を係合(面接触)させると共に、各第一係合突起39の軸方向他側面に、各第一係合梁48の軸方向片側面を係合(面接触)させている。そして、これらの係合に基づいて、中間伝達部材19に対する第一弾性部材20の軸方向片側への変位を規制し、これら中間伝達部材19と第一弾性部材20との分離防止を図っている。
【0040】
又、この状態で、各第一歯部35、35の面取り部38、38と、各第一透孔46、46の第一被傾斜係合面部47との間には、それぞれ略三角形状の隙間が設けられている。又、本例の場合には、この状態で、各部の寸法を規制する事により、第一弾性部材20の軸方向片側面を各第一歯部35、35の先端面よりも軸方向片側に位置させている。これと共に、第一弾性部材20の内径寸法を、中間凹凸部32を構成する各凸部24、24の内接円の直径寸法及び各第一係合突起39、39の内接円の直径寸法のそれぞれよりも小さくする事により、第一弾性部材20の内周面を、中間凹凸部32を構成する各凸部24、24の径方向内側面及び各第一係合突起39、39の径方向内端縁よりも径方向内側に位置させている。
【0041】
第二弾性部材21は、例えば
図17に示す様に、中間伝達部材19よりも剛性が低い、ゴム(NBR、HNBR等)、エラストマー(ポリウレタン、シリコン等)等の弾性材により、全体を円輪状に造られたもので、中間伝達部材19の軸方向他端部に組み付けられている。
【0042】
第二弾性部材21のうち、周方向に関して中間凹凸部32を構成する凹部33と同位相となる複数箇所には、第二弾性部材21の内周縁に開口する第二弾性スリット50がそれぞれ設けられている。又、第二弾性部材21のうち、周方向に隣り合う第二弾性スリット50、50同士の間の周方向中央部には、第二透孔51がそれぞれ設けられている。各第二透孔51、51はそれぞれ、軸方向から見た形状が扇形であり、第二歯部40を挿入した状態で、この第二歯部40を周方向及び径方向のがたつきなく係合させる事が可能である。特に、これら各第二透孔51、51の内面を構成する外径側側面はそれぞれ、第二歯部40の第二傾斜係合面部42と面接触可能な、第二被傾斜係合面部52になっている。又、各第二透孔51、51の内面を構成する周方向側面(扇形の径方向に延びる側面)は、周方向に隣り合う第二弾性スリット50、50の内面を構成する周方向側面と平行である。又、第二弾性部材21のうち、径方向に関してこの第二弾性部材21の内周面と各第二透孔51、51との間に挟まれた部分のそれぞれは、軸方向他半部が切り欠かれた第二係合梁53となっている。又、第二弾性部材21の軸方向他側面の径方向外端部乃至中間部は、径方向外側に向かうに従って軸方向片側(軸方向に関して中間伝達部材19の軸方向中央側)に向かう方向に傾斜した傾斜側面部54になっている。
【0043】
第二弾性部材21は、例えば
図8に示す様に、中間伝達部材19の軸方向他端部に組み付けられた状態で、この中間伝達部材19の軸方向他側面を覆うと共に、各第二透孔51、51の内側に、各第二歯部40、40を1つずつ挿入して周方向及び径方向のがたつきなく係合させている。そして、各第二歯部40、40の周方向両側面と各第二透孔51、51の内面との係合に基づいて、中間伝達部材19と第二弾性部材21との間でのトルク伝達を可能としている。又、この状態で、各第二歯部40、40の第二傾斜係合面部42に、各第二透孔51、51の第二被傾斜係合面部52を係合(面接触)させると共に、各第二係合突起44の軸方向片側面に、各第二係合梁53の軸方向他側面を係合(面接触)させている。そして、これらの係合に基づいて、中間伝達部材19に対する第二弾性部材21の軸方向他側への変位を規制し、これら中間伝達部材19と第二弾性部材21との分離防止を図っている。
【0044】
