特許第6440010号(P6440010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440010
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】反射型表示装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/16 20060101AFI20181210BHJP
   G02F 1/167 20060101ALI20181210BHJP
   G09G 3/04 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   G09G3/16 C
   G02F1/167
   G09G3/04 D
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-138660(P2014-138660)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-17997(P2016-17997A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】本 多 浩 之
【審査官】 斎藤 厚志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−187936(JP,A)
【文献】 特開2010−170037(JP,A)
【文献】 特開2003−322880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/16
G02F 1/167
G09G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板間に少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体が封入されていて、前記2枚の基板間に所定の電界が与えられる際に所望の表示をする、反射型表示装置を駆動する方法であって、
前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え工程と、
前記表示書き換え工程の繰り返し回数および前記反射型表示装置が使用される環境の温度に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット工程と、
を備え
前記表示書き換え工程を行う毎に前記環境の温度を環境温度として検出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定する
ことを特徴とする反射型表示装置の駆動方法。
【請求項2】
少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板間に少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体が封入されていて、前記2枚の基板間に所定の電界が与えられる際に所望の表示をする、反射型表示装置を駆動する方法であって、
前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え工程と、
前記表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長および前記反射型表示装置が使用される環境の温度に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット工程と、
を備え
所定の時間周期で前記環境の温度を環境温度として検出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定する
ことを特徴とする反射型表示装置の駆動方法。
【請求項3】
前記リセット工程において前記2枚の基板間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、前記表示書き換え工程において前記2枚の基板間に与えられる電界の大きさより大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の反射型表示装置の駆動方法。
【請求項4】
少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板と、
前記2枚の基板間に封入された少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体と、
前記2枚の基板の各々の電極に電圧を印加する電圧印加制御部と、
を備えた反射型表示装置であって、
当該反射型表示装置が使用される環境の温度を環境温度として検出する温度センサが設けられ、
前記電圧印加制御部は、
前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え動作と、
前記表示書き換え動作の繰り返し回数および前記温度センサにより検出された環境温度に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット動作と、
を行うように構成されており、
前記電圧印加制御部は、前記表示書き換え動作を行う毎に前記温度センサにより検出された環境温度を読み出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定するように構成されている
ことを特徴とする反射型表示装置。
【請求項5】
少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板と、
前記2枚の基板間に封入された少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体と、
前記2枚の基板の各々の電極に電圧を印加する電圧印加制御部と、
を備えた反射型表示装置であって
当該反射型表示装置が使用される環境の温度を環境温度として検出する温度センサが設けられ、
前記電圧印加制御部は、
前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え動作と、
前記表示書き換え動作の有無にかかわらず経過する時間長および前記温度センサより検出された環境温度に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット動作と、
を行うように構成されており、
前記電圧印加制御部は、所定の時間周期で前記温度センサにより検出された環境温度を読み出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定するように構成されている
ことを特徴とする反射型表示装置。
【請求項6】
前記リセット動作において前記2枚の基板間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、前記表示書き換え動作において前記2枚の基板間に与えられる電界の大きさより大きい
ことを特徴とする請求項4または5に記載の反射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパー等に応用されている反射型表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型表示装置として、最近、表示媒体に含まれる電気応答性材料として電気泳動体を用いた電気泳動表示装置が広く用いられている。電気泳動表示装置とは、空気中または溶媒中の電気泳動体(通常は電気泳動する粒子)の電気的な泳動、すなわち粒子移動を利用して情報を表示する装置である。通常、2枚の基板間に電界を与えることで電気的な泳動の状態が制御され、それによって所望の表示が実現されるように構成される。電気泳動体としては、荷電粒子の他、荷電粉体をも利用され得る。その場合、当該荷電粉体は気体中を電気的に泳動する。
【0003】
電気泳動表示装置は、近年では特に、電子ペーパーとしての応用が注目されている。電子ペーパーとして応用する場合には、印刷物レベルの視認性(目にやさしい)、情報書き換えの容易性、低消費電力、軽量といった利点を享受できる。
【0004】
電気泳動表示装置の1つのタイプの構造をより詳しく説明すると、一方の基板と他方の基板との間には、複数の表示領域を覆う共通電極と、電気泳動体を含む表示媒体が配置された表示媒体層と、複数の表示領域の各々に対応する複数の表示電極とが、一方の基板側から他方の基板側に向かって当該順序で設けられており、共通電極は、GND電位を接続されており、複数の表示領域の各々は、当該表示領域に対応する表示電極に印加される電圧の極性に応じて、第1色および第2色のうちいずれか一方の表示色を共通電極側(視認側)に選択的に表示可能である。
