特許第6440028号(P6440028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440028
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】電線バインド
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/02 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   H02G7/02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-24138(P2015-24138)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-149825(P2016-149825A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】井上 和典
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−057699(JP,U)
【文献】 特開2007−174737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接して並列に配置された二本の電線のうち、一方の電線に掛止可能な二つ以上の第一掛止部であって、固定の対象となる電線の延びる方向と対応する軸線方向に間隔をあけて配置された二つ以上の第一掛止部と、前記軸線方向で隣り合う二つの第一掛止部間に連続して形成された一つ以上の第二掛止部であって、他方の電線に掛止可能な一つ以上の第二掛止部と、一方の電線に掛止される最も端にある前記第一掛止部、又は他方の電線に掛止される最も端にある前記第二掛止部に連続して形成された螺旋状の固定部であって、一方の電線に巻回可能に形成された螺旋状の固定部とを備え、前記二つ以上の第一掛止部のうち、一方の電線に掛止される一つ目の前記第一掛止部は、一方の電線の外径よりも小さい内径を有し、且つ端部が前記軸線方向に折り曲げられて形成される係止部であって、一方の電線の外周面に係止する係止部を有することを特徴とする電線バインド。
【請求項2】
前記第二掛止部は、前記軸線方向に対して直交方向に巻回される巻回部を含むことを特徴とする請求項1に記載の電線バインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続箇所で近接して並列に配置された二本の電線を相互に固定する電線バインドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配電線を径間途中で分岐する接続箇所において、近接して並列に配置された二本の電線を相互に固定するために、バインド線が使用される。該バインド線は、塑性変形可能で、二本の電線に沿って巻き付けられる。
【0003】
具体的には、まず、図6(a)に示す如く、バインド線100の両端部が垂れ下がるように、バインド線100の中央部を逆U字形状に折り曲げる。つぎに、二本の電線C,Cのうちの一方の電線Cの外周面に、折り曲げられたバインド線100の凹部を当接させる。この状態で、一方の作業者が間接活線工具(絶縁ヤットコ)で垂れ下がったバインド線100の一端部を把持した上で、他方の作業者がバインド打ち器を使用して、図6(b)に示す如く、バインド線100を一端から他端に向かって順次螺旋状に巻き付けていく(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−55713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記バインド線100を二本の電線C,Cに対して螺旋状に巻回する場合、垂れ下がったバインド線100の一端部を把持する一方の作業者と、バインド打ち器を使用してバインド線100を巻き付けていく他方の作業者とが必要になる。また、バインド線100を一端から他端に向かって順次螺旋状に巻き付けていくため、労力と時間を要する。したがって、バインド線100によって二本の電線を固定するには作業性が悪い、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、近接して並列に配置された二本の電線に対し効率よく巻き付けできて作業性を向上できる電線バインドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電線バインドは、近接して並列に配置された二本の電線のうち、一方の電線に掛止可能な二つ以上の第一掛止部であって、固定の対象となる電線の延びる方向と対応する軸線方向に間隔をあけて配置された二つ以上の第一掛止部と、前記軸線方向で隣り合う二つの第一掛止部間に連続して形成された一つ以上の第二掛止部であって、他方の電線に掛止可能な一つ以上の第二掛止部と、一方の電線に掛止される最も端にある前記第一掛止部、又は他方の電線に掛止される最も端にある前記第二掛止部に連続して形成された螺旋状の固定部であって、一方の電線に巻回可能に形成された螺旋状の固定部とを備え、前記二つ以上の第一掛止部のうち、一方の電線に掛止される一つ目の前記第一掛止部は、一方の電線の外径よりも小さい内径を有し、且つ端部が前記軸線方向に折り曲げられて形成される係止部であって、一方の電線の外周面に係止する係止部を有することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、第一掛止部が一方の電線に掛止可能であるため、一つ目の第一掛止部を引っ掛けた状態(支持点)にして二つの電線に巻回し始めることができる。