又、この状態で、各第二歯部40、40の面取り部43、43と、各第二透孔51、51の第二被傾斜係合面部52との間には、それぞれ略三角形状の隙間が設けられている。又、本例の場合には、この状態で、各部の寸法を規制する事により、第二弾性部材21の軸方向他側面を各第二歯部40、40の先端面よりも軸方向他側に位置させている。これと共に、第二弾性部材21の内径寸法を、中間凹凸部32を構成する各凸部24、24の内接円の直径寸法及び各第二係合突起44、44の内接円の直径寸法のそれぞれよりも小さくする事により、第二弾性部材21の内周面を、中間凹凸部32を構成する各凸部24、24の径方向内側面及び各第二係合突起44、44の径方向内端縁よりも径方向内側に位置させている。
【0045】
尚、本例の場合、第一弾性部材20と第二弾性部材21とは、互いに同形・同大に造られている。この為、本例の場合には、第一弾性部材20と第二弾性部材21とで、部品の共用化を図れる。
【0046】
又、本例の場合、中間伝達部材19と第一弾性部材20と第二弾性部材21との結合体55を組み立てた状態で、結合体55の軸方向両側面の径方向外端部乃至中間部には、径方向外側に向かうに従って軸方向に関して中間伝達部材19の中央側に向かう方向に傾斜した傾斜側面部(36、49)(41、54)が設けられている。
【0047】
又、本例の場合には、結合体55を組み立てた状態で、結合体55の軸方向片端部の径方向内側に、第一伝達部材17の軸方向他端部乃至中間部を、軸方向片側から挿入している。
これにより、第一凹凸部22を構成する凸部24を、第一弾性部材20に設けられた第一弾性スリット45に、周方向隙間を介在させる事なく係合させると共に、第一凹凸部22を、中間伝達部材19に設けられた中間凹凸部32の軸方向片端部に、周方向隙間を介在させた状態で係合させている。即ち、この状態で、第一凹凸部22を構成する凸部24の周方向両側面と第一弾性スリット45の周方向両内側面とを、それぞれ当接させている。その一方で、第一凹凸部22を構成する凸部24と中間凹凸部32を構成する凸部34との周方向側面同士を当接させずに、各周方向側面同士の間に、周方向隙間α、αを存在させている(
図10参照)。又、第一鍔部25の軸方向他側面である位置決め用側面30aを、結合体55の軸方向片側面に近接若しくは当接(図示の例では近接)させる事により、結合体55に対する第一伝達部材17の軸方向の位置決めを図っている。
【0048】
更に、本例の場合には、この状態で、第一凹凸部22を構成する凸部24の径方向外端面と、第一弾性スリット45の底面との間に径方向隙間βを、第一凹凸部22を構成する凸部24の径方向外端面と、中間凹凸部32を構成する凹部33の底面との間に径方向隙間γを、それぞれ介在させている(
図9、10参照)。これと共に、径方向隙間βを径方向隙間γよりも小さくしている(β<γ)。又、第一凹凸部22を構成する凹部23の底面と、第一弾性部材20の内周面との間に径方向隙間εを、第一凹凸部22を構成する凹部23の底面と、中間凹凸部32を構成する凸部34の先端面(径方向内側面)との間に径方向隙間ηを、それぞれ介在させている(
図10参照)。これと共に、径方向隙間εを径方向隙間ηよりも小さくしている(ε<η)。
【0049】
又、本例の場合には、結合体55を組み立てた状態で、結合体55の軸方向他端部の径方向内側に、第二伝達部材18の軸方向片端部乃至中間部を、軸方向他側から挿入している。