【0005】
具体的には、例えば、表示媒体中に正に帯電した黒色の電気泳動粒子と負に帯電した白色の電気泳動粒子とが含まれる場合、表示電極に正電圧が印加されると、黒色の電気泳動粒子および白色の電気泳動粒子にそれぞれ電気的な力が作用して、白色の電気泳動粒子が表示電極側に移動すると共に、黒色の電気泳動粒子が共通電極側に移動する。これにより、表示領域の共通電極側には黒色が表示される。一方、表示電極に負電圧が印加されると、白色の電気泳動粒子が共通電極側に移動すると共に、黒色の電気泳動粒子が表示電極側に移動する。これにより、表示領域の共通電極側には白色が表示される。表示電極にGND電位を接続されると(すなわち、表示電極への電圧印加が停止されると)、黒色の電気泳動粒子および白色の電気泳動粒子にそれぞれ作用していた電気的な力が消失するため、黒色の電気泳動粒子および白色の電気泳動粒子は各々その場に静止する。これにより、表示領域の表示色は保持される。
【0006】
特許文献1(特開2006−58568号)には、長時間同じ表示を継続することによる焼き付きを防止するために、一定時間書き換えが無い場合に、反転画像を書き込み、その後単一色を表示させる、という方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−58568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電気泳動表示装置では、連続駆動を行うと、表示書き換え毎に電極に吸着して離れない電気泳動粒子の数が増えていくことで、残像が蓄積されていく、という問題がある。また、表示書き換え動作が行われずに長時間放置されると、表示媒体の流動性が低下する、すなわち粘性が高まることで、応答速度が鈍化する、という問題もある。
【0009】
また、ツイストボール方式の反射型表示装置では、長期放置や連続駆動により、回転粒子同士の凝集が生じることで、動作不良が引き起こされる、という問題がある。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、長期放置または連続駆動による動作不良を解消することができる反射型表示装置の駆動方法を提供することにある。また、本発明の目的は、そのような駆動方法に対応できる反射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板間に少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体が封入されていて、前記2枚の基板間に所定の電界が与えられる際に所望の表示をする、反射型表示装置を駆動する方法であって、前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え工程と、前記表示書き換え工程の繰り返し回数に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット工程と、を備えたことを特徴とする反射型表示装置の駆動方法である。
【0012】
好ましくは、前記表示書き換え工程の繰り返し回数、および、前記反射型表示装置が使用される環境の温度に基づいて前記リセットタイミングを決定する。
【0013】
この場合、具体的には、例えば、前記表示書き換え工程を行う毎に前記環境の温度を環境温度として検出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定する。
【0014】
また、好ましくは、前記リセット工程において前記2枚の基板間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、前記表示書き換え工程において前記2枚の基板間に与えられる電界の大きさより大きい。
【0015】
また、本発明は、前記のような駆動方法に対応できる反射型表示装置である。すなわち、少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板と、前記2枚の基板間に封入された少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体と、前記2枚の基板の各々の電極に電圧を印加する電圧印加制御部と、を備え、前記電圧印加制御部は、前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え動作と、前記表示書き換え動作の繰り返し回数に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット動作と、を行うように構成されていることを特徴とする反射型表示装置である。
【0016】
好ましくは、当該反射型表示装置が使用される環境の温度を環境温度として検出する温度センサが設けられ、前記電圧印加制御部は、前記表示書き換え動作の繰り返し回数、および、前記温度センサにより検出された環境温度に基づいて前記リセットタイミングを決定するように構成されている。
【0017】
この場合、具体的には、例えば、前記電圧印加制御部は、前記表示書き換え動作を行う毎に前記温度センサにより検出された環境温度を読み出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定するように構成されている。
【0018】
また、好ましくは、前記リセット動作において前記2枚の基板間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、前記表示書き換え動作において前記2枚の基板間に与えられる電界の大きさより大きい。
【0019】
また、本発明は、少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板間に少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体が封入されていて、前記2枚の基板間に所定の電界が与えられる際に所望の表示をする、反射型表示装置を駆動する方法であって、前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え工程と、前記表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット工程と、を備えたことを特徴とする反射型表示装置の駆動方法である。
【0020】
好ましくは、前記経過する時間長、および、前記反射型表示装置が使用される環境の温度に基づいて前記リセットタイミングを決定する。
【0021】
この場合、具体的には、例えば、所定の時間周期で前記環境の温度を環境温度として検出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定する。
【0022】
また、好ましくは、前記リセット工程において前記2枚の基板間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、前記表示書き換え工程において前記2枚の基板間に与えられる電界の大きさより大きい。
【0023】
また、本発明は、前記のような駆動方法に対応できる反射型表示装置である。すなわち、少なくとも一方が透光性を有しており各々電極が形成されている対向する2枚の基板と、前記2枚の基板間に封入された少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体と、前記2枚の基板の各々の電極に電圧を印加する電圧印加制御部と、を備え、前記電圧印加制御部は、前記2枚の基板間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え動作と、前記表示書き換え動作の有無にかかわらず経過する時間長に基づくリセットタイミングにおいて、前記2枚の基板間に第1電界を与えて第1色を表示させる第1リセットステップと、前記2枚の基板間に前記第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット動作と、を行うように構成されていることを特徴とする反射型表示装置である。
【0024】
好ましくは、当該反射型表示装置が使用される環境の温度を環境温度として検出する温度センサが設けられ、前記電圧印加制御部は、前記表示書き換え動作の有無にかかわらず経過する時間長、および、前記温度センサより検出された環境温度に基づいて前記リセットタイミングを決定するように構成されている。
