特許第6439979号(P6439979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439979
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】細胞培養設備及び細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20181210BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20181210BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20181210BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20181210BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   C12N5/07
   C12N5/10
   A61L9/16 F
   A61L9/16 D
   A61L9/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-125571(P2015-125571)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-6057(P2017-6057A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 公揮
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】梶間 智明
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−223207(JP,A)
【文献】 特開2015−58938(JP,A)
【文献】 特開2016−162818(JP,A)
【文献】 特開2006−94754(JP,A)
【文献】 特開2004−33498(JP,A)
【文献】 特開2009−219382(JP,A)
【文献】 特開2001−219018(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0335566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12N 1/00−7/08
A61L 9/00−9/04,9/14−9/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタを少なくとも一度通過した清浄な空気が導入され、且つ、該清浄な空気が充満する細胞培養環境が備えられたことを特徴とする細胞培養設備。
【請求項2】
細胞操作室と、前記細胞操作室内に設置された、細胞操作部及び細胞培養部のうち少なくとも何れか一方とが備えられ、
前記清浄な空気が前記細胞操作部及び前記細胞培養部のうち少なくとも何れか一方に導入可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養設備。
【請求項3】
前記細胞操作室が有する空気導入路に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、前記ケミカルフィルタ及び前記HEPAフィルタのうち少なくとも何れか一つが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の細胞培養設備。
【請求項4】
前記細胞操作部及び前記細胞培養部のうち少なくとも何れか一方に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニットが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の細胞培養設備。
【請求項5】
前記細胞操作室が有する空気導入路にHEPAフィルタが設けられ、
前記細胞操作部及び前記細胞培養部に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、前記ケミカルフィルタ及び前記HEPAフィルタが設けられていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の細胞培養設備。
【請求項6】
前記細胞操作室が有する空気導入路にHEPAフィルタ及び前記ケミカルフィルタが設けられ、
前記細胞操作部及び前記細胞培養部に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット及び前記HEPAフィルタが設けられていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の細胞培養設備。
【請求項7】
空気を少なくとも一度、ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタに通過させて清浄な空気を生成する工程と、