これにより、第二凹凸部26を構成する凸部28を、第二弾性部材21に設けられた第二弾性スリット50に、周方向隙間を介在させる事なく係合させると共に、第二凹凸部26を、中間伝達部材19に設けられた中間凹凸部32の軸方向他端部に、周方向隙間を介在させた状態で係合させている。即ち、この状態で、第二凹凸部26を構成する凸部26の周方向両側面と第二弾性スリット50の周方向両内側面とを、それぞれ当接させている。その一方で、第二凹凸部26を構成する凸部28と中間凹凸部32を構成する凸部34との周方向側面同士を当接させずに、各周方向側面同士の間に、周方向隙間α、αを存在させている。又、第二鍔部29の軸方向片側面である位置決め用側面30bを、結合体55の軸方向他側面に近接若しくは当接(図示の例では近接)させる事により、結合体55に対する第二伝達部材18の軸方向の位置決めを図っている。
【0050】
更に、本例の場合には、この状態で、第二凹凸部26を構成する凸部28の径方向外端面と、第二弾性スリット50の底面との間に径方向隙間βを、第二凹凸部26を構成する凸部28の径方向外端面と、中間凹凸部32を構成する凹部33の底面との間に径方向隙間γを、それぞれ介在させている。これと共に、径方向隙間βを径方向隙間γよりも小さくしている(β<γ)。又、第二凹凸部26を構成する凹部27の底面と、第二弾性部材21の内周面との間に径方向隙間εを、第二凹凸部26を構成する凹部27の底面と、中間凹凸部32を構成する凸部34の先端面(径方向内側面)との間に径方向隙間ηを、それぞれ介在させている。これと共に、径方向隙間εを径方向隙間ηよりも小さくしている(ε<η)。
【0051】
なお、本例の場合には、結合体55に第一伝達部材17と第二伝達部材18を組み込んだ状態で、第一伝達部材17と第二伝達部材18は軸方向に直列に配置され、軸方向には互いに重なり合っていない。
又、第一伝達部材17の位置決め用側面30aと第二伝達部材18の位置決め用側面30bとの間の軸方向距離Tを、結合体55の軸方向寸法S(詳細には第一弾性部材20の軸方向片側面と第二弾性部材18の軸方向他側面との軸方向距離)より大きくしている(T>S)。
【0052】
上述の本例の電動式パワーステアリング装置の場合には、電動モータ7の出力軸12aとウォーム8との間で伝達されるトルクが比較的小さい場合には、出力軸12aの回転トルクは、第一伝達部材17の第一凹凸部22を構成する凸部24、24と、第一弾性部材20の第一弾性スリット45、45との係合部から、第一弾性部材20に伝達され、更に、この第一弾性部材20と中間伝達部材19の第一歯部35、35との係合部から、中間伝達部材19に伝達される。そして、中間伝達部材19に伝達されたトルクは、中間伝達部材19の第二歯部40、40と第二弾性部材21との係合部から、第二弾性部材21に伝達され、更に、第二弾性部材21の第二弾性スリット50、50と第二伝達部材18の第二凹凸部26を構成する凸部28、28との係合部から、ウォーム8に伝達される。
【0053】
これに対して、出力軸12aとウォーム8との間で伝達されるトルクが大きくなると、第一弾性部材20の一部が、第一凹凸部22を構成する凸部24、24と第一歯部35、35との間で、周方向に弾性的に押し潰されると共に、第二弾性部材21の一部が、第二凹凸部26を構成する凸部28、28と第二歯部40、40との間で、周方向に弾性的に押し潰される。そして、第一凹凸部22を構成する凸部24、24及び第二凹凸部26を構成する凸部28、28と、中間凹凸部32を構成する凸部34、34との、それぞれの周方向側面同士が当接する。これらの当接の勢いは、第一弾性部材20及び第二弾性部材21の一部の弾性変形により弱められている為、当接に伴う異音の発生を抑えられる。この状態では、出力軸12aの回転トルクの大部分は、第一凹凸部22と中間凹凸部32との係合部から中間伝達部材19に伝達され、中間伝達部材19に伝達されたトルクの大部分は、中間凹凸部32と第二凹凸部26との係合部からウォーム8に伝達される(残りのトルクは、上述したトルクが小さい場合と同様にして、出力軸12aからウォーム8に伝達される)。
【0054】