【0025】
この場合、具体的には、例えば、前記電圧印加制御部は、所定の時間周期で前記温度センサにより検出された環境温度を読み出し、当該環境温度の積算値が所定の値を超えた時に前記リセットタイミングを決定するように構成されている。
【0026】
また、好ましくは、前記リセット動作において前記2枚の基板間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、前記表示書き換え動作において前記2枚の基板間に与えられる電界の大きさより大きい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、反射型表示装置において、長期放置または連続駆動による動作不良を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施の形態による反射型表示装置を概略的に示す平面図である。
図2図2は、図1に示す反射型表示装置のA−A線切断断面図である。
図3図3は、図1に示す反射型表示装置における表示書き換え工程を説明するための図である。
図4図4は、図1に示す反射型表示装置におけるリセット工程の一例を説明するための図である。
図5図5は、図1に示す反射型表示装置におけるリセット構成の別例の別例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態による反射型表示装置を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す反射型表示装置のA−A線切断断面図である。
【0031】
図1および図2に示すように、本実施の形態による反射型表示装置10は、少なくとも一方が透光性を有しており各々電極12または15a〜15hが形成されている対向する2枚の基板11、16間に少なくとも1種以上の電気応答性材料を含む表示媒体13が封入されていて、前記2枚の基板11、16間に所定の電界が与えられる際に所望の表示をするようになっている。ここで、本件の明細書および特許請求の範囲において「透光性」とは、光を通過する性質、という程度の意味である。本実施の形態においては、視認側に配置される基板は、全光透過率が50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上となるような透光性を有している。
【0032】
本実施の形態では、図1および図2に示すように、一方の基板11と他方の基板16との間には、複数(図示された例では8つ)の表示領域18a〜18hを覆う1つまたは2つ以上(図示された例では1つ)の共通電極12と、表示媒体13が配置された表示媒体層と、複数の表示領域18a〜18hの各々に対応する複数(図示された例では8つ)の表示電極15a〜15hとが、一方の基板11側から他方の基板16側に向かって当該順序で設けられている。ここで「表示領域」とは、反射型表示装置10において所望の表示に利用される領域、という意味である。
【0033】
本実施の形態では、図2に示すように、一方の基板11が視認側に配置され、他方の基板16が非視認側に配置される。
【0034】
一方の基板11としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の透光性フィルムや透光性ガラスに、共通電極12として、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の透光性電極を付したものが、典型的に用いられる。本実施の形態の共通電極12は、セグメント駆動用の共通電極として形成されている。
【0035】
共通電極12は、塗工法やスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等によって、少なくとも一方の基板11の複数の表示領域18a〜18hを覆うように形成される。共通電極12は、必ずしもパターンが形成されている必要は無く、基板全面が電極であってもよい。
【0036】
一方の基板11の厚みは、10μm〜1mmが好適である。10μmよりも薄いと、パネルとしての強度を得ることができず、破損に至る危険度が増す一方、1mmよりも厚いと、パネル重量が重くなり過ぎて取り扱いが不便になるし、コストも高くなるからである。破損しにくく取り扱いが容易である好適な厚みの範囲は、50μm〜300μm程度である。
【0037】
一方の基板11は、ロール状でもシート状でもどちらでも適用可能である。
【0038】
他方の基板16としては、樹脂フィルム、樹脂板、ガラス、エポキシガラス(ガラエポ)等の基材が用いられ、当該基材の表示媒体13側となる面に、金属等の導電性材料によって表示電極15a〜15hが形成されたものが用いられ得る。本実施の形態の表示電極15a〜15hは、セグメント駆動用のパターン状の電極(セグメント電極)として形成されている。
【0039】
より詳しくは、図1に示すように、表示電極15a〜15hは、いわゆる7セグメント表示器の駆動電極を構成しており、横長の第1表示電極15aと、第1表示電極15aの左端から下向きに延びる縦長の第2表示電極15bと、第1表示電極15aの右端から下向きに延びる縦長の第3表示電極15cと、第2表示電極15bの下端と第3表示電極15cの下端との間を左右に延びる横長の第4表示電極15dと、第4表示電極15dの左端から下向きに延びる縦長の第5表示電極15eと、第4表示電極15dの右端から下向きに延びる縦長の第6表示電極15fと、第5表示電極15eの下端と第6表示電極15fの下端との間を左右に延びる横長の第7表示電極15gと、第1乃至第7表示電極15a〜15fの外側を覆うように設けられた第8表示電極15hと、を含んでいる。
【0040】
反射型表示装置10における各表示領域18a〜18hは、個々の表示電極15a〜15hによって規定される。なお、本明細書では、第1表示電極15aによって規定される表示領域18aを第1表示領域、第2表示電極15bによって規定される表示領域18bを第2表示領域、第3表示電極15cによって規定される表示領域18cを第3表示領域、第4表示電極15dによって規定される表示領域18dを第4表示領域、第5表示電極15eによって規定される表示領域18eを第5表示領域、第6表示電極15fによって規定される表示領域18fを第6表示領域、第7表示電極15gによって規定される表示領域18gを第7表示領域、第8表示電極15hによって規定される表示領域18hを第8表示領域、と呼ぶことがある。
【0041】
他方の基板16には、透光性を有する基材が用いられてもよい。さらに透光性を有しているが不透明な基材であってもよく、電極面とは異なるもう一方の面を粗面化した不透明なガラス基材、樹脂フィルム、樹脂板、ガラス、エポキシガラス(ガラエポ)等が用いられ得る。本実施の形態では、図2に示すように、他方の基板16は、視認側と反対側の位置に配置されるため、透光性を有している必然性はない。しかし、熱膨張特性など一方の基板11と同じ物性が必要とされる場合は、一方の基板11と同様の透光性の部材が使用され得る。
【0042】
他方の基板16の厚みも、一方の基板11の厚みと同様に、10μm〜1mmが好適である。10μmよりも薄いと、パネルとしての強度を得ることができず、破損に至る危険度が増す一方、1mmよりも厚いと、パネル重量が重くなり過ぎて取り扱いが不便になりし、コストも高くなるからである。破損しにくく取り扱いが容易である好適な厚みの範囲は、50μm〜300μm程度である。
【0043】
他方の基板16も、ロール状でもシート状でもどちらでも適用可能である。
【0044】
本実施の形態の表示媒体層は、一方の基板11と他方の基板16との間において複数のセルを区画する隔壁14を有しており、各セル内に、表示媒体13が配置されている。ここで、「セル」とは、電気泳動体の沈降や偏在に起因する表示の不良、特にコントラストの低下を防止するべく2枚の基板11、16間において分割された、電気泳動体の微小な泳動空間、すなわち移動空間を意味する。なお、当該移動空間は、マイクロカプセル等、他の構造物によって分割されてもよい。また、電気泳動体の沈降や偏在のおそれが低い場合には、2枚の基板11、16間の空間は、このような構造物によって分割されていなくてもよい。
【0045】
隔壁14は、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂等によって構成可能であり、隔壁14の形成方法は、フォトリソグラフィ法の他、エンボス加工などの型転写方法も採用され得る。さらに、所望のパターンの構造物を隔壁として製造しておいて、それを一方の基板11に貼り付けるという方法も採用され得る。開口率は、70%以上が好ましく、特に90%以上が好ましい。高開口率であるほど、表示可能エリアが広くなるため、高コントラストを得ることができる。