前記清浄な空気を導入し且つ該清浄な空気を充満させた環境下で細胞を培養する工程と、
を有することを特徴とする細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養設備及び細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞を扱う新たな医療分野として著しい進歩を遂げている再生医療分野があるが、再生医療技術による治療を安全に患者に提供するためには、これまでの管理に加え、化学物質、ウイルスやマイコプラズマの管理が必要となる。たとえばマイコプラズマに細胞が汚染されると、遺伝子発現や免疫反応の異常などの様々な影響を及ぼすことが考えられる。従って、治療に使用する細胞にはその培養工程で汚染が無いことが要求される。再生医療製品を取り扱う施設では、安全性の面からマイコプラズマ等の汚染の有無を確認する事が要求される。
【0003】
マイコプラズマは培養時の通常観察では確認する事が難しく、マイコプラズマ否定試験による判定が行われるが、培養した細胞に汚染が無いことを確実に証明することは非常に困難である。このため、コンタミネーション防止の観点から、細胞培養設備自体がマイコプラズマの存在しない清浄な環境であることが求められている。従来の細胞培養設備ではHEPA(High Efficiency Particulate Air)、ULPA(Ultra Low Penetration Air)等のフィルタを用いて微粒子、微生物を決められた数値以下に保った空気が供給される環境が提供されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−219382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、HEPAフィルタやULPAフィルタを通過した空気には依然としてウイルスやマイコプラズマが残留することがある、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ウイルスやマイコプラズマが除去された清浄な空気が供給される、細胞培養に適した清浄な環境としての細胞培養設備、及び前記清浄な環境下で細胞を培養する細胞培養方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタを少なくとも一度通過した清浄な空気が導入され、且つ、該清浄な空気が充満する細胞培養環境が備えられたことを特徴とする細胞培養設備。
[2] 細胞操作室と、前記細胞操作室内に設置された、細胞操作部及び細胞培養部のうち少なくとも何れか一方とが備えられ、前記清浄な空気が前記細胞操作部及び前記細胞培養部のうち少なくとも何れか一方に導入可能とされていることを特徴とする上記[1]に記載の細胞培養設備。
[3] 前記細胞操作室が有する空気導入路に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、前記ケミカルフィルタ及び前記HEPAフィルタのうち少なくとも何れか一つが設けられていることを特徴とする上記[2]に記載の細胞培養設備。
[4] 前記細胞操作部及び前記細胞培養部のうち少なくとも何れか一方に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニットが設けられていることを特徴とする上記[2]又は[3]に記載の細胞培養設備。
[5] 前記細胞操作室が有する空気導入路にHEPAフィルタが設けられ、前記細胞操作部及び前記細胞培養部に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、前記ケミカルフィルタ及び前記HEPAフィルタが設けられていることを特徴とする上記[2]〜[4]の何れか一項に記載の細胞培養設備。
[6] 前記細胞操作室が有する空気導入路にHEPAフィルタ及び前記ケミカルフィルタが設けられ、前記細胞操作部及び前記細胞培養部に、前記ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット及び前記HEPAフィルタが設けられていることを特徴とする上記[2]〜[4]の何れか一項に記載の細胞培養設備。
[7] 空気を少なくとも一度、ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタに通過させて清浄な空気を生成する工程と、前記清浄な空気を導入し且つ該清浄な空気を充満させた環境下で細胞を培養する工程と、を有することを特徴とする細胞培養方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の細胞培養設備によれば、塵埃、細胞に悪影響を与え得る化学物質、ウイルス及びマイコプラズマ等の不純物が除去された、コンタミネーションのリスクが極めて低い、安全に細胞を培養する環境を提供することができる。
本発明の細胞培養方法によれば、塵埃、細胞に悪影響を与え得る化学物質、ウイルス及びマイコプラズマ等の不純物が除去された、コンタミネーションのリスクが極めて低い環境において、安全に細胞を培養することができる。