又、本例の場合には、電動モータ7の出力軸12aの回転方向を反転させる際にも、第一凹凸部22を構成する凸部24、24及び第二凹凸部26を構成する凸部28、28と、中間凹凸部32を構成する凸部34、34との、それぞれの周方向側面同士の当接の勢いを、第一弾性部材20及び第二弾性部材21の弾性変形により弱められる為、当接に伴う異音の発生を抑えられる。
【0055】
上述の様に、本例の電動式パワーステアリング装置の場合には、出力軸12aとウォーム8との間でのトルク伝達を、トルク伝達用継手16を介して行う事により、伝達するトルクの大きさに応じてトルクの伝達特性を2段階に分ける事ができる。別な言い方をすれば、本例の場合には、トルク伝達用継手16の捩り剛性が、伝達するトルクが小さい場合には小さくなり、伝達するトルクが大きい場合には大きくなると言った、2段階特性を有している。この為、ステアリングホイール1の操作感を良好にできる。
【0056】
即ち、一般的に、電動式パワーステアリング装置は、路面が荒れている等により、車輪側からウォームホイール4を固定した部分に振動的なトルクが加わった場合には、このトルクを検出し、このトルクを打ち消す方向のトルクを電動モータ7により発生させる。これにより、振動的なトルク(ステアリングシャフト2を通じてステアリングホイール1に伝達されようとするトルク)を打ち消す。
ここで、ウォームホイール4と噛合するウォーム8は、このウォームホイール4に加わる振動的なトルクの反力により回転する傾向となるが、ウォーム8と電動モータ7の出力軸12aとを相対回転させる事に対する抵抗(トルク伝達用継手16の捩り剛性)が大きい場合には、ウォーム8の回転抵抗が大きくなる。
一方、上述のウォームホイール4に加わる振動的なトルクは比較的小さい為、ウォーム8の回転抵抗が大きいと、ステアリングホイール1の操作感が損なわれると言った問題を生じる可能性がある。
これに対し、本例の場合には、トルク伝達用継手16の捩り剛性が、伝達するトルクが小さい場合には小さくなり、伝達するトルクが大きい場合には大きくなると言った、2段階特性を有している。この為、上述の問題が生じる事を防止でき、ステアリングホイール1の操作感を良好にできる。
【0057】
尚、本発明を実施する場合には、例えば、第一凹凸部22と中間凹凸部32との係合部の周方向隙間と、第二凹凸部26と中間凹凸部32との間の周方向隙間とを、互いに異ならせたり、第一弾性部材20の弾性と第二弾性部材21の弾性とを、互いに異ならせたり、第一凹凸部22と第一弾性部材20の第一弾性スリット45との係合部、及び、第二凹凸部26と第二弾性部材21の第二弾性スリット50との係合部に、それぞれ周方向隙間を設けたり、更には、これらの周方向隙間を互いに異ならせたりする事によって、出力軸12aとウォーム8との間でのトルクの伝達特性(トルク伝達用継手16の捩り剛性)を2段階よりも多くする事もできる。これらの周方向隙間の大きさの関係は目的に応じて適宜調整することができる。
【0058】
又、本例の場合には、第一凹凸部22と第一弾性部材20との係合部、及び、第一凹凸部22と中間凹凸部32との係合部に、それぞれ径方向隙間β、γ、ε、ηが介在している。これと共に、結合体55の軸方向片側面の径方向外端部乃至中間部が、径方向外側に向かうに従って軸方向に関して中間伝達部材19の中央側に向かう方向に傾斜した傾斜側面部36、49になっている。この為、第一伝達部材17と、結合体55との中心軸同士の傾きを無理なく許容する事ができる。
【0059】
又、本例の場合には、第二凹凸部26と第二弾性部材21との係合部、及び、第二凹凸部26と中間凹凸部32との係合部に、それぞれ径方向隙間β、γ、ε、ηが介在している。これと共に、結合体55の軸方向他側面の径方向外端部乃至中間部が、径方向外側に向かうに従って軸方向に関して中間伝達部材19の中央側に向かう方向に傾斜した傾斜側面部41、54になっている。この為、第二伝達部材18と、結合体55との中心軸同士の傾きを無理なく許容する事ができる。