【0046】
隔壁14の単位パターンの形状は、円、格子、六角形、その他の多角形など、基本的に任意である。また、セルのサイズ(ピッチ)は、表示パネルの大きさにもよるが、0.05mm〜1mmピッチ、好ましくは0.1mm〜0.5mmピッチである。ここで、ピッチとは、隣接するセルの中心点間の距離を意味している。
【0047】
隔壁14の高さは、5μm〜50μm、好ましくは10μm〜50μmである。5μm以下では、充填するインキ量が少なく、十分な表示特性、特にコントラストが得られない一方、50μm以上では、パネルの厚みが厚すぎて、駆動電圧が上昇し過ぎてしまう。低駆動電圧で良好な表示特性が得られるという観点から、10μm〜50μmの範囲の高さが好適である。
【0048】
隔壁14の頂面と、他方の基板16上の表示電極15a〜15hまたは他方の基板16と、の間には、隔壁14の頂面と、他方の基板16上の表示電極15a〜15hまたは他方の基板16と、を接着させるための接着層(不図示)が設けられていてもよい。
【0049】
接着層は、例えば転写法や印刷法により、ポリエステル系熱可塑性接着剤のような熱可塑性樹脂が、1μm〜100μmの厚みで形成される。好ましくは、1μm〜50μmの厚みで形成され、特に好ましくは、1μm〜20μmの厚みで形成される。
【0050】
接着層を形成するための接着剤としては、熱可塑性材料を用いた接着剤が好ましく、加熱により軟化して、冷却すると固化する性質を有し、冷却と加熱を繰り返した場合に、組成が可逆的に保たれる材料である。
【0051】
接着層として、具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタンなどの熱可塑性ベースポリマーや、天然ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体などの熱可塑性エラストマーを主成分とし、粘着性付与樹脂や可塑剤を配合した樹脂が主に使用される。
【0052】
隔壁14と接着層との密着性を上げるために、隔壁14に紫外線照射やプラズマ処理などにより表面処理が施されてもよいし、プライマーが形成されてもよい。あるいは、接着層の方にシランカップリング剤が添加されてもよい。
【0053】
表示媒体13は、少なくとも1種以上の電気応答性材料を含んでいる。電気応答性材料としては、白色や黒色、カラーなどの色づけされた荷電粒子が電界に応答して移動する、いわゆる電気泳動粒子、または、粒子が二色に色分けされ電界により回転するツイストボールに代表される回転粒子、または、電界により移動するナノ粒子材料などが用いられる。
【0054】
本実施の形態においては、表示媒体13は、液体状の分散媒と、当該分散媒に分散された白色の電気泳動粒子および黒色の電気泳動粒子と、を含んでいる。黒色の電気泳動粒子は、正に帯電されており、白色の電気泳動粒子は、負に帯電されている。これにより、表示電極15a〜15hの電位が共通電極12の電位よりも低くされると、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が、分散媒中を表示電極15a〜15h側に引き寄せられるように泳動し、負に帯電した白色の電気泳動粒子が、分散媒中を共通電極12側に引き寄せられるように泳動するようになっている。また、表示電極15a〜15hの電位が共通電極12の電位よりも高くされると、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が、分散媒中を共通電極12側に引き寄せられるように泳動し、負に帯電した白色の電気泳動粒子が、分散媒中を表示電極15a〜15h側に引き寄せられるように泳動するようになっている。そして、このような白色の電気泳動粒子および黒色の電気泳動粒子の泳動を制御することにより、各表示領域18a〜18hにおいて、白色および黒色のうちいずれか一方の表示色を共通電極12側(すなわち、視認側)に選択的に表示できるようになっている。
【0055】
本実施の形態では、図1および図2に示すように、表示媒体13は外周シール17によって取り囲まれている。図示された例では、反射型表示装置10は矩形状であり、これに対応して、外周シール17は矩形状に配置されている。
【0056】
外周シール17は、一方の基板11上、あるいは、他方の基板16上に、例えば紫外線硬化樹脂のような接着剤が、ディスペンサを用いて矩形状に塗布され、その後に紫外線によって硬化されることで形成されている。紫外線硬化樹脂の他に、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、ヒートシール樹脂等によっても構成可能である。また、外周シール17は、ディスペンサの他に、各種の印刷法によって、あるいは、熱圧着によって配置可能である。
【0057】
図1に示すように、反射型表示装置10は、更に、各表示電極15a〜15hにそれぞれ電圧を印加する電圧印加制御部19を備えている。
【0058】
電圧印加制御部19は、共通電極12および各表示電極15a〜15hに電気的に接続されており、共通電極12および各表示電極15a〜15hに個別に、少なくとも第1電位(例えば+30V)と、第2電位(例えば0V)と、第1電位と第2電位との間である第3電位(例えば+15V)と、を選択的に接続可能である。言い換えれば、電圧印加制御部19は、共通電極12および各表示電極15a〜15hに個別に、少なくとも第3電位(すなわち+15V)と、第3電位に対して正の極性の第1電位(すなわち+30V)と、第3電位に対して負の極性の第2電位(すなわち0V)と、を選択的に接続可能である。なお、第3電位は、第1電位と第2電位との間であれば、第1電位と第2電位との厳密に真ん中であることに限定されず、第2電位より第1電位に近くてもよいし、第1電位より第2電位に近くてもよい。
【0059】
本実施の形態では、電圧印加制御部19は、表示書き換えタイミングにおいて、2枚の基板11、16間に所望の表示の内容に応じて電界を与えて表示を書き換える表示書き換え工程を行うように構成されている。より詳しくは、電圧印加制御部19は、表示書き換えタイミングにおいて、共通電極12には、第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには、表示すべき画像の情報に基づいて、第1電位(すなわち+30V)と第2電位(すなわち0V)と第3電位(すなわち+15V)のうちいずれかを選択的に接続するように構成されている。
【0060】
具体的には、例えば、表示書き換えタイミングにおいて、黒色から白色に表示色を切り替えるべき表示領域(例えば第1表示領域18a)については、電圧印加制御部19は、共通電極12に第3電位(すなわち+15V)を接続するとともに、第1表示電極15aに第2電位(すなわち0V)を所定の書き込み時間長(例えば300ms〜400ms)だけ接続するようになっている。これにより、共通電極12の電位に対する第1表示電極15aの電位の極性が負となり、負に帯電した白色の電気泳動粒子が共通電極12に吸着されると共に、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が第1表示電極15aに吸着され、結果的に、第1表示領域18aの共通電極12側(視認側)には白色が表示される。その後、電圧印加制御部19は、第1表示電極15aにも第3電位(すなわち+15V)を接続するようになっている。これにより、共通電極12の電位と第1表示電極15aの電位とが同電位となり、黒色の電気泳動粒子および白色の電気泳動粒子は各々その場に静止し、結果的に、第1表示領域18aの白色の表示色がそのまま保持される。
【0061】
また、表示書き換えタイミングにおいて、白色から黒色に表示色を切り替えるべき表示領域(例えば第2表示領域18b)については、電圧印加制御部19は、共通電極12に第3電位(すなわち+15V)を接続するとともに、第2表示電極15bに第1電位(すなわち+30V)を所定の書き込み時間長(例えば300ms〜400ms)だけ接続するようになっている。これにより、共通電極12の電位に対する第2表示電極15bの電位の極性が正となり、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が共通電極12に吸着されると共に、負に帯電した白色の電気泳動粒子が第2表示電極15bに吸着され、結果的に、第2表示領域18bの共通電極12側(視認側)には黒色が表示される。その後、電圧印加制御部19は、第2表示電極15bにも第3電位(すなわち+15V)を接続するようになっている。これにより、共通電極12の電位と第2表示電極15bの電位とが同電位となり、黒色の電気泳動粒子および白色の電気泳動粒子は各々その場に静止し、結果的に、第2表示領域18bの黒色の表示色がそのまま保持される。