具体的には、第一掛止部を一方の電線に引っ掛けた状態で、第二掛止部を他方の電線に引っ掛けた後、続けて二つ目の第一掛止部を一方の電線に引っ掛け、その後、一方の電線に螺旋状の固定部を巻き付けることができるようになり、全体を通して巻きやすい。また、二本の電線に対して、第一掛止部、第二掛止部、第一掛止部の少なくとも3点で支持することができる。さらに、一方の電線に螺旋状の固定部を巻き付けることで、一方の電線の垂れ下がりを許容しつつ一方の電線に対する固定力をあげることができる。
【0010】
また、かかる構成によれば、一つ目の第一掛止部は電線の外径よりも小さい内径を有しているため、一方の電線に第一掛止部を掛止する際に、第一掛止部の内径が電線の外周面によって押し広げられつつ第一掛止部内に電線が嵌め入れられる。このため、電線の外周面に第一掛止部の内面が圧接し、電線に対してバインドを強固に固定できる。
【0011】
さらに、一方の電線に掛止される一つ目の前記第一掛止部は、端部が前記軸線方向に折り曲げられて形成される係止部であって、一方の電線の外周面に係止する係止部を有するため、一方の電線に掛止される一つ目の前記第一掛止部が、一方の電線に対して位置固定される。したがって、巻回する際にバインドが固定側に向かって引っ張られたとしても、一方の電線に掛止される一つ目の前記第一掛止部の位置が動くことがなく、一方の電線に掛止される一つ目の前記第一掛止部を支持点にして効率よく巻回し始めることができる。
【0012】
本発明に係る電線バインドの他態様として、前記第二掛止部は、前記軸線方向に対して直交方向に巻回される巻回部を含むことが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、第二掛止部が電線の軸線方向に対して直交方向に巻回される巻回部を含むことで、第一掛止部間の距離が小さくなり、二本の電線に対して巻回しやすく、二本の電線を拘束しやすく強固に固定できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、近接して並列に配置された二本の電線に対し効率よく巻き付けできて作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電線バインドを、配電線を径間途中で分岐する構造に適用した状態を示した図である。
図2図2は、同実施形態に係る電線バインドを、近接して並列に配置された同一径の二本の電線に実装した状態を示す図である。
図3図3は、図2の縦断面図である。
図4図4は、同実施形態に係る電線バインドを、近接して並列に配置された異なる径の二本の電線に実装した状態を示す図である。
図5図5は、図4の縦断面図である。
図6図6(a)は、塑性変形可能なバインド線を逆U字形状に折り曲げた図、図6(b)は、近接して並列に配置された二本の電線にバインド線を巻き付けて固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る電線バインドについて図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、配電線を径間途中で分岐する構造に適用される電線固定具について説明する。
【0017】
まず、本実施形態を説明するに先立って、前記分岐構造について説明する。該分岐構造は、図1に示す如く、電柱間に架設された電線C1と、該電線C1から分岐された電線C2であって、ピン碍子B及び引留クランプKによって引き留められた電線C2とを有する。前記分岐箇所で近接して並列に配置された二本の電線C1,C2は、同一径である場合を例にとって説明する。
【0018】
本実施形態に係る電線バインドは、図2及び図3に示す如く、近接して並列に配置された二本の電線C1,C2のうち、一方の電線C1に掛止可能な二つ以上の第一掛止部1aであって、固定の対象となる電線C1の延びる方向と対応する軸線方向に間隔をあけて配置された二つ以上の第一掛止部1aと、前記軸線方向で隣り合う二つの第一掛止部1a,1a間に連続して形成された一つ以上の第二掛止部1bであって、他方の電線C2に掛止可能な一つ以上の第二掛止部1bと、一方の電線C1に掛止される最も端にある前記第一掛止部1a、又は他方の電線C2に掛止される最も端にある前記第二掛止部1bに連続して形成された螺旋状の固定部1cであって、一方の電線C1に巻回可能に形成された螺旋状の固定部1cとを備える。
【0019】
第一掛止部1aは、本実施形態においては、固定の対象となる電線C1の延びる方向と対応する軸線方向に間隔をあけて、例えば三つ配置される。
【0020】
二つ以上の第一掛止部1aのうち、一方の電線C1に掛止される一つ目の第一掛止部1aは、一方の電線C1の外径よりも小さい内径を有し、且つ端部が前記軸線方向に折り曲げられて形成される係止部10aであって、一方の電線C1の外周面に係止する係止部10aを有する。
【0021】