本発明によれば、再生医療等の用途に使用される細胞の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態の細胞培養設備を示す模式図である。
図2】本発明の第一実施形態の細胞培養設備の変形例を示す模式図である。
図3】本発明の第二実施形態の細胞培養設備を示す模式図である。
図4】本発明の第二実施形態の細胞培養設備に設置された細胞操作部の一例としての安全キャビネットの模式図である。
図5】本発明の第三実施形態の細胞培養設備を示す模式図である。
図6】本発明の第三実施形態の細胞培養設備に設置された細胞操作部の一例としての安全キャビネットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《細胞培養設備》
本発明に係る細胞培養設備の各実施形態には、ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタを少なくとも一度通過した清浄な空気が導入され、且つ、該清浄な空気が充満する細胞培養環境が備えられている。
本明細書において、「清浄な空気」とは、ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタを少なくとも一度通過して不純物が除去された空気である。また、「清浄な空気が充満する細胞培養環境」とは、外部から不純物を含む空気が流入し難い状態で清浄な空気で満たされている、細胞培養に適した環境(空間)である。
【0011】
各実施形態の細胞培養環境が備えるウイルス・マイコプラズマ処理ユニット(以下、VM処理ユニットと呼ぶ。)とは、ウイルス及びマイコプラズマのうち少なくとも一方を除去若しくは不活性化することが可能な処理装置を備えたユニットを意味する。
前記処理装置として、例えば、ウイルス及びマイコプラズマのうち少なくとも一方を分解若しくは不活性化することが可能なイオンを発生し、VM処理ユニットを通過する空気中に存在するウイルス及びマイコプラズマに対して当該イオンを接触させることが可能なイオン発生装置が挙げられる。
【0012】
前記イオン発生装置のイオン化方式は特に限定されず、例えば、公知の放電方式、照射方式、電界方式等が挙げられる。これらの中でも、ウイルス及びマイコプラズマに対して当該イオンを接触させることが容易な放電方式が好ましい。具体的には、気中コロナ放電、プラズマ放電、アーク放電、水中コロナ放電等が好ましい。
【0013】
前記イオン発生装置の一例として、電極間に交流高電圧を印加してプラズマ放電を起こすことにより、空気中の酸素や水蒸気を電離して、正イオンであるH+(H2O)n及び負イオンであるO2- (H2O)nを生成する装置が知られている(例えば特許第3680121号公報)。これらのイオンは、空気中の浮遊細菌、ウイルス、マイコプラズマ等の微生物を取り囲んで除去することができる。そのメカニズムとして、H+(H2O)n及びO2-(H2O)nが当該微生物の表面に付着し、活性種である過酸化水素またはヒドロキシラジカルが生成し、これらの活性種が当該微生物を不活性化する、と考えられている。
【0014】
また、前記処理装置として、例えば、ウイルス及びマイコプラズマのうち少なくとも一方を、直接又は間接的に分解若しくは不活性化することが可能な光を発生し、VM処理ユニットを通過する空気中に存在するウイルス及びマイコプラズマに対して当該光を照射することが可能な光発生装置が挙げられる。
【0015】
前記光発生装置の構成は特に限定されず、例えば、照射光が直接的にウイルス及びマイコプラズマを不活性化する装置構成であってもよいし、照射光が被照射物質からラジカル化学種を放出させ、当該ラジカル化学種によって間接的にウイルス及びマイコプラズマを不活性化する装置構成であってもよい。
【0016】
前記光発生装置の一例として、流路を流れる空気に紫外線を照射し、当該空気中のウイルス及びマイコプラズマを不活性化する装置が挙げられる。この様な装置として、例えば、特開2013−136031号公報に開示された紫外線処理装置が挙げられる。当該紫外線処理装置は管路を流れる被処理水に紫外線を照射する装置であるが、本実施形態においては被処理水に替えて空気を被照射体として使用すればよい。
【0017】
前記光発生装置の別の一例として、送気された空気と光増感色素を含有する液体とを気液接触させるともに、前記光増感色素を励起して一重項酸素を発生させる光を照射し、一重項酸素によって当該空気中のウイルス及びマイコプラズマを不活性化する装置が挙げられる。この様な装置として、例えば、特開2013−78650号公報に開示されたウイルス不活化装置が挙げられる。
【0018】
前記光発生装置の別の一例として、送気された空気に含まれるウイルス、菌、微粒子等を捕捉する光触媒フィルタを備え、当該光触媒フィルタに光を照射することによって捕捉されたウイルス及びマイコプラズマを不活性化する装置が挙げられる。この様な装置として、例えば、特開2005−160494号公報に開示された空気調和装置が挙げられる。