【0062】
また、表示書き換えタイミングにおいて、表示色をそのまま保持すべき表示領域(例えば第3表示領域18c)については、電圧印加制御部19は、共通電極12に第3電位(すなわち+15V)を接続するとともに、第3表示電極15cにも第3電位(すなわち+15V)を接続するようになっている。共通電極12と第3表示電極15cとが同電位(すなわち+15V)に接続されることで、黒色の電気泳動粒子および白色の電気泳動粒子は各々その場に静止し、結果的に、第3表示領域18cの表示色がそのまま保持される。
【0063】
なお、本明細書において「表示書き換えタイミング」とは、反射型表示装置10において観察者に対して所望の表示画像を改めて表示するタイミング、という意味であり、例えばデジタル表示時計のように所定の周期、例えば1sで繰り返すタイミングであってもよいし、電卓のように手動で不規則的に与えられるタイミングであってもよい。
【0064】
また、電圧印加制御部19は、大きさVの電圧を時間長Tだけ印加する場合、大きさVの電圧を時間長Tだけ連続して印加するようになっていてもよいし、大きさVで時間長(パルス幅)Wのパルス状の電圧をT/W回だけ繰り返し印加するようになっていてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の繰り返し回数に基づくリセットタイミングにおいて、2枚の基板11、16間に第1電界を与えて第1色(黒色)を表示させる第1リセットステップと、2枚の基板11、16間に第1電界とは逆向きの第2電界を与えて第2色(白色)を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うリセット工程を行うように構成されている。より詳しくは、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の繰り返し回数に基づくリセットタイミングにおいて、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第1電位(すなわち+30V)を接続することで、各表示領域18a〜18hに黒色を表示させる第1リセットステップと、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第2電位(すなわち0V)を接続することで、各表示領域18a〜18hに白色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うように構成されている。本実施の形態では、電圧印加制御部19は、リセット工程を第1リセットステップから開始するように構成されているが、これに限定されず、リセット工程を第2リセットステップから開始するように構成されていてもよい。
【0066】
図1に示すように、電圧印加制御部19には、反射型表示装置10が使用される環境の温度を環境温度として検出する温度センサ20が接続されており、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の繰り返し回数、および、温度センサ20により検出された環境温度に基づいてリセットタイミングを決定するように構成されている。なお、本明細書において、反射型表示装置10が使用される環境の温度とは、反射型表示装置10の外部の環境の温度(外気温度)を意味する。
【0067】
温度センサ20は、例えば、反射型表示装置10の外観を構成する筐体の内部に収容された電圧印加制御部19等が設けられる回路基板上に設けられるが、その設置位置は特に限定されるものではない。なお、当該回路基板に温度センサ20が設けられる場合には、温度センサ20が環境温度に良好に追従できるように、温度センサ20を外気に連通させるための連通孔などが反射型表示装置10の筐体に設けられていることが好ましい。 本実施の形態では、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程を行う毎に温度センサ20により検出された環境温度を、例えばケルビン(K)単位で読み出し、当該環境温度の積算値、すなわちその時点までに読み出した環境温度の総和が所定の値、例えば10000Kを超えた時にリセットタイミングを決定するように構成されている。
【0068】
次に、このような構成からなる反射型表示装置10の駆動方法の一例について、図3および図4を参照して説明する。
【0069】
図3に示すように、初期状態では、反射型表示装置10の共通電極12側(視認側)に、数字の「8」を表す初期画像が表示されている。すなわち、第1乃至第7表示領域18a〜18gには黒色が表示されており、第8表示領域18hには白色が表示されている。ここでは、環境温度の積算値がその時点までに9000Kとなっている場合を考える。
【0070】
まず、図3に示すように、数字の「8」を表す初期画像から、数字の「6」を表す第1画像に表示を書き換える工程を説明する。
【0071】
この場合、電圧印加制御部19は、まず、温度センサ20により検出された環境温度、例えば300Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち9000+300=9300Kを所定の値、すなわち10000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値以下であるため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定しない。
【0072】
したがって、電圧印加制御部19は、リセット工程を行わずに、表示書き換え工程を行って、数字の「6」を表す第1画像に表示を書き換える。すなわち、電圧印加制御部19は、共通電極12と第1、第2、第4乃至第8表示電極15a、15b、15d〜15hに、第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第1、第2、第4乃至第8表示領域18a、18b、18d〜18hの表示色は、そのまま保持される。一方、電圧印加制御部19は、第3表示電極15cに、第2電位(すなわち0V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続し、その後第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第3表示領域18cの表示色は、黒色から白色に切り替わる。ここで、表示書き換えが行われた第3表示領域18cでは、電気泳動粒子の一部が共通電極12および第3表示電極15cに強く付着する可能性がある。
【0073】
次に、図3に示すように、数字の「6」を表す第1画像から、数字の「3」を表す第2画像に表示を書き換える工程を説明する。
【0074】
この場合、電圧印加制御部19は、まず、温度センサ20により検出された環境温度、例えば301Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち9300+301=9601Kを所定の値、すなわち10000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値以下であるため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定しない。
【0075】
したがって、電圧印加制御部19は、リセット工程を行わずに、表示書き換え工程を行って、数字の「3」を表す第2画像に表示を書き換える。すなわち、電圧印加制御部19は、共通電極12と第1、第4、第6乃至第8表示電極15a、15d、15f〜15hに、第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第1、第4、第6乃至第8表示領域18a、18d、18f〜18hの表示色は、そのまま保持される。一方、電圧印加制御部19は、第2、第5表示電極15b、15eに、第2電位(すなわち0V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続し、その後第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第2、第5表示領域18b、18eの表示色は、黒色から白色に切り替わる。また、電圧印加制御部19は、第3表示電極15cに、第1電位(すなわち+30V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続し、その後第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第3表示領域18cの表示色は、白色から黒色に切り替わる。ここで、表示書き換えが行われた第2、第3、第5表示領域18b、18c、18eでは、電気泳動粒子の一部が共通電極12および第2、第3、第5表示電極15b、15c、15eに強く付着する可能性がある。