【0060】
従って、本例の場合には、ミスアライメント(電動モータ7の出力軸12aの軸ずれや偏心、及び、ウォーム軸6aの軸ずれや傾きや偏心)が発生しても、第一伝達部材17及び第二伝達部材18の中心軸に対して結合体55の中心軸が無理なく傾斜する事により、滑らかなトルク伝達を行う事ができる。
【0061】
又、前述した様に、本例の場合には、第一弾性部材20により中間伝達部材19を構成する本体部31の軸方向片側面を覆うと共に、第一弾性部材20の軸方向片側面を第一歯部35、35の先端面よりも軸方向片側に位置させている。又、第二弾性部材21により、中間伝達部材19を構成する本体部31の軸方向他側面を覆うと共に、第二弾性部材21の軸方向他側面を第二歯部40、40の先端面よりも軸方向他側に位置させている。
【0062】
この為、第一伝達部材17と第二伝達部材18との間で、大きな偏心や傾き等が生じた場合でも、第一鍔部25の軸方向他側面である位置決め用側面30aは、第一弾性部材20の存在に基づいて、本体部31の軸方向片側面や第一歯部35、35の先端面に当接する事を防止される。又、第二鍔部29の軸方向片側面である位置決め用側面30bは、第二弾性部材21の存在に基づいて、本体部31の軸方向他側面や第二歯部40、40の先端面に当接する事を防止される。
【0063】
この場合、仮に、第一弾性部材20(第二弾性部材21)が弾性的に押し潰されて、位置決め用側面30a(30b)が第一歯部35、35(第二歯部40、40)の先端面に当接する場合でも、これらの当接の勢いは、第一弾性部材20(第二弾性部材21)の弾性変形により弱められる為、当接に伴う異音の発生を抑えられる。
【0064】
又、前述した様に、本例の場合には、第一弾性部材20の内周面を、中間凹凸部32を構成する凸部24、24の径方向内側面、及び、第一係合突起39、39の径方向内端縁よりも、径方向内側に位置させている。又、第二弾性部材21の内周面を、中間凹凸部32を構成する凸部24、24の径方向内側面、及び、第二係合突起44、44の径方向内端縁よりも、径方向内側に位置させている。又、第一凹凸部22を構成する凸部24の径方向外端面と第一弾性スリット45の底面との間の径方向隙間βを、第一凹凸部22を構成する凸部24の径方向外端面と中間凹凸部32を構成する凹部33の底面との間の径方向隙間γよりも、小さくしている(β<γ)。これと共に、第一凹凸部22を構成する凹部23の底面と第一弾性部材20の内周面との間の径方向隙間εを、第一凹凸部22を構成する凹部23の底面と中間凹凸部32を構成する凸部34の先端面(径方向内側面)との間に径方向隙間ηよりも、小さくしている(ε<η)。又、第二凹凸部26を構成する凸部28の径方向外端面と第二弾性スリット50の底面との間の径方向隙間βを、第二凹凸部26を構成する凸部28の径方向外端面と中間凹凸部32を構成する凹部33の底面との間の径方向隙間γよりも、小さくしている(β<γ)。これと共に、第二凹凸部26を構成する凹部27の底面と第二弾性部材21の内周面との間の径方向隙間εを、第二凹凸部26を構成する凹部27の底面と中間凹凸部32を構成する凸部34の先端面(径方向内側面)との間の径方向隙間ηよりも、小さくしている(ε<η)。
【0065】