【0019】
また、前記処理装置として、例えば、ウイルス及びマイコプラズマのうち少なくとも一方を物理的な接触により不活性化することが可能な物質を備えた接触部が、送気された空気と接触可能な構成を有する装置が挙げられる。このような物質及び接触部の一例として、例えば、特開2011−153163に開示された、酸化第一銅、硫化第一銅、ヨウ化第一銅、塩化第一銅などの一価銅化合物を有効成分として含むウイルス不活化剤、及び該ウイルス不活化剤を含有した基材からなる接触部が挙げられる。
【0020】
各実施形態の細胞培養設備においては、従来のHEPAフィルタ、ケミカルフィルタで除去し難かったウイルスやマイコプラズマをVM処理ユニットで不活性化して得られる清浄な空気を細胞培養が行われる環境に供給することができる。これにより、ウイルスやマイコプラズマが培養細胞に混入して、培養細胞を汚染すること(コンタミネーション)を防止することができる。
【0021】
各実施形態の細胞培養環境が備えるHEPAフィルタは、公知のHEPAフィルタと同様であり、JIS Z8122の規格を満たし、定格風量で平均粒径が0.3μmの粒子に対する99.97%以上の粒子捕集率及び245Pa以下の初期圧力損失の性能を持つエアフィルタである。
したがって、清浄になる以前の空気に、ゴミ、塵埃、細菌、カビ等の不純粒子が含まれていたとしても、これらの不純粒子はHEPAフィルタで除去することができる。
【0022】
各実施形態の細胞培養環境が備えるケミカルフィルタは、公知のケミカルフィルタと同様であり、細胞の機能発現又は増殖に悪影響を与える恐れがある化学物質(以下、分子状汚染物質という)を化学吸着又は物理吸着によって除去することが可能なフィルタである。ケミカルフィルタを構成する吸着剤としては、例えば、活性炭;シリカゲル、活性アルミナ等の無機多孔質材料;イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0023】
具体的なケミカルフィルタとしては、例えば、アンモニア、アミン類等の塩基性ガスを除去するカチオン系フィルタ;フッ酸、塩化水素、硫酸、硫黄酸化物(SO)、硝酸、窒素酸化物(NO)、オゾン、過酸化水素等の酸性ガスを除去するアニオン系フィルタ;フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、シロキサン、リン酸エステル等の有機ガスを除去する有機系フィルタ;等が挙げられる。
したがって、清浄になる以前の空気に分子状汚染物質が含まれていたとしても、その分子状物質はケミカルフィルタで除去することができる。
【0024】
分子状汚染物質が複数種類である場合、各実施形態の細胞培養設備には、各分子状汚染物質を除去することが可能な複数種類のケミカルフィルタが備えられていることが好ましい。本明細書においては、特に明記しない限り、単一種類のケミカルフィルタと複数種類のケミカルフィルタとを区別せず、両方を含む意味で単にケミカルフィルタと呼ぶ。
【0025】
各実施形態の細胞培養設備が備える細胞培養環境は、細胞を扱ったり、細胞を入れた培養器を所定温度で保持したりすることが可能な様に構成された空間である。
細胞培養環境の規模は特に限定されず、クリーンルームとして半閉鎖的に構成された部屋全体であってもよいし、安全キャビネットやインキュベータ等の細胞培養関連装置の所定空間であってもよい。ここで、安全キャビネットの具体例として、ThermoScientific社製ClassII安全キャビネット1300 series 1320 A2を例示することができる。
【0026】
各実施形態の細胞培養設備が備える細胞培養環境においては、VM処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタを少なくとも一度通過した清浄な空気が導入され、且つ該清浄な空気が充満しているため、ウイルスやマイコプラズマによる培養細胞の汚染を防止することができる。
【0027】
《細胞培養方法》
本発明に係る細胞培養方法の第一実施形態は、外気を少なくとも一度、VM処理ユニット、ケミカルフィルタ及びHEPAフィルタに通過させて清浄な空気を生成する工程と、前記清浄な空気を導入し且つ該清浄な空気を充満させた環境下で細胞を培養する工程と、を有する。本実施形態における細胞の培養操作は、常法により実施される。
【0028】
本実施形態の細胞培養方法は、上記以外の操作を行う工程を含んでいてもよい。例えば、後述する細胞操作室内に設置された細胞操作部及び細胞培養部のうち少なくとも何れか一方に前記清浄な空気を導入する工程を有していてもよい。
【0029】
本実施形態の細胞培養方法は、本発明に係る細胞培養設備を使用して実施することが可能であり、例えば以下に説明する細胞培養設備1を使用して行うことが好ましい。
【0030】
以下、図面を参照して、本発明に係る細胞培養設備の各実施形態を説明する。各図に示す矢印G1〜G5は空気の流れる方向を表す。
【0031】
(第一実施形態)