【0076】
次に、図3に示すように、数字の「3」を表す第2画像から、数字の「2」を表す第3画像に表示を書き換える工程を説明する。
【0077】
この場合、電圧印加制御部19は、まず、温度センサ20により検出された環境温度、例えば300Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち9601+300=9901Kを所定の値、すなわち10000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値以下であるため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定しない。
【0078】
したがって、電圧印加制御部19は、リセット工程を行わずに、表示書き換え工程を行って、数字の「2」を表す第3画像に表示を書き換える。すなわち、電圧印加制御部19は、共通電極12と第1乃至第4、第7、第8表示電極15a〜15d、15g、15hに、第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第1乃至第4、第7、第8表示領域18a〜18d、18g、18hの表示色は、そのまま保持される。一方、電圧印加制御部19は、第5表示電極15eに、第1電位(すなわち+30V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続し、その後第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第5表示領域18eの表示色は、白色から黒色に切り替わる。また、電圧印加制御部19は、第6表示電極15fに、第2電位(すなわち0V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続し、その後第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第3表6領域18fの表示色は、黒色から白色に切り替わる。ここで、表示書き換えが行われた第5、第6表示領域18e、18fでは、電気泳動粒子の一部が共通電極12および第5、第6表示電極15e、15fに強く付着する可能性がある。 次に、図4に示すように、数字の「2」を表す第3画像から、数字の「6」を表す第4画像に表示を書き換える工程を説明する。
【0079】
この場合、電圧印加制御部19は、まず、温度センサ20により検出された環境温度、例えば302Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち9901+302=10203Kを所定の値、すなわち10000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値を超えたため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定する。
【0080】
そして、電圧印加制御部19は、このリセットタイミングにおいて、リセット工程を行う。すなわち、電圧印加制御部19は、まず、共通電極12と第2、第6、第8表示電極15b、15f、15hに、第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第2、第6、第8表示領域18b、18f、18hの表示色は、白色のまま保持される。一方、電圧印加制御部19は、第1、第3乃至第5、第7表示電極15a、15c〜15e、15gに、第2電位(すなわち+0V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続する。これにより、第1、第3乃至第5、第7表示領域18a、18c〜18e、18gの表示色は、黒色から白色に切り替わる。以上により、各表示領域18a〜18hの表示色は、白色に揃えられる。
【0081】
次に、電圧印加制御部19は、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第1電位(すなわち+30V)を接続する第1リセットステップと、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第2電位(すなわち0V)を接続する第2リセットステップと、を交互に繰り返す。第1リセットステップにおける電圧印加時間長は、例えば300ms〜400msであり、第2リセットステップにおける電圧印加時間長は、例えば300ms〜400msである。
【0082】
第1リセットステップでは、共通電極12の電位に対する各表示電極15a〜15hの電位の極性が正となり、負に帯電した白色の電気泳動粒子が各表示電極15a〜15h側に移動すると共に、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が共通電極12側に移動して、各表示領域18a〜18hには黒色が表示される。
【0083】
また、第2リセットステップでは、共通電極12の電位に対する各表示電極15a〜15hの電位の極性が負となり、負に帯電した白色の電気泳動粒子が共通電極12側に移動すると共に、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が各表示電極15a〜15h側に移動して、各表示領域18a〜18hには白色が表示される。
【0084】
このような第1リセットステップと第2リセットステップとが交互に行われることで、共通電極12と各表示電極15a〜15hとの間において電気泳動粒子が強制的に往復移動され、表示媒体13が掻き混ぜられる。そして、流動する表示媒体13の圧力により、共通電極12または表示電極に付着していた電気泳動粒子が引き剥がされ得る。
【0085】
必ずしも必須では無いが、この後でさらに第1ステップを行っても良いし、第1ステップと第2ステップとを交互に複数回繰り返しても良い。この場合、表示媒体13が一層効果的に掻き混ぜられ、流動する表示媒体13の圧力が増大するため、共通電極12または表示電極に付着していた電気泳動粒子を一層効率的に引き剥がすことができる。
【0086】
図4に示すように、本実施の形態では、リセット工程が第2リセットステップで終わるようになっており、リセット工程の直後には、各表示領域18a〜18hに白色が表示されている。
【0087】
電圧印加制御部19は、以上のようなリセット工程を行った後、表示書き換え工程を行って、数字の「6」を表す第4画像に表示を書き換える。すなわち、電圧印加制御部19は、共通電極12と第3、第8表示電極15c、15hに、第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第3、第8表示領域18c、18hの表示色は、白色のまま保持される。一方、電圧印加制御部19は、第1、第2、第4乃至第7表示電極15a、15b、15d〜15gに、第1電位(すなわち+30V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続し、その後第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第1、第2、第4乃至第7表示領域18a、18b、18d〜18gの表示色は、白色から黒色に切り替わる。
【0088】
以上のように、反射型表示装置10では、表示書き換え工程を連続して繰り返すことで、表示書き換え毎に共通電極12または表示電極に付着して離れない電気泳動粒子の数が増えていき、残像が蓄積されていくが、本実施の形態によれば、電圧印加制御部19が、表示書き換え工程の繰り返し回数に基づくリセットタイミングにおいて、2枚の基板11、16間に互いに逆向きの第1電界と第2電界とを交互に与えることで、2枚の基板11、16間において電気泳動粒子が強制的に往復移動されて、表示媒体13が掻き混ぜられ、流動する表示媒体13の圧力により電極に付着した電気泳動粒子が引き剥がされる。これにより、連続駆動による残像の蓄積を抑制できる。