この為、第一伝達部材17と第二伝達部材18との間で、大きな偏心や傾き等が生じた場合でも、第一凹凸部22を構成する凹部23の底面が第一弾性部材20の内周面に当接したり、第一凹凸部22を構成する凸部24の径方向外端面が第一弾性スリット45の底面に当接したりする事により、第一凹凸部22を構成する凹部23の底面が中間凹凸部32を構成する凸部34の径方向内側面や第一係合突起39の径方向内端部に当接したり、第一凹凸部22を構成する凸部24の径方向外端面が中間凹凸部32を構成する凹部33の底面に当接したりする事を防止できる。又、第二凹凸部26を構成する凹部27の底面が第二弾性部材21の内周面に当接したり、第二凹凸部26を構成する凸部28の径方向外端面が弾性スリット39bの底面に当接したりする事により、第二凹凸部26を構成する凹部27の底面が中間凹凸部32を構成する凸部34の径方向内側面や第二係合突起44の径方向内端部に当接したり、第二凹凸部26を構成する凸部28の径方向外端面が中間凹凸部32を構成する凹部33の底面に当接したりする事を防止できる。
【0066】
この場合、仮に、第一弾性部材20(第二弾性部材21)の径方向内端部や第一弾性スリット45(第二弾性スリット50)が弾性的に押し潰されて、第一凹凸部22(第二凹凸部26)を構成する凹部23(27)の底面が、中間凹凸部32を構成する凸部34の径方向内側面や第一係合突起39(第二係合突起44)の径方向内端部に当接したり、第一凹凸部22(第二凹凸部26)を構成する凸部24(28)の径方向外端面が中間凹凸部32を構成する凹部33の底面に当接したりする場合でも、これらの当接の勢いは、第一弾性部材20(第二弾性部材21)の弾性変形により弱められる。このため、当接に伴う異音の発生を抑えられる。
【0067】
又、前述した様に、本例の場合には、中間伝達部材19の軸方向片端部に第一弾性部材20を組み付けた状態で、第一透孔46、46の第一被傾斜係合面部47を第一歯部35、35の第一傾斜係合面部37に係合(面接触)させると共に、第一係合突起39、39の軸方向他側面に、第一係合梁48、48の軸方向片側面を係合(面接触)させる事により、中間伝達部材19に対する第一弾性部材20の軸方向片側への変位を規制している。又、中間伝達部材19の軸方向他端部に第二弾性部材21を組み付けた状態で、第二透孔51、51の第二被傾斜係合面部52を第二歯部40、40の第二傾斜係合面部42に係合(面接触)させると共に、各第二係合突起44、44の軸方向片側面に、第二係合梁53、53の軸方向他側面を係合(面接触)させる事により、中間伝達部材19に対する第二弾性部材21の軸方向他側への変位を規制している。
この為、ミスアライメントの発生時にも、中間伝達部材19と第一弾性部材20(第二弾性部材21)との分離防止を図れる。
【0068】
尚、本発明を実施する場合には、第一凹凸部22(第二凹凸部26)を構成する凸部24(28)の周方向に関する幅寸法W
A(W
B)を、例えば
図14の(b)に示す様に、軸方向に関して中間伝達部材19の中央側(同図の左側、先端側)に向かう程小さくする事ができる。この様な構成を採用すれば、第一凹凸部22(第二凹凸部26)を構成する凸部24(28)と中間凹凸部32を構成する凸部34との周方向側面同士の接触部が狭くなる為、ミスアライメントの発生時に、これらの接触部で発生する回転抵抗を抑えられる。更に、ミスアライメントの発生時に、第一凹凸部22(第二凹凸部26)と中間凹凸部32とが片当たりする事を有効に防止できる。
【0069】
又、本発明を実施する場合には、第一伝達部材(第二伝達部材)の第一鍔部(第二鍔部)を省略する事もできる。
又、本発明を実施する場合には、第一伝達部材は内周面に第一凹凸部を、第二伝達部材は内周面に第二凹凸部を、中間伝達部材は外周面に中間凹凸部を、それぞれ有している構成を採用する事もできる。
【0070】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2016年10月13日出願の日本特許出願2016−201983に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。