図1に示す細胞培養設備1A(1)には、クリーンルームとして半閉鎖的に構成された細胞操作室10が備えられている。細胞操作室10内には、培養する細胞や容器を扱う台が備えられた細胞操作部11、及び所定の温度及びCO2濃度に設定することが可能なインキュベータとして機能する細胞培養部12が備えられている。
【0032】
細胞操作室10の天井には、空気(外気)G1を取り込む空気導入路10aが設けられている。天井の裏側において空気導入路10aには、空気G1の導入側から見てケミカルフィルタ3、HEPAフィルタ2、VM処理ユニット4がこの順に連設されている。
空気G1は、細胞操作室10の天井裏に配設された給気ファン、ダクト等の送風設備(図示略)を通じて、ケミカルフィルタ3に導入される。空気G1がケミカルフィルタ3を通過することで、空気G1中の分子状汚染物質が殆ど除去された空気(分子状汚染物質除去気体)G3が生成される。次いで、空気G3がHEPAフィルタ2を通過することで、空気G3中に存在する不純粒子が除去された空気(不純粒子除去空気)G2が生成される。続いて、空気G2がVM処理ユニット4を通過することで、空気G2中に存在するウイルス及びマイコプラズマが除去された空気(VM除去空気)G4が、種々の不純物が除去された清浄な空気G5として生成される。清浄な空気G5は、空気導入路10aから細胞操作室10の内部に導入される。
【0033】
本実施形態の空気導入路10aに設置された、ケミカルフィルタ3、HEPAフィルタ2、VM処理ユニット4を設置する順序は特に限定されず、任意の順序で設置することができる。VM処理ユニット4で発生するイオンが培養細胞に直接接触するリスクを低減する観点から、VM処理ユニット4の下流側にHEPAフィルタ2及びケミカルフィルタ3のうち少なくとも一方を設置することが好ましい。この好適な構成であると、VM処理ユニット4から流出したイオンをHEPAフィルタ2又はケミカルフィルタ3により除去することができる。
細胞培養設備1においてVM処理ユニット4及び各フィルタ2,3は、それぞれ単数で設置されてもよいし、複数で設置されてもよい。
【0034】
細胞操作部11及び細胞培養部12の天井又は壁面には、清浄な空気G5を取り込む空気導入路11a,12aがそれぞれ設けられている。
清浄な空気G5は、空気導入路11aから細胞操作部11の内部に導入されると共に、空気導入路12aから細胞培養部12の内部に導入される。
本実施形態では、空気導入路11a,12aは、単なる開口で構成されている。そして、細胞操作部11および細胞培養部12には、導入された清浄な空気G5を外部へと排気する排気ファン(不図示)が設けられている。
【0035】
本実施形態においては、細胞操作室10の室内全体に清浄な空気G5が導入され、且つ該清浄な空気G5が充満しているので、細胞操作部11及び細胞培養部12の内部に限らず、室内の何れの場所においても細胞を汚染することなく扱うことができる。したがって、細胞操作部11は、必ずしも安全キャビネットである必要は無く、単なる実験台であっても構わない。
【0036】
(第一実施形態の変形例)
図1に例示した細胞培養設備1Aにおいては、細胞操作室10の天井の一箇所に空気導入路10aが備えられているが、空気導入路10aが配置される位置は特に限定されない。
例えば、図2に示す細胞培養設備1A’のように、細胞操作室10の天井全体に空気導入路10aが開口していてもよい。また、細胞操作室10の形状も図1に示す形状に限定されず、例えば細胞操作室10の天井は外周部から中央部に向かうに従い高くなるように形成されていてもよい。その場合は、空気導入路10aが細胞操作室10の天井の頂部に開口していることが好ましい。
また、細胞操作部11と細胞培養部12の空気導入路11a,12aが配置される位置及び開口する位置も特に限定されず、例えば、天井、壁面等に配置したり開口させたりすることができる。
【0037】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態の細胞培養設備1B(1)を図3に示す。細胞培養設備1Bの構成要素のうち、図1に示す細胞培養設備1Aと同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
本実施形態の細胞培養設備1Bには細胞操作室10が備えられ、細胞操作室10の空気導入路10aには、HEPAフィルタ2が設けられている。
従って、空気G1は、細胞操作室10の送風設備(図示略)を通じて、HEPAフィルタ2を通過し、空気G1中の不純粒子が除去された空気G2となり、空気導入路10aから細胞操作室10の室内に導入される。
【0039】
細胞操作部11及び細胞培養部12は半閉鎖的に構成されており、細胞を扱う内部空間に清浄な空気G5を導入し、且つ空気G5を充満させることによって清浄に保たれている。
空気G5は、細胞操作室10内に導入された空気G2が、細胞操作部11及び細胞培養部12に設置されたVM処理ユニット4、ケミカルフィルタ3、HEPAフィルタ2をこの順で通過することにより生成される。