【0089】
また、通常、反射型表示装置10が使用される環境の温度が高いほど、表示媒体13の粘度が低く、電気泳動粒子が動きやすい。そのため、表示書き換え時の電圧印加時間長が環境の温度によらずに一定である場合、環境の温度が高いほど表示書き換え毎の電圧印加が過剰となり、電気泳動粒子が電極に付着しやすくなる。しかしながら、本実施の形態によれば、電圧印加制御部19が、表示書き換え工程の繰り返し回数および環境温度に基づいてリセットタイミングを決定することで、より詳しくは、環境温度が高いほどより少ない表示書き換え回数でリセットタイミングを決定することで、連続駆動による残像の蓄積を、環境温度の影響を考慮して一層効果的に抑制できる。
【0090】
なお、本実施の形態では、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の繰り返し回数および環境温度に基づいてリセットタイミングが決定するように構成されていたが、これに限定されず、電圧印加制御部19は、環境温度にかかわらず表示書き換え工程の繰り返し回数に基づいてリセットタイミングを決定するように構成されていてもよい。言い換えれば、電圧印加制御部19は、環境温度にかかわらず表示書き換え工程を所定の回数(例えば、100回)繰り返す毎にリセット工程を行うように構成されていてもよい。この場合、温度センサ20を省略することができ、装置構成が簡易になる。
【0091】
また、本実施の形態では、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の繰り返し回数に基づくリセットタイミングにおいて、リセット工程を行うように構成されていたが、これに限定されず、表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長に基づくリセットタイミングにおいて、リセット工程を行うように構成されていてもよい(第2の実施の形態)。より詳しくは、第2の実施の形態における電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長に基づくリセットタイミングにおいて、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第1電位(すなわち+30V)を接続することで、各表示領域18a〜18hに黒色を表示させる第1リセットステップと、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第2電位(すなわち0V)を接続することで、各表示領域18a〜18hに白色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うように構成されている。第2の実施の形態では、電圧印加制御部19は、リセット工程を第1リセットステップから開始するように構成されているが、これに限定されず、リセット工程を第2リセットステップから開始するように構成されていてもよい。
【0092】
また、第2の実施の形態における電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長、および、温度センサ20により検出された環境温度に基づいてリセットタイミングを決定するように構成されている。
【0093】
具体的には、例えば、電圧印加制御部19は、所定の時間周期(例えば、10分毎)で温度センサ20により検出された環境温度を、例えばケルビン(K)単位で読み出し、当該環境温度の積算値が所定の値、例えば50000Kを超えた時にリセットタイミングを決定するように構成されている。
【0094】
次に、このような構成からなる第2の実施の形態による反射型表示装置の駆動方法の一例について、図3および図5を参照して説明する。
【0095】
ここでは、環境温度の積算値がその時点までに49000Kとなっている場合を考える。
【0096】
まず、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の有無にかかわらず、例えば、反射型表示装置の電源投入後から10分が経過したら、温度センサ20により検出された環境温度、例えば300Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち49000+300=49300Kを所定の値、すなわち50000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値以下であるため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定しない。
【0097】
次に、図3に示すように、電圧印加制御部19は、第1の実施の形態と同様に表示書き換え工程を行うことで、数字の「8」を表す初期画像から、数字の「6」を表す第1画像に表示を書き換える。
【0098】
一方、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の有無にかかわらず、次の10分が経過したら、すなわち反射型表示装置の電源投入後から20分が経過したら、温度センサ20により検出された環境温度、例えば301Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち49300+301=49601Kを所定の値、すなわち50000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値以下であるため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定しない。
【0099】
次に、図3に示すように、電圧印加制御部19は、第1の実施の形態と同様に表示書き換え工程を行うことで、数字の「3」を表す第2画像から、数字の「2」を表す第3画像に表示を書き換える。
【0100】
一方、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の有無にかかわらず、次の10分が経過したら、すなわち反射型表示装置の電源投入後から30分が経過したら、温度センサ20により検出された環境温度、例えば300Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち49601+300=49901Kを所定の値、すなわち50000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値以下であるため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定しない。
【0101】
ここまでの工程では、第1、第4、第7、第8表示領域18a、18d、18g、18hにおいて、表示書き換えが行われておらず、言い換えれば電源投入後から30分以上放置された状態にあることに留意すべきである。第1、第4、第7、第8表示領域18a、18d、18g、18hでは、表示媒体13の流動性が低下し、すなわち粘性が高まることで、応答速度が鈍化している。 電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の有無にかかわらず、次の10分が経過したら、すなわち反射型表示装置の電源投入後から40分が経過したら、温度センサ20により検出された環境温度、例えば302Kを読み出し、環境温度の積算値、すなわち49901+302=50203Kを所定の値、すなわち50000Kと比較する。ここでは、環境温度の積算値が所定の値を超えたため、電圧印加制御部19は、リセットタイミングを決定する。
【0102】
そして、電圧印加制御部19は、このリセットタイミングにおいて、リセット工程を行う。すなわち、図5に示すように、電圧印加制御部19は、まず、共通電極12と第2、第6、第8表示電極15b、15f、15hに、第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第2、第6、第8表示領域18b、18f、18hの表示色は、白色のまま保持される。一方、電圧印加制御部19は、第1、第3乃至第5、第7表示電極15a、15c〜15e、15gに、第2電位(すなわち+0V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続する。これにより、第1、第3乃至第5、第7表示領域18a、18c〜18e、18gの表示色は、黒色から白色に切り替わる。以上により、各表示領域18a〜18hの表示色は、白色に揃えられる。
【0103】