第二掛止部1bは、本実施形態においては、前記軸線方向で隣り合う二つの第一掛止部1a,1a間に連続して、例えば二つ形成される。具体的には、第二掛止部1bは、前記軸線方向に対して斜めに交差する方向に巻回される第一巻回部10bと、前記軸線方向に対して直交方向に巻回される第二巻回部11bとを含む。
【0022】
固定部1cは、本実施形態においては、例えば、一方の電線C1に掛止される最も端にある第一掛止部1aに螺旋状に連続して形成される。
【0023】
つぎに本実施形態に係る電線バインドの使用態様について説明する。まず、複数の第一掛止部1aのうち、一方の電線C1に掛止される一つ目の第一掛止部1aの内面を一方の電線C1の外周面に当接する。
【0024】
このとき、一方の電線C1に掛止される一つ目の第一掛止部1aは、一方の電線C1の外径よりも小さい内径を有しているため、第一掛止部1aの内径が一方の電線C1の外周面によって押し広げられつつ、第一掛止部1a内に一方の電線C1が嵌め入れられる。
【0025】
そして、嵌め入れられた一方の電線C1の外周面に、一つ目の第一掛止部1aの内面が圧接することにより、一方の電線C1の外周面に一つ目の第一掛止部1aが掛止する。
【0026】
さらに、一方の電線C1に掛止される一つ目の第一掛止部1aの係止部10aが一方の電線C1の外周面に係止する。その結果、一方の電線C1に対して電線バインド1の一端部を強固に固定できる。したがって、第一掛止部1aを支持点にして効率よく巻回し始めることができる。すなわち、一つ目の第一掛止部1aを支持点にして全体(第二掛止部1b及び固定部1cを含む)を通して巻きやすい。
【0027】
つぎに、一方の電線C1に掛止された一つ目の第一掛止部1aが固定された状態で、一つ目の第二掛止部1bが連続して引っ掛けられる。具体的には、一方の電線C1に掛止された一つ目の第一掛止部1aの係止部10aとは反対側の端部から、前記軸線方向に対して斜めに交差する方向に一つ目の第一巻回部10bが連続して巻回された後、一つ目の第二掛止部1bが他方の電線C2に掛止される。
【0028】
つぎに、一つ目の第二掛止部1bの端部から、前記軸線方向に対して直交方向に一つ目の第二巻回部11bが連続して巻回され、その後、二つ目の第一掛止部1aが一方の電線C1に掛止される。したがって、二本の電線C1,C2は、第一掛止部1a、第二掛止部1b、第一掛止部1aの少なくとも3点で支持される。
【0029】
この第二掛止部1bの第二巻回部11bは、一方の電線C1の軸線方向に対して直交方向に巻回されるため、隣り合う第一掛止部1a,1a間の距離が短くなり、二本の電線C1,C2に対して巻回しやすく、二本の電線C1,C2を拘束しやすく強固に固定できる。
【0030】
つぎに、二つ目の第一掛止部1aの端部から、前記軸線方向に対して斜めに交差する方向に第一巻回部10bが連続して巻回された後、二つ目の第二掛止部1bが他方の電線C2に掛止される。
【0031】
つぎに、二つ目の第二掛止部1bの端部から、前記軸線方向に対して直交方向に二つ目の第二巻回部11bが連続して巻回された後、最も端にある第一掛止部1aが一方の電線C1に掛止される。
【0032】
その後、最も端にある第一掛止部1aの端部から、螺旋状の固定部1cが一方の電線C1に巻き付けられる。
【0033】
この固定部1cは、一方の電線C1に掛止される最も端にある前記第一掛止部1aに螺旋状に連続して形成されているため、一方の電線C1の垂れ下がりを許容しつつ、一方の電線に対する固定力をあげることできる。その結果、一方の電線C1を直線状に支持することができる。
【0034】
そして、二つの電線C1,C2には、図2及び図3に示す如く、第一掛止部1a、第一巻回部10b、第二掛止部1b、第二巻回部11bが螺旋状に且つ楕円状に巻き付けられて、二つの電線C1,C2が拘束される。
【0035】
このように、本実施形態に係る電線バインドによれば、近接して並列に配置された二本の電線に対し効率よく巻き付けできて作業性を向上することができる。
【0036】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論のことである。
【0037】
例えば、前記実施形態の場合、径間途中で分岐する場合を例にとって説明したが、ポリマースペーサによる途中の分岐箇所、ラインスペーサによる径間途中で分岐される分岐箇所にも適用することができる。
【0038】
また、前記実施形態の場合、同一径の電線を固定する場合を例にとって説明したが、図4及び図5に示す如く、例えば、高圧線からの低圧線の引込構造において、異なる径の二本の電線を固定する場合も適用できる。
【0039】
また、前記実施形態の場合、第一掛止部1aを三つ、第二掛止部1bを二つとしたが、巻回数は限定されるものではなく、第一掛止部1aは二つ以上で、第二掛止部1bは一つ以上であればよい。
【0040】
また、前記実施形態の場合、一方の電線C1に掛止される最も端にある第一掛止部1aに固定部1cを形成したが、他方の電線C2に掛止される最も端にある第二掛止部1bに固定部1cを形成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…電線バインド、1a…第一掛止部、10a…係止部、1b…第二掛止部、10b…第一巻回部、11b…第二巻回部、1c…固定部、C1,C2…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6