空気G2が、VM処理ユニット4を通過して空気G4となり、続いてケミカルフィルタ3を通過して清浄な空気G5としての空気G3となる。この空気G3(G5)が更にHEPAフィルタ2を通過することにより、極めて清浄な空気G5としての空気G2’(G5)が生成する。
【0040】
細胞操作部11及び細胞培養部12において、VM処理ユニット4、ケミカルフィルタ3及びHEPAフィルタ2を設置する箇所は特に限定されない。例えば細胞操作部11が公知の安全キャビネット11である場合、図4に示す安全キャビネット11が有する細胞取扱空間部11bの上方に設置することができる。
【0041】
図4の構成においては、先ず、排気ブロア11c及び循環ブロア11dによって、空気G2が安全キャビネット11の前面の吸気口から背面側にある通気ダクト11eに送り込まれる。次いで、安全キャビネット11内に導入された空気G2の一部は循環ブロア11dによって、VM処理ユニット4、ケミカルフィルタ3、HEPAフィルタ2を順に通過するように送り込まれる。最後のHEPAフィルタ2を通過した極めて清浄な空気G2’(G5)は細胞取扱空間部11bに導入され、細胞取扱空間部11bを充満し、その後に再び背面側の通気ダクト11eに引き込まれ、排気ブロア11cによってHEPAフィルタ2を通過した後、安全キャビネット11の外へ排気される。
【0042】
極めて清浄な空気G2’が導入され且つ空気G2’が充満している、半閉鎖的に構成された細胞取扱空間部11bは、ウイルスやマイコプラズマが存在しない清浄な空間であり、細胞培養に適した空間である。
【0043】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態の細胞培養設備1C(1)を図5に示す。細胞培養設備1Cの構成要素のうち、図1に示す細胞培養設備1Aと同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
本実施形態の細胞培養設備1Cには細胞操作室10が備えられ、細胞操作室10の空気導入路10aには、空気G1の導入側から見て、ケミカルフィルタ3、HEPAフィルタ2の順で設けられている。
従って、空気G1は、細胞操作室10の送風設備(図示略)を通じて、ケミカルフィルタ3を通過して空気G1中の分子状汚染物質が除去された空気G3となり、HEPAフィルタ2を通過して空気G3中の不純粒子が除去された空気G2となり、空気導入路10aから細胞操作室10の内部に導入される。
【0045】
細胞操作部11及び細胞培養部12は半閉鎖的に構成されており、細胞を扱う内部空間に清浄な空気G5を導入し、且つ充満させることによって清浄に保たれている。
空気G5は、細胞操作室10内に導入された空気G2が、細胞操作部11及び細胞培養部12に設置されたVM処理ユニット4、HEPAフィルタ2をこの順で通過することにより生成される。
空気G2が、VM処理ユニット4を通過して清浄な空気G5としての空気G4となり、更にHEPAフィルタ2を通過することにより、極めて清浄な空気G5としての空気G2’(G5)が生成する。
【0046】
細胞操作部11及び細胞培養部12において、VM処理ユニット4及びHEPAフィルタ2を設置する箇所は特に限定されない。例えば細胞操作部11が公知の安全キャビネット11である場合、図6に示す安全キャビネット11が有する細胞取扱空間部11bの上方に設置することができる。
【0047】
図6の構成においては、先ず、排気ブロア11c及び循環ブロア11dによって、空気G2が安全キャビネット11の前面の吸気口から背面側にある通気ダクト11eに送り込まれる。次いで、安全キャビネット11内に導入された空気G2の一部は循環ブロア11dによって、VM処理ユニット4、HEPAフィルタ2を順に通過するように送り込まれる。これにより生成された極めて清浄な空気G2’(G5)は細胞取扱空間部11bに導入され、細胞取扱空間部11bに充満し、その後に再び背面側の通気ダクト11eに引き込まれ、排気ブロア11cによってHEPAフィルタ2を通過した後、安全キャビネット11の外へ排気される。
【0048】
極めて清浄な空気G2’が導入され且つ充満している、半閉鎖的に構成された細胞取扱空間部11bは、ウイルスやマイコプラズマが存在しない清浄な空間であり、細胞培養に適した空間である。
【0049】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,1A,1B,1C…細胞培養設備、2…HEPAフィルタ、3…ケミカルフィルタ、4…ウイルス・マイコプラズマ処理ユニット(VM処理ユニット)、10…細胞操作室、11…細胞操作部、11a…空気導入路、11b…細胞取扱空間部、11c…排気ブロア、11d…循環ブロア、11e…通気ダクト、12…細胞培養部、12a…空気導入路、
G1…空気(外気)、
G2…HEPAフィルタを通過した空気、
G3…ケミカルフィルタを通過した空気、
G4…ウイルス・マイコプラズマ処理ユニットを通過した空気、
G5…HEPAフィルタ、ケミカルフィルタ及びウイルス・マイコプラズマ処理ユニットを通過した清浄な空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6