次に、電圧印加制御部19は、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第1電位(すなわち+30V)を接続する第1リセットステップと、共通電極12には第3電位(すなわち+15V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第2電位(すなわち0V)を接続する第2リセットステップと、を交互に繰り返す。第1リセットステップにおける電圧印加時間長は、例えば300ms〜400msであり、第2リセットステップにおける電圧印加時間長は、例えば300ms〜400msである。
【0104】
第1リセットステップでは、共通電極12の電位に対する各表示電極15a〜15hの電位の極性が正となり、負に帯電した白色の電気泳動粒子が各表示電極15a〜15h側に移動すると共に、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が共通電極12側に移動して、各表示領域18a〜18hには黒色が表示される。
【0105】
また、第2リセットステップでは、共通電極12の電位に対する各表示電極15a〜15hの電位の極性が負となり、負に帯電した白色の電気泳動粒子が共通電極12側に移動すると共に、正に帯電した黒色の電気泳動粒子が各表示電極15a〜15h側に移動して、各表示領域18a〜18hには白色が表示される。
【0106】
このような第1リセットステップと第2リセットステップとが交互に行われることで、共通電極12と各表示電極15a〜15hとの間において電気泳動粒子が強制的に往復移動され、表示媒体13が掻き混ぜられ、特に長期放置されていた第1、第4、第7、第8表示領域18a、18d、18g、18hにおいて、表示媒体13の流動性が向上する。その結果、各表示領域18a〜18hにおける応答速度のバラツキが低減する。
【0107】
必ずしも必須では無いが、この後でさらに第1ステップを行っても良いし、第1ステップと第2ステップとを交互に繰り返しても良い。この場合、表示媒体13が一層効果的に掻き混ぜられ、各表示領域18a〜18hにおける応答速度のバラツキが一層低減する。
【0108】
図5に示すように、第2の実施の形態では、リセット工程が第2リセットステップで終わるようになっており、リセット工程の直後には、各表示領域18a〜18hに白色が表示されている。
【0109】
電圧印加制御部19は、以上のようなリセット工程を行った後、表示書き換え工程を行って元の画像、すなわち第3画像に表示を書き換える。すなわち、電圧印加制御部19は、共通電極12と第2、第6、第8表示電極15b、15f、15hに、第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第2、第6、第8表示領域18b、18f、18hの表示色は、白色のまま保持される。一方、電圧印加制御部19は、第1、第3乃至第5、第7表示電極15a、15c〜15e、15gに、第1電位(すなわち+30V)を所定の書き込み時間長、例えば300ms〜400msだけ接続し、その後第3電位(すなわち+15V)を接続する。これにより、第1、第3乃至第5、第7表示領域18a、18c〜18e、18gの表示色は、白色から黒色に切り替わる。
【0110】
以上のように、反射型表示装置10では、表示書き換えが行われずに長時間放置された表示領域では、表示媒体13の流動性が低下する、すなわち粘性が高まることで、応答速度が鈍化するが、第2の実施の形態によれば、電圧印加制御部19が、表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長に基づくリセットタイミングにおいて、2枚の基板11、16間に互いに逆向きの第1電界と第2電界とを交互に与えることで、2枚の基板11、16間において電気泳動粒子が強制的に往復移動されて、表示媒体13が掻き混ぜられ、表示媒体13の流動性が高められる。これにより、長期放置されていた表示領域における応答速度の鈍化が抑制され、各表示領域18a〜18hにおける応答速度のバラツキが低減される。
【0111】
また、通常、放置される環境の温度が高いほど、表示媒体13が固まりやすい。しかしながら、第2実施の形態によれば、電圧印加制御部19が、表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長および環境温度に基づいてリセットタイミングを決定することで、より詳しくは、環境温度が高いほどより短い経過時間長でリセットタイミングを決定することで、各表示領域18a〜18hにおける応答速度のバラツキを、環境温度の影響を考慮して一層効果的に抑制できる。
【0112】
なお、第2の実施の形態では、電圧印加制御部19は、表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長および環境温度に基づいてリセットタイミングが決定するように構成されていたが、これに限定されず、電圧印加制御部19は、環境温度にかかわらず、前記経過する時間長に基づいてリセットタイミングを決定するように構成されていてもよい。言い換えれば、電圧印加制御部19は、環境温度にかかわらず表示書き換え工程を所定の時間長(例えば、30分)が経過する毎にリセット工程を行うように構成されていてもよい。この場合、温度センサ20を省略することができ、装置構成が簡易になる。
【0113】
なお、第1の実施の形態および第2の実施の形態では、リセット工程において2枚の基板11、16間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、表示書き換え工程において2枚の基板11、16間に与えられる電界の大きさと同じであった、これに限定されず、リセット工程において2枚の基板11、16間に与えられる第1電界の大きさおよび第2電界の大きさは、それぞれ、表示書き換え工程において2枚の基板11、16間に与えられる電界の大きさより大きくてもよい。具体的には、例えば、電圧印加制御部19は、リセットタイミングにおいて、共通電極12には第2電位(すなわち+0V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第1電位(すなわち+30V)を接続することで、各表示領域18a〜18hに黒色を表示させる第1リセットステップと、共通電極12には第1電位(すなわち+30V)を接続し、各表示電極15a〜15hには第2電位(すなわち0V)を接続することで、各表示領域18a〜18hに白色を表示させる第2リセットステップと、を交互に行うように構成されていてもよい。この場合、2枚の基板11、16間に書き込み時の印加電圧の2倍程度の大きさの電圧が印加されるため、電気泳動粒子の移動速度が書き込み時の移動速度に比べて速く、電気泳動粒子の1往復あたりにかかる時間が短縮される。したがって、書き込み時と同じ電圧を利用する場合と比べて、第1リセットステップおよび第2リセットステップの繰り返し回数を少なくできるとともに、第1リセットステップおよび第2リセットステップの各々における電圧印加時間長を短く設定できる。
【0114】
なお、第1の実施の形態および第2の実施の形態では、表示媒体13に電気応答性材料として電気泳動粒子が含まれていたが、これに限定されず、例えば、表示媒体13に電気応答性材料としてツイストボールに代表される回転粒子が含まれていてもよい。ツイストボール方式の反射型表示装置では、回転粒子同士の凝集による動作不良が長期放置や連続駆動により引き起こされる。すなわち、ツイストボール方式の反射型表示装置では、長期放置や連続駆動により回転粒子同士に凝集が生じるが、一旦凝集が生じるとその安定した状態を保持しようとする傾向が働くため、応答速度が鈍化する。しかしながら、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同様に、表示書き換え工程の繰り返し回数に基づくリセットタイミングにおいて、または、表示書き換え工程の有無にかかわらず経過する時間長に基づくリセットタイミングにおいて、リセット工程として第1リセットステップと第2リセットステップとを交互に行うことで、2枚の基板間において回転粒子が強制的に回転され、回転粒子同士の凝集が解消され得る。したがって、長期放置または連続駆動による動作不良、すなわち応答速度の鈍化を解消することができる。
【符号の説明】
【0115】
10 反射型表示装置
11 一方の基板
12 共通電極
13 表示媒体
14 隔壁
15a〜15h 表示電極
16 他方の基板
17 外周シール
18a〜18h 表示領域
19 電圧印加制御部
図1
図2
図3
図